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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1309994
審判番号 不服2014-16588  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-21 
確定日 2016-01-13 
事件の表示 特願2012-534430「拡張された帯域幅におけるリソース割り当てのためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月21日国際公開、WO2011/047357、平成25年 3月 7日国内公表、特表2013-509047〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2010年(平成22年)10月15日(優先権主張 2009年(平成21年)10月15日 米国,2010年(平成22年)10月14日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成25年7月2日付けで拒絶理由が通知され,同年11月11日付けで意見書とともに手続補正書の提出がなされ,平成26年4月16日付けで拒絶査定され,同年8月21日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 補正却下の決定

[結 論]
平成26年8月21日付け手続補正を却下する。

[理 由]
1.本件補正の概要及び本件補正発明
平成26年8月21日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は,平成25年11月11日付け手続補正書の特許請求に範囲における請求項1における記載(以下「本件補正前請求項1記載事項」という。)

<本件補正前請求項1記載事項>
【請求項1】
ワイヤレス通信のための方法であって、
基地局から、前記基地局との通信のために使用される帯域幅であって、前記基地局によって構成された第1のシステム帯域幅と第2のシステム帯域幅とを含む帯域幅の指示を受信することと、ここにおいて、前記第1のシステム帯域幅は、前記第2のシステム帯域幅に関連するリソースブロックのサブセットを備え、前記第2のシステム帯域幅は、非拡張部分および拡張部分を備え、前記拡張部分は、前記基地局によってサービスを提供される端末の空でないサブセットによる使用が不可能な1つ以上のリソースブロックを備える、
前記第1のシステム帯域幅、前記第2のシステム帯域幅、またはその両方に基づいて前記基地局と通信することと
を備える、方法。

を次の本件補正後請求項1記載事項のように補正することを含むものである。

<本件補正後請求項1記載事項>
【請求項1】
ワイヤレス通信のための方法であって、
基地局から、前記基地局との通信のために使用される帯域幅であって、前記基地局によって構成された第1のシステム帯域幅と第2のシステム帯域幅とを含む帯域幅の指示を受信することと、ここにおいて、前記第1のシステム帯域幅は、前記第2のシステム帯域幅に関連するリソースブロックのサブセットを備え、前記第2のシステム帯域幅は、非拡張部分および拡張部分を備え、前記拡張部分は、前記基地局によってサービスを提供される端末の空でないサブセットによる使用が不可能な1つ以上のリソースブロックを備え、前記第2のシステム帯域幅の前記非拡張部分は、前記基地局によってサービスを提供される端末の前記空でないサブセットへアクセスでき、前記第1のシステム帯域幅は、前記第2のシステム帯域幅に関連するリソースブロックの最大数と等しいかそれより少ないリソースブロックの総数を備え、
前記第1のシステム帯域幅、前記第2のシステム帯域幅、またはその両方に基づいて前記基地局と通信することと
を備える、方法。
(当審注 下線は請求人が付与。)

そして,本件補正は,本件補正前の請求項1に係る発明を特定する事項に限定を附すものである。
そこで,上記本件補正後請求項1記載事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反か否か)について検討する。

2.引用発明
(1) 引用文献記載事項
原査定の理由では,「引用文献1」(以下「引用文献」と表記。)として次の刊行物が引用された。

Qualcomm Europe,“Notions of segment and backwards/non-backwards compatible carriers”,3GPP TSG RAN WG1 #57bis, R1-092704,2009年7月,pp.1-2,URL http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg1_rl1/TSGR1_57b/Docs/R1-092704.zip

そして,当該引用文献には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 1 Introduction

We presented in [1] the carrier type differentiation as anchor carriers, non-anchor carriers and segments. Several possible anchor carrier types were listed, based on backward compatibility and multicarrier support.

