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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1310401
審判番号 不服2013-24477  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-12 
確定日 2016-01-27 
事件の表示 特願2010-165091「尿の作業領域マネージャーおよび尿の作業領域」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月24日出願公開、特開2011- 39046〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年7月22日(パリ条約による優先権主張:平成21年7月24日 EP)を出願日とする特許法第36条の2第2項に規定する外国語書面出願であって、平成22年9月17日に翻訳文が提出され、平成24年11月6日付けで拒絶理由が通知され、平成25年3月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月6日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同月13日に請求人に送達された。
これに対し、平成25年12月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正書が提出された。
その後、当審より、平成27年3月2日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年7月2日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成27年7月2日提出の誤訳訂正書の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、つぎのとおりのものである。

「【請求項1】
尿検査ストリップ読み取り器(104)および尿沈殿物分析器(106)を制御するための尿検査管理装置(102)であって、
a)機械が実行可能な命令(120、122、124)を実行するように適合される演算器(114)と、
b)前記尿検査ストリップ読み取り器および前記尿検査管理装置の間で、コマンドおよびデータを伝達するように適合される第1インタフェース(108、312)と、
c)前記尿沈殿物分析器および前記尿検査管理装置の間で、コマンドおよびデータを伝達するように適合される第2インタフェース(110、312)と、
d)以下の工程、すなわち
前記尿検査ストリップ読み取り器に、前記第1インタフェースを用いて複数の尿サンプルを分析するよう命令する工程(200)と、
前記第1インタフェースを介して前記尿検査ストリップ読み取り器からストリップの分析結果を読み取る工程(202)であって、前記尿検査管理装置が、前記尿沈殿物分析器を制御するための制御命令を発生させるために、前記結果を用いるために操作可能である工程(202)と、
前記ストリップの分析結果を用いて第1の命令セットを発生させる工程(204)であって、前記複数の尿サンプルのそれぞれが、第1の所定条件と合致しているかを決定するために、前記ストリップの分析結果を確かめる工程と、前記尿沈殿物分析器に、前記第1の所定条件と合致するそれぞれの尿サンプルを希釈させる命令を発生させる工程とを含む工程(204)と、
前記尿沈殿物分析器に、前記第1の命令セットを用いて、前記第2インタフェースを介して、前記複数の尿サンプルを分析するように命令する工程(206)と、
前記第2インタフェースを用いて、前記尿沈殿物分析器から沈殿物の分析結果を受信する工程(208)と、
前記ストリップの分析結果と前記沈殿物の分析結果を、サンプル毎に1つの集約結果に結合する工程と、
前記ストリップの分析結果を前記沈殿物の分析結果と比較する工程と、
前記ストリップの分析結果と前記沈殿物の分析結果の間に不一致がない場合のみ、前記集約結果を有効とする工程と、
前記ストリップの分析結果および前記沈殿物の分析結果が一致しない、および/または、前記集約結果の妥当性が、オペレーターによって構成可能な、あらかじめ定められたルールの範囲内にない複数の尿サンプルのサブグループを特定する工程と、
前記尿沈殿物分析器および/または前記尿検査ストリップ読み取り器に、前記サブグループ中の尿サンプルを再分析するように命令する工程と
を実行するための、機械が実行可能な一連の命令(122)と
を含む尿検査管理装置。」

