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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1309525
審判番号 不服2014-15063  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-31 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2012- 1348「認識通信」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月21日出願公開、特開2012-120197〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年1月10日を国際出願日とする出願である特願2008-550497号(パリ条約による優先権主張平成18年1月11日(米国)、同日(米国)、同日(米国)、同年9月15日(米国)、同日(米国)、同年10月27日(米国))の一部を平成24年1月6日に新たな特許出願としたものであって、平成25年3月26日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して同年10月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年3月24日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年4月1日に請求人に送達された。これに対して、同年7月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年7月31日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の結論]
平成26年7月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成25年10月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は次のとおりのものである。(以下、「補正前発明」という。)

「【請求項1】
無線データ伝送の方法であって、
ユーザ機器においてリソースの第1セットを使用する第1の通信セッションを確立すること、
ユーザ機器の現在の前記第1の通信セッションの確立状態を決定または将来の前記第1の通信セッションの確立状態を推測すること、
前記第1の通信セッションの確立状態で利用可能で前記第1セットとは異なるリソースの第2セットを検出すること、
決定または推測されたユーザ機器状態に基づいて、前記第1セットと前記第2セットとを比較し、この比較結果に基づいて、前記リソースの第2セットを使用する第2の通信セッションへ移行することを備える方法。」

本件補正により、平成25年10月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。以下、本件補正後の請求項1に係る発明を「補正発明」という。)

「【請求項1】
無線データ伝送の方法であって、
ユーザ機器においてリソースの第1セットを使用する第1の通信セッションを確立すること、
現在の位置、使用された通信装置、使用された通信様相、通信の信頼度、通信相手、通信の重要度、移動、利用可能なリソース、優先の少なくとも1つを含むユーザ機器の現在の前記第1の通信セッションの確立状態を決定または将来の前記第1の通信セッションの確立状態を推測すること、
前記第1の通信セッションの確立状態で利用可能で前記第1セットとは異なるリソースの第2セットを検出すること、
決定または推測されたユーザ機器状態に基づいて、前記第1セットと前記第2セットとを比較し、この比較結果に基づいて、前記リソースの第2セットを使用する第2の通信セッションへ移行することを備える方法。」

そして、本件補正後の請求項1の記載は、本件補正前の請求項1に記載された「ユーザ機器の現在の前記第1の通信セッションの確立状態を決定または将来の前記第1の通信セッションの確立状態」に「現在の位置、使用された通信装置、使用された通信様相、通信の信頼度、通信相手、通信の重要度、移動、利用可能なリソース、優先の少なくとも1つを含む」を附したものであるということができる。

2 補正の適否
以上のとおり、本件補正は、平成25年10月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1の通信セッションの確立状態」について上記のとおり限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-277815号公報(平成17年10月6日出願公開)(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(ア)「【請求項1】
複数のネットワークのうち所定のネットワークを利用して相手端末と通信する移動端末の利用ネットワーク選択方法において、
各ネットワークと接続して移動端末を所定のネットワークを介して相手先と通信させる制御をおこなうサーバシステムを設け、
移動端末は第1のネットワークを利用して相手先と通信中、別のネットワークの検出、あるいは、受信状態の劣化検出を行い、
該別のネットワークを検出した時、あるいは、受信状態の劣化を検出した時、サーバシステムは通信を継続するネットワークを選択して移動端末に呈示し、
移動端末側で通信を継続するネットワークを選択してサーバシステムに通知し、
サーバシステムの制御で該選択したネットワークを介して通信を継続する、
ことを特徴とする利用ネットワーク選択方法。
【請求項2】
複数のネットワークのうち所定のネットワークを利用して相手端末と通信する移動端末の利用ネットワーク選択方法において、
各ネットワークと接続して移動端末を所定のネットワークを介して相手先と通信させる制御をおこなうサーバシステムを設け、
移動端末は第1のネットワークを利用して相手先と通信中、別のネットワークの検出、あるいは、受信状態の劣化検出を行い、
該別のネットワークを検出した時、あるいは、受信状態の劣化を検出した時、サーバシステムは通信を継続するネットワークを自動選択し、
サーバシステムの制御で該選択したネットワークを介して通信を継続する、
ことを特徴とする利用ネットワーク選択方法。」
(公報第2頁)

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は利用ネットワーク選択方法及び通信システム、移動端末に係わり、特に、複数のネットワークのうち所定のネットワークを利用して相手端末と通信する移動端末の利用ネットワーク選択方法及び通信システム、移動端末に関する。
すなわち、本発明はダイバーシチネットワークサービスの利用者が自らの通信内容や利用者の置かれた経済的状況、更には移動環境条件に応じて接続、利用するネットワークを利用者の判断で選択、決定し、もしくは網側のサーバの判断で自動的に選択、決定することを可能にした利用ネットワーク選択方法及び通信システム、移動端末に関する。」
(公報第3頁)