In this document we further elaborate on the use case of each carrier type as a bandwidth extension of a single component carrier.
(当審訳
1 はじめに
[1]において,アンカーキャリア,非アンカーキャリア及びセグメントのようにキャリアタイプの差別化を提示した。
幾つかの可能なアンカーキャリアのタイプが,後方互換とマルチキャリアサポートに基づいて,リストされた。

このドキュメントにおいて,さらに,単一コンポーネントキャリアの帯域幅拡張のような各キャリアタイプのユースケースについて詳しく説明する。)

イ 2 Anchor Carrier

From the cell perspective, an anchor carrier can be defined as a carrier that would provide system information, synchronization and paging for a certain cell. Also, the anchor carriers would enable synchronization, camping, access and reliable control coverage in heterogeneous network environment where interference coordination would provide for at least one detectable (accessible) anchor carrier from a UE perspective. In that context, UE-specific anchor carriers would be a subset of the cell specific anchor carriers.

The non-anchor carriers would not support idle mode UEs by not broadcasting the system information. However, while it is possible to envision such carrier type, the overhead reduction due to omitting the system information is not significant (in the order of a few percent points). Therefore it may not be worthwhile defining new UE procedures supporting this type of carrier. Having that in mind, the cell-specific anchor carriers would be the only carrier type, without the explicit need to introduce the "anchor carrier" notion. The UE-specific anchor carrier definition may still be useful as it would represent the carrier that enables synchronization, camping, access and reliable control coverage for that UE.

Since non-backward compatible carriers may be the part of LTE-A, the carriers can be categorised as backward compatible and non-backward compatible carriers.
(当審訳
2 アンカーキャリア
セルの見方から,アンカーキャリアは,特定のセルに対し,システム情報,同期及びページングを提供するキャリアのように定義することができる。また,干渉調整は少なくとも一つの検出可能(アクセス可能)アンカーキャリアに対して,UEの見方から提供する異種ネットワーク環境において,アンカーキャリアは,同期,キャンプ,アクセスと信頼できる制御範囲を可能にする。この文脈において,UE固有のアンカーキャリアは,セル固有のアンカーキャリアのサブセットである。

非アンカーキャリアは,システム情報をブロードキャストしないことによってアイドルモードのUEをサポートしていないだろう。しかし,そのようなキャリアの種類を想定することは可能であるが,システム情報を省くことによるオーバヘッド削減は重要ではない(数パーセントポイントのオーダーにおいて)。したがって,このタイプのキャリアをサポートする新しいUEの手順を定義するだけの価値はない。念頭にそれを有し,「アンカーキャリア」という概念を導入する明示的な必要なしに,セル固有のアンカーキャリアが唯一のキャリアタイプとなる。UE固有のアンカーキャリアの定義は,そのUEに対し,同期,キャンプ,アクセスで信頼できる制御範囲を可能にするキャリアを表すとき,依然として有用である。

非後方互換のキャリアは,LTE-Aの一部であるので,キャリアは後方互換及び非後方互換のキャリアとして分類することができる。)

ウ 3 Segments

The segments are defined as data extension of the Rel-8 compatible carrier that could be used in a non-backward compatible manner by LTE-A UEs.

The significance of a segment is that it enables aggregation of an arbitrary number of resource blocks to one component carrier, retaining the backward compatibility of that carrier. For example, consider a frequency allocation of 30 RBs, those RB would be aggregated as a backwards compatible carrier of 25 RBs and 5 additional RBs only visible to LTE-A UEs. Those 5 RBs is what we designate as "segment".

An example of the multi-segment structure is showed in Figure 1. The carrier bandwidth is B MHz, where the central B0 MHz is defined in the legacy system information, and Rel-8 UEs would be aware of this part only. The actual entire carrier bandwidth of B MHz would be defined in the additional system information for the LTE-A UEs. Therefore, the legacy UEs would have a notion of B0 MHz while LTE-A UEs would have a notion of all B MHz. Within the central B0 MHz all control and data structure conform to the Rel-8 specifications. The wing segments are just a group of resource blocks that are seen as a bandwidth extension for LTE-A UEs.

The segments provide the capability to transmit data and possibly control channel transmissions without the need to define a new carrier. The benefit of having the multi-segment structure within the bandwidth of one component carrier is in the reduced system overhead (in terms of the system information and guard bands).

