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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1308844
審判番号 不服2014-21808  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-28 
確定日 2015-12-10 
事件の表示 特願2010-155701「ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月26日出願公開、特開2012- 18304〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成22年7月8日の出願であって、平成26年2月27日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月1日に手続補正がなされるとともに意見書が提出され、同年7月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成26年5月1日になされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
なお、平成26年10月28日付けの手続補正は、明細書の誤記を補正したものであり、特許請求の範囲を補正したものではない。また、前記誤記の補正は特許請求の範囲を技術的に変更させるものでもない。

「α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって酸解離性溶解抑制基を含む構成単位(a1)、α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって-SO_(2)-含有環式基を含む構成単位(a0)、及び、下記一般式(a5-1)で表される構成単位(a5)を有する樹脂成分(A1)と、
下記一般式(c1)で表される化合物(C1)と、
露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(ただし、前記化合物(C1)を除く)とを含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【化1】

[式中、Rは水素原子、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のハロゲン化アルキル基であり、Y^(5)は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、Zは1価の有機基である。aは1?3の整数であり、bは0?2の整数であり、かつ、a+b=1?3である。c、d、eはそれぞれ独立して0?3の整数である。]
【化2】

[式中、Rは水素原子、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のハロゲン化アルキル基であり、Y^(1)は2価の脂肪族炭化水素基であり、R^(1)は水素原子、フッ素原子、アルキル基又はフッ素化アルキル基である。pは1?10の整数を表す。A^(+)は有機カチオンを表す。]」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-134417号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)、および露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するポジ型レジスト組成物であって、
前記基材成分(A)が、下記一般式(a0-1)で表される構成単位(a0)、および酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有する高分子化合物(A1)を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【化1】

[式中、R^(1)は水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり、R^(2)は2価の連結基であり、R^(3)は、その環骨格中に-SO_(2)-を含む環式基である。]」
イ 「【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術においては、例えば基板の上にレジスト材料からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対し、所定のパターンが形成されたマスクを介して、光、電子線等の放射線にて選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。
露光した部分が現像液に溶解する特性に変化するレジスト材料をポジ型、露光した部分が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト材料をネガ型という。
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。
微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーや、ArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が開始されている。また、これらエキシマレーザーより短波長のF_(2)エキシマレーザー、電子線、EUV(極紫外線)やX線などについても検討が行われている。
【0003】
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。
このような要求を満たすレジスト材料として、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤とを含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている。
例えばポジ型の化学増幅型レジスト組成物としては、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂成分(ベース樹脂)と、酸発生剤成分とを含有するものが一般的に用いられている。かかる、レジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜は、レジストパターン形成時に選択的露光を行うと、露光部において、酸発生剤から酸が発生し、該酸の作用により樹脂成分のアルカリ現像液に対する溶解性が増大して、露光部がアルカリ現像液に対して可溶となる。
現在、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等において使用されるレジストのベース樹脂としては、193nm付近における透明性に優れることから、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する樹脂(アクリル系樹脂)などが一般的に用いられている(たとえば特許文献1?2参照)。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、α位に水素原子が結合したアクリル酸と、α位にメチル基が結合したメタクリル酸の一方あるいは両方を意味する。「(メタ)アクリル酸エステル」とは、α位に水素原子が結合したアクリル酸エステルと、α位にメチル基が結合したメタクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。「(メタ)アクリレート」とは、α位に水素原子が結合したアクリレートと、α位にメチル基が結合したメタクリレートの一方あるいは両方を意味する。
また、現在、化学増幅型レジスト用のベース樹脂としては、リソグラフィー特性等の向上のために、複数の構成単位を含有するものが用いられている。たとえばポジ型の場合には、通常、酸発生剤から発生した酸の作用により解離する酸解離性溶解抑制基を有する構成単位を含み、さらに、水酸基等の極性基を有する構成単位、ラクトン構造を有する構成単位等を含むものが用いられている。これらのうち、ラクトン構造を有する構成単位は、一般的に、レジスト膜の基板に対する密着性向上、アルカリ現像液との親和性等を向上させ、リソグラフィー特性の向上に寄与すると考えられている。

