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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1309069
審判番号 不服2014-17437  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-02 
確定日 2015-12-24 
事件の表示 特願2010-222348「試料中の測定対象物質の測定方法、測定試薬及び測定値差の改善方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月19日出願公開、特開2012- 78161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年9月30日に出願された特許出願であって、平成26年1月17日付けで拒絶理由が通知され、同年4月18日に意見書及び手続補正書が提出されが、同年5月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,それと同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年9月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年9月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の請求項1に記載された発明
本件補正は、補正前の特許請求の範囲(平成26年4月18日付けの手続補正により補正されたもの。)の請求項1を、次のとおりに補正することを含むものである。(下線は補正箇所を示す。)
「 【請求項1】
測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体と、試料とを接触させ、これにより、当該特異的結合物質を固定化した担体の当該特異的結合物質と試料中に含まれていた測定対象物質との特異的結合反応を行わせ、これより生成した当該特異的結合物質を固定化した担体と測定対象物質との複合体凝集物を測定することにより、試料中の測定対象物質を測定する際に、当該特異的結合物質を固定化した担体と試料との接触の前又はこれと同時に、当該特異的結合物質を固定化していない担体と試料とを接触させることを特徴とする、生体試料と水系溶媒試料との間の測定値差の改善方法。」

(2)本件補正の目的について
特許請求の範囲の請求項1についての上記の補正は、本件補正前の「試料の種類による測定値差の改善方法」という記載を、試料の種類について限定して、「生体試料と水系溶媒試料との間の測定値差の改善方法」と補正するものであるから、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2 独立特許要件についての検討
(1)引用刊行物1及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願日前に頒布された特開2004-347614号公報(以下、「刊行物1」という。)には、非特異反応抑制剤、免疫測定試薬及び免疫測定方法について、次の事項が図面とともに記載されている。(下線は当審で付与。)
ア 「【請求項1】
被測定物質に対する抗体又は抗原を固定化した担体を用いる免疫測定方法において用いられ、前記被測定物質に対して免疫学的に反応しない抗体若しくはその断片、又は、免疫学的に反応しない抗原を固定化した不溶性担体からなることを特徴とする非特異反応抑制剤。」

イ 「【請求項7】
被測定物質を含む試料を請求項1、2、3、4若しくは5記載の非特異反応抑制剤によって予め処理した後免疫反応させるか、又は、請求項1、2、3、4若しくは5記載の非特異反応抑制剤の存在下で被測定物質を含む試料を免疫反応させることを特徴とする免疫測定方法。」

ウ 「【0016】
上記免疫学的に反応しない抗原としては、被測定物質である抗原又は抗体に特異的な活性を示すものでなければ特に限定されず、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、カザミノ酸等が挙げられる。上記免疫学的に反応しない抗原としては、また、被測定物質に対する抗体又は抗原(以下、「特異抗体又は特異抗原」ともいう)を固定化した担体に使用するブロッキング剤や、免疫測定試薬に安定化剤として用いられているものと同一でも異なるものであってもよい。」

エ 「【0073】
(実施例1)
(1)非特異反応抑制剤用抗体の調製
正常家兎血清10mLを25℃で攪拌しながら硫酸ナトリウム1.8gを加えた。・・・上清をPBSで平衡化した陽イオン交換樹脂であるDEAE-セルロースカラムに通し、IgG画分液を採取した。得られたIgG画分液を濃縮した。
【0074】
(2)特異抗体の調製
HBs抗原として、サブタイプAd、タンパク質濃度1mg/mL、純度95%以上(ADVANCED BIOTECHNOLOGIES INC.社製)のものを、兎1匹に対して・・・その後、得られたIgG画分液を、HBs抗原を固定化したアガロースゲルを充填したカラムに通しアフィニティー精製を行い、HBs抗原に特異性を持つIgG成分のみを含む特異抗体液を得た。その後、得られた特異抗体液を濃縮した。
【0075】
(3)非特異反応抑制剤の懸濁液の作成
非特異反応抑制剤用抗体を1.0mg/mLの濃度でPBSに溶解した液3.75mLに、平均粒径が0.1μmのポリスチレンラテックス(固形分10重量%、積水化学社製)1.0mLとPBSを1.25mL添加し、25℃にて60分間攪拌した。次いで、この液にBSAを2.0重量%含有したPBSを6mL添加し、25℃にて60分間攪拌した後、18,000rpmで遠心分離することにより洗浄した。洗浄操作は3回行った。得られた沈殿物にBSAを0.5重量%含有するPBSを10mL添加し、ラテックスを懸濁させ、非特異反応抑制剤の懸濁液を調製した。」

