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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1309546
審判番号 不服2014-23742  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-21 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2011-549636「ユーザのプレゼンスに応じた通信端末の電話サービスおよび電力供給状況管理」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月19日国際公開、WO2010/092270、平成24年 8月 9日国内公表、特表2012-518307〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年1月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年2月16日、フランス共和国)を国際出願日とする出願であって、原審において平成25年3月18日付けで拒絶理由が通知され、同年6月20日付けで手続補正され、同年11月29日付けで拒絶理由が通知され、平成26年5月23日付けで手続補正されたが、同年7月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月21日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正されたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年11月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の平成26年5月23日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された

「固定電話通信端末(TC)および少なくとも1つの通信デバイス(DC)に関連するユーザに関して電話サービスの継続性を管理する方法であって、前記固定電話通信端末(TC)および前記通信デバイス(DC)は、通信サーバ(SC)に接続され、前記方法は、
プレゼンス・サーバ(SP)に接続されたプレゼンス・ディテクタ(DP)により、前記ユーザのRFIDタグを用いて、前記固定電話通信端末(TC)に関連する前記ユーザの不在に関するイベントを検出するステップ(E1)と、
前記プレゼンス・サーバ(SP)により、前記イベントに関するメッセージを前記通信サーバ(SC)に送信するステップと、
前記通信サーバ(SC)により、前記メッセージに応じて前記固定電話通信端末(TC)をパワー・オフするステップ(E3)と、
前記通信サーバ(SC)により、前記ユーザのプロファイルに応じて、前記固定電話通信端末(TC)の番号から前記ユーザの通信デバイス(DC)の番号への着信転送をアクティブ化するステップ(E3)と、を含み、
前記ユーザの不在に関するイベントは、前記ユーザが所与の地理的区域を去ることに対応することを特徴とする方法。」

という発明(以下「本願発明」という。)を、

「固定電話通信端末(TC)および少なくとも1つの通信デバイス(DC)に関連するユーザに関して電話サービスの継続性を管理する方法であって、前記固定電話通信端末(TC)および前記通信デバイス(DC)は、通信サーバ(SC)に接続され、前記方法は、
プレゼンス・サーバ(SP)に接続されたプレゼンス・ディテクタ(DP)により、前記ユーザのRFIDタグを用いて、前記固定電話通信端末(TC)に関連する前記ユーザの不在に関するイベントを検出するステップ(E1)と、
前記プレゼンス・サーバ(SP)により、前記イベントに関するメッセージを前記通信サーバ(SC)に送信するステップであって、前記メッセージは、前記ユーザの識別子を含む、ステップと、
前記通信サーバ(SC)により、前記メッセージに応じて前記固定電話通信端末(TC)をパワー・オフするステップ(E3)と、
前記通信サーバ(SC)により、前記ユーザのプロファイルに応じて、前記固定電話通信端末(TC)の番号から前記ユーザの通信デバイス(DC)の番号への着信転送をアクティブ化するステップ(E3)と、を含み、
前記ユーザの不在に関するイベントは、前記ユーザが所与の地理的区域を去ることに対応することを特徴とする方法。」

という発明(以下「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、シフト補正、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「メッセージ」に関し、「前記メッセージは、前記ユーザの識別子を含む」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するとともに、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。

(2)引用発明及び周知技術
1 引用例及び引用発明
原審の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-287233号公報(平成12年10月13日公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電話システムに関し、特に収容する電話機と外線とを交換接続するとともに、コンピュータ端末に電話機を対応付けて制御する電話システムに関するものである。」(1頁2欄)

ロ.「【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般に、コンピュータ端末では、モード制御機能として、未使用状態が所定期間継続されると、スクリーンセーバーを起動したり、自装置の電源制御を行って消費電力を低減させる待機モードへ移行する機能を有しているが、前述した従来の電話システムでは、利用者が不在中であるにもかかわらず主装置から各電話機へ常時給電を行っており、このようなシステム全体で効果的に消費電力を削減できないという問題点があった。本発明はこのような課題を解決するためのものであり、コンピュータ端末だけではなくシステム全体で効果的に消費電力を削減できる電話システムを提供することを目的としている。」(2頁2欄)