(ウ)「【0004】
以上より現状の移動通信には以下の課題がある。
1)通常、移動端末が発呼/着呼する場合、指定通信事業者のサービスエリア内の基地局(一般的にNode-B/RNCと称す)を介して通信ネットワークに接続されるのみであり、その時の電波伝播状態が多少悪くてもSetup(通信の接続)要求を行い通話する方法しかない。すなわち、現状では、指定通信事業者以外のネットワークにおける電波伝播状態が良好であっても該ネットワークを利用できない。
2)利用者の判断で無線ネットワークを選択する事ができない。たとえば、大量データ送信のためには、高速通信可能なネットワークを使えばよいが、現金がない。そんな時、ユーザは安くて低速のネットワークで通信したい。しかし、現状では利用者がネットワークを選択できるような仕組みは実現されていない。・・・・・・ネットワークの利用者選択。
3)現状は、同一通信業者のネットワークと異なるネットワークへの利用者の移動性を確保できず(ネットワークの切り替え不可能)、このため利用者が移動する毎に利用する通信ネットワークを最適なネットワークへ切換える事が不可能であり、シームレスな利用環境とはなっていない。このため、自動的に通信状態が良好なネットワークを選択して通信する仕組みが要望される。・・・・・・サーバによるネットワークの自動切り替え
4)シームレスローミング及びシームレスハンドオーバーの基本としているのはAll-IP NW / Mobile-IP NWであり、IP(Internet Protocol)アドレスを基に移動性の実現(ネットワークの切り替え)が考慮されている。しかし、現在の通信接続に用いられている識別子である「電話番号」をそのまま活用した実現方法は考えられていない。
【0005】
以上から本発明の目的は、指定通信事業者以外のネットワークを選択できるようにし(ネットワークダイバーシチ)、電波伝播状態が良好な任意のネットワークを利用できるようにすることである。
本発明の別の目的は、複数のネットワークと接続可能な場合、利用者の判断で無線ネットワークを選択できるようにすることである。
本発明の別の目的は、複数のネットワークと接続可能な場合、自動的に通信状態が良好なネットワークを選択できるようにすることである。
現在の通信接続に用いられている識別子である「電話番号」をそのまま活用したネットワークダイバーシチを行なえるようにすることである。」
(公報第4頁)

(エ)「【0009】
本発明の利用ネットワーク選択方法及び通信システム、移動端末によれば、以下の効果がある。
1)移動体通信(無線通信)環境で利用者の都合により同一ネットワーク内の他通信事業者を選択出来る事により、音声/データ通信時の改善及び移動性を確保し、利用者への利便性を達成する事が可能となる
2)本発明により利用者の意志を反映したネットワーク接続が可能となり、利用する移動通信事業者のネットワークを決定することで利用者自身に「納得性」を提供することになる。
3)自動設定を用いた場合は、利用者が意識せずに最適なネットワーク環境を用いる事が可能となる。
4)ASPを仲介として、一時利用のアドレスを用いる事で非契約ネットワーク事業者(NWOP)とも通信する事が可能であり、通信の継続性/移動性を維持できる。
5)異なるNWOPが提供するNWにもアクセス可能であり、またシームレスなハンドオーバー(Mobility)を実現できる。
【0010】
図1は本発明の最良の形態説明図であり、移動情報端末(移動端末)11は複数のネットワーク(NW-A,NW-B)12a,12bにおける無線方式に対応した通信部を備え、それぞれを介して相手先端末14と通信することができる。ネットワーク12a,12bは移動無線ネットワークであり、たとえば、ネットワーク12aはCDMAネットワーク、12bはWLAN(Wireless LAN)ネットワークである。ASP(Application Service Provider:サーバシステム)13は本発明のネットワークダイバーシチサービスを実現するもので、移動情報端末11からのサービス開始要求により移動情報端末がどのネットワーク12a,12bを介して相手端末14と通信するか決定して移動情報端末の表示部に呈示し(利用者選択方式)、あるいは自動的にネットワークを選択し(ASP自動選択方式)、利用者が選択したネットワークあるいはASPが自動選択したネットワークを介して移動情報端末11を相手端末14に接続する。移動情報端末11は、現在通信中のネットワークの無線状態が悪化した時、あるいは、別のネットワークを検出した時にサービス開始要求をASP13に送る。たとえばWLAN通信中にWLANネットワークの無線状態が悪化した時、あるいはCDMA通信中にWLAN電波を検出した時に、移動情報端末11はサービス開始要求をASP13に送る。
【0011】
移動情報端末11は、移動通信制御を実行する処理部11a、WLAN通信部11b、CDMA通信部11c、WLAN電波検出部11d、無線状態が悪化したことを検出する無線状態悪化検出部11e、操作表示部11f、ネットワーク12a,12bの無線状態(受信電界強度RSSI)を検出する検出器11f,11gを備えている。
移動情報端末11が太実線で示すようにCDMAネットワーク12aを介して相手端末14と通信中において、移動によりホットスポットからWLAN電波を検出すると、移動情報端末11はASP13にサービス開始要求を送る。これにより、ASP13は各ネットワーク12a,12bの無線状態を比較し、最適なネットワークを移動情報端末11の操作表示部11fに表示し、利用者が選択したネットワークを通信継続用のネットワークとし(利用者選択方式)、あるいは、最適なネットワークを通信継続用のネットワークとして自動選択する(ASP自動選択方式)。例えば、WLANネットワーク12bが通信継続用のネットワークとして選択された場合には、以後、ASPの制御で該WLANネットワーク12bを介して移動情報端末11と相手端末14との間で通信が行われる。
【0012】
また、移動情報端末11が点線で示すようにWLANネットワーク12bを介して相手端末14と通信中において、移動によりWLANネットワークの通信状態が悪化すると、移動情報端末11はASP13にサービス開始要求を送る。これにより、ASP13は各ネットワーク12a,12bの無線状態を比較し、最適なネットワークを移動情報端末11の操作表示部11fに表示し、利用者が選択したネットワークを通信継続用のネットワークとし(利用者選択方式)、あるいは、最適なネットワークを通信継続用のネットワークとして自動選択する(ASP自動選択方式)。例えば、CDMAネットワーク12aが選択された場合には、以後、ASPの制御で該CDMAネットワーク12aを介して移動情報端末11と相手端末14との間で通信が行われる。
以上では、移動情報端末が両方のネットワークのネットワーク事業者と契約済みの場合であるが一方のネットワークと契約していない場合がある。例えば、ネットワーク12a,12bをCDMAネットワークとする時、ネットワーク12aと通信契約しているが、ネットワーク12bと通信契約をしていない場合である。かかる場合において、ネットワーク12aからネットワーク12bにハンドオーバさせるために、ASP13は非契約ネットワーク12bより一時接続許可と仮電話番号を取得し、該仮電話番号を移動情報端末に通知し、移動情報端末は該仮電話番号を用いてネットワーク12bを介して相手端末と通信する。
以上では2つのネットワークに限定して説明したが本発明は2つのネットワークに限定するものではない。」
(公報第5?6頁)