第3 引用例及びその記載事項
1 本願の優先権主張日前に頒布された刊行物であって、当審における平成27年3月2日付けの拒絶理由通知(以下、「本件拒絶理由通知」という。)において引用された特開平9-218197号公報(以下、「引用例1」という。)について
(1)引用例1には、次の事項が記載されている。(下線は当審により付加したものである。)
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は臨床検査において測定結果のチェックを行う装置に関し、特に尿定性検査と尿沈渣結果のような複数種類の検査結果の信頼性を相互判定する装置に関する。」
イ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、尿定性検査では項目によって妨害反応のため誤った測定結果が出ることがある。例えば、潜血(OB)は、アスコルビン酸などの含有により偽陰性側に反応し、次亜塩素酸などの含有により偽陽性側に反応する。
【0004】従って、定性検査における各測定項目の検査結果の信頼性を容易に判定する装置が要望されている。また、そのような判定装置については使用状態によって判定条件が異なる場合があるので、判定条件の設定や変更を任意にかつ誤りなく行うことが必要とされる。
【0005】この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、同じ測定対象を複数の測定項目について測定し、得られた測定データを相互チェックすることによってその信頼性を容易に評価することが可能なデータチェック装置を提供するものである。」
ウ 「【0012】
【実施例】以下、図面に示す実施例に基づいてこの発明を詳述する。これによってこの発明が限定されるものではない。図1は、この発明のデータチェック装置の構成を示すブロック図であり、1はデータチェック装置、2は尿沈渣検査装置、3は尿定性検査装置、4は尿沈渣検査装置2および尿定性検査装置3の各測定データを受入れるデータ受入れ部である。
【0013】なお、この実施形態では、尿沈渣検査装置2には、尿検体に含まれる有形成分をフローサイトメータによって自動分析して分析結果の数値を測定データとして出力する公知の装置を用い、尿定性検査装置3には、尿検体に尿試験紙を浸してその試験紙の変色の度合いを9段階に自動的に分類しそれに対応する記号(-)、(±)、(+)、(2+)、(3+)、…………、(7+)を測定データとして出力する公知の装置を用いている。」
エ 「【0014】データ受入れ部4は、例えば、尿沈渣検査装置2および尿定性検査装置3から直接又は通信回線を介して供給される測定データを受入れCPU5へ入力する。
【0015】そして、データ受入れ部4に受入れられた測定データはCPU5を介してRAM6の測定データメモリ6aに格納される。7は相関データや、測定項目や、測定範囲を区分けするためのランクなどを入力するキーボードである。
【0016】キーボード7によって入力されるランクおよび相関データはそれぞれ、RAM6のランク設定メモリ6bおよび相関データメモリ6cに格納される。ROM9はCPU5を制御する制御プログラムを予め格納し、CRT8は設定された各種データ、測定データおよび判定結果などを表示するようになっている。」
オ 「【0017】なお、尿沈渣検査装置2は、定量測定項目について分類および計数することにより測定を行うが、定量測定項目としては、赤血球(RBC)、白血球(WBC1)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST)および細菌(BACT)があげられる。
【0018】また、尿定性検査装置3は定性測定項目について尿検査試験紙により測定を行うが、定性測定項目としては、潜血(OB)、蛋白質(PRO)、亜硝酸塩(NIT)および白血球(WBC2)があげられる。そして、定量および定性測定項目間における相関関係の深い組合せとしては、RBC1×OB、WBC1×WBC2、CAST×PRO、BACT×NITの組合せがあげられる。
【0019】そこで、例えばRBCとOBの相関関係を示す相関データを予めキーボード7によって入力しておき、尿沈渣検査装置2からRBCについての測定データが、尿定性検査装置3からOBについての測定データが、それぞれデータチェック装置1に受入れられると、CPU5は、受入れた一組の測定データがその相関データに適合するか否かを判定し、判定結果をCRT8に表示させるようになっている。」
カ 「【0021】図2はキーボート7のキー配置図であり、設定キーK1およびランク設定キーK2を押すと(ステップS1、S2)、ランク設定モードとなり、CRT8に図3に示すようなランク設定用画面が表示されるので、さらにキーK6を押して定量測定項目の1つであるRBCを選択する(ステップS3)。
【0022】そこで、図3に示すように画面のランク(Rank)0?8の各々にRBCの下限値(LL)と上限値(UL)をカーソルキーK14とテンキーK15を用いて設定する(ステップS4)。そして、終了キーK16を押してRBCについてのランク設定を終了する(ステップS5)。
【0023】なお、図3では、ランク7の上限値(UL)には「0」が設定されているがこれは「無限大」を意味し、ランク8には設定値がないことを示している。同様に、キーK7、K8、K9を用いて順次、WBC、CAST、およびBACTを選択し、ランク0?8に対応する下限値と上限値を設定した後、リターンキーK17を押すと、ランク設定モードが終了する(ステップS6)。
【0024】次に、設定キーK1とクロスチェックキーK3を押すと(ステップS1、S7)、エリア設定モードとなり、CRT8に図4に示すエリア設定用画面が表示される。
【0025】エリア設定用画面は、横軸を定量測定項目(SEDIMENT)、縦軸を定性測定項目(DIPSTICK)とする2次元座標を備え、各軸はそれぞれ9つのランクに区分され、その区分に対応したエリア設定用枡目を設けている。
【0026】横軸の9つのランク0?8には、前述のランク設定モードで設定した図3に示す数値がそれぞれ対応する。また、縦軸の9つのランク0?8には、尿定性検査装置3から得られる測定結果の(-)、(±)、(+)、(2+)、……、(7+)が、それぞれ対応するように予めその対応関係がROM7に設定されている。
【0027】そこで、キーK10を押してクロスチェック項目の1つであるRBC×OBを選択する(ステップS8)。そして、図4の斜線領域に示すようにRBCとOBとが相関関係を有するエリアつまり、マッチングエリアをカーソルキーK14とキーK4を用いて枡目単位で設定する(ステップS9)。
【0028】なお、設定したマッチングエリアを削除する場合にはカーソルキーK14とキーK5を用いて枡目単位で削除することができる。そして、終了キーK16を押してRBC×OBについてのエリア設定を終了する(ステップS10)。
【0029】同様に、キーK11、K12、K13を用いて順次WBC×WBC、CAST×PRO、BACT×NITを選択し、それぞれのマッチングエリアを設定した後、リターンキーK17を押すと、エリア設定したモードが終了する(ステップS11)。」
キ 「【0030】次に、実行キーK18を押すと、実行モードとなり、同一の尿検体について尿沈渣検査装置2および尿定性検査装置3によって測定された各測定データが測定データメモリ6aから読出され、CRT8に図6に示すように表示される。
【0031】図6のAおよびBは、尿沈渣検査装置2からの測定データによって作成されたスキャッタグラムを示し、図6は尿沈渣検査装置2および尿定性検査装置3からの測定データについて共通の項目のもの、つまり、RBC、WBC、EC、CAST、BACTのデータを示し、図6のDは、その他の項目のもの、つまり尿定性検査装置3からのOB、PRO、NITのデータを示している。
【0032】そして、RBC×OB、WBC×WBC、CAST×PRO、BACT×NITの各組合せにおける相関関係が、エリア設定モードでそれぞれ設定されたマッチングエリア(図4)内にあるか否かが判定され、マッチングエリアに存在しない項目については、図6のCおよびDの示すデータに符号「?」が付加されて表示される。
【0033】図6の例ではRBCの「375.9」に対するOBの「2+」にそれぞれ「?」が付加されている。これは、この組合せのデータがクロスチェックの結果、図4に示すマッチングエリア内に存在しないこと、つまり、図4において、「375.9」に対応する横軸のランク6と「2+」に対応する縦軸のランク3で表わされる枡がマッチングエリアにないことが確認されたためである。
【0034】図6では、「?」が付加されたデータは信頼性が低く、その他のデータは信頼性が高いことを示している。このようにして、尿沈渣検査装置2と尿定性検査装置3で測定されたデータをクロスチェックすることにより、互いのデータの信頼性を確かめることができる。
【0035】さらに、図7に示すようにマッチングエリアが表示されたエリア設定用画面中において、測定データの該当する桝目に測定結果を示す符号*が表示されることが好ましい。このことにより、測定データがマッチングエリアからどの程度はずれているかが一目でわかり、測定データの信頼性の程度を確認することができる。」
ク 「【0036】なお、この実施形態では、図4の縦軸のランク0?8の各々に対応する測定データ範囲は、予めROM9に設定されているが、横軸のランクと同様に使用者によってランク設定メモリ6bに任意に設定できるようにしてもよい。また、データチェック装置1は、尿沈渣検査装置2又は尿定性検査装置3のいずれか一方に内蔵させることができる。なお、定性測定項目の潜血、白血球はそれぞれ(OB/Hb)、(L.EST.)と表されることもある。」
ケ 図1