オ 「【0076】
(実施例2)
(1)HBS抗体感作ラテックス液の調製
実施例1(2)の特異抗体を1.0mg/mLの濃度でPBSに溶解した液1.25mLに、平均粒径が0.3μmのポリスチレンラテックス(固形分10重量%、積水化学社製)1.0mLとPBS3.75mL添加し、25℃にて60分間攪拌した。次いで、この液にBSAを2.0重量%含有するPBSを6mL添加し、25℃にて60分間攪拌した後、18,000rpmで遠心分離することにより洗浄した。洗浄操作は3回行った。えられた沈殿物に実施例1(3)の非特異反応抑制剤の懸濁液を1mL、BSAを0.5重量%含有するPBSを99mL添加し、ラテックスを懸濁させ、HBs抗体感作ラテックス液を調製した。
【0077】
(2)検体希釈液の調製
PBSにポリエチレングリコール(和光純薬製、平均分子量;50万)を0.3重量%、及びBSAを0.5重量%の濃度になるように溶解した。
【0078】
(3)HBs抗原測定用試薬
本実施例のHBs抗原測定用試薬は、上記(1)項のHBs抗体感作ラテックス液からなる第1試薬と、上記(2)項の検体希釈液からなる第2試薬とから構成される2試薬系の試薬である。
【0079】
(4)標準HBs抗原液
HBs抗原を0、50、100、300、500IU/mL濃度で含むヒト血清を使用した。
【0080】
(5)HBs抗原陰性検体及びHBs抗原陽性検体
HBS抗原陰性検体(健常人血清)10検体と、HBS抗原陽性検体(B型肝炎感染者血清)5検体を使用した。
【0081】
(6)測定方法
上記(4)の標準HBs抗原液20μLに、上記(2)項の検体希釈液150μLを混合し、37℃で適時保持した後、上記(1)のHBs抗体感作ラテックス液150μLを添加攪拌した。この後、1分後及び5分後の波長750mnでの吸光度を測定し、この間の吸光度の変化量を吸光度変化量(ΔO.D.)とした。測定は日立自動分析装置7150形を使用した.
標準HBS抗原液を測定して、予め検量線を作成しておき、検体の吸光度変化量と上記検量線から検体中のHBs抗原濃度を算出した。

カ 「【0082】
(実施例3) ラテックス凝集法によるHBs抗原の測定
実施例2における(1)HBS抗体感作ラテックス液の調製及び(2)検体希釈液の調製の項を、次のようにして行ったことを除いては.実施例2と同様にしてHBs抗原測定用試薬を作成した。
(1)HBs抗体感作ラテックス液の調製
実施例1(2)の特異抗体を1.0mg/mLの濃度でPBSに溶解した液1.25mLに、平均粒径が0.3μmのポリスチレンラテックス(固形分10重量%、積水化学社製)1.0mLとPBSを3.75mL添加し、25℃にて60分間攪拌した。次いで、この液にBSAを2.0重量%含有するPBSを6mL添加し、25℃にて60分間攪拌した後、18,000rpmで遠心分離することにより洗浄した。洗浄操作は3回行った。えられた沈殿物にBSAを0.5重量%含有するPBSを100mL添加し、ラテックスを懸濁させ、HBs抗体感作ラテックス液を調製した。
【0083】
(2)検体希釈液の調製
PBSに実施例1の非特異反応抑制剤の懸濁液を1体積%、ポリエチレングリコール(和光純薬製、平均分子量;50万)を0.3重量%、及びBSAを0.5重量%の濃度になるように溶解した。

キ 「【0084】
(実施例4) ラテックス凝集法によるHBs抗原の測定
実施例2における(1)HBs抗体感作ラテックス液の調製、(4)標準HBs抗原液、及び、(5)検体の項を、次のようにして行ったことを除いては、実施例2と同様にしてHBs抗原測定用試薬を作成した。
(1)HBs抗体感作ラテックス液の調製
実施例1(2)の特異抗体を1.0mg/mLの濃度でPBSに溶解した液1.25mLに、平均粒径が0.3μmのポリスチレンラテックス(固形分10重量%、積水化学杜製)1.0mLとPBS3.75mL添加し、25℃にて60分間攪拌した。次いで、この液にBSAを2.0重量%含有するPBSを6mL添加し、25℃にて60分間攪拌した後、18,000rpmで遠心分離することにより洗浄した。洗浄操作は3回行った。えられた沈殿物にBSAを0.5重量%含有するPBSを100mL添加し、ラテックスを懸濁させ、HBs抗体感作ラテックス液を調製した。
【0085】
(4)標準HBs抗原液
HBs抗原を0、50、100、300、500IU/mL濃度で含むヒト血清1. 6mLに実施例1の非特異反応抑制剤の懸濁液0. 12mLを添加混合して使用した。
【0086】
(5)HBS抗原陰性検体及びHBS抗原陽性検体
HBs抗原陰性検体(健常人血清)10検体と、HBs抗原陽性検体(B型肝炎感染者血清)5検体を1. 6mLに実施例1の非特異反応抑制剤の懸濁液0. 12mLを添加混合して使用した。

