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審決分類 |
審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C07D |
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管理番号 | 1310418 |
審判番号 | 不服2014-10302 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-03 |
確定日 | 2016-01-27 |
事件の表示 | 特願2010-228956「新規の化合物、それを含有する医薬組成物、およびその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年2月24日出願公開、特開2011-37881〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、2003年7月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年7月9日(US)米国)を国際出願日とする特願2004-520132号の一部を平成22年10月8日に新たな特許出願としたものであって、平成22年11月8日に手続補正書が提出され、平成24年11月30日付けで拒絶理由が通知され、平成25年6月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年1月30日付けで拒絶査定がされ、同年6月3日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに手続補正書が提出され、同年7月2日に審判請求書を補正する手続補正書が提出され、前置審査において、同年9月18日付けで応対記録が作成されるとともに拒絶理由が通知され、それに対して応答がされなかったものである。 なお、この出願から、平成25年6月4日に特願2013-117677号が分割出願されている。 第2 平成26年6月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年6月3日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 当審補正 平成26年6月3日付けの手続補正(以下「当審補正」という。)は、補正前の請求項1である 「式: [式中 R^(1)=Hであり、 R^(2)=-OH、-OR^(5)、-OCH_(2)C(O)R^(5)、-OCH_(2)C(O)OR^(5)、-OC(O)R^(5)、-OC(O)OR^(5)、-OC(O)NHNH-R^(5)、-OC(O)NR^(5)R^(6) または-OCH_(2)C(O)NHR^(5) であり、ここで、R^(5) 及びR^(6) は、各々、独立して、H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、ここでR^(5) 及びR^(6) が、各々、場合によりハロゲン原子を含有してもよく; R^(3)=HまたはC_(1)-C_(20)アルキルであり; R^(4)=C_(1)-C_(20)アルキル、アルケニルまたはアリールアルキルであり; 但し、R^(2) が-OH、-OCH_(3)、または-OC(O)CF_(3) であり、R^(3) が-CH_(3) である場合、R^(4) は-CH_(2)-(C_(6)H_(5))、または-CH=CH-CH_(3) ではなく、 さらに、R^(3) が-CH_(2)-(C_(6)H_(5))である場合、R^(4) は-CH_(3) または-CH_(2)CH_(3) ではない]の化合物。」 を、 「式: [式中 R^(1)=Hであり、 R^(2)=-OH、-OR^(5)、-OCH_(2)C(O)R^(5)、-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt、-OCH_(2)C(O)OtBu、-OC(O)R^(5)、-OC(O)OR^(5)、-OC(O)NHNH-R^(5)、-OC(O)NR^(5)R^(6) または-OCH_(2)C(O)NHR^(5) であり、ここで、R^(5) 及びR^(6) は、各々、独立して、H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、ここでR^(5) 及びR^(6) が、各々、場合によりハロゲン原子を含有してもよく; R^(3)=-CH_(3) であり; R^(4)=C_(1)-C_(20)アルキル、アルケニルまたはアリールアルキルであり; 但し、R^(2) が-OH、-OCH_(3)、または-OC(O)CF_(3) であり、R^(3) が-CH_(3) である場合、R^(4) は-CH_(2)-(C_(6)H_(5))、または-CH=CH-CH_(3) ではない]の化合物。」 とする補正を含んでいる(審決注:補正箇所に下線を付した。)。 