コ 図4


サ 図6


(2)引用例1に記載された発明について
上記(1)アないしクの記載及び同ケないしサの図面を総合すれば、引用例1には、つぎの発明が記載されているものと認められる。
「尿検体に含まれる有形成分をフローサイトメータによって自動分析して分析結果の数値を測定データとして出力する尿沈渣検査装置2、尿検体に尿試験紙を浸してその試験紙の変色の度合いを9段階に自動的に分類しそれに対応する記号を測定データとして出力する尿定性検査装置3から直接又は通信回線を介して供給される測定データを受入れCPU5へ入力するデータ受入れ部4を備えるデータチェック装置1であって、尿沈検査装置2からの定量測定項目である赤血球(RBC)、白血球(WBC1)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST)及び細菌(BACT)及び尿定性検査装置3からの定性測定項目である潜血(OB)、蛋白質(PRO)、亜硝酸塩(NIT)、及び白血球(WBC2)のうち、赤血球と潜血、白血球(WBC1)と白血球(WBC2)、円柱(CAST)と蛋白質(PRO)、細菌(BACT)と亜硝酸塩(NIT)について、同一の尿検体について尿沈渣検査装置2および尿定性検査装置3によって測定された各測定データが測定データメモリ6aから読出され、RBC×OB、WBC×WBC、CAST×PRO、BACT×NITの各組合せにおける相関関係が、エリア設定モードでそれぞれ設定されたマッチングエリア内にあるか否かが判定され、マッチングエリアに存在しない項目については、「?」が付加されてディスプレイに表示されるデータチェック装置1」の発明(以下、「引用発明1」という。)

2 本願の優先権主張日前に頒布された刊行物であって、本件拒絶理由通知において引用された特開平6-138120号公報(以下、「引用例2」という。)について
(1)引用例2にはつぎの事項が記載されている。(下線は当審により付加したものである。)
ア 「【請求項1】粒子を含むサンプル液を偏平な流れとして流すことが可能であり、粒子検出領域と撮像領域とを有するフローセルと、前記粒子検出領域を通過する粒子を検出する粒子検出部と、前記撮像領域において前記粒子の静止画像を撮像する撮像部と、得られた静止画像を処理する画像処理部と、前記フローセルへサンプル液を供給するサンプル液供給部とから構成される尿沈渣検査装置において、あらかじめ測定した尿定性分析の結果を参照して、前記サンプル液の尿沈渣成分を分析するための測定条件を各サンプル毎に自動的に変更したことを特徴とする尿沈渣検査装置。
・・・
【請求項3】請求項1記載の尿沈渣検査装置において、定性分析項目の少なくとも白血球,赤血球及び蛋白のいずれかで異常値を認めた場合、自動的に尿沈渣分析の測定容量または測定時間を変更することを特徴とする尿沈渣検査装置。
【請求項4】請求項1記載の尿沈渣検査装置において、定性分析項目のpHまたはその他の項目で異常値を認めた場合、自動的に尿沈渣分析の測定容量または測定時間を変更することを特徴とする尿沈渣検査装置。
【請求項5】請求項1記載の尿沈渣検査装置において、定性分析項目の白血球または赤血球に異常が認められた場合、検体を希釈してから尿沈渣分析を行うためのサンプル希釈機構を設けたことを特徴とする尿沈渣検査装置。・・・」
イ 「【0013】
【発明が解決しようとする課題】定性分析項目と沈渣成分にはある程度関連性があるために、定性分析で異常成分があると認められた検体に対しては、その項目に関連する沈渣成分を重点的に観察する必要がある。また、潜血や白血球などの定性分析項目が陽性の場合は、赤血球や白血球の出現頻度が高いと予想されるため、得られる画像データは特定の粒子のみとなり、その他の有形成分を見逃してしまう確率が高い。これらに対応するためには分析に必要な測定容量を変化させる必要がある。
【0014】しかしながら、従来の尿沈渣分類装置の測定条件はあらかじめ決められた測定モードの変更のみであり、検体毎の定性分析結果から測定容量などを任意に変更することは出来ない構成となっている。
【0015】本発明の目的は、尿定性検査の結果により尿沈渣分析の測定条件を変化させることにより、正確な尿沈渣検査を行うことが可能な尿検査装置を提供することにある。
【0016】また、本発明の他の目的は、尿定性分析検査と尿沈渣分析検査を同一の検査装置で行う総合的な尿検査分析装置を提供することにある。」
ウ 「【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、尿沈渣検査装置の機能として尿定性分析の結果を参照して、検体毎に測定条件を変化させる構成としたものである。
【0018】また、上記目的を達成するために、尿定性分析と尿沈渣分析とを同一の検査装置で行う構成としたものである。
【0019】また、上記目的を達成するために、サンプル供給部にサンプル希釈機構を備えた構成としたものである。
【0020】
【作用】尿定性検査の結果により、尿沈渣分析の測定条件を自動的に設定して検査を行うために、正確な尿沈渣結果を得ることが出来る。
【0021】また、これらの尿検査を自動化することで、従来は別々に行っていた尿検査を同一の検査装置で行うことが出来るため、検査技師の負担を軽減することが可能となる。」
エ 「【0023】本発明の尿沈渣検査装置は、サンプル供給部1,有形成分を検出,画像処理する沈渣分析部2,定性項目の分析を行う定性分析部4,定性分析の結果からサンプル供給,測定時間の制御などを行う制御部3とから構成される。
【0024】あらかじめ定性分析された検体の結果は検体番号と共に制御部に3送られ、該当検体の沈渣検査が開始されるまで保持されている。該当検体の沈渣検査が開始されると、定性分析の結果により、機構制御部3はサンプル供給部1,沈渣分析部2の動作をコントロールし、測定を開始する。」
エ 「【0028】たとえば、定性分析部4から送られてきたデータが蛋白陽性とすると、沈渣成分としては顆粒円柱が含まれている場合が多い。しかし、円柱は数が少ないため、検出するためには多くの測定容量を確保する必要がある。そのためには沈渣分析部2内のフローセル202のサンプル液は一定流量で流れていることから、測定時間を長くすることで実現できる。そのため、制御部3は尿沈渣分析部2に対して、フローセル202を通過させるサンプル容量を多くし、数多くの粒子画像を撮像するようにシーケンスを設定する。こうすることにより、出現頻度の少ない円柱を捕える確率が高くなり、病態の診断が可能となる。
【0029】その他の実施例としては、定性分析部4から送られてきたデータが潜血陽性の場合は、沈渣成分は赤血球が多く含まれている。通常、サンプルは原尿のまま測定されるが、このような検体では赤血球が連なって流れてくるため粒子検出及び画像処理が困難となってしまう。したがって、図3のように、サンプル供給部1内にサンプル液を希釈するサンプル液希釈機構13を設けることにより、粒子がまばらになり、検出,画像処理が可能となる。この方法は、白血球陽性により白血球が多い検体の場合にも応用可能である。」

