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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F21S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S
管理番号 1308847
審判番号 不服2014-24108  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-27 
確定日 2015-12-14 
事件の表示 特願2011-215514号「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年4月25日出願公開、特開2013-77400号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月29日の出願であって、平成26年2月19日に手続補正書が提出され、平成26年6月12日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年8月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年9月5日付けで拒絶査定がされ、同査定の謄本は平成26年9月10日に請求人に送達された。
これに対して、平成26年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正書が提出された。


第2 平成26年11月27日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年11月27日の手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成26年11月27日の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
なお、下線部は補正箇所を示す。
「基板とこの基板に実装された発光素子とを有する細長い光源部と;
光源部の前面側を覆い、両端に開口を備えた絶縁性を有する細長い光拡散透光性のカバー部材と;
光源部の基板の背面側が直接接触するように設けられる配設部を有し、カバー部材が取付けられる細長い装置本体と;
カバー部材の開口を閉塞するように取付けられ、光源部の発光を装置本体の端部前面側まで伝導する光拡散透光性の蓋体と;
を具備し、背面側が天井面に向くように設けられる照明装置であって、
カバー部材には光源部の基板及び装置本体の端縁部よりも外側に延出するとともに、少なくとも一部の部位が天井面に向くように形成され、天井面にも光源部からの光を放射する拡散透過部が形成されていることを特徴とする照明装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成26年8月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「基板とこの基板に実装された発光素子とを有する細長い光源部と;
光源部の前面側を覆い、両端に開口を備えた絶縁性を有する細長い光拡散透光性のカバー部材と;
光源部の基板が直接接触するように設けられる配設部を有するカバー部材が取付けられる細長い装置本体と;
カバー部材の開口を閉塞するように取付けられ、光源部の発光を装置本体の端部前面側まで伝導する光拡散透光性の蓋体と;
を具備する照明装置であって、
カバー部材には光源部の基板及び装置本体の配設部よりも外側に位置するように形成された装置本体が設置される側にも光源部からの光を放射する拡散透過部が形成されていることを特徴とする照明装置。」

2 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無
上記本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「照明装置」について、「基板とこの基板に実装された発光素子とを有する細長い光源部と;光源部の前面側を覆い、両端に開口を備えた絶縁性を有する細長い光拡散透光性のカバー部材と;光源部の基板が直接接触するように設けられる配設部を有するカバー部材が取付けられる細長い装置本体と;カバー部材の開口を閉塞するように取付けられ、光源部の発光を装置本体の端部前面側まで伝導する光拡散透光性の蓋体と;を具備する照明装置」という事項を、「基板とこの基板に実装された発光素子とを有する細長い光源部と;光源部の前面側を覆い、両端に開口を備えた絶縁性を有する細長い光拡散透光性のカバー部材と;光源部の基板の背面側が直接接触するように設けられる配設部を有し、カバー部材が取付けられる細長い装置本体と;カバー部材の開口を閉塞するように取付けられ、光源部の発光を装置本体の端部前面側まで伝導する光拡散透光性の蓋体と;を具備し、背面側が天井面に向くように設けられる照明装置」という事項として、「照明装置」の「光源部」と「天井面」との関係を限定し、さらに、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「拡散透過部」についての「カバー部材には光源部の基板及び装置本体の配設部よりも外側に位置するように形成された装置本体が設置される側にも光源部からの光を放射する」という事項を「カバー部材には光源部の基板及び装置本体の端縁部よりも外側に延出するとともに、少なくとも一部の部位が天井面に向くように形成され、天井面にも光源部からの光を放射する」という事項として、「拡散透過部」の形状を限定するものであって、これらの限定事項によって、天井面にも光源部からの光を放射することを限定するものであり、かつ、当該補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記事項は、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであるので、上記本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