As it is an extension of a carrier, the segment is always linked to one carrier and can not be a stand-alone entity. It does not provide synchronization signals, system information or paging, and therefore can not be used for random access or UE camping.
(当審訳
3 セグメント
セグメントは,LTE-AのUEによって非後方互換の方法にて使用可能であるRel-8互換キャリアのデータ拡張として定義される。

セグメントの重要性は,コンポーネントキャリアの後方互換を保持し,一つのコンポーネントキャリアに,リソースブロックの任意の数の集約を可能にするということである。例えば,30のRBの周波数割当てを検討する。これらのRBは,LTE-AのUEにのみにみえるように,25のRBの後方互換キャリアと5つの追加RBとして集約されることになる。これらの5つのRBは,「セグメント」として指定するものである。

マルチセグメント構成の一例が図1に示されている。キャリアの帯域幅は,B MHzであり,ここで,中心のB0 MHzは,レガシーシステム情報において定義され,そしてRel-8のUEは,この部分のみを知っているであろう。B MHzの実際の全キャリアの帯域幅は,LTE-AのUEに対する追加のシステム情報に定義される。したがって,LTE-AのUEは,すべてのBメガヘルツの概念を有しながら,レガシーUEは,B0 MHzの概念を有するであろう。中心のB0 MHzの内で,すべての制御及びデータの構造はRel-8仕様に準拠している。中心のB0 MHzの内で,すべての制御及びデータの構造はRel-8仕様に準拠している。ウイングセグメントは,LTE-AのUEに対する帯域幅拡張と見えるリソースブロックのグループである。

セグメントは,新しいキャリアを定義する必要なく,データや,あるいは制御チャネルメッセージを送信する能力を提供する。1つのコンポーネントキャリアの帯域幅内にマルチセグメント構造を有することの利点は,(システム情報やガードバンドの点で)低減したシステムオーバーヘッドにある。

キャリアの拡張機能であるため,セグメントは,常に1つのキャリアにリンクされ,スタンドアロンのエンティティにすることはできない。
同期信号,システム情報又はページングを提供せず,したがって,ランダムアクセス又はUEのキャンプのために使用することはできない。)


Figure 1: Single carrier and two segments
(図1:単一キャリアと2つのセグメント)

エ 3 Summary

In this document we further elaborated on the carrier classification and use cases of different carrier types. Based on the little overhead incurred from the transmission of system information (MIBs and SIBs), it is recommended that all component carriers provide synchronization signals and system information.

UE specific anchor carriers enable synchronization, camping, access and reliable control coverage for that UE. Based on the ability to support Rel-8 UEs, carriers can be categorised as backward compatible and non-backward compatible.

In addition to carriers, segments are defined as the bandwidth extensions of a carrier. It allows for arbitrary RB aggregation within one carrier, retaining the backward compatibility for part of the entire carrier bandwidth. As it is an extension of a component carrier, the segment is always linked to one carrier and can not exist stand-alone. It does not provide synchronization signals, system information or paging, and therefore can not be used for random access or UE camping.
(当審訳
3 要約
本書において,我々はさらに,異なるキャリアタイプのキャリアの分類とユースケースに関して詳述した。システム情報(MIBとのSIB)の送信から生じたわずかなオーバーヘッドに基づいて,全てのコンポーネントキャリアが同期信号とシステム情報を提供することが推奨される。

UE固有のアンカーキャリアは,そのUEに対して,同期,キャンプ,アクセスと信頼できる制御範囲を有効にする。Rel-8のUEをサポートする能力に基づいて,後方互換と非後方互換にキャリアを分類できる。

キャリアに加えて,セグメントは,キャリアの帯域幅の拡張として定義される。全キャリア帯域幅の一部に対し,後方互換を維持することは,一つのキャリア内で任意のRBアグリゲーションを可能にする。それは,コンポーネントキャリアの拡張であるため,セグメントは,常に1つのキャリアにリンクされており,スタンドアロンで存在することはできない。それは同期信号,システム情報又はページングを提供せず,したがって,ランダムアクセス又はUEのキャンプのために使用されない。)

なお,上記エにおける「3 Summary」との記載のうち「3」が項目番号を意味することは明白であるから,当該「3」とある記載は正しくは「4」の誤記であると解される。
よって,以下においては,上記「3 Summary」を「4 Summary」(「4 要約」)と読み替える。

