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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1310070 |
審判番号 | 不服2015-3877 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-27 |
確定日 | 2016-02-02 |
事件の表示 | 特願2011-515397「データ融合によるモーションキャプチャポインタ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月30日国際公開、WO2009/156499、平成23年 9月29日国内公表、特表2011-526019、請求項の数(23)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2009年6月26日を国際出願日とする出願(パリ条約による優先権主張2008年6月27日、フランス国)であって、平成26年10月22日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年2月27日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。 第2 平成27年2月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲において、 (1)請求項1の「角速度(ω_(Y),ω_(Z))」を、「角速度(ωV,ωW)」とする補正(下線は当審付与。以下同様。)、 (2)請求項2の「角速度(ω_(V),ω_(W))をさらにに含む」を、「前記角速度(ωV,ωW)をさらに含む」とする補正、 (3)請求項8の「前記第2のセンサの前記出力」を、「前記第2のセンサの出力」とする補正、 (4)請求項10において、「前記カルマンフィルタサンプリング工程k」を、「前記カルマンフィルタのサンプリング工程k」とすると共に、「前記事前推定値」を、「前記事前推定の値」とする補正、 (5)請求項12において、「前記カルマンフィルタサンプリング工程k」を、「前記カルマンフィルタのサンプリング工程k」とすると共に、「前記状態の前記補正」を「状態の補正」とする補正、 (6)請求項14の「前記測定モデル」を、「測定モデル」とする補正、 (7)請求項16の「前記成分」を、「成分」とする補正、 (8)請求項18の「前記成分」を、「成分」とする補正、 (9)請求項19の「前記カルマンフィルタ(x)」を、「前記カルマンフィルタ」とする補正、 (10)請求項20において、「前記状態モデル」を、「状態モデル」とすると共に、「前記測定モデル」を、「測定モデル」とする補正、 を含んでいる。 2.補正の適否 本件補正の補正事項(1)?(10)は、いずれも、特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。 第3 本願発明 本願の請求項1-23に係る発明は、平成27年2月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-23に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 ユーザが平面内の可動要素で指し示すためのポインティング装置(10)であって、 少なくともその2つの直交軸(Y,Z)の回りの前記装置の角速度(ω_(Y),ω_(Z))を測定するための少なくとも1つの第1のセンサ(20)と、 前記2つの軸(Y,Z)と1つの第3の直交軸(X)に関連して前記装置の線形加速度(a_(X),a_(Y),a_(Z))を測定するための少なくとも1つの第2のセンサ(30)と、 空間上の前記ポインティング装置の回転の関数として前記平面内の前記可動要素に与えられる変位(y,z)を計算するためのモジュールであって、データ融合アルゴリズムを実施することにより、前記ポインティング装置に与えられたねじれを補償するためのサブモジュール(50)を含む、計算モジュール(40)と を含み、 前記データ融合アルゴリズムは、 i)少なくとも前記第1のセンサにより測定された角速度(ω_(Y),ω_(Z))と前記第2のセンサにより測定された線形加速度(a_(X),a_(Y),a_(Z))とを入力として受け付けること、 ii)該受け付けた入力からポインティング装置に与えられたユーザの基準系の平面に関するねじれを表す変数と可動要素の変位(y,z)を表すユーザの基準系におけるポインティング装置の角速度(ωV,ωW)(審決注:「(ω_(V),ω_(W))」の明らかな誤記と認める。)とを含む状態ベクトルを評価すること から構成されることを特徴とするポインティング装置。」 