(オ)「【0023】
(E)各通信事業者間の移動性制御
a)通信コネクションの維持手順
・第1のネットワークNW-A(たとえばCDMAネットワーク)から別の第2のネットワークNW-B(たとえばWLANネットワーク)に通信コネクションを変更する場合、NW-A経由の通信コネクションが確立していれば、NW-A/NW-Bの無線区間の環境条件が認知出来、かつ、NW-B経由の通信コネクションの確立までは、NW-Aの通信コネクションを維持する。
・この時、NW-AとNW-Bそれぞれの識別子(アドレス)の関連付けをおこなってNW-Bの識別子を用いて通信を継続する。
・ベアラを含め、通信コネクションをNW-B経由に変更する。
【0024】
b)サービスエリアの概念
図3はサービスエリアの概念図であり、サービスエリアのサイズは、CDMAとWLANの場合には、CDMA NW≫ WLAN NWであり、WLAN NWはCDMA NWに包含されている。かかる包含関係があるため、WLANの無線状態の判定だけで在圏通信ネットワークの区別が可能であり、WLANの無線状態が良ければWLAN NWに在圏し(WLAN NWにもCDMAの電波は届いている)、WLANの無線状態が悪ければCDMA NWに在圏する。
c)各通信事業者間の移動性制御は以下の通りである。
・CDMA NW-WLAN NW間:ASP制御によるハンドオーバー
・CDMA NW-CDMA NW間:RNC制御によるハンドオーバー
・CDMA NW-GSM NW間 :RNC制御によるハンドオーバー
・CDMA NW-PHS/PDC NW間:ASP制御によるハンドオーバー
・WLAN NW-WLAN NW間:ASP制御によるハンドオーバー
・WLAN NW-PHS/PDC NW間:ASP制御によるハンドオーバー
RNC制御によるハンドオーバーは従来より行われており、ASP制御によるハンドオーバーが本発明部分である。
【0025】
(F) ネットワークダイバーシチの概略
1)ネットワークダイバーシチ機能として、端末が発呼する時に利用者が電波伝播状態の情報を受けて、より良い条件の同一エリア内ネットワークを選択する事が出来る。
2)利用者により有利な情報をASPの運用業者が提供し、利用者側での選択方式でネットワークを切換える事により、データ伝送時間を短縮させ、あるいは課金料金を削減させることが出来る。・・・・・・利用者選択
3)また事前に利用者の希望ネットワークを登録しておいて、利用者が利用する場所により自動的にネットワークを切換える方式も可能とし、シームレスな環境を実現する事が出来る。・・・・・・ASP自動選択
4)ASP側でネットワークダイバーシチサービスに関する各ネットワークの通信無線状態、加入者データ状態(位置登録、サービス設定)、課金状態等の全てのデータを管理する事とにして、通信事業者によるデータ維持管理を不要とする。
5)ASPを『アンカー』と見なす仕組み(機能)を持つ事により、端末通信中に於ける無線方式の切換え選択を可能にする。
6)応用例として、端末側である論理で最良と思われる無線環境を自動選択する仕組みも可能となる。
7)実際の通信状態に遷移する前に利用者が意図する無線環境を選ぶ事を可能とし、端末移動中及び通信状態でも制御する仕組みを発展的に可能とする。
8)音声とデータでは無線区間の通信事業者を区別して選択出来る様にして、究極的には有線の専用線相当の専用無線網を実現できる仕組みを発展的に可能とする。」
(公報第10?11頁)

