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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1309063
審判番号 不服2014-14250  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-22 
確定日 2015-12-24 
事件の表示 特願2011- 69405「インターホンシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月 4日出願公開、特開2011-151846〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成18年5月19日を出願日とする特願2006-140766号(以下「原出願」という。)の一部を平成23年3月28日に新たな特許出願としたものであって,平成26年4月17日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月22日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ,平成27年5月28日付けで当審から拒絶理由が通知され,同年7月29日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成27年7月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。
「集合住宅の各住戸の屋外に設置されるドアホン子器と、前記住戸の屋内に設置されるとともに信号線を介して前記ドアホン子器と接続されるインターホン親機と、集合住宅の共用玄関に設置されるとともに各々通信線を介して前記集合住宅の各住戸に設置された前記インターホン親機と接続されるロビーインターホン装置とを備え、前記信号線を介して音声信号を授受することにより前記インターホン親機と前記ドアホン子器との間でインターホン通話が可能であり、かつ、前記通信線を介して前記インターホン親機と前記ロビーインターホン装置との間で前記音声信号を授受するインターホンシステムにおいて、
前記インターホン親機は、マイクロホン及びスピーカと、音声スイッチ又はエコーキャンセラの少なくとも一方を具備して拡声通話を行うものであり、
インターネットに接続する回線と前記インターホン親機とをインタフェースするネットワークインタフェース手段と、前記回線より前記インターネットを介して通話するIP電話機能並びに無線通信する無線通信機能を有する携帯型IP電話端末に対して前記インターホン親機と前記携帯型IP電話端末の無線通信機能とをインタフェースする無線インタフェース手段とを前記インターホン親機に備え、前記無線インタフェース手段を介して前記携帯型IP電話端末と前記ドアホン子器との間で前記音声信号を授受し、かつ、前記無線インタフェース手段を介して前記携帯型IP電話端末と前記ロビーインターホン装置との間で前記音声信号を授受することを特徴とするインターホンシステム。」

3 引用文献の記載と引用発明
(1)引用文献1の記載
当審の拒絶の理由に引用された,特開2004-336267号(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。

ア 「【0044】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態の呼び出し応対装置は、来訪者が操作するインターホン子機21と、インターホン子機21に接続され、来訪者の訪問を被訪問者に通知するインターホン親機23と、インターホン親機23との間で無線通信または公衆電話回線による通信を行う複数の携帯無線端末27と、公衆電話回線網25を介してインターホン親機23に接続される無線基地局29とを備えたインターホンシステムである。
【0045】
インターホン親機23および携帯無線端末27は、無線LAN機能を有する。これにより、インターホン親機23は、住居内などで各携帯無線端末27と無線通信を行い、または、公衆電話回線網25を介して無線基地局29に接続し、外出先の各携帯無線端末27と通信を行うものである。」

イ 「【0051】
インターホン子機21の音声処理部37は、インターホン子機21のマイク35、インターホン子機21のスピーカ36およびインターホン子機21の制御部38に電気的に接続され、インターホン子機21のマイク35で集音された来訪者の会話音声を処理して、インターホン子機21の制御部38およびインターホン子機21のインターホン送受信部39を介してインターホン親機23に音声信号を送信するとともに、インターホン親機23からインターホン子機21のインターホン送受信部39を介して送信された被訪問者の会話音声などの音声信号をインターホン子機21の制御部38を介して受信して処理し、インターホン子機21のスピーカ36から出力するものである。これにより、インターホン子機21とインターホン親機23間で、来訪者と応対者が会話できることとなる。
・・・(中略)・・・
【0053】
インターホン子機21のインターホン送受信部39は、インターホン子機21の制御部38およびインターホン親機23に電気的に接続され、インターホン子機21の制御部38の指示に従って、インターホン親機23と映像信号、音声信号および制御信号を送受信するものである。本実施の形態において、インターホン子機21のインターホン送受信部39とインターホン親機23は、有線通信であるが、これに限定されるものではなく、無線通信であっても良い。」

ウ 「【0055】
さらに、インターホン親機23は、各種操作ボタンを有する操作部51と、インターホン子機21からインターホン送受信部41および制御部47を介して入力された映像信号を処理する画像処理部53と、画像処理部53から出力された映像を表示する表示部54と、来訪者との会話音声や呼び出し音などの音声信号を処理する音声処理部57と、音声処理部57で処理された呼び出し音や会話音声などを出力するスピーカ56と、会話音声などを集音するマイク55と、無線LAN機能を有し、受信者が携行する携帯無線端末27との通信を行う無線送受信部58と、公衆電話回線網25を通じて携帯無線端末27との通信を行う公衆電話回線送受信部59(図中、「公衆電話線送受信部」と示される。)とをさらに備えている。」

エ 「【0066】
インターホン親機23の無線送受信部58は、インターホン親機23の制御部47に電気的に接続され、インターホン親機23の制御部47の指示に従って、居室内の携帯無線端末27と通信を行うものである。本実施の形態において、インターホン親機23の無線送受信部58は、無線LANであるが、これに限定されるものではなく、Bluetoothなど無線伝送方式を用いたものであっても良い。また、無線LANによる音声および映像の通信方法については、公知の技術を使用するものとする。」

