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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02D |
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管理番号 | 1309135 |
審判番号 | 不服2015-10442 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-03 |
確定日 | 2016-01-15 |
事件の表示 | 特願2011- 27728「スロットルバルブ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月 6日出願公開、特開2012-167574、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年2月10日の出願であって、平成26年9月22日付けで拒絶理由が通知され、平成26年10月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年3月2日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年6月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成27年6月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 [1]本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の下記の(1)に示す請求項1を下記の(2)に示す請求項1と補正する補正(以下、「補正事項1」という。)を含むものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 吸気通路に軸支した断面が円形のスロットルシャフトに前記吸気通路を通過する空気量を調整するためのスロットルバルブが固定されているとともに閉方向に付勢されて備えられたスロットルバルブ装置であって、前記吸気通路が形成されているボディに前記スロットルシャフトの軸孔に貫通する通孔が形成されているとともに前記通孔に摩擦性能を有する緩衝部材が前記軸孔に挿通されている前記スロットルシャフトの外周面を押圧する状態で挿入支持されているスロットルバルブ装置において、前記緩衝部材が球体であることを特徴とするスロットルバルブ装置。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 吸気通路に軸支した断面が円形のスロットルシャフトに前記吸気通路を通過する空気量を調整するためのスロットルバルブが固定されているとともに閉方向に付勢されて備えられたスロットルバルブ装置であって、前記吸気通路が形成されているボディに前記スロットルシャフトの軸孔に貫通する通孔が形成されているとともに前記通孔に摩擦性能を有する緩衝部材が前記軸孔に挿通されている前記スロットルシャフトの外周面を押圧する状態で挿入支持されている小型で手持ち式の器具に用いられるエンジンのスロットルバルブ装置において、前記緩衝部材が弾性材により形成された球体であるとともに前記緩衝部材が前記通孔に螺入された押し付けねじにより前記スロットルシャフトを押圧する状態で挿入支持されていることを特徴とするスロットルバルブ装置。」(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。) [2]本件補正の目的 補正事項1は、請求項1に関しては、本件補正前の請求項1に記載した「スロットルバルブ装置」に対して「小型の手持ち式の器具に用いられるエンジンの」ものであることを限定し、同様に、「緩衝部材」に対して「弾性材により形成された」ものであり、「通孔に螺入された押し付けねじにより前記スロットルシャフトを押圧する状態で挿入支持されている」ことを限定するものである。 よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正(以下、「補正事項1」という。)は、本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、補正事項1は、新規事項を追加するものではない。 そこで、補正事項1によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。 [3]独立特許要件の判断 1.刊行物 (1)刊行物1の記載事項 原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-212977号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 1a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば船外機等に用いられるスロットルボディに関する。」