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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1310436
審判番号 不服2014-16554  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-21 
確定日 2016-01-27 
事件の表示 特願2009-216548号「手術器具のメモリに保存されるアクセス用データ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 8日出願公開、特開2010- 75695号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成21年9月18日(パリ条約による優先権主張2008年9月23日 米国)の出願であって、平成25年9月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月16日に意見書とともに特許請求の範囲について手続補正書が提出されたが、平成26年4月14日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成26年8月21日に本件審判の請求がされると同時に特許請求の範囲についてさらに手続補正書が提出され、その後同年11月4日に上申書が提出されたものである。

第2 平成26年8月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年8月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
平成26年8月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。

(1)<補正前の請求項1>
「手術用切断/結合器具に配置されたセンサからのデータを取り込む方法であって、前記手術用切断/結合器具は、制御ユニットと、シャフトと、前記シャフトに連結しているエンドエフェクタであって、旋回可能に連結され、対向し、組織をクランプする第1および第2のジョー部材、及び、作動されると前記エンドエフェクタを長さ方向に横切るように移動する切断器具を含むエンドエフェクタと、を備えている方法において、
前記手術用切断/結合器具を伴う手術手技の間に、前記エンドエフェクタ内の切断器具位置センサからのデータを、前記手術用切断/結合器具の前記制御ユニットの記憶装置内に保存することであって、前記切断器具位置センサは、前記エンドエフェクタ内の前記切断器具の位置を検出し、前記制御ユニットと通信するものである、前記切断器具位置センサからの前記データを前記記憶装置内に保存することと、
前記手術手技の後、前記制御ユニットと遠隔コンピュータ装置との間にデータリンクを確立することと、
前記手術用切断/結合器具の前記制御ユニットの前記記憶装置に保存された前記切断器具位置センサからの前記データを前記遠隔コンピュータ装置へダウンロードすることと、
を含む、方法。」

(2)<補正後の請求項1>
「手術用切断/結合器具に配置されたセンサからのデータを取り込む方法であって、前記手術用切断/結合器具は、制御ユニットと、シャフトと、前記シャフトに連結しているエンドエフェクタであって、旋回可能に連結され、対向し、組織をクランプする第1および第2のジョー部材、及び、作動されると前記エンドエフェクタを長さ方向に横切るように移動する切断器具を含むエンドエフェクタと、を備えている方法において、
前記手術用切断/結合器具を伴う手術手技の間に、前記エンドエフェクタ内の切断器具位置センサからのデータを、前記手術用切断/結合器具の前記制御ユニットの記憶装置内に保存することであって、前記切断器具位置センサは、前記エンドエフェクタ内の前記切断器具の位置を検出し、前記制御ユニットと通信するものである、前記切断器具位置センサからの前記データを前記記憶装置内に保存することと、
前記手術手技の後、前記制御ユニットと遠隔コンピュータ装置との間にデータリンクを確立することと、
前記手術用切断/結合器具の前記制御ユニットの前記記憶装置に保存された前記切断器具位置センサからの前記データを前記遠隔コンピュータ装置へダウンロードすることと、
を含み、
前記切断器具位置センサは、前記切断器具の全移動範囲における前記切断器具が現存する位置を検出する、方法。」

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1の「切断器具位置センサ」が検出する「切断器具の位置」ついて、「切断器具の全移動範囲における切断器具が現存する位置を検出する」ものである点を限定するものであるから、特許請求の範囲の限定的減縮(特許法17条の2第5項第2号)を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記第2 1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「方法」であると認める。

(2)引用文献の記載事項及び認定事項
これに対して、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2007-229448号公報(以下、「引用文献1」という)には、「記録機能を備えた手術器具」について、図面とともに次のア?エの記載があり、オの認定事項が認められる。

