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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01L
管理番号 1310404
審判番号 不服2014-1227  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-23 
確定日 2016-01-27 
事件の表示 特願2010-536176「プロセス流体圧力トランスミッタの動作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月 4日国際公開、WO2009/070703、平成23年 2月24日国内公表、特表2011-505564〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
特許出願: 平成20年11月26日
(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年11月29日、US、を伴う国際出願)
拒絶理由通知: 平成24年7月24日(発送日:同年同月31日)
手続補正: 平成24年10月31日
拒絶査定: 平成25年9月20日(送達日:同年10月1日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成26年1月23日
手続補正: 平成26年1月23日
拒絶理由通知: 平成26年12月25日
(以下、「当審拒絶理由1」という。発送日:平成27年1月6日)
意見書: 平成27年4月6日
手続補正: 平成27年4月6日
拒絶理由通知: 平成27年4月21日
(以下、「当審拒絶理由2」という。発送日:同年同月28日)
意見書: 平成27年7月27日(以下、「本件意見書」という。)
手続補正: 平成27年7月27日(以下、「本件補正」という。)

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「プロセス流体圧力中の短時間のスパイク又は減衰のようなプロセス流体の圧力過渡現象を検出することが可能な分解能を有するプロセス流体圧力トランスミッタの動作方法であって、
圧力過渡現象を定義する許容可能なプロセス流体圧力の上限および/または下限を規定する、少なくとも1つのユーザ提供の圧力閾値を前記プロセス流体圧力トランスミッタに保存するステップと、
前記プロセス流体圧力トランスミッタの圧力センサをプロセス流体源に結合するステップと、
前記圧力センサを用いてプロセス流体圧力を繰り返し測定するステップと、
前記圧力センサを用いて測定された各圧力測定値に関する信号をプロセス通信ループ上で通信するステップであって、プロセス流体圧力の前記圧力測定値に関する信号が第1の周期毎に前記プロセス通信ループ上で通信されること、及びプロセス流体圧力の前記圧力測定値が前記第1の周期よりも速い第2の周期で測定されること、を含むステップと、
前記圧力センサを用いてプロセス流体の圧力過渡現象を検出するステップと、
前記第2の周期における圧力過渡現象中に測定された圧力測定値から得られる少なくとも1つの変数を前記プロセス流体圧力トランスミッタに保存するステップと、
前記少なくとも1つの圧力測定値の表示を提供するステップと、
を含み、
前記プロセス流体の圧力過渡現象を検出するステップが、
前記プロセス流体圧力を前記ユーザ提供の圧力閾値と比較すること、
前記プロセス流体圧力が許容可能な値か否かを判断すること、
前記プロセス流体圧力が許容可能な値でない場合に、タイマを開始するか又は時間の表示を保存し、その後、前記プロセス流体圧力が許容可能な値に戻るまでの間に測定された前記プロセス流体の最大圧力又は最小圧力を記録すること、
を含む、プロセス流体圧力トランスミッタの動作方法。」

3 当審拒絶理由
これに対し、当審拒絶理由1の理由1の概要は、本願の請求項1ないし11に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2003-508742号公報(発明の名称:、出願人:ローズマウント インコーポレイテッド、公開日:平成15年3月4日、以下、「引用例1」という。)に記載された発明、及び周知慣用技術などに基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

4 引用例・引用発明
(1)引用例1には、図面とともに、次の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同様である。)。
「 【0001】
発明の分野
本発明は、プロセス圧力を感知し、プロセス圧力を表わす大きさを有する出力を表示し、または伝送する圧力送信機に関する。」

