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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 F16H 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16H |
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管理番号 | 1310309 |
審判番号 | 不服2015-9825 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-27 |
確定日 | 2016-02-16 |
事件の表示 | 特願2011- 2310「デュアルクラッチ式変速機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 2日出願公開、特開2012-145142、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年1月7日の出願であって、平成26年7月18日付けで拒絶理由が通知され、平成26年9月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年2月27日付け(発送日:平成27年3月3日)で拒絶査定され、平成27年5月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正されたものである。 第2 平成27年5月27日の手続補正(以下、「本件補正」という)の適否 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を 「同軸に設けられ、エンジン側の回転がデュアルクラッチを介して選択的に伝達される第一及び第二入力軸と、該第一及び第二入力軸と同軸になるように配置された出力軸と、前記第一及び第二入力軸及び前記出力軸に対して平行に設けられた中間軸と、該中間軸と前記出力軸との間に設けられた変速用歯車列とを備えたデュアルクラッチ式変速機であって、前記第一及び第二入力軸のそれぞれと前記変速用歯車列の入力側の中間軸との間に、歯数比の異なる第一減速歯車列及び第二減速歯車列を設けると共に前記第一減速歯車列を前記中間軸に対して回転自在に設け、前記第二減速歯車列に発進段の前記変速用歯車列を一体に回転するように設け、前記第一減速歯車列は、前記第一入力軸の回転を減速する減速比に設定されると共に、前記中間軸に対して回転自在に設けられた中間軸よりも短い副回転軸部を一体に有し、前記変速用歯車列の最高段の歯車列は、前記副回転軸部と一体に回転するように設けられ、前記第一入力軸から前記第一減速歯車列を介して前記変速用歯車列の最高段の歯車列に伝達する動力を、前記中間軸を介さずに前記出力軸に出力するように構成したことを特徴とするデュアルクラッチ式変速機。」 とする補正である。 2 補正の適否 本件補正の補正事項は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第一減速歯車列」について「前記第一入力軸の回転を減速する減速比に設定されると共に、」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の技術分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)刊行物 ア 刊行物1 原査定の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭61-274147号公報(以下、「刊行物1」という)には、本件補正発明の記載事項に則って整理すると、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「同軸に設けられ、エンジン出力軸1の回転が2つのクラッチを介して選択的に伝達される第1クラッチ出力軸3及び第2クラッチ出力軸4と、第1クラッチ出力軸3及び第2クラッチ出力軸4と同軸になるように配置された変速機出力軸2と、第1クラッチ出力軸3、第2クラッチ出力軸4及び変速機出力軸2に対して平行に設けられたカウンタ軸15と、カウンタ軸15と変速機出力軸2との間に設けられた変速用歯車列GT1,GT3,GT5とを備えた2つのクラッチを持つ変速機であって、第1クラッチ出力軸3及び第2クラッチ出力軸4のそれぞれと変速用歯車列GT1,GT3及びGT5の入力側のカウンタ軸15の軸部分との間に、歯数比の異なるギア26,28及びギア16,17を設けると共にギア26,28をカウンタ軸15に対して回転自在に設け、ギア16,17に発進段の変速用歯車列GT1を一体に回転するように設け、ギア26,28は、第1クラッチ出力軸3の回転を減速する減速比に設定されると共に、カウンタ軸15に対して回転自在に設けられたカウンタ軸15よりも短いアイドルギアセット18の軸部を一体に有し、変速用歯車列GT1,GT3,GT5のうち最高段の歯車列GT5は、アイドルギアセット18の軸部と一体に回転するように設けられず、第2クラッチ出力軸4からギア16,17を介して変速用歯車列の最高段の歯車列GT5に伝達する動力を、カウンタ軸15を介して変速機出力軸2に出力するように構成した2つのクラッチを持つ変速機。」 