ア 「【0071】
図41?図43は、機械的に作動するエンドカッター、具体的には、ハンドル6、シャフト8、およびエンドエフェクタ12の例示的な実施形態を例示している。機械的に作動するエンドカッターのさらなる詳細については、参照して本明細書に組み入れる米国特許出願第11/052,632号(名称:「発射動作の引き戻しを自動的に終了する多ストローク発射機構を含む手術用ステープル留め器具(Surgical Stapling Instrument Incorporating A Multi-Stroke Firing Mechanism With Automatic End Of Firing Travel Retraction)」)に記載されている。図41を参照すると、エンドエフェクタ12は、アンビル面1002によって、ハンドル6(図41には不図示)からの閉じる運動に応答する。このアンビル面1002は、垂直に延びるアンビルタブ27の近位側の横方向に延びるアンビルピボットピン25を含むアンビル近位端部1004に連結されている。アンビルピボットピン25は、ステープル溝型部材22における腎臓形の開口1006内を移動して、溝型部材22に対してアンビル24を開閉する。タブ27は、閉鎖チューブ1005の遠位端部1008のタブ開口45内に延びる曲げタブ1007に係合する。閉鎖チューブ1005は、アンビル面1002を押す遠位縁1008まで遠位側に延びている。したがって、閉鎖チューブ1005が、その開いた位置から近位側に移動すると、閉鎖チューブ1005の曲がりタブ1007が、アンビルタブ27を近位側に引張り、アンビルピボットピン25が、ステープル溝型部材22の腎臓形の開口1006に沿って移動し、アンビル24が、近位側に移動しながら開いた位置まで上方に回転する。閉鎖チューブ1005が遠位側に移動すると、タブ開口45の曲がりタブ1007が、アンビルタブ27から解放され、遠位縁1008がアンビル面1002を押して、アンビル24を閉じる。
【0072】
図41を引き続き参照すると、シャフト8およびエンドエフェクタ12は、発射ロッド1010の発射運動に応答する構成要素も含む。具体的には、発射ロッド1010は、長手方向の凹部1014を有する発射溝部材1012に回転可能に係合する。発射溝部材1012は、発射ロッド1010の長手方向の運動に直接応答してフレーム1016内を長手方向に移動する。閉鎖チューブ1005の長手方向スロット1018は、ハンドル6の左右のハンドル外面部品61、62(図41には不図示)に機能的に結合する。閉鎖チューブ1005の長手方向スロット1018の長さは、ハンドル部品61、62に対して長手方向に移動して発射動作および開閉動作を可能にする十分な長さである。ハンドル部品61、62のカップリングは、フレーム1016の長手方向スロット1020を介して進み、フレーム溝部材1012の長手方向凹部1014にスライド可能に係合している。
【0073】
フレーム溝部材1012の遠位端部は、フレーム1016内、具体的にはガイド1024内を移動してエンドエフェクタ12内のナイフ32を遠位側に延出させる発射バー1022の近位端部に取り付けられている。エンドエフェクタ12は、ナイフ32によって作動されるステープルカートリッジ34を含む。ステープルカートリッジ34は、ステープルカートリッジ本体1030、ウエッジスレッドドライバ33、ステープルドライバ1034、およびステープル1036を保持するトレー1028を有する。ウエッジスレッドドライバ33は、カートリッジトレー1028とカートリッジ本体1030との間に位置する発射凹部(不図示)内を長手方向に移動することを理解されたい。ウエッジスレッドドライバ33は、ステープルドライバ1034に接触してこのステープルドライバ1034を上方に持ち上げ、ステープル1036を発射させるカム面を提供する。ステープルカートリッジ本体1030は、ナイフ32の通路となる近位側に開口した垂直スロット1031をさらに含む。具体的には、切断面1027が、ステープル留めされた組織を切断するためにナイフ32の遠位端部に沿って設けられている。」