・・・略・・・

【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今後、リソグラフィー技術のさらなる進歩、応用分野の拡大等が予想されるなか、リソグラフィー用途に使用できる新規な材料に対する要求がある。たとえばパターンの微細化が進むにつれ、レジスト材料にも、解像性等の種々のリソグラフィー特性の向上が求められる。
そのようなリソグラフィー特性の1つとしてマスクエラーファクター(MEF)がある。MEFとは、同じ露光量で、ピッチを固定した状態でマスクサイズを変化させた際に、サイズの異なるマスクパターンをどれだけ忠実に再現できるか(マスク再現性)を示すパラメーターである。従来のレジスト組成物においては、レジストパターンの形成に際して使用するマスクサイズ(ホールパターンにおけるホール直径や、ラインアンドスペースパターンにおけるライン幅)の変化によって露光部にあたる光の量が増減する結果、形成されるレジストパターンのサイズがマスクサイズとずれたり、狭ピッチで微細なパターンを形成する際、形状が崩れたりするおそれがある。たとえば約100nm以下のホール口径のホールパターンを形成した際、ホールの真円性の低いものとなるおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ポジ型レジスト組成物の基材成分として有用な新規な高分子化合物、該高分子化合物のモノマーとして有用な化合物、前記高分子化合物を含有するポジ型レジスト組成物、および該ポジ型レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法を提供することを課題とする。」
ウ 「【0010】
本明細書および本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸エステルのほか、α位の炭素原子に置換基(水素原子以外の原子または基)が結合しているものも含む概念とする。該α位の炭素原子に結合する置換基としては、炭素数1?5のアルキル基、炭素数1?5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。以下、炭素数1?5のアルキル基、炭素数1?5のハロゲン化アルキル基を、それぞれ、低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基ということがある。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことである。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。」
エ 「【0012】
≪ポジ型レジスト組成物≫
本発明のポジ型レジスト組成物(以下、単にレジスト組成物ということがある。)は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)(以下、(A)成分という。)、および放射線の照射により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分という。)を含有する。
かかるポジ型レジスト組成物においては、放射線が照射(露光)されると、(B)成分から酸が発生し、該酸の作用により(A)成分のアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ポジ型レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜に対して選択的露光を行うと、当該レジスト膜の、露光部のアルカリ現像液に対する可溶性が増大する一方で、未露光部のアルカリ現像液に対する溶解性は変化しないため、アルカリ現像を行うことにより、レジストパターンを形成することができる。
ここで、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物である。基材成分としては、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、また、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすい。
前記基材成分として用いられる「分子量が500以上の有機化合物」は、非重合体と重合体とに大別される。
非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる。以下、分子量が500以上4000未満の非重合体を低分子化合物という。
重合体としては、通常、分子量が2000以上のものが用いられる。以下、分子量が2000以上の重合体を高分子化合物という。高分子化合物の場合、「分子量」としてはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。以下、高分子化合物を単に「樹脂」ということがある。
【0013】
<(A)成分>
[高分子化合物(A1)]
高分子化合物(A1)(以下、(A1)成分という。)は、前記一般式(a0-1)で表される構成単位(a0)、および酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を含有する。
(A1)成分は、構成単位(a0)および(a1)に加えて、さらに、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有することが好ましい。
また、(A1)成分は、構成単位(a0)および(a1)に加えて、または構成単位(a0)、(a1)および(a2)に加えて、さらに、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有することが好ましい。」
オ 「【0100】
(その他の構成単位)
共重合体(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記構成単位(a1)?(a3)以外の他の構成単位を含んでいてもよい。
該他の構成単位は、上述の構成単位(a1)?(a3)に分類されない他の構成単位であれば特に限定されるものではなく、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト用樹脂に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
該他の構成単位としては、例えば酸非解離性の脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下、構成単位(a4)という。)、下記一般式(a5)で表される構成単位(以下、構成単位(a5)という。)などが好ましい。
【0101】
【化37】