(段落【0001】) 1b)「【0011】スロットルバルブ14は円筒形の吸気路12内に設けられた円板であり、スロットルシャフト16に固定される。スロットルシャフト16は吸気路12を貫通して設けられ、スロットルボデー11に回転自在に支持される。スロットルボデー11の外周側において、スロットルシャフト16の一端には、スロットルシャフト16即ちスロットルバルブ14を回動するためのスロットルバルブ回動機構10が設けられる。 【0012】スロットルバルブ回動機構10は、主にリターンスプリング20、スロットルレバー30、ブラケット40、ダッシュポット50、アクセルレバー60、スプリング70とから構成される。 【0013】リターンスプリング20は、図5に示すように、吸気路12から突出し、スロットルシャフト16が貫通しているスロットルボデー11の円筒突部11aの径より少し大きい径を有し、この円筒突部11a周囲に巻回される。リターンスプリング20の両端には巻回方向と反対の方向に反転するように湾曲したフックが形成されており、図1に示すように一端22はスロットルボデー11のボス11bに係止され、他端24はスロットルレバー30に係止される。」(段落【0011】ないし【0013】) 1c)「【0016】ブラケット40は、ダッシュポット50をスロットルボデー11に固定保持するために設けられる板材であり、図2においてリターンスプリング20の左側に設けられる。ブラケット40は段状に形成された取付板部42と、この取付板部42に直角に形成された支持板部44とを備える(図4参照)。取付板部42は2つのボルト15により、スロットルボデー11に固定される。支持板部44には溶接によりダッシュポット50が一体的に固定されている。 【0017】ブラケット40の取付板部42には、この取付板部42に対して直角に形成されたストッパ46が形成される。図2において、このストッパ46はアクセルレバー60の端部64と当接する位置にあり、アクセルレバー60が、一定角度以上、即ち図に示す位置より反時計回り方向に回動するのを防止する。 【0018】ダッシュポット50は、ケーシング51と、ケーシング51から突出したステム52を備える。ステム52の上端52aはアジャストスクリュー35の下端35bと当接するように位置し、ケーシング51に対し上下方向に移動可能である。ステム52の下端はダッシュポット50内に設けられたダイヤフラムに連結され、ステム52の上下移動と一体的に変位する。」(段落【0016】ないし【0018】) 1d)「【0026】次にアクセル閉方向時の動作を説明する。リンクロッド102を閉方向、即ち支点104を中心に時計回りに回動させると、アクセルレバー60がスロットルシャフト16を中心に反時計回りに回動する。スロットルレバー30は下方側面30bにおいて、アクセルレバー60のスロットルレバー当接部64による時計回りの押圧力から開放され、リターンスプリング20の付勢力によりアクセルレバー60の回転に追従する。 【0027】スロットルバルブ14が全閉状態の近傍になると、スロットルレバー30に取り付けられたアジャストスクリュー35がダッシュポット50を押圧する。ダッシュポット50の作用により、スロットルレバー30の回転速度、即ちスロットルバルブ14の閉じる速度が遅くなり、スロットルバルブ14は緩やかに閉まる。」(段落【0026】及び【0027】) (2)上記(1)1a)ないし1d)及び図1ないし図6の記載から分かること 1e)図1、図5、図6の記載から、スロットルシャフト16は、吸気路12に軸支した断面が円形のものであることが分かる。 1f)上記(1)1b)の記載から、スロットル回動機構10のリターンスプリング20により、スロットルバルブ14は閉方向に付勢されることが分かる。 1g)上記(1)1d)の記載から、スロットルボディーは、スロットルバルブ14が全閉状態の近傍になると、スロットルレバー30に取り付けられたアジャストスクリュー35がダッシュポット50を押圧することにより、スロットルバルブ14を緩やかに閉めるためのダッシュポット5を備えることが分かる。 (3)引用発明 上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「吸気路12に軸支した断面が円形のスロットルシャフト16にスロットルバルブ14が固定されているとともに閉方向に付勢されて備えられたスロットルボデーであって、 スロットルバルブ14が全閉状態の近傍になると、スロットルレバー30に取り付けられたアジャストスクリュー35がダッシュポット50を押圧することにより、スロットルバルブ14が緩やかに閉めるためのダッシュポット5を備える、船外機等に用いられるスロットルボディ。」 (4)刊行物2 原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-269278号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 2a)「【0006】 上記目的を達成するため、本発明は、運転者が操作する操舵部材(2)と、この操舵部材と一体回転する軸(27,36)と、運転者に操舵感を付与するための操舵感付与機構(28)とを備え、この操舵感付与機構は、上記軸の回転に摩擦抵抗を与える摩擦抵抗付与機構(28)を含む車両用操舵装置(1,100)である。 