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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1309507
審判番号 不服2014-11201  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-12 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2012-525611「顔認識を使用してアドホックネットワークを確立すること」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月24日国際公開、WO2011/022247、平成25年 1月24日国内公表、特表2013-502654〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2010年8月10日(優先権主張外国庁受理2009年8月21日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年2月4日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年6月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年6月12日に提出された手続補正書による手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後の発明
本件補正は,平成24年4月23日に提出された国際出願翻訳文提出書の特許請求の範囲の請求項29に記載された

「デバイスに接続するための方法であって,
生体情報を収集することと,
前記生体情報に基づいてデバイス識別子を判断することと,
前記デバイス識別子に基づいて前記デバイスと通信することと
を備える方法。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,

「デバイスに接続するための方法であって,
アドホックネットワークのメンバーシップについて検討される当事者の生体情報を収集することと,
前記生体情報に基づいてデバイス識別子を判断することと,
前記デバイス識別子に基づいて前記デバイスとワイヤレスに通信することとを備える方法。」(下線は補正箇所。)
という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2 新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件について
本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲若しくは図面に記載した事項の範囲内において,補正前の特許請求の範囲の請求項29に記載された「生体情報」が「アドホックネットワークのメンバーシップについて検討される当事者の」「生体情報」である点を付加して限定し,また,「通信すること」が「ワイヤレスに」「通信すること」である点を付加して限定することにより,特許請求の範囲を減縮するものであるから,特許法第17条の2第3項(新規事項)及び特許法第17条の2第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。
また,特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。

3 独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。

(2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-268853号公報(以下,「引用例」という。)には,「ハンズフリー通話装置,その制御方法,制御プログラム及び記録媒体」(発明の名称)に関し,以下の事項が図面とともに記載されている。

ア 「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下,図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は,本発明の実施形態に係るハンズフリー通話装置10の機能構成を示すブロック図である。このハンズフリー通話装置10は,自動車等の車両に配置され,予め定めたユーザが使用許可者であり,また,カーオーディオ装置としても機能するものである。
【0016】
このハンズフリー通話装置10において,制御部20は,CPUを備え,このハンズフリー通話装置10の全体を制御するコンピュータとして機能する。また,記憶部21は,制御部20によって実行される制御プログラムやデータの他,使用許可者の生体情報D1や,使用許可者が所有する携帯電話機100を識別する識別情報D2が記憶される。ここで,本実施形態では,生体情報D2は指紋データ(指紋の画像データ或いは指紋の特徴を示すベクトルデータ等)であり,識別情報D2は携帯電話機100の電話番号である。
【0017】
オーディオ部22は,一般的なカーオーディオ装置と同様の構成を備えるものであるため詳細な説明は省略するが,制御部20の制御の下,CD(Compact Disc)の再生処理やラジオの受信処理を行い,対応する音声を,車両内に配置されたスピーカから放音させる。
【0018】
入力インターフェース(入力I/F)23は,電話番号等を入力するためのテンキーや認証開始を指示する操作子といったハンズフリー通話用の操作子の他,CD再生用の操作子等のオーディオ操作用の操作子を備えるものである。すなわち,制御部20は,この入力I/F23を介してユーザから各種指示を入力し,この指示に応じてハンズフリー通話制御や,オーディオ部22の制御を適宜行うようになっている。
【0019】
通信インターフェース(通信I/F)24は,RS(Recommended Standard)-232C,USB(Universal Serial Bus)等の汎用の通信インターフェース或いは独自規格の通信インターフェースであり,この通信I/F24には,音声入力ユニット25と,生体情報検出ユニット26とが接続される。
【0020】
音声入力ユニット25は,ハンズフリー通話の際の送話音声を入力するものであり,マイクやアンプ等から構成される。このように,音声入力ユニット25は,通信I/F24を介して接続されるので,ハンドルやダッシュボードの上等,使用者(ドライバ)の音声を入力し易い位置に配置することが可能となっている。但し,この音声入力ユニット25をハンズフリー通話装置10に内蔵するようにしても良い。
【0021】
生体情報検出ユニット(検出手段)26は,使用者の生体情報を検出するものであり,本実施形態では,指紋を検出する指紋検出ユニットが適用される。この生体情報検出ユニット26は,制御部20の制御の下,指紋の読み取りを開始し,読み取った指紋データを出力する。この生体情報検出ユニット26は,ドライバが運転中の間は,基本的にいつでもドライバの指紋を読み取ることができるように,少なくとも指紋を読み取る指紋読取部が車両のハンドルに設けられている。
【0022】
無線通信部30は,制御部20の制御の下,Bluetooth(登録商標)規格に準拠して近距離無線通信を行うものであり,周囲に通信エリアを形成して,この通信エリアに在圏する携帯電話機100と無線通信する。なお,通信方式はBluetoothに限らず,無線LAN等の他の無線通信方式でもよく,また,この無線通信部30は,このハンズフリー通話装置10に着脱可能な汎用の無線通信ユニットでもよい。
【0023】
具体的には,この無線通信部30は,この無線通信部30全体を制御する通信制御回路31と,音声入力ユニット25を介して入力した送話音声等の送信データに対して所定の変調処理を施す変調回路32と,変調回路32の出力信号に基づいてアンテナ33から無線信号を送信させる出力回路34と,アンテナ33を介して受信した送話音声等の信号を増幅する増幅回路35と,受信信号に対して所定の復調処理を施す復調回路36等から構成されている。
【0024】
次に,このハンズフリー通話装置10で使用可能な携帯電話機(電話端末)100について簡単に説明する。この携帯電話機100は,移動通信網(図示略)を介して他の携帯電話機や固定電話と通話通信するものであり,スピーカフォンやマイクロフォン,通話通信のための通信部といった,一般的な携帯電話機が備える構成の他に,上記無線通信部30と略同様の構成を具備する無線通信ユニット(図示略)を備える。また,この携帯電話機100は,一般的な携帯電話機と同様に,自機の電話番号が内蔵メモリに記憶されており,無線通信ユニットは,内蔵メモリに記憶された電話番号の送信や,電話相手からの受話音声の送信や送話音声の受信等の音声通信を無線で行うことが可能となっている。また,表示部27は,各種情報を表示するものであり,例えば,液晶表示パネルや液晶駆動回路等から構成されている。」