2 補正の適否 当該補正により、請求項1において式I の化合物におけるR^(2) の選択肢を「R^(2)=-OH、-OR^(5)、-OCH_(2)C(O)R^(5)、-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt、-OCH_(2)C(O)OtBu、-OC(O)R^(5)、-OC(O)OR^(5)、-OC(O)NHNH-R^(5)、-OC(O)NR^(5)R^(6) または-OCH_(2)C(O)NHR^(5) であり、ここで、R^(5) 及びR^(6) は、各々、独立して、H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、ここでR^(5) 及びR^(6) が、各々、場合によりハロゲン原子を含有してもよく」とする補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(この出願は外国語書面出願であるので、その外国語書面の明細書、特許請求の範囲又は図面の翻訳文(以下、合わせて「翻訳文等」という。))に記載した事項の範囲内においてするものであるかを検討する。 なお、分割された出願であるこの出願の原出願は国際特許出願に基づくものであり、この出願の上記の翻訳文等は、原出願の国際出願日における国際特許出願の明細書、請求の範囲及びの図面の翻訳文とを比べると、原出願の明細書の翻訳文では末尾の段落【0163】に記載されていた「図面の簡単な説明」がこの出願の明細書の翻訳文では段落【0035】に挿入され、原出願の明細書の翻訳文の段落番号【0035】?【0162】の内容がこの出願の明細書の翻訳文では段落【0036】?【0163】として記載されている他は、同一である。 ここでは、上記補正に係る技術的事項が、翻訳文等に記載されていたといえるか、又は翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において新たな技術的事項を導入するものではないか、との観点で検討する。 ア 翻訳文等の記載 翻訳文等には、式Iの化合物の化学構造、式Iの化合物と共通する骨格を有するが置換基の組合せが異なる化合物である式II?IVの化合物の化学構造、及びこれらの化合物の薬理活性に関し、以下の事項が記載されている。 a 式Iの化合物の化学構造に関する特許請求の範囲の記載 (a)請求項1?8に以下の記載がある。 「【請求項1】式: [式中 R^(1)=H R^(2)=-OH、-OR^(5)、-OCH_(2)C(O)R^(5)、-OCH_(2)C(O)NHR^(5)、-OC(O)R^(5)、-OC(O)OR^(5)、-OC(O)NHNH-R^(5)、または-OC(O)NR^(5)R^(6) であり、ここで、R^(5) がH、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、ここでR^(5) が場合によりハロゲン原子を含有してもよく; R^(3) およびR^(4) は同じであるかもしくは相互に異なり、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり; 但し、R^(2) が-OH、-OCH_(3)、または-OC (O)CF_(3) であり、R^(3) が-CH_(3) である場合、R^(4) は-CH_(2)CH_(2)OH、-CH_(2)-(C_(6)H_(5))、または-CH=CH-CH_(3) ではなく、 さらに、R^(3) が-CH_(2)-(C_(6)H_(5))である場合、R^(4) は-CH_(3) または-CH_(2)CH_(3) ではない]の化合物。 【請求項2】R^(5) が・・・である、請求項1に記載の化合物。 【請求項3】R^(5) が・・・である、請求項2に記載の化合物。 【請求項4】R^(3) およびR^(4) が・・・である、請求項1に記載の化合物。 【請求項5】R^(3) およびR^(4) が・・・である、請求項4に記載の化合物。 【請求項6】R^(3) が・・・である、請求項1に記載の化合物。 【請求項7】R^(4) が・・・である、請求項1に記載の化合物。 【請求項8】前記化合物が よりなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。」(請求項1?8) (b)上記(a)によれば、請求項1には、一般式である式Iにおいて、R^(2) の選択肢が-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt又は-OCH_(2)C(O)OtBuであってもよい、という技術的事項は、記載されていない。 一方、請求項8には、34個の化合物の具体的な化学構造が記載されているところ、式IにおけるR^(2) に対応する位置の置換基が、 -OCH_(2)C(O)OHであるものが6段目の1?3番目に、 -OCH_(2)C(O)OEtであるものが3段目の3?4番目に、 -OCH_(2)C(O)OtBuであるものが5段目の2?4番目に、 合計8個、記載されている。何れも式IのR^(1) に対応する位置はHであり、R^(3) に対応する位置の置換基は-CH_(3) であるが、R^(4) に対応する位置の置換基は、3個示されているものはこの順に-(CH_(2))_(7)CH_(3)(n-オクチル基)、-(CH_(2))_(5)CH_(3)(n-へキシル基)、-CH_(2)-(C_(6)H_(5))(ベンジル基)であり、2個示されているものはこの順に前二者である。 