本発明によれば、運転者は、操舵部材を介して所定の大きさの操舵反力を感じているので、例えば電動モータの慣性等によるアシスト力が運転者の操舵感に影響を与え難くなる。その結果、運転者の操舵感を向上することができる。 【0007】 また、本発明において、上記摩擦抵抗付与機構は、上記軸の周面に摺接する摩擦部材(29)を含む場合がある。この場合、操舵部材に近い部位に摩擦部材を摺接させることにより、簡単な構造で確実に操舵反力を付与することができる。 また、本発明において、上記摩擦抵抗を調整する摩擦抵抗調整部材(33)を含む場合がある。この場合、摩擦抵抗を調整することにより、車両の要求に合わせて種々の操舵感を達成することができる。 【0008】 また、本発明において、操舵部材の操舵量に応じて操舵補助力を発生する操舵補助アクチュエータ(18)を備える場合がある。この場合、操舵補助アクチュエータとしての例えば電動モータの慣性の影響を相対的に小さくして、操舵感を向上させることができる。 また、本発明において、操舵部材と機械的に連結されていない転舵機構(B)と、転舵機構の転舵量に応じて操舵部材に操舵反力を付与するための反力アクチュエータ(37)とを備える場合がある。この場合、反力アクチュエータに含まれる例えば電動モータの慣性の影響を相対的に小さくして、操舵感を向上させることができる。」(段落【006】ないし【0008】) 2b)「【0018】 摩擦部材29は、図4に示すように、第2の軸27の周面に沿う形状を有しており、第2の軸27の周面に当接している。この状態で、摩擦部材29は、コイルばね32によって第2の軸27の周面に向けて付勢され、押し付けられている。 プラグ33は、支持部材31と所定間隔をあけて対向しており、プラグ33の外周に螺合されたナット34によってハウジング24に固定されている。コイルばね32は、支持部材31とプラグ33との間に介在しており、支持部材31およびプラグ33に挟まれて弾性変形している。この弾性変形によるコイルばね32の弾性反力によって、支持部材31が第2の軸27側へ押されている。 【0019】 運転者が操舵部材2を操作することにより、第2の軸27が回動し、摩擦部材29と第2の軸27との間に摩擦が生じる。これにより、第2の軸27に摩擦抵抗が付与される。この摩擦抵抗は、第2の軸27および操舵部材2を介して操舵反力として運転者に伝えられる。すなわち、摩擦抵抗付与機構28が第2の軸27に摩擦抵抗を与えることにより、一定値の操舵反力が操舵部材2を介して運転者に付与される。これにより、運転者は、上記一定値の操舵反力を感じているので、例えば電動モータ18の慣性等によるアシスト力が運転者の操舵感に影響を与え難くなる。その結果、運転者の操舵感を向上することができる。」(段落【0018】及び【0019】) 2c)「【0025】 運転者に対して良好な操舵感を付与するための操舵感付与機構は、本実施形態では、操舵部材2に連結された回転シャフト36に摩擦抵抗を与える摩擦抵抗付与機構28によって構成されている。摩擦抵抗付与機構28は、例えば操舵角センサ38およびトルクセンサ39よりも操舵部材2側に設けられている。また、摩擦抵抗付与機構28は、図6に示すように、回転シャフト36が挿通される挿通孔42を有し、車体43に固定されたハウジング41に保持されている。摩擦部材29は、回転シャフト36の周面に当接し、押し付けられている。」(段落【0025】) (5)刊行物2記載の技術 上記(4)2a)ないし2c)及び図面の記載を総合すると、刊行物2には次の技術(以下、「刊行物2記載の技術」という。)が記載されていると認める。 「操舵装置2に連結された回転シャフト36に摩擦抵抗を与える摩擦抵抗付与機構28であって、回転シャフト36の周面に対して摩擦部材29を、回転シャフト36の挿通孔42に連通する孔に設けられたプラグ33及びコイルばね32によって当接させ、押し付けることによって、運転者の操舵感を向上させる技術。」 (6)刊行物3 原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭60-40735号(実開昭61-154156号)のマイクロフィルムには、図面とともに次の事項が記載されている。 3a)「2.実用新案登録請求の範囲 ステアリング・コラムのメーン・シャフトの側部に接触する摩擦部材と、弾性部材を介して前記摩擦部材を付勢する調整ネジとからなることを特徴とするステアリング操作力調整装置。」(明細書第1ページ第4ないし8行) 3b)「(考案が解決しようとする問題点) しかしながらステアリング・ギヤ・ボックスの脱着には時間がかかり、またステアリング・ギヤ・ボックス内部の調整は困難であり、かつ調整には測定器具を要するなどの問題点があった。 