オ 「【0071】
図4は、本発明の第1の実施の形態の呼び出し応対装置の携帯無線端末の概略構成ブロック図を示す。図4に示すように、携帯無線端末27は、無線LAN機能を有し、インターホン親機23の無線送受信部58および無線基地局29との間で無線信号の送受信を行う無線送受信部71と、各種操作ボタンを有する操作部72と、インターホン親機23から無線送受信部71を介して入力された映像信号を処理する画像処理部73と、画像処理部73から出力された映像を表示する表示部74と、会話音声や呼び出し音などの音声信号を処理する音声処理部77と、会話音声などを集音するマイク75と、呼び出し音や会話音声などを出力するスピーカ76と、携帯無線端末27の各ブロック間の信号の処理や制御を行う制御部79とをさらに備えている。
【0072】
携帯無線端末27の無線送受信部71は、携帯無線端末27の制御部79に電気的に接続され、携帯無線端末27の制御部79の指示に従って、居室内のインターホン親機23と、または外出先で無線基地局29に公衆電話回線網25を介して接続されたインターホン親機23と通信を行うものである。本実施の形態において、携帯無線端末27の無線送受信部71は、無線LANであるが、これに限定されるものではなく、Bluetoothなど無線伝送方式を用いたものであっても良い。また、無線LANによる音声および映像の通信方法については、公知の技術を使用するものとする。」

カ 「【0085】
図6に示すように、インターホン親機23の制御部47において、被訪問者が携行する携帯無線端末27の位置を検出する処理が行われ(ステップS21)、被訪問者が携行する携帯無線端末27が、無線LANの通信可能エリア内かエリア外かが判定される(ステップS22)。
【0086】
具体的には、例えば、インターホン親機23の制御部47により、インターホン親機23の無線送受信部58を介して、先に特定された被訪問者の携行する携帯無線端末27の電話番号に対して、ICMP(Internet Control Message Protocol)パケットを送信し、応答を待つ。被訪問者の携帯無線端末27からの応答が正常であれば、被訪問者の携帯無線端末27は、インターホン親機23との無線LANの通信可能エリア内であると判断される。一方、被訪問者の携帯無線端末27から応答がエラーであった場合、被訪問者の携帯無線端末27との無線LANの通信可能エリア外であると判断される。応答のエラーは、例えば、所定の応答待ち時間を予め設定しておき、応答待ち時間以上応答が無かった場合、応答エラーとする。
【0087】
このようにして、被訪問者が携行する携帯無線端末27が、無線LANの通信可能エリア内であると判断された場合(ステップS22:YES)、インターホン親機23の制御部47により、伝送路が無線LAN通信に決定され、インターホン親機23の無線送受信部58を介して、携帯無線端末27の呼び出しが行われる(ステップS23)。一方、被訪問者が携行する携帯無線端末27が、無線LANの通信可能エリア外であると判断された場合(ステップS22:NO)、インターホン親機23の制御部47により、伝送路が公衆電話回線に決定され、インターホン親機23の公衆電話回線送受信部59を介して携帯無線端末27の呼び出しが行われる(ステップS24)。
【0088】
以上のように、本発明の第1の実施の形態の呼び出し応対装置は、来訪者が被訪問者を呼び出す呼び出しボタン31と、来訪者の特徴情報として来訪者の映像を撮像する撮像部33と、複数の人物の特徴情報および、対応する複数の被訪問者の情報を関連付けて予め格納する人物情報データベース43と、来訪者の映像に基づいて、来訪者の特徴情報を取得し、得られた来訪者の特徴情報に基づいて、人物情報データベース43に格納された複数の人物の特徴情報の中から来訪者に該当する人物を認識するとともに、認識された人物の情報に基づいて、人物情報データベース43により関連付けられている少なくとも一人の被訪問者を特定する認識部45と、認識部45により特定された被訪問者に呼び出しを通知する制御部47とを備えているので、来訪者は、単一の呼び出しボタンを押すだけで目当ての被訪問者との直接対話が可能であるため、複数の被訪問者に対応した複数の個別呼び出しボタンが不要であり、そのため、来訪者が呼び出しボタンを押し間違えて誤った被訪問者を呼び出すことを防止できる。
【0089】
また、本実施の形態において、被訪問者が携行する携帯無線端末27を備えるとともに、インターホン親機23の制御部47が、インターホン親機23の認識部45により特定された被訪問者の携帯無線端末27に接続を切り替えるので、被訪問者が携行する無線通信機能を備えた携帯無線端末27に、自動的にインターホン子機21を接続可能であり、インターホン親機23から離れた場所や外出先でも来訪者に対応した被訪問者の応対が可能となる。」

(2) 引用発明
ア 上記(1)ア,イ及び図1によれば,引用文献1には,住居の外に設けられたインターホン子機と,住居内に設けられたインターホン親機とを備えるインターホンシステムが記載されている。
また,上記(1)イによれば,引用文献1には,インターホン子機のインターホン送受信部とインターホン親機は,有線通信で接続されていることが記載されている。
したがって,引用文献1において,住居の外に設けられたインターホン子機と,住居内に設けられ有線通信でインターホン子機と接続されるインターホン親機とを備えるインターホンシステムについて記載されているといえる。

イ 上記(1)イによれば,引用文献1には,インターホン子機のマイクで集音された来訪者の会話音声を処理して,インターホン子機のインターホン送受信部を介してインターホン親機に音声信号を送信するとともに,インターホン親機から送信された被訪問者の会話音声などの音声信号を受信することで,インターホン子機とインターホン親機の間で来訪者と対応者が会話できることが記載されている。
したがって,引用文献1において,有線通信で接続されて音声信号を送信及び受信することで,インターホン親機とインターホン子機の間で来訪者と対応者が会話できることについて記載されているといえる。

ウ 上記(1)ウによれば,引用文献1には,インターホン親機は,会話音声を集音するマイクと会話音声を出力するスピーカを備えていることが記載されている。
したがって,引用文献1において,インターホン親機は,マイクとスピーカを備えて会話を行うものであることが記載されているといえる。