b 式II?IVの化合物の化学構造に関する特許請求の範囲の記載 (a)請求項9?13に式IIの化合物に係る発明が、請求項14?15に式IIIの化合物に係る発明が、請求項16?17に式IVの化合物を含む医薬組成物に係る発明が、それぞれ、以下のように記載されている。 「【請求項9】式II: [式中 R^(6)=C_(2)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール、-CHR^(10)OR^(11)、-CO(O)R^(10)、-C(O)NR^(10)R^(11)、-CH_(2)C(O)R^(10)、または-CH_(2)C(O)NHR^(10) であり、ここでR^(10) およびR^(11) が相互に独立して、H、C_(1)-C_(10)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、場合によりハロゲン原子を含有するが、R^(6) はジ-、トリ-、またはテトラ-アルキル置換フェニルではなく、 R^(7)=-OH、-OR^(12)、-OCH_(2)C(O)R^(12)、-OCH_(2)C(O)NHR^(12)、-OC(O)R^(12)、-OC(O)OR^(12)、OC(O)NHNH-Rまたは-OC(O)NR^(12)R^(13) であり、ここでR^(12) およびR^(13) が相互に独立して、H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、ここでR^(12) およびR^(13) が場合によりハロゲン原子を含有してもよく; R^(8) およびR^(9) は同じであるかもしくは相互に異なり、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、 但し、 R^(6) がエチルである場合、R^(8) およびR^(9) が同じでないならば、R^(8) またはR^(9) はエチル、-CH_(2)COOH、-CH_(2)C(O)NH_(2)、-CH_(2)-(C_(6)H_(5))ではないが、R^(6) がエチルであってもR^(8) およびR^(9) が同じであり得、 R^(6) がフェニルであり、R^(7) が-OHである場合、R^(8) およびR^(9) は同時に-CH_(3) および-プロフェニルではあり得ず、 R^(6) がフェニルである場合、R^(8) およびR^(9) は同時に-CH_(3) または-CH_(2)-(C_(6)H_(5))であり得ない]の化合物。 【請求項10】R^(10) が・・・である、請求項9に記載の化合物。 【請求項11】R^(8) が・・・である、請求項9に記載の化合物。 【請求項12】R^(9) が・・・である、請求項9に記載の化合物。 【請求項13】前記化合物が・・・よりなる群から選択される、請求項9に記載の化合物。」 「【請求項14】式III: [式中 R^(14)=-C(O)R^(18) であり、ここでR^(18) がH、C_(1)-C_(10)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、場合によりハロゲン原子を含有し、 R^(15)=-OH、-OR^(19)、-OCH_(2)C(O)R^(19)、-OCH_(2)C(O)NHR^(19)、-OC(O)R^(19)、-OC(O)OR^(19)、-OC(O)NHNH-R^(19)、または-OC(O)NR^(19)R^(20) であり、ここでR^(19) およびR^(20) が相互に独立して、H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、ここでR^(19) およびR^(20) が相互に場合によりハロゲン原子を含有してもよく; R^(16) およびR^(17) は同じであるかもしくは相互に異なり、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、 但し、 R^(14) が-C(O)CH_(3) であり、R^(16) およびR^(17) が同一でない場合、R^(16) またはR^(17) のいずれもゲラニル、p-フルオロベンジル、シンナミル、ファルネシル、メチル、または-CH_(2)-(C_(6)H_(5))ではなく、 R^(14) が-C(O)C_(6)H_(5) である場合、R^(16) またはR^(17) のいずれもメチルではない]の化合物。 【請求項15】前記化合物が・・・よりなる群から選択される、請求項14に記載の化合物。」 