(カ)「【0042】
図13は、ASPの無線状態比較分析処理の機能ブロック図である。
無線状態比較分析処理部55は利用者登録属性データべースUADBの登録データに基づいて、比較対照となるネットワークを求めて該ネットワークの無線状態を比較対照要求通知処理部56に要求する。これにより、比較対照要求通知処理部56は、着目している移動情報端末に比較対照ネットワークを通知する。端末は通知された比較対照ネットワークの無線状態(端末受信レベルRSSI(dBm))を測定してASPに入力する。無線状態受付け処理部57は端末から受信したネットワークの無線状態(端末受信レベルRSSI(dBm))を利用者無線状態マスタデータべースURMDBに格納する。無線状態比較分析処理部55は利用者無線状態マスタデータべースURMDBに格納されている比較対照ネットワークの無線状態を比較分析して分析結果を利用者無線状態分析結果データべースURSDBに格納する。
なお、各無線状態の比較分析処理は、移動通信ネットワーク間はRSSIを用いて比較し、値が大きい方を選択する。WLAN(ワイヤレスLAN)間はホットスポットのアクセスポイントAPの位置と移動情報端末の位置よりRSSI値を計算により求めて、同様に比較し、値が大きいWLANを選択する。
【0043】
図14は比較結果通知処理の機能ブロック図である。
無線状態分析結果編集処理部58は、各ネットワークの無線状態を比較分析し、その結果を用いて利用者の端末表示に合わせて分析結果内容(選択メニュー)を編集し、無線状態通知処理部59を介して移動情報端末に送信する。この際、無線状態分析結果編集処理部58は無線状態編集ログを作成し、無線状態通知処理部59は無線状態通知ログを作成する。
図15は、利用者が契約していない通信事業者に対する(一時的な)接続要求処理の機能ブロック図である。利用者要求受付部61は利用者からの接続要求を受けて利用者要求マスタデータべースURQMDBを作成し、利用者要求分析処理部62は該利用者要求マスタデータべースURQMDBと利用者登録マスタべースUMDBを参照し、利用者の要求が非契約通信事業者への接続要求であれば、該非契約通信事業者への一時的な接続要求確認を実施し、要求が許可されたら次の図16の処理により該非契約通信事業者へ接続要求を実施する。また、利用者要求分析処理部62は分析結果を利用者要求分析結果データべースURADBに格納すると共に、接続要求が拒否された場合は、要求拒否通知処理部63を介して利用者にその旨を通知する。」
(公報第16?17頁)

(キ)「【0045】
(G)移動情報端末の基本プロセス
(a)初期状態からのプロセス
図17は移動情報端末のネットワークダイバーシチの基本プロセスを示す第1の処理フローであり、初期状態から通信状態に至るまでのプロセスを示している。なお、ネットワークはCDMAネットワークとWLANネットワークの2つとし、サービスエリアについて図3に示すような包含関係が存在するものとしているが、ネットワークは2つに限定するものではない。
移動情報端末の電源を投入した時点では、該端末はアイドル状態になっている。アイドル状態時に利用者は初期利用ネットワーク(デフォルトネットワーク)がWLANであるかCDMAであるか識別する。
初期利用ネットワークがWLANであれば(ステップ101)、移動情報端末はASPにIPアドレスを要求し(ステップ102)、ASPよりIPアドレスを受信(ステップ103)。ついで、初期サービス登録(図5)により「利用者選択方式」であるか、「ASP自動選択方式」であるか識別する(ステップ104)。利用者選択方式であれば、通信可能な2つのネットワーク(CDMA,WLAN)を表示し、利用者にネットワークの選択を要求し(ステップ105)、利用者はいずれかのネットワークを選択する(ステップ107)。選択したネットワークがCDMAであれば、周知のCDMAコネクション設定の手順(CDMAコネクション設定要求、CDMAコネクション設定応答)を実行し(ステップ108,109)、CDMAにより通信先と通信を開始する(ステップ110)。
【0046】
ステップ107において、選択したネットワークがWLANであれば、周知のWLANコネクション設定の手順(WLANコネクション設定要求、WLANコネクション設定応答)を実行し(ステップ111,112)、WLANにより通信先と通信を開始する(ステップ113)。
ステップ104において、ASP自動選択方式が設定されている場合には、通信先ネットワークの属性を調べ(ステップ114)、通信先NWが低速の属性の時は利用するネットワーク(NW)をCDMAとし、高速の属性の時は利用するNWをWLANとする。利用するNW条件を通信先NWに合せる事で対費用効果を高める。以後、CDMAであればステップ108以降のCDMAコネクション設定処理を行ない、WLANであればステップ111以降のWLANコネクション設定処理を実行する。」
(公報第18?19頁)