ハ.「【0010】
【発明の実施の形態】次に、本発明について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態である電話システムのブロック図である。以下では、電話システムとして主装置とボタン電話機とからなるボタン電話装置を例として説明するが、PBXと内線電話機からなる電話システムなど他の構成の電話システムについても本発明を適用できる。
【0011】同図において、1はデータ伝送路5A?5Nを介してデータ伝送を行うことにより各ボタン電話機3A?3Nを制御する主装置、2は各コンピュータ端末4A?4N(パーソナルコンピュータ:PC)とLAN回線8を介して接続されているサーバーであり、各ボタン電話機3A?3Nと各コンピュータ端末4A?4Nとが対応付けて配置されている。
【0012】主装置1において、11は外線7と各ボタン電話機3A?3Nとを交換接続する回線交換部、12はデータ伝送路5A?5Nを介して各ボタン電話機3A?3Nへ給電を行うとともに、状態監視伝送路6A?6Nを介して各ボタン電話機3A?3Nの動作状態を監視する内線インターフェース部、13は主装置の各部およびボタン電話機などシステム全体を制御する制御部、14は制御部13での制御に必要な制御情報を記憶する記憶部である。
【0013】サーバー2において、21はLAN回線8を介して各コンピュータ端末4A?4Nと通信を行うLANインターフェース部、22は各コンピュータ端末の動作状態を管理する管理部、23は管理部22で用いられる管理情報を記憶する管理テーブルである。主装置1の制御部13とサーバー2の管理部22とは、通信回線9で相互に接続されており、サーバー2の管理部22から主装置1の制御部13に対して、コンピュータ端末4A?4Nから通知された各種情報や管理テーブル23に格納されている管理情報が通知される。
【0014】各コンピュータ端末4A?4Nがスクリーンセーバーの起動や省電力動作などに応じて、利用者による操作待ち状態すなわち待機モードに移行した場合、この動作モードの変化がサーバー2の管理部22に通知される。管理部22では、各コンピュータ端末4A?4Nからの通知に基づき、各コンピュータ端末4A?4Nの動作状態を管理情報として管理テーブル23で管理している。」(3頁3欄)

ニ.【0016】さらに、利用者が不在の場合、そのボタン電話機への着信を転送する転送先として他のボタン電話機を示す転送先情報が、必要に応じて主装置1の記憶部14に予め設定される。なお、コンピュータ端末で利用者のスケジュールや個人情報を管理するPIM(Personal Information Manager)ツールを用いて、転送先情報をサーバー2の管理部22に通知し、これを主装置1の制御部13に逐次転送するようにしてもよい。」(3頁4欄)

ホ.「【0022】本発明では、コンピュータ端末が待機モードに移行した場合、利用者が不在であると判断して、そのコンピュータ端末に対応付けられているボタン電話機への給電を停止して、そのボタン電話機に対応して予め登録されている各種不在モードに移行させる。以下では、この不在モードとして、不在監視モード、不在転送モードおよび不在停止モードの3つのモードが設けられている場合を例に説明する。
【0023】不在監視モードとは、当該ボタン電話機への給電を停止する代わりに、フック状態が主装置側で監視され、オフフック検出に応じて給電が再開されてそのボタン電話機が一時的に使用可能となるモードである。また、不在転送モードとは、当該ボタン電話機への給電を停止する代わりに、その状態で着信があった場合に予め設定されている転送先へ着信を転送するモードである。さらに、不在停止モードとは、当該ボタン電話機への給電を停止して、その機能を完全に抑止するモードである。」(4頁5欄)