「【請求項16】医薬希釈剤と、 式IV: [式中 R^(21)=H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール、-CH_(2)OR^(25)、-C(O)R^(25)、-CO(O)R^(25)、-C(O)NR^(25)R^(26)、-CH_(2)C(O)R^(25)、または-CH_(2)C(O)NHR^(25) であり、ここでR^(25) およびR^(26) が相互に独立して、H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、場合により1個もしくはそれ以上のハロゲン原子を含有し、 R^(22)=-OH、-OR^(27)、-OCH_(2)C(O)R^(27)、-OCH_(2)C(O)NHR^(27)、-OC(O)R^(27)、-OC(O)OR^(27)、OC(O)NHNH-R^(27)、または-OC(O)NR^(27)R^(28) であり、ここでR^(27) およびR^(28) が相互に独立して、H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、ここでR^(27) およびR^(28) が場合によりハロゲン原子を含有してもよく; R^(23) およびR^(24) は同じであるかもしくは相互に異なり、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールである]の化合物と、 を含む医薬組成物。 【請求項17】前記化合物が よりなる群から選択される、請求項16に記載の医薬組成物。」 (b)式II?IVの化合物は、式Iの化合物と共通する骨格を有するが置換基の組合せが異なる化合物である。 なお、式IVは、式Iと、とり得る置換基の範囲が一部重複し、請求項17には、式IVに該当する化合物として、上記aに示した式Iについて請求項7に多数の化合物が列挙されていたように、多数の化合物が列挙されていて、式IにおけるR^(2) に対応する位置の置換基R^(22) が-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt又は-OCH_(2)C(O)OtBuであるものも幾つか記載されているが(3段目、5段目、6段目)、何れも、上記aの請求項7に記載された化合物である。 c 式Iの化合物の化学構造に関する明細書の記載 翻訳文等の段落【0037】?【0041】には、式Iの化合物の化学構造について、概ね、請求項1、2、6、7に対応する記載がされているが、R^(5) の選択肢が「アルキニル」であることは記載されていない。 d 式II?IVの化合物の化学構造に関する明細書の記載 翻訳文等の段落【0042】?【0047】には、式II?IVの化合物の化学構造について、概ね、請求項9?12、14、16に対応する記載がされている。 e 化合物及び中間体の合成例の記載 (a)翻訳文等の段落【0054】?【0126】には、「化合物の化学合成」の標題のもとに、式I?IVの個別の化合物及び中間体の合成例(化合物1?76の合成例)が記載されている。 (b)上記a(b)に示した請求項8の8個の化合物も、その合成例が以下の化合物番号で記載されている。 -OCH_(2)C(O)OHであるもの:順に、化合物53、54、55 -OCH_(2)C(O)OEtであるもの:順に、化合物39、40 -OCH_(2)C(O)OtBuであるもの:順に、化合物50、51、52 しかし、それ以外には、式IにおけるR^(2) に対応する位置の置換基が-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt又は-OCH_(2)C(O)OtBuである化合物の合成例は、記載されていない。 f 化合物の薬理活性の記載 (a)翻訳文等の段落【0128】?【0151】には、「生物学的および生化学的方法」の標題のもとに、各種の薬理活性の測定方法が記載されている。段落【0152】?【0163】には、「生物学的試験の結果」の標題のもとに、表の形式で、42個の個別の化合物の、化学構造、化合物番号と、以下の薬理活性の一部又は全部のデータが記載されている。 FAS酵素活性(測定方法は段落【0130】?【0132】) 総脂質への[^(14)C]酢酸取込み(同段落【0140】?【0143】) XTT細胞毒性(同段落【0136】?【0139】) クリスタルバイオレット細胞増殖アッセイ(同段落【0133】?【0135】) カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-1(CPT-1)アッセイ(同段落【0144】?【0145】) 減量スクリーン(同段落【0146】?【0147】) 抗菌活性(同段落【0148】?【0150】) (b)上記a(b)に示した請求項8の8個の化合物については、化合物40、39、53についてのみ、薬理活性のデータが記載されている。これらのR^(2) とR^(4) の組合せは、順に、-OCH_(2)C(O)OEtとn-へキシル基、-OCH_(2)C(O)OEtとn-オクチル基、-OCH_(2)C(O)OHとn-オクチル基である。 g 化合物の合成スキームの記載 (a)図面の図1?図10には、化合物の合成のためのスキーム1?スキーム10が記載されている。 (b)スキーム4の枠の下の3段目は、式Iにおいて、R^(2) が-OCH_(2)C(O)OEt、R^(4) がn-オクチル基又はn-へキシル基であるもの、同7段目は、R^(2) が-OCH_(2)C(O)OtBu、R^(4) がn-オクチル基又はn-へキシル基であるもの、スキーム5の1段目は、R^(2) が-OCH_(2)C(O)OH、R^(4) がn-オクチル基又はn-へキシル基であるもの、である。 h 特定の化合物の減量スクリーンの結果の記載 図面の図11には、化合物21及び44の減量スクリーンの結果がグラフにより記載されている(測定方法は段落【0146】?【0147】)。 