• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する A63F
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A63F
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A63F
管理番号 1309855
審判番号 訂正2015-390098  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2015-09-09 
確定日 2015-12-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3295771号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3295771号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判の請求に係る特許第3295771号(以下、「本件特許」という。)は、平成6年5月31日に出願され、その請求項1ないし12に係る発明は、平成14年4月12日に特許権の設定登録がなされたものであって、その後、平成27年9月9日に訂正審判の請求がされたものである。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容
1.請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書(以下、「願書に添付した明細書」といい、該明細書のうち特に特許請求の範囲を「本件特許請求の範囲」という。)を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める、との審決を求めるものである。

2.訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおりである(下線は当審で付した。)。
(1)請求項1及び4ないし7からなる一群の請求項に係る訂正について
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「上記画像情報からは認識できない情報を、体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段と、」とあるのを、「上記画像情報からは認識できない情報を、上記キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるための体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段と、」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「上記請求項1ないし3のいずれかに記載の遊戯装置において、」とあるのを、「上記請求項2または3のいずれかに記載の遊戯装置において、」に訂正する。

(2)請求項8、11及び12からなる一群の請求項に係る訂正について
ア 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に「上記画像情報からは認識できない情報を、体感振動情報信号として指導発生手段に送出するようにした」とあるのを、「上記画像情報からは認識できない情報を、上記キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるための体感振動情報信号として振動発生手段に送出するようにした」に訂正する。

第3 当審の判断
1.請求項1及び4ないし7からなる一群の請求項に係る訂正について
(1)訂正の目的について
ア 訂正事項1
訂正事項1は、本件特許請求の範囲の請求項1における「体感振動情報信号」の内容を具体的に限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項2
訂正事項2は、本件特許請求の範囲の請求項4における「上記請求項1ないし3のいずれか」という多数項引用形式の記載を、「上記請求項2または3のいずれか」とのごとく引用請求項を減少させるものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

ウ 小括
したがって、訂正事項1及び2は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

(2)新規事項を追加するものか否か、及び実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものか否かについて
ア 訂正事項1
願書に添付した明細書には、次の記載がある。「ゲームの状況が時々刻々と変化している場合において、上記特定状況判定手段は、そのゲームの状況が所定の規則性にしたがって変化している場合に、特定状況にあると判定する。そして、この判定がなされることにより、上記ゲームの変化の態様に応じた体感振動情報信号、たとえば遊戯者の置かれている状況の危険度が大きくなるにつれて振動の振幅を大きくしたり、あるいは振動の発生周期を短くするための体感振動情報信号が送出される。これにより、遊戯者は一層高度な現実感やスリルを味わえることになる。」(段落【0031】)、「上記特定状況判定手段32が、ゲーム進行中におけるキャラクタの置かれている状況が特定の状況にあることを判定した場合には、上記振動情報制御手段33から、それ以外の場合に送出されていない情報が体感振動情報信号cとして音響体感器1に対して送出される。その一例として、上記判定結果が、危険な状態や、有利な状態にあることを判定した場合には、その判定がなされた時点で初めて振動を生じさせるための体感振動情報信号cが送出される。また、他の例として、上記体感振動情報信号cが振動を間欠的に生じさせるものであればその間欠周期(発生周期)を異ならせるための信号が送出され、あるいは振動の周波数や振幅を異ならせるための体感振動情報信号cが送出される。」(段落【0042】)、「上記のような構成を備えた遊戯装置20の使用態様としては、その具体例を挙げれば、以下に示す通りである。」(段落【0044】)、「このようにして危険な状況の判定がなされた場合には、上記特定状況判定手段32からの信号に基づいて上記振動情報制御手段33が音響信号aに対して所定の制御を施し、耳に聞こえない低周波領域の音響信号を体感振動情報信号cとして音響体感器1のスピーカ6に送出する。この場合、上記特定状況判定手段32は、キャラクタ41が地雷Xに近づいているか、あるいは遠ざかっているかを判定し、近づいている場合には、その離間距離が短くなるにつれて上記低周波領域の音響信号の間欠周期を序々に小さくして振動が頻繁に生じるようにし、逆に遠ざかっている場合には、その離間距離が長くなるにつれて上記間欠周期を序々に大きくして振動の発生頻度を低下させるようにしてもよい。すなわち、地雷Xに対する接近度合いと心臓の鼓動とが一致したような雰囲気を味わえるようにするのである。」(段落【0047】)

してみると、願書に添付された明細書の記載からは、体感振動情報信号に関して、ゲームの変化の態様に応じて振動の発生周期を変える点、キャラクタの置かれている状況が特定の状況にあるときに送出される点、間欠的に生じる振動の間欠周期(発生周期)を異ならせるためのものである点、具体例としてキャラクタが地雷に近づくか遠ざかるかに応じて間欠周期の大小を変えるものが把握できるから、訂正事項1によって限定された「キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるための体感振動情報信号」との事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項に基づいたものであって、願書に添付した明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。

また、訂正事項1が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

イ 訂正事項2
訂正事項2は、単に多数項引用形式の記載の引用請求項を減少させるものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

ウ 小括
したがって、訂正事項1及び2は特許法126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)一群の請求項か否かについて
訂正事項1に係る訂正後の請求項1、5ないし7は、訂正後の請求項1を請求項5、6が引用し、さらに請求項6を請求項7が引用する。また、訂正事項2に係る訂正後の請求項4ないし7は、訂正後の請求項4を請求項5、6が引用し、さらに請求項6を請求項7が引用するものである。
そして、訂正後の請求項1、4ないし7は、共通する請求項5ないし7を介して一体となるから、特許法第126条第3項の「一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係その他経済産業省令で定める関係」にある。
したがって、訂正事項1及び2に係る訂正後の請求項1、4ないし7は一群の請求項である。

(4)訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて
訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に違反するか否か、すなわち、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。なお、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするが、単に多数項引用形式の記載を引用請求項を減少させるものであって、訂正後の請求項2又は3を引用する請求項4に係る発明は訂正前に対して減縮されていないから、訂正後の請求項4及びこれを引用する請求項は特許法第126条第7項の規定に違反するか否かを判断しない。

ここで、本件特許に対して、平成26年(ワ)第06163号特許権侵害行為差止等請求事件として訴訟が係属しており、同事件の被告(以下、単に「被告」という。)は平成27年7月13日付け「被告第4準備書面」において、訂正前の請求項に係る特許発明は、本件特許の出願日前に、「ニンジャウォーリアーズ」のゲームが動作するゲーム装置及びゲーム装置の制御方法によって日本国内において公然知られた発明又は公然実施された発明(以下、「ニンジャウォーリアーズ」のゲームが動作するゲーム装置によって公然知られた発明又は公然実施された発明を「公知発明1」といい、同ゲーム装置の制御方法によって公然知られた発明又は公然実施された発明を「公知発明8」という。)であるから、特許法第29条第1項第1号又は同第2号に該当し、特許を受けることができないものであって、特許無効審判によって無効とされるべきであると主張している。また、公知発明1及び8を立証するための証拠方法として以下の乙B11号証ないし乙B15号証を挙げている。
乙B11号証:被告代理人が作成した「ニンジャウォーリアーズゲーム装置の構成」、作成日:平成27年7月3日
乙B12号証:株式会社アミューズメント通信社が作成した「ゲームマシン 327号」、発行日:昭和63年3月1日
乙B13号証の1:被告代理人が作成した「「ニンジャウォーリアーズ」証拠ビデオ撮影環境」、作成日:平成27年7月3日
乙B13号証の2:被告代理人が作成した「時計のアプリケーション(EMERALD TIMEのアイコン・実行画面)」、作成日:平成27年7月3日
乙B13号証の3:Emerald Sequoia LLC作成の「「EMERALD TIME」と題する書面」、印刷日:平成27年5月26日
乙B13号証の4:被告代理人が作成した「地震計アプリケーション(iSeismometerのアイコン・実行画面・設定画面)」、作成日:平成27年7月3日
乙B14号証:被告代理人が作成した「ニンジャウォーリアーズのゲーム進行ビデオ」、編集日:平成27年5月26日、撮影日:平成27年3月15日
乙B15号証:被告代理人が作成した「地震計アプリケーション(iSeismometer)の動作ビデオ」、編集日:平成27年5月26日

そこで、訂正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「訂正発明1」という。)が上記特許法第29条第1項第1号又は同第2号に該当するかを以下、検討する。