第4 原査定の理由の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特表2007-535776号公報 出願人は、平成26年4月7日付けで手続補正書を提出するとともに、意見書において、本願発明は、「データ融合アルゴリズムを実施することにより、ポインティング装置に与えられたねじれを補償する」構成を有しているのに対して、特表2007-535776号公報(以下、「引用文献1」という。)に記載の発明は、加速度計からの入力のみを用いて傾きを算出し、その後に回転Rを実行しており、本願発明のデータ融合アルゴリズムに相当するような処理は行っていないので、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない旨主張している。 しかしながら、引用文献1には「加速度計506は、本発明の例示的な諸実施形態による例示的な自由空間ポインティングデバイスにおいていくつかの目的を果たす。例えば、回転センサ502および504が、前述した例示的なコリオリ効果回転センサを使用して実施される場合、回転センサ502および504の出力は、各回転センサによって経験される直線加速度に基づいて異なる。このため、加速度計506の1つの例示的な使用は、直線加速度の違いによって生じさせられる、回転センサ502および504によって生成される読み取り値の変動を補償することである。これは、変換された加速度計読み取り値に利得行列610を掛けて、その結果から(またはその結果に)、対応するサンプリングされた回転センサデータ612を引くこと(または足すこと)によって達せられることが可能である。例えば、回転センサ502からのサンプリングされた回転データayが、ブロック614で、以下のとおり、直線加速度に関して補償されることが可能である。」(段落【0031】)などと記載されており、 引用文献1に記載の発明においても、回転センサにより測定されたデータと、加速度計により測定されたデータとを入力として受け付けて、回転データ(本願発明における「ねじれ」に相当する。)の補償を行っており、データ融合アルゴリズムを実施しているといえる。 したがって、引用文献1に記載の発明に基づいて、本願の上記請求項に係る発明を構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。 よって、出願人の上記主張は採用されない。 第5 当審の判断 1.刊行物の記載事項 引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審において付与。以下同様。)。 (1) 段落【0008】 「本明細書の特別な関心対象は、そのようなフレームワーク、ならびにその他のアプリケーションおよびシステムと対話するのに使用可能なリモートデバイスである。前段で組み込まれた出願で述べられるとおり、例えば、トラックボール、「マウス」タイプのポインティングデバイス、ライトペン、その他を含め、様々な異なるタイプのリモートデバイスが、そのようなフレームワークとともに使用されることが可能である。しかし、そのようなフレームワーク(および他のアプリケーション)とともに使用されることが可能な別のカテゴリのリモートデバイスは、自由空間ポインティングデバイスである。「自由空間ポインティング」という句は、本明細書では、入力デバイスが、例えば、ディスプレイスクリーンの前方の空中で、3(またはそれより多くの)次元で動く能力、およびユーザインタフェースが、それらの動きを、直接ユーザインタフェースコマンドに、例えば、ディスプレイスクリーン上のカーソルの動きに変換する、対応する能力を指す。自由空間ポインティングデバイス間のデータの転送は、無線で、または自由空間ポインティングデバイスを別のデバイスに接続する配線を介して実行されることが可能である。このため、「自由空間ポインティング」は例えば、表面、例えば、デスクトップ表面またはマウスパッドを代理表面として使用して、その表面から、マウスの相対的動きが、コンピュータディスプレイスクリーン上のカーソルの動きに変換される、従来のコンピュータマウスポインティング技術とは異なる。自由空間ポインティングデバイスの実施例は、米国特許第5,440,326号で見ることができる。」 (2) 段落【0027】 「本発明の例示的な諸実施形態による自由空間ポインティングデバイスの一般的な動作を説明するプロセスモデル600が、図5に示されている。回転センサ502および504、ならびに加速度計506は、周期的に、例えば、毎秒200サンプル、サンプリングされるアナログ信号を生成する。この説明では、それらの入力のセットは、(x,y,z,αy,αz)という表記を使用して示され、x、y、zは、x軸方向、y軸方向、およびz軸方向における自由空間ポインティングデバイスの加速にそれぞれ関連する例示的な3軸加速度計506のサンプリングされた出力値であり、αyは、y軸を中心とする自由空間ポインティングデバイスの回転に関連する回転センサ502からのサンプリングされた出力値であり、αzは、z軸を中心とする自由空間ポインティングデバイス400の回転に関連する回転センサ504からのサンプリングされた出力値である。」 (3) 段落【0036】?【0037】 「【0036】 本発明の例示的な諸実施形態による傾き補償の必要性をよりよく理解するため、図6(a)に示された例を考慮されたい。図6(a)では、ユーザは、自由空間ポインティングデバイス400を、0度のx軸回転値を有するものとして定義されることが可能な例示的な慣性基準フレームにおいて把持しており、例えば、慣性基準フレームは、自由空間ポインティングデバイスの底部が、例えば、テレビが配置されている部屋のフロアに実質的に平行になっているフレームであることが可能である。慣性基準フレームは、単に例として、図6(a)に示された向きに対応することが可能であり、あるいは他の任意の向きとして定義されることが可能である。y軸方向またはz軸方向における自由空間ポインティングデバイス400の回転は、回転センサ502および504によってそれぞれ感知される。例えば、図6(b)に示される、量Δzだけのz軸を中心とした自由空間ポインティングデバイス400の回転は、ディスプレイ408上のx2軸次元における対応するカーソルの並進、Δx2(すなわち、カーソル410の破線バージョンと破線でないバージョンの間の距離)をもたらす。 【0037】 他方、ユーザが、自由空間ポインティングデバイス400を異なる向きで、例えば、慣性基準フレームに対していくらかの量のx軸回転で把持した場合、センサ502および504によってもたらされる情報は、ユーザによって意図されるインタフェースアクションの正確な表現をもたらさない(傾き補償がない)。例えば、図6(c)を参照して、ユーザが、図6(a)に示されるとおり、例示的な慣性基準フレームに対して45度のx軸回転で自由空間ポインティングデバイス400を把持する状況を考慮されたい。同一のz軸回転Δzが、図6(b)の実施例におけるように、ユーザによって自由空間ポインティングデバイス400に与えられるものと想定すると、カーソル410は、図6(d)で示されるとおり、代わりに、x2軸方向とy2軸方向の両方で並進させられる。これは、回転センサ502の感知軸が、現時点で、y軸とz軸の間の向きにされている(ユーザの手の中のデバイスの向きのため)という事実に起因する。同様に、回転センサ504の感知軸もまた、y軸とz軸の間の向きにされている(ただし、異なる象限における)。自由空間ポインティングデバイス400がどのように把持されているかに関してユーザにトランスペアレントなインタフェースを提供するため、本発明の例示的な諸実施形態による傾き補償は、回転センサ502および504から出力された読み取り値を、それらのセンサからの読み取り値を処理して、自由空間ポインティングデバイス400の回転モーションを示す情報にすることの一環として、変換して慣性基準フレームに戻す。」 (4) 段落【0060】?【0065】 「【0060】 前述したとおり、本発明の例示的な諸実施形態は、自由空間ポインティングデバイス内のセンサから受け取られた動きデータを処理して、そのデータを、自由空間ポインティングデバイスの筐体の基準フレームから、別の基準フレームに、例えば、ユーザの基準フレームに変換する。スクリーン上、例えば、テレビ上に表示されるユーザインタフェースを制御するのに使用される自由空間ポインティングデバイスの例示的な応用例では、ユーザの基準フレームは、テレビスクリーンに関連する座標系であることが可能である。いずれにせよ、筐体基準フレームから別の基準フレームへのデータの変換は、デバイスの見地からではなく、ユーザの見地からの操作をもたらすことにより、ハンドヘルドデバイスの使いやすさを向上させる。このため、ユーザが、自由空間ポインティングデバイスを把持しながら、ディスプレイの前方で左から右に手を動かすと、カーソルは、自由空間ポインティングデバイスの向きにかかわらず、左から右の方向に移動する。 ・・・(中略)・・・ 【0061】 この説明を簡単にするため、自由空間ポインティングデバイスに関連する例示的な処理システムが、例えば、より詳細に前述したとおり、図9に示されている。図9では、ハンドヘルドシステムは、1つまたは複数のセンサ901、例えば、回転センサ、ジャイロスコープ、加速度計、磁力計、光センサ、カメラ、または以上の任意の組み合わせを使用して、動きを感知する。センサは、次に、ブロック902で解釈されて、生じた動きの推定をもたらす。次に、処理ブロック903が、デバイスの自然の(筐体)基準フレームからの測定された動きを、ユーザの基準フレームに変換する。次に、その動きが、意味のあるアクションにマップされ904、アクションが、ブロック905で解釈され、システムに転送されて、スクリーン上のカーソルを動かすことなどの、意味のある応答がもたらされる。 【0062】 ブロック903は、検出された動きを、デバイスの基準フレームではなく、ユーザの基準フレームに変換する。向きは、オイラー角、方向余弦行列(DCM)、または単位四元数を含む、多くの異なる数学的に類似した方法によって表現されることが可能である。