イ 「【0026】
図2は,ハンズフリー通話システム構築の動作を示すフローチャートである。
【0027】
まず,制御部20は,ドライバ席に着座する人が使用許可者か否かを判定するドライバ判定処理を実行する(ステップS1)。具体的には,制御部20は,生体情報検出ユニット26を駆動し,この生体情報検出ユニット26によりハンドルを握る人の指紋を読み取り,通信I/F24を介して指紋データを入力する。続いて,制御部20は,入力した指紋データと,記憶部21に記憶された生体情報D1(指紋データ)とを照合し,その一致度を演算により算出し,一致度が予め定めた閾値レベル以上か否かを判定する。
【0028】
そして,一致度が閾値レベル以上の場合,つまり,入力した指紋データと記憶部21に記憶された生体情報D1(指紋データ)との照合がとれ,使用許可者であると判定した場合(ステップS2:YES),制御部20は,その使用許可者の携帯電話機100の検索を行う(ステップS3)。
【0029】
具体的には,制御部20は,無線通信部30により通信エリアに在圏する携帯電話機100と無線通信を行うことにより,携帯電話機100から電話番号の情報を取得し,その電話番号が,記憶部21に記憶された識別情報D2(電話番号)と一致するか否かを判定する。ここで,制御部20は,通信エリアに複数の携帯電話機100が存在する場合は,無線通信により各携帯電話機100から電話番号をそれぞれ取得し,識別情報D2と一致するか否かをそれぞれ判定する。
【0030】
そして,制御部20は,識別情報D2と一致する電話番号を取得し,かつ使用許可者の携帯電話機100が見つかったと判定すると(ステップS4:YES),無線通信部30によりその携帯電話機100(以下,携帯電話機100aと表記する。)だけと通信同期を確立して無線接続し,ハンズフリー通話システムを構築する(ステップS4)。
【0031】
このようにハンズフリー通話システムを構築すると,制御部20は,無線接続された携帯電話機100aの発着信を待機する状態となり,この携帯電話機100aを介したハンズフリー通話を制御する。具体的には,制御部20は,例えば,入力I/F23を介して発信指示や電話番号を入力すると,無線通信部30を介して発信コマンド及び電話番号を送信して携帯電話機100aに発信処理を行わせ,その後,この携帯電話機100aと音声通信することにより,携帯電話機100aが受信した受話音声をスピーカから放音させると共に,音声入力ユニット25を介して入力した送話音声を携帯電話機100aに音声入力させる。
【0032】
また,制御部20は,無線通信部30を介して携帯電話機100aから無線送信された着信トリガ信号(着信音の音声信号を含む)を受信することにより着信を検知し,この場合,着信音をスピーカから放音させると共に,入力I/F23を介して通話指示を入力すると,対応する制御コマンドを送信して携帯電話機100aを通話状態に制御し,この携帯電話機100aと音声通信する。」

