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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1309114
審判番号 不服2015-8014  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-30 
確定日 2015-12-21 
事件の表示 特願2010-217419「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月12日出願公開、特開2012- 74208〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年9月28日の出願であって、平成25年10月31日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月25日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年6月13日付けの拒絶理由通知に対して、同年8月12日に意見書が提出されたが、平成27年1月29日付け(発送日:同年2月3日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年4月30日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明は、平成25年12月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のもの(以下、「本願発明」という。)である。

「【請求項1】
複数の第1接合端子が整列されて収納される第1ターミナルハウジングと、
複数の第2接合端子が整列されて収納される第2ターミナルハウジングとを備え、
前記第1ターミナルハウジングと前記第2ターミナルハウジングとを嵌合させると、前記複数の第1接合端子の一面のそれぞれと前記複数の第2接合端子の一面のそれぞれとが対となるように対面すると共に前記第1接合端子と前記第2接合端子とが交互に配置される積層構造となるコネクタにおいて、
当該コネクタは、更に、
前記第1ターミナルハウジング内に整列されて収納されると共に前記複数の第1接合端子の他面側のそれぞれに配置される複数の絶縁部材と、
押圧することで、前記複数の第1接合端子及び前記複数の第2接合端子を各接点にて一括して固定し電気的に接続させる接続部材と、
前記接続部材を覆うように前記接続部材の押圧方向に対して交差する方向にスライド自在に設けられ、押圧後の前記接続部材の押圧力を前記第1接合端子と前記第2接合端子との安定的接続が保証される押圧力以上に維持する蓋部材とを備え、
前記蓋部材は、前記接続部材による押圧力が前記第1接合端子と前記第2接合端子との安定的接続が保証される押圧力となったときに、初めて前記接続部材を覆うようにスライド可能となるように設けられることを特徴とするコネクタ。」

第3 刊行物に記載された事項
1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2004-56924号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「車両用電気接続構造及び端子接続部構造」に関し、図面(特に、【図2】及び【図3】参照)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車両駆動用のモータ(例えば、実施形態におけるモータ10)から引き出される複数相の導電性部材(例えば、実施形態におけるバスバー15)の接続端子(例えば、実施形態における接続端子15A,15B,15C)と前記モータを駆動するインバータから引き出される複数相の電力線ケーブル(例えば、実施形態における電力線ケーブル21)の接続端子(例えば、実施形態における接続端子21A,21B,21C)とを接続する車両用電気接続構造において、導電性部材の各相の接続端子と、対応する電力線ケーブルの各相の接続端子とが重合されると共に、接続端子の重合面とは反対側の面に絶縁部材(例えば、実施形態における絶縁部材31,31’)が配置され、これら重合された各相の接続端子と絶縁部材とがこれらを貫く位置に設けられた単一のボルト(例えば、実施形態におけるボルト18)で重合方向に締結固定されることを特徴とする。
このように構成することで、単一のボルトを締め付けることで導電性部材の接続端子と電力線ケーブル側の接続端子とを、絶縁部材を介して各相を絶縁した状態で接続して締結することが可能となる。」

(2)「【0009】
請求項6に記載した発明は、前記接続端子及び絶縁部材に対してボルトの締結力を付与するスプリングワッシャー(例えば、実施形態におけるスプリングワッシャー43)が設けられていることを特徴とする。
このように構成することで、カラーにより決められたストロークでボルトが締め付けられると、スプリングワッシャーがボルトの軸力に係わらず一定の接圧を接続端子間に付与する。」

(3)「【0015】
ここで、モータ10にはトランスミッションに向かって延出する端子ボックス27が取り付けられている。この端子ボックス27内にはトランスミッション側に配置された端子接続部16が設けられ、この端子接続部16は端子ボックス27のボックス本体29がパッキンを介して蓋30で閉塞されるものである。
端子接続部16には底部から盛り上がるように端子ベース17が形成されると共に、トランスミッション側の側壁には後述する電力線ケーブル21の接続端である絶縁性材料からなるスリーブ(絶縁ケーブル)22を収容するガイド筒28が形成されている。」