イ 「【0091】
手術器具10の様々な実施形態は、使用中に、1回または複数回、器具の状態を記録することができる。図44は、器具10の状態を記録するためのシステム2000のブロック図を示している。システム2000は、例えば図1?図40を参照して説明した電動発射または電動補助発射を行う器具10の実施形態、および図41?図43を参照して説明したような発射が機械式に作動される器具10の実施形態で具現することができる。
【0092】
システム2000は、器具の状態を検出するために様々なセンサ2002、2004、2006、2008、2010、2012を含むことができる。これらのセンサは、例えば、器具10の表面または内部に設けることができる。様々な実施形態では、これらのセンサは、システム2000用に出力を供給する専用センサとしても良いし、器具10の他の機能も果たす兼用センサとしても良い。例えば、上記したセンサ110、130、142は、システム2000に出力を供給するように構成されることができる。
【0093】
各センサは、詳細を後述するように、直接または間接的に信号を記録する記憶装置2001に信号を供給する。記憶装置2001は、センサの信号を記憶または記録できるあらゆる種類の装置とすることができる。例えば、記憶装置2001は、マイクロプロセッサ、電気的に消去可能プログラム可能ROM(EEPROM)、または任意の他の適当な記憶装置とすることができる。記憶装置2001は、センサによって供給される信号を任意の適当な方法で記録することができる。例えば、一実施形態では、記憶装置2001は、特定のセンサからの信号を、その信号の状態が変化した時に記録することができる。別の実施形態では、記憶装置2001は、システム2000の状態、例えばシステム2000に含まれる全てのセンサからの信号を、任意のセンサからの信号の状態が変化した時に記録することができる。これにより、器具10の状態のスナップショットを提供することができる。様々な実施形態では、記憶装置2001および/またはセンサは、例えば1‐WIRE EEPROMなどのダラス・セミコンダクタ(DALLAS SEMICONDUCTOR)が販売する1‐WIREバス製品を含むように具現されることができる。」

ウ 「【0094】
様々な実施形態では、記憶装置2001は、外部からアクセスすることができ、コンピュータなどの外部装置が、記憶装置2001に記録された器具の状態にアクセスすることができる。例えば、記憶装置2001は、データポート2020を含むことができる。データポート2020は、あらゆる有線または無線通信プロトコル、例えばシリアルフォーマットまたはパラレルフォーマットなどに従って、保存された器具の状態を供給することができる。記憶装置2001はまた、出力ポート2220に加えてまたは代わりに、取外し可能な媒体2021も含むことができる。取外し可能な媒体2021は、器具10から取り外すことができるあらゆる種類の適当なデータ記憶装置とすることができる。例えば、取外し可能な媒体2021は、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)カード、コンパクトフラッシュ(COMPACTFLASH)カード、マルチメディア(MULTIMEDIA)カード、およびフラッシュメディア(FLASHMEDIA)カードなどのあらゆる適当な種類のフラッシュメモリを含むことができる。取外し可能な媒体2021は、例えば、携帯型ハードドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)などを含むあらゆる適当な種類のディスク型記憶装置も含むことができる。」

エ 「【0099】
ナイフ位置センサ2008が、ステープル溝型部材22内のナイフ32または切断面1027の位置を検出する。図47および図48は、図41に示されている機械的に作動するシャフト8およびエンドエフェクタ12に使用するのに適したナイフ位置センサ2008の実施形態を示している。このセンサ2008は、器具10の発射バー1022に結合された磁石2009を含む。コイル2011が、発射バー1022の周りに配置され、例えば、発射溝部材1012の長手方向の凹部1014(図41を参照)に沿って取り付けられることができる。ナイフ32および切断面1027が、ステープル溝型部材22内を往復運動すると、発射バー1022および磁石2009が、コイル2011内を前後に移動する。このコイルに対する運動により、ステープル溝型部材22内の切断縁1027、およびコイル内の発射ロッドの位置に比例した電圧がコイルに誘導される。この電圧は、例えば、アナログ/デジタル変換器2018を介して記憶装置2001に供給されることができる。」

オ 上記アの記載事項及び上記エの記載事項を、図41及び図48、図49に示された発射バー1022及びナイフ位置センサ2008の構造を併せて検討すると、図41に示される発射バー1022は、エンドエフェクタ12内を移動するものであって、この遠位端にナイフ32が配置される構造となっている。また、図48及び図49に示されるナイフ位置センサ2008は、発射バー1022に結合され、長さ方向に延びる磁石2009、及び、エンドエフェクタ12よりも近位側に設けられたコイル2011を有するものである。
そして、ナイフ32が、ステープル溝型部材22内を往復運動すると、コイル内の発射ロッド(注:発射バー1022の意味と解釈する。)の位置に比例した電圧がコイルに誘導されることで、ナイフ位置センサ2008は、ナイフ32の位置を検出するものと認められる。
また、ナイフ32が、ステープル溝型部材22内を往復運動するときの電圧が、記憶装置2001に供給されることから、記憶装置2001内に保存されるナイフ位置センサ2008からのデータは、ナイフ32/ステープル器具を伴う手術手技の間のデータが記憶装置2001に通信及び供給されて、記憶装置2001に保存されるものであるといえる。