ア 公知発明1が公然と知られた時期又は公然と実施された時期について
被告の挙げた証拠には以下の記載がある。

(ア)乙B11号証図4には、「THE NINJAWORRIORS」(画面中では「I」は人の形をしたシルエットで表される。)のタイトルとともに「c TAITO CORPORATION 1987, ALL RIGHT RESERVED」(文頭の「c」は丸囲みの中にcで表される。)の表示が看て取れる。

(イ)乙B12号証には、1988年(昭和63年)3月1日の日付とともに、「マルチ3画面TVゲーム機第2弾 サイボーグ忍者 タイトー「ニンジャウォーリアーズ」基板」と見出しが付けられた記事の冒頭に、「”サイボーグ忍者”の戦いをテーマとしたTVゲーム機「ニンジャウォーリアーズ」が、(株)タイトー(本社東京、末角要次郎社長)から二月下旬発売となる。」との記載がある。

(ウ)乙B14号証のゲーム進行ビデオのビデオ画面には、「ビデオ1」として、乙B11号証図1ないし3で示したゲーム装置の筐体の一部箇所と同様の箇所が表示されているが、その後ゲーム画面が表示されている。

乙B11号証における著作権についての慣習的な表示、乙B12号証における発売日に関する記載、及び、業界の常識をふまえて全体的にみれば、「ニンジャウォーリアーズ」のゲームが動作するゲーム装置が、遅くとも本件特許の出願日前である1988年春頃には公然知られた又は公然実施されたと推認できる。

イ 訂正発明1が公知発明1と同一であるかについて
(ア)訂正発明1
訂正発明1は、以下のとおりである。
「【請求項1】 遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置であって、
上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が特定の状況にあるか否かを判定する特定状況判定手段と、
上記特定状況判定手段が特定の状況にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報を、上記キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるための体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段と、
上記振動情報制御手段からの体感振動情報信号に基づいて振動を生じさせる振動発生手段と、
を備えたことを特徴とする、遊戯装置。」

(イ)各証拠方法の内容
a 乙B11号証について
乙B11号証には、図1としてゲーム装置の筐体の写真が示されており、図1からは筐体にはゲーム画面が表示される表示部がある本体部とそれに向かい合うベンチが看て取れる。また、図1ないし図3より、表示部の下方の左右それぞれに、1つのレバーと2つのボタンが配置されているのが看て取れる。

b 乙B12号証について
乙B12号証には、「マルチ3画面TVゲーム機第2弾 サイボーグ忍者 タイトー「ニンジャウォーリアーズ」基板」と見出しが付けられた記事の中に、「画面はプレイヤーの動きに従ってヨコスクロールする。八方向レバーで移動、ジャンプ、しゃがみを行い、二つのボタンで短剣と手裏剣を投げる。」との記載がある。

c 乙B13号証の1について
図5及び6からは、ビデオ1撮影用としてゲーム装置に向けたカメラ1と、ベンチシートに地震計と時計を取り付け、ビデオ2撮影用として地震計と時計に向けたカメラ2を設けた撮影環境が看て取れる。

d 乙B13号証の2及び乙B13号証の3について
乙B13号証の2には、図の(b)として「EMERALD TIMEの実行画面」が示され、乙B13号証の3の第1頁には、乙B13号証の2に示された実行画面と同様の画面とともに、「Emerald Time is a little iPhone/iPad^(TM) application that uses Network Time Protocol(NTP) servers on the Internet to obtain a more accurate time than is typically available from the iPhone's internal clock, which can be off by several seconds or more.」との記載がある。また、乙B13号証の3の第5頁には、当該箇所の抄訳として、「Emerald Timeは、インターネット上のネットワーク・タイム・プロトコル(NTP)サーバを利用する小型のiPhone/iPadアプリであり、これを用いることで、一般的に利用されているiPhone内蔵の時計(数秒ずれることがある)よりも、正確な情報を得ることができる。」との記載がある。

e 乙B13号証の4及び乙B15号証について
乙B13号証の4には、図の(b)として「iSeismometerの実行画面」が示され、乙B15号証の「地震計アプリケーション(iSeismometer)の動作ビデオ」には、携帯端末において乙B13号証の4に示された実行画面と同様の画面が表示されており、前記携帯端末に振動を加えると、実行画面のXYZ軸に振動波が表示されるが、前記携帯端末付近で手を叩いても振動波は表示されない様子が撮影されている。

f 乙B14号証について
乙B14号証は、乙B13号証の1ないし乙B13号証の4、乙B15号証の記載によれば、以下の事実が認められる。
「ビデオ1」としてゲーム画面が、これと同時に撮影した「ビデオ2」として時計のアプリケーションの画面、地震計のアプリケーションの画面が並行して表示されている。(平成27年7月13日付け「被告第4準備書面」別紙 ニンジャウォーリアーズ説明書(以下、「別紙説明書」という。)25頁参照。)
左右方向への移動やジャンプ、しゃがむ、攻撃といった動作ができる忍者の服装をしたキャラクタがゲーム画面に表示され、また、忍者の服装をしたキャラクタが右方向に移動するとき、それに従って背景も変化して右方向に進んでいる様子がゲーム画面に表示される。(別紙説明書26頁参照。)
つぎに、時計のアプリケーションの時刻が18:29:37を示し、ゲーム画面中の上記キャラクタが背景にゲートがある地点の近くにあるとき、ベンチに取り付けた地震計のアプリケーションは振動を検知し、ベンチが振動する。
上記振動開始から約10秒間振動が継続する。(別紙説明書27頁参照。)
時計のアプリケーションの時刻が18:29:48を示し、振動は継続したまま、ゲーム画面には、右から戦車のキャラクタが登場する。(別紙説明書28頁参照。)
時計のアプリケーションの時刻が18:30:51を示し、戦車のキャラクタがゲーム画面の左に退場し、その後約4秒間振動が継続した後振動が停止する。(別紙説明書29頁参照。)

(ウ)公知発明1の認定
以上aないしfの開示内容を総合すると、公知発明1は、以下のとおりのものであると認められる。
「レバー及びボタンと、左右方向への移動やジャンプ、しゃがむ、攻撃といった動作ができる忍者の服装をしたキャラクタを含むゲーム画面が表示される表示部とを有する本体部とベンチを備えたゲーム装置であって、
前記キャラクタが右方向に移動するとき、それに従って背景も変化して右方向に進んでいる様子が表示され、
前記キャラクタが背景にゲートがある地点の近くにあるとき、戦車のキャラクタが表示されない状態でベンチが振動を開始し、振動は継続したまま戦車のキャラクタが登場及び退場し、戦車のキャラクタが表示されない状態で振動が継続した後振動が停止するゲーム装置」

(エ)対比・判断
訂正発明1と公知発明1を対比する。
a 公知発明1の「レバー及びボタン」は、ゲーム装置の技術常識からすれば訂正発明1の「入力手段」に相当する。

b 公知発明1の「ゲーム画面が表示される表示部」は、訂正発明1の「出力手段」に相当する。

c 一般にゲーム装置の分野においては、入力手段からの信号に基づいてゲーム画面上のキャラクタに動作をさせることが技術常識であることからすれば、公知発明1の「キャラクタが右方向に移動するとき、それに従って背景も変化して右方向に進んでいる」ことは、入力手段からの信号に基づいてゲームを右方向に進んでいるように進行状態を決定あるいは制御しているといえるから、公知発明1は、「入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段」を有している。

d 入力手段が遊戯者によって操作されることはゲーム分野における技術常識であり、公知発明1の「左右方向への移動やジャンプ、しゃがむ、攻撃といった動作ができる忍者の服装をしたキャラクタがゲーム画面に表示」されることは、訂正発明1の「遊戯者が入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報が出力」されることといえる。

e 公知発明1の「本体部」は、上記のとおり、入力手段、ゲーム進行手段、出力手段を備え、ゲームを行う部分であるから、訂正発明1の「ゲーム機」といえる。

f 公知発明1の「本体部があるゲーム装置」は、訂正発明1の「ゲーム機を備えた遊戯装置」に相当する。

g 公知発明1は「戦車のキャラクタが表示されない状態でベンチが振動を開始し、振動は継続したまま戦車のキャラクタが登場及び退場し、戦車のキャラクタが表示されない状態で振動が継続した後振動が停止する」ものであり、ベンチの振動の発生及び制御に必要な「振動情報信号を送出する振動情報制御手段」及び「振動情報制御手段からの振動情報信号に基づいて振動を生じさせる振動発生手段」を備えることは明らかである。また、ベンチが振動すれば、これに座る遊戯者が振動を体感するものであるから、ベンチの振動を生じさせるための信号は「体感振動情報信号」といえる。さらに、公知発明1の戦車のキャラクタが表示されていない状態での振動は、キャラクタの近くに戦車のキャラクタが存在するという「画像情報から認識できない情報」を体感させるものといえる。よって、公知発明1は、「画像情報から認識できない情報を、体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段」及び「振動情報制御手段からの体感振動情報信号に基づいて振動を生じさせる振動発生手段」を備えているといえる。