[式中、Rは水素原子、炭素数1?5のアルキル基または炭素数1?5のハロゲン化アルキル基であり;Y^(1)は脂肪族環式基であり、Zは第3級アルキル基含有基またはアルコキシアルキル基であり;n_(51)は1?3の整数であり、n_(52)は0?2の整数であり、且つn_(51)+n_(52)=1?3であり;n_(53)?n_(55)はそれぞれ独立して0?3の整数である。]」
カ 「【0206】
[ポリマー合成例1]
温度計、還流管を繋いだ3つ口フラスコに、21.47g(67.94mmol)の化合物(1)、12.36g(35.33mmol)の化合物(2)、20.00g(108.70mmol)の化合物(3)、11.54g(48.92mmol)の化合物(4)を、98.06gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PM)に溶解させた。この溶液に、重合開始剤としてアゾビスイソ酪酸ジメチル(V-601)を26.1mmol添加し溶解させた。これを窒素雰囲気下、6時間かけて、80℃に加熱したPM54.47gに滴下した。滴下終了後、反応液を1時間加熱攪拌し、その後、反応液を室温まで冷却した。得られた反応重合液を大量のメタノール/水混合溶媒に滴下し、重合体を析出させる操作を行い、沈殿した白色粉体をろ別、メタノール/水混合溶媒にて洗浄、乾燥して、目的物である高分子化合物1を40g得た。
この高分子化合物1について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は10,100であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.45であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_^(13)C-NMR)により求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、l/m/n/o=28.1/14.1/36.1/20.2であった。
【0207】
【化62】


キ 「【0289】
[実施例1?10、比較例1]
表9に示す各成分を混合、溶解してポジ型のレジスト組成物を調製した。
【0290】
【表9】

【0291】
表9中、[ ]内の数値は配合量(質量部)を示す。また、表9中の記号はそれぞれ以
下のものを示す。
(A)-1:前記高分子化合物1。
(A)-2:前記高分子化合物2。
(A)-3:前記高分子化合物3。
(A)-4:前記高分子化合物4。
(A)-5:前記高分子化合物5。
(A)-6:前記高分子化合物6。
(A)-7:前記高分子化合物7。
(A)-8:前記高分子化合物8。
(A)-9:前記高分子化合物9。
(A)-10:前記高分子化合物10。
(A)-1’:下記化学式(A)-1’(式中、l/m/n=45/35/20(モル比))で表されるMw7000、Mw/Mn1.8の共重合体。
(B)-1:下記化学式(B)-1で表される化合物。
(B)-2:下記化学式(B)-2で表される化合物。
(D)-1:トリ-n-ペンチルアミン。
(D)-2:ジエタノールアミン。
(S)-1:PGMEA/PGME=6/4(質量比)の混合溶剤。
(S)-2:γ-ブチロラクトン。

・・・略・・・

【0293】
【化100】


ク 上記キの【0290】【表9】の記載からみて、実施例1のポジ型のレジスト組成物は、(A)成分として【0207】の前記高分子化合物1、(B)成分として【0293】の(B)-1で表される化合物、(D)成分としてトリ-n-ペンチルアミン、(S)成分としてPGMEA/PGME=6/4(質量比)の混合溶剤及びγ-ブチロラクトンの各成分を混合、溶解して調製したものであるといえる。

ケ 上記アないしクからみて、引用例1には、
「酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分である(A)成分、および露光により酸を発生する酸発生剤成分である(B)成分を含有するポジ型レジスト組成物であって、
(A)成分が、下記一般式(a0-1)で表される構成単位(a0)、および酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有する高分子化合物(A1)を含有し、
前記高分子化合物(A1)は下記一般式(a5)で表される構成単位(a5)を含んでいてもよく、
具体的には、(A)成分として下記高分子化合物1、(B)成分として下記(B)-1で表される化合物を含有する、
ポジ型レジスト組成物。