ク 「【0087】
(比較例1) ラテックス凝集法によるHBs抗原の測定
実施例2における(1)HBs抗体感作ラテックス液の調製の項を、次のようにして行ったことを除いては、実施例2と同様にしてHBs抗原測定用試薬を作成した。
【0088】
(1)HBS抗体感作ラテックス液の調製
実施例1(2)の特異抗体を1. 0mg/mLの濃度でPBSに溶解した液1. 25mLに、平均粒径が0. 3μmのポリスチレンラテックス(固形分10重量%、積水化学社製)1. 0mLとPBS3. 75mL添加し、25℃にて60分間攪拌した。次いで、この液にBSAを2. 0重量%含有するPBSを6mL添加し、25℃にて60分間攪拌した後、18,000rpmで遠心分離することにより洗浄した。洗浄操作は3回行った。
えられた沈殿物にBSAを0.5重量%含有するPBSを100mL添加し、ラテックスを懸濁させ、HBs抗体感作ラテックス液を調製した。」

ケ 「【0120】
(実施例10) 非特異反応抑制剤の懸濁液の作成
BSAを2重量%の濃度でPBSに溶解した液10mLに、平均粒径が0.1μmのポリスチレンラテックス(固形分10重量%、積水化学社製)1.0mLとPBS9mLを添加し、25℃にて60分間攪拌した。次いで18,000rpmで遠心分離することにより洗浄した。洗浄操作は3回行った。得られた沈殿物にBSA0.5重量%含有するPBSを10mL添加し、ラテックスを懸濁させ、非特異反応抑制剤の懸濁液を作成した。
【0121】
(実施例11) ラテックス凝集法によるHBs抗原の測定
実施例2(1)HBs抗体感作ラテックス液の調製において、実施例1(3)の非特異反応抑制剤の懸濁液の代わりに、実施例10の非特異反応抑制剤の懸濁液を使用し、実施例2(2)検体希釈液の調製において、BSAの濃度を1.0重量%としたこと以外は、実施例2と同様にして、HBs抗原の測定を行った。
【0122】
(実施例12) ラテックス凝集法によるHBs抗原の測定
実施例3(2)検体希釈液の調製において、実施例1の非特異反応抑制剤の懸濁液の代わりに、実施例10の非特異反応抑制剤の懸濁液を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、HBs抗原の測定を行った。
【0123】
(実施例13) ラテックス凝集法によるHBs抗原の測定
実施例4(4)標準HBs抗原液の調製において、実施例1の非特異反応抑制剤の懸濁液の代わりに、実施例10の非特異反応抑制剤の懸濁液を使用したこと以外は、実施例4と同様にして、HBs抗原の測定を行った。
【0124】
(比較例4) ラテックス凝集法によるHBs抗原の測定
比較例1の検体希釈液の調製において、BSAの濃度を1.0重量%としたこと以外は、比較例1と同様にして、HBs抗原の測定を行った。
【0125】
実施例11?13及び比較例4の結果を表4に示した。
表4は、実施例11?13及び比較例4の試薬により、HBs抗原陰性検体及びHBs抗原陽性検体を測定したときの測定値(IU/mL)を示す。
なお、実施例11?13及び比較例4におけるカットオフポイントを8IU/mLに設定し、8IU/mL未満を陰性、8IU/mL以上を陽性と判定した。
【0126】


【0127】
表4から明らかなように、HBs抗原陰性検体中の数例で実施例11?13では陰性判定されているにもかかわらず、比較例4では陽性と判定され、非特異凝集反応が起こっていることが示唆される。」

(2)刊行物1-1発明
(ア)刊行物1の「免疫測定方法」には、上記(1)ア、イ、ウに記載されているように、「被測定物質を含む試料を、免疫学的に反応しない抗原を固定化した不溶性担体からなる非特異反応抑制剤によって予め処理した後免疫反応させるか、該非特異反応抑制剤の存在下で被測定物質を含む試料を免疫反応させる」免疫測定方法が含まれ、その具体例として、上記(1)ケに、非特異反応抑制剤としてBSAを固定化したポリスチレンラテックスを用い、ラテックス凝集法により試料中のHBs抗原を測定したことが記載されている。

