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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B22C
管理番号 1309979
審判番号 不服2014-4387  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-06 
確定日 2016-01-13 
事件の表示 特願2007-163248「鋳型の形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月17日出願公開、特開2008- 6502〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成19年6月21日(パリ条約による優先権主張 2006年 6月28日,米国)の出願であって、平成25年10月29日付けで拒絶査定がなされ、平成26年3月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成27年3月2日付けで当審による拒絶理由通知がなされ、同年5月29日付けで意見書及び手続補正書が提出されものである。

[2]本願発明
本願の請求項1-10に係る発明は、平成27年5月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定されたものと認められるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。
「鋳型の形成方法において、
凹面(24)を有する鋳型(8、10)を鋳造することと、
前記凹面(24)に、混合物(26)を含む表面構造を形成することと、
前記鋳型(8,10)を加熱することと、
ダイレクトライト技術を用いて前記表面構造を修正することと、
前記混合物(26)を熱処理して、鋳造用のセラミックツールの表面構造を形成することと、
を含む方法。」(以下、「本願発明」という。)

[3]刊行物の記載事項
当審において通知した拒絶の理由に引用された、本願優先日前に日本国内において頒布された特開2005-320235号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は、当審が付与した。)。

(1a)「【0016】
本発明においては、様々な金属構成部品を使用することができる。・・・構成部品は通常、高温に曝され、従って冷却を必要とする物品である。構成部品はまた、ある種の内部チャネルを必要とするものである。上述のように、タービンエンジンエーロフォイルは、その主な例である。
【0017】
金属構成部品の内部チャネルを形成するために使用されるセラミックコアは、当技術分野においてよく知られている。これらは、方向性凝固共融合金及び超合金材料のインベストメント鋳造において使用される場合が多い。・・・」
(1b)「【0020】
当業者には理解されるように、コアは、射出成形法又はトランスファー成形法によって製造される場合がある。多くの場合、それらはセラミックスラリーから作製される。1つの非限定的な例としては、コアは、特開平02-188460号公報に記載されているように、凝固可能な液体、セラミック粉末、及びゲル化剤のセラミックスラリーから作製することができる。このスラリー組成物は、コア形の成形キャビティ内に導入され、次いで凝固及びゲル化処理される。次に、成形された「グリーン(未焼成品)」は、適切な温度及び時間スケジュールに従って加熱され、結果として焼結セラミックコアが得られる。」

(1c)「【0021】
上述のように、セラミックコアは、インベストメント鋳造法又は同様の方法に使用されるシェルモールド内に組み込まれたときに、金属構成部品の内部「中空」領域を形成する。本発明に従ってコア上に堆積されるポジ(すなわち表面上に隆起した)特徴部は、構成部品の内部領域内に所望の陥凹部を形成する。図1は、本発明のこの態様を単純な形態で説明している。セラミック材料が、一連のポジ特徴部12としてセラミックコア16の表面14上に堆積される。図中には円錐形状が示されている。セラミック材料は、堆積後、後述するように該材料を焼結させてコア表面14に堅固に結合するよう熱処理される。」

(1d)「【0024】
上述のように、コアの表面上にポジ特徴部を形成するセラミック材料を堆積させるために、直接書込み法が使用される。直接書込み法は、当技術分野において公知であり、多くの引用文献で記載されている。・・・」

(1e)「【0046】
図3は、任意の好適な被加工物104(すなわちセラミックコア)の表面上に任意の好適な材料102を流れとして供給するように構成されたロボットペンシステム100全体の説明図を提供する。コアは、平坦なプレートなどの単純な二次元(2D)構成を有することもできるが、より一般的には、変化する湾曲面、すなわち3つの軸線に沿って輪郭の変化を有する複雑な3D構成を有することになる。コアはまた、例えばキャビティ、孔、圧痕、及び同様のものなどの様々な内部領域を含むことができる。しかしながら、本明細書の説明の便宜上、コアは比較的単純な形状として図示されている。」

(1f)「【0054】
堆積材料がコアの表面に塗布された後、どのような揮発性成分(例えば、結合剤、溶剤、及びこれに類する物)をも除去し、更に材料を固化して強化するために熱処理が行われる。堆積された材料は、単独で又はコアと共に熱処理することができる。例示的な熱処理には、プラズマ、レーザ、電子ビーム加熱などの集束エネルギ源、あるいは何らかの他の局所的源による加熱が含まれる。あるいは、熱処理は、コアに対する損傷を回避するのに十分なほど温度が低い場合には、炉内で行うこともできる。熱処理は、予め設定された「焼成」温度で、又は任意の段階的スケジュールに従って行うことができる。更に、材料が一層よりも多い層で堆積される場合には、各堆積作業の間に熱処理を行うことができる。」

引用刊行物には、上記記載事項(1a)-(1c)によれば、中空タービンエンジンエーロフォイル(すなわち中空タービン翼)のインベストメント鋳造において使用されるセラミックコアであって、該セラミックコアは射出成形法等により製造(すなわち、鋳造)されることが記載され、また、同(1d)によれば、該セラミックコア表面には、セラミック材料が直接書込み法により堆積されること、そして、同(1d)、(1f)によれば、セラミック材料は、コアとともに熱処理され、ポジ特徴部が形成されることが記載されている。