(2)引用例2に記載された発明について
上記アないしエによれば、引用例2には、つぎの発明が記載されているものと認められる。

「サンプル供給部1、有形成分を検出し画像処理する沈渣分析部2、定性項目の分析を行う定性分析部4、定性分析の結果からサンプル供給及び測定時間の制御などを行う制御部3とから構成され、あらかじめ測定した尿定性分析の結果を参照して、前記サンプル液の尿沈渣成分を分析するための測定条件を各サンプル毎に自動的に変更することを特徴とする尿沈渣検査装置であって、定性分析項目の白血球または赤血球に異常が認められた場合、サンプル供給部1内にサンプル液を希釈するサンプル液希釈機構13を設け、検体を希釈してから尿沈渣分析を行う尿沈渣検査装置」の発明(以下、「引用発明2」という。)

3 本願の優先権主張日前に頒布された刊行物であって、本件拒絶理由通知において引用された特開2007-271331号公報(以下、「引用例3」という。)について
(1)引用例3には、次の事項が記載されている。(下線は、当審により付加したものである。)
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の臨床検体を測定する測定部と、
この測定部による測定結果を出力する出力部と、
前記測定部による測定結果の判定基準を医療組織別に記憶する記憶部と、
前記測定部による測定結果と前記記憶部に記憶されている判定基準とに基づいて、医療組織毎に、当該測定結果が所定の状態に属するか否かを判定する判定手段と、
この判定手段によって前記測定結果が所定の状態に属すると判定された場合に、当該所定の状態を示す情報を前記出力部に出力させる出力手段と
を備えることを特徴とする臨床検査装置。
・・・
【請求項4】
前記判定基準が、再検査が必要であるか否かを判定するための再検査判定条件を含んでおり、
前記判定手段が、取得された検体情報、前記測定結果及び前記再検査判定条件に基づいて、医療組織毎に、再検査が必要であるか否かを判定する再検査判定手段を備えており、且つ
前記出力手段が、前記再検査判定手段により再検査が必要であると判定された場合に、再検査が必要であることを示す情報を前記出力部に出力させるように構成されている請求項2又は3に記載の臨床検査装置。 」
イ 「【0038】
[診療組織別判定基準]
本実施の形態では、後述する手順に従って尿の各種項目について測定が行われるが、前記パソコン13の記憶部に測定結果の医療組織別の判定基準が記憶されており、この判定基準と、実際に得られた測定結果とに基づいて当該測定結果が所定の状態に属しているか否かが判定され、判定の結果、測定結果が所定の状態に属する場合に、この所定の状態を示す情報を前記パソコン13のディスプレイ13aに表示するように構成されている。前記所定の状態とは、例えば、健常者の尿には通常出現しない有形成分が所定以上表れる状態、すなわち測定結果が各測定項目に対して予め設定された限界値を超えた異常な状態、円柱や上皮細胞等の特定の有形成分が表れたため特定の疾患が疑われることから鏡検による再検査が必要な状態、又は検体の採取の方法に問題がある可能性があることから、検体の採取をやり直さなければならない状態のことであり、パソコン13のCPU104aの判定手段によってこのような状態であると判定された場合には、当該状態であることを示す、コメント、記号、シンボル等の情報が、検査結果を示す数値やグラフ等とともにパソコン13のディスプレイ13aに表示される。これにより、医師や検査技師等は、前記情報に対応した処置を迅速かつ的確に採ることができる。
【0039】
前記医療組織としては、例えば診療科、医院、病院、病棟等をあげることができ、この医療組織別に各種測定項目の判定基準が記憶されている。この判定基準は、前述した再検査が必要であるか否かを判定するための再検査判定条件や、測定結果が異常であるか否かを判定する異常判定条件や、分析装置の性能限界を超えた検体であるか否かを判定するための測定限界条件等を含んでおり、前記医療組織を特定する医療組織情報とともに前記パソコン13の入力手段であるキーボードにより入力することができ、パソコン13のCPU104aは、入力された判定基準を前記医療組織情報に対応付けて記憶部に記憶させる設定手段を有している。このようにすることで、検査技師等のユーザが医療組織毎に判定基準を設定することができ、個々の医療組織に応じた判定基準を容易に適用することができる。そして、前記CPU104aは、さらに前記医療組織情報及び判定基準の入力を受け付ける入力画面を前記ディスプレイ13aに出力させる入力画面出力手段を備えており
、ユーザは、ディスプレイ13aに表示された入力画面に必要な情報を入力することで、判定基準の設定を容易に行うことができる。」
ウ 「【0040】