(ク)「【0049】
(H)ASPの基本プロセス
図19はASPのネットワークダイバーシチの基本プロセスを示す処理フローである。
CDMA通信中において(ステップ401)、移動情報端末からの無線状態報告により該端末がWLANを検出したかチェックする(ステップ402)。WLAN通信が可能になれば移動情報端末よりIPアドレスの要求があるからASPは該要求を受信し(ステップ403)、ついで、アドレス管理表を参照してIPアドレス付与済みかチェックし(ステップ404)、付与済みでなければDHCP(Dynamic Hotspot Configuration Protocol)を実行してIPアドレスを付与すると共にアドレス管理表を更新する(ステップ405,406)。
IPアドレス付与後、ASPはデータべースDBを参照して、「利用者選択方式」であるか「ASP自動選択方式」であるか参照し、それに応じた表示を端末にて実施する(ステップ407)。移動情報端末よりWLANが指定されると(ステップ408)、ASPはWLANコネクション設定の手順を実行し(ステップ409?412)、WLAN接続完了後にCDMAコネクションを解放してWLANにより通信先と通信を開始する(ステップ413,414)。以上は、CDMA通信中からWLAN通信に切り替わる場合であるが、通信中でない初期状態において(ステップ501)、移動情報端末よりWLAN発呼が行われた場合には(ステップ502)、ステップ403?406,409?412を介してWLAN通信が開始する。
【0050】
また、WLAN通信中において(ステップ601)、移動情報端末からの無線状態報告によりWLANの通信状態が悪化したかチェックする(ステップ602)。WLANの通信状態が悪化すれば、ASPはデータべースDBを参照して、「利用者選択方式」であるか「ASP自動選択モード」であるか参照し、それに応じた表示を端末にて実施する(ステップ407)。移動情報端末よりCDMAが指定されると(ステップ408)、ASPはCDMAコネクション設定の手順を実行すると共に(ステップ603?606)、アドレス管理表を参照して電話番号とIPアドレスの関連付けがあるかチェックし、ない場合にはDHCPを実行してIPアドレスを求めて関連づけ(ASPのデータべースDBにおけるアドレス管理表の更新)を行なう(ステップ607,608)。そして、CDMA接続完了後にWLANコネクションを解放してCDMAにより通信先と通信を開始する(ステップ609,610)。以上は、WLAN通信中からCDMA通信に切り替わる場合であるが、通信中でない初期状態において(ステップ501)、移動情報端末よりCDMA発呼が行われた場合には(ステップ502)、ステップ603?606を介してWLAN通信が開始する。
【0051】
図20はWLANネットワーク利用のIPアドレスによるメッセージフローの手順説明図であり、図19の処理フローに対応している。
1)WLANからの発呼する場合
移動情報端末がWLANより発呼する場合はASPよりIPアドレスを取得し、該IP アドレスを用いてIPコネクション設定要求をWLANに送る。これによりWLANはASPにWLANコネクション設定要求を送る。ASPはWLANコネクション設定要求を受信すれば、相手通信先(例えばIPプロバイダ)にIPコネクション設定要求を送る。そして、該通信先より応答を受信すれば、WLANを介して該応答を移動情報端末に通知し、以後、移動情報端末と通信先の間でWLAN通信中となる。以上の手順は図19において初期状態(ステップ501)において、WLAN発呼する場合に対応する。
【0052】
2)WLAN通信中にWLANの通信状態が悪化する場合
WLAN通信中にWLANの通信状態が悪化すると、移動情報端末はCDMAネットワークにCDMAコネクション設定要求を送り、その応答を受信してCDMAネットワークの無線状態を測定し、該無線状態をASPに通知する。ASPはWLANとCDMAの通信状態を比較し、比較結果を移動情報端末に送ると共に、CDMAベアラコネクション設定要求を移動情報端末と相手先に送る。移動情報端末はASPからの比較結果に基づいて、通信ネットワークとしてCDMAネットワークを使用しても良いかの利用者確認を求める。利用者がCDMAネットワークでOKであれば、CDMAベアラコネクション設定応答をASPに送り、ASPは通信先からもCDMAベアラコネクション設定応答があれば、それまでの旧ベアラコネクションを解放し、以後、移動情報端末と通信先の間でCDMA通信中となる。
以上は図19においてWLAN通信中(ステップ601)において、WLAN通信状態が悪化してCDMA通信に移行する場合に対応する。
【0053】
3)CDMA通信中にWLAN電波を検出した場合
CDMA通信中にWLAN電波を検出すると、移動情報端末はASPにIPアドレスを要求する。ASPは位置情報センター17(図2)に移動情報端末の位置情報を要求し、移動情報端末がWLAN電波を検出したホットスポットを特定し、IPアドレスをDHCPにより決定し、該IPアドレスを電話番号に関連付けてデータべースDBに保存する。しかる後、ASPは該IPアドレスを移動情報端末に通知すると共にネットワークの無線状態比較結果を通知する。以後、移動情報端末はIP アドレスを用いてIPコネクション設定要求をWLANに送り、WLANはASPにWLANコネクション設定要求を送る。ASPはWLANコネクション設定要求を受信すれば、移動情報端末と相手通信先にベアラコネクション設定要求を送る。移動情報端末はASPから呈示されたネットワークを表示して該ネットワークを使用しても良いかの利用者確認を求める。利用者がWLANネットワークでOKであれば、ベアラコネクション設定応答をASPに送る。ASPは、移動情報端末及び通信先より応答を受信すれば、それまでの旧ベアラコネクションを解放し、以後、移動情報端末と通信先の間でWLAN通信中となる。
以上の手順は図19においてCDMA通信中にWLANを検出してWLAN通信に移行する場合に対応する。
【0054】
以上、WLANからの発呼の場合は、IP アドレスを用いて通信を実施し、WLANの無線環境及びハンドオーバー先のCDMA無線環境を確認し、ASPが無線環境を比較分析して利用者に比較結果を通知し、移行判断を仰ぐ。利用者が通信コネクション変更を選択した時は、要求に従いASPより通信コネクションを切換える。尚、通信コネクションの切換えに際し、ASPは切換え先の通信コネクションが確立するまで、切換え元の通信コネクションも維持する。この事によりシームレスな移動性環境を実現する事が出来る。」
(公報第18?20頁)