(2) 引用発明
引用文献の上記記載において,「RB」が「Resource Block」(「リソースブロック」)を意味することは技術常識である。
また,「LTE-AのUE」からみて,「Rel-8のUE」が「レガシーUE」といえることは,3GPPのプロジェクトにおける技術常識であるから,当該「Rel-8のUE」と当該「レガシーUE」とは,実質的に同一の「UE」を意味していると解することが自然である。

以上によれば,引用文献には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

キャリア帯域幅は,B MHzであり,ここで,中心のB0 MHzは,レガシーシステム情報において定義され,そしてRel-8のUEは,この部分のみを知っており,
B MHzの実際の全キャリア帯域幅は,LTE-AのUEに対する追加のシステム情報に定義され,したがって,LTE-AのUEは,すべてのB MHzの概念を有しながら,Rel-8のUEは,B0 MHzの概念を有し,
中心のB0 MHzの内で,すべての制御及びデータの構造はRel-8仕様に準拠し,中心のB0 MHzの内で,すべての制御及びデータの構造はRel-8仕様に準拠し,
ウイングセグメントは,LTE-AのUEに対する帯域幅拡張と見えるリソースブロックのグループであり,
セグメントは,LTE-AのUEによって非後方互換の方法にて使用可能であるRel-8互換キャリアのデータ拡張として定義される方法。

3.対比
本件補正発明と引用発明を比較すると次のことがいえる。

(1) 引用発明における「B MHzの実際の全キャリア帯域幅は,LTE-AのUEに対する追加のシステム情報に定義され,したがって,LTE-AのUEは,すべてのB MHzの概念を有しながら,Rel-8のUEは,B0 MHzの概念を有し」とある事項の技術的意味を解するに,「UE」が「User Equipment」,つまり通信に使用される「ユーザ端末」を意味することは技術常識である。
そうすると,上記事項は,「LTE-AのUE」は「B MHz」のすべての「キャリア帯域幅」を使用して通信し,一方,「レガシーUE」及び「Rel-8のUE」は「中心のB0 MHz」の「帯域幅」を使用して通信することを意味していると解される。
このように,UEが受信する「B MHz」あるいは「B0 MHz」の「帯域幅」の送信が,「基地局から」なされることは当業者に周知である。

以上のことは,引用発明における「キャリア帯域幅」は,Rel-8の「UE」あるいはLTE-Aの「UE」と「基地局」との通信のために使用される「帯域幅」といえることを示している。
そして,該「通信」が「ワイヤレス通信」であることは,「UE」が「Rel-8」,「LTE-A」のものであることに鑑みれば明らかである。

(2) 引用発明における「B MHzのキャリア帯域幅」に関し,更に次のことがいえる。

<1> 引用文献における図1の記載によれば,当該「キャリア帯域幅 B MHz」が,「中心のB0 MHz」の帯域幅と,「Segment1」(「セグメント1」)の帯域幅及び「Segment2」(「セグメント2」)の帯域幅とにより構成されるものであることは明白である。

<2> 引用文献には,図1に関し「ウイングセグメントは,LTE-AのUEに対する帯域幅拡張と見えるリソースブロックのグループである」(The wing segments are just a group of resource blocks that are seen as a bandwidth extension for LTE-A UEs.)(上記「2.」の(1) ウ参照。)との記載がある。
ここで,上記「リソースブロックのグループ」は「リソースブロックのサブセット」といえる。

<3> これら<1>及び<2>に述べた事項を併せみると,図1記載の「セグメント1」及び「セグメント2」が,引用文献記載の「ウイングセグメント」に相当するといえる。
そうすると,上記<1>に述べた「セグメント1」の「帯域幅」及び「セグメント2」の「帯域幅」はいずれも,「中心のB0 MHz」の「帯域幅」に対して「拡張された帯域幅」といえる。
以上のことは,「B MHzのキャリア帯域幅」に関して,「セグメント1」の「帯域幅」及び「セグメント2」の「帯域幅」が「拡張部分」といえること,一方,「中心のB0 MHzの帯域幅」が「非拡張部分」といえることを示している。