(イ)ラテックス凝集法によるHBs抗原の測定は、上記(1)のオの「実施例2」を引用して記載している同ケの「実施例11」、同カの「実施例3」を引用して記載している同ケの「実施例12」、同キの「実施例4」を引用して記載している同ケの「実施例13」にも記載されているように、測定対象物質であるHBs抗原に結合する特異的結合物質であるHBs抗体を固定化した担体であるHBs抗体感作ラテックスと、試料を接触させ、これにより、HBs抗体感作ラテックスのHBs抗体と試料中に含まれていたHBs抗原との特異的反応を行わせ、これにより生成したHBs抗体感作ラテックスとHBs抗原との複合体凝集物を測定することにより、試料中のHBs抗原を測定する方法であることは、免疫測定方法における技術常識である。

(ウ)その際の非特異反応抑制剤である、HBs抗体を固定化していないBSAを固定化したポリスチレンラテックスの使用方法としては、上記(1)カの「実施例3」を引用して記載している同ケの「実施例12」、同キの「実施例4」を引用して記載している同ケの「実施例13」にも記載されているように、試料希釈液又は試料自体に該非特異反応抑制剤を添加して、HBs抗体感作ラテックスと試料との接触前に、該非特異反応抑制剤と試料とを接触させることも、同オの「実施例2」を引用して記載している同ケの「実施例11」にも記載されているように、該非特異反応抑制剤をHBs抗体感作ラテックスに添加してHBs抗体感作ラテックスと試料との接触と同時に、該非特異反応抑制剤と試料とを接触させることも、刊行物1には記載されている。

(エ)上記(ア)?(ウ)を勘案して、補正発明の記載に倣って整理すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「HBs抗体感作ラテックスと、試料とを接触させ、これにより、当該HBs抗体感作ラテックスのHBs抗体と試料中に含まれていたHBs抗原との特異結合反応を行わせ、これにより生成したHBs抗体感作ラテックスとHBs抗原との複合体凝集物を測定することにより、試料中のHBs抗原を測定する際に、HBs抗体感作ラテックスと試料との接触の前又はこれと同時に、BSAを固定化したポリエチレンラテックスと試料を接触させることを含む方法。」(以下、「刊行物1-1発明」という。)

(3)対比・判断
ア 対比
そこで、補正発明と刊行物1-1発明とを対比する。
(ア)刊行物1-1発明の「HBs抗原」、「HBs抗体感作ラテックス」は、それぞれ、補正発明の「測定対象物質」、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体」に相当する。

(イ)そして、補正発明における「当該特異的結合物質を固定化していない担体」については、本願明細書に次のように記載されている。(下線は当審で付与。)
「【0032】
〔4〕測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体
【0033】
本発明における、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」は、前記の「測定対象物質に結合する特異的結合物質」を固定化していない担体である。
【0034】
この「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」における担体(以下、この「担体」を「非固定化用担体」ということがある)の材質は、特に限定はなく、例えば、ポリスチレン、スチレン-スチレンスルホン酸塩共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、ポリアクロレイン、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-グリシジル(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、ゼラチン、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックス又は磁性体等を挙げることができる。
【0035】
この非固定化用担体は、粒子であることが好ましく、ラテックス粒子であることが特に好ましい。
【0036】
なお、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体」における「担体」と、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」における「担体」(非固定化用担体)は、同一の材質のものが好ましい。
【0037】
また、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」の自然凝集や、非特異的反応等を抑制するために処理を行う必要があれば、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」の表面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミン若しくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、非固定化用担体のブロッキング処理(マスキング処理)等を行ってもよい。」

そうすると、刊行物1-1発明の「BSAを固定化したポリエチレンラテックス」は、補正発明の「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」に相当する。

(ウ)したがって、補正発明と刊行物1-1発明とは、次の一致点で一致し、次の相違点において相違する:
(一致点)
「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体と、試料とを接触させ、これにより、当該特異的結合物質を固定化した担体の当該特異的結合物質と試料中に含まれていた測定対象物質との特異的結合反応を行わせ、これより生成した当該特異的結合物質を固定化した担体と測定対象物質との複合体凝集物を測定することにより、試料中の測定対象物質を測定する際に、当該特異的結合物質を固定化した担体と試料との接触の前又はこれと同時に、当該特異的結合物質を固定化していない担体と試料とを接触させる、
ことを含む方法。」である点。