【化1】

[式中、R^(1)は水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり、R^(2)は2価の連結基であり、R^(3)は、その環骨格中に-SO_(2)-を含む環式基である。]

【化37】

[式中、Rは水素原子、炭素数1?5のアルキル基または炭素数1?5のハロゲン化アルキル基であり;Y^(1)は脂肪族環式基であり、Zは第3級アルキル基含有基またはアルコキシアルキル基であり;n_(51)は1?3の整数であり、n_(52)は0?2の整数であり、且つn_(51)+n_(52)=1?3であり;n_(53)?n_(55)はそれぞれ独立して0?3の整数である。]


」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2010/029965号(以下「引用例2」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア 「発明の概要
[0008]
上記の組成物は、その繰り返し単位中にラクトン骨格を有することで、レジストとしての解像性能が飛躍的に向上することが見出されている。しかしながら、レジストパターンの微細化が線幅90nm以下のレベルまで進展している現在にあっては、単に解像性能が高いのみならず、他の性能も要求されるようになってきている。例えば、現在、レジストパターンの微細化技術の一つとして、液浸露光の実用化が進められており、この液浸露光にも対応可能なレジスト材料が求められている。具体的には、焦点深度(DOF:Depth Of Focus)、ライン幅の粗さ(LWR:Line Width Roughness)、マスク幅のずれによるライン幅のずれの増幅因子(MEEF:Mask Error Enhancement Factor)、パターン倒れ耐性、現像欠陥性能等の多様な要求特性を満足させる材料の開発が求められている。
[0009]
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、焦点深度が広く、LWR及びMEEFが小さく、パターン倒れ特性に優れ、かつ、現像欠陥性能にも優れる感放射線性樹脂組成物を提供するものである。
[0010]
本発明者らは、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、環状炭酸エステル構造を含む繰り返し単位を有する重合体からなる重合体と、カルバミン酸エステル構造を有する酸拡散抑制剤等とを感放射線性樹脂組成物の構成成分とすることによって、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により、以下の感放射線性樹脂組成物が提供される。
[0011]
[1] 酸解離性基を有する重合体(A)と、感放射線性の酸発生剤(B)と、酸拡散抑制剤(C)と、を含有し、前記重合体(A)として、下記一般式(a-1)で示される繰り返し単位(a-1)を有する重合体を含有し、前記酸拡散抑制剤(C)として、下記一般式(C-1)で示される塩基(C-1)及び光分解性塩基(C-2)のうちの少なくとも一種の塩基を含有する感放射線性樹脂組成物。
[化1]

〔一般式(a-1)中、R1は相互に独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、Rは一般式(a’)で示される1価の基であり、R^(19)は相互に独立して、水素原子、炭素数1?5の鎖状炭化水素基を示し、Aは単結合、炭素数が1?30である2価の鎖状炭化水素基、炭素数が3?30である2価の脂環式炭化水素基又は炭素数が6?30である2価の芳香族炭化水素基を示し、m及びnは0?3の整数(但し、m+n=1?3)を示す。一般式(a’)の炭酸エステル環が一般式(a-1)に示される第1の結合に加えて、Aに結合される第2の結合を有し、前記第1の結合及び前記第2の結合を含む環構造が形成されていてもよい。〕