したがって,引用発明における「B MHzのキャリア帯域幅」,「中心のB0 MHzの帯域幅」は,本件補正発明における「第2のシステム帯域幅」,「第1のシステム帯域幅」にそれぞれ相当する。

<4> 引用文献における図1の記載によれば,「B0 MHzの帯域幅」には,「PDCCH」が備えられている。
ここで,当該「PDCCH」が「Physical Downlink Control Channel」(「物理ダウンリンク制御チャネル」)を意味し,「UE」に対する制御情報等を伝送するチャネルであることは技術常識である。
また,引用文献の記載によれば,「中心のB0 MHz」の定義は「レガシーシステム情報」においてなされ,「B MHzの全キャリア帯域幅」の定義は「LTE-AのUEに対する追加のシステム情報」においてなされる。

これらのことから,「追加のシステム情報」及び「レガシーシステム情報」は,上記「PDCCH」を介して「UE」に知らされると解するのが自然である。
したがって,引用発明における「LTE-AのUE」は「B MHzのキャリア帯域幅」の指示を,一方,同じく「Rel-8のUE」は「B0 MHzの帯域幅」の指示をそれぞれ「PDCCH」を介して受信するといえる。
そして,「B0 MHzの帯域幅」が「基地局」において送信されるものであることは,上記(1)に述べたとおりであるから,この送信のため,当該「B0 MHzの帯域幅」を「基地局によって構成」することが技術的に格別な事項であるということもできない。
また,「キャリアの拡張機能であるため,セグメントは,常に1つのキャリアにリンクされ」との引用文献における記載に鑑みると,引用発明には,「基地局によって構成された『B0 MHzの帯域幅』と『B MHzのキャリア帯域幅』とを含む帯域幅の指示を受信する」ことが開示されているといえる。

<5> 上記<4>に述べたように,「B MHzのキャリア帯域幅」は「基地局から」送信され,当該基地局のセル内の「Rel-8のUE」及び「LTE-AのUE」が受信するものである。
このことは,これら「UE」が,「基地局によってサービスを提供される」ものであるといえることを示している。
そして,上記「Rel-8のUE」及び「LTE-AのUE」が1つと限らないことは当然であるから,上記のようにセル内の「UE」に関して,「Rel-8のUE」のサブセット,「LTE-AのUE」のサブセットといえる。また,上記のように基地局からサービスを提供するのに,セル内に「UE」が「存在しない」つまり「空でない」ことは当然である。
また,上記(1)に述べた事項に関する技術的意味を踏まえると,「セグメント1」の帯域幅及び「セグメント2」の帯域幅は,上記セル内の「LTE-A」のみが使用でき,「B0 MHzの帯域幅」は,上記セル内の「LTE-Aのセル」も「Rel-8のセル」も使用できることは明らかである。
そして,引用発明に関し,上記「セグメント1」の帯域幅,上記「セグメント2」の帯域幅及び上記「B0 MHzの帯域幅」も「リソースブロック」を有することは,上記<2>を踏まえれば明らかである
以上によれば,引用発明においては,「Rel-8のUE」に対して,「セグメント1」及び「セグメント2」からなる「拡張部分」は,基地局によってサービスを提供される端末の空でないサブセットによる使用が不可能な1つ以上のリソースブロック」を備えているといえ,「B0 MHzの帯域幅」つまり「非拡張部分」は「基地局によってサービスを提供される端末の空でないサブセットへアクセスでき」るリソースブロックを備えているといえる。

(3) 上記(1)及び上記(2)の<1>ないし<5>によれば,本件補正発明と引用発明は次の点で一致し,相違するといえる。

[一致点]
ワイヤレス通信のための方法であって、
基地局から、前記基地局との通信のために使用される帯域幅であって、前記基地局によって構成された第1のシステム帯域幅と第2のシステム帯域幅とを含む帯域幅の指示を受信することと、ここにおいて、前記第1のシステム帯域幅は、前記第2のシステム帯域幅に関連するリソースブロックのサブセットを備え、前記第2のシステム帯域幅は、非拡張部分および拡張部分を備え、前記拡張部分は、前記基地局によってサービスを提供される端末の空でないサブセットによる使用が不可能な1つ以上のリソースブロックを備え、前記第2のシステム帯域幅の前記非拡張部分は、前記基地局によってサービスを提供される端末の前記空でないサブセットへアクセスできること
を備える、方法。