(相違点)
補正発明は、さらに「生体試料と水系溶媒試料との間の測定値差の改善方法」であるのに対し、刊行物1-1発明では、そのような特定がない点。

イ 判断
上記相違点についての検討する。
(ア)補正発明の「生体試料」と「水系溶媒試料」について、本願明細書に次のように記載されている。
「【0164】
2.試料
(1)水系溶媒試料
参考例1の(1)で調製したSCCA1を、4%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて希釈し、下記の水系溶媒試料A2、水系溶媒試料A3、及び水系溶媒試料A4をそれぞれ調製した。
また、この4%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を、SCCA1濃度が0ng/mLである水系溶媒試料A1とした。
【0165】
(a)水系溶媒試料A1(SCCA1濃度:0ng/mL)
(b)水系溶媒試料A2(SCCA1濃度:5ng/mL)
(c)水系溶媒試料A3(SCCA1濃度:15ng/mL)
(d)水系溶媒試料A4(SCCA1濃度:30ng/mL)
【0166】
(2)生体試料
参考例1の(1)で調製したSCCA1を、SCCA1を1ng/mLの濃度で含むヒト血清にて希釈し、下記の生体試料A1、生体試料A2、及び生体試料A3をそれぞれ調製した。
【0167】
(a)生体試料A1(SCCA1濃度:5ng/mL)
(b)生体試料A2(SCCA1濃度:15ng/mL)
(c)生体試料A3(SCCA1濃度:30ng/mL)」

上記記載によれば、補正発明における「生体試料」には、既知量の測定対象物質をヒト血清と混合して調製したヒト血清を含む標準溶液が含まれ、「水系溶媒試料」には、既知量の測定対象物質をリン酸緩衝生理食塩水等と混合して調製したヒト血清を含まない標準溶液が含まれるものと認められる。

(イ)これらの生体試料と水系溶媒試料に含まれるSCCA1の濃度を、測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体を含まない試薬と含む試薬を用いて測定した結果が、本願明細書に、
「【0173】
(f) 以上の測定結果において、第1試薬として第1試薬(担体不含)を用いた場合の測定結果を表1及び図1に示し、第1試薬として第1試薬(担体含有)を用いた場合の測定結果を表2及び図2に示した。」と記載されているように、以下の表1,2と図1,2で示されている。
【表1】

【表2】

【図1】

【図2】

そして、この結果について本願明細書では、
「【0182】
ところで、試料の種類により測定値差が生じるのは、生体試料中に、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体」に吸着する物質が存在し、これにより当該特異的結合反応に負の影響を与えたためと考えられる。そして、前記の通り「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」と試料とを接触させることにより、生体試料に由来する非特異的物質の影響を受けずに測定できるようになったものと推察される。」という考察を行っており、測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体を使用しない場合の段落【176】の表1と図1に示されたグラフでは、生体試料と水系溶媒試料との測定値がSCCA1濃度が大きくなるにつれて測定値差が大きくなるのに対し、測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体を使用した場合の段落【177】の表2と図2に示されたグラフでは、生体試料と水系溶媒試料との測定値がSCCA1濃度が大きくなるにつれても、測定値差は僅かになっていることが示されている。

(ウ)ところで、ヒト血清には、試料と接触させて抗原抗体反応を行わせる試料中の測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体に非特異吸着をする等により測定値のノイズとなる夾雑タンパク質が多く含まれていて、測定の精度等を低下させる原因となることは、本願出願前の周知事項にすぎない(必要ならば、例えば、特開2010-117189号公報の特に段落【0006】、特開2005-188987号公報の特に段落【0005】等参照)。

(エ)そして、特異的結合反応を行わせる免疫測定において、測定値を求めるための標準曲線について、血清の存在による影響を、血清を含む標準溶液試料と血清を含まない緩衝液等の水系溶媒を使用して作成した標準溶液試料や、含まれる血清の量を変化させた標準溶液の測定値を比較して調べることも、例えば次の周知例等に記載されているように、必要に応じて行われている本願出願前の周知の事項である(以下の周知例において下線は当審において付与した。)。
周知例A:特表2000-510581号公報、特に
「実施例2 トロンボスポンジン用ELISAアッセイの開発
直接捕獲、酵素結合免疫ソルベントアッセイ(ELISA)を最初に展開して、トロンボスポンジンのカラム画分をアッセイした。ポリクローナル硫酸アンモニウム画分(約80%IgG)のトロンボスポンジン抗体は、ELISAプレートをコートするために用いられ、トロンボスポンジン精製を行うために十分であった。それを標準トロンボスポンジンで換算したところ、矛盾する結果が得られることがわかったが、おそらくプレートの違いと時間によるものであった。イムロン4プレートを注文し、コーティングとブロッキング手順を以下のように標準化した:4℃で一晩、20μg/mL Ab;トリス緩衝化生理食塩水(TBS)プラス3%BSAを含有するブロッキング緩衝液で3回洗浄し;次いで、室温で1時間、ブロッキング緩衝液を用いてブロックする。コートされたプレートを、4℃で一晩、緩衝液中のトロンボスポンジン標品でインキュベートし、洗浄して非結合蛋白質を除去し、次いでシグマモノクローナルAb(1:1000)と反応させ、アルカリ性ホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG(1:6,000;室温で1時間)を用いて展開した。強いシグナルと滑らかで、再現性のある照準曲線を得たが、該曲線はより高い濃度ではフラットになった(図1)。
血清希釈物を前記ELISAに使用し、血清を緩衝液で1:1以上に希釈した際に滑らかな希釈曲線を得た;未希釈の血清は、シグナルを強く減少させた。全ての凝固血液については直接的なアッセイを用いることが望ましいので、未希釈血清を用いた際のシグナルが減少する問題を調べるのに、様々な試験を試みた。コートされている場合のプレートをトロンボスポンジン希釈した血清(血清をヘパリンアフィニティーカラムを通すことで作製)で一晩インキュベートし、次いで洗浄した後に、トロンボスポンジンの標準曲線を緩衝液で作成すると、血清中でインキュベートされていないプレートで作成した標準曲線に比べ、約50%までシグナルが減少されていることがわかった。これらの結果は、血清が、競争的に吸着することにより、プレートから抗体を除去していることを示した(図2)。」(第13頁末行?第14頁下から2行)等参照。