1.本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

2.刊行物に記載の事項及び発明
(1)刊行物に記載の事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2011-14317号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で加筆した。以下、同様である。
(1a)
「【0023】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る照明装置100の模式的分解斜視図である。図2は、本発明に係る照明装置100の模式的正面図である。図3は、図2の III-III 線による模式的断面図である。図4は、本発明に係る照明装置100の模式的平面図である。
【0024】
図中1は、指向性を有する光源本体としてのLEDである。LED1は、例えば、LED素子と、該LED素子を封止し、蛍光体が分散された封止樹脂と、入力端子及び出力端子とを備えてなる表面実装型LEDである。なお、LED1の配光特性は、ランバート分布であり、LED1から出射される光は、LED1の光軸となす角度が90°以下の範囲に含まれ、指向角は約120°である。」
(1b)
「【0025】
このLED1は、矩形状をなすプリント配線基板であるLED基板11に実装してある。LED基板11の一面11aには、複数のLED1,1…が等間隔にマトリクス状に配列して実装してある。LED基板11には、複数のLED1,1…間を通電する配線パターン(図示せず)、LED1,1…に一定の電流を流すための制限抵抗(図示せず)、基板コネクタ12,12が設けてある。そして、後述する電源モジュールからの電線、及びLED基板11,11…間を接続する電線が、LED基板11,11…上の基板コネクタ12,12…に接続してある。矩形状の光源は、これら複数のLED1,1…と、該LED1,1…が実装されたLED基板11とを備えてなる。」
(1c)
「【0027】
この保持部材2の保持板部21の一面21aには、複数(図において4つ)のLED基板11,11…が、他面11bの側が保持板部21の一面21aの側になるように、光源(LED1,1…及びLED基板11)の長さ方向に一連になるように、ネジにより固定して取付けてある。これにより、複数のLED基板11,11…により構成される発光面が細長い一連の発光面となる。なお、LED基板11及び保持板部21間には、伝熱シート又はグリースが介装してあることが望ましい。」
(1d)
「【0028】
各側壁22,22の長手方向の両端部には、ネジ穴22a,22aが夫々設けてある。また、側壁22には、ネジ穴22a,22aの内側に適長離隔して貫通穴22b,22b…が設けてある。
【0029】
保持板部21と側壁22,22との連設部には、保持板部21に略平行をなすように外側に延設され、延設端が二股に分かれてなる係合溝23,23が側壁22,22の長手方向に沿って形成してある。なお、この係合溝23の横断面形状は、図3に示すように、L字状をなしている。
【0030】
この係合溝23,23には、LED1,1…からの光を透過する透光性カバー3が係合させてある。透光性カバー3は、例えば、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製である。透光性カバー3は、矩形板部31と、該矩形板部31の長辺側の縁部に立設された側壁部32,32と、該側壁部32,32の矩形板部31の反対側の端部から該矩形板部31に平行に内向きに延設され、延設端から側壁部32に平行に延設されてなる係合部33,33とを備えている。指向性を有するLED1,1…から出射した光は、透光性カバー3の矩形板部31及び側壁部32,32により一部が反射されるともに、他の部分が拡散されつつ透過する。この結果、透光性カバー3の矩形板部31及び側壁部32,32が、LED1,1…の光出射方向とは異なる方向にも出射可能とする出射部、及び指向性を有するLED1,1…から出射した光を室内等の照明装置の主たる照明空間に加えて、天井等の取付対象を明るく照明することを可能とするための配光部として機能する。なお、この係合部33の横断面形状は、図3に示すように、L字状であり、係合溝23に整合して形成してある。この透光性カバー3は、係合部33,33を係合溝23,23に係合させて保持部材2に取付けてある。これにより透光性カバー3は、光源本体であるLED1,1…が保持される保持部材2の一面(保持部分)21aに対向する面を含み、該面から一面21aの周縁部に至るLED1,1…の周囲を覆うように、保持部材2に取付けられることになる。なお、本実施の形態においては、透光性カバー3の形状を横断面形状がU字状になるようにしてあるが、LED1,1…の光出射側を覆い、LED1,1…の光出射位置近傍まで覆うようにしてあればよく、傾斜又は湾曲する面を有していてもよい。」