・・・略・・・

[0016]
本発明の感放射線性樹脂組成物は、焦点深度が広く、LWR及びMEEFが小さく、パターン倒れ特性に優れ、かつ、現像欠陥性能にも優れる。従って、ArFエキシマレーザーを光源とするリソグラフィー材料として好適に用いることができる。また、液浸露光・KrFエキシマレーザーを光源とするリソグラフィー材料としても対応可能である。」
イ 「[0114]
[3]酸拡散抑制剤(C):
本発明の感放射線性樹脂組成物は、これまでに説明した重合体(A)及び酸発生剤(B)に加えて、酸拡散抑制剤(C)を更に含有する。この酸拡散抑制剤(C)は、露光により酸発生剤から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制するものである。このような酸拡散抑制剤(C)を配合することにより、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上し、またレジストとしての解像度が更に向上するとともに、露光から露光後の加熱処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。
[0115]
本発明の感放射線性樹脂組成物においては、酸拡散抑制剤(C)として、カルバミン酸エステル構造を有する塩基(C-1)及び光分解性塩基(C-2)のうちの少なくとも一種の塩基を用いる。」
ウ 「[0180]
(重合体(A)の合成)
重合体(A-1)?(A-31)は、各合成例において、下記の単量体(M-1)?(M-17)を用いて合成した。単量体(M-12)?(M-15)は繰り返し単位(a-1)に相当する単量体、単量体(M-1),(M-8)は繰り返し単位(a-2)に相当する単量体、単量体(M-2),(M-3),(M-11)は繰り返し単位(a-3a)に相当する単量体、単量体(M-7),(M-10)は繰り返し単位(a-3b)に相当する単量体、単量体(M-5),(M-16),(M-17)は一以上の極性基を有する繰り返し単位に相当する単量体である。

・・・略・・・

[0181]
(合成例1:重合体(A-1))
単量体(M-6)26.50g(50モル%)、単量体(M-12)8.42g(20モル%)、単量体(M-8)15.08g(30モル%)を2-ブタノン100gに溶解し、更に開始剤としてジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)1.91g(5モル%)を投入した単量体溶液を準備した。
[0182]
次に、温度計及び滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに50gの2-ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、1000gのメタノールに投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を、200gのメタノールにてスラリー状態とし、2度洗浄した。その後再度、白色粉末をろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の共重合体を得た(37g、収率74%)。この共重合体を重合体(A-1)とした。
[0183]
この共重合体は、Mwが7321であり、Mw/Mnが1.70であり、^(13)C-NMR分析の結果、単量体(M-6),単量体(M-12)及び単量体(M-8)に由来する各繰り返し単位の含有率は、45.2:19.5:35.3(モル%)であった。この共重合体における低分子量成分の残存割合は、0.05質量%であった。この測定結果を表2に示す。

・・・略・・・

[0186]
(合成例2?31:重合体(A-2)?(A-31))
表1,3,5に示す配合処方とした以外は、合成例1と同様にして重合体(A-2)?(A-31)を合成した。
[0187]
また、得られた重合体(A-2)?(A-31)についての、^(13)C-NMR分析による各繰り返し単位の割合(モル%)、収率(%)、Mw、及び分散度(Mw/Mn)の測定結果を表2,4,6に示す。また、重合体A-5及びA-7の^(13)C-NMR測定チャートを図1及び図2に示す。」
エ 「[0192]
(酸拡散抑制剤(C)の合成)
酸拡散抑制剤(C-9)?(C-11)となる化合物を合成した。これらの化合物は光分解性塩基(C-2)に相当する化合物である。

・・・略・・・

[0195]
(合成例34:光分解性塩基(C-11))
前記イオン交換樹脂20gを超純水にて一昼夜膨潤させた後、カラム管に充填した。予め(X-2)誘導体(セントラルガラス社製)を金属塩基(炭酸水素ナトリウム)にて脱プロトン化した下記式(X-2)で表されるナトリウム塩を用意し、前記ナトリウム塩28gをメタノールに溶解した溶液を前記カラム管に流し込み、スルホンアミドアニオンをイオン交換樹脂に担持した。十分量のメタノールにてフラッシュバックした後、トリフェニルスルホニウムクロライド5.2gをメタノールに溶解した溶液をカラム管に流し込み、アニオン交換を行った。得られた溶液をエバポレーターにて溶剤留去した後、室温で一昼夜乾燥して、下記式(C-11)で表される光分解性塩基(C-11)を得た(収量8.1g)。
[化24]