図8は、測定結果が異常であるか否か(異常判定)、及び再検が必要であるか否か(再検判定)を判定する際の各判定基準の入力画面の例を示す図である。図8において、左側が再検判定の限界値を設定する画面であり、右側が異常判定の限界値を設定する画面である。再検判定及び異常判定ともに、ユーザはまず、プルダウンメニュー40をクリックして限界値を入力したい設定名を選択する。この設定名は、判定基準の名称を表すものであり、名称入力手段として機能するキーボード13bによりユーザが自由に設定することができる。これにより、分かり易い名称を設定して、判定基準の見間違い等を防止することができる。設定名の例としては、例えば、医療組織を区別することができる診療科名、病院名、病棟名や、感染症、血尿等の疑われる疾患を挙げることができる。図8に示される例では、泌尿器科が選択されている。そして、RBC、WBC等の検査項目の左側のチェックボックス41をチェックすることで、再検又は異常の判定を行うか否かを選択することができる。ついで、選択した項目について、各医療組織や各病名に合わせた限界値を設定する。こうして、ユーザは、個々の医療組織や病気に応じた判定基準を容易に設定することができる。しかも、画面を見ながら必要な情報を入力することができるので、判定基準の設定作業が容易になる。」
エ 「【0041】
図9は、このようにして設定された判定基準を用いた再検判定の手順を示すフローチャートである。測定結果が得られると、まず、CPU104aは、この測定結果が異常な値であるか否かの判定をする(ステップS40)。異常であると判定された項目には、所定のマークが付され(ステップS41)、異常と判定された項目がない場合は、マークを付することなく、CPU104aにより続く再検判定の処理がなされる(ステップS42)。
【0042】
再検を判定するための条件もユーザにより設定することができる。図10は再検判定をする際の設定条件の入力画面を示す図である。この例では、最大7つの条件が設定可能であり、チェックボックス42をチェックすることで、再検判定設定を行うか否かを選択することができる。チェックボックス42をチェックすると、設定名が入力可能になり、ユーザが各条件に対して自由に名称をつけることができる。ついで、プルダウンメニュー43をクリックして、病棟(診療科)を選択する。「すべて」というメンバを含み登録されているメンバから適宜選択することができる。つぎに、プルダウンメニュー44をクリックして、「すべて」、「男性」又は「女性」のなかから性別条件を選択する。最後に、年齢条件の下限及び上限を選択する。
【0043】
ついで、前記再検判定の条件に従って、再検の判定が行われる。まず、設定Aに該当するか否かの判定がなされる。後述するように、検査に先立って、ホストコンピュータで管理されている検体番号や、当該検体番号と関連付けられた患者の氏名、年齢、性別、診療科等の患者情報や、測定項目等の検体情報が、パソコン13の情報取得手段である測定オーダ問合せによって予め当該ホストコンピュータから取得される。この検体情報に基づいて、CPU104aにより、当該検体が、設定Aに該当するか否かが判断され(ステップS43)、該当する場合は、設定Aの再検判定基準に照らして測定結果が再検に該当するか否かの判定がなされる(ステップS44)。そして、CPU104aにより、再検と判定された項目には所定のマークが付され、測定結果に、再検が必要であることを示す「REVIEW」マークが付される(ステップS45)。なお、この「REVIEW」マークとともに、又は「REVIEW」マークに代えて、例えば「白血球数が少ないので再検が必要です」等のコメントを付することもできる。
【0044】
前記ステップS44において、設定Aの再検判定が終了すると、再検に該当する場合もしない場合も、CPU104aにより、設定Aに続いて設定Bに該当するか否かの判定がなされる(ステップS46)。該当する場合は、設定Bの再検判定基準に照らして測定結果が再検に該当するか否かの判定がなされる(ステップS47)。そして、CPU104aにより、再検と判定された項目には所定のマークが付され、測定結果に、再検が必要であることを示す「REVIEW」マークが付される(ステップS48)。以下、同様にして、設定している全ての条件について再検判定が行われる(ステップS49?51)。
【0045】
ついで、CPU104aにより、デフォルトルールに該当するか否かの判定がなされ(ステップS52)、該当しない場合は終了し、該当する場合はデフォルトの設定が適用され、当該デフォルトの再検判定基準により再検に該当するか否かが判定される(ステップS53)。そして、CPU104aにより、再検と判定された項目には所定のマークが付され、測定結果に、再検が必要であることを示す「REVIEW」マークが付される(ステップS54)。」