イ これらのことから、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

移動端末の利用ネットワーク選択方法であって、
ダイバーシチネットワークサービスの利用者が自らの通信内容や利用者の置かれた経済的状況、更には移動環境条件に応じて接続、利用するネットワークを利用者の判断で選択、決定し、もしくは網側のサーバの判断で自動的に選択、決定することを可能にした利用ネットワーク選択方法及び通信システム、移動端末に関し、
指定通信事業者以外のネットワークを選択できるようにし(ネットワークダイバーシチ)、電波伝播状態が良好な任意のネットワークを利用できるようにするとともに、複数のネットワークと接続可能な場合、自動的に通信状態が良好なネットワークを選択できるようにすることであって、
移動情報端末(移動端末)11は複数のネットワーク(NW-A,NW-B)12a,12bにおける無線方式に対応した通信部を備え、それぞれを介して相手先端末14と通信することができ、ネットワーク12a,12bは移動無線ネットワークであり、たとえば、ネットワーク12aはCDMAネットワーク、12bはWLAN(Wireless LAN)ネットワークであり、ASP(Application Service Provider:サーバシステム)13は本発明のネットワークダイバーシチサービスを実現するもので、
初期状態から通信状態に至るまでのプロセスにおいて、選択したネットワークがCDMAであれば、周知のCDMAコネクション設定の手順(CDMAコネクション設定要求、CDMAコネクション設定応答)を実行し、CDMAにより通信先と通信を開始し、
端末は通知された比較対照ネットワークの無線状態(端末受信レベルRSSI(dBm))を測定してASPに入力し、無線状態受付け処理部57は端末から受信したネットワークの無線状態(端末受信レベルRSSI(dBm))を利用者無線状態マスタデータべースURMDBに格納し、無線状態比較分析処理部55は利用者無線状態マスタデータべースURMDBに格納されている比較対照ネットワークの無線状態を比較分析して分析結果を利用者無線状態分析結果データべースURSDBに格納し、各無線状態の比較分析処理は、移動通信ネットワーク間はRSSIを用いて比較し、値が大きい方を選択し、WLAN(ワイヤレスLAN)間はホットスポットのアクセスポイントAPの位置と移動情報端末の位置よりRSSI値を計算により求めて、同様に比較し、値が大きいWLANを選択し、
無線状態分析結果編集処理部58は、各ネットワークの無線状態を比較分析し、その結果を用いて利用者の端末表示に合わせて分析結果内容(選択メニュー)を編集し、無線状態通知処理部59を介して移動情報端末に送信し、
CDMA通信中において、移動情報端末からの無線状態報告により該端末がWLANを検出したかチェックし、
CDMA通信中にWLAN電波を検出すると、移動情報端末はASPにIPアドレスを要求し、ASPは位置情報センター17に移動情報端末の位置情報を要求し、移動情報端末がWLAN電波を検出したホットスポットを特定し、IPアドレスをDHCPにより決定し、該IPアドレスを電話番号に関連付けてデータべースDBに保存し、ASPは該IPアドレスを移動情報端末に通知すると共にネットワークの無線状態比較結果を通知し、移動情報端末はASPから呈示されたネットワークを表示して該ネットワークを使用しても良いかの利用者確認を求め、利用者がWLANネットワークでOKであれば、ベアラコネクション設定応答をASPに送り、ASPは、移動情報端末及び通信先より応答を受信すれば、それまでの旧ベアラコネクションを解放し、以後、移動情報端末と通信先の間でWLAN通信中となる移動端末の利用ネットワーク選択方法。