上記記載事項ア?エ及び上記認定事項オを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて補正発明に照らして整理すると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認める(以下、「引用発明1」という。)。

「ナイフ32/ステープル器具に配置されたナイフ位置センサ2008からのデータを取り込む方法であって、前記ナイフ32/ステープル器具は、記憶装置2001と、シャフト8と、前記シャフト8に連結しているエンドエフェクタ12であって、旋回可能に連結され、対向し、組織をクランプするステープル溝型部材22およびアンビル24、及び、作動されると前記エンドエフェクタ12を長さ方向に横切るように移動するナイフ32を含むエンドエフェクタ12と、を備えている方法において、
前記ナイフ32/ステープル器具を伴う手術手技の間に、前記エンドエフェクタ12内のナイフ位置センサ2008からのデータを、前記ナイフ32/ステープル器具の前記記憶装置2001内に保存することであって、前記ナイフ位置センサ2008は、前記エンドエフェクタ12内の前記ナイフ32の位置を検出し、前記記憶装置2001と通信するものである、前記ナイフ位置センサ2008からの前記データを前記記憶装置2001内に保存することと、
前記記憶装置2001が備えるデータポート2020と外部装置との間に有線または無線の通信手段を設け、
前記ナイフ32/ステープル器具の前記記憶装置2001に保存された器具の状態のデータを外部装置に対して供給することができることと、
を含み、
前記ナイフ位置センサ2008は、発射バー1022に結合され、長さ方向に延びる磁石2009、及び、エンドエフェクタ12よりも近位側に設けられたコイル2011を有し、ナイフ32が、ステープル溝型部材22内を往復運動すると、コイル内の発射バーの位置に比例した電圧がコイルに誘導されることで、ナイフ位置センサ2008は、ナイフの位置を検出する、方法。」

(3)対比
補正発明と引用発明1とを対比すると以下のとおりである。
引用発明1の「ナイフ32/ステープル器具」は、その機能及び構成からみて、補正発明の「手術用切断/結合器具」に相当する。
また、以下同様に、それぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「ナイフ位置センサ2008」は「センサ」及び「切断器具位置センサ」に、「シャフト8」は「シャフト」に、「エンドエフェクタ12」は「エンドエフェクタ」に、「ステープル溝型部材22およびアンビル24」は「第1および第2のジョー部材」に、「記憶装置2001」は「記憶装置」に、「外部装置」は「遠隔コンピュータ装置」に、「有線または無線の通信手段を設け」は「データリンクを確立すること」に、「記憶装置2001に保存された器具の状態のデータを外部装置に対して供給する」は「記憶装置に保存された切断器具位置センサからのデータを遠隔コンピュータ装置へダウンロードする」に相当することも明らかである。
また、引用発明1の「ナイフ位置センサ2008は、発射バー1022に結合され、長さ方向に延びる磁石2009、及び、エンドエフェクタ12よりも近位側に設けられたコイル2011を有し、ナイフ32が、ステープル溝型部材22内を往復運動すると、コイル内の発射バーの位置に比例した電圧がコイルに誘導されることで、ナイフ位置センサ2008は、ナイフの位置を検出する」構成は、本願明細書の段落[0099]の記載及び図48の実施例に示されるセンサと、実質的に同じセンサの構造となっているから、補正発明の「切断器具位置センサ」と同様の機能を有するものと考えられる。そうすると、引用発明1の上記構成は、補正発明の「切断器具位置センサは、切断器具の全移動範囲における前記切断器具が現存する位置を検出する」に対応するということができる。

したがって、補正発明と引用発明1とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「手術用切断/結合器具に配置されたセンサからのデータを取り込む方法であって、前記手術用切断/結合器具は、シャフトと、前記シャフトに連結しているエンドエフェクタであって、旋回可能に連結され、対向し、組織をクランプする第1および第2のジョー部材、及び、作動されると前記エンドエフェクタを長さ方向に横切るように移動する切断器具を含むエンドエフェクタと、を備えている方法において、
前記手術用切断/結合器具を伴う手術手技の間に、前記エンドエフェクタ内の切断器具位置センサからのデータを、前記手術用切断/結合器具の前記記憶装置内に保存することであって、前記切断器具位置センサは、前記エンドエフェクタ内の前記切断器具の位置を検出し、前記切断器具位置センサからの前記データを前記記憶装置内に保存することと、
前記記憶装置と遠隔コンピュータ装置との間にデータリンクを確立することと、
前記記憶装置に保存された前記切断器具位置センサからの前記データを前記遠隔コンピュータ装置へダウンロードすることと、
を含み、
前記切断器具位置センサは、前記切断器具の全移動範囲における前記切断器具が現存する位置を検出する、方法。」