化合物21及び44は、式IにおけるR^(2) に対応する位置の置換基が-OHである化合物である。 i 特定の化合物の抗腫瘍活性のインビボ試験の結果の記載 図面の図12には、化合物36の抗腫瘍活性のインビボ試験の結果がグラフにより記載されている(測定方法は段落【0151】)。 化合物36は、式IにおけるR^(2) に対応する位置の置換基が-OCH_(3)(メトキシ基)である化合物である。 イ 検討 (ア)まず、上記補正に係る技術的事項が、翻訳文等に記載されていたといえるかを検討する。 式Iは、一群の化合物を、一般式で記載したものである。 上記アによれば、一般式である式Iにおいて、R^(2) の選択肢が-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt又は-OCH_(2)C(O)OtBuであってもよい、という技術的事項は、翻訳文等には、明細書にも、特許請求の範囲にも、図面にも、記載されていない。 (イ)次に、上記補正に係る技術的事項が、翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において新たな技術的事項を導入するものではないといえるかを検討する。 上記補正により、式IのR^(2) の選択肢が-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt又は-OCH_(2)C(O)OtBuであってもよい、となると、請求項1の式Iに該当する個別の化合物として、新たに、 「式: [式中 R^(1)=Hであり、 R^(2)=-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt、-OCH_(2)C(O)OtBuであり; R^(3)=-CH_(3) であり; R^(4)=C_(1)-C_(20)アルキル、アルケニルまたはアリールアルキルであり]の化合物。」 を満足する個別の化合物が含まれることとなる。 しかし、上記アによれば、翻訳文等の、化合物の化学構造及び薬理活性に関する全ての記載を参酌しても、式IにおけるR^(2) に対応する位置の置換基が-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt又は-OCH_(2)C(O)OtBuである化合物として、翻訳文等に記載されているといえるのは、せいぜい、式IにおけるR^(4) に対応する位置の置換基がn-オクチル基、n-へキシル基又はベンジル基であるものである。式IにおけるR^(4) に対応する位置の置換基がそれ以外のC_(1)-C_(20)アルキルであったり、アルケニルであったり、それ以外のアリールアルキルである化合物が導かれるとはいえない。 なお、式II、式IIIの記載は、R^(6)、R^(14) がH(水素)でなく、上記含まれることになった個別化合物を裏付ける記載とならない。式IVについても、上記含まれることになった個別化合物を裏付ける記載とならないことは同様である。 (ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、上記補正に係る技術的事項が、翻訳文等に記載されていたといえず、また、翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において新たな技術的事項を導入するものではないともいえないので、請求項1についての補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものということはできない。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、請求項1についての補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてするものということはできないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、当審補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明 平成26年6月3日付けの手続補正は上記第2に記載されたとおり却下されたので、この出願の発明は、平成25年6月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「式: [式中 R^(1)=Hであり、 R^(2)=-OH、-OR^(5)、-OCH_(2)C(O)R^(5)、-OCH_(2)C(O)OR^(5)、-OC(O)R^(5)、-OC(O)OR^(5)、-OC(O)NHNH-R^(5)、-OC(O)NR^(5)R^(6) または-OCH_(2)C(O)NHR^(5) であり、ここで、R^(5) 及びR^(6) は、各々、独立して、H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、ここでR^(5) 及びR^(6) が、各々、場合によりハロゲン原子を含有してもよく; R^(3)=HまたはC_(1)-C_(20)アルキルであり; R^(4)=C_(1)-C_(20)アルキル、アルケニルまたはアリールアルキルであり; 但し、R^(2) が-OH、-OCH_(3)、または-OC(O)CF_(3) であり、R^(3) が-CH_(3) である場合、R^(4) は-CH_(2)-(C_(6)H_(5))、または-CH=CH-CH_(3) ではなく、 さらに、R^(3) が-CH_(2)-(C_(6)H_(5))である場合、R^(4) は-CH_(3) または-CH_(2)CH_(3) ではない]の化合物。」 