(1e)
「【0031】
保持部材2及び透光性カバー3の長手方向の両端には、保持部材2及び透光性カバー3により包囲される空間を閉止するサイドカバー4,4が設けてある。サイドカバー4は、透光性カバー3と同一の材料製であり、例えば、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製である。サイドカバー4は、透光板部41と、該透光板部41に交叉する方向に設けられ、締結部材であるネジ25,25が挿通される貫通孔42a,42aを有する被係合部である取付板部42,42とを備えている。サイドカバー4,4は、透光性カバー3が取付けられた保持部材2の長手方向の端部から外嵌され、貫通孔42a,42a…にネジ25,25…を挿通させ、保持部材2の側壁22,22に設けられたネジ穴22a,22a…に螺合することにより、保持部材2に固定される。なお、ネジ25,25…は、側壁22,22の内側に若干突出させてある。
【0032】
以上のように一体化されてなる照明体としての光源モジュール10は、取付部材であるプレート5に取付けられる。プレート5は、金属製であり、例えば鉄製である。プレート5は、矩形板部51と、該矩形板部51の長辺側の縁部に立設された互いに対向する2つの傾斜板部である2つの側壁52,52とを備えている。これら2つの側壁52,52は、前述した保持部材2の側壁22の傾きθと略同一になるように、矩形板部51から側壁52の端部に向けて近接する方向に、矩形板部51の垂線とθ(例えば、10°)の角度をなして傾斜するように設けてある。なお、この側壁52の高さ(矩形板部51から側壁52の端部までの長さ)は、前述した保持部材2の側壁22と同様に、後述するネジ26,26…を取り付けることが可能な範囲内にて、可能な限り低くしてあることが望ましい。なお、側壁52の傾きθは、側壁52の高さを低くした場合においても、ネジ26,26…をドライバ等の工具にて締付け作業が行いやすいように、前述した保持部材2の側壁22と同様に、設定してある。」
(1f)
「【0040】
以上のように構成された照明装置100において、外部電源による電力の供給に伴い、電源モジュール6の電源回路部により直流電圧に変換及び整流され、調光回路部により所定の電流及び/電圧の電力が光源モジュール10に供給され、LED1,1…が所定の調光率にて点灯する。そして、LED1,1…から出射される光が透光性カバー3及びサイドカバー4,4により適宜拡散されて照明装置100の外部に出射されることになる。透光性カバー3及びサイドカバー4,4を、本実施の形態の如く、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製とすることにより、指向性を有するLED1,1…から出射した光は、透光性カバー3の矩形板部31及び側壁部32,32、並びにサイドカバー4,4により一部が反射されるともに、他の部分が拡散されつつ透過する。この結果、LED1,1…の光出射方向とは異なる方向にも出射することができ、照明装置100が取付けられる取付対象である天井110の方向まで配光を広げることができる。即ち、透光性カバー3(及びサイドカバー4,4)を前述の如く形成して設けるという簡易な構造により、室内等の照明装置の主たる照明空間に加えて、天井110を明るく照明することが可能となる。換言すると、透光性カバー3の矩形板部31及び側壁部32,32、並びにサイドカバー4,4が、LED1,1…の光出射方向とは異なる方向にも出射可能とする出射部、及び指向性を有するLED1,1…から出射した光を室内等の照明装置の主たる照明空間に加えて、天井等の取付対象を明るく照明することを可能とするための配光部として機能する。なお、透光性カバー3及びサイドカバー4,4は、本実施の形態においては、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製としているが、これに限定されず、光拡散性を有する材料製であればよく、また、LED1,1…から出射した光を適宜拡散又は反射させることにより、LED1,1…の光出射方向とは異なる方向にも出射可能に構成してあればよい。」