そして、補正発明と引用発明1とは、以下の3点で相違している。
<相違点1>
補正発明は、「制御ユニット」を備え、「制御ユニット」が「記憶装置」を備えるものであるのに対して、引用発明1は、「制御ユニット」に対応する構成を備えているのか不明である点。
<相違点2>
補正発明は、「記憶装置」の通信に関して、「記憶装置」を備える「制御ユニット」を介して通信がなされているのに対して、引用発明1は、記憶装置2001の通信について、通信の際に記憶装置2001と外部装置との間に介在する「制御ユニット」に対応する構成が存在するか否か不明である点。
<相違点3>
補正発明は、「手術手技の後」に、「切断器具位置センサからのデータを遠隔コンピュータ装置へダウンロード」しているのに対して、引用発明1は、データのダウンロードをするのが、「手術手技の後」であるか不明である点。

(4)相違点の検討
ア <相違点1>及び<相違点2>について
引用発明1の記憶装置2001も、データの保存や、センサ及び遠隔コンピュータと通信を行うものであるが、このような保存あるいは通信を行わせるために、何らか制御指令が出力されていることは技術常識からみて明らかであって、ナイフ32/ステープル器具は、記憶装置2001を制御するために、何らかの制御手段を有するものといえる。
そして、記憶装置及び制御手段は、一般にこれらを一体とした制御ユニットとして把握され得るものである(文献が必要であれば、特開2008-212637号公報の段落[0040]及び図12の制御ユニット300及びメモリ308の関係を参照。)から、データの保存や通信における制御対象としての記憶装置2001に対して、上位の概念として「制御ユニット」を設定することは、当業者にとって格別のものとは認められない。そして、通信の対象をこの上位の「制御ユニット」とするか、記憶装置2001とするかは単なる表現上の差異に過ぎないものといえる。

イ <相違点3>について
手術器具の使用状況の分析等のために、手術手技の後に記録されたデータに外部からアクセスすることは、従来周知の技術である(例えば、特開2005-135344号公報の特に段落[0017]、特開2008-86777号公報の特に段落[0035]-[0036]等を参照。)。
また、引用発明1の「記憶装置2001に保存された器具の状態のデータ」は、記載事項ウからみて、任意のタイミングで外部からアクセスされるものであるから、そのタイミングが「手術手技の後」であっても、当然にアクセスし得るものである。
してみると、引用発明1において、上記従来周知の技術を踏まえて、手術器具の使用状況の分析等を目的として、手術手技の後に、記憶装置2001に保存された器具の状態のデータを外部装置へダウンロードするようにすることは、当業者にとって容易になし得たものというべきである。

ウ 上申書における補正案について
請求人は、平成26年11月4日付け上申書において、補正発明における「切断器具」という特定事項をさらに「切断器具は、エンドエフェクタ内を移動する発射バーの遠位端に設けられたナイフを有し」と限定するとともに、「切断器具位置センサ」という特定事項をさらに「切断器具位置センサは、発射バーに結合され、長さ方向に延びる磁石、及び、エンドエフェクタよりも近位側に設けられたコイルを有し、前記切断器具位置センサは、ナイフの位置を検出する」と限定する補正案を提示している。補正案に法的根拠はないが、念のため検討する。
認定事項オで検討したとおり、引用発明1のナイフ32は、エンドエフェクタ12内を移動する発射バー1022の遠位端に設けられるものであり、ナイフ位置センサ2008は、発射バー1022に結合され、長さ方向に延びる磁石2009、及び、エンドエフェクタ12よりも近位側に設けられたコイル2011を有し、前記ナイフ位置センサ2008は、ナイフ32の位置を検出するものである。
よって、補正案のように補正したとしても、特許性を認めることはできず、結論に変わりはない。

エ 小括
補正発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5) むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件出願の発明について
1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明は、平成25年12月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本件出願の発明」という。)は、上記第2 1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「方法」である。