h 乙B11ないし15号証からは、公知発明1において「キャラクタが背景にゲートがある地点の近くにあるとき」に、実際にゲーム内でいかなる判定に基づいて振動が発生するのかは不明であり、公知発明1が「ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作しているキャラクタの置かれている状況が特定の状況にあるか否かを判定する特定状況判定手段」を有し、「特定状況判定が特定の状況にあることを判定した時に」、画像情報から認識できない情報を体感振動情報信号として送出するものであることまで直ちに明らかとはいえない。
よって、訂正発明1の振動情報制御手段と公知発明1の振動情報制御手段とは、「所定の時点で、画像情報からは認識できない情報を、体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段」との概念で共通するにすぎない。

したがって、両者は、
「遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置であって、
所定の時点で、上記画像情報からは認識できない情報を、体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段と、
振動情報制御手段からの体感振動情報信号に基づいて振動を生じさせる振動発生手段と、
を備えた遊戯装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
訂正発明1は、「ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作しているキャラクタの置かれている状況が特定の状況にあるか否かを判定する特定状況判定手段」を有し、訂正発明1の振動情報制御手段は、「特定状況判定手段が特定の状況にあることを判定した時に」、画像情報からは認識できない情報を、体感振動情報信号として送出するものであるのに対し、公知発明1は、特定状況判定手段があるか否かが不明であるとともに、公知発明1の振動情報制御手段は、いかなる判定に基づいて、画像情報からは認識できない情報を体感振動情報信号として送出するものか不明である点。

[相違点2]
訂正発明1の体感振動情報信号は、「キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるため」のものであるのに対し、公知発明1の体感振動情報信号は、継続的な振動を与えるためのものである点。

事案に鑑み、相違点2から検討すると、訂正発明1は、「キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるため」の体感振動情報信号という相違点2に係る発明特定事項を備えることで、「遊戯者は一層高度な現実感やスリルを味わえることになる」という技術的意義を有するものであるから、上記相違点2は実質的な相違点である。
そして、訂正発明1と公知発明1は、少なくとも上記相違点2のとおりの実質的な相違点を有するものであるから、訂正発明1は、公知発明1と同一ではなく、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当しない。

ウ 訂正後の請求項5ないし7に係る発明について
訂正後の請求項5ないし7に係る発明は、請求項1を直接的に又は間接的に引用するものであり、公知発明1に対して少なくとも上記「第2 1.(4)イ(エ)」で示したとおりの実質的な相違点を有し、同一ではないから、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当しない。

エ 小括
したがって、請求項1及びこれを引用する請求項5ないし7に係る発明は、特許法第29条第1項第1号又は第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではない。
また、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする他の理由も発見しない。

したがって、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

2.請求項8、11及び12からなる一群の請求項に係る訂正について
(1)訂正の目的について
訂正事項3は、本件特許請求の範囲の請求項8における「体感振動情報信号」の内容を具体的に限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

(2)新規事項を追加するものか否か、及び実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものか否かについて
訂正事項3は、訂正事項1と同様の限定をするものであり、上記「第3 1.(2)ア」で述べたとおりの理由により、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、訂正事項3が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
したがって、訂正事項3は特許法126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)一群の請求項か否かについて
訂正事項3に係る訂正後の請求項8、11ないし7は、訂正後の請求項8を請求項11が引用し、さらに請求項11を請求項12が引用するものであり、特許法第126第3項の「一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係その他経済産業省令で定める関係」にある。
したがって、訂正事項3に係る訂正後の請求項8、11及び12は一群の請求項である。

(4)訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて
訂正事項3は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に違反するか否か、すなわち、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。
ここで、本件特許に対しては上記「第3 1.(4)」のとおり訴訟が係属しており、訂正後の請求項8に記載されている事項により特定される発明が被告が主張する公知発明8であり、特許法第29条第1項第1号又は同第2号に該当するかを以下、検討する。

ア 公知発明8が公然と実施された時期又は公然と知られた時期
上記「第3 1.(4)ア」のとおり、「ニンジャウォーリアーズ」のゲームが動作するゲーム装置の制御方法は、遅くとも本件特許の出願日前である1988年春頃には公然知られた又は公然実施されたと推認できる。

イ 訂正発明8が公知発明8と同一であるかについて
(ア)訂正発明8
訂正発明8は、以下のとおりである。
「【請求項8】 遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えたゲーム装置の制御方法であって、
上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が特定の状況にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報を、上記キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるための体感振動情報信号として振動発生手段に送出するようにしたことを特徴とする、ゲーム装置の制御方法。」

(イ)各証拠方法の内容
各証拠方法の内容は上記「第3 1.(4)イ(イ)aないしf」記載のとおりである。

(ウ)公知発明8の認定
上記「第3 1.(4)イ(イ)aないしf」の開示内容を総合すると、公知発明8は、以下のとおりのものであると認められる。
「レバー及びボタンと、左右方向への移動やジャンプ、しゃがむ、攻撃といった動作ができる忍者の服装をしたキャラクタを含むゲーム画面が表示される表示部とを有する本体部とベンチを備えた遊戯装置の制御方法であって、
前記キャラクタが右方向に移動するとき、それに従って背景も変化して右方向に進んでいる様子が表示され、
前記キャラクタが背景にゲートがある地点の近くにあるとき、戦車のキャラクタが表示されない状態でベンチが振動を開始し、振動は継続したまま戦車のキャラクタが登場及び退場し、戦車のキャラクタが表示されない状態で振動が継続した後振動が停止するようにしたゲーム装置の制御方法」

(エ)対比・判断
訂正発明8と公知発明8を対比する。
a 両者は、上記「第3 1.(4)イ(エ)aないしe」で述べたものと同様の相当関係がある。

b 公知発明8の「本体部があるゲーム装置の制御方法」は、訂正発明1の「ゲーム機を備えた遊戯装置の制御方法」に相当する。

c 公知発明8は「戦車のキャラクタが表示されない状態でベンチが振動を開始し、振動は継続したまま戦車のキャラクタが登場及び退場し、戦車のキャラクタが表示されない状態で振動が継続した後振動が停止する」ものであり、「振動発生手段」を備えることは明らかである。また、ベンチが振動すれば、これに座る遊戯者が振動を体感するものであるから、振動発生手段に送出される信号は「体感振動情報信号」といえる。さらに、公知発明8の戦車のキャラクタが表示されていない状態での振動は、キャラクタの近くに戦車のキャラクタが存在するという「画像情報から認識できない情報」を体感させるものといえる。よって、公知発明8は、「画像情報からは認識できない情報を、体感振動情報信号として振動発生手段に送出するようにした」ものといえる。

d 乙B11ないし15号証からは、公知発明8において「キャラクタが背景にゲートがある地点の近くにあるとき」に、実際にゲーム内でいかなる判定に基づいて体感振動情報信号を振動発生手段に送出するようにしているのかは不明であり、公知発明8が、「ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作しているキャラクタの置かれている状況が特定の状況にあることを判定した時に」、画像情報から認識できない情報を体感振動情報信号として送出するものであることまで直ちに明らかとまではいえない。
よって、訂正発明8と公知発明8とは、「所定の時点で、画像情報からは認識できない情報を、体感振動情報信号として振動発生手に送出する」との概念で共通するにすぎない。

したがって、両者は、
「遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置の制御方法であって、
所定の時点で、上記画像情報からは認識できない情報を、体感振動情報信号として振動発生手段に送出するようにした遊戯装置の制御方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点3]
訂正発明8は、「ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が特定の状況にあることを判定した時に」、画像情報からは認識できない情報を体感振動情報信号として送出するのに対し、公知発明8は、いかなる判定に基づいて、画像情報からは認識できない情報を体感振動情報信号として送出するのか不明である点。

[相違点4]
訂正発明8の体感振動情報信号は、「キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるため」のものであるのに対し、公知発明8の体感振動情報信号は、継続的な振動を与えるためのものである点。