[0196]
(感放射線性樹脂組成物の調製)
表7及び表8に、各実施例及び比較例にて調製された感放射線性樹脂組成物の組成を示す。また、上記合成例にて合成した重合体(A-1)?(A-31)及び酸拡散抑制剤(C-9)?(C-11)以外の感放射線性樹脂組成物を構成する各成分(酸発生剤(B)、酸拡散抑制剤(C)及び溶剤(D))について以下に示す。」
オ 「[0200]
[表7]


カ 「[0202]
(実施例1)
合成例1で得られた重合体(A-1)100質量部、酸発生剤(B)として、(B-2)トリフェニルスルホニウム・ノナフルオロ-n-ブタンスルホネート8.4質量部、酸拡散抑制剤(C)として、(C-2)R-(+)-(t-ブトキシカルボニル)-2-ピペリジンメタノール0.9質量部を混合し、この混合物に、溶剤(D)として、(D-1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1500質量部、(D-2)シクロヘキサノン650質量部及び(D-3)γ-ブチロラクトン40質量部を添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。表3に感放射線性樹脂組成物の配合処方を示す。
[0203]
(実施例2?25、比較例1?11)
感放射線性樹脂組成物を調製する各成分の組成を表7及び表8に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物(実施例2?25、比較例1?11)を得た。」
キ 上記オの[0200][表7]の記載からみて、実施例19の感放射線性樹脂組成物は、樹脂としてA-1、酸発生剤としてB-2、酸拡散抑制剤として[0195][化24]のC-11、溶剤としてD-1、D-2及びD-3を配合して調製されたものであるといえる。
ク 上記アないしキからみて、引用例2には、
「酸解離性基を有する重合体(A)と、感放射線性の酸発生剤(B)と、酸拡散抑制剤(C)と、を含有し、前記重合体(A)として、下記一般式(a-1)で示される繰り返し単位(a-1)を有する重合体を含有し、前記酸拡散抑制剤(C)として、塩基(C-1)及び光分解性塩基(C-2)のうちの少なくとも一種の塩基を含有する感放射線性樹脂組成物であって、
光分解性塩基(C-2)に相当する化合物として、下記式(C-11)で表される化合物を含有すること。

[化1]

〔一般式(a-1)中、R^(1)は相互に独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、Rは一般式(a’)で示される1価の基であり、R^(19)は相互に独立して、水素原子、炭素数1?5の鎖状炭化水素基を示し、Aは単結合、炭素数が1?30である2価の鎖状炭化水素基、炭素数が3?30である2価の脂環式炭化水素基又は炭素数が6?30である2価の芳香族炭化水素基を示し、m及びnは0?3の整数(但し、m+n=1?3)を示す。一般式(a’)の炭酸エステル環が一般式(a-1)に示される第1の結合に加えて、Aに結合される第2の結合を有し、前記第1の結合及び前記第2の結合を含む環構造が形成されていてもよい。〕

」(以下「引用例2の記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分である(A)成分」、「露光により酸を発生する酸発生剤成分である(B)成分」及び「ポジ型レジスト組成物」は、本願発明の「樹脂成分(A1)」、「露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)」及び「ポジ型レジスト組成物」に相当する。
イ 引用発明の「酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)」は、上記3(1)ウからみて、「アクリル酸エステル」がα位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸エステルのほか、α位の炭素原子に置換基(水素原子以外の原子または基)が結合しているものも含むものであるから、本願発明の「α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって酸解離性溶解抑制基を含む構成単位(a1)」に相当する。
ウ 引用発明において、「一般式(a0-1)で表される構成単位(a0)」は、一般式(a0-1)からみて、α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であることは当業者に自明であるとともに、一般式(a0-1)中、R^(1)は水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり、R^(2)は2価の連結基であり、R^(3)は、その環骨格中に-SO_(2)-を含む環式基であり、具体的に用いられている高分子化合物1を構成する構成単位のうち、モル比として「l」が付されている構成単位に対応し、該構成単位は本願発明の実施例でも用いられている共重合体(A1-1-1)、(A1-2-1)に含まれる構成単位(左から2番目の構成単位)と一致するものであるから、引用発明の「一般式(a0-1)で表される構成単位(a0)」は、本願発明の「α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって-SO_(2)-含有環式基を含む構成単位(a0)」に相当する。
エ 引用発明の「構成単位(a5)」は、本願発明の「一般式(a5-1)【化1】