エ 上記(1)オによれば,引用文献1には,無線基地局及び公衆電話回線網を介した通信機能並びにインターホン親機の無線送受信部との間で無線信号の送受信を行う無線LAN機能を有する携帯無線端末について記載されている。
また,上記(1)ウ及びエによれば,引用文献1には,インターホン親機は,無線LAN機能を有し,携帯無線端末との通信を行う無線送受信部を備えることについて記載されている。
したがって,引用文献1において,無線基地局及び公衆電話回線網を介した通信機能並びに無線信号の送受信を行う無線LAN機能を有する携帯無線端末に対して,インターホン親機と携帯無線端末の無線LAN機能との通信を行う無線送受信部をインターホン親機に備えることについて記載されているといえる。

オ 上記(1)カより,引用文献1には,インターホン親機の無線送受信部を介して被訪問者の携帯無線端末とインターホン子機が接続されて対話が可能となることについて記載されていると認める。
したがって,引用文献1において,インターホン親機の無線送受信部を介して携帯無線端末とインターホン子機とが接続されて対話が可能となることについて記載されているといえる。

カ 上記アないしオより,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「住居の外に設けられたインターホン子機と,住居内に設けられ有線通信で前記インターホン子機と接続されるインターホン親機とを備え,有線通信で接続されて音声信号を送信及び受信することで,前記インターホン親機と前記インターホン子機の間で来訪者と対応者が会話できるインターホンシステムにおいて,
前記インターホン親機は,マイクとスピーカを備えて会話を行うものであり,
無線基地局及び公衆電話回線網を介した通信機能並びに無線信号の送受信を行う無線LAN機能を有する携帯無線端末に対して,前記インターホン親機と前記携帯無線端末の前記無線LAN機能との通信を行う無線送受信部を前記インターホン親機に備え,前記インターホン親機の前記無線送受信部を介して前記携帯無線端末と前記インターホン子機とが接続されて対話が可能となることを特徴とするインターホンシステム。」

4 周知文献と周知技術
(1)周知文献
ア 周知文献1
当審の拒絶の理由に引用された,特開平11-168568号公報(以下「周知文献1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
・「【0038】(実施形態10)本実施形態は、図15に示すように、増設親機300にハンズフリー機能を付加したものである。スピーカ34とマイクロホン35とはハンドセット(通話部310に対応する)に組み込んである。増設親機300にはハンドセットが充電台400に装着されているか否かを検出する設置スイッチ47が設けられる。設置スイッチ47は制御部13に設けた通話切換処理部13eに接続され、増設親機300が充電台400に装着されているときにはハンズフリー通話が可能になり、ハンドセットが充電台400から外されているときにはハンドセットを手で持って通話することができるように、スピーカ34の出力を調節するとともにエコーやハウリングを抑制する処理を使用状態に適合するように切り換える。他の構成および動作は実施形態1と同様である。」

イ 周知文献2
当審の拒絶の理由に引用された,特開平11-275243号(以下「周知文献2」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
・「【0004】制御装置103は、両端末101、102の各スピーカ111、121より出力され、各マイク110、120に入力されるエコーパスに起因するハウリングを防止し、ラインL101を介して接続された両端末101、102間において、双方向のハンズフリー通話を成立させるために、入力される信号の信号レベルの大小により、下り方向、上り方向、何れか一方向の通話路を形成するボイススイッチ機能を備えている。」
・「【0009】送信アナログ信号S102を入力し、その信号レベルを検出した制御装置103は、上述の下り方向に形成された通話路を、端末102から端末101への上り方向の通話路に切り替えることから、入力検出された送信アナログ信号S102は、形成された通話路であるラインL101、端末101の端子T101を介して、スピーカアンプ113にて増幅され、スピーカ111より出力されることにより、ラインL101およびラインL101上に設けられる制御装置103を介する両端末101、102間において、双方向のハンズフリー通話が成立していた。」
・「【0012】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するため、本発明による拡声インターホン装置は、端末間をラインで接続した拡声インターホン装置であって、各端末において、マイク、スピーカはマイクアンプ、スピーカアンプを介してその入出力信号をそれぞれA/D、D/A変換するコーデックに接続され、下り信号としての受信信号と、上り信号としての送信信号およびエコーとして混入した受信信号とをデジタルで比較して送信信号、受信信号をそれぞれ下り方向、上り方向に通過させ、上り方向の混入した受信信号を抑圧するエコーキャンセラを介してコーデックをラインに接続することにより双方向のハンズフリー通話を行なうものである。
【0013】このような拡声インターホン装置によれば、ラインを介して接続される両端末間において、下り方向および上り方向で送受信される音声信号である受信信号および送信信号をデジタル信号で伝送させ、各信号に混入されるエコー成分(音響帰還成分)を抑圧(除去)して送受信させることにより、ハウリングを防止して双方向のハンズフリー通話を成立することができる」