事案に鑑み、相違点4から検討すると、訂正発明1は、「キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるため」の体感振動情報信号という相違点4に係る発明特定事項を備えることで、「遊戯者は一層高度な現実感やスリルを味わえることになる」という技術的意義を有するものであるから、上記相違点4は実質的な相違点である。
そして、訂正発明8と公知発明8は、少なくとも上記相違点4のとおりの実質的な相違点を有するものであるから、訂正発明8は、公知発明8と同一ではなく、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当しない。

(3)訂正後の請求項11及び12に係る発明について
訂正後の請求項11及び12に係る発明は請求項8を直接的に又は間接的に引用するものであり、公知発明8に対して少なくとも上記「第3 2.(2)イ(エ)」で示したとおりの実質的な相違点を有し、同一ではないから、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当しない。

(4)小括
したがって、請求項8及びこれを引用する請求項に係る発明は、特許法第29条第1項第1号又は第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではない。
また、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする他の理由も発見しない。

したがって、訂正事項3は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求に係る訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、同条第3項、5項、6項、及び7項の規定にも適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊戯装置、およびその制御方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が特定の状況にあるか否かを判定する特定状況判定手段と、上記特定状況判定手段が特定の状況にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報を、上記キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるための体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段と、上記振動情報制御手段からの体感振動情報信号に基づいて振動を生じさせる振動発生手段と、を備えたことを特徴とする、遊戯装置。
【請求項2】遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が危険な状態にあるか否かを判定する特定状況判定手段と、上記特定状況判定手段が上記危険な状態にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報であって上記危険な状態にない時には送出されない情報を、体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段と、上記振動情報制御手段からの体感振動情報信号に基づいて振動を生じさせる振動発生手段と、を備えたことを特徴とする、遊戯装置。
【請求項3】遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が有利な状態にあるか否かを判定する特定状況判定手段と、上記特定状況判定手段が上記有利な状態にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報であって上記有利な状態にない時には送出されない情報を、体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段と、上記振動情報制御手段からの体感振動情報信号に基づいて振動を生じさせる振動発生手段と、を備えたことを特徴とする、遊戯装置。
【請求項4】上記請求項2または3のいずれかに記載の遊戯装置において、上記特定状況判定手段は、上記ゲームの進行途中における上記キャラクタの置かれている状況が所定の規則性をもって変化しているか否かを判定するものであり、この変化していることが判定された時に、上記振動情報制御手段から上記キャラクタの状況の変化の態様に応じて変化する体感振動情報信号が送出されるように構成されている、遊戯装置。
【請求項5】上記請求項1ないし4のいずれかに記載の遊戯装置において、上記入力手段は、二人以上の遊戯者がそれぞれ独立して操作することが可能に構成されているとともに、上記特定状況判定手段は、ゲームの進行途中における上記二人以上の遊戯者がそれぞれ操作している二個以上のキャラクタの置かれている状況を別々に判定するように構成されており、かつ、この特定状況判定手段のそれぞれの判定結果に基づいて、上記振動情報制御手段から別々の体感振動情報信号が、二個以上の上記振動発生手段に送出されるように構成されている、遊戯装置。
【請求項6】上記請求項1ないし5のいずれかに記載の遊戯装置において、上記振動発生手段は、スピーカから発せられる音響に基づいて容器本体の外壁に振動を生じさせるようにした音響体感器であるとともに、上記振動情報制御手段から送出される体感振動情報信号は、上記スピーカに対して送出される音響信号である、遊戯装置。
【請求項7】上記スピーカに対して送出される音響信号は、所定の低周波領域の音響信号である、請求項6に記載の遊戯装置。
【請求項8】遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置の制御方法であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が特定の状況にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報を、上記キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるための体感振動情報信号として振動発生手段に送出するようにしたことを特徴とする、遊戯装置の制御方法。
【請求項9】遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置の制御方法であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が危険な状態にあることを判定した時に、上記画像情報からは認定できない情報であって上記状況が危険な状態にない時には送出されない情報を、体感振動情報信号として振動発生手段に送出するようにしたことを特徴とする、遊戯装置の制御方法。
【請求項10】遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置の制御方法であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が有利な状態にあることを判定した時に、上記画像情報からは認定できない情報であって上記状況が有利な状態にない時には送出されない情報を、体感振動情報信号として振動発生手段に送出するようにしたことを特徴とする、遊戯装置の制御方法。
【請求項11】上記請求項8ないし10のいずれかに記載した遊戯装置の制御方法において、上記振動発生手段として音響体感器を使用し、この音響体感器のスピーカから発せられる音響に基づいてその容器本体の外壁に振動を生じさせるようにし、かつ上記体感振動情報信号としての音響信号を、上記スピーカに対して送出するようにした、遊戯装置の制御方法。
【請求項12】上記スピーカに対して、所定の低周波領域の音響信号を送出するようにした、請求項11に記載の遊戯装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本願発明は、遊戯装置およびその制御方法に関し、詳しくは、業務用ゲーム機や家庭用ゲーム機におけるゲームの進行に際して、遊戯者による入力手段の操作により上記ゲームの進行にその遊戯者が参加するように構成され、かつそのゲームの進行状態に応じてその遊戯者に振動を体感的に伝達するように構成された遊戯装置およびその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年においては、業務用ゲーム機や家庭用ゲーム機などを使用して行われるゲームとして、遊戯者がゲームの中のキャラクタ等とは無関係にそのゲームの進行を全て一方的に決定しあるいは制御するように構成したもの以外に、遊戯者の入力操作により移動するキャラクタ等が存在して遊戯者がそのゲームの進行に参加するように構成したものが実用化されている。
【0003】この遊戯者の参加によるゲームは、ジョイスティックレバーや押しボタン等から構成される入力手段を上記各種ゲーム機に取り付け、そのゲーム機に備えられあるいは接続されているCRTやLCDなどの画像出力手段を視認しながら遊戯者が上記入力手段を操作することにより、そのゲームの進行中において自己に対応する仮想人物画像等の行動を制御するものである。
【0004】この種のゲームの具体的内容としては、たとえば格闘技等のスポーツに係るものや、冒険あるいはレースに係るもの、さらには宝探しを行うものなど、種々の分野にわたるものが提案されあるいは実用化されている。そして、この種のゲームの進行途中においては、ゲーム機に備えられあるいは接続されているスピーカ等の音響出力手段から様々な音響が発せられるように構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の各種ゲーム機により行い得る遊戯者参加ゲームは、そのゲームの途中において自己に対応する仮想人物画像等の置かれている状況が変化した場合等に、ゲーム機専用のスピーカから音響が発せられるものが主流を占めている。したがって、自己と他者とで勝負を決するようなゲームにおいては、上記スピーカから発せられた音響が自己だけでなく他者にも聞こえてしまうことになり、たとえば他者に対して秘密にしておきたい状態等が存在する場合であっても、その秘密状態を維持しておくことは不可能である。