(2)刊行物に記載された発明
上記の(1a)?(1f)及び図1?4から、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数のLED1,1…が実装された複数のLED基板11,11…により構成される発光面が細長い一連の発光面となる、複数の矩形状の光源と、
LED1,1…からの光を透過し、矩形板部31と該矩形板部31の長辺側の縁部に立設された側壁部32,32と係合部33,33とを備え、長手方向の両端には空間を備えた、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製である、透光性カバー3と、
保持部材2の保持板部21の一面21aには、複数のLED基板11,11…が、他面11bの側が保持板部21の一面21aの側になるように、光源の長さ方向に一連になるように、ネジにより固定して取付けてあり、透光性カバー3が、上記係合部33,33を保持部材2の係合溝23,23に係合させて取付けてある、保持部材2と、
保持部材2及び透光性カバー3の長手方向の両端に、保持部材2及び透光性カバー3により包囲される空間を閉止するように設けてある、透光性カバー3と同一の材料製の拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製である、サイドカバー4,4と、
を具備する照明装置100であって、
透光性カバー3及びサイドカバー4,4を、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製とすることにより、指向性を有するLED1,1…から出射した光は、透光性カバー3の矩形板部31及び側壁部32,32、並びにサイドカバー4,4により一部が反射されるともに、他の部分が拡散されつつ透過し、LED1,1…の光出射方向とは異なる方向にも出射することができ、照明装置100が取付けられる取付対象である天井110の方向まで配光を広げ、天井110を明るく照明する、照明装置100。」