(4)「【0018】
一方、図3において21はモータ10を駆動する図示しないインバータから引き出される複数相の電力線ケーブルを示し、この電力線ケーブル21の接続端側には各相に対応して銅製の3つの接続端子21A,21B,21Cが取り付けられ、各接続端子21A,21B,21Cはスリーブ22内に挿入されて一体化されている。具体的には電力線ケーブル21の各相のケーブル21a,21b,21cの先端に接続端子21A,21B,21Cが接合され、各接続端子21A,21B,21Cに形成された係合孔23をスリーブ22の上部内壁及び内部に設けた仕切壁24,24の突起25に係止させることで、3つの接続端子21A,21B,21Cを1つにまとめている。このスリーブ22が前記端子ボックス27のガイド筒28内に挿入固定されている。」

(5)「【0033】
また、ボルト18の締め付け作業を行う場合には、金属カラー41によりボルト18の締め付けストロークが規制されているため、締め付けストロークを管理することなく気にせずに締め付け作業を容易に行うことができる。また、ボルト18の締め付けと同時に端子ベース17側に移動する金属カラー41のフランジ部41Aがスプリングワッシャー43を圧縮変形させ、予め決定された圧縮しろに応じた圧縮力で絶縁部材31の間で各接続端子15A,15B,15Cと接続端子21A,21B,21Cの重合部分を適正な押圧力で締め付けることができる。」

(6)上記(1)ないし(5)、【図2】及び【図3】から、複数の接続端子15A、15B、15Cが整列されて収納されるガイド筒28を有する端子ボックス27と、複数の接続端子21A、21B、21Cが整列されて収納されるスリーブ22とを備え、端子ボックス27のガイド筒28内にスリーブ22を挿入固定すると、前記複数の接続端子15A、15B、15Cの一面のそれぞれと前記複数の接続端子21A、21B、21Cの一面のそれぞれとが対となるように対面すると共に前記接続端子15A、15B、15Cと前記接続端子21A、21B、21Cとが交互に配置される積層構造となる電気接続構造が看てとれる。

(7)上記(1)ないし(5)、【図2】及び【図3】から、上記電気接続構造は、端子ボックス27内に整列されて収納されると共に前記複数の接続端子15A、15B、15Cの他面側のそれぞれに配置される複数の絶縁部材31と、押圧することで、前記複数の接続端子15A、15B、15C及び前記複数の接続端子21A、21B、21Cを各接点にて一括して固定し電気的に接続させる端子接続部16とを備えることが看てとれる。

(8)上記(1)ないし(5)、【図2】及び【図3】から、端子接続部16を覆うように設けられる蓋30が看てとれる。

これらの記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「複数の接続端子15A、15B、15Cが整列されて収納されるガイド筒28を有する端子ボックス27と、
複数の接続端子21A、21B、21Cが整列されて収納されるスリーブ22とを備え、
端子ボックス27のガイド筒28内にスリーブ22を挿入固定すると、複数の接続端子15A、15B、15Cの一面のそれぞれと複数の接続端子21A、21B、21Cの一面のそれぞれとが対となるように対面すると共に前記接続端子15A、15B、15Cと前記接続端子21A、21B、21Cとが交互に配置される積層構造となる電気接続構造において、
当該電気接続構造は、更に、
端子ボックス27内に整列されて収納されると共に複数の接続端子15A、15B、15Cの他面側のそれぞれに配置される複数の絶縁部材31と、
押圧することで、複数の接続端子15A、15B、15C及び複数の接続端子21A、21B、21Cを各接点にて一括して固定し電気的に接続させるボルト18と、
ボルト18を覆うように設けられる蓋30を備える電気接続構造。」