【0006】このため、ゲームの内容が全てオープンなものとなり、十分なスリル感を味わえなくなるばかりでなく、音響が発せられることに起因して、自己のみが知っている情報に基づいて秘密のうちにゲームを進行させるといったことができなくなり、この種のゲームを製作する上での自由度ないし選択の幅が小さくなるという問題を有している。
【0007】加えて、この種のゲームは、そのゲーム進行途中において発せられる音声や効果音のみによって、遊戯者にある程度の現実感や迫力を与えようとしているのが実情であるが、このような手法では、遊戯者は聴覚および視覚だけでその雰囲気を味わうに留まり、より高度な現実感や十分な迫力等が得られず、娯楽性や面白さに欠けるという難点がある。
【0008】本願発明は、上述の事情のもとで考え出されたものであって、ゲームの進行途中における自己の置かれている状況を、視覚および聴覚以外の感覚をもって知得できるようにするとともに、相手方に対して秘密状態の下でゲームを進行させることなどを可能にし、これによりゲーム製作上の自由度を増大させ、かつ高度な現実感や十分な迫力が得られる遊戯装置を提供することをその課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】すなわち、本願の請求項1に記載した発明は、遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が特定の状況にあるか否かを判定する特定状況判定手段と、上記特定状況判定手段が特定の状況にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報を、体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段と、上記振動情報制御手段からの体感振動情報信号に基づいて振動を生じさせる振動発生手段と、を備えたことを特徴としている。
【0011】また、本願の請求項2に記載した発明は、遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が危険な状態にあるか否かを判定する特定状況判定手段と、上記特定状況判定手段が上記危険な状態にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報であって上記危険な状態にない時には送出されない情報を、体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段と、上記振動情報制御手段からの体感振動情報信号に基づいて振動を生じさせる振動発生手段と、を備えたことを特徴としている。
【0012】さらに、本願の請求項3に記載した発明は、遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が有利な状態にあるか否かを判定する特定状況判定手段と、上記特定状況判定手段が上記有利な状態にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報であって上記有利な状態にない時には送出されない情報を、体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段と、上記振動情報制御手段からの体感振動情報信号に基づいて振動を生じさせる振動発生手段と、を備えたことを特徴としている。
【0013】この場合、上記請求項1ないし3のいずれかに記載の遊戯装置において、上記特定状況判定手段は、上記ゲームの進行途中における上記キャラクタの置かれている状況が所定の規則性をもって変化しているか否かを判定するものであり、この変化していることが判定された時に、上記振動情報制御手段から上記キャラクタの状況の変化の態様に応じて変化する体感振動情報信号が送出されるように構成されているものであってもよい(請求項4)。
【0014】また、上記請求項1ないし4のいずれかに記載の遊戯装置において、上記入力手段は、二人以上の遊戯者がそれぞれ独立して操作することが可能に構成されているとともに、上記特定状況判定手段は、ゲームの進行途中における上記二人以上の遊戯者がそれぞれ操作している二個以上のキャラクタの置かれている状況を別々に判定するように構成されており、かつ、この特定状況判定手段のそれぞれの判定結果に基づいて、上記振動情報制御手段から二種以上の体感振動情報信号が、二個以上の上記振動発生手段に送出されるように構成されているものであってもよい(請求項5)。
【0015】ところで、上記請求項1ないし5のいずれかに記載した発明において、上記振動発生手段は、スピーカから発せられる音響に基づいて容器本体の外壁に振動を生じさせるようにした音響体感器であるとともに、上記ゲーム進行制御手段から送出される体感振動制御信号は、上記スピーカに対して送出される音響信号であることが好ましい(請求項6)。
【0016】加えて、上記スピーカに対して送出される音響信号は、所定の低周波領域の音響信号であることが好ましい(請求項7)。
【0017】一方、本願の請求項8に記載した発明は、遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置の制御方法であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が特定の状況にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報を、体感振動情報信号として振動発生手段に送出するようにしたことを特徴としている。
【0018】また、本願の請求項9に記載した発明は、遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置の制御方法であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が危険な状態にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報であって上記状況が危険な状態にない時には送出されない情報を、体感振動情報信号として振動発生手段に送出するようにしたことを特徴としている。
【0019】さらに、本願の請求項10に記載した発明は、遊戯者が操作する入力手段と、この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と、このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段とを有するゲーム機を備えた遊戯装置の制御方法であって、上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が有利な状態にあることを判定した時に、上記画像情報からは認識できない情報であって上記状況が有利な状態にない時には送出されない情報を、体感振動情報信号として振動発生手段に送出するようにしたことを特徴としている。
【0020】この場合において、上記請求項8ないし10のいずれかに記載した発明に係る制御方法において、上記振動発生手段として音響体感器を使用し、この音響体感器のスピーカから発せられる音響に基づいてその容器本体の外壁に振動を生じさせるようにし、かつ上記体感振動情報信号としての音響信号を、上記スピーカに対して送出することが好ましい(請求項11)。
【0021】加えて、上記スピーカに対して、所定の低周波領域の音響信号を送出することが好ましい(請求項12)。
【0022】
【発明の作用および効果】上記請求項1に記載した発明によれば、遊戯者が入力手段を操作することにより、ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて、出力手段(少なくともディスプレイ等)から時々刻々と変化する画像表示がなされてゲームが進行する。この場合、遊戯者は、入力手段を操作することによりそのゲームに参加した状態にある。具体的には、たとえば上記出力手段に表示される画像の中に、遊戯者による入力手段の操作に伴ってその行動が変化する人物画像等のキャラクタが存在していれば、そのキャラクタを自己の意志に基づいて移動させることにより、遊戯者がそのゲームに参加した状態にある。
【0023】そして、このようなゲームの進行途中における上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて特定状況判定手段が、遊戯者の置かれている状況、すなわち遊戯者により操作されている上記キャラクタの置かれている状況が、特定の状況にあるか否かを判定する。そして、特定の状況にあることが判定された時点で、振動情報制御手段から振動発生手段に対して、画像情報からは認識できない情報が、体感振動情報信号として送出される。
【0024】これにより、上記出力手段により画像として表示されていない内容が、所定の体感振動として上記振動発生手段に生じることになる。したがって、遊戯者は、この振動発生手段を身体に接触させておけば、この時に生じる振動を体感的に知得して、ゲームの進行状態が特定の状況にあることを知得できるのに対して、他の遊戯者や周辺の見物人は、上記画像を見ているだけではその特定の状況を認識することができない。
【0025】この結果、遊戯者は、周囲にその特定の状況を悟られることなく、自己のみが知り得る秘密の状態の下でゲームを進行していくことができるとともに、振動を体感的に知得できることにより迫力や現実感が増大することになる。