(2)引用例3に記載された技術事項
上記(1)のアないしエによれば、引用例3には、「臨床検査装置」の「再検査が必要であるか否かを判定するための再検査判定条件」を「ユーザにより」「医療組織別」に「設定」して「記憶」し、「取得された検体情報」、「測定結果」及び「再検査判定条件に基づいて」、「医療組織毎」に、当該「測定結果」が、「再検査が必要であるか否かを判定する」ことが記載されている。

第4 対比及び判断
1 本願発明と引用発明1との対比
(1)引用発明1の「尿検体に尿試験紙を浸してその試験紙の変色の度合いを9段階に自動的に分類しそれに対応する記号を測定データとして出力する尿定性検査装置3」、「尿検体に含まれる有形成分をフローサイトメータによって自動分析して分析結果の数値を測定データとして出力する尿沈渣検査装置2」は、それぞれ、本願発明の「尿検査ストリップ読み取り器(104)」、「尿沈殿物分析器(106)」に相当する。
(2)引用発明1の「データチェック装置1」は、「尿定性検査装置」と「尿沈渣検査装置」から直接又は通信回線を介して供給される測定データを受入れCPU5へ入力するデータ受入れ部4」を備えるものであることから、本願発明の「尿検査管理装置(102)」とは、「尿検査ストリップ読み取り器および尿沈殿物分析器に接続された尿検査管理装置」である点で共通するものであるといえる。
また、引用発明1の「データチェック装置1」が、「尿定性検査装置」と「尿沈渣検査装置」から「通信回線」を介して「測定データ」を受入れるものであることと、本願発明の「尿検査管理装置」が含むところの「a)機械が実行可能な命令(120、122、124)を実行するように適合される演算器(114)と、b)前記尿検査ストリップ読み取り器および前記尿検査管理装置の間で、コマンドおよびデータを伝達するように適合される第1インタフェース(108、312)と、c)前記尿沈殿物分析器および前記尿検査管理装置の間で、コマンドおよびデータを伝達するように適合される第2インタフェース(110、312)」とは、「尿検査管理装置」が、「機械が実行可能な命令を実行するよう適合される演算器」と「尿検査ストリップ読み取り器」から「尿検査管理装置」へデータを伝達するように適合される第1インターフェースと「尿沈殿物分析器」から「尿検査管理装置」へデータを伝達するように適合される第2インターフェースとを含む」ものである点で共通するものといえる。
(3)引用発明1の「データチェック装置1」は、「尿定性検査装置3」及び「尿沈渣検査装置2」から「直接又は通信回線を介して供給される測定データを受入れCPU5へ入力するデータ受入れ部4を備えるデータチェック装置1」であることからみて、引用発明1の「データチェック装置1」は、本願発明の「尿検査管理装置」が含む工程のうち、「第1インターフェースを介して」、「尿検査ストリップ読み取り器からストリップの分析結果を読み取る工程(202)」および「第2インタフェースを用いて」、「尿沈殿物分析器から沈殿物の分析結果を受信する工程(208)」に相当する工程を含むものといえる。
(4)引用発明1の「データチェック装置」が「尿沈検査装置2からの定量測定項目である赤血球(RBC)、白血球(WBC1)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST)及び細菌(BACT)及び尿定性検査装置3からの定性測定項目である潜血(OB)、蛋白質(PRO)、亜硝酸塩(NIT)、及び白血球(WBC2)のうち、赤血球と潜血、白血球(WBC1)と白血球(WBC2)、円柱(CAST)と蛋白質(PRO)、細菌(BACT)と亜硝酸塩(NIT)について、同一の尿検体について尿沈渣検査装置2および尿定性検査装置3によって測定された各測定データが測定データメモリ6aから読出され、RBC×OB、WBC×WBC、CAST×PRO、BACT×NITの各組合せにおける相関関係が、エリア設定モードでそれぞれ設定されたマッチングエリア内にあるか否かが判定され」るのであるから、この「判定を行うための工程」が、少なくとも本願発明の「尿検査管理装置」が含む工程のうち、「前記ストリップの分析結果と前記沈殿物の分析結果を、サンプル毎に1つの集約結果に結合する工程」、「前記ストリップの分析結果を前記沈殿物の分析結果と比較する工程」と共通するものであることは明らかである。
(5)引用発明1の「データチェック装置」は、「RBC×OB、WBC×WBC、CAST×PRO、BACT×NITの各組合せにおける相関関係が、エリア設定モードでそれぞれ設定されたマッチングエリア内にあるか否かが判定され」、「マッチングエリアに存在しない項目については、「?」が付加されてディスプレイに表示される」ものであるところ、ここでの「各組合せにおける相関関係が、エリア設定モードでそれぞれ設定されたマッチングエリア内にあるか否かが判定され」ることは、「尿定性検査装置」の検査結果」と「尿沈渣検査装置」の検査結果の一致、不一致の判定をするものといえ、また、「マッチングエリアに存在しない項目については、「?」が付加されてディスプレイに表示される」についても「「?」が付加されたデータは信頼性が低く、その他のデータは信頼性が高いことを示している」(上記第3の1(1)キの摘記事項参照)ものであることに鑑みれば、「?」のついていない項目、すなわち検査結果が一致するものについて有効と判定していることは技術的に明らかといえる。
そして、ここでの引用発明1の「マッチングエリア」は、「エリア設定モードでそれぞれ設定される」ものである。
以上のことからすれば、引用発明1の「データチェック装置」が「RBC×OB、WBC×WBC、CAST×PRO、BACT×NITの各組合せにおける相関関係が、エリア設定モードでそれぞれ設定されたマッチングエリア内にあるか否かが判定され」、「マッチングエリアに存在しない項目については、「?」が付加されてディスプレイに表示される」ものであることと、本願発明の「尿検査管理装置」が含む工程のうちの「前記ストリップの分析結果と前記沈殿物の分析結果の間に不一致がない場合のみ、前記集約結果を有効とする工程と、前記ストリップの分析結果および前記沈殿物の分析結果が一致しない、および/または、前記集約結果の妥当性が、オペレーターによって構成可能な、あらかじめ定められたルールの範囲内にない複数の尿サンプルのサブグループを特定する工程と、前記尿沈殿物分析器および/または前記尿検査ストリップ読み取り器に、前記サブグループ中の尿サンプルを再分析するように命令する工程」とは、「尿検査管理装置」が「前記ストリップの分析結果と前記沈殿物の分析結果の間に不一致がない場合のみ、前記集約結果を有効とする工程と、前記ストリップの分析結果および前記沈殿物の分析結果が一致しない、および/または、前記集約結果の妥当性が、オペレーターによって構成可能な、あらかじめ定められたルールの範囲内にない尿サンプルを特定する工程」を含むものである点で共通するものといえる。
(6)上記(1)ないし(5)の対比に基づけば、本願発明と引用発明1とは、つぎの点で一致し、つぎの各相違点において相違する。

<一致点>
「尿検査ストリップ読み取り器および尿沈殿物分析器に接続された尿検査管理装置であって、
a)機械が実行可能な命令を実行するように適合される演算器と、
b)前記尿検査ストリップ読み取り器から前記尿検査管理装置にデータを伝達するように適合される第1インタフェースと、
c)前記尿沈殿物分析器から前記尿検査管理装置にデータを伝達するように適合される第2インタフェースと、
d)以下の工程、すなわち
前記第1インタフェースを介して前記尿検査ストリップ読み取り器からストリップの分析結果を読み取る工程と、
前記第2インタフェースを用いて前記尿沈殿物分析器から沈殿物の分析結果を受信する工程と、
前記ストリップの分析結果と前記沈殿物の分析結果を、サンプル毎に1つの集約結果に結合する工程と、
前記ストリップの分析結果を前記沈殿物の分析結果と比較する工程と、
前記ストリップの分析結果と前記沈殿物の分析結果の間に不一致がない場合のみ、前記集約結果を有効とする工程と、
前記ストリップの分析結果および前記沈殿物の分析結果が一致しない、および/または、前記集約結果の妥当性が、オペレーターによって構成可能な、あらかじめ定められたルールの範囲内にない尿サンプルを特定する工程と、
を実行するための、機械が実行可能な一連の命令と
を含む尿検査管理装置」である点。