この考案は、ステアリング・ギヤ・ボックスを脱着する必要がなく、ユーザ-が自分で容易にステアリング操作力を調整することができ、好みのステアリング・フィーリングを得られるステアリング操作力調整装置の提供を目的とする。 (問題を解決するための手段) 上記の目的を達成するため、この考案は、ステアリング・コラムのメーン・シャフトの側部に接触する摩擦部材と、弾性部材を介して前記摩擦部材を付勢する調整ネジとからなることを特徴とするステアリング操作力調整装置である。」(明細書第2ページ第2ないし17行) (7)刊行物3記載の技術 上記(6)3a)及び3b)の記載並びに図面の記載を総合すると、刊行物3には次の技術(以下、「刊行物3記載の技術」という。)が記載されている。 「ステアリング・コラムのメーン・シャフトの側部に接触する摩擦部材と、弾性部材を介して前記摩擦部材を付勢する調整ネジとからなるステアリング操作力調整装置であって、ユーザ-が自分で容易にステアリング操作力を調整することができ、好みのステアリング・フィーリングを得る技術。」 2.本件補正発明と引用発明との対比・判断 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「吸気路12」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件補正発明における「吸気通路」に相当し、以下同様に、「スロットルシャフト16」は「スロットルシャフト」に、「スロットルバルブ14」は「スロットルバルブ」に、「スロットルボデー」は「スロットルバルブ装置」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明における「スロットルバルブ14」は、吸気路12を通過する空気量を調整するためのものであることは、技術常識からみて明らかであるから、本件補正発明における「吸気通路を通過する空気量を調整するためのスロットルバルブ」にも相当する。 さらに、引用発明における「スロットルバルブ14が全閉状態の近傍になると、スロットルレバー30に取り付けられたアジャストスクリュー35がダッシュポット50を押圧することにより、スロットルバルブ14が緩やかに閉めるためのダッシュポット5を備える」、「スロットルボディ」と、本件補正発明における「吸気通路が形成されているボディにスロットルシャフトの軸孔に貫通する通孔が形成されているとともに通孔に摩擦性能を有する緩衝部材が軸孔に挿通されているスロットルシャフトの外周面を押圧する状態で挿入支持されて」おり、「緩衝部材が弾性材により形成された球体であるとともに緩衝部材が通孔に螺入された押し付けねじによりスロットルシャフトを押圧する状態で挿入支持されている」、「スロットルバルブ装置」とは、「スロットルバルブの回転方向に対する緩衝機構を備えるスロットルバルブ装置」という限りにおいて一致する。 したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「吸気通路に軸支した断面が円形のスロットルシャフトに前記吸気通路を通過する空気量を調整するためのスロットルバルブが固定されているとともに閉方向に付勢されて備えられたスロットルバルブ装置であって、スロットルバルブの回転方向に対する緩衝機構を備えるスロットルバルブ装置。」 [相違点1] スロットルバルブの回転方向に対する緩衝機構を備えるスロットルバルブ装置に関して、本件補正発明においては、「吸気通路が形成されているボディにスロットルシャフトの軸孔に貫通する通孔が形成されているとともに通孔に摩擦性能を有する緩衝部材が軸孔に挿通されているスロットルシャフトの外周面を押圧する状態で挿入支持されて」おり、「緩衝部材が弾性材により形成された球体であるとともに緩衝部材が通孔に螺入された押し付けねじによりスロットルシャフトを押圧する状態で挿入支持されている」ものであるのに対して、引用発明においては、「スロットルバルブ14が全閉状態の近傍になると、スロットルレバー30に取り付けられたアジャストスクリュー35がダッシュポット50を押圧することにより、スロットルバルブ14が緩やかに閉めるためのダッシュポット5を備える」ものである点。 [相違点2] エンジンのスロットルバルブ装置が、本件補正発明においては、「小型で手持ち式の器具に用いられる」ものであるのに対して、引用発明においては、「船外機等に用いられる」ものである点。 以下、上記相違点について検討する。 [相違点1について] (1)刊行物2記載の技術は、「操舵装置2に連結された回転シャフト36に摩擦抵抗を与える摩擦抵抗付与機構28であって、回転シャフト36の周面に対して摩擦部材29を、回転シャフト36の挿通孔42に連通する孔に設けられたプラグ33及びコイルばね32によって当接させ、押し付けることによって、運転者の操舵感を向上させる技術」であって、刊行物2記載の技術における回転シャフト36に摩擦抵抗を与える摩擦抵抗付与機構28は、操舵装置に用いられるものであり、引用発明におけるスロットルボディとは技術分野が異なる上、摩擦抵抗付与機構28により摩擦抵抗を与える目的が引用発明のものと異なるものであるから、引用発明に刊行物2記載の技術を適用することには困難性があるというべきである。 