【0026】一方、上記請求項2に記載した発明によれば、特定状況判定手段がゲームの進行途中において遊戯者の置かれている状況が危険な状態にあることを判定した時に、振動情報制御手段から振動発生手段に対して、画像情報からは認定できない情報であって危険な状態にない時には送出されない情報が、体感振動情報信号として送出される。
【0027】これにより、遊戯者は、自己が危険な状態に置かれていることを体感振動により知得できることになり、危機感がリアルに伝達されて、より高度な現実感やスリル感を味わえる。そして、この時点で生じる振動の特性を、危険な状態にマッチングした特性とすることにより、その効果は一層顕著になる。
【0028】また、画像情報からは認定できない情報が体感振動情報として送出されるので、上記請求項1の発明と同様にして、秘密状態の下でゲームを進行させることができ、ゲーム製作上の自由度やゲーム内容の選択の幅が増大する。
【0029】これに対して、上記請求項3に記載した発明によれば、特定状況判定手段がゲームの進行途中において遊戯者の置かれている状況が有利な状態にあることを判定した時に、振動情報制御手段から振動発生手段に対して、画像情報からは認定できない情報であって有利な状態にない時には送出されない情報が、体感振動情報信号として送出される。
【0030】これにより、遊戯者は、自己が有利な状態に置かれていることを、体感振動により知得できることになり、その有利な雰囲気をリアルに味わえることになる。また、その時の有利な状態は画像情報からは認識できない情報であるので、自己が有利な状態にあることを他の者に悟られずに秘密状態の下でゲームを進行させることができ、上記請求項1および請求項2の発明と同様にして、ゲーム製作上の自由度やゲーム内容の選択の幅が増大する。
【0031】一方、上記請求項4に記載した発明によれば、ゲームの状況が時々刻々と変化している場合において、上記特定状況判定手段は、そのゲームの状況が所定の規則性にしたがって変化している場合に、特定状況にあると判定する。そして、この判定がなされることにより、上記ゲームの変化の態様に応じた体感振動情報信号、たとえば遊戯者の置かれている状況の危険度が大きくなるにつれて振動の振幅を大きくしたり、あるいは振動の発生周期を短くするための体感振動情報信号が送出される。これにより、遊戯者は一層高度な現実感やスリルを味わえることになる。
【0032】さらに、上記請求項5に記載した発明によれば、たとえば二人の遊戯者がゲームを競い合う場合に、その効果が顕著に得られる。すなわち、一の遊戯者が操作しているキャラクタと他の遊戯者が操作しているキャラクタとが、それぞれ別々に特定の状況を判定され、その判定結果に基づいて別々の振動発生手段に体感振動情報信号が送出される。したがって、二人の遊戯者は、それぞれ異なる時に異なる振動を体感的に知得できることになり、しかもその情報を相手方に対して秘密にした状態でゲームを進行できることになる。
【0033】この場合、上記振動発生手段としては、ソレノイドの励磁および非励磁等により振動板に振動を生じさせる型式のものを使用してもよいが、上記請求項6に記載した発明のような構成を備えた音響体感器を使用すれば、既存のゲーム機から発せられる音響の有効利用が図られる。
【0034】また、このような音響体感器を使用する場合に、上記請求項7に記載した発明のように、所定の低周波領域の音響信号を送出するようにすれば、たとえば非可聴特性を備えた振動が生じることになり、秘密状態の下でゲームを進行させるという要請に適切に応じることができる。この場合、上記請求項5に記載した発明のように二人の遊戯者に対応する音響体感器に対してそれぞれ異なる音響信号を送出するには、ステレオ音響の一方側「L」と他方側「R」とを利用して上記二個の音響体感器にそれぞれ異なる体感振動情報信号を送出させることが好ましい。
【0035】なお、上記請求項8ないし請求項12に記載した発明に係る遊戯装置の制御方法はそれぞれ、既述の請求項1ないし3と、請求項6および7に記載した発明に係る遊戯装置に対応するものである。したがって、これらの制御方法により得られる作用効果はそれぞれ、対応する遊戯装置について既に述べた内容と同様である。
【0036】
【実施例の説明】以下、本願発明の好ましい実施例を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0037】図1は、本願発明に係る遊戯装置の概略システムを示すブロック図である。同図に示すように、この遊戯装置20は、大別すると、振動発生手段である音響体感器1と、家庭用または業務用のゲーム機21と、このゲーム機21からの出力信号に基づいて上記音響体感器1を制御する制御手段31とから構成されている。
【0038】詳述すると、上記ゲーム機21は、たとえばジョイスティックレバー22および押しボタン式スイッチ23を有する入力手段24と、各種のゲーム情報を記憶しているゲーム情報記憶手段25と、上記入力手段24およびゲーム情報記憶手段25からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段26と、このゲーム進行制御手段26からの音響信号aを受けて利用者に対して可聴音響を発する音響出力手段27と、上記ゲーム進行制御手段26からの画像信号bを受けて利用者に対して画像表示を行う画像出力手段28と、を備えている。
【0039】一方、上記制御手段31は、上記ゲーム進行制御手段26からの信号に基づいて、進行中のゲームにおける遊戯者の入力手段24の操作による画像上のキャラクタの置かれている状況が特定の状況にあるか否かを判定する特定状況判定手段32と、この特定状況判定手段32からの信号に基づいて、上記音響信号aに所定の制御を施し、これを体感振動情報信号cとして上記音響体感器1のスピーカ6に送出する振動情報制御手段33と、を備えている。
【0040】上記特定状況判定手段32は、たとえば、進行中のゲームにおける遊戯者が操作しているキャラクタの置かれている状況が危険な状態にあるか安全な状態にあるかの判定や、あるいはそのキャラクタにとって有利な状態にあるか不利な状態にあるかの判定などを行う。そして、この判定結果が危険な状態にある場合や、有利な状態にある場合には、上記振動情報制御手段33から、それ以外の場合には送出されない情報が体感振動情報信号cとして音響体感器1に対して送出される。
【0041】この場合、上記振動情報制御手段33から送出される体感振動情報信号cには、上記ゲーム進行制御手段26から画像出力手段28に送出される画像信号bには含まれていない情報がインプットされている。したがって、CRTやLCD等で構成される上記画像出力手段28による画像を見ていただけでは把握できない情報が、体感振動情報として上記音響体感器1のスピーカ6に対して伝送されることになる。
【0042】また、上記特定状況判定手段32が、ゲーム進行中におけるキャラクタの置かれている状況が特定の状況にあることを判定した場合には、上記振動情報制御手段33から、それ以外の場合に送出されていない情報が体感振動情報信号cとして音響体感器1に対して送出される。その一例として、上記判定結果が、危険な状態や、有利な状態にあることを判定した場合には、その判定がなされた時点で初めて振動を生じさせるための体感振動情報信号cが送出される。また、他の例として、上記体感振動情報信号cが振動を間欠的に生じさせるものであればその間欠周期(発生周期)を異ならせるための信号が送出され、あるいは振動の周波数や振幅を異ならせるための体感振動情報信号cが送出される。
【0043】さらに、図示しないが、上記入力手段24を複数個たとえば二個設置して、二人の遊戯者がそれぞれ上記入力手段24を独立して操作できるようにすることも可能である。この場合には、上記特定状況判定手段32が、ゲームの進行途中における上記二人以上の遊戯者がそれぞれ操作している二個以上のキャラクタの置かれている状況を別々に判定するように構成されるとともに、この特定状況判定手段32のそれぞれの判定結果に基づいて、上記振動情報制御手段33から別々の体感振動情報信号c,cを、二個の音響体感器1,1に送出するように構成される。このような構成を採用した場合には、二人の遊戯者に対応する音響体感器1,1に対してそれぞれ異なる音響信号c,cを送出するための手法として、ステレオ音響の一方側「L」と他方側「R」とを利用して上記二個の音響体感器1,1にそれぞれ別々に体感振動情報信号c,cを送出させることが好ましい。
【0044】一方、上記のような構成を備えた遊戯装置20の使用態様としては、その具体例を挙げれば、以下に示す通りである。
【0045】すなわち、図2に示すように、画像出力手段28の所定の表示領域を、縦横に複数のブロック40に仮想区分し、これらのうちの所定数のブロック40内における符号Xで示す箇所に地雷が埋められているものとする。そして、地雷Xが埋められている状態は、画像として表示されない。したがって、遊戯者は、各ブロック40のうちの何れのブロックに地雷Xが埋められているのかを、認識することができない状態にある。
【0046】このような状態で、遊戯者が上記入力手段24を適宜操作することにより、同図に示す特定のキャラクタ41が移動することになるが、このキャラクタ41が鎖線で示すように地雷Xの埋められているブロック40に隣接するブロックに侵入した時点で、上記特定状況判定手段32が、遊戯者の置かれている状況が危険な状況にあると判定する。図示例の状態は、地雷Xの存在するブロック40に縦方向に対して隣接するブロックに侵入する場合を想定したものであるが、横方向に対して隣接するブロックに侵入した場合であっても、上記特定状況判定手段32は、遊戯者が危険な状況にあると判定する。
【0047】このようにして危険な状況の判定がなされた場合には、上記特定状況判定手段32からの信号に基づいて上記振動情報制御手段33が音響信号aに対して所定の制御を施し、耳に聞こえない低周波領域の音響信号を体感振動情報信号cとして音響体感器1のスピーカ6に送出する。この場合、上記特定状況判定手段32は、キャラクタ41が地雷Xに近づいているか、あるいは遠ざかっているかを判定し、近づいている場合には、その離間距離が短くなるにつれて上記低周波領域の音響信号の間欠周期を序々に小さくして振動が頻繁に生じるようにし、逆に遠ざかっている場合には、その離間距離が長くなるにつれて上記間欠周期を序々に大きくして振動の発生頻度を低下させるようにしてもよい。すなわち、地雷Xに対する接近度合いと心臓の鼓動とが一致したような雰囲気を味わえるようにするのである。