ヘ.「【0024】最初に、図3を参照して、コンピュータ端末でのモード制御処理について、コンピュータ端末4Aを例として説明する。コンピュータ端末4Aにおいて、図3に示すモード制御処理が所定間隔ごとに実行されている。まず、PIMアプリケーションなどにより転送先が設定されている場合のみ(ステップ50:YES)、その最新の転送先情報をLAN回線8を介してサーバー2へ通知する(ステップ51)。
【0025】次に、コンピュータ端末4Aのキー操作やマウス操作などの操作入力が、所定期間以上なかったかどうか判断される(ステップ52)。ここで、所定期間以上操作入力がなかったときは(ステップ52:YES)、待機モードへの移行処理として、待機モード時に実行すべきアプリケーション、例えばスクリーンセーバーや省電力処理を実行することにより待機モードを起動し(ステップ53)、待機モードを起動したことをサーバー2へ通知して(ステップ54)、一連の処理を終了する。
【0026】また、ステップ52において、所定期間経過前に操作入力があった場合は(ステップ52:NO)、そのとき待機モードが起動されているかどうか判断し(ステップ55)、すでに起動されている場合は(ステップ55:YES)、待機モードの解除処理として、待機モードで実行していたアプリケーションを終了させることにより待機モードを解除し(ステップ56)、待機モードを解除したことをサーバー2へ通知して(ステップ57)、一連の処理を終了する。
【0027】次に、図4を参照して、サーバー2での情報転送処理について説明する。まず、サーバー2の管理部22では、信号待ち状態(ステップ60)において、任意のコンピュータ端末4A?4Nから転送先情報が通知された場合は、通信回線9を介してその転送先情報を主装置1の制御部13に通知する(ステップ61)。
【0028】また、信号待ち状態(ステップ60)において、任意のコンピュータ端末4A?4Nから、そのコンピュータ端末で待機モードが起動された旨が通知された場合は、同様にしてそのコンピュータ端末での待機モードの起動が主装置1の制御部13に通知される(ステップ62)。さらに、信号待ち状態(ステップ60)において、任意のコンピュータ端末4A?4Nから、そのコンピュータ端末で待機モードが解除された旨が通知された場合は、同様にしてそのコンピュータ端末での待機モードの解除が主装置1の制御部13に通知される(ステップ63)。
【0029】次に、図5を参照して、主装置1でのモード管理処理の概略について説明する。まず、信号待ち状態(ステップ65)において、サーバー2から所定コンピュータ端末の転送先情報が送られてきた場合は、それに対応付けられたボタン電話機が不在転送モードになった場合の着信転送先電話機として、その転送先情報に対応するボタン電話機を記憶部14に登録する(ステップ66)。
【0030】また、信号待ち状態(ステップ65)において、サーバー2から所定コンピュータ端末で待機モードが起動された旨が送られてきた場合は、それに対応付けられたボタン電話機の不在モードとして予め設定されたモードを記憶部14から読み出し、そのボタン電話機をそのモードへ移行させる(ステップ67)。また、信号待ち状態(ステップ65)において、サーバー2から所定コンピュータ端末で待機モードが解除された旨が送られてきた場合は、それに対応付けられたボタン電話機を通常モードへ復帰させる(ステップ68)。
【0031】次に、図6を参照して、主装置1での制御処理について説明する。外線7あるいは他のボタン電話機(内線)から着信があった場合、その着信先となるボタン電話機についてのみ、図6(a)に示す着信処理が実行される。以下、着信先ボタン電話機に含まれるボタン電話機3Aについて着信処理を行う場合を例にして説明する。まず、その着信がボタン電話機3Aだけを着信先とする個別着信か否か判断し(ステップ70)、個別着信の場合は(ステップ70:YES)、着信先となるボタン電話機3Aが通常モードで動作しているかどうか判断する(ステップ71)。
【0032】ここで、通常モードで動作中の場合は(ステップ71:YES)、データ伝送によりボタン電話機3Aへ着信表示を指示し(ステップ72)、一連の処理を終了する。一方、通常モードでない場合は(ステップ71:NO)、そのボタン電話機3Aへの給電が停止されていることから、ボタン電話機3Aの不在モードとして不在転送モードが設定されている場合にのみ(ステップ73:YES)、そのボタン電話機3Aに対応して予め登録されている転送先のボタン電話機へ着信を転送し(ステップ74)、他の不在モードの場合は(ステップ73:NO)、着信表示を行わず処理を終了する。」(4頁5欄?5頁7欄)

ト.「【0038】このように、コンピュータ端末の動作状態が待機モードになった場合は、利用者が不在であると判断して、そのコンピュータ端末に対応付けられているボタン電話機への給電を停止するようにしたので、従来のように、利用者が不在であるのにもかかわらず主装置から各電話機へ常時給電を行うものと比較して、コンピュータ端末だけではなくシステム全体で効果的に消費電力を削減できる。」(5頁7?8欄)