「 【0010】
図1では、オリフィス流量計30は、これに接続されている通信バス34によって接続される圧力送信機36を含む。レベル送信機24,26は、また圧力送信機を含む。制御システム32は、人のオペレータのために、処理状態を表示するようにプログラムすることができ、また 該処理状態を感知し、電流のような出力装置を介して例えば圧力変換器38および制御バルブ40に対する処理を制御するようにプログラムすることができる。
【0011】
図1では、24,26および36の圧力送信機は、機能不全あるいは過渡現象状態および同様なものに因る、種々のパイプとタンク中で、超過圧力と呼ばれる過度な圧力にさらされる圧力センサを有している。これらの過渡現象は、ポンプおよびバルブの始動または停止中に起こり、しばしばオペレータに気づかれないが、プロセスプラント内の構成要素に過度に圧力をかけることがある。24,26および36の圧力送信機内の圧力センサは、このような超過圧力によって、その精度が低下するが、その劣化の大きさは、典型的には、非常に小さいので、制御システム32のオペレータに気づかれず、様々な測定値は、そのダメージによって、もはや正確ではない。
【0012】
図2には、本発明による典型的な圧力送信機50の分解斜視図が一般的に示される。送信機50は差圧を受信するためのフランジ52および1つ以上の圧力センサ54(図示されず)を含む。送信機50は、 フランジアダプタ58にボルト止めされる。フランジアダプタ58は、 フランジアダプタ接合管60またはその他の接続ハードウェアに結合された圧力インパルスパイプに結合される。
【0013】
図2では、送信機50内の回路56は電気的にセンサ54に接続され、また送信機の圧力出力57内のエラーの大きさを予測するためのコントローラおよびメモリを有する。本出願に用いられる「コントローラ」という語句は、送信機の動作を制御するための論理および関数計算を実行し、エラーの大きさを予測するために必要なステップを実行することができる、あらゆる回路または回路の組み合わせを意味する。コントローラは、例えば、マイクロプロセッサシステム、特定用途の集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)、プログラムされたゲートアレイ、低減された指令セットのコンピュータ(a reduced instruction set computer:RISC)、あるいはこれらの機能を実行するような、その他の既知の回路を含むことができる。コントローラのタスクを遂行するために、コントローラ内で実行されるステップは、神経回路網、ファジイ理論、ウェーブレット(wavelets)、自己回帰、再帰型フィルタリング、適応自己同調、および信号処理および制御機能のためのあらゆる他の既知のアルゴリズムばかりでなく、あらゆるこれらのステップの組み合せを含むことができる。コントローラは、振動のウェーブレット分析、パート2、ウェーブレットマップ(Wavelet Maps)、ディー.イー.ニューランド(D.E.Newland)、振動および音響効果ジャーナル(JOURNAL OF VIBRATION AND ACOUSTICS)、1994年10月号、Vol.116、417頁に記載されるような、Z変換および高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)技術、ウェーブレット分析、および離散ウェーブレット変換(Discreet Wavelet Transform:DWT)を含む、必要なときに既知のデジタル信号処理技術、あるいは周波数変域を用いて、圧力センサ出力を処理することができる。他の技術が同様に用いられることができる。」

「 【0017】
高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)、その他の信号処理、または濾波技術は、信号の単純なしきい値比較、または平均値や標準偏差のような統計学的パラメータとの信号の比較であるルールを含む、センサ信号内のスパイクや超過圧力の確認のために用いられることができる。このシステムはまた、神経回路網 (後述される)を用いてモデル化され、かつ実際のセンサ出力と比較されることができる。残りの信号は、センサ信号内の超過圧力を検出するために用いられることができる。
【0018】
スパイクはまた、ルール、統計的な値、経験値、および感度係数を用いて検出されることができる。スパイクイベントは、信号が瞬間的に極値に進んだときに起こる。センサ信号内のスパイクに対する感度は、メモリ80内に記憶されたδからの感度係数を調整することによって制御される。δは、2つの連続的なデータポイント間の変化(ΔP_(MAX))の、受け入れ可能な訓練最大レートである。例えば、訓練値と比べてブロック78からのΔr_(max)より30%大きな、ブロック84からの変化率(rate of change:ROC)を有するスパイクを検出するために、80からのδは、1.30に設定されるべきである。ルールの一例は次のとおりである。
ROC> δ・Δr_(MAX)ならば、スパイクイベントが検出される。」