2 引用文献の記載事項及び認定事項
これに対して、原審の本件出願の発明に対する拒絶の理由に引用された特開2008-212637号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「制御ユニットと遠隔センサとの間で無線通信を行う外科器具」について、図面とともに次のカ?シの記載があり、ス?タの認定事項が認められる。

カ 「【0016】
図1および図2は、ハンドル6、シャフト8、および、関節動作ピボット14でシャフト8に旋回可能に接続された関節動作エンドエフェクタ12を含む内視鏡外科器具10を示している。エンドエフェクタ12の正確な配置および向きは、(1)シャフト8の自由回転接合部29で閉鎖チューブ(詳細は図4および図5との関連でより詳細に後述する)を回転させてエンドエフェクタ12を回転させるための回転ノブ28、および(2)関節動作ピボット14を中心にエンドエフェクタ12を回転関節動作させるための関節動作制御部16を含め、ハンドル6に設けられた制御部によって容易に行うことができる。例示されている実施形態では、エンドエフェクタ12は、組織をクランプ、切断、およびステープル留めするためのエンドカッターとして機能するように構成されているが、他の実施形態では、把持器、カッター、ステープラ、クリップアプライヤ、アクセス装置、薬物/遺伝子治療装置、および超音波、RF、またはレーザー装置などの他のタイプの外科器具のエンドエフェクタなどの様々なタイプのエンドエフェクタを用いることができる。」

キ 「【0021】
図3は、様々な実施形態に従ったエンドエフェクタ12の組立分解図である。例示されている実施形態に示されているように、エンドエフェクタ12は、上記した溝型部材22およびアンビル24に加えて、切断器具32、スレッド33、溝型部材22内に取外し可能に配置されたステープルカートリッジ34、および螺旋ねじシャフト36を含むことができる。切断器具32は、例えば、ナイフとすることができる。アンビル24は、溝型部材22の近位端部に接続されたピボット点25で旋回させて開閉することができる。アンビル24は、このアンビル24を開閉するために機械閉鎖システム(詳細を後述)の構成要素内に挿入されるタブ27をその近位端部に備えることもできる。閉鎖トリガー18が作動する、すなわち器具10の使用者によって引かれると、アンビル24が、クランプすなわち閉位置にピボット点25を中心に旋回することができる。エンドエフェクタ12のクランプに満足したら、操作者は、詳細を後述するように、発射トリガー20を作動させて、ナイフ32およびスレッド33を溝型部材22に沿って長さ方向に移動させ、エンドエフェクタ12内にクランプされた組織を切断することができる。スレッド33の溝型部材22に沿った運動により、ステープルカートリッジ34のステープルが、閉じたアンビル24に向かって切断された組織内を進み、アンビル24に曲げられて切断された組織を閉じる。参照して開示内容を本明細書に組み入れる米国特許第6,978,921号(名称:「Eビーム発射機構を含む外科ステープラ器具(Surgical stapling instrument incorporating an E-beam firing mechanism)」)に、このような2ストロークの切断/締結器具が詳細に開示されている。スレッド33をカートリッジ34の一部とし、切断動作の後にナイフ32が引き戻されても、スレッド33が引き戻されないようにすることができる。溝型部材22およびアンビル24は、詳細を後述するように、エンドエフェクタ内のセンサと通信するアンテナの一部として機能できるように導電材料(金属など)から形成することができる。カートリッジ34は、非導電材料(プラスチックなど)から形成することができ、センサは、詳細を後述するように、カートリッジ34に接続するかまたはその内部に配置することができる。」