第4 原査定の理由 原査定の理由である平成24年11月30日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由は、理由1、2、4及び5であり、その理由2は、「平成22年11月8日付けでした手続補正は・・・特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない」というものであり、請求項1の補正について、式IのR^(2) の選択肢に-OCH_(2)C(O)OR^(5) を追加したことを指摘し、国際特許出願の明細書、請求の範囲又は図面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでないことを根拠とするものである。 第5 当審の判断 当審は、原査定の理由のとおり、請求項1についての平成25年6月4日付けの補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないと判断する。 その理由は、以下のとおりである。 (1)平成22年11月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1である 「式: [式中 R^(1)=H R^(2)=-OH、-OR^(5)、-OCH_(2)C(O)R^(5)、-OCH_(2)C(O)NHR^(5)、-OC(O)R^(5)、-OC(O)OR^(5)、-OC(O)NHNH-R^(5)、または-OC(O)NR^(5)R^(6) であり、ここで、R^(5) がH、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、ここでR^(5) が場合によりハロゲン原子を含有してもよく; R^(3) およびR^(4) は同じであるかもしくは相互に異なり、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり; 但し、R^(2) が-OH、-OCH_(3)、または-OC (O)CF_(3) であり、R^(3) が-CH_(3) である場合、R^(4) は-CH_(2)CH_(2)OH、-CH_(2)-(C_(6)H_(5))、または-CH=CH-CH_(3) ではなく、 さらに、R^(3) が-CH_(2)-(C_(6)H_(5))である場合、R^(4) は-CH_(3) または-CH_(2)CH_(3) ではない]の化合物。」 を 「式: [式中 R^(1)=Hであり、 R^(2)=-OH、-OR^(5)、-OCH_(2)C(O)R^(5)、-OCH_(2)C(O)OR^(5)、-OC(O)R^(5)、-OC(O)OR^(5)、-OC(O)NHNH-R^(5)、または-OC(O)NR^(5)R^(6) であり、ここで、R^(5) 及びR^(6) は、各々、独立して、H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、ここでR^(5) 及びR^(6) が、各々、場合によりハロゲン原子を含有してもよく; R^(3)=H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり; R^(4)=C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり; 但し、R^(2) が-OH、-OCH_(3)、または-OC(O)CF3 であり、R^(3) が-CH_(3) である場合、R^(4) は-CH_(2)-(C_(6)H_(5))、または-CH=CH-CH_(3) ではなく、 さらに、R^(3) が-CH_(2)-(C_(6)H_(5))である場合、R^(4) は-CH_(3) または-CH_(2)CH_(3) ではない]の化合物。」 とする補正を含んでいる(審決注:補正箇所に下線を付した。)。 (2)当該補正により、請求項1において式 の化合物におけるR^(2) の選択肢を「R^(2)=-OH、-OR^(5)、-OCH_(2)C(O)R^(5)、-OCH_(2)C(O)OR^(5)、-OC(O)R^(5)、-OC(O)OR^(5)、-OC(O)NHNH-R^(5)、または-OC(O)NR^(5)R^(6) であり、ここで、R^(5) 及びR^(6) は、各々、独立して、H、C_(1)-C_(20)アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールであり、ここでR^(5) 及びR^(6) が、各々、場合によりハロゲン原子を含有してもよく」と、「-OCH_(2)C(O)OR^(5)」を追加する補正がされた。そして、その後の平成25年6月4日付けの手続補正により補正された本願発明(上記第3参照)においても、「-OCH_(2)C(O)OR^(5)」は追加されたままである。