ウ 「【0039】
また,上記ステップS10?S12の新規登録の際,制御部20は,記憶部21に予め記憶された生体情報D1及び識別情報D2を,この新規登録対象の生体情報D1及び識別情報D2に更新する(書き換える)ようにしてもよいし,追加登録するようにしてもよい。
【0040】
追加登録する場合は,使用許可者毎に,生体情報D1と識別情報D2とを対応づけて記憶するようにし,制御部20は,ステップS1及びS2において,入力した指紋データと,記憶部21に記憶された各生体情報D1とを照合し,ステップS3及びS4において,照合がとれた生体情報D1に対応づけられた識別情報D2と一致する電話番号を有する携帯電話機100を検索するようにすれば,ハンズフリー通話の許可者を複数人にすることが可能となる。」

エ 「【0049】
また,上述の実施形態では,識別情報D2を電話番号としたが,携帯電話機100を識別可能な情報であればよく,携帯電話機100に予め割り当てられた識別情報や,無線通信ユニット等に固有に割り当てられたアドレス情報(MACアドレスやBluetooth Device Address)でもよい。」

上記摘記事項及びこの分野における技術常識を勘案すると,以下の技術事項が読み取れる。

a 摘記事項イ及び図2のフローチャートに示されたハンズフリー通話システム構築の動作は,ハンズフリー通話装置10から携帯電話機100に無線接続する方法を示している。
b ステップS1のドライバ判定処理において,ドライバ席に着座する人が使用許可者か否かを判定するために指紋データを検出し,記憶された生体情報D1(指紋データ)と照合し,照合がとれ使用許可者であると判定した場合(ステップS2:YES),その使用許可者の携帯電話機100の検索を行う(ステップS3)。
c 上記bの携帯電話機100の検索は,具体的には通信エリアに在圏する携帯電話機100と無線通信を行ってその電話番号の情報を取得し,記憶された識別情報D2(電話番号)との一致を判定することにより行っているが,該識別番号D2(電話番号)は,使用許可者毎に生体情報D1(指紋データ)と対応付けられて記憶されているものである(摘記事項ウの段落【0040】)。
d 上記cで識別情報D2(電話番号)に対応する携帯電話機100が見つかった場合(ステップS4:YES),その携帯電話機100だけと通信同期を確立して無線接続し,ハンズフリー通話システムを構築する。
e 上記dでハンズフリー通話システムを構築した後,ハンズフリー通話装置10は,無線通信部30を介して発信コマンド及び電話番号を送信したり携帯電話機100から無線送信された着信トリガ信号を受信したりするが,このような通信は,上記無線通信部30がBluetooth(登録商標)規格に準拠して近距離無線通信を行っているものである(摘記事項アの段落【0022】)。

上記技術事項及びこの分野における技術常識を総合勘案すると,上記引用例には次の発明が記載されていると認める。

「ハンズフリー通話装置10から携帯電話機100に無線接続する方法であって,
ハンズフリー通話装置10から無線接続しようとする携帯電話機100の使用許可者の指紋データを検出することと,
前記検出した指紋データと記憶された生体情報D1(指紋データ)とを照合し,照合がとれた生体情報D1(指紋データ)に対応付けられて記憶された識別番号D2(電話番号)を検索することと,
前記識別番号D2(電話番号)に対応する携帯電話機100と通信同期を確立して無線接続し,近距離無線通信を行うこととを備える方法。」
(以下,「引用発明」という。)

(3)対比
補正後の発明と引用発明とを,主たる構成要件毎に順次対比する。

a 引用発明の「携帯電話機100」は明らかに「デバイス」であるから,「ハンズフリー通話装置10から携帯電話機100に無線接続する」ことは補正後の発明の「デバイスに接続する」ことに含まれる。
b 引用発明の「ハンズフリー通話装置10から無線接続しようとする携帯電話機100の使用許可者」は,生体情報D1(指紋データ)の照合によって「無線接続の可否について検討される当事者」であるといえる。一方,補正後の発明の「アドホックネットワークのメンバーシップについて検討される当事者」に関し,「アドホックネットワーク」が「無線通信ネットワーク」であることは明らかであって,その「メンバーシップについて検討される」ことは,無線通信ネットワークを介した「無線接続の可否について検討される」ことを含むといえる。
そうすると,引用発明の「ハンズフリー通話装置10から無線接続しようとする携帯電話機100の使用許可者」と,補正後の発明の「アドホックネットワークのメンバーシップについて検討される当事者」とは,「無線接続の可否について検討される当事者」である点で共通する。
c 引用発明の「指紋データを検出すること」は補正後の発明の「生体情報を収集すること」に含まれる。
d 引用発明の「前記検出した指紋データと記憶された生体情報D1(指紋データ)とを照合し,照合がとれた生体情報D1(指紋データ)に対応付けられて記憶された識別番号D2(電話番号)を検索すること」により検索された「識別番号D2(電話番号)」は,「検出した指紋データに基づいて判断された」「識別番号D2(電話番号)」であるといえる。また,「識別番号D2(電話番号)」は明らかに「識別子」であるから,補正後の発明の「デバイス識別子」とは「識別子」である点で共通する。
そうすると,引用発明の「前記検出した指紋データと記憶された生体情報D1(指紋データ)とを照合し,照合がとれた生体情報D1(指紋データ)に対応付けられて記憶された識別番号D2(電話番号)を検索すること」と,補正後の発明の「前記生体情報に基づいてデバイス識別子を判断すること」とは,「前記生体情報に基づいて識別子を判断すること」である点で共通する。
e 引用発明の「近距離無線通信を行うこと」は補正後の発明の「ワイヤレスに通信すること」に明らかに相当するから,上記dでの検討も踏まえると,引用発明の「前記識別番号D2(電話番号)に対応する携帯電話機100と通信同期を確立して無線接続し,近距離無線通信を行うこと」と,補正後の発明の「前記デバイス識別子に基づいて前記デバイスとワイヤレスに通信すること」とは,「前記識別子に基づいて前記デバイスとワイヤレスに通信すること」である点で共通する。