ク 「【0039】
器具10は、ステープルカートリッジ34(または外科器具のタイプによっては別のタイプのカートリッジ)の状態、または閉鎖および発射の際のステープラの進行を決定するために、センサトランスポンダなどのエンドエフェクタ12に関連した様々な状態を検出するための多数のセンサトランスポンダをエンドエフェクタ12内に含むことができる。センサトランスポンダは、詳細を後述するように、誘導信号によって受動的に電力供給を受けることができるが、他の実施形態では、センサトランスポンダは、例えば、エンドエフェクタ12内のバッテリなどの遠隔電源によって電力供給を受けることができる。センサトランスポンダは、例えば、磁気抵抗センサ、光学センサ、電気機械センサ、RFIDセンサ、MEMSセンサ、運動センサ、または圧力センサを含むことができる。これらのセンサトランスポンダは、例えば、図11に示されているように、器具10のハンドル6内に収容できる制御ユニット300と通信することができる。
【0040】
図12に示されているように、様々な実施形態によると、制御ユニット300は、プロセッサ306および1つ以上のメモリユニット308を含むことができる。メモリ308に記憶された命令行動を実行することにより、プロセッサ306は、様々なエンドエフェクタのセンサトランスポンダおよび他のセンサ(モータ運転センサ110、ストローク終了センサ130、およびストローク開始センサ142など)に基づいて、モータ65またはユーザーディスプレイ(不図示)などの器具10の様々な構成要素を制御することができる。制御ユニット300は、器具10の外科的な使用の際にバッテリ64によって電力供給を受けることができる。制御ユニット300は、詳細を後述するように、センサトランスポンダから無線信号を受け取るために誘導素子302(例えば、コイルやアンテナ)を含むことができる。受信アンテナとして機能する誘導素子302が受け取る入力信号は、復調器310によって復調し、デコーダ312によって復号することができる。入力信号は、エンドエフェクタ12内のセンサトランスポンダからのデータを含むことができ、プロセッサ306は、このデータを用いて器具10の様々な点を制御することができる。」

ケ 「【0049】
図15は、溝型部材22の遠位端部のカートリッジ34内に保持または埋め込まれたトランスポンダ368を含むエンドエフェクタ12の線図である。トランスポンダ368は、エポキシなどの適当な接着材料でカートリッジ34に接続することができる。この実施形態では、トランスポンダ368は、磁気抵抗センサを含む。アンビル24も、トランスポンダ368に面した永久磁石369を遠位端部に含む。エンドエフェクタ12も、この例の実施形態ではスレッド33に接続された永久磁石370を含む。これにより、トランスポンダ368が、エンドエフェクタ12の開と閉の両方と(アンビル24が開閉する際に、永久磁石369がトランスポンダに対して離れるまたは近づくため)、ステープル留め/切断動作の完了(切断動作の一部としてスレッド33が溝型部材22を移動する際に、永久磁石370がトランスポンダ368に向かって移動するため)を検出することができる。」

コ 「【0051】
上記した実施形態では、バッテリ64は、器具10の発射動作のために少なくとも部分的に電力を供給する。したがって、この器具は、いわゆる「動力補助」装置と呼ぶことができる。このような動力補助装置のさらなる詳細および別の実施形態は、参照して本明細書に組み入れる米国特許出願第11/343,573号に開示されている。しかしながら、器具10は必ずしも、動力補助装置とする必要はなく、本発明の特徴を利用できる1タイプの装置の一例にすぎないことを理解されたい。例えば、器具10は、バッテリ64によって電力が供給され、かつ制御ユニット300によって制御されるユーザーディスプレイ(LCDまたはLEDディスプレイなど)を含むことができる。エンドエフェクタ12内のセンサトランスポンダ368からのデータを、このようなディスプレイに表示することができる。」

サ 「【0060】
図17に示されているように、ハンドヘルド装置とすることができる遠隔プログラミング装置320は、制御ユニット300と無線通信することができる。遠隔プログラミング装置320は、制御ユニット300に無線信号を送信し、この無線信号は、制御ユニット300により受信され、制御ユニット300をプログラムし、このプログラム動作の際に制御ユニット300に電力を供給する。このように、バッテリ64は、プログラミング動作の際に制御ユニット300に電力を供給する必要がない。様々な実施形態によると、制御ユニット300にダウンロードされるプログラミングコードは、1MB以下などの比較的小さいサイズにすることができるため、所望に応じて、比較的低いデータ転送速度の通信プロトコルを用いることができる。また、低出力信号を用いることができるように、遠隔プログラミング装置320を、外科器具10と物理的に近接させることができる。
【0061】
図19を参照すると、制御ユニット300は、遠隔プログラミング装置320から無線信号を受け取るための誘導コイル402を含むことができる。制御ユニット300がバッテリ64から電力供給を受けていない場合は、電源回路404が受信した信号の一部を用いて、この制御ユニット300に電力を供給することができる。
【0062】
受信アンテナとして機能するコイル402が受信した入力信号は、変調器410によって変調し、デコーダ412によって復号することができる。この入力信号は、メモリ308の不揮発性メモリ部分に記憶できるプログラム命令(例えば、コード)を含むことができる。プロセッサ306は、器具10が動作している時にコードを実行することができる。例えば、コードにより、プロセッサ306を作動させて、センサ368から受信したデータに基づいてモータ65などの器具10の様々なサブシステムに制御信号を出力することができる。」