そこで、ここでは、R^(2) の選択肢に「-OCH_(2)C(O)OR^(5)」を追加する補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(この出願は外国語書面出願であるので、その外国語書面の明細書、特許請求の範囲又は図面の翻訳文(以下、合わせて「翻訳文等」という。))に記載した事項の範囲内においてするものであるかを検討する。。 なお、分割された出願であるこの出願の原出願は国際特許出願に基づくものであり、この出願の上記の翻訳文等は、原出願の国際出願日における国際特許出願の明細書、請求の範囲及びの図面の翻訳文とを比べると、原出願の明細書の翻訳文では末尾の段落【0163】に記載されていた「図面の簡単な説明」がこの出願の明細書の翻訳文では段落【0035】に挿入され、原出願の明細書の翻訳文の段落番号【0035】?【0162】の内容がこの出願の明細書の翻訳文では段落【0036】?【0163】として記載されている他は、同一である。 したがって、翻訳文等に基づく検討と、原出願の国際出願日における国際特許出願の明細書、請求の範囲及びの図面の翻訳文に基づく検討とでは、実質的に同じ検討をしたことになる。 ここでは、上記補正に係る技術的事項が、翻訳文等に記載されていたといえるか、又は翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において新たな技術的事項を導入するものではないか、との観点で検討する。 ア 翻訳文等の記載 上記第2の2アに記載したとおりである。 イ 検討 (ア)まず、上記補正に係る技術的事項が、翻訳文等に記載されていたといえるかを検討する。 式Iは、一群の化合物を、一般式で記載たものである。 上記第2の2イ(ア)で検討したとおり、上記アによれば、一般式である式Iにおいて、R^(2) の選択肢が-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt又は-OCH_(2)C(O)OtBuであってもよい、という技術的事項は、翻訳文等には、明細書にも、特許請求の範囲にも、図面にも、記載されていない。 そして、CH_(2)C(O)OR^(5) は、-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt又は-OCH_(2)C(O)OtBuの上位概念であるところ、一般式である式Iにおいて、R^(2) の選択肢がCH_(2)C(O)OR^(5) であってもよい、という技術的事項も、同様に、翻訳文等には、明細書にも、特許請求の範囲にも、図面にも、記載されていない。 (イ)次に、上記補正に係る技術的事項が、翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において新たな技術的事項を導入するものではないといえるかを検討する。 上記第2の2イ(イ)で検討したとおり、式IにおけるR^(2) の選択肢が-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt又は-OCH_(2)C(O)OtBuであって、式IにおけるR^(4) に対応する位置の置換基がn-オクチル基又はn-へキシル基以外のC_(1)-C_(20)アルキルであったり、アルケニルであったり、ベンジル基以外のアリールアルキルである化合物が翻訳文等の記載から導かれるとはいえない。 そして、-CH_(2)C(O)OR^(5) は、-OCH_(2)C(O)OH、-OCH_(2)C(O)OEt又は-OCH_(2)C(O)OtBuの上位概念であって、この3種以外の置換基も含むのであるから、式IにおけるR^(2) の選択肢が-CH_(2)C(O)OR^(5) であって、式IにおけるR^(4) に対応する位置の置換基がn-オクチル基又はn-へキシル基以外のC_(1)-C_(20)アルキルであったり、アルケニルであったり、ベンジル基以外のアリールアルキルである化合物は、なおさら、翻訳文等の記載から導かれるとはいえない。 (ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、上記補正に係る技術的事項が、翻訳文等に記載されていたといえず、また、翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において新たな技術的事項を導入するものではないともいえないので、請求項1についての補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものということはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-31 |
結審通知日 | 2015-09-01 |
審決日 | 2015-09-15 |
出願番号 | 特願2010-228956(P2010-228956) |
審決分類 |
P
1
8・
562-
Z
(C07D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 砂原 一公 |
特許庁審判長 |
井上 雅博 |
特許庁審判官 |
瀬良 聡機 中田 とし子 |
発明の名称 | 新規の化合物、それを含有する医薬組成物、およびその使用方法 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 大貫 敏史 |