ウ 周知文献3
当審の拒絶の理由に引用された,特開2003-16557号(以下「周知文献3」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
・「【0026】
【発明の実施の形態】(実施形態1)本実施形態の住宅情報盤システムの全体構成例を図2に示す。但し、従来例と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態のシステムは、集合住宅の共同玄関に設置されるロビーインターホン60と、集合住宅の管理室等に設置される警報監視盤80と、各住戸内に設置される住宅情報盤親機1A並びに住宅情報盤副親機1Bと、各住戸の戸外に設置されるドアホン子器50とを備える。また、従来例と同様に管理人室等には警報監視盤80とともに非常電源90及び放送設備91が設置され、それぞれ非常電源線L2及び音声出力線L3を介して各住戸の住宅情報盤親機1Aに接続される。そして、警報監視盤80と各住戸の住宅情報盤親機1Aが、通話音声や警報音等の音声信号とロビーインターホン60が具備するテレビカメラ68で撮像した映像信号を多重伝送する通信線La、呼出や警報等の制御信号を多重伝送する制御線Lbによって接続される。ここで、通信線La及び制御線Lbを合わせて情報幹線L1と呼ぶことにする。なお、本実施形態では映像信号を音声信号と多重伝送する構成を例示するが、映像信号を独立した映像伝送線で伝送する構成としても良い。
【0027】図3は本実施形態におけるロビーインターホン60並びに警報監視盤80の構成を示すブロック図である。ロビーインターホン60は、CPUを主構成要素とする信号処理部61と、テンキーや呼出釦等を具備する操作部62と、表示ランプや液晶ディスプレイを具備する表示部63と、制御線Lbを介して警報監視盤80との間で制御信号を送受信する伝送送受信部64と、マイクロホン65並びにスピーカ66と、マイクロホン65並びにスピーカ66を用いて住宅情報盤親機1Aや警報監視盤80との間で拡声通話を行うための通話制御部67と、CCDのような撮像素子を有するテレビカメラ68と、テレビカメラ68の出力を信号処理して映像信号を出力する映像信号処理部69と、通話制御部67から出力される音声信号と映像信号処理部69から出力される映像信号を多重化して通信線Laに送出するとともに通信線Laにより送られてくる音声信号を通話制御部67に出力する入出力処理部70とを備えている。」
・「【0031】また住宅情報盤親機1Aは、マイクロホン10及びスピーカ11と、CRTや液晶ディスプレイなどからなるモニタ部13と、ドアホン子器50又はロビーインターホン60からの映像信号を信号処理してモニタ部13に映像を表示させるとともに主制御部2から与えられる表示制御信号に応じて所定のシンボル(後述する)を表示(スーパーインポーズ)させる映像表示部14と、ドアホン子器50又はロビーインターホン60から多重化されて伝送される音声信号と映像信号を分離する信号分離部16と、2線-4線変換部15と、ドアホン子器50、警報監視盤80並びに住宅情報盤副親機1Bとの間で拡声同時通話を実現するための処理を行うとともにロビーインターホン60との間で拡声通話を実現するための処理を行う同時通話処理部17と、・・・(中略)・・・を備える。」
・「【0033】住宅情報盤親機1A(住宅情報盤副親機1Bも共通)の同時通話処理部17は、図5に示すようにマイクロホン10とスピーカ11の音響結合によって生じる音響エコーを消去する音響エコーキャンセラ35と、ドアホン子器50、ロビーインターホン60又は警報監視盤80における音響結合又は通信線Laを介した信号の回り込みによって生じる回線エコーを消去する回線エコーキャンセラ36と、音響エコーキャンセラ35及び回線エコーキャンセラ36の間に設けられ、音響エコー経路並びに回線エコー経路により形成される閉ループ(エコーパス)の一巡利得を低減してハウリングを抑制する音声スイッチ37と、音響エコーキャンセラ35及び回線エコーキャンセラ36に挟まれた送話信号並びに受話信号の信号経路上に各々設けられる利得制御機能付の送話側増幅器38及び受話側増幅器39とを有する。」

エ 周知文献4
当審の拒絶の理由に引用された,特開2004-260390号公報(以下「周知文献4」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
・「【0020】
図1のブロック図に示すテレビドアホン装置は、玄関に設置され、来訪者が住戸内に在室中の居住者(以下、ユーザーに同意とする。)を呼び出すための機能および呼出操作を行った来訪者を含む玄関の画像を撮像するための機能を有するカメラ付玄関子機1と、住戸内に設置され、子機ラインL1を介して接続されたカメラ付玄関子機1からの呼び出しを報知するための機能および当該カメラ付玄関子機にて撮像された画像等を表示/保存(録画)するための機能とともにインターネット接続機能を有するモニタ付親機2と、インターネット3と、モニタ付親機2の後述するLAN接続部12へと無線接続またはケーブルを介して有線接続されるLAN(Local Area Network)4と、電話回線網L2を介して接続されるインターネット3とLAN4との間のデータ伝送路を形成するためのインターネット接続機能を有するルータ5と、インターネット3へと接続され、原子時計の時刻を送信するためのNTP(Network Time Protocol)サーバ6と、インターネット3へと接続され、モニタ付親機2に保存された画像等を保存するための機能とともにインターネット3を介して後述する携帯端末8へのデータ転送機能を有するセンターサーバ7と、例えば、住戸内を不在としている外出中の居住者により携帯され、最寄りの基地局(図示せず)から電話回線網を介してインターネット3へと接続されるインターネット接続機能を有しており、センターサーバ7に保存された画像等を表示するための機能を有する携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Digital Assistants)等からなる携帯端末8とで構成されている。」
・「【0023】
図1のブロック図において、モニタ付親機2のCPU10の制御によりNTPサーバ6から原子時計の時刻を取得し、時計14にて計時される時刻を正確な時刻として補正するためには、LAN接続部12にLAN4、ルータ5、電話回線網L2を介してインターネット3を接続し、CPU10とNTPサーバ6との間のデータ伝送路(以下、第1のデータ伝送路という。)を形成する、またはモデム13に電話回線網L2を介してインターネット3を接続し、CPU10とNTPサーバ6との間のデータ伝送路(以下、第2のデータ伝送路という。)を形成する。」