3.対比
(1)本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「複数のLED1,1…が実装された複数のLED基板11,11…」は、本願補正発明の「基板とこの基板に実装された発光素子」に相当する。
そうすると、引用発明の「複数のLED1,1…が実装された複数のLED基板11,11…により構成される発光面が細長い一連の発光面となる、複数の矩形状の光源」は、本願補正発明の「基板とこの基板に実装された発光素子とを有する細長い光源部」に相当する。
(イ)引用発明の「透光性カバー3」は、「LED1,1…からの光を透過し、矩形板部31と該矩形板部31の長辺側の縁部に立設された側壁部32,32と係合部33,33とを備え」ている構成を有しており、この構成について刊行物1の図1及び3を参照すると、引用発明の「透光性カバー3」は、「光源部(複数のLED1,1…が実装された複数のLED基板11,11…により構成される発光面が細長い一連の発光面となる、複数の矩形状の光源)の前面側を覆い、細長い形状」であるといえる。
引用発明の「透光性カバー3」は、「長手方向の両端には空間を備えた」ものであるので、「両端に開口を備えた」ものといえる。
引用発明の「透光性カバー3」は、「拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製である」から、「絶縁性を有する光拡散透光性」であるといえる。
そうすると、引用発明の「LED1,1…からの光を透過し、矩形板部31と該矩形板部31の長辺側の縁部に立設された側壁部32,32と係合部33,33とを備え、長手方向の両端には空間を備えた、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製である、透光性カバー3」は、本願補正発明の「光源部の前面側を覆い、両端に開口を備えた絶縁性を有する細長い光拡散透光性のカバー部材」に相当する。
(ウ)引用発明の「複数のLED基板11,11…」の「他面11b」は、本願補正発明の「光源部の基板の背面」に相当する。
引用発明の「光源の長さ方向に一連になるように」は、本願補正発明の「細長い」に相当する。
引用発明の「保持部材2の保持板部21」は、本願補正発明の「配設部」に相当する。
そうすると、引用発明の「保持部材2の保持板部21の一面21aには、複数のLED基板11,11…が、他面11bの側が保持板部21の一面21aの側になるように、光源の長さ方向に一連になるように、ネジにより固定して取付けてあり、透光性カバー3が、上記係合部33,33を保持部材2の係合溝23,23に係合させて取付けてある、保持部材2」は、本願補正発明の「光源部の基板の背面側が直接接触するように設けられる配設部を有し、カバー部材が取付けられる細長い装置本体」に相当する。
(エ)引用発明の「サイドカバー4,4」は、「保持部材2及び透光性カバー3の長手方向の両端に、保持部材2及び透光性カバー3により包囲される空間を閉止するように設けてある」から、「カバー部材の開口を閉塞するように取付けられ」ているといえる。
引用発明の「サイドカバー4,4」は、「透光性カバー3と同一の材料製の拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製である」から、透光性カバー3と共に光を拡散させることで伝導するものであり、かつ、透光性であるので、「光源部の発光を装置本体の端部前面側まで伝導する光拡散透光性の蓋体」といえる。
そうすると、引用発明の「保持部材2及び透光性カバー3の長手方向の両端に、保持部材2及び透光性カバー3により包囲される空間を閉止するように設けてある、透光性カバー3と同一の材料製の拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製である、サイドカバー4,4」は、本願補正発明の「カバー部材の開口を閉塞するように取付けられ、光源部の発光を装置本体の端部前面側まで伝導する光拡散透光性の蓋体」に相当する。
(オ)引用発明の「照明装置100」は、刊行物1の図3から明らかに、背面側が天井面に向くように設けられているといえるから、本願補正発明の「背面側が天井面に向くように設けられる照明装置」に相当する。
(カ)引用発明は、「指向性を有するLED1,1…から出射した光は、透光性カバー3の矩形板部31及び側壁部32,32、並びにサイドカバー4,4により一部が反射されるともに、他の部分が拡散されつつ透過し、LED1,1…の光出射方向とは異なる方向にも出射することができ、照明装置100が取付けられる取付対象である天井110の方向まで配光を広げ、天井110を明るく照明する」から、「透光性カバー3の側壁部32,32」は、「天井面にも光源部からの光を放射する」といえる。
そうすると、引用発明の「透光性カバー3及びサイドカバー4,4を、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製とすることにより、指向性を有するLED1,1…から出射した光は、透光性カバー3の矩形板部31及び側壁部32,32、並びにサイドカバー4,4により一部が反射されるともに、他の部分が拡散されつつ透過し、LED1,1…の光出射方向とは異なる方向にも出射することができ、照明装置100が取付けられる取付対象である天井110の方向まで配光を広げ、天井110を明るく照明する」ことと、本願補正発明の「カバー部材には光源部の基板及び装置本体の端縁部よりも外側に延出するとともに、少なくとも一部の部位が天井面に向くように形成され、天井面にも光源部からの光を放射する拡散透過部が形成されている」こととは、「カバー部材には天井面にも光源部からの光を放射する拡散透過部が形成されている」限りにおいて共通する。