チ.「【0042】以上説明した処理がコンピュータ端末、サーバーおよび主装置で実行された場合、ボタン電話機の動作モードは図7に示すように遷移する。図7はボタン電話機の動作モードの遷移を示す状態遷移図であり、以下、ボタン電話機3Aとコンピュータ端末4Aを例にして説明する。なお、図7では着信として個別着信を想定しており、通常着信については省略している。
【0043】まず、対応付けられたコンピュータ端末4Aが通常動作しており待機モードではない場合、ボタン電話機3Aは通常モード(ステップ100)の状態にあり、主装置1から給電が行われている。このとき、ボタン電話機3Aに対して着信があった場合は、そのボタン電話機3Aで着信表示が行われる(ステップ101)。
【0044】この通常モード(ステップ100)において、コンピュータ端末4Aが待機モードに移行した場合は、ボタン電話機3Aへの給電が停止され(ステップ102)、予め設定された不在モードへそれぞれ移行する。例えば、不在モードとして不在監視モードが設定されていた場合は(ステップ103:YES)、フック検出用電位の供給が開始されて給電停止時のフック検出処理が開始され(ステップ104)、不在監視モード(ステップ105)へ移行する。
【0045】この不在監視モードにおいて、給電停止中に着信があった場合、ボタン電話機3Aでの呼び出し(着信表示)を行わない。また、ボタン電話機3Aでオフフックが検出された場合は給電が再開され(ステップ106)、ボタン電話機3Aが一時的に使用可能となる。これにより、給電停止中であっても、オフフックにより一時使用が可能となり、緊急時などにも対応できる。
【0046】その後、オンフックが検出された場合は、一時使用が終了したと判断して給電が停止される(ステップ107)。さらに、コンピュータ端末4Aが通常動作に復帰した場合は、フック検出用電位の供給を停止して給電停止時のフック検出処理が停止されるとともに(ステップ108)、ボタン電話機3Aへの給電が再開されて(ステップ130)、通常モード(ステップ100)へ移行する。
【0047】また、ボタン電話機3Aの不在モードとして不在転送モードが設定されていた場合は(ステップ110:YES)、不在転送モード(ステップ111)に移行する。この不在転送モードにおいて、着信があった場合は、ボタン電話機3Aに対応して予め登録されている転送先へ着信が転送される(ステップ112)。これにより、給電停止中に着信があった場合でも、転送先のボタン電話機で応答することができる。
【0048】さらに、コンピュータ端末4Aが通常動作に復帰した場合は、ボタン電話機3Aへの給電が再開されて(ステップ130)、通常モード(ステップ100)へ移行する。なお、不在転送モードでは、ボタン電話機3Aのフック状態が監視されておらず、フック状態が変化しても処理は行われず、一時使用はできない。
【0049】また、ボタン電話機3Aの不在モードとして不在停止モードが設定されていた場合は(ステップ110:NO)、不在停止モード(ステップ120)に移行する。この不在停止モードにおいて、着信があった場合は、ボタン電話機3Aに対応して予め登録されている転送先へ着信が転送され(ステップ112)、転送先のボタン電話機で呼び出しが行われる。
【0050】さらに、コンピュータ端末4Aが通常動作に復帰した場合は、ボタン電話機3Aへの給電が再開されて(ステップ130)、通常モード(ステップ100)へ移行する。なお、不在停止モードでは、ボタン電話機3Aのフック状態が監視されておらず、フック状態が変化しても処理は行われず、一時使用はできない。これにより、コンピュータ端末が待機モードの場合は、対応付けられたボタン電話機への給電が完全に停止され、最も効率よく消費電力を削減できる。」(5頁8欄?6頁9欄)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ハ.の【0011】における「1はデータ伝送路5A?5Nを介してデータ伝送を行うことにより各ボタン電話機3A?3Nを制御する主装置、2は各コンピュータ端末4A?4N(パーソナルコンピュータ:PC)とLAN回線8を介して接続されているサーバーであり、各ボタン電話機3A?3Nと各コンピュータ端末4A?4Nとが対応付けて配置されている。」との記載、及び図1によれば、引用例の電話システムは、主装置(1)と、サーバー(2)と、ボタン電話機(3A?3N)と、コンピュータ端末(4A?4N)とから構成されている。
そして、上記ホ.の【0022】における「本発明では、コンピュータ端末が待機モードに移行した場合、利用者が不在であると判断して、そのコンピュータ端末に対応付けられているボタン電話機への給電を停止して、そのボタン電話機に対応して予め登録されている各種不在モードに移行させる。以下では、この不在モードとして、不在監視モード、不在転送モードおよび不在停止モードの3つのモードが設けられている場合を例に説明する。」との記載によれば、電話システムは、コンピュータ端末が待機モードに移行し、利用者が不在であると判断して、不在モードに移行する場合、この不在モードとして、不在監視モード、不在転送モードおよび不在停止モードの3つのモードが設けられている。以下では、ボタン電話機に対応して予め不在転送モード(不在転送モードとは、当該ボタン電話機への給電を停止する代わりに、その状態で着信があった場合に予め設定されている転送先へ着信を転送するモードである。(同ホ.の【0023】))が設定されている場合に着目することにする。
また、上記ヘ.の【0025】における「コンピュータ端末4Aのキー操作やマウス操作などの操作入力が、所定期間以上なかったかどうか判断される(ステップ52)。ここで、所定期間以上操作入力がなかったときは(ステップ52:YES)、待機モードへの移行処理として、待機モード時に実行すべきアプリケーション、例えばスクリーンセーバーや省電力処理を実行することにより待機モードを起動し(ステップ53)、待機モードを起動したことをサーバー2へ通知して(ステップ54)、一連の処理を終了する。」との記載、上記ト.の【0038】における「コンピュータ端末の動作状態が待機モードになった場合は、利用者が不在であると判断して、そのコンピュータ端末に対応付けられているボタン電話機への給電を停止するようにした」との記載、及び図3によれば、電話システムは、(α)サーバー(2)に接続されたコンピュータ端末(4A)により、ボタン電話機(3A)に関連する利用者が不在であると判断している。ここで、利用者が不在であることは、所定期間以上操作入力がなかったことに対応しているということができる。
また、上記ヘ.の【0027】における「図4を参照して、サーバー2での情報転送処理について説明する。」との記載、同ヘ.の【0028】における「信号待ち状態(ステップ60)において、任意のコンピュータ端末4A?4Nから、そのコンピュータ端末で待機モードが起動された旨が通知された場合は、同様にしてそのコンピュータ端末での待機モードの起動が主装置1の制御部13に通知される(ステップ62)。」との記載、及び図4によれば、電話システムは、(β)サーバー(2)により、待機モードの起動を主装置(1)に通知している。
また、上記チ.の【0044】における「この通常モード(ステップ100)において、コンピュータ端末4Aが待機モードに移行した場合は、ボタン電話機3Aへの給電が停止され(ステップ102)」との記載、及び図7によれば、電話システムは、(γ)主装置(1)により、待機モードの起動に応じてボタン電話機(3A)への給電を停止している。
また、上記チ.の【0047】における「ボタン電話機3Aの不在モードとして不在転送モードが設定されていた場合は(ステップ110:YES)、不在転送モード(ステップ111)に移行する。この不在転送モードにおいて、着信があった場合は、ボタン電話機3Aに対応して予め登録されている転送先へ着信が転送される(ステップ112)。これにより、給電停止中に着信があった場合でも、転送先のボタン電話機で応答することができる。」との記載、及び図7によれば、電話システムは、(δ)主装置(1)により、ボタン電話機(3A)の着信から転送先のボタン電話機への着信転送をしている。