オ 周知文献5
当審の拒絶の理由に引用された,特開2004-235881号(以下「周知文献5」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
・「【0014】
図2は、図1のインターホン装置を公衆回線に接続した状態を示すインターホンシステムの模式図であり、親機2のPHSカード接続端子35にはPHSネットワーク網N2に無線接続を可能とするPHSカード5が接続され、親機2はPHSネットワーク網N2に無線接続されている。このPHSネットワーク網N2はインターネット網N1に接続され、親機2はPHSネットワーク網N2を介してインターネット網N1に接続されている。また、LAN接続端子34にはルータ6を介してローカルネットワークN3が接続され、このローカルネットワークN3もインターネット網N1に接続され、親機2は双方の回線からインターネット網N1に接続されている。
そして、インターネット網N1には、報知音データを蓄積した専用サーバ7が接続され、更に報知音データを含む音データが蓄積されたパーソナルコンピュータ(以下、PCとする。)8が接続されている。尚、専用サーバ7は、インターホン装置の報知音に適するよう予め定めた所定のデータサイズに変換するデータ変換プログラムを有し、専用サーバ7にアップロードされた音データは所定のデータサイズに変換されて報知音データとして蓄積される。」

カ 周知文献6
当審の拒絶の理由に引用された,特開2002-344640号(以下「周知文献6」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
・「【0033】図6において、インターホン装置100は、室内親機30の連絡先メモリ43内に、インターネット303を介してVoIP(ボイスオーバーインターネットプロトコル)により相手の電話機に接続するサービスを提供するインターネット・サービス・プロバイダ(以下、ISP)にダイヤルアップ接続するためのISPの電話番号、ユーザIDおよびパスワードを予め登録設定しておくことができるようになっており、不在モード時に玄関子機10から送られてきた呼出信号を検出したときには、ISPを発呼して接続するとともに、連絡先メモリ43内の携帯電話機400の電話番号を送出して、VoIPに従う音声信号と映像信号が同時にやり取りを行うことができるので、玄関子機10との間での映像を見ながらドアホン通話をすることができるようになっている。
【0034】このように本実施形態においては、上述実施形態による作用効果に加えて、遠隔地に外出する場合でも、インターネット303を介する安価なインターネット電話によりドアホン通話をすることができる。」

キ 周知文献7
当審の拒絶の理由に引用された,特開2002-135434号公報(以下「周知文献7」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
・「【0018】また、不在設定しておくとモデム装置等のデータ変換装置45を起動して、ハードディスク上のデータベースを参照して、転送先を決定しこのデータ変換装置45に指令して外部接続するステップがはたらく。インターネット接続指示がデータベースに記述されていると、所定のプロバイダに接続を行い、その後自動手続きで子機を接続する。」
・「【0022】携帯電話等でも、インターネット接続可能であるものは、このような形態で会話を行うことが可能であるが、職場や学校などの固定コンピュータ上へ転送し会話できることは言うまでもない。」
・「【0035】図3のドアホンでは直接家主の携帯電話に接続したが、家主が必ずしも県内であるとは限らないし、外国に行っている可能性もある。現在では、携帯電話でも国際通話が可能であるが、料金は高い。そこで、インターネット電話を利用する。」

ク 周知文献8
当審の拒絶の理由に引用された,特開2004-207798号(以下「周知文献8」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
・「【0034】
またはIP電話のような定額電話を便ってもよい。例えば、家庭内に無線LANによるホームネットワークを形成することで、携帯電話機は、在宅中はホームネットワークに接続され、外出中は電気通信事業者の無線ネットワークに接続され、在宅/外出問わずモバイルIPによリインターフオン親機と接続可能な状態になるので、従来のインターフォン親機で行っていたような来客対応などの操作ができる。音声通話はIP電話のようなVoIPにより行う。」

ケ 周知文献9
特開2003-18642号(以下「周知文献9」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
・「【0048】前記において、データ通信端末10はPDAまたはノートブック型PCなどであって、屋内無線接続モジュールAと無線LANカードB(または無線パケット接続モジュール)を組み込んでおり、一つ以上の屋内システムID情報を格納している。そして、屋内ゲートウェイ100は屋内無線接続モジュールCを内蔵しており、自分の固有システムID、即ち屋内システムID情報が割り当てられている。
【0049】従って、データ通信端末10は屋外無線LAN網への接続時、無線LANカードBまたは無線パケット接続モジュール(図示せず)を利用するようになり、屋内ゲートウェイ100と無線通信を行う時には屋内無線接続モジュールAを利用するようになる。
【0050】ここで、屋内無線接続モジュールA、Cはブルートゥースモジュールまたは無線LAN接続モジュールまたは無線パケット接続モジュールの内の一つである。屋内ゲートウェイ100としては、HGと統合接続装備(IAD:integrated access device:以下‘IAD’と称する)などがあるが、HGは主に宅内に設置されて使用され、IADはビル、建物内に設置されて使用される。」
・「【0055】屋外で利用者がPDA10をパワーオン(ON)させれば、PDA10は初期化されて電源が印加される(S10)。すると、PDA10は屋内システムID情報が受信されるか否かを確認するようになるが、登録された屋内網システム情報が受信されないと屋外通信モードを設定し、屋外無線LAN網、インターネット、VoIPゲートウェイ60及びPSTN70を利用して遠隔地の着信者と通話をする。」