[式中、Rは水素原子、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のハロゲン化アルキル基であり、Y^(5)は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、Zは1価の有機基である。aは1?3の整数であり、bは0?2の整数であり、かつ、a+b=1?3である。c、d、eはそれぞれ独立して0?3の整数である。]で表される構成単位(a5)」に相当する。
また、引用発明において、仮に「樹脂成分(A1)(高分子化合物(A1))」に「構成単位(a5)」が含まれていないとしても、具体的に用いられている高分子化合物1を構成する構成単位のうち、モル比として「m」が付されている構成単位は、-CH_(2)-C(=O)-CH_(2)-C(=O)-の部分が本願発明の「一般式(a5-1)」の「Y^(5)」に対応し、その他の部分も本願発明の「一般式(a5-1)」を満たすといえるから、引用発明の「高分子化合物1」は本願発明の「一般式(a5-1)で表される構成単位(a5)」を備えているといえる。
オ 引用発明の「酸発生剤成分(B)(露光により酸を発生する酸発生剤成分である(B)成分)」は、具体的には(B)-1であり、本願発明の化合物(C1)とは異なるものであるから、本願発明の「酸発生剤成分(B)」と、「化合物(C1)を除く」点で一致する。
カ 引用発明は、「樹脂成分(A1)(酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分である(A)成分)」、および「露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(露光により酸を発生する酸発生剤成分である(B)成分)」を含有する「ポジ型レジスト組成物(ポジ型レジスト組成物)」であって、「樹脂成分(A1)」が、「構成単位(a0)(一般式(a0-1)で表される構成単位(a0))」、「構成単位(a1)(酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1))」及び「構成単位(a5)(一般式(a5)で表される構成単位(a5))」を有する高分子化合物(A1)を含有するものであるから、引用発明の「ポジ型レジスト組成物」と、本願発明の「ポジ型レジスト組成物」とは、「α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって酸解離性溶解抑制基を含む構成単位(a1)、α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって-SO_(2)-含有環式基を含む構成単位(a0)、及び、一般式(a5-1)で表される構成単位(a5)を有する樹脂成分(A1)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(ただし、前記化合物(C1)を除く)とを含有するポジ型レジスト組成物。」である点で一致する。
キ 上記アないしカから、本願発明と引用発明とは、
「α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって酸解離性溶解抑制基を含む構成単位(a1)、α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって-SO_(2)-含有環式基を含む構成単位(a0)、及び、下記一般式(a5-1)で表される構成単位(a5)を有する樹脂成分(A1)と、
露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(ただし、前記化合物(C1)を除く)とを含有するポジ型レジスト組成物。
【化1】

[式中、Rは水素原子、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のハロゲン化アルキル基であり、Y^(5)は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、Zは1価の有機基である。aは1?3の整数であり、bは0?2の整数であり、かつ、a+b=1?3である。c、d、eはそれぞれ独立して0?3の整数である。]」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
本願発明では、下記一般式(c1)で表される化合物(C1)を含有するのに対し、
【化2】

[式中、Rは水素原子、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のハロゲン化アルキル基であり、Y^(1)は2価の脂肪族炭化水素基であり、R^(1)は水素原子、フッ素原子、アルキル基又はフッ素化アルキル基である。pは1?10の整数を表す。A^(+)は有機カチオンを表す。]
引用発明では、前記化合物(C1)を含有していない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
(1)レジスト材料に、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められることは技術常識(上記3(1)イ【0003】)であり、引用発明は、更なるリソグラフィー特性の向上(上記3(1)【0005】)を目的としたものである。