周知例B:特開昭59-141066号公報、特に
「(a)分析法標準曲線
プールした正常な人血清(ILS、ニューベリーストリート、ロンドンEc1、英国)にプリミドンを溶解することにより分析法標準を調製した。
各血清標準10μlに最終濃度(120nモル/l)を生ずるようにエリスロシン-ラベルプリミドン100μlを加え、続いて抗プリミドン免疫グロブリンを加えた(18.6倍希釈)。室温で30分間インキュベーション後、希釈剤緩衝液1.4mlを加えた(免疫グロブリンの最終希釈:300倍)室温で更に5分後、りん光と遅延螢光を測定した。
結果の標準曲線(第2図)は血清標準中のプリミドンは限定量のプリミドンに対する抗体へ結合のためラベルしたプリミドンと競合することを示す。ラベルしない薬剤が存在すればする程、結合反応の完了後遊離のままである(抗体非結合)ラベルしたプリミドンの比率が大きくなり、そしてそれ故にりん光及び遅延螢光信号が大きくなる。
標準曲線に関する血清の効果を下記の方法でチェックした。各プリミドン血清標準10μlに希釈剤緩衝液100μl又はプールした正常な人血清100μlの何れかを加え、エリスロシンラベルプリミドン100μlを続いて、次に抗プリミドン免疫グロブリン100μlを加えた(18.6倍希釈)。室温で30分間インキュベーション後、亜硫酸ナトリウム(10g/l)、BSA (1g/l)及びアジ化ナトリウム(1g/l)を含有するリン酸ナトリウム緩衝液(100nモル/l、pH8.0)1.4mlを加えた。室温で更に5分後に、りん光を測定した。
この結果(第3図)は分析法混合物中に人血清100μlまでの余分の存在は標準曲線に無視し得る効果を有することを示す。」(第7頁右上欄18行?右下欄11行)等参照。

周知例C:国際公開2008/012338号、特に
「EXAMPLE 6: Sandwich Immunoassay Formats for Quantifying and Detecting GDF8
(当審訳:例6:GDF8を定量化および検出するためのサンドイッチ免疫アッセイ様式)」(第95頁23行)
「Example 6.6 The use of serum versus assay buffer for the generation of standard curves
Normal mouse serum and GDF-8 KO mouse serum was used in this study. These sera, along with normal human serum and THST buffer, were utilized to generate standard curves using mature GDF-8 protein, see Figure 15. The difference in slope between standard curves generated in serum vs. buffer explains why the observed vs. predicted values in spike/recovery experiments differ so drastically (Figure 16) when buffer is the medium used for generation of standard curves. The reduced slope of the standard curve in serum compared to standard curve in buffer highlights the matrix effects of serum on the signal produced and suggests that standard curves should be generated in serum. KO mouse serum is not available in quantities necessary for assay development and normal mouse serum has high endogenous levels of GDF-8 that would interfere with prediction of GDF-8 in unknown serum samples. Normal human serum also has endogenous levels of GDF-8, albeit lower than normal mouse, that also adds an unwanted interference factor. A possible alternative would be to deplete a pool of normal human serum of GDF-8 for use as an assay calibration matrix. (当審訳:例6.6 検量線を作成するための血清対アッセイ緩衝液の使用
正常なマウス血清およびGDF-8KOマウス血清を本研究で研究した。これらの血清を、正常なヒト血清およびTHST緩衝液と共に利用して、成熟GDF-8タンパク質を用いた検量線を作成した。図15を参照されたい。血清で作成した検量線と緩衝液で作成したものとの間の傾きの差異により、緩衝液を検量線の作成の媒体として使用した場合に添加/回収実験の観察値対予測値が劇的に異なっていた理由が説明される(図16)。緩衝液中の検量線と比較して血清中の検量線の傾きが低下していることが、生じたシグナルに対する血清のマトリックス効果を明らかにしており、検量線は血清中で作成すべきことを示唆している。KOマウス血清はアッセイ開発に必要な量で入手可能でなく、正常なマウス血清は、未知の血清試料中のGDF-8の予測を妨げる高い内在性レベルのGDF-8を有する。正常なヒト血清も、正常なマウスよりは低いが、内在性レベルのGDF-8を有し、これも所望しない妨害要素を付加する。可能性のある代替物質は、アッセイ較正マトリックスとして使用するために、正常なヒト血清のプールのGDF-8を枯渇させることである。)(第99頁10行?24行)