2 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された実願平5-42556号(実開平7-11761号)のCD-ROM(以下、「刊行物2」という。)には、「端子接続部の保護キャップ」に関し、図面(特に、【図1】、【図3】及び【図4】参照)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0009】
第1実施例
図1は第1実施例の保護キャップ31を端子接続部に嵌合した状態を示し、図2及び図3は同保護キャップ31の単体の構成を示す。
(省略)
【0010】
キャップ本体32の下縁には、周方向に間隔をおいて3箇所に、鍔部5Aの下面に係止する係止爪(係止部)32Aが設けられている。なお、鍔部5Aは端子接続部の一部であり、機器5の上端部に形成されて板端子8が接続・固定される。また、キャップ本体32の内面には、ナット10の上面に当接する一対のストッパリブ(当接部)35が対向配置されている。ストッパリブ35は雄ねじ端子6の邪魔にならない位置にある。そして、このストッパリブ35の下端と係止爪32A間の間隔が、ナット10が正規の締付状態にあるときの鍔部5Aの下面とナット10の上面間の寸法と略等しく設定されている。この場合のストッパリブ35の高さは、H寸法で管理されている。
(省略)
【0012】
ナットが正規の締付け状態にあるときは、図1に示すように、ストッパリブ35の下端がナット10の上面に当接した状態で、係止爪32Aを鍔部5Aの下面に係止することができる。
【0013】
一方、図4に示すように、ナット10を正規の位置まで締付けるのを忘れて、ナット10が浮いた状態にあるときは、ナット1の上面から鍔部5Aの下面までの寸法が大きくなるから、係止爪32Aが鍔部5Aの下面まで届かず、係止爪32Aを鍔部5Aの下面に係止できない状態となる。従って、これによりナット10の締め忘れを検知することができる。」

(2)「【0016】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案の保護キャップは、ナットを正規の位置まで締付けるのを忘れた場合に、端子接続部に正常に嵌合することができなくなるので、そのことによりナットの締付け忘れを検知することができ、接続不良の発生を未然に防ぐことができる。」

(3)上記(1)、(2)、【図1】、【図3】及び【図4】から、ナットが正規の締付け状態にあり、ストッパリブ35の下端がナット10の上面に当接した状態で、係止爪32Aを鍔部5Aの下面に係止している場合、ストッパリブ35の高さは、H寸法で管理されているから、端子接続部の接続不良の発生が未然に防がれていると理解される。
そうすると、上記H寸法が所定の厚さを超えれば、構造上、保護キャップ31は、端子接続部に嵌合できないから、保護キャップ31が端子接続部に嵌合しているということは、端子接続部に所望の押圧力が安定的に与えられている状態と解され、かかる状態は、保護キャップ31から見れば、端子接続部の押圧力を安定的接続が保証されるように維持する保護キャップ31であって、端子接続部の押圧力を安定的接続が保証されるようになって初めて端子接続部を覆うことのできる保護キャップ31といえる(以下、「刊行物2の記載事項」という。)。

3 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された実願平2-62695号(実開平4-23048号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、「ヒユーズボツクス」に関し、図面(特に、第2図ないし第5図参照)とともに、次の事項が記載されている。

蓋の態様として、接続部材を覆うように接続部材の押圧方向に対して交差する方向にスライドさせること(以下、「刊行物3の記載事項」という。)(第6頁第3行?第7頁第12行)。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「複数の接続端子15A、15B、15C」は、その構造、機能から前者の「複数の第1接合端子」に相当し、以下同様に、「ガイド筒28を有する端子ボックス27」は「第1ターミナルハウジング」に、「複数の接続端子21A、21B、21C」は「複数の第2接合端子」に、「スリーブ22」は「第2ターミナルハウジング」に、「端子ボックス27のガイド筒28内にスリーブ22を挿入固定すると、複数の接続端子15A、15B、15Cの一面のそれぞれと複数の接続端子21A、21B、21Cの一面のそれぞれとが対となるように対面すると共に前記接続端子15A、15B、15Cと前記接続端子21A、21B、21Cとが交互に配置される積層構造となる」ことは「前記第1ターミナルハウジングと前記第2ターミナルハウジングとを嵌合させると、前記複数の第1接合端子の一面のそれぞれと前記複数の第2接合端子の一面のそれぞれとが対となるように対面すると共に前記第1接合端子と前記第2接合端子とが交互に配置される積層構造となる」ことに、「電気接続構造」は「コネクタ」に、「複数の絶縁部材31」は「複数の絶縁部材」に、「ボルト18」は「接続部材」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「ボルト18を覆うように設けられる蓋30を備える」と本願発明の「前記接続部材を覆うように前記接続部材の押圧方向に対して交差する方向にスライド自在に設けられ、押圧後の前記接続部材の押圧力を前記第1接合端子と前記第2接合端子との安定的接続が保証される押圧力以上に維持する蓋部材とを備え、前記蓋部材は、前記接続部材による押圧力が前記第1接合端子と前記第2接合端子との安定的接続が保証される押圧力となったときに、初めて前記接続部材を覆うようにスライド可能となるように設けられること」とは「接続部材を覆うように設けられる蓋部材を備える」という限りおいて共通する。