(2)対比
補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明における移動端末はCDMAネットワークやWLANネットワークといった無線デジタルネットワークを利用するものであるから、無線でデータを伝送することは明らかである。
したがって、引用発明における「移動端末の利用ネットワーク選択方法」は、補正発明における「無線データ伝送の方法」に相当する。

イ 引用発明における「移動情報端末」は、補正発明における「ユーザ機器」に相当する。

ウ 引用発明における「比較対象ネットワークの無線状態(端末受信レベルRSSI(dBm))」は、ユーザ機器がどの程度ネットワークからの信号を受信できているかを示すものであるから、ユーザ機器の状態であるといえる。したがって、引用発明における「移動情報通信端末が比較対照ネットワークの無線状態(端末受信レベルRSSI(dBm))を測定」と、補正発明における「現在の位置、使用された通信装置、使用された通信様相、通信の信頼度、通信相手、通信の重要度、移動、利用可能なリソース、優先の少なくとも1つを含むユーザ機器の現在の前記第1の通信セッションの確立状態を決定または将来の前記第1の通信セッションの確立状態を推測」とは、ユーザ機器の状態を認定する点で一致する。

エ 引用発明における「CDMAネットワーク」及び「WLANネットワーク」を含む「ネットワーク」は、通信を行う際に資源として用いられるものであるから、補正発明における「リソース」に相当する。(なお、このことは、本願明細書の「種々の実施形態によると、様々なリソース(例えば、携帯電話、自動車電話、ボイス・オーバー・インターネット・プロトコル(VOIP)、WiFi、ウェブ・ベースの通信、従来のアナログ電話機、全地球測位システム(GPS)、多数の通信サービス、プロバイダ、様々な通信プロトコル、サービスなど)を横切る通信セッションのシームレス移行は、機能性を開発するために提供され、通信セッションを終了すべくユーザの軽減を図り、利用可能なリソースの異なるセットを利用するために別のセッションを始める。」という記載(段落【0007】)、「502で、利用可能なリソース(例えば、サービスプロバイダ、ハードウェア、ソフトウェア、装置、システム、ネットワークなど)が識別される。」という記載(段落【0056】)及び「これらのリソースは、単に、例えば別のアンテナ、グラフィックスプロセッサ、スピーカーフォン、インターネット・セッション、現在の通信セッションを向上させるべく別の装置あるいはサービスを持つ(例えば、ブルー・トゥースセッション、UWBセッション、IPセッション、赤外線通信、認証セッション、暗号化セッションなど)といった第2の通信セッションの背景といった現在使用されていなかった利用可能なリソースを活性化することを含むことができる。」という記載(段落【0061】)からみても明らかである。)そして、引用発明における「CDMAネットワーク」及び「WLANネットワーク」は、「ネットワーク」の一部(サブセット)であるから、補正発明における「リソースの第1セット」、「リソースの第2セット」にそれぞれ相当する。

オ 「コネクション」と「セッション」とは、通信の「接続」という同等の意味で用いられることは技術常識であり、補正発明における引用発明における「CDMAコネクション」及び「WLANコネクション」は、それぞれ「CDMAネットワーク」及び「WLANネットワーク」を使用するものであるから、補正発明における「(リソースの第1セットを使用する)第1の通信セッション」及び「(リソースの第2セットを使用する)第2の通信セッション」にそれぞれ相当する。

カ 引用発明における「CDMAコネクション設定」は、補正発明における「第1の通信セッションを確立」に相当する。
また、通信を行う際にコネクションを設定する必要があることは技術常識であるから、引用発明における「CDMA通信中」は、CDMAコネクションが設定されている状態と解することができる。また、補正発明における「第1の通信セッションの確立状態」は、第1の通信セッションが確立されている状態と解することができる。したがって、引用発明における「CDMA通信中」は、補正発明における「第1の通信セッションの確立状態」に相当する。