コ 周知文献10
当審の拒絶の理由に引用された,特開2000-295360号公報(以下「周知文献10」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
・「【0002】
【従来の技術】昨今、マンション等の集合住宅においては、その共同玄関に電気錠(オートロック)が設置される場合が多く、その解錠は住戸内に固定された既設機により行われる。即ち、居住者等は、各住戸内においては、来客等の入館に際し、共同玄関と結線され住戸内壁面等に固定された既設機での通話により、来客等を確認後、既設機の電気錠解錠釦の操作により電気錠を一時的に解錠し、来客等を入館させるよう構成されていた。先行例として、「特開平5-236553」号公報があるが、同号公報は、電気錠が設置された集合住宅等の共同玄関の操作盤等に装置を組込み、特定の無線送信機により、電気錠の解錠のみを行うものである。本発明は、これと異なり、住戸内において、共同玄関との通話および電気錠の解錠をコードレス子機により可能にし、通話前の住戸内の移動を不要にし、利便性を飛躍的に向上させるものである。」
・「【0006】図1に示すように本発明に関わるアダプターユニットUは、集合住宅等に設置されたオートロックシステムAの住戸内の既設機100の内外に容易に設置される部品群からなるアダプター600と、それを介して共同玄関との通話および電気錠の解錠を行う子機700、および充電器800により構成される。既設機100は集合住宅内の既設共用配線等を経由して、専用玄関子機500、共同玄関の共用制御盤200、共用操作盤300および電気錠400と接続されている。」
・「【0027】また呼出のチャイム音に対し、従前通り、住戸内利用者が、既設機100の受話器150で受けた場合、受話器150が外れ、突起670が離れる事で、スイッチ623がONになり、その導通をフック型スイッチ制御回路652が検知し、駆動部621に電流が供給される。これにより、上記と同様に既設機100内に取付けた各部品が機能し、共同玄関との通話が可能な状態となる。」

(2)当該技術分野における周知技術
ア 上記(1)アないしウの周知文献1,2及び3の記載にみられるように,「インターホンシステムにおいて,音声スイッチ又はエコーキャンセラを設けて拡声通話をすること。」は,周知の技術(以下「周知技術1」という。)であるといえる。

イ 上記(1)エ及びオの周知文献4及び5の記載にみられるように,「インターホンシステムの親機に,インターネットに接続する回線とインタフェースする手段を設けること。」は,周知の技術(以下「周知技術2」という。)であるといえる。

ウ 上記(1)カないしケの周知文献6,7,8及び9の記載にみられるように,「携帯端末が,インターネットに接続する回線よりインターネットを介して通話するIP電話機能を有すること。」は,周知の技術(以下「周知技術3」という。)であるといえる。

エ 上記(1)ウ及びコの周知文献3及び10の記載にみられるように,「集合住宅のインターホンシステムにおいて,各住戸に子機と親機を設け,集合住宅のロビーインターホンと親機を接続し,親機を介して集合住宅のロビーインターホンと通話を行うこと。」は,周知の技術(以下「周知技術4」という。)であるといえる。

5 本願発明と引用発明との対比,一致点及び相違点
(1)対比
ア 上記3(2)アによれば,引用発明における「インターホン子機」は,住居の外に設けられ,インターホン親機と接続されているから,本願発明における「ドアホン子器」に相当するといえる。
また,引用発明における「有線通信」が,信号線を介した接続を前提とすることは明らかであるから,本願発明における「信号線を介して」に相当する。
更に,引用発明における「音声信号を送信及び受信する」は,音声信号の受け渡しを行っていることは明らかであるから,本願発明における「音声信号を授受する」に相当する。
また,上記3(2)イによれば,引用発明における「来訪者と対応者が会話」は,インターホン子機のマイクで集音された来訪者の会話音声を処理して,インターホン子機のインターホン送受信部を介してインターホン親機に音声信号を送信するとともに,インターホン親機から送信された被訪問者の会話音声などの音声信号を受信することで,来訪者と対応者が会話を行っているから,本願発明における「インターホン通話」に相当するといえる。
そうすると,本願発明の「集合住宅の各住戸の屋外に設置されるドアホン子器と、前記住戸の屋内に設置されるとともに信号線を介して前記ドアホン子器と接続されるインターホン親機と、集合住宅の共用玄関に設置されるとともに各々通信線を介して前記集合住宅の各住戸に設置された前記インターホン親機と接続されるロビーインターホン装置とを備え、前記信号線を介して音声信号を授受することにより前記インターホン親機と前記ドアホン子器との間でインターホン通話が可能であり、かつ、前記通信線を介して前記インターホン親機と前記ロビーインターホン装置との間で前記音声信号を授受するインターホンシステム」と引用発明の「住居の外に設けられたインターホン子機と,住居内に設けられ有線通信で前記インターホン子機と接続されるインターホン親機とを備え,有線通信で接続されて音声信号を送信及び受信することで,前記インターホン親機と前記インターホン子機の間で来訪者と対応者が会話できるインターホンシステム」とは,後述する相違点4に係る構成を除き,「住戸の屋外に設置されるドアホン子器と,前記住戸の屋内に設置されるとともに信号線を介して前記ドアホン子器と接続されるインターホン親機とを備え,前記信号線を介して音声信号を授受することにより前記インターホン親機と前記ドアホン子器との間でインターホン通話が可能であるインターホンシステム」である点で共通するということができる。

イ 本願発明の「前記インターホン親機は、マイクロホン及びスピーカと、音声スイッチ又はエコーキャンセラの少なくとも一方を具備して拡声通話を行うもの」と引用発明の「前記インターホン親機は,マイクとスピーカを備えて会話を行うもの」とは,後述する相違点1に係る構成を除き,「前記インターホン親機は,マイクロホン及びスピーカと,を具備して通話を行うものであ」る点で共通するということができる。