<相違点1>
本願発明の「尿検査管理装置」が「尿検査ストリップ読み取り器」及び「尿沈殿物分析器」を「制御するための」ものであって、「尿検査ストリップ読み取り器」及び「尿検査管理装置」の間又は「尿沈殿物分析器」及び「尿検査管理装置」の間でコマンドおよびデータを伝達するよう適合される第1インターフェースと第2インターフェースを含むものであり、「尿検査管理装置」が「前記尿検査ストリップ読み取り器に、前記第1インタフェースを用いて複数の尿サンプルを分析するよう命令する工程(200)」と、「前記尿沈殿物分析器」に、「前記第2インタフェースを介して、前記複数の尿サンプルを分析するように命令する工程(206)」を含むものであるのに対して、引用発明1の「データチェック装置」は、「尿定性検査装置」及び「尿沈渣検査装置」からのデータを「尿データチェック装置」に伝達するよう適合される第1インターフェースと第2インターフェースを備えているものの、それぞれのインターフェースが、「データチェック装置」からのコマンドを「尿定性検査装置」及び「尿沈渣検査装置」へ伝達するか否かが不明な点

<相違点2>
本願発明の「尿検査管理装置」が「前記第1インタフェースを介して前記尿検査ストリップ読み取り器からストリップの分析結果を読み取る工程(202)であって、前記尿検査管理装置が、前記尿沈殿物分析器を制御するための制御命令を発生させるために、前記結果を用いるために操作可能である工程(202)と、前記ストリップの分析結果を用いて第1の命令セットを発生させる工程(204)であって、前記複数の尿サンプルのそれぞれが、第1の所定条件と合致しているかを決定するために、前記ストリップの分析結果を確かめる工程と、前記尿沈殿物分析器に、前記第1の所定条件に合致するそれぞれの尿サンプルを希釈させる命令を発生させる工程とを含む工程(204)と、前記尿沈殿物分析器に、前記第1の命令セットを用いて、前記第2インタフェースを介して、前記複数の尿サンプルを分析するように命令する工程(206)と」を実行するための命令を含むものであるのに対して、引用発明1は、そのような工程を実行するための命令を含むものではない点

<相違点3>
本願発明の「尿検査管理装置」は、「前記ストリップの分析結果および前記沈殿物の分析結果が一致しない、および/または、前記集約結果の妥当性が、オペレーターによって構成可能な、あらかじめ定められたルールの範囲内にない複数の尿サンプルのサブグループを特定する工程」と「前記尿沈殿物分析器および/または前記尿検査ストリップ読み取り器に、前記サブグループ中の尿サンプルを再分析するように命令する工程」を実行するための命令を含むものであるのに対して、引用発明1は、「マッチングエリアに存在しない項目については、「?」が付加されてディスプレイに表示される」についても「「?」が付加されたデータは信頼性が低く、その他のデータは信頼性が高いことを示している」ものであることから、「?」のついていない項目、すなわち検査結果が一致するものについて有効と判定し、分析結果が一致しないおよび/または、前記集約結果の妥当性が、オペレーターによって構成可能な、あらかじめ定められたルールの範囲内にない複数の尿サンプルを特定しているとはいえるものの、「複数の尿サンプルのサブグループを特定」し、さらに、「前記尿沈殿物分析器および/または前記尿検査ストリップ読み取り器」に、「前記サブグループ中の尿サンプルを再分析するように命令する工程」を含むか否かは不明である点

2 当審の判断
(1)相違点1について
自動分析装置の管理装置から、検査装置に検査開始コマンドや再検査指示のためのコマンドを伝達するようにすることは、本願優先権主張日前において、周知の技術である(例えば、特開平2-240568号公報(以下、「周知例1」という。)の3頁右下欄第2行?10行の「データチェック装置において、通信処理部3は自動分析装置1が出力するデータをリアルタイムで受信し、データチェック処理部5でデータの異常を検出する。このとき、再検査判別部6、異常データ除外部7の処理も同時に行いながら進み、データチェックの結果として再検査の必要な項目情報を通信処理部3から自動分析装置1へリアルタイムで送信する。」との記載や、特開2006-98233号公報(以下、「周知例2」という。)の段落【0031】の「・・・尿分析システム1は、尿定性分析装置2と、尿中有形成分分析装置3と、搬送装置4及び5と、コンピュータ6とによって主として構成されている。コンピュータ6は、尿定性分析装置2及び尿中有形成分分析装置3と電気的に接続されており、尿制定分析装置2及び尿中有形成分分析装置3と相互にデータ通信をすることが可能となっている。」等の記載を参照されたい。)から、引用発明1において、「データチェック装置」から「尿沈渣検査装置」や「尿定性検査装置」に対して、検査開始命令などのコマンドを伝達して「制御」するようにすること、すなわち、「データチェック装置」が、「尿沈渣装置」及び「尿定性検査装置」を制御するためのものとし、「尿検査ストリップ読み取り器」及び「尿検査管理装置」の間又は「尿沈殿物分析器」及び「尿検査管理装置」の間でコマンドおよびデータを伝達するよう適合される第1インターフェースと第2インターフェースを含むようにすることは、業者が適宜なし得る程度の単なる周知技術の付加にすぎないことである。
そして、そのようにした場合に、引用発明の「データチェック装置」が、本願発明の「尿検査管理装置」が含むところの「前記尿検査ストリップ読み取り器に、前記第1インタフェースを用いて複数の尿サンプルを分析するよう命令する工程(200)」と、「前記尿沈殿物分析器」に、「前記第2インタフェースを介して、前記複数の尿サンプルを分析するように命令する工程(206)」に相当する工程を備えるようになることは明らかである。
そのうえ、引用例2には、上記第3の2(2)で認定した引用発明2が記載されているところ、引用発明2の「制御部3」は、「サンプル供給及び測定時間の制御」などを行う「サンプル供給部1」や「沈渣分析部2」に対して、「定性分析の結果」から「コマンドを伝送する」ものであることは明らかであるから、「制御部3」は、「沈渣分析部2」に、「複数の尿サンプルを分析するように命令する工程」を含むものであるといえるから、引用発明2を引用発明1に適用することにより、引用発明1の「データチェック装置」が、「尿沈渣検査装置」に対して、「複数の尿サンプルを分析するよう命令する工程」を含むものとなるから、引用発明1に引用発明2を適用することで、本願発明の「前記尿沈殿物分析器」に、「前記第2インタフェースを介して、前記複数の尿サンプルを分析するように命令する工程(206)」に相当する工程を備えるようにすることは、当業者が容易になし得る程度のことといえる。
以上のことからすれば、引用発明1に上記周知技術及び引用発明2を適用し、相違点1に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