[相違点]
<相違点1>
本件補正発明は,「リソースブロック」に関して,「第1のシステム帯域幅は、第2のシステム帯域幅に関連するリソースブロックの最大数と等しいかそれより少ないリソースブロックの総数を備え」との特定があるのに対して,引用発明には,「リソースブロック」に関して,「第1のシステム帯域幅」の「総数」についても,また該「総数」が「第2のシステム帯域幅に関連するリソースブロックの最大数と等しいかそれより少ない」との特定もない点。

<相違点2>
本件補正発明は,「基地局と通信する」のに,「第1のシステム帯域幅、第2のシステム帯域幅、またはその両方に基づいて」との特定があるのに対して,引用発明にはそのような特定がない点。

4.検討
(1) 相違点1について
<1> 引用発明における「中心のB0 MHzの帯域幅」も「B MHzの帯域幅」もともに,リソースブロックにより構成されることは明らかである。
<2> 「拡張部分の帯域幅」と「中心のB0 MHzの帯域幅」とから「B MHzの帯域幅」が構成されることは,上記「3.」の(2) <1>にも述べたとおりである。
そうすると,上記「中心のB0 MHzの帯域幅」と上記「B MHzの帯域幅」との帯域幅が等しいかそれより小さくなることは当然である。
<3> そして,上記<1>及び上記<2>に述べたことを踏まえれば,「第1のシステム帯域幅は、第2のシステム帯域幅に関連するリソースブロックの最大数と等しいかそれより少ないリソースブロックの総数」を備えることは,技術的に当然である。

(2) 相違点2について
引用発明における「Rel-8のUE」は「中心のB0 MHzの帯域幅」のみで基地局との通信が行えることは既に述べたとおりである。
一方,引用発明における「LTE-AのUE」は,「すべてのB MHzの概念」を有するのであるから,基地局との通信を「B MHzの帯域幅」を使用し行いうることは当然であり,また,「Rel-8のUE」と同様に上記「B MHz」の一部である「中心のB0 MHzの帯域幅」のみを使用し行いうるようにすることは格別なことではない。
そうすると,引用発明における「LTE-AのUE」が,「B MHzの帯域幅」で,「B MHz」の一部である「中心のB0 MHzの帯域幅」のみで,又は上記「B MHzの帯域幅」及び「中心のB0 MHzの帯域幅」のみの両方に基づいて基地局と通信を行いうるようにすることは当業者が適宜なしえた事項に過ぎない。

(3) 以上のとおりであって,本件補正発明のように構成したことによる効果も,引用発明から予測できる程度のものである。
したがって,本件補正発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.まとめ
以上のとおりであるから,本件補正発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本件補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明

上記第2に述べたとおり,本件補正は却下されたので,本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成25年11月11日付け手続補正書の特許請求に範囲における請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第2」の1.の「<本件補正前請求項1記載事項>」参照。)。

第4 当審の判断

1.引用文献及び引用発明
引用文献及び引用発明は,上記「第2」の「2.引用発明」に記載のとおりである。

2.対比及び検討
本件補正発明は,上記「第2」の「3.対比」及び「4.検討」に述べたとおり,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして,本件補正発明は,本願発明を特定する事項を全て含み,更に限定を附したものである。
そうすると,本件補正発明から,附された限定を省いたものに相当する本願発明も,同様に,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであることは当然である。

第5 むすび

以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について,論及するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-10 
結審通知日 2015-08-18 
審決日 2015-09-03 
出願番号 特願2012-534430(P2012-534430)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 昌秋  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 梅本 章子
近藤 聡
発明の名称 拡張された帯域幅におけるリソース割り当てのためのシステムおよび方法  
代理人 堀内 美保子  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 砂川 克  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 井上 正  
代理人 井関 守三  
代理人 佐藤 立志  
代理人 野河 信久  
代理人 福原 淑弘  

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