ウ 上記3(2)エより,引用発明における「インターホン親機」の「無線送受信部」は,携帯無線端末の無線LAN機能を有する無線送受信部と通信を行うものであり,「無線LAN機能」が「無線通信機能」に含まれることは明らかであるから,本願発明の「無線インタフェース手段」に相当する。
また,引用発明における「無線基地局及び公衆電話回線網を介した通信機能」は,会話音声や呼び出し音を送受信して通話するものであるから,「公衆電話回線を用いた電話機能」と言い得ることは,当業者にとって明らかである。他方,本願発明の「前記回線」について,請求人は,平成27年7月29日付けの意見書において,「一般に、無線LANに対応した携帯端末は、無線LANのアクセスポイントとの間で無線通信を行い、無線LANのアクセスポイントは、通常、光ファイバ回線などの無線LANよりも高速な回線を介してインターネットに接続されることは、本願出願時においても技術常識であったと推定されます。つまり、携帯型IP電話端末も無線LANに対応した携帯端末ですから、無線LANのアクセスポイントを介してインターネットに接続されることは明らかであると考えます。」と主張しており,また,携帯型IP電話端末が,無線LANのアクセスポイントを介してインターネットに接続する回線にアクセスすることは,技術常識であるから,本願発明の「前記回線」は,一般的な「インターネットに接続する回線」であると認める。してみると,引用発明における「無線基地局及び公衆電話回線網を介した通信機能並びに無線信号の送受信を行う無線LAN機能を有する携帯無線端末」と,本願発明における「前記回線より前記インターネットを介して通話するIP電話機能並びに無線通信する無線通信機能を有する携帯型IP電話端末」とは,「回線を用いた電話機能並びに無線通信機能を有する携帯端末」である点で共通している。
そうすると,本願発明の「前記回線より前記インターネットを介して通話するIP電話機能並びに無線通信する無線通信機能を有する携帯型IP電話端末に対して前記インターホン親機と前記携帯型IP電話端末の無線通信機能とをインタフェースする無線インタフェース手段とを前記インターホン親機に備え」と引用発明の「無線基地局及び公衆電話回線網を介した通信機能並びに無線信号の送受信を行う無線LAN機能を有する携帯無線端末に対して,前記インターホン親機と前記携帯無線端末の前記無線LAN機能との通信を行う無線送受信部を前記インターホン親機に備え」とは,後述する相違点3に係る構成を除き,「回線を用いた電話機能並びに無線通信する無線通信機能を有する携帯端末に対して前記インターホン親機と前記携帯端末の無線通信機能とをインタフェースする無線インタフェース手段を前記インターホン親機に備え」る点で共通するということができる。

エ 上記3(1)イ,オ及びカより,引用発明において,インターホン子機とインターホン親機は音声信号を送受信し,インターホン親機と携帯無線端末は無線信号の送受信を行い,音声信号を処理しているから,引用発明における「対話」は,本願発明における「音声信号の授受」に相当するといえる。
そうすると,本願発明の「前記無線インタフェース手段を介して前記携帯型IP電話端末と前記ドアホン子器との間で前記音声信号を授受し、かつ、前記無線インタフェース手段を介して前記携帯型IP電話端末と前記ロビーインターホン装置との間で前記音声信号を授受する」と引用発明の「前記インターホン親機の前記無線送受信部を介して前記携帯無線端末と前記インターホン子機とが接続されて対話が可能となる」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「前記無線インタフェース手段を介して前記携帯端末と前記ドアホン子器との間で前記音声信号を授受」する点で共通するということができる。

(2)一致点及び相違点
上記(1)から,本願発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりである。
[一致点]
「住戸の屋外に設置されるドアホン子器と,前記住戸の屋内に設置されるとともに信号線を介して前記ドアホン子器と接続されるインターホン親機とを備え,前記信号線を介して音声信号を授受することにより前記インターホン親機と前記ドアホン子器との間でインターホン通話が可能であるインターホンシステムにおいて,
前記インターホン親機は,マイクロホン及びスピーカと,を具備して通話を行うものであり,
回線を用いた電話機能並びに無線通信する無線通信機能を有する携帯端末に対して前記インターホン親機と前記携帯端末の無線通信機能とをインタフェースする無線インタフェース手段を前記インターホン親機に備え,前記無線インタフェース手段を介して前記携帯端末と前記ドアホン子器との間で前記音声信号を授受することを特徴とするインターホンシステム。」

[相違点]
・相違点1
一致点の「前記インターホン親機は,マイクロホン及びスピーカと,を具備して通話を行うものであり」において,本願発明は,「音声スイッチ又はエコーキャンセラの少なくとも一方」を具備して「拡声通話」を行うものであるのに対し,引用発明では,上記のように「音声スイッチ又はエコーキャンセラの少なくとも一方」を具備して「拡声通話」を行うことについて特定されていない点。

・相違点2
一致点の「インターホン親機」において,本願発明では,「インターネットに接続する回線と前記インターホン親機とをインタフェースするネットワークインタフェース手段」を備えているのに対し,引用発明では,そのような「ネットワークインタフェース手段」を備えることについて特定されていない点。

・相違点3
一致点の「回線を用いた電話機能」について,本願発明は,「前記回線より前記インターネットを介して通話するIP電話機能」であるのに対し,引用発明では,「無線基地局及び公衆電話回線網を介した通信機能」である点。

・相違点4
一致点の「インターホンシステム」において,本願発明では,「ドアホン子器」と「インターホン親機」が「集合住宅の各住戸」に設置され,「ロビーインターホン装置」が「集合住宅の共用玄関」に設置され,「ロビーインターホン装置」が「インターホン親機」との間で音声信号を授受し,「インターホン親機」の無線インターフェース手段を介して「携帯型IP電話端末」との間で音声信号を授受するものであるのに対し,引用発明では,「インターホン親機」の無線送受信部を介して「携帯無線端末」との通信を行うものの,「インターホン子機」と「インターホン親機」が「集合住宅の各住戸」に設置され,「インターホン親機」との間で音声信号を授受し,「インターホン親機」を介して「携帯無線端末」との間で音声信号を授受する「ロビーインターホン装置」を備えることについて特定されていない点。