キ 「WLAN」が「WLANネットワーク」という意味で用いられることは技術常識であるから、引用発明における「WLANを検出」は、「WLANネットワーク(補正発明における「リソースの第2セット」に相当)を検出」と同意であり、補正発明における「リソースの第2セットを検出」に相当する。
このことと、上記カより、「CDMA通信中において、移動情報端末からの無線状態報告により該端末がWLANを検出」は、補正発明における「前記第1の通信セッションの確立状態で利用可能で前記第1セットとは異なるリソースの第2セットを検出」に相当するといえる。

ク 引用発明における「比較対照ネットワーク」には、「CDMAネットワーク」(補正発明における「第1セット」に相当)及び「WLANネットワーク」(補正発明における「第2セット」に相当)が含まれることは明らかであるから、「比較対照ネットワークの無線状態(端末受信レベルRSSI(dBm))」を「比較分析」することは、補正発明における「決定(または推測)されたユーザ機器状態に基づいて、前記第1セットと前記第2セットとを比較」することに対応し、引用発明における「ネットワークの無線状態比較結果を通知し、移動情報端末はASPから呈示されたネットワークを表示して該ネットワークを使用しても良いかの利用者確認を求め、利用者がWLANネットワークでOKであれば、ベアラコネクション設定応答をASPに送り、ASPは、移動情報端末及び通信先より応答を受信すれば、それまでの旧ベアラコネクションを解放し、以後、移動情報端末と通信先の間でWLAN通信中」となることは、補正発明における「比較結果に基づいて、前記リソースの第2セットを使用する第2の通信セッションへ移行する」に相当する。

ケ 以上から、補正発明と引用発明は、次の点で一致、相違する。

[一致点]
無線データ伝送の方法であって、
ユーザ機器においてリソースの第1セットを使用する第1の通信セッションを確立すること、
ユーザ機器の状態を認定すること、
前記第1の通信セッションの確立状態で利用可能で前記第1セットとは異なるリソースの第2セットを検出すること、
認定されたユーザ機器の状態に基づいて、前記第1セットと前記第2セットとを比較し、この比較結果に基づいて、前記リソースの第2セットを使用する第2の通信セッションへ移行することを備える方法。

[相違点]
補正発明では、上記「ユーザ機器の状態を認定」することが、「現在の位置、使用された通信装置、使用された通信様相、通信の信頼度、通信相手、通信の重要度、移動、利用可能なリソース、優先の少なくとも1つを含むユーザ機器の現在の前記第1の通信セッションの確立状態を決定または将来の前記第1の通信セッションの確立状態を推測」することであるのに対し、引用発明では、「比較対照ネットワークの無線状態(端末受信レベルRSSI(dBm))を測定」することである点。

(3)判断
以下上記相違点について検討する。
補正発明は「ユーザー機器の現在の前記第1の通信セッションの確立状態を決定」すること、または「将来の前記第1の通信セッションの確立状態を推測」することを択一的に選択するものであると解されるが、前者を選択したものが引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである場合は、補正発明全体も引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができる。
また、同様に、「現在の位置」、「使用された通信装置」、「使用された通信様相」、「通信の信頼度」、「通信相手」、「通信の重要度」、「移動」、「利用可能なリソース」、「優先」のうちの1つを、決定される「ユーザ機器の現在の前記第1の通信セッションの確立状態」として選択したものが引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである場合は、補正発明全体も引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができる。
そこで、補正発明において「ユーザー機器の現在の前記第1の通信セッションの確立状態を決定」することを選択するとともに、決定される「ユーザ機器の現在の前記第1の通信セッションの確立状態」として「通信の信頼度」を選択したものが、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるかを検討するに、端末受信レベルが高いほど通信の信頼性が高くなることは技術常識であるから、引用発明において、「比較対照ネットワークの無線状態(端末受信レベルRSSI(dBm))」を「通信の信頼度」を示す指標とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、補正発明のように構成したことによる効果も、引用発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成26年7月31日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年10月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(「第2」[理由]1で示した補正前発明を参照。)

第4 当審の判断
1 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は前記「第2」[理由]2(1)に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した補正発明から、「第1の通信セッションの確立状態」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「第2」[理由]2(2)及び(3)に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願優先日前に頒布された引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-30 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-19 
出願番号 特願2012-1348(P2012-1348)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正明  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 清水 祐樹
吉田 隆之
発明の名称 認識通信  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
代理人 砂川 克  
代理人 堀内 美保子  
代理人 佐藤 立志  
代理人 河野 直樹  
代理人 井上 正  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 岡田 貴志  
代理人 野河 信久  
代理人 井関 守三  

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