仮に、刊行物2記載の技術を引用発明に適用したとしても、刊行物2記載の技術における「摩擦部材29」は、本件補正発明における「弾性体により形成された球体」のものであるか明らかではないから、引用発明に刊行物2記載の技術を適用して、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易になし得たとすることはできない。 (2)刊行物3記載の技術は、「ステアリング・コラムのメーン・シャフトの側部に接触する摩擦部材と、弾性部材を介して前記摩擦部材を付勢する調整ネジとからなるステアリング操作力調整装置であって、ユーザ-が自分で容易にステアリング操作力を調整することができ、好みのステアリング・フィーリングを得る技術」であって、刊行物3記載の技術におけるステアリング・コラムのメーン・シャフトの側部に接触する摩擦部材は、ステアリング機構に用いられるものであって、引用発明におけるスロットルボディとは技術分野が異なる上、摩擦部材により摩擦抵抗を与える目的が引用発明のものと異なるものであるから、引用発明に刊行物3記載の技術を適用することには困難性があるというべきである。 仮に、刊行物3記載の技術を引用発明に適用したとしても、刊行物3記載の技術における「摩擦部材」は、本件補正発明における「弾性体により形成された球体」のものであるか明らかではないから、引用発明に刊行物3記載の技術を適用して、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易になし得たとすることはできない。 [相違点2について] 引用発明のスロットルボディに関して、様々な用途のエンジンに用いることが可能であることは技術常識から明らかであるから、引用発明における船外機等に用いられるスロットルボディを、小型で手持ち式の器具に用いることにより、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易になし得たことである。 そして、本件補正発明全体について検討すると、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易になし得たことであるといえるものの、本件補正発明が、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項である「吸気通路が形成されているボディにスロットルシャフトの軸孔に貫通する通孔が形成されているとともに通孔に摩擦性能を有する緩衝部材が軸孔に挿通されているスロットルシャフトの外周面を押圧する状態で挿入支持されて」おり、「緩衝部材が弾性材により形成された球体であるとともに緩衝部材が通孔に螺入された押し付けねじによりスロットルシャフトを押圧する状態で挿入支持されている」ことを有することにより、チェーンソーや芝刈り機などの小型で比較的廉価な手持ち式の機器の緩衝部材を、施工も簡単で軽量且つ廉価に提供することができるという格別な効果を奏するものである。(本願明細書の段落【0023】参照) 以上の検討により、引用発明に刊行物2記載の技術又は刊行物3記載の技術を適用して上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易になし得たとすることはできないから、本件補正発明は、引用発明及び、刊行物2記載の技術又は刊行物3記載の技術に基いて当業者が容易になし得たということはできず、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものである。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 そうすると、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に違反するものではない。 また、本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に違反するものではない。 3.むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合し、適法になされたものである。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1及び2に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-01-04 |
出願番号 | 特願2011-27728(P2011-27728) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F02D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 二之湯 正俊、竹下 和志 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
松下 聡 槙原 進 |
発明の名称 | スロットルバルブ装置 |
代理人 | 橋本 克彦 |
代理人 | 橋本 京子 |