(2)相違点2について
上記第3の2(2)で認定した引用発明2においては、「あらかじめ測定した尿定性分析の結果を参照して、前記サンプル液の尿沈渣成分を分析するための測定条件を各サンプル毎に自動的に変更する」「尿沈渣検査装置」の「制御部3」は、「定性分析項目の白血球または赤血球に異常が認められた場合、サンプル供給部1内にサンプル液を希釈するサンプル液希釈機構13を設け、検体を希釈してから尿沈渣分析を行う」ものである。
ここで引用発明2の「あらかじめ測定した尿定性分析の結果を参照して、前記サンプル液の尿沈渣成分を分析するための測定条件を各サンプル毎に自動的に変更」して「尿沈渣分析を行う」ことは、本願発明の「前記尿検査ストリップ読み取り器からストリップの分析結果を読み取る工程であって、前記尿検査管理装置が、前記尿沈殿物分析器を制御するための制御命令を発生させるために、前記結果を用いるために操作可能である工程」及び「前記複数の尿サンプルのそれぞれが、第1の所定条件と合致しているかを決定するために、前記ストリップの分析結果を確かめる工程」を実行することに相当する。
また、引用発明2の「定性分析項目の白血球または赤血球に異常が認められた場合、サンプル供給部1内にサンプル液を希釈するサンプル液希釈機構13を設け、検体を希釈してから尿沈渣分析を行う」ことは、本願発明の「前記尿沈殿物分析器に、前記第1の所定条件と合致するそれぞれの尿サンプルを希釈させる命令を発生させる工程とを含む工程」を実行することに相当する。
そして、引用発明1においても「尿定性検査装置」による定性分析の結果潜血陽性や白血球陽性などに該当するサンプルについて、引用発明2と同様にサンプル液を希釈する必要性があることは、当業者にとって明らかであるから、引用発明1に引用発明2を適用して、本願発明の相違点2に係る工程を実行するよう構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

(3)相違点3について
ア 上記(1)で例示した周知例1には、「自動分析装置」の「データチェック装置」において、「データの異常を検出し、再検査の必要な項目情報を自動分析装置に送信する」こと、すなわち、サンプルの各種項目についての検査結果が異常であると判定された場合に、当該サンプルについて再検査を指示することが記載されている。
また、引用例3には、上記第3の3(2)において記載したように「臨床検査装置」の「再検査が必要であるか否かを判定するための再検査判定条件」を「ユーザにより」「医療組織別」に「設定」して「記憶」し、「取得された検体情報」、「測定結果」及び「再検査判定条件に基づいて」、「医療組織毎」に、当該「測定結果」が、「再検査が必要であるか否かを判定する」ことが記載されており、これらの周知例1や引用例3の記載に鑑みれば、本願優先権主張日前において、検査結果が異常である場合に再検査を指示することは周知の技術であるといえる。
そして、引用発明1において、「各測定データ」が、「エリア設定モードでそれぞれ設定されたマッチングエリア内にあるか否かが判定され、マッチングエリアに存在しない項目」が存在するサンプルを特定しているところ、このように特定されるサンプルを「サブグループ」として特定するようにすることも適宜なし得る程度のことである。
以上のことからすれば、引用発明1において、「各測定データ」が、「エリア設定モードでそれぞれ設定されたマッチングエリア内にあるか否かが判定され、マッチングエリアに存在しない項目」が存在するサンプルをサブグループとして特定し、このサブグループ中のサンプルについて、「データチェック装置」が「尿沈渣検査装置」や「尿定性検査装置」に再検査を指示するように構成することは、当業者が適宜なし得る程度のことであるから、引用発明1に周知例1及び引用例3に記載されている周知技術を適用して、本願発明の相違点3に係る「前記ストリップの分析結果および前記沈殿物の分析結果が一致しない複数の尿サンプルのサブグループを特定する工程」と「前記尿沈殿物分析器および/または前記尿検査ストリップ読み取り器に、前記サブグループ中の尿サンプルを再分析するように命令する工程」を備えるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
イ また、引用発明1において、測定データの判定を行う「マッチングエリア」は、「エリア設定モードで設定される」ものであることや、引用例3の「判定条件」が「ユーザにより」「医療組織別」に「設定」したものであることに鑑みれば、本願発明の相違点3に係る「前記集約結果の妥当性が、オペレーターによって構成可能な、あらかじめ定められたルールの範囲内にない複数の尿サンプルのサブグループを特定する工程」と「前記尿沈殿物分析器および/または前記尿検査ストリップ読み取り器に、前記サブグループ中の尿サンプルを再分析するように命令する工程」を備えるようにすることも、上記アと同様に引用発明1に周知例1及び引用例3に記載の周知技術を適用することにより、当業者が容易になし得ることというべきである。

(4)本願発明の作用効果について
本願発明の作用効果は、引用例1ないし3の記載及び周知技術から、当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

3 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び引用発明2、引用例3に記載の技術事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第5 むすび
上記で検討したとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に係る発明ついて論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-26 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-14 
出願番号 特願2010-165091(P2010-165091)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷 潮  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 尾崎 淳史
平田 佳規
発明の名称 尿の作業領域マネージャーおよび尿の作業領域  
代理人 特許業務法人朝日奈特許事務所  
代理人 河村 洌  
代理人 藤森 洋介  

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