【0048】そして、上記のように耳に聞こえない音響信号が体感振動情報信号cとして音響体感器1のスピーカ6に送出されることにより、このスピーカ6から音圧が発せられ、この音圧に起因して音響体感器1の身体への接触側部分(後述する)に振動が生じる。この振動は、上記音響体感器1を装着している遊戯者の身体に伝達され、これにより遊戯者はキャラクタ41が地雷Xに接近していることを認識できる。したがって、上記キャラクタ41は、振動式の地雷探知機を備えたマインスイーパーを持って移動しているものと擬制できる。
【0049】このようにして、上記キャラクタ41が地雷Xに最接近したことを認識した時点で、遊戯者が上記入力手段24を操作することにより、画像上においてキャラクタ41がマインスイーパーにより地雷Xを掘り起こす。そして、上記表示領域の右側方に配設されている第一の表示部42には、掘り起こした地雷Xの総数が表示され、第二の表示部43には制限時間の残余時間が表示される。
【0050】したがって、制限時間内に何個の地雷Xを掘り起こすことができるかを競い合うゲームを楽しめることになる。この場合、遊戯者ができるだけ多くの地雷Xを掘り起こすために、慌ててキャラクタ41を移動させたならば、地雷Xの上にキャラクタ41が乗ってしまい大爆発が生じる。そして、この大爆発が生じた場合にも、上記特定状況判定手段32が特定の状況であると判定し、これに伴って、振幅の大きな振動を生じさせるための体感振動情報信号cが上記振動情報制御手段33から送出される。この結果、上記音響体感器1から身体に対して、大爆発に対応するような大きな振幅の振動が伝達され、遊戯者は大爆発が生じたことを疑似的に体験できる。
【0051】また、上記キャラクタ41が地雷Xに最接近したことを遊戯者が振動により認識しても、その地雷Xがキャラクタ41の前方、右側方および左側方のいずれにあるかの判別ができないため、この時の遊戯者の判断力によって掘り起こされる地雷Xの個数が変化することにもなる。これによっても、ゲームの面白さが増大する。
【0052】なお、必要ならば、スタート時点からゴールまでキャラクタ41が地雷Xを掘り起こしながら進んでいくタイムを競うようにすることも可能である。
【0053】この場合、上記のように入力手段24を二個設置して既述のような制御を行うように構成すれば、二人の遊戯者が地雷Xを掘り起こしていく競争を、相手方に悟られることなくゲームを進行できる。
【0054】一方、上記以外の遊戯装置20の使用態様としては、図2に示す具体例と同様にして、所定の表示領域を複数のブロックに仮想区分し、これのうちの所定数のブロックに罠が仕掛けられている宝箱(たとえば箱の中に敵が潜んでいる)と罠が仕掛けられていない宝箱とを、画像上認識できないようにランダムに配列させる。そして、キャラクタが罠の仕掛けられている宝箱に接近した時点、あるいは序々に接近していくことにより、そのような状況にあることを上記特定状況判定手段32が判定し、この判定結果として、上記振動情報制御手段33から上記と同様の体感振動情報信号cを送出するように構成すれば、遊戯者は音響体感器1からの振動に基づいて罠の仕掛けられた宝箱への接近を、外部に対する秘密状態の下で知得できる。
【0055】この場合、上記各ブロックが部屋を意味しており、所定箇所に画像として配列された廊下等の通り道から上記各部屋にドアを開けて侵入するように構成すれば、たとえば部屋の中に移動キャラクタが侵入した後に「“不意に、後ろのドアが閉まった”」などのメッセージとともに、上記体感振動情報信号cにより音響体感器1に振動を生じさせるといったことも可能になる。この場合には、ドアが不意に閉まったことが体感振動としてたとえば遊戯者の背中に伝達されることになり、高度な現実感が得られる。
【0056】さらに、上記遊戯装置20の他の例としては、宝探しゲーム、すなわち画像上は認識できない宝の隠し場所を、探し出していくゲームにおいて、移動キャラクタが宝の近傍に至った場合に、この状況を上記特定状況判定手段32が有利な状況であると判定し、この判定に基づいて、上記と同様の体感振動情報信号cを送出するように構成する。これによれば、遊戯者が有利な状態にあることを秘密のうちに知得できることになる。
【0057】以上のようにして送出される体感振動情報信号cとしては、120?160Hz以下の周波数領域内の信号であることが、他者の耳に聞こえないようにする上で好ましい。
【0058】なお、図1に示す遊戯装置20の構成は、ゲーム進行制御手段26から音響出力手段27に送出される音響信号aを有効利用して、上記例示の体感振動情報信号cに変換するようにしたものである。したがって、上記振動情報制御手段33は、低域通過フィルタや帯域通過フィルタ、あるいはアンプなどを備えている。しかしながら、本願発明は、このような構成に限定されるものではなく、ゲーム機21が備えている音源以外に、振動発生用の音源を別途備えて、上記音響信号aの送出経路から、上記体感振動情報信号cを切り離すことも可能である。
【0059】また、振動発生手段として、上記音響体感器1に代えて、たとえばソレノイドによる励磁および非励磁に伴って振動板等に振動を生じさせる型式のものを使用し、上記振動情報制御手段33が上記特定状況判定手段32からの信号に基づいて上記ソレノイドの励磁および非励磁を制御するように構成してもよい。
【0060】ところで、上記振動発生手段として、音響体感器1を使用する場合において、この音響体感器1の具体的構成は、以下に示す通りである。なお、図3は音響体感器1の斜視図、図4はその分解配列斜視図、図5および図6はその縦断面図である。
【0061】すなわち、図4に示すように、音響体感器1は、二つの半割りケース2,3を合体させて両者間に内部空間を形成する容器本体4と、この容器本体4の内部空間を二分するように仕切る画成板5と、この画成板5に装着されたスピーカ6とを備えている。そして、図3に示すように、上記音響体感器1の両側の側縁部には、利用者の肩に巻き掛けられる肩ベルト15,15の一端部と、わき腹の周辺に巻き掛けられるわき腹ベルト16,16の一端部とが連結されている。また、上記容器本体4の表面側部分には、その部分の壁部を二重構造として防音効果を得るための表側カバー部材7aが取り付けられているとともに、上記容器本体4の裏面側部分には、身体表面に直接的に接触する裏側カバー部材7bが取り付けられている。
【0062】上記容器本体は、上記裏側の半割りケース3と上記画成板5との二つの部材で構成することも可能であり、この場合には、上記表側の半割りケース2は保護カバーとしての役目を果たすことになる。すなわち、上記裏側の半割りケース3と上記画成板5との間に音圧発生空間11が画成される構造であればよく、したがって上記表側の半割りケース2と上記画成板5との間の気密性は、完全でなくてもよい。
【0063】また、図4に示すように、上記二つの半割りケース2,3の外周縁部には、比較的高い剛性を有するフランジ部2a,3aがそれぞれ一体形成されており、この両フランジ部2a.3a間に上記画成板5の外周縁部を挟持させた状態で、両フランジ部2a,3a間がビスやリベットあるいは接着剤等を用いて固定されるようになっている。そして、上記二つの半割りケース2,3の各フランジ部2a,3aには、それぞれ四箇所に外方に突出する膨出部2b,3bが一体的に形成されており、この各膨出部2b,3bに穿設されたベルト装着孔2c,3cに上記各肩ベルト15およびわき腹ベルト16が挿通固定されるようになっている(図6参照)。
【0064】この場合、図7に示すように、上記表側のカバー部材7aと裏側のカバー部材7bとを一体化させることにより保持ケース7を形成し、その内部に上記容器本体4を収納するようにしてもよい。このような構造にした場合には、同図にも示すように、上記保持ケース7の両側に、上記各肩ベルト15およびわき腹ベルト16が連結あるいは一体化される。そして、上記保持ケース7の一部分(たとえば裏面)にファスナー等で開閉可能な開口部を形成しておけば、保持ケース7の内部に対する容器本体4の収納および取り出しが容易に行えることになり、保守点検作業等が簡易になる。
【0065】また、上記保持ケース7の材質としては、ゴムや樹脂等の比較的軟質な特性を備えたものが使用される。そして、この保持ケース7は、身体への装着時に上記各ベルト15,16による引っ張り力が作用することにより、その内部空間が偏平状になるように撓み変形し、これによりその内部に収納されてる容器本体4がガタツキなく保持されることになる。また、この保持ケース7の内部に上記容器本体4を収納することにより、表側半割りケース2と保持ケース7の表面壁(カバー部材7a)との間に補助空間13が介在される。なお、この補助空間13は、上記引っ張り力により保持ケース7が偏平状に撓み変形しても、その表側のカバー部材7aの内方への突出部7sの存在により常に確保される。この補助空間13の存在により、容器本体4からの微妙な音の漏出が防止されるようになっている。また、この保持ケース7の内部に収納される容器本体としては、既述のように裏側の半割りケース3と画成板5とから構成されるものであってもよく、この場合には、上記表側の半割りケース2を廃止するようにしてもよい。
【0066】一方、図3および図6に示すように、上記各肩ベルト15および各わき腹ベルト16は、容器本体4への連結部周辺が、ゴム等の伸縮性を有する弾性伸縮帯状体15a,16aで構成されているのに対して、その他の部分は、布や革あるいは樹脂等の非伸縮性材料でなる非伸縮帯状体15b,16bで構成されている。そして、上記弾性伸縮帯状体15a,16aには、通気性を確保するための多数の貫通孔15x,16xが穿設されている。なお、上記各ベルト15,16を全長にわたって非伸縮帯状体で構成することも可能である。