(2)以上より、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「基板とこの基板に実装された発光素子とを有する細長い光源部と;
光源部の前面側を覆い、両端に開口を備えた絶縁性を有する細長い光拡散透光性のカバー部材と;
光源部の基板の背面側が直接接触するように設けられる配設部を有し、カバー部材が取付けられる細長い装置本体と;
カバー部材の開口を閉塞するように取付けられ、光源部の発光を装置本体の端部前面側まで伝導する光拡散透光性の蓋体と;
を具備し、背面側が天井面に向くように設けられる照明装置であって、
カバー部材には天井面にも光源部からの光を放射する拡散透過部が形成されている照明装置。」
<相違点>
「天井面にも光源部からの光を放射する拡散透過部」が、本願補正発明では、「光源部の基板及び装置本体の端縁部よりも外側に延出するとともに、少なくとも一部の部位が天井面に向くように形成され」ているのに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点。

4.判断
(1)以下、相違点について検討する。
(ア)天井に取り付けられる、光拡散透光性のカバーを備えるLED装置において、天井面も明るくするために、光拡散透光性のカバー部材の側部の拡散透過部の形状を、光源部の基板及び装置本体の端縁部よりも外側に延出するとともに、少なくとも一部の部位が天井面に向くように形成することは、周知の技術事項(例えば、特開2010-140797号公報の段落【0035】,【0045】?【0048】及び図3、特開2007-27072号公報の段落【0005】,【0012】及び図1?4、特開2011-103197号公報の段落【0018】?【0020】,【0043】?【0044】及び図4,9,10,14、特開2009-117160号公報の段落【0022】及び図1?2、特表2011-513913号公報の段落【0092】?【0094】及び図9?13等参照。)であるといえる。
(イ)引用発明も上記の周知の技術事項も、天井に取り付けられる、拡散透過カバーを備えるLED装置という同じ技術分野に属するものであり、かつ、天井面をも明るくするという照明の機能においても共通するものであるので、上記の周知の技術事項を引用発明に適用して、引用発明の「天井面にも光源部からの光を放射する拡散透過部」を、光源部の基板及び装置本体の端縁部よりも外側に延出するとともに、少なくとも一部の部位が天井面に向くように形成され、天井面にも光源部からの光を放射する拡散透過部」とすることで、上記相違点に係る本願補正発明の構成に到ることは、格別に困難なことではない。
(2)そして、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別に顕著なものということはできない。
(3)したがって、本願補正発明は、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明(引用発明)及び周知の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成26年11月27日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成26年8月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2.刊行物に記載の事項及び発明
(1)刊行物に記載の事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、刊行物1の記載事項は、上記第2 3 2.(1)に示したとおりである。

(2)刊行物に記載された発明
上記刊行物1に記載された発明は、上記第2 3 2.(2)に示した「引用発明」のとおりである。

3.対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)本願発明は、本願補正発明から、上記第2 2 で述べた「照明装置」の「光源部」と「天井面」との関係の限定事項及び「拡散透過部」の形状の限定事項を、省いたものである。
(イ)本願発明と引用発明との対比は、上記第2 3 3.で述べたのと同様であるが、本願発明は、上記(ア)のとおりであり、「天井面」という用語が省かれているので、上記第2 3 3.(2)<一致点>の「天井面」は、本願発明と引用発明との対比では、「装置本体が設置される側」に相当するものとする。

(2)以上より、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「基板とこの基板に実装された発光素子とを有する細長い光源部と;
光源部の前面側を覆い、両端に開口を備えた絶縁性を有する細長い光拡散透光性のカバー部材と;
光源部の基板が直接接触するように設けられる配設部を有するカバー部材が取付けられる細長い装置本体と;
カバー部材の開口を閉塞するように取付けられ、光源部の発光を装置本体の端部前面側まで伝導する光拡散透光性の蓋体と;
を具備する照明装置であって、
カバー部材には装置本体が設置される側にも光源部からの光を放射する拡散透過部が形成されている照明装置。」
<相違点>
「装置本体が設置される側にも光源部からの光を放射する拡散透過部」が、本願発明は、「光源部の基板及び装置本体の配設部よりも外側に位置するように形成された」のに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点。

4.判断
以下、相違点について検討する。
(ア)引用発明の「側壁部32」は、拡散透過部であり、刊行物1の図3から明らかに、「光源部のLED基板11(基板)及び保持部材2の保持板部21(装置本体の配設部)よりも外側に位置するように形成された」ものといえる。
(イ)そうすると、引用発明は、本願発明の「カバー部材には光源部の基板及び装置本体の配設部よりも外側に位置するように形成された装置本体が設置される側にも光源部からの光を放射する拡散透過部が形成されている」構成を備えているといえる。
(ウ)よって、本願発明と引用発明との上記相違点は相違点とはいえず、本願発明は、引用発明と同一の発明である。
(エ)仮に、上記(ウ)の事項とまではいえないとしても、上記第2 3 4.で述べたとおりであるので、引用発明において、上記(イ)の構成を想到することは、当業者にとって格別に困難なことではない。


5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明(引用発明)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明(引用発明)及び周知の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-07 
結審通知日 2015-10-08 
審決日 2015-10-28 
出願番号 特願2011-215514(P2011-215514)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21S)
P 1 8・ 113- Z (F21S)
P 1 8・ 575- Z (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 良隆  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 出口 昌哉
櫻田 正紀
発明の名称 照明装置  
代理人 熊谷 昌俊  

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