「 【0020】
図3には、圧力送信機70の1つの実施例のブロック図が示される。圧力センサ72は、プロセス圧力74を感知するのに適合されている。コントローラ76は、圧力センサ72に結合されて、プロセス圧力の大きさを表わす送信機出力78を生成する。送信機出力78は、 あらゆる既知の形式のプロセス制御出力を有することできる。このプロセス制御出力は、例えば、アナログ電流上に付加される、デジタルのHARTあるいはフィールドバス(Fieldbus)信号をもつ送信機のための電気的エネルギの全てを供給するような、本質的に安全な4-20mAのアナログ電流である。コントローラ76に結合されたメモリ80は、84での累積超過センサ出力レベルの関数として送信機出力のエラーの大きさを予測する、あらかじめ決められたデータ82を記憶する。メモリ80はまた、累積超過センサ出力レベルの履歴86も記憶する。典型的には、あらかじめ決められたデータが、読み出し専用メモリ(ROM)内に記憶される一方、履歴86は、EEPROMのように不揮発性である読み出し・書き込みメモリ内に記憶される。コントローラ76は、蓄積された履歴86とあらかじめ決められたデータ82との関数として、予測される送信機出力のエラーの現在の大きさを計算し、予測出力88を生成する。履歴86は、典型的には、超過圧力の結果としてのセンサに対する物理的な変化を表わす。履歴は、センサ出力上に示される超過圧力の大きさおよび持続時間のデータを含むことができる。「超過圧力」の大きさおよび持続時間が、較正のシフトを起こすようなレベルは、センサ72の設計の機能であり、実験室内で類似のセンサをテストすることによって経験的に決定されることができるか、または有限要素分析およびストレス分析などのコンピュータモデル化技術によって決定されることができる。エラーの大きさを予測する、あらかじめ決められたデータ82はまた、経験的にまたはコンピュータモデル化によって決定されることができ、典型的には、式、関数“F(超過圧力)”、または超過圧力レベルに対して、予測されるエラーと関連付けるルックアップ表のいずれかの形式を採用することができる。予測出力88は、典型的には、エラーの上限と下限のような予測される較正シフトを表わす。
【0021】
予測出力88は、現在のプロセス圧力とは独立であることができるし、あるいは予測出力は、現在のプロセス圧力の関数であってもよい。予測出力88はまた、センサのオフセットエラー(現在のプロセス圧力と独立の)とセンサの利得エラー(現在のプロセス圧力に比例する)の両方を含むことができる。」

「 【0029】
コントローラは検出されたスパイクを用いて、圧力センサ72の動作に関連する診断を実行する。スパイクのタイミング、大きさ、幅、波形、あるいはその他のパラメータが、診断のために用いられることができる。診断からの出力は、感知された圧力を補正し、センサの状態や推定寿命の示数を提供するために用いられることができる。このことによって、センサは決定的な故障をする前に交換されることができる。しかしながら、センサを交換する前の間には、センサからの出力は補償されることができるので、さらに正確な測定値を取得することができる。」

(2)上記記載事項を総合すれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「プロセス圧力の過渡現象状態に因るスパイクや超過圧力を検出することが可能な圧力送信機の動作方法であって、
スパイクを検出するための感度係数を、圧力送信機のメモリ80に記憶させるステップと、
圧力センサを含む圧力送信機を圧力インパルスパイプに結合するステップと、
前記圧力センサを用いてプロセス圧力を感知するステップと、
前記圧力センサを用いて感知されたプロセス圧力を表す大きさを有する送信機出力78を伝送するステップと、
前記圧力センサを用いてスパイクを感知するステップと、
累積超過センサ出力レベルの履歴を、圧力送信機のメモリ80に記憶させるステップと、
を含み、
しばしばオペレータに気付かれない過渡現象であるスパイクや超過圧力が検出される、圧力送信機の動作方法。」