イ 刊行物2 原査定の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特表2010-535990号公報の段落【0014】?【0018】及び図面【図1】には、本件補正発明の記載事項に則って整理すると、以下の事項(以下、「刊行物2の記載事項」という。)が記載されている。 「中空シャフト18の固定ギヤ51にガイドスリーブS3を介して前進ギヤV1の第四の歯車対Z4の固定ギヤ6を一体に回転するように設け、最大の前進ギヤV7のための第1の歯車対Z1の固定ギヤ2は、中空シャフト18と一体に回転するように設けられ、内部中間シャフト12からフローティングギア41及び固定ギア51を介して最大の前進ギヤV7の第一の歯車対Z1に伝達する動力を、内部シャフト19を介さずにメインシャフト20に出力すること。」 ウ 刊行物3 原査定の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2008-39102号公報の段落【0036】及び図面【図1】には、本件補正発明の記載事項に則って整理すると、以下の事項(以下、「刊行物3の記載事項」という。)が記載されている。 「第一入力軸S1から4速段歯車列G4を介してオーバートップ段である6速段のための3速段歯車列G3に伝達する動力を、中間軸S3を介して出力軸S4に出力すること。」 エ 刊行物4 原査定の拒絶査定に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2005/0043141号明細書の段落[0024]?[0027]及びFIG.1には、本件補正発明の記載事項に則って整理すると、以下の事項(以下、「刊行物4の記載事項」という。)が記載されている。 「gear5,6は、hollow shaft4の回転を増速する減速比に設定され、6speedのgear14は、hollow shaft4と一体に回転するように設けられ、shaft3からgear5,6を介して6speedのgear14に伝達する動力を、second countershaft10を介さずにdrive shaft11に出力すること。」 オ 刊行物5 本願出願前に頒布された刊行物である特開昭59-140941号公報の第2ページ右下欄第16行?第3ページ左上欄第7行、第5ページ右下欄第3?12行及び図面第1?2図には、本件補正発明の記載事項に則って整理すると、以下の事項(以下、「刊行物5の記載事項」という。)が記載されている。 「第1のインプットシャフトから第4速走行のために伝達する動力を、歯車及び第1のカウンタシャフト2を介さずにメインシャフト3に出力すること。」 カ 刊行物6 本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-233330号公報には、本件補正発明の記載事項に則って整理すると、以下の事項(以下、「刊行物6の記載事項」という。)が記載されている。 「第二入力軸5から第二減速歯車列R2を介して6速段26の歯車列に伝達する動力を、第二カウンター軸8を介して出力軸6に出力すること。」 (2)引用発明との対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「エンジン出力軸1の回転」は、その技術的意義及び機能からみて本願補正発明の「エンジン側の回転」に相当し、以下同様に、「2つのクラッチ」は「デュアルクラッチ」に、「第1クラッチ出力軸3」は「第一入力軸」に、「第2クラッチ出力軸4」は「第二入力軸」に、「変速機出力軸2」は「出力軸」に、「カウンタ軸15」は「中間軸」に、「変速用歯車列GT1,GT3,GT5」は「変速用歯車列」に、「2つのクラッチを持つ変速機」は「デュアルクラッチ式変速機」に、「ギア26,28」は「第一減速歯車列」に、「ギア16,17」は「第二減速歯車列」に、「発進段の前記変速用歯車列GT1」は「発進段の前記変速用歯車列」に、「アイドルギアセット18の軸部」は「副回転軸部」に、「最高段の歯車列GT5」は「最高段の歯車列」に、それぞれ相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「同軸に設けられ、エンジン側の回転がデュアルクラッチを介して選択的に伝達される第一及び第二入力軸と、第一及び第二入力軸と同軸になるように配置された出力軸と、第一及び第二入力軸及び出力軸に対して平行に設けられた中間軸と、中間軸と出力軸との間に設けられた変速用歯車列とを備えたデュアルクラッチ式変速機であって、第一及び第二入力軸のそれぞれと変速用歯車列の入力側の中間軸との間に、歯数比の異なる第一減速歯車列及び第二減速歯車列を設けると共に第一減速歯車列を中間軸に対して回転自在に設け、第二減速歯車列に発進段の変速用歯車列を一体に回転するように設け、第一減速歯車列は、第一入力軸の回転を減速する減速比に設定されると共に、中間軸に対して回転自在に設けられた中間軸よりも短い副回転軸部を一体に有する、デュアルクラッチ式変速機。」の点で一致し、以下の相違点で相違する。 [相違点] 本願補正発明は、「最高段の歯車列」が「前記副回転軸部と一体に回転するように設けられ、前記第一入力軸から前記第一減速歯車列を介して前記変速用歯車列の最高段の歯車列に伝達する動力を、前記中間軸を介さずに前記出力軸に出力する」構成であるのに対し、 引用発明は、「最高段の歯車列GT5」が「アイドルギアセット18の軸部と一体に回転するように設けられず、前記第2クラッチ出力軸4から前記ギア16,17を介して前記変速用歯車列の最高段の歯車列GT5に伝達する動力を、カウンタ軸15を介して前記変速機出力軸2に出力する」構成である点。 (3)相違点の検討 以下、相違点について検討する。 確かに、刊行物2ないし6には、発進段以外の動力を伝達する経路の一部に、発進段の歯車列を持つ中間軸を介さない構成については開示されているが、最高段の歯車列に動力を伝達する副回転軸部を、第一入力軸の回転より減速する構成については開示されていない。 また、引用発明や、刊行物2ないし6には、最高段の歯車列に動力を伝達する経路の一部をエンジンの回転数より減速する構成は記載されていない。 他方、本願補正発明は、上記相違点に係る構成とすることで、最高段の歯車列に動力を伝達する副回転軸部を、第一入力軸の回転より減速して「高速走行時であっても潤滑油温度の上昇は抑えられ、潤滑油攪拌による回転抵抗の増大は押さえられる」効果(明細書の段落【0028】参照。)と、発進段の歯車列を持つ中間軸を介さないことで「広範のレシオ幅確保が可能になる」効果(明細書の段落【0034】参照。)とが併存するという、格別顕著な作用効果を奏する。 そうであれば、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2?6に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)刊行物4に記載された発明からの検討 刊行物4には、本願補正発明の記載事項に則って整理すると、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「同軸に設けられ、drive shaft2の回転がfirst clutchK1 及び second clutchK2を介して選択的に伝達されるshaft3及びhollow shaft4と、shaft3及びhollow shaft4と同軸になるように配置されたdrive shaft11と、shaft3、hollow shaft4及びdrive shaft11に対して平行に設けられたsecond countershaft10と、second countershaft10とdrive shaft11との間に設けられたgear12?17とを備えたdouble clutch drive1であって、shaft3及びhollow shaft4のそれぞれとgear12?17の入力側のsecond countershaft10との間に、歯数比の異なるgear5、6及びgear8、9を設けると共にgear5、6をsecond countershaft10に対して回転自在に設け、gear8、9に1speedのgear15を一体に回転するように設け、gear5、6は、second countershaft10に対して回転自在に設けられたsecond countershaft10よりも短いfirst countershaft7を一体に有し、6speedのgear14は、first countershaft7と一体に回転するように設けられ、shaft3からgear5,6を介して6speedのgear14に伝達する動力を、second countershaft10を介さずにdrive shaft11に出力するように構成したdouble clutch drive1。」 本願補正発明と、引用発明2とを対比すると、本願補正発明の第一減速歯車列は、第一入力軸の回転を減速する減速比に設定されるのに対し、引用発明2のgear5、6は、shaft3の回転を減速する減速比に設定されない点で相違する。 そして、引用発明並びに刊行物2、3、5及び6に記載された事項のいずれも、第一減速歯車列を第一入力軸の回転を減速する減速比に設定することで、最高段で回転する「副回転軸部」の回転を低くし、「高速走行時であっても潤滑油温度の上昇は抑えられ、潤滑油攪拌による回転抵抗の増大は押さえられる」効果を奏するものではない。 そうであれば、本願補正発明は、引用発明2、引用発明並びに刊行物2、3、5及び6に記載された事項から、当業者が容易に発明することができたとはいえない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2ないし6に記載された事項から、また、引用発明2、引用発明並びに刊行物2、3、5及び6に記載された事項から、容易に発明をすることができたとはいえない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-02-02 |
出願番号 | 特願2011-2310(P2011-2310) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F16H)
P 1 8・ 575- WY (F16H) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 増岡 亘 |
特許庁審判長 |
小柳 健悟 |
特許庁審判官 |
小関 峰夫 内田 博之 |
発明の名称 | デュアルクラッチ式変速機 |
代理人 | 絹谷 信雄 |