したがって、両者は、
「複数の第1接合端子が整列されて収納される第1ターミナルハウジングと、
複数の第2接合端子が整列されて収納される第2ターミナルハウジングとを備え、
第1ターミナルハウジングと第2ターミナルハウジングとを嵌合させると、複数の第1接合端子の一面のそれぞれと複数の第2接合端子の一面のそれぞれとが対となるように対面すると共に第1接合端子と第2接合端子とが交互に配置される積層構造となるコネクタにおいて、
当該コネクタは、更に、
第1ターミナルハウジング内に整列されて収納されると共に前記複数の第1接合端子の他面側のそれぞれに配置される複数の絶縁部材と、
押圧することで、複数の第1接合端子及び複数の第2接合端子を各接点にて一括して固定し電気的に接続させる接続部材と、
接続部材を覆うように設けられる蓋部材とを備えるコネクタ。」
で一致し、次の点で相違する。

〔相違点〕
本願発明では、「接続部材を覆うように接続部材の押圧方向に対して交差する方向にスライド自在に設けられ、押圧後の接続部材の押圧力を第1接合端子と第2接合端子との安定的接続が保証される押圧力以上に維持する蓋部材とを備え、
蓋部材は、接続部材による押圧力が第1接合端子と第2接合端子との安定的接続が保証される押圧力となったときに、初めて接続部材を覆うようにスライド可能となるように設けられ」る蓋部材であるのに対し、
引用発明では、ボルト18を覆うように設けられる蓋30にとどまる点。

第5 当審の判断
そこで、上記相違点を検討する。
1 本願発明の「押圧後の接続部材の押圧力を第1接合端子と第2接合端子との安定的接続が保証される押圧力以上に維持する」とは、「接続部材9の締め付けが緩むと、接続部材9が第1ターミナルハウジング5から抜ける方向に上昇するが、この上昇を蓋部材55が押さえることによって接続部材9の押圧力を上述した所定の押圧力以上に維持する」ことであるところ(段落【0072】)、刊行物2の記載事項に照らせば、接続部材の押圧力を安定的接続が保証されるように維持する蓋であって、接続部材の押圧力を安定的接続が保証されるようになって初めて接続部材を覆うことのできる蓋は、当業者がコネクタの技術分野で普通に採用する技術事項であり、その際、蓋の覆い方として、スライド方式とすることは、当業者に特別な構成ではないから(刊行物3の記載事項参照。)、引用発明において、刊行物2、3の記載事項を適用して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 本願発明が奏する効果は、引用発明及び刊行物2、3の記載事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。
なお、請求人が、審判請求書で主張する「緩み防止機能」及び「不完全締め付け検知機能」は、周知の技術事項である(特開平7-85911号公報の段落【0009】及び段落【0041】、特開2003-9351号公報の段落【0021】並びに実願平4-43525号(実開平6-4421号)のCD-ROMの段落【0005】、段落【0007】及び段落【0023】)。

3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2、3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-22 
結審通知日 2015-10-23 
審決日 2015-11-04 
出願番号 特願2010-217419(P2010-217419)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 晋司  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 小柳 健悟
小関 峰夫
発明の名称 コネクタ  

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