6 相違点についての検討
(1)相違点1について
引用発明において,「インターホン親機」は,「マイク」と「スピーカ」を用いてインターホン通話をするものである。
また,上記4(2)アのとおり,「インターホンシステムにおいて,音声スイッチ又はエコーキャンセラを設けて拡声通話をすること。」は周知の技術(周知技術1)である。
そして,引用発明と周知技術1とは,インターホンシステムの技術分野に属する点において共通し,また,インターホン親機において拡声通話を行うことは,普通に行われていることである。
したがって,引用発明において,「マイク」と「スピーカ」を用いてインターホン通話をする「インターホン親機」に,音声スイッチ又はエコーキャンセラを設けて拡声通話を行うようにすることは,周知技術1に接した当業者が普通に行い得ることである。

(2)相違点2について
上記4(2)イのとおり,「インターホンシステムの親機に,インターネットに接続する回線とインタフェースする手段を設けること。」は周知の技術(周知技術2)である。そして,引用発明と周知技術2とは,インターホンシステムの親機に関する技術分野に属する点において共通する。
したがって,引用発明において,周知技術2を適用し,「インターホン親機」にインターネットに接続する回線とインタフェースする手段を設けることは,当業者が普通に行い得ることである。

(3)相違点3について
上記4(2)ウのとおり,「携帯端末が,インターネットに接続する回線よりインターネットを介して通話するIP電話機能を有すること。」は周知の技術(周知技術3)である。
さらに,引用発明と周知技術3とは,電話機能を有する携帯端末の技術分野に属する点において共通する。
したがって,引用発明において,「無線基地局及び公衆電話回線網を介した通信機能並びに無線信号の送受信を行う無線LAN機能」を有する「携帯無線端末」に,携帯端末のさらなる多機能化を図るために,周知技術3の「インターネットに接続する回線よりインターネットを介して通話するIP電話機能」を付加することは,周知技術3に接した当業者が普通に行い得ることである。

(4)相違点4について
本願明細書(【0029】,【0030】及び【0033】)の記載から,本願発明の「前記無線インタフェース手段を介して前記携帯型IP電話端末と前記ロビーインターホン装置との間で前記音声信号を授受すること」は,ロビーインターホン装置とインターホン親機との間は通信線Lxを用い,インターホン親機と携帯型IP電話端末との間は無線通信機能を用いて,ロビーインターホン装置とIP電話機能を有する携帯型IP電話端末との間の音声信号の授受を行うものであり,携帯型IP電話端末は,IP電話機能を有するものの,無線通信機能を用いてインターホン親機を介してロビーインターホン装置と音声信号の授受をしていると認める。
また,引用発明の「インターホンシステム」は,「インターホン子機」と「インターホン親機」とが有線通信で接続され,「インターホン親機」と「携帯無線端末」とが「無線LAN機能」を用いて通信を行うことにより,「インターホン親機」を介して「インターホン子機」と「携帯無線端末」とが接続されるものである。
更に,上記4(2)エのとおり,「集合住宅のインターホンシステムにおいて,各住戸に子機と親機を設け,集合住宅のロビーインターホンと親機を接続し,親機を介して集合住宅のロビーインターホンと通話を行うこと。」は,周知の技術(周知技術4)である。そして,引用発明と周知技術4とは,インターホンシステムの技術分野に属する点において共通する。
したがって,引用発明の「インターホンシステム」に,周知技術4を適用し,各住戸に「インターホン子機」と「インターホン親機」を設け,集合住宅のロビーインターホンと「インターホン親機」を接続し,「インターホン親機」と「携帯無線端末」とが「無線LAN機能」を用いて通信を行うことにより,「インターホン親機」を介してロビーインターホンと「携帯無線端末」との通話を行うようにすることは,当業者が容易に成し得ることである。

以上から,相違点に係る構成は,引用発明に周知技術1ないし4を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものである。
そして,本願発明の作用効果も引用発明及び周知技術1ないし4に基づいて,当業者が予測できる範囲のものである。

なお,請求人は,平成27年7月29日付けの意見書において,「携帯型IP電話端末を用いてロビーインターホン装置と通話する点までは開示されていません。」との主張をしている。
しかしながら,本願において,明細書の記載を参酌しても,携帯型IP電話端末は,ロビーインターホンとの間の通話には,IP電話機能は用いておらず,インターホン親機を介して他のインターホン子機と通話を行う従来のインターホン子機として動作している。そして,引用発明の携帯無線端末は,インターホン親機の子機として,インターホン親機を介して来訪者が操作するインターホン子機と通話をするものである。また,インターホン子機がインターホン親機を介してロビーインターホン装置と通話をすることは周知の技術(周知技術4)である。したがって,引用発明に周知技術4を適用し,インターホン子機としてのIP端末がインターホン親機を介して通信できる範囲をロビーインターホンまで拡張することにより,本願発明の構成とすることは当業者にとって容易なことである。

以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて,周知技術1ないし4を勘案することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

7 結言

したがって,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-30 
結審通知日 2015-10-06 
審決日 2015-11-09 
出願番号 特願2011-69405(P2011-69405)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
P 1 8・ 537- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山岸 登  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 ▲高▼橋 真之
林 毅
発明の名称 インターホンシステム  
代理人 西川 惠清  

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