そして、上記(α)?(δ)より、引用例には、ボタン電話機(3A)および転送先のボタン電話機に関連する利用者に関して電話サービスの継続性を管理する方法について記載されているということができる。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ボタン電話機(3A)および転送先のボタン電話機に関連する利用者に関して電話サービスの継続性を管理する方法であって、前記ボタン電話機(3A)および前記転送先のボタン電話機は、主装置(1)に接続され、前記方法は、
サーバー(2)に接続されたコンピュータ端末(4A)により、前記ボタン電話機(3A)に関連する前記利用者が不在であることを判断するステップと、
前記サーバー(2)により、待機モードの起動を前記主装置(1)に通知するステップと、
前記主装置(1)により、前記待機モードの起動に応じて前記ボタン電話機(3A)への給電を停止するステップと、
前記主装置(1)により、前記ボタン電話機(3A)の着信から転送先のボタン電話機への着信転送をするステップと、を含み、
前記利用者が不在であることは、所定期間以上操作入力がなかったことに対応する方法。」

2 周知例及び周知技術
(A) 原審の拒絶理由に周知例として挙げられた、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-222621号公報(平成18年8月24日公開、以下「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御方法、および、通信システムに係り、着呼者の状況に応じて通信端末の着信先を切り替える方法であって、特に、着呼者が固定電話と携帯電話との双方を有する場合の転送方法として用いて好適な通信制御方法、および、通信システムに関する。」(3頁)

ロ.「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術は、電話が一家一台で所有する時代から、個人が携帯電話を持ち、幅広く利用する時代になったことにより広く利用されてるようになってきた技術である。電話をする方からすると相手が自宅にいるかいないか判らない場合があり、そのような場合で携帯電話の番号が判っている場合には携帯電話の番号に電話することになろうが、携帯電話との通話料は固定電話より比較的高めに設定されている。したがって、固定電話の番号に電話して不在のときに、はじめて携帯電話転送する上記のサービスは、電話をかけられた方が通話の機会を逃すことを防ぐという観点のみならず、電話をする方にも利点があるサービスということができる。」(2?3頁)

ハ.「【0025】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る第一の実施形態を、図1ないし図16を用いて説明する。
(I)システム構成
先ず、図1を用いて本発明の第一の実施形態に係る通信システムのシステム構成について説明する。
図1は、第一の実施形態に係る通信システムのシステム構成図である。
【0026】
本実施形態の通信システムは、ホームネットワークサイト000、携帯電話ネットワークサイト200、固定電話ネットワークサイト300、第3者ネットワークサイト100が各々のアクセスゲートウェイにより結合され、通信できるようになっている。また、本明細書中で「サイト」とは、ネットワークとそれによって通信する設備をも含んで使うことにする。
【0027】
プレゼンスサーバは、利用者のプレゼンス情報に基づき、着信先の端末を決定するためのサーバである。また、プレゼンスサーバは、他のプレゼンスサーバから送られてくる着信先の端末の情報を外部に転送する機能をも有している。
【0028】
本実施形態では、第3者ネットワークサイト100のカスタマセンタ12に設置されるプレゼンスサーバ10(以下、「カスタマセンタプレゼンスサーバ」ともいう)が、ホームネットワークサイト000より送信されてくるプレゼンス情報に基づき着信先を決定して、携帯電話ネットワークサイト200のプレゼンスサーバ20(以下、「携帯電話プレゼンスサーバ」ともいう)と固定電話ネットワークサイト300のプレゼンスサーバ30(以下、「固定電話プレゼンスサーバ」ともいう)に着信するべき端末に関する情報を転送する。そして、携帯電話プレゼンスサーバ20は、携帯電話ネットワーク22の交換機制御系23に、固定電話プレゼンスサーバ30は、固定電話ネットワーク32の交換機制御系33に、着信するべき端末に関する情報を送信することにより、各々のネットワークで着信を制御する処理が可能になる。
【0029】
一方、ホームネットワークサイト000には、ロック状態システム01が設置されており、住居の様々な錠の状態を管理し、初期設定のとき、あるいは、錠の状態が変化したときに、ホームゲートウェイ03を介して、第3者ネットワーク100のカスタマーセンタプレゼンスサーバ10に、その住居の錠の状態などの必要な情報を送信する。なお、ホームゲートウェイ03は、現在普及している家庭用のPC(パーソナルコンピュータ)を、インターネットに常時接続するなどによって構築することができる。また、情報家電04により利用者の状態を感知して、着信先を制御する。」(6?7頁)