してみると,両者の一致点及び相違点は,以下のとおりある。

(一致点)
「デバイスに接続するための方法であって,
無線接続の可否について検討される当事者の生体情報を収集することと,
前記生体情報に基づいて識別子を判断することと,
前記識別子に基づいて前記デバイスとワイヤレスに通信することとを備える方法。」

(相違点1)
「無線接続の可否について検討される当事者」が,補正後の発明では「アドホックネットワークのメンバーシップについて検討される当事者」であるのに対し,引用発明では「ハンズフリー通話装置10から無線接続しようとする携帯電話機100の使用許可者」である点。

(相違点2)
「識別子」が,補正後の発明では「デバイス識別子」であるのに対し,引用発明では「識別番号D2(電話番号)」である点。

(4)判断
上記各相違点につき検討する。

(相違点1)について
まず,引用発明の「携帯電話機100の使用許可者」が行おうとする,ハンズフリー通話装置10と携帯電話機100との間の無線接続の具体例として,引用例には「Bluetooth(登録商標)規格に準拠」した「近距離無線通信」が例示されている(摘記事項アの段落【0022】)が,該Bluetooth(登録商標)規格に準拠した近距離無線通信が,アクセスポイントを介さずに端末機器同士がピアツーピアで直接通信を行う方式であって「アドホック通信」と言いうることは技術常識である。
さらに,引用例には「使用許可者」を複数とし,使用許可者毎に,生体情報D1と識別番号D2とを対応付けて記憶するようにすることが記載されており(摘記事項ウの段落【0039】-【0040】),このとき,複数の使用許可者は上記「アドホック通信」を許可される者であって,「アドホックネットワークのメンバー」ともいい得るものである。
そうしてみると,「無線接続の可否について検討される当事者」である引用発明の「ハンズフリー通話装置10から無線接続しようとする携帯電話機100の使用許可者」は,「アドホックネットワークのメンバーシップについて検討される当事者」といえることがわかるから,上記相違点1は実質的な相違であるとはいえない。

(相違点2)について
引用発明の「識別番号D2」に関し,引用例には「また,上述の実施形態では,識別情報D2を電話番号としたが,携帯電話機100を識別可能な情報であればよく,携帯電話機100に予め割り当てられた識別情報や,無線通信ユニット等に固有に割り当てられたアドレス情報(MACアドレスやBluetooth Device Address)でもよい。」(摘記事項エの段落【0049】)として,電話番号以外にも「携帯電話機100に予め割り当てられた識別情報」や「無線通信ユニット等に固有に割り当てられたアドレス情報(MACアドレスやBluetooth Device Address)」でもよいことが記載されており,これらの情報は「デバイス」である「携帯電話機100」を識別する情報であって「デバイス識別子」といえるものである。
そうすると,引用発明の「識別番号D2(電話番号)」を補正後の発明の「デバイス識別子」とすることは,引用例の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

また,補正後の発明の作用効果も,当業者が予測可能なものであって,格別なものではない。

(5)まとめ
以上のとおり,補正後の発明は,引用発明及び引用例に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定 1 本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2 引用発明
引用発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3 独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3 独立特許要件について」の項で検討したとおり,引用発明及び引用例に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-28 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-18 
出願番号 特願2012-525611(P2012-525611)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 坂本 聡生
新川 圭二
発明の名称 顔認識を使用してアドホックネットワークを確立すること  
代理人 砂川 克  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 河野 直樹  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 井上 正  
代理人 堀内 美保子  
代理人 福原 淑弘  
代理人 佐藤 立志  
代理人 岡田 貴志  

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