(オ)血清は、上記(ウ)のように夾雑タンパク質を多く含むため、血清を含む標準試料と血清を含まない水性溶媒で調製した標準試料とでは、試料中の測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体に対する非特異吸着を生じる可能性から、両者の測定値の間に相違が生じることは当然予想されることである。
そして、刊行物1-1発明では、非特異反応抑制剤となる測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体を併用して、HBs抗体感作ラテックスと試料と接触させる方法であるから、血清の存在による非特異反応も抑制され、血清の存在による影響が低減することが、当業者に普通に期待される事項と認められる。
そうすると、刊行物1-1発明において、ヒト血清を添加し調製した血清を含む標準試料である生体試料及び血清を含まない水性溶媒で調製した標準溶液である水系溶媒試料を試料として、試料中の測定対象物質を測定して、血清の影響による両者の測定値の間の測定値差を改善してみようとすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る範囲の事項にすぎない。

(カ)補正発明の効果は、刊行物1及び上記周知事実から当業者が予測し得るものであって、格別顕著なものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、補正発明は、刊行物1-1発明及び周知事実に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年9月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、同年4月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであって、その請求項1は以下のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「 【請求項1】
測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体と、試料とを接触させ、これにより、当該特異的結合物質を固定化した担体の当該特異的結合物質と試料中に含まれていた測定対象物質との特異的結合反応を行わせ、これより生成した当該特異的結合物質を固定化した担体と測定対象物質との複合体凝集物を測定することにより、試料中の測定対象物質を測定する際に、当該特異的結合物質を固定化した担体と試料との接触の前又はこれと同時に、当該特異的結合物質を固定化していない担体と試料とを接触させることを特徴とする、試料の種類による測定値差の改善方法。」

2 引用刊行物及びその記載事項
(1)引用刊行物1及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1とその記載事項は、上記第2の2(1)に記載したとおりである。

(2)刊行物1に記載された発明(その2)
(ア)刊行物1の「免疫測定方法」には、上記第2の2(1)ア、イ、ウに記載されているように、「被測定物質を含む試料を、免疫学的に反応しない抗原を固定化した不溶性担体からなる非特異反応抑制剤によって予め処理した後免疫反応させるか、該非特異反応抑制剤の存在下で被測定物質を含む試料を免疫反応させる」免疫測定方法が含まれ、その具体例として、上記第2の2(1)ケに、非特異反応抑制剤としてBSAを固定化したポリスチレンラテックスを用い、ラテックス凝集法により試料中のHBs抗原を測定したことが記載されている。

(イ)ラテックス凝集法によるHBs抗原の測定は、上記第2の2(1)オの「実施例2」を引用して記載している同ケの「実施例11」、同カの「実施例3」を引用して記載している同ケの「実施例12」、同キの「実施例4」を引用して記載している同ケの「実施例13」にも記載されているように、測定対象物質であるHBs抗原に結合する特異的結合物質であるHBs抗体を固定化した担体であるHBs抗体感作ラテックスと、試料を接触させ、これにより、HBs抗体感作ラテックスのHBs抗体と試料中に含まれていたHBs抗原との特異的反応を行わせ、これにより生成したHBs抗体感作ラテックスとHBs抗原との複合体凝集物を測定することにより、試料中のHBs抗原を測定する方法であることは、免疫測定方法における技術常識である。