(2)引用例2の記載事項は、酸拡散抑制剤(C)を含むことにより、露光により酸発生剤から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制するものであり、このような酸拡散抑制剤(C)を配合することにより、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上し、またレジストとしての解像度が更に向上するとともに、露光から露光後の加熱処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られるものである(上記3(2)イ)。

(3)上記(2)からみて、引用例2の記載事項の酸拡散抑制剤は、酸発生剤から生じる酸の拡散現象を制御するものであるから、該酸拡散抑制剤を公知の感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)に含有させ得るものであり、上記(1)のとおり、引用発明は、解像性等のリソグラフィー特性の更なる向上を目的とするものであるから、引用発明において、酸発生剤から発生される酸の拡散現象を抑制し、解像度等のリソグラフィー特性を更に向上させるために、引用例2の記載事項の酸拡散抑制剤(C)、すなわち、(C-11)で表される化合物を適用して、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が引用例2の記載事項の基づいて容易になし得たことである。

(4)本願発明の奏する効果は、引用発明1の奏する効果、引用例2の記載事項の奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。

(5)したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(6)なお、審判請求人は、審判請求書において、実施例1と新たに提示した追加比較例及び追加参考例と比較することにより、「すなわち、構成単位(a1)、(a0)及び(a5)を全て有する共重合体と、(C1)成分と、を組み合わせることによって、ラフネスが格段に低減した良好な形状のレジストパターンを形成できることが分かります。本願発明の効果は、構成単位(a1)、(a0)及び(a5)を全て有する特定の樹脂成分(A1)と、(C1)成分と、を併用したことによる相乗効果であることは明白であり、当業者の予測を超えた格別顕著な効果です。」(審判請求書10頁下から11行?6行)と主張する。
しかしながら、構成単位(a0)を有することでLWRが向上することは、本願の願書に最初に添付された明細書(特に「【0070】・・・構成単位(a0)は、-SO_(2)-含有環式基を含むことにより、当該(A1)成分を含有するポジ型レジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜の基板への密着性を高める。また、感度、解像性、露光余裕度(ELマージン)、LWR(ラインワイズラフネス)、マスク再現性等のリソグラフィー特性の向上に寄与する。」、「【0095】・・・(A1)成分中の構成単位(a0)の割合は、当該(A1)成分を含有するレジスト組成物を用いて形成されるレジストパターン形状が良好となり、ELマージン、LWR、マスク再現性等のリソグラフィー特性にも優れることから、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、1?60モル%であることが好ましく、3?55モル%がより好ましく、5?50モル%がさらに好ましく、5?45モル%が最も好ましい。」)及び特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)に記載されているが、当初明細書等(特に【0278】?【0299】)には、構成単位(a1)、(a0)及び(a5)を全て有する共重合体と(C1)成分とを組み合わせた実施例と、該実施例とは(C1)成分を含まない点だけで相違する比較例と、を比較した評価しか記載しておらず、構成単位(a0)及び(a5)を併用した樹脂成分を用いることで、構成単位(a0)と(a5)との相乗効果により、構成単位(a0)及び(a5)を併用していない樹脂成分を用いた場合と比べてより一層LWRが向上することは、当初明細書等に記載されていない。
してみると、審判請求人の主張は、本願発明の効果が本願の出願時点で把握されていたものではなく、審判請求の時点で新たに後付けされたものであるから、採用することはできない。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例1に記載された発明及び引用例2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-06 
結審通知日 2015-10-13 
審決日 2015-10-26 
出願番号 特願2010-155701(P2010-155701)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石附 直弥清水 裕勝  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 鉄 豊郎
本田 博幸
発明の名称 ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 松本 将尚  
代理人 宮本 龍  
代理人 志賀 正武  
代理人 飯田 雅人  

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