5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「圧力送信機」は、「プロセス圧力の過渡現象状態に因るスパイクや超過圧力を検出することが可能な」ものであり、本願発明における「プロセス流体圧力トランスミッタ」に相当するから、引用発明における「プロセス圧力の過渡現象状態に因るスパイクや超過圧力を検出することが可能な圧力送信機の動作方法」は、本願発明における「プロセス流体圧力中の短時間のスパイク又は減衰のようなプロセス流体の圧力過渡現象を検出することが可能な分解能を有するプロセス流体圧力トランスミッタの動作方法」に相当するといえる。
また、引用発明における「スパイクを検出するための感度係数を、圧力送信機のメモリ80に記憶させるステップ」と、本願発明における「圧力過渡現象を定義する許容可能なプロセス流体圧力の上限および/または下限を規定する、少なくとも1つのユーザ提供の圧力閾値を前記プロセス流体圧力トランスミッタに保存するステップ」とは、「圧力過渡現象を検出するための、少なくとも1つの値を前記プロセス流体圧力トランスミッタに保存するステップ」である点で共通する。
また、引用発明における「圧力センサを含む圧力送信機を圧力インパルスパイプに結合するステップ」は、本願発明における「前記プロセス流体圧力トランスミッタの圧力センサをプロセス流体源に結合するステップ」に相当するし、引用発明における「前記圧力センサを用いてプロセス圧力を感知するステップ」において、圧力センサによる計測が複数回行われることは明らかであるから、該ステップは、本願発明における「前記圧力センサを用いてプロセス流体圧力を繰り返し測定するステップ」に相当する。
次に、引用発明における「前記圧力センサを用いて感知されたプロセス圧力を表す大きさを有する送信機出力78を伝送するステップ」と、本願発明における「前記圧力センサを用いて測定された各圧力測定値に関する信号をプロセス通信ループ上で通信するステップであって、プロセス流体圧力の前記圧力測定値に関する信号が第1の周期毎に前記プロセス通信ループ上で通信されること、及びプロセス流体圧力の前記圧力測定値が前記第1の周期よりも速い第2の周期で測定されること、を含むステップ」とは、「前記圧力センサを用いて測定された各圧力測定値に関する信号をプロセス通信ループ上で通信するステップ」である点で共通する。
そして、引用発明における「前記圧力センサを用いてスパイクを感知するステップ」は、本願発明における「前記圧力センサを用いてプロセス流体の圧力過渡現象を検出するステップ」に相当するし、引用発明における「累積超過センサ出力レベルの履歴を、圧力送信機のメモリ80に記憶させるステップ」と、本願発明における「前記第2の周期における圧力過渡現象中に測定された圧力測定値から得られる少なくとも1つの変数を前記プロセス流体圧力トランスミッタに保存するステップ」とは、「圧力過渡現象中に測定された圧力測定値から得られる少なくとも1つの変数を前記プロセス流体圧力トランスミッタに保存するステップ」である点で共通する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「プロセス流体圧力中の短時間のスパイク又は減衰のようなプロセス流体の圧力過渡現象を検出することが可能な分解能を有するプロセス流体圧力トランスミッタの動作方法であって、
圧力過渡現象を検出するための、少なくとも1つの値を前記プロセス流体圧力トランスミッタに保存するステップと、
前記プロセス流体圧力トランスミッタの圧力センサをプロセス流体源に結合するステップと、
前記圧力センサを用いてプロセス流体圧力を繰り返し測定するステップと、
前記圧力センサを用いて測定された各圧力測定値に関する信号をプロセス通信ループ上で通信するステップと、
前記圧力センサを用いてプロセス流体の圧力過渡現象を検出するステップと、
圧力過渡現象中に測定された圧力測定値から得られる少なくとも1つの変数を前記プロセス流体圧力トランスミッタに保存するステップと、
を含む、プロセス流体圧力トランスミッタの動作方法。」

【相違点1】
本願発明は「圧力過渡現象を定義する許容可能なプロセス流体圧力の上限および/または下限を規定する、少なくとも1つのユーザ提供の圧力閾値を前記プロセス流体圧力トランスミッタに保存するステップ」を含むのに対し、引用発明は「圧力過渡現象を検出するための、少なくとも1つの値を前記プロセス流体圧力トランスミッタに保存するステップ」を実質的に有するものの、本願発明のように「許容可能なプロセス流体圧力の上限および/または下限を規定する、少なくとも1つのユーザ提供の圧力閾値」を用いるとはされていない点。

【相違点2】
本願発明においては、測定値を通信するステップにおいて「プロセス流体圧力の前記圧力測定値に関する信号が第1の周期毎に前記プロセス通信ループ上で通信されること、及びプロセス流体圧力の前記圧力測定値が前記第1の周期よりも速い第2の周期で測定されること」とされているのに対し、引用発明においてはそのような周期の限定はなされていない点で一応相違する。
また、本願発明の「圧力過渡現象中に測定された圧力測定値から得られる少なくとも1つの変数を前記プロセス流体圧力トランスミッタに保存するステップ」において、圧力測定値は「第2の周期における圧力過渡現象中に測定された」とされている点に関しても同様である。

【相違点3】
本願発明は「前記少なくとも1つの圧力測定値の表示を提供するステップ」を含むのに対し、引用発明はそのような構成を有していない点。

【相違点4】
本願発明は「前記プロセス流体の圧力過渡現象を検出するステップが、前記プロセス流体圧力を前記ユーザ提供の圧力閾値と比較すること、前記プロセス流体圧力が許容可能な値か否かを判断すること、前記プロセス流体圧力が許容可能な値でない場合に、タイマを開始するか又は時間の表示を保存し、その後、前記プロセス流体圧力が許容可能な値に戻るまでの間に測定された前記プロセス流体の最大圧力又は最小圧力を記録すること、を含む」とされているのに対し、引用発明はそのような構成を有していない点。


6 判断
以下、上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明において検出されるスパイクは、引用例1の図10に示されているように、通常測定される圧力を大きく越える圧力値を示すものとされているのであるから、これを検出する手法として閾値を用いることは、その閾値の設定をユーザーが可能とするか否かを含め、当業者であれば通常検討すべき手法の一つにすぎないといえる。