[4]引用発明
上記記載事項及び検討事項によれば、引用刊行物には、
「中空タービン翼の鋳造において使用されるセラミックコアの形成方法において、
該セラミックコアを鋳造することと、
前記コア表面に、直接書込み法を用いてセラミック材料を堆積することと、
前記セラミック材料をコアとともに熱処理して、ポジ特徴部を形成することと、
を含む方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

[5]対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明における「鋳型」とは、例えば、中空タービン翼の鋳造における鋳型のうち、いわゆる「主型」に相当するものと認められる(本願図面参照)のに対し、引用発明における「セラミックコア」は、前記鋳型のうち、いわゆる「中子」に相当するものといえる。
よって、本願発明における「鋳型」と、引用発明における「セラミックコア」とは、共に、中空タービン翼を鋳造する際に使用される「鋳型」を構成するものである点で共通する。
そして、本願明細書の【0031】の記載によれば、本願発明の「混合物」は「セラミック」であってもよいから、引用発明における「セラミック材料を堆積すること」は、本願発明の「混合物(26)を含む表面構造を形成すること」に相当し、また、引用発明における「ポジ特徴部」は、本願発明の「セラミックツールの表面構造」に相当する。

したがって、両者は、
「鋳型の形成方法において、
鋳型を鋳造することと、
前記鋳型の表面に、混合物を含む表面構造を形成することと、
前記混合物を熱処理して、鋳造用のセラミックツールの表面構造を形成することと、
を含む方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、鋳型における「凹面を有する」「主型」に相当するのに対し、引用発明は、「セラミックコア」である点。

(相違点2)
混合物を含む表面構造を形成した後、本願発明では、「前記鋳型(8,10)を加熱することと、ダイレクトライト技術を用いて前記表面構造を修正する」ことを含むのに対し、引用発明では、その記載がない点。

上記各相違点について検討する。
・(相違点1)について
引用発明は、中空タービン翼の内周面の形状を決める中子に対して、表面構造を形成するものであるところ、中空タービン翼の外周面の形状は凹面を有する主型で決まることであって(例えば、下記周知例1参照)、また、該外周面に多数のディンプル(窪み)を設けることは適宜なされる周知技術であるから(例えば、下記周知例2参照)、引用発明のセラミックコア(中子)に代えて、「凹面を有する」「主型」とし、該相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

ア.周知例1:特開昭51-59723号公報
「第1,2図を参照すると、望ましい多重部モールドは・・・タービン・ブレート(turbine blade)の各対向半片部を為すものとして例として図示してある。モールドは適切なセラミックの実施された対向モールド側10,12とセラミックの中心隔離部14を含む。」(第2頁右上欄第5行-第11行)

「FIG.2

第2図によれば、2つの対向する鋳型10,12は、それぞれ凹面を有することが見て取れる。」

イ.周知例2:米国特許第6183197号明細書
「The present invention also contemplates a method of reducing heat load on a turbine or compressor airfoil by forming at least one heat reducing dimple in the body of the airfoil.」(第2欄第26-29行)
(当審による翻訳;以下、同様。
「本発明は、また、翼本体に少なくとも一つの熱低減ディンプルを形成することにより、タービンあるいは圧縮機の熱負荷を低減する方法を企図する。」)

「The present invention is useful with an airfoil made of solid metal or one that has an interior 40 which is hollow, as shown in FIG. 7. If airfoil 15, 17 is solid, then dimple 30 will simply be an indentation in the surface of airfoil 15, 17 as shown in FIGS. 8A and 8B. 」(第4欄下第3行-第5欄第2行)
(「本発明は、固体金属あるいは中空である内部40を有する図7に示されるような翼において有用である。もし、翼15、17が固体ならば、図8Aと8Bに示されるように、ディンプル30は、翼15、17の表面に容易にへこみ形成される。」



fig.7 」


fig.8a」

・(相違点2)について
上記記載事項(1d)-(1f)によれば、引用刊行物には、ポジ特徴部を構成するセラミック材料は、一層よりも多い層で堆積される場合には、各堆積作業の間に熱処理を行う旨記載されており、例えば、二層の場合には、「直接書込み法(ダイレクトライト法)によるセラミック材料の堆積-熱処理」の繰り返しがなされることにより、セラミック材料の堆積層が順に二層形成され、最終的なポジ特徴部(「表面構造」に相当)が形成されることが記載されているといえる。
一方、本願発明は、混合物(26)を含む表面構造を形成し、鋳型を加熱後、(ダイレクトライト技術を用いて)前記表面構造を修正した上で、熱処理して鋳造用のセラミックツールの表面構造を形成するものであるところ、これは、「混合物(26)の堆積-加熱(熱処理)」の繰り返しがなされることにより、最終的な鋳造用のセラミックツールの表面構造が形成されることと実質的に相違しないから、引用発明において、上記記載事項を適用すると、実質的に当該相違点に係る構成になるといえ、また、仮にそうでないとしても、そうすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。

そして、本願発明が、引用刊行物の記載及び周知事項からは予想し得ない格別の効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、引用刊行物1、2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[6]むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-05 
結審通知日 2015-08-11 
審決日 2015-08-28 
出願番号 特願2007-163248(P2007-163248)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 良平  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 鈴木 正紀
小川 進
発明の名称 鋳型の形成方法  
代理人 黒川 俊久  
代理人 田中 拓人  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  

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