ニ.「【0066】
次に、図16を用いてロック状態システムの状態変化があったときの処理について説明する。
【0067】
先ず、現在の錠のロック状態が以下の表9に示す状態であったとする。これは、表2、図7に従えば、状態3であり、固定電話(yy)にかかってきた電話は、転送せずにそのまま固定電話(yy)に着信するようになっている。
【0068】
このときに、利用者(着信端末保持者)が、住居外に出て、住居のドアの外から鍵を差し込んで施錠したとする(表10)。
【0069】
これは、図7に従えば、状態4であり、固定電話(yy)にかかってきた電話は、転送されて携帯電話(yy)に着信するようになったことを意味する。
【0070】
ロック状態システムは、この状態変化を感知し、表10のように住居外から施錠状態になったことをホームゲートウェイ経由でカスタマセンタプレゼンスサーバ10に通知する(A101、A102)。
【0071】
カスタマセンタプレゼンスサーバ10は、ホームネットワークサイト000のロック状態システム01から施錠の状態が「状態4」になったことの通知を受けて、携帯(xx)に着信させるべきであることを判定する。そして、図11に示される現在の「状態3」の着信制御テーブルを、図12に示される値に書き換え、この情報を固定電話プレゼンスサーバ30に通知する(A103)。固定電話プレゼンスサーバ30は、固定電話交換機制御系33に着信先を指定し(A104)、これによって、当該利用者宛てに着信した固定電話への着信呼は、予め設定されている携帯端末へ転送することが可能になる。すなわち、固定電話交換機制御系33に固定(xx)の電話番号に着信があったときには、図13に示した交換機制御テーブルを参照して、携帯(yy)の電話番号に転送する。」(14頁)

したがって、上記周知例1の上記記載にみられるように、「電話システムにおいて、電話サービスの継続性を保つために、利用者が住居外にいることを検出し、利用者が住居外にいることに対応して、固定電話から利用者の携帯電話に転送すること。」すなわち、「電話システムにおいて、電話サービスの継続性を保つために、利用者が所定の地理的区域の外にいることを検出し、固定電話から利用者の携帯電話に転送すること。」は、周知の技術(以下「周知技術1」という。)ということができる。

(B) 原審の拒絶査定に周知例として挙げられた、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-254101号公報(平成18年9月21日公開、以下「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0018】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明による電話帳作成システムの第1の実施の形態を示すブロック図である。図1に示す電話帳作成システムは、RFIDタグ100と、入力装置1と、データ処理装置2と、出力装置3と、フロア地図データベース記憶装置4と、通信情報記憶装置5と、プレゼンス情報記憶装置6と、プレゼンス情報処理装置7と、入退場管理システム装置8と、位置特定装置9とを備える。
【0019】
RFIDタグ100は、メモリ付き集積回路を有するICタグであって、RFIDタグ100を装着した人を特定することができる社員コードなどの「個人識別情報」を有する。」(6頁)