【0067】この場合、図9に示すように、上記各わき腹ベルト16の非伸縮帯状体16bの他端部は、利用者の腹部の中央部で金具16wにより相互に連結されており、これにより腹部周辺を締め付けるようになっている。また、上記各肩ベルト15の非伸縮帯状体15bの他端部は、利用者の肩に巻き掛けられて腹部まで垂下した状態で上記わき腹ベルト16の所定寸法離間した位置にそれぞれ金具15wを介して連結されている。
【0068】そして、この実施例においては、容器本体4の内部に十分な振動を生じさせ、かつその振動を身体に適切に伝達させるため、さらに以下に示すような構成が採用されている。
【0069】図3ないし図6に示す上記二つの半割りケース2,3の材質は、表側の半割りケース2が硬質または半硬質の特性を備えているのに対して、裏側の半割りケース3が軟質の特性を備えている。具体的には、たとえば上記表側の半割りケース2は、ポリプロピレンやポリエチレンなどの材料により相対的に厚肉に形成されており、裏側の半割りケース3はポリプロピレンやポリエチレンなどの材料により相対的に薄肉に形成される。この場合、上記裏側の半割りケース3の底面部3xは、利用者の身体に接触する部位であるので、特にこの部位については薄肉にして撓み変形が容易になるように形成することが好ましい。
【0070】また、上記裏側の半割りケース3の底面部3xは、図6に示すように幅方向の中央部が窪むように形成されるとともに、図5に示すように幅方向の両側における縦方向の中央部が膨出するように形成されており、これにより、たとえば利用者の背中に対して上記底面部3xの面全体が均一に接触するように配慮がなされている。
【0071】一方、上記画成板5の材質は、硬質または半硬質の特性を備えている一般樹脂、具体的には、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、PWA、FRP、エバー樹脂、ゴム樹脂、MMAなどが使用される。そして、上記画成板5の略中央部には、円形の開口部8が形成されており、この開口部8の周縁部に、スピーカ6の拡開端部周縁がビスやリベットあるいは接着剤等を用いて固定される。この場合、図5および図6に示すように、上記スピーカ6の拡開部側は、上記裏側の半割りケース3の底面部3xを指向している。したがって、実際の使用時には、上記スピーカ6の拡開部側が、利用者の身体側を指向することになる。
【0072】さらに、上記画成板5における開口部8の外周側部位には、開口部8と同心円である複数の円環状凹凸9aからなる波形状を呈する波板状部9が形成されている。そして、上記スピーカ6は、この波板状部9によって弾性支持された状態にあり、スピーカ6の振動に連動してこの波板状部9が撓み振動することになる。また、上記画成板5における波板状部9の非形成箇所には、この画成板5により仕切られた背後空間10と音圧発生空間11との相互間で空気振動を流通可能とするための透孔12が穿設されている。なお、必要ならば、この透孔12に代えて、たとえばスリットを形成するようにしてもよい。
【0073】しかしながら、上記画成板5の材質によっては、波板状部9や透孔12を穿設しなくても、十分な振動を確保できることが実験により判明している。したがって、上記波板状部9や透孔12は、上記画成板5の材質に応じて適宜設けるようにすることが好ましい。
【0074】以上のような構成を備えた音響体感器1を図8に示すように遊戯者の背中に装着した状態で、この遊戯者が図1に示す入力手段24を操作することにより、既述のゲーム機21と特定状況判定手段32と振動情報制御手段33の動作に基づいて、上記例示した地雷Xの使用によるゲームや、宝箱あるいは宝探しに係るゲームが行われる。
【0075】そして、ゲームの進行中に上記特定状況判定手段32が特定の状況を判定することにより送出される体感振動情報信号cは、上記スピーカ6に入力されて所定の振動を生じさせるが、この振動が生じる場合の詳細な状態は、以下に示す通りである。
【0076】すなわち、上記振動情報制御手段33から送出された体感振動情報信号cは、たとえば低周波領域のみの音響信号となってスピーカ6に入力される。これに伴って、上記スピーカ6から音圧が発せられるともに、この音圧は低周波の圧力波となって裏側半割りケース3の底面部3xに直接的に伝播され、あるいは、まず音圧発生空間11に空気振動を生じさせる。この場合に生じた空気振動は、画成板5の透孔12(またはスリット等)を通過して背後空間10に伝播され、結果的には容器本体4の内部空間全体に空気振動が生じる。
【0077】これと相まって、スピーカ6のコーン紙が振動することに起因して、スピーカ6自体も画成板5の波板状部9を撓み変形させながら振動する。これにより、スピーカ6の口径が小さくとも、あたかも、スピーカ6の口径が拡大したのと同様の音圧増幅効果を奏することになり、十分なレベルの音圧を発生させることが可能になる。したがって、この音響体感器1に内蔵されているスピーカ6が、その設置スペース上の関係から小口径であるにも拘らず、十分な重低音を発生させることができる。
【0078】このようにして、音響体感器1の底面部3xからの十分な振動が、ゲームを行っている遊戯者の背中に伝達されることになり、秘密状態を維持しつつスリルや迫力を味わいながらリアリティに富んだゲームを楽しめることになる。
【0079】なお、上記実施例は、遊戯者の背中に対して振動を付与するリュックサック型式の音響体感器1を用いて本願発明に係る遊戯装置20を構成したものであるが、以下に示すような型式の音響体感器1を用いることによっても、同様に本願発明に係る音響体感器1を構成することができる。
【0080】すなわち、図14に示すように、音響体感器1を腰ベルト17を使用して遊戯者の腰に装着する型式のものを用いて、本願発明を構成するのである。
【0081】この場合に使用される音響体感器1は、図10にその外観を示すように、両側縁部が僅かに湾曲する長矩形状を呈している。そして、この音響体感器1に取り付けられる腰ベルト17が弾性伸縮帯状体17aを備えて貫通孔17xが形成されている点や、音響体感器1の内部構造は、図11および図12に示すように、既述の実施例と基本的に同一である。また、この実施例においても、二つのカバー部材7a,7bを一体化して保持ケース7を形成し、この保持ケース7の内部に容器本体4を収納するようにしてもよく(図13参照)、あるいは、表側半割りケース2を廃止して、裏側半割りケース3と画成板5とから容器本体を構成してもよい。したがって、図10ないし図14において、既述の実施例における音響体感器1と共通の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0082】なお、この音響体感器1は、既述の実施例の音響体感器よりも小型であるため、同一のスピーカ6を使用したならば、この音響体感器1の方が狭い面積の振動伝達面を通じて腰部周辺に振動が集中して伝達されるので、局部的に強い振動が得られることになる。
【0083】また、上記いずれの音響体感器1を使用する場合においても、アンプ、音源(ソレノイド)およびフィルタを内蔵した上記振動情報制御手段33や、IC回路あるいはマイクロコンピュータ等を内蔵した上記特定状況判定手段32は、単一の小型ケースに組み込んでユニット化し、この小型ケースを、上記各身体装着用ベルト15,16,17を利用して遊戯者に装着しておくことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る遊戯装置の実施例を示し、その基本概念的な構成を示す概略構成図である。
【図2】上記遊戯装置を使用して行われるゲームの一例を示す概略図である。
【図3】上記実施例に係る遊戯装置の構成要素である振動発生手段(音響体感器)を示す斜視図である。
【図4】上記振動発生手段の部品分解配列斜視図である。
【図5】図3のA-A線に沿って切断した拡大縦断背面図である。
【図6】図3のB-B線に沿って切断した拡大縦断背面図である。
【図7】上記振動発生手段の構成要件である身体装着用ベルトの他の取り付け状態を示すものであり、上記図6に対応する拡大縦断背面図である。
【図8】上記振動発生手段の装着状態を示す概略図である。
【図9】上記振動発生手段の装着状態を示す概略図である。
【図10】上記遊戯装置の構成要素である振動発生手段(音響体感器)の他の例を示す斜視図である。
【図11】図10のC-C線に沿って切断した拡大縦断側面図である。
【図12】図10のD-D線に沿って切断した拡大縦断背面図である。
【図13】上記振動発生手段の他の例の構成要件である身体装着用ベルトの他の取り付け状態を示すものであり、上記図11に対応する拡大縦断側面図である。
【図14】上記振動発生手段の他の例の装着状態を示す概略図である。
【符号の説明】
1 振動発生手段(音響体感器)
6 スピーカ
20 遊戯装置
24 入力手段
26 ゲーム進行制御手段
27 音声出力手段
28 画像出力手段
32 特定状況判定手段
33 振動情報制御手段
a 音響信号
b 画像信号
c 振動情報信号
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-11-12 
結審通知日 2015-11-16 
審決日 2015-12-03 
出願番号 特願平6-119347
審決分類 P 1 41・ 851- Y (A63F)
P 1 41・ 856- Y (A63F)
P 1 41・ 841- Y (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
山本 一
登録日 2002-04-12 
登録番号 特許第3295771号(P3295771)
発明の名称 遊戯装置、およびその制御方法  
代理人 ▼廣▲瀬 文雄  
代理人 ▼廣▲瀬 文雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