位置は、一般に、メートル、センチメートル、フィート、インチ、およびマイルを含むが、以上には限定されない一貫した単位で、座標系原点からのオフセットとして表現される。前述した1つの例示的な実施形態では、自由空間ポインティングデバイスは、加速度および回転速度を含む慣性力を測定する。それらの力は、デバイス内に装着されたデバイスの筐体に相対的に測定される。測定されたデータをユーザ基準フレームに変換するため、デバイスは、デバイスの位置、およびデバイスの向きを推定する。 ・・・(中略)・・・ 【0064】 動作中、デバイスは、インプリメンテーションに依存する形でQを推定して、以上の変換を実行する。前述した1つの例示的なインプリメンテーションには、傾き(すなわち自由空間ポインティングデバイスがユーザによって把持される仕方に基づく自由空間ポインティングデバイスのx軸ロールの変動)を補償することがかかわる。向きは、筐体フレームの重力加速度に起因する加速度、Abをまず推定することにより、計算される。定義上、ユーザフレームにおける重力加速度に起因する加速度ベクトル、Agは、[0,0,-1]に設定される。重力加速度は、方位(z軸を中心とする回転)を推定することができないので、方位に関する筐体フレーム推定が使用される。したがって、回転四元数は、z=0平面に回転の軸を有する。以下は、回転四元数を計算するための、いくつかの数学的に等価な方法の1つである。すなわち、 V=?Ab?x?Ag? (単位ベクトルのクロス乗積) qV=?V? α=sin^(-1)|V| Q=Quaternion[qV,α]=[qV*sin(α/2),cos(α/2)] 次に、位置が、ユーザフレームにおける加速度の二重積分として計算される。ユーザフレームにおける加速度は、前述のQによってユーザフレームに入るように回転させられた筐体フレームの加速度である。通常、原点は、デバイスが最初にアクティブにされた際、0であるものと想定されるが、原点は、通常の動作中に手動で、または自動的にリセットされてもよい。 【0065】 一般に、デバイスが動いていない場合、Pu'、Pu''、Wu、およびWu''はすべて、0である。この例示的な実施形態では、Pb''およびWbが測定される。無限の数の回転Qが存在するが、利用可能なセットから最小限の回転が選択されて、Wbに基づき、Wuを推定するのに使用されることが可能である。代替的に、Qは、離散時間積分を使用して以下に示されるとおり、Wbを時間にわたって積分することにより、想定される開始オフセット向きQoを使用して計算されてもよい。すなわち、 WbAngle=|Wb|*period Q_(DELTA)=Quaternion[Wb,WbAngle]=[?Wb?*sin(WbAngle/2),cos(WbAngle/2)] Q_(NEXT)=Q_(0)**Q_(DELTA) ただし、*は、乗算を表し、**は、四元数乗算を表す。さらなる安定性が、重力加速度および地球の磁場を含み、前述した結果と組み合わされた定常場ベクトルによってもたらされることが可能である。この組み合わせは、カルマンフィルタリングを含むが、それには限定されない、いくつかの数値方法およびフィルタリング方法を使用して達せられることが可能である。」 そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「自由空間ポインティングデバイスであって、 『自由空間ポインティング』という句は、入力デバイスが、ディスプレイスクリーンの前方の空中で、3次元で動く能力、およびユーザインタフェースが、それらの動きを、直接、ディスプレイスクリーン上のカーソルの動きに変換する、対応する能力を指し、 回転センサ502および504、ならびに加速度計506は、周期的に、例えば、毎秒200サンプル、サンプリングされるアナログ信号を生成し、それらの入力のセットは、(x,y,z,αy,αz)という表記を使用して示され、ここで、 x、y、zは、x軸方向、y軸方向、およびz軸方向における自由空間ポインティングデバイスの加速にそれぞれ関連する3軸加速度計506のサンプリングされた出力値であり、 αyは、y軸を中心とする自由空間ポインティングデバイスの回転に関連する回転センサ502からのサンプリングされた出力値であり、 αzは、z軸を中心とする自由空間ポインティングデバイス400の回転に関連する回転センサ504からのサンプリングされた出力値であり、 慣性基準フレームは、自由空間ポインティングデバイスの底部が、例えば、テレビが配置されている部屋のフロアに実質的に平行になっているフレームであって、 自由空間ポインティングデバイス400がどのように把持されているかに関してユーザにトランスペアレントなインタフェースを提供するため、傾き補償は、回転センサ502および504から出力された読み取り値を、それらのセンサからの読み取り値を処理して、自由空間ポインティングデバイス400の回転モーションを示す情報にすることの一環として、変換して慣性基準フレームに戻し、 