ロ.「【0026】
通信情報記憶装置5は、座席電話帳に表示する各人の連絡先情報(通信情報)を記憶する。図4は、通信情報の例を示す説明図である。図4に示すように、通信情報は、RFIDタグ100を装着した人を特定することができる「個人識別情報」と、RFIDタグ100を装着した人の「連絡先携帯電話番号」、「連絡先メールアドレス」などを含む。
【0027】
プレゼンス情報記憶装置6は、各人の所在に関する情報(プレゼンス情報)を記憶する。プレゼンス情報は、プレゼンス情報処理装置7によって作成される情報である。図5は、プレゼンス情報の例を示す説明図である。図5に示すように、プレゼンス情報は、「個人識別情報」、「日時情報」、その日時におけるRFIDタグ100の位置を特定することができる「所定領域情報」および「位置特定情報」を含む。「所定領域情報」は、入退場管理システム装置8によって作成される情報であり、RFIDタグ100がどのフロアや会議室などに入場したかを特定できる情報である。「位置特定情報」は位置特定装置9によって作成される情報であり、フロア内におけるRFIDタグ100の位置を特定することができる情報である。
【0028】
プレゼンス情報処理装置7は、入退場管理システム装置8が出力する「入退場管理システム装置出力情報」および位置特定装置9が出力する「位置特定装置出力情報」に基づいてプレゼンス情報を作成し、プレゼンス情報記憶装置6に記憶する処理を実行する機能を有する。
【0029】
入退場管理システム装置8は、ビル、フロアおよび会議室等の入り口に設置され、各人の入退場状況を管理し、「入退場管理システム装置出力情報」をプレゼンス情報処理装置7に出力する処理を実行する機能を有する。「入退場管理システム装置出力情報」は、「所定領域情報」、「日時情報」および「個人識別情報」を含む情報である。入退場管理システム装置8は、例えば、RFIDタグ100と無線通信を行うRFIDリーダで実現される。入退場管理システム装置8は、RFIDタグ100を装着した人の入場時および退場時に、RFIDタグ100が有する「個人識別情報」を読み取り、RFIDタグ100がどのフロアや会議室などに入場したかを特定する「所定領域情報」とともに「入退場管理システム装置出力情報」として出力する。」(7頁)

したがって、上記周知例2の上記記載にみられるように、「入退場管理システムにおいて、利用者のRFIDタグを用いてユーザの不在を検出すること。」は、周知の技術(以下「周知技術2」という。)ということができる。

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「ボタン電話機(3A)」は、「固定電話通信端末」ということができる。
b.引用発明の「転送先のボタン電話機」と、補正後の発明の「通信デバイス(DC)」とは、後述する相違点を除いて、「特定のデバイス」という点で一致する。
c.引用発明の「主装置(1)」は、本願明細書段落【0044】における「通信サーバSCは、PABX交換機(「Private Automatic Branch eXchange(構内自動交換機)」)である。」との記載によれば、補正後の発明の「通信サーバ(SC)」と差異はない。
d.引用発明の「サーバー(2)」は、上記引用例の上記ハ.の【0013】における「サーバー2において、・・・22は各コンピュータ端末の動作状態を管理する管理部、23は管理部22で用いられる管理情報を記憶する管理テーブルである。」との記載によれば、コンピュータ端末(4A)の待機モードのような動作状態、すなわち、利用者が不在であることを管理しているから、「プレゼンス・サーバ」ということができる。
e.引用発明の「コンピュータ端末(4A)」は、上記引用例の上記ヘ.の【0025】における「コンピュータ端末4Aのキー操作やマウス操作などの操作入力が、所定期間以上なかったかどうか判断される。ここで、所定期間以上操作入力がなかったときは、・・・待機モードを起動し、待機モードを起動したことをサーバー2へ通知し」との記載によれば、コンピュータ端末(4A)の待機モードのような動作状態、すなわち、利用者が不在であることを検出しているから、「プレゼンス・ディテクタ」ということができる。
f.引用発明の「利用者が不在であることを判断する」は、利用者(ユーザ)が不在であることが、「ユーザの不在に関するイベント」といえ、このことを判断することにより不在であることを検出しているから、「ユーザの不在に関するイベントを検出する」ということができる。
g.引用発明の「待機モードの起動」は、利用者(ユーザ)が不在であること(ユーザの不在に関するイベント)を判断(検出)してサーバー(2)により主装置(1)に通知するメッセージであるから、「イベントに関するメッセージ」ということができる。
h.引用発明の「ボタン電話機(3A)への給電を停止する」は、「固定電話通信端末をパワー・オフする」ということができる。
i.引用発明の「前記ボタン電話機(3A)の着信から転送先のボタン電話機への着信転送をする」は、「ボタン電話機(3A)の着信」が、「固定電話通信端末(TC)の番号」に着信するものであり、「転送先のボタン電話機への着信」が、上記b.の対比を考慮すると、「特定のデバイスの番号」へ着信するものであるから、「前記固定電話通信端末(TC)の番号から特定のデバイスの番号への着信転送をアクティブ化する」ということができる。
j.引用発明の「所定期間以上操作入力がなかったこと」と、補正後の発明の「前記ユーザが所与の地理的区域を去ること」とは、後述する相違点を除いて、「ユーザの不在に関する事象」という点で一致する。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「固定電話通信端末および少なくとも1つの特定のデバイスに関連するユーザに関して電話サービスの継続性を管理する方法であって、前記固定電話通信端末および前記特定のデバイスは、通信サーバに接続され、前記方法は、
プレゼンス・サーバに接続されたプレゼンス・ディテクタにより、前記固定電話通信端末に関連する前記ユーザの不在に関するイベントを検出するステップと、
前記プレゼンス・サーバにより、前記イベントに関するメッセージを前記通信サーバに送信するステップと、
前記通信サーバにより、前記メッセージに応じて前記固定電話通信端末をパワー・オフするステップと、
前記通信サーバにより、前記固定電話通信端末の番号から特定のデバイスの番号への着信転送をアクティブ化するステップと、を含み、
前記ユーザの不在に関するイベントは、ユーザの不在に関する事象に対応する方法。」