(ウ)その際の非特異反応抑制剤であるHBs抗体を固定化していないBSAを固定化したポリスチレンラテックスの使用方法としては、上記第2の2(1)カの「実施例3」を引用して記載している同ケの「実施例12」、同キの「実施例4」を引用して記載している同ケの「実施例13」にも記載されているように、試料希釈液又は試料自体に該非特異反応抑制剤を添加して、HBs抗体感作ラテックスと試料との接触前に、該非特異反応抑制剤と試料とを接触させることも、同オの「実施例2」を引用して記載している同ケの「実施例11」にも記載されているように、該非特異反応抑制剤をHBs抗体感作ラテックスに添加してHBs抗体感作ラテックスと試料との接触と同時に、該非特異反応抑制剤と試料とを接触させることも、刊行物1には記載されている。

(エ)そして、上記第2の2(1)ケの「実施例11?13」及び非特異反応抑制剤を使用しない同クの「比較例1」を引用して記載している同ケの「比較例2」によるHBs抗原の測定値について、「実施例11?13及び比較例4の結果を表4に示した。表4は、実施例11?13及び比較例4の試薬により、HBs抗原陰性検体及びHBs抗原陽性検体を測定したときの測定値(IU/mL)を示す。」、「表4から明らかなように、HBs抗原陰性検体中の数例で実施例11?13では陰性判定されているにもかかわらず、比較例4では陽性と判定され、非特異凝集反応が起こっていることが示唆される。」と、HBs抗原陰性検体とHBs抗原陽性検体という異なる種類の試料について比較、検討され、陽性検体では非特異反応抑制剤を使用しない場合でも誤判定されなかったものの、陰性検体では非特異反応抑制剤を使用すると、陽性と誤判定される測定値が改善されて、陰性と判定される測定値になることが記載されている。

(オ)これら(ア)?(エ)を勘案して、補正発明の記載に倣って整理すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「HBs抗体感作ラテックスと、試料とを接触させ、これにより、当該HBs抗体感作ラテックスのHBs抗体と試料中に含まれていたHBs抗原との特異結合反応を行わせ、これにより生成したHBs抗体感作ラテックスとHBs抗原との複合体凝集物を測定することにより、試料中のHBs抗原を測定する際に、HBs抗体感作ラテックスと試料との接触の前又はこれと同時に、BSAを固定化したポリエチレンラテックスと試料を接触させて、HBs抗原陰性検体の場合とHBs抗原陽性検体の場合の測定値の間にあった誤判定が生じる測定値差が改善される方法。」(以下、「刊行物1-2発明」という。)

3 対比・判断
そこで、本願発明と刊行物1-2発明とを対比する。
(ア)刊行物1-2発明の「HBs抗原」、「HBs抗体感作ラテックス」は、それぞれ、本願発明の「測定対象物質」、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体」に相当する。

(イ)そして、本願発明における「当該特異的結合物質を固定化していない担体」については、本願明細書には次のように記載されている。(下線は当審で付与。)
「【0032】
〔4〕測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体
【0033】
本発明における、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」は、前記の「測定対象物質に結合する特異的結合物質」を固定化していない担体である。
【0034】
この「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」における担体(以下、この「担体」を「非固定化用担体」ということがある)の材質は、特に限定はなく、例えば、ポリスチレン、スチレン-スチレンスルホン酸塩共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、ポリアクロレイン、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-グリシジル(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、ゼラチン、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックス又は磁性体等を挙げることができる。
【0035】
この非固定化用担体は、粒子であることが好ましく、ラテックス粒子であることが特に好ましい。
【0036】
なお、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化した担体」における「担体」と、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」における「担体」(非固定化用担体)は、同一の材質のものが好ましい。
【0037】
また、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」の自然凝集や、非特異的反応等を抑制するために処理を行う必要があれば、「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」の表面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミン若しくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、非固定化用担体のブロッキング処理(マスキング処理)等を行ってもよい。」

そうすると、刊行物1-2発明の「BSAを固定化したポリエチレンラテックス」は、本願発明の「測定対象物質に結合する特異的結合物質を固定化していない担体」に相当する。

(ウ)また、刊行物1-2発明の「HBs抗原陰性検体」と「HBs抗原陽性検体」とは、試料の種類が異なることは明らかであって、「HBs抗原陰性検体の場合とHBs抗原陽性検体の場合の測定値の間にあった誤判定が生じる測定値差が改善される方法」は、本願発明の「試料の種類による測定値差の改善方法」に相当する。

(エ)そうすると、本願発明と刊行物1-2発明との間には、相違するところがなく、本願発明は刊行物1に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-31 
結審通知日 2015-09-29 
審決日 2015-10-13 
出願番号 特願2010-222348(P2010-222348)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 将志赤坂 祐樹  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 三崎 仁
渡戸 正義
発明の名称 試料中の測定対象物質の測定方法、測定試薬及び測定値差の改善方法  
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