自由空間ポインティングデバイスに関連する処理システムは、 センサは、次に、ブロック902で解釈されて、生じた動きの推定をもたらし、 処理ブロック903が、デバイスの自然の(筐体)基準フレームからの測定された動きを、ユーザの基準フレームに変換し、 その動きが、意味のあるアクションにマップされ904、 アクションが、ブロック905で解釈され、システムに転送されて、スクリーン上のカーソルを動かすことなどの、意味のある応答がもたらされ、ここで、 ブロック903は、検出された動きを、デバイスの基準フレームではなく、ユーザの基準フレームに変換し、向きは、オイラー角、方向余弦行列(DCM)、または単位四元数を含む、多くの異なる数学的に類似した方法によって表現され、加速度および回転速度を含む慣性力を測定し、測定されたデータをユーザ基準フレームに変換する、 自由空間ポインティングデバイス。」 2.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1) 引用発明の「自由空間ポインティングデバイスであって、『自由空間ポインティング』という句は、入力デバイスが、ディスプレイスクリーンの前方の空中で、3次元で動く能力、およびユーザインタフェースが、それらの動きを、直接、ディスプレイスクリーン上のカーソルの動きに変換する」ことを指すものは、本願発明の「ユーザが平面内の可動要素で指し示すためのポインティング装置(10)」に相当する。 (2) 引用発明の「回転センサ502および504」は、「周期的に、例えば、毎秒200サンプル、サンプリングされるアナログ信号を生成し、それらの入力のセットは、(x,y,z,αy,αz)という表記を使用して示され」るものであって、「αyは、y軸を中心とする自由空間ポインティングデバイスの回転に関連する回転センサ502からのサンプリングされた出力値であり、αzは、z軸を中心とする自由空間ポインティングデバイス400の回転に関連する回転センサ504からのサンプリングされた出力値であ」るから、本願発明の「少なくともその2つの直交軸(Y,Z)の回りの前記装置の角速度(ω_(Y),ω_(Z))を測定するための少なくとも1つの第1のセンサ(20)」に相当する。 (3) 引用発明の「加速度計506」は、「周期的に、例えば、毎秒200サンプル、サンプリングされるアナログ信号を生成し、それらの入力のセットは、(x,y,z,αy,αz)という表記を使用して示され」るものであって、「ここで、x、y、zは、x軸方向、y軸方向、およびz軸方向における自由空間ポインティングデバイスの加速にそれぞれ関連する3軸加速度計506のサンプリングされた出力値であ」るから、本願発明の、「前記2つの軸(Y,Z)と1つの第3の直交軸(X)に関連して前記装置の線形加速度(a_(X),a_(Y),a_(Z))を測定するための少なくとも1つの第2のセンサ(30)」に相当する。 (4) 引用発明の「自由空間ポインティングデバイスに関連する処理システム」は、「アクションが、ブロック905で解釈され、システムに転送されて、スクリーン上のカーソルを動かすことなどの、意味のある応答がもたらされ」るものであるから、本願発明の「空間上の前記ポインティング装置の回転の関数として前記平面内の前記可動要素に与えられる変位(y,z)を計算するためのモジュールであ」る、「計算モジュール(40)」に相当する。 また、そのうちの「ブロック903」は、「(x,y,z,αy,αz)」と表記される、「加速度および回転速度」という、異なるセンサの測定データを組み合わせることで、「検出された動きを、デバイスの基準フレームではなく、ユーザの基準フレームに変換し」ている点で、「データ融合アルゴリズム」を実施するものといえる。さらに、引用発明における「ユーザの基準フレームに変換」とは、具体的には、「傾き補償」のために、「自由空間ポインティングデバイスの底部が、例えば、テレビが配置されている部屋のフロアに実質的に平行になっている」、「慣性基準フレームに戻」す変換であるから、引用発明の「ブロック903」は、本願発明の「データ融合アルゴリズムを実施することにより、前記ポインティング装置に与えられたねじれを補償するためのサブモジュール(50)」に相当する。 (5) 引用発明の「「自由空間ポインティングデバイスに関連する処理システム」が、センサからの「(x,y,z,αy,αz)」と表記される信号を受け付けることは、本願発明の「前記データ融合アルゴリズムは、i)少なくとも前記第1のセンサにより測定された角速度(ω_(Y),ω_(Z))と前記第2のセンサにより測定された線形加速度(a_(X),a_(Y),a_(Z))とを入力として受け付けること」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明との一致点・相違点は次のとおりである。 <一致点> 「ユーザが平面内の可動要素で指し示すためのポインティング装置(10)であって、 少なくともその2つの直交軸(Y,Z)の回りの前記装置の角速度(ω_(Y),ω_(Z))を測定するための少なくとも1つの第1のセンサ(20)と、 前記2つの軸(Y,Z)と1つの第3の直交軸(X)に関連して前記装置の線形加速度(a_(X),a_(Y),a_(Z))を測定するための少なくとも1つの第2のセンサ(30)と、 空間上の前記ポインティング装置の回転の関数として前記平面内の前記可動要素に与えられる変位(y,z)を計算するためのモジュールであって、データ融合アルゴリズムを実施することにより、前記ポインティング装置に与えられたねじれを補償するためのサブモジュール(50)を含む、計算モジュール(40)と を含み、 前記データ融合アルゴリズムは、 i)少なくとも前記第1のセンサにより測定された角速度(ω_(Y),ω_(Z))と前記第2のセンサにより測定された線形加速度(a_(X),a_(Y),a_(Z))とを入力として受け付けること、 から構成されることを特徴とするポインティング装置。」 <相違点> 本願発明の「データ融合アルゴリズム」は、さらに、「ii)該受け付けた入力からポインティング装置に与えられたユーザの基準系の平面に関するねじれを表す変数と可動要素の変位(y,z)を表すユーザの基準系におけるポインティング装置の角速度(ω_(V),ω_(W))とを含む状態ベクトルを評価すること」から構成されるのに対して、引用発明の「処理ブロック903が、デバイスの自然の(筐体)基準フレームからの測定された動きを、ユーザの基準フレームに変換」するものにおいて、「ii)該受け付けた入力からポインティング装置に与えられたユーザの基準系の平面に関するねじれを表す変数と可動要素の変位(y,z)を表すユーザの基準系におけるポインティング装置の角速度(ω_(V),ω_(W))とを含む状態ベクトルを評価する」構成は、ない点。 3.判断 上記相違点について検討する。 上記相違点について、引用文献1の段落【0064】(上記1(4)参照)には、「さらなる安定性が、重力加速度および地球の磁場を含み、前述した結果と組み合わされた定常場ベクトルによってもたらされることが可能であり、この組み合わせは、カルマンフィルタリングを含むが、それには限定されない、いくつかの数値方法およびフィルタリング方法を使用して達せられることが可能である」旨の記載があり、この記載における「カルマンフィルタリング」を採用する場合、「状態ベクトルを評価」する構成を設けることは自明といえるかもしれないが、引用発明に、上記段落【0064】により「カルマンフィルタリング」を採用することで、「状態ベクトルを評価」する構成を引用発明に付加する場合を想定しても、さらに「ユーザの基準系」(これは、本願発明の明細書の段落【0036】「我々は、用語「画面基準系」により、画面に結び付けられた直交基準系(xyz)(ここで、z軸は下方向向き)を定義する。・・・第2の基準系は装置の基準系(XYZ)に対応し、Xはポインティングの主方向であり、Yは装置の右方向に向い、Zは装置の下方向に向かう。携行者基準系と名付けられた最後の基準系(uvw)はポインティング動作を生じる体の一部に関連付けられる。この基準系は、基準系(XYZ)を水平面に対応させて戻すことにより定義される。したがって、携行者の基準系から装置の基準系への切り換えは、2つの連続的な回転(ピッチθ、ロールψ)を介し実行される。また、携行者は必ずしも画面に対向していないので、この基準系から画面基準系(xyz)への切り換えは回転(ヨーφ)を介し実行される。」との記載により定義された基準系であると解される。)によって表現された、「ねじれを表す変数」と、「ポインティング装置の角速度(ω_(V),ω_(W))」とを変数として含むような、上記相違点に係る「状態ベクトル」を用いることまでは、開示も示唆もないから、上記相違点に係る構成は、引用文献1に基づいて、容易に想到できたものであるとはいえない。 したがって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 本願の請求項2-23に係る発明は、本願発明をさらに限定したもの(請求項2?22)、本願発明と実質的にカテゴリーのみ相違するもの(請求項23)であるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1-23に係る発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-01-18 |
出願番号 | 特願2011-515397(P2011-515397) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩橋 龍太郎 |
特許庁審判長 |
和田 志郎 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 桜井 茂行 |
発明の名称 | データ融合によるモーションキャプチャポインタ |
代理人 | 木村 高久 |
代理人 | 木村 高久 |