(相違点1)
「特定のデバイス」に関し、
補正後の発明は、「通信デバイス(DC)」及び「ユーザの通信デバイス(DC)」であるのに対し、引用発明は、転送先のボタン電話機であるものの、「ユーザの」との特定がない点。

(相違点2)
「ユーザの不在に関するイベントを検出するステップ」に関し、
補正後の発明は、「前記ユーザのRFIDタグを用いる」ものであるのに対し、引用発明は、その様な構成がない点。
加えて、
「前記ユーザの不在に関するイベントは、ユーザの不在に関する事象」に対応するに関し、
補正後の発明は、「前記ユーザが所与の地理的区域を去ること」であるのに対し、引用発明は、所定期間以上操作入力がなかったことであり、「前記ユーザが所与の地理的区域を去ること」でない点。

(相違点3)
「メッセージ」に関し、
補正後の発明は、「前記メッセージは、前記ユーザの識別子を含む」ものであるのに対し、引用発明は、その様な構成がない点。

(相違点4)
「前記固定電話通信端末の番号から特定のデバイスの番号への着信転送をアクティブ化する」に関し、
補正後の発明は、「前記ユーザのプロファイルに応じて」、前記固定電話通信端末の番号から前記ユーザの通信デバイス(DC)の番号への着信転送をアクティブ化するのに対し、引用発明は、「前記ユーザのプロファイルに応じて」との特定がない点。

そこで、まず、上記相違点1及び4について検討する。
上記引用例の上記ニ.の【0016】における「利用者が不在の場合、そのボタン電話機への着信を転送する転送先として他のボタン電話機を示す転送先情報が、必要に応じて主装置1の記憶部14に予め設定される。なお、コンピュータ端末で利用者のスケジュールや個人情報を管理するPIM(Personal Information Manager)ツールを用いて、転送先情報をサーバー2の管理部22に通知し、これを主装置1の制御部13に逐次転送するようにしてもよい。」との記載によれば、ボタン電話機の転送先は、利用者の個人情報を用いた転送先情報でもよいものである。
そうすると、引用発明は、「転送先のボタン電話機」を、「ユーザの通信デバイス」とすること、「前記ユーザのプロファイルに応じて」、前記固定電話通信端末の番号から前記ユーザの通信デバイス(DC)の番号への着信転送をアクティブ化することは、当業者が適宜なし得ることである。
仮に、そうでないとしても、上記周知技術1にもみられるように「固定電話から利用者の携帯電話に転送すること。」は、周知の技術であるから、補正後の発明のように「ユーザの通信デバイス」とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。その際、「前記ユーザのプロファイルに応じて」、前記固定電話通信端末の番号から前記ユーザの通信デバイス(DC)の番号への着信転送をアクティブ化することは当然である。

次に、上記相違点2及び3について検討する。
上記「(2)引用発明及び周知技術 2 周知例及び周知技術」の(A)のとおり、周知例1には、「電話システムにおいて、電話サービスの継続性を保つために、利用者が所定の地理的区域の外にいることを検出し、固定電話から利用者の携帯電話に転送すること。」との周知技術1が記載されている。そして、引用発明と周知技術1とは、電話システムにおいて電話サービスの継続性を保つという点で技術分野及び課題が共通し、引用発明に周知技術1を採用する際に特段の阻害要因はみあたらない。
そうすると、上記周知技術1に接した当業者であれば、補正後の発明のように「ユーザの不在に関するイベント」として、「前記ユーザが所与の地理的区域を去ること」を検出することは、容易に想到し得るものである。その際、ユーザが所与の地理的区域を去ることを、「前記ユーザのRFIDタグを用いて」行うことは、周知技術2にみられるように適宜なし得ることであり、この場合、個人を識別するために、ユーザの識別子を送ること、すなわち、「前記メッセージが、前記ユーザの識別子を含む」ことは当然である。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成26年11月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明及び周知技術
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-04 
結審通知日 2015-08-06 
審決日 2015-08-19 
出願番号 特願2011-549636(P2011-549636)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 伊佐雄  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 中野 浩昌
萩原 義則
発明の名称 ユーザのプレゼンスに応じた通信端末の電話サービスおよび電力供給状況管理  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  
代理人 川崎 孝  

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