(2)相違点2について
引用発明においては、「しばしばオペレータに気付かれない過渡現象である超過圧力が検出される」のであるから、該超過圧力の測定が、通常圧力の測定値の送信よりも速い第2の周期で行われていることは明らかであり、相違点2は実質的な相違点ではないといえる。

(3)相違点3について
引用例1の段落【0029】には、
「コントローラは検出されたスパイクを用いて、圧力センサ72の動作に関連する診断を実行する。スパイクのタイミング、大きさ、幅、波形、あるいはその他のパラメータが、診断のために用いられることができる。」
とあり、スパイクの大きさ(圧力測定値)を用いた診断を行うことが記載されている。そのような診断に人間(管理者やサービス要員)が参加することも通常想定される状況であり、その際にスパイクの大きさ(圧力測定値)の表示が必要であることは自明である。

(4)相違点4について
上記「(1)相違点1について」で述べたように、閾値の利用は当業者であれば通常検討すべき手法の一つにすぎないものであるから、圧力過渡現象の検出に際して、ユーザ提供の圧力閾値との比較によってプロセス流体圧力が許容可能な値か否かを判断することに特段の困難性は認められない。
また、上記「(3)相違点3について」で述べたように、引用例1には「スパイクのタイミング、大きさ、幅、波形」などのパラメータを用いて診断を行うことが記載されており、これらのパラメータを診断のために記録するには「タイマを開始するか又は時間の表示を保存し」、また「測定された前記プロセス流体の最大圧力又は最小圧力を記録する」必要があることは自明といえる。

そして、これら相違点1ないし4を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


7 請求人の主張について
審判請求人は、本件意見書の「2.本願発明が特許されるべき理由」の「(4)特許法第29条第2項に関する釈明」において、以下のように主張しているので、検討する。
(1)請求人の主張
「平成27年4月6日提出日の意見書で述べたとおり、引用文献1に記載された発明は、補正後の請求項1に係る本願発明とは、全く異なる動作方法によって「スパイク」や「超過圧力」などの圧力過渡現象を検出しています。
すなわち、引用文献1の[0018]には、「スパイクはまた、ルール、統計的な値、経験値、および感度係数を用いて検出されることができる。スパイクイベントは、信号が瞬間的に極値に進んだときに起こる。センサ信号内のスパイクに対する感度は、メモリ80内に記憶されたδからの感度係数を調整することによって制御される。δは、2つの連続的なデータポイント間の変化(ΔP_(MAX))の、受け入れ可能な訓練最大レートである。例えば、訓練値と比べてブロック78からのΔr_(max)より30%大きな、ブロック84からの変化率(rate of change:ROC)を有するスパイクを検出するために、80からのδは、1.30に設定されるべきである。ルールの一例は次のとおりである。ROC>δ・Δr_(MAX)ならば、スパイクイベントが検出される。」との記載があります。この記載によれば、スパイクは、「ROC>δ・Δr_(MAX)」に基づいて直接検出されます。このような引用文献1の動作方法では、2つの連続的なデータポイントの間隔で起きた圧力過渡現象を検出することはできません。
請求項1に係る本願発明は、引用文献1に記載された圧力過渡現象の検出技術を更に改良したものであり、「圧力過渡現象を定義する許容可能なプロセス流体圧力の上限および/または下限を規定する、少なくとも1つのユーザ提供の圧力閾値」に基づいて、圧力過渡現象の直前及び直後のタイミングが判別可能です。この結果、引用文献1の制御処理と比較して、瞬間的な圧力過渡現象をより確実に検出することが可能であり、最大圧力又は最小圧力のほか、「圧力過渡現象中に測定された圧力測定値から得られる・・・変数」を測定及び記録することができます。」

(2)検討
上記「6 判断」の「(1)相違点1について」において述べたように、スパイクを検出する手法として閾値を用いることは、当業者であれば通常検討すべき手法の一つにすぎない。また、上記「6 判断」の「(4)相違点4について」において述べたように、引用例1には「スパイクのタイミング、大きさ、幅、波形」などのパラメータを用いて診断を行うことも記載されており、審判請求人の主張は採用できない。


8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-27 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-14 
出願番号 特願2010-536176(P2010-536176)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三田村 陽平  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 中塚 直樹
関根 洋之
発明の名称 プロセス流体圧力トランスミッタの動作方法  
代理人 生川 芳徳  
代理人 田中 洋子  
代理人 特許業務法人 津国  
代理人 小國 泰弘  
代理人 三宅 俊男  
代理人 小澤 圭子  
代理人 津国 肇  
代理人 柴田 明夫  
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