シ 「【0064】
制御ユニット300は、例えば、肯定応答およびハンドシェーク信号などの信号を遠隔プログラミングユニット320に返信することもできる。制御ユニット300は、プログラミング装置320に送信される信号を符号化するためのエンコーダ416、および変調計画に従って信号を変調するための変調器418を含むことができる。コイル402は、送信アンテナとして機能することができる。制御ユニット300および遠隔プログラミング装置320は、任意の適当な無線通信プロトコル(例えば、ブルートゥース)および任意の適当な周波数(例えば、ISM帯域)を用いて通信することができる。また、制御ユニット300は、遠隔プログラミングユニット320から受信する信号の周波数範囲とは異なる周波数範囲で信号を送信することができる。」

ス 上記カの記載事項及び上記キの記載事項を検討すると、内視鏡外科器具10は、組織をクランプ、切断、およびステープル留めするためのエンドカッターとしての機能を有するエンドエフェクタ12に、ナイフ32及びステープルを備えるものであるから、内視鏡外科器具10は、ナイフ32/ステープル器具である。

セ 上記ケの記載事項を、図15に示された永久磁石370及びトランスポンダ368を参照しつつ検討すると、切断動作に伴う永久磁石370及びトランスポンダ368間の相対位置から、トランスポンダ368が少なくとも切断動作の完了を検出しており、切断動作を伴う手術手技の間に、スレッド33と共に移動する切断器具であるナイフ32の位置をデータとして検出するものと認められる。また、検出されたナイフ32の位置のデータは、上記クの記載事項を踏まえれば、制御ユニット300が入力信号として受け取るものである。

ソ 上記クの記載事項と、上記サの記載事項とを併せて検討すると、制御ユニット300が含むメモリユニット308は、不揮発性メモリ部分にデータの記憶が可能であるものといえる。

タ 上記コの記載事項と、上記シの記載事項とを併せて検討すると、制御ユニット300が、肯定応答およびハンドシェーク信号などの信号を遠隔プログラミングユニット320に送信するものであるし、また、トランスポンダ368のデータについても、遠隔プログラミングユニット320を対象とすることは明記されていないものの、外部機器(ディスプレイ)へ送信する信号として用いられている。

上記記載事項カ?シ及び上記認定事項ス?タを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本件出願の発明に照らして整理すると、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明2」という。)。

「ナイフ32/ステープル器具に配置されたトランスポンダ368からのデータを取り込む方法であって、前記ナイフ32/ステープル器具は、制御ユニット300と、シャフト8と、前記シャフト8に連結しているエンドエフェクタ12であって、旋回可能に連結され、対向し、組織をクランプする溝型部材22およびアンビル24、及び、作動されると前記エンドエフェクタ12を長さ方向に横切るように移動するナイフ32を含むエンドエフェクタ12と、を備えている方法において、
制御ユニット300は、メモリユニット308を備え、
前記ナイフ32/ステープル器具を伴う手術手技の間に、前記エンドエフェクタ12内のトランスポンダ368からのデータを入力信号として受け取ることであって、前記トランスポンダ368は、前記エンドエフェクタ12内の前記ナイフ32の位置を検出し、前記制御ユニット300と通信するものである、前記トランスポンダ368からのデータを入力信号として受け取ることと、
前記制御ユニット300と遠隔プログラミング装置320との間に無線の通信手段を用いることと、
前記ナイフ32/ステープル器具の前記制御ユニット300が、肯定応答およびハンドシェーク信号などの信号を遠隔プログラミング装置320に送信させたりすることと、
を含む、方法。」

3 対比
本件出願の発明と引用発明2とを対比すると以下のとおりである。
引用発明2の「ナイフ32/ステープル器具」は、その機能及び構成からみて、本件出願の発明の「手術用切断/結合器具」に相当する。
また、以下同様に、それぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「トランスポンダ368」は「センサ」及び「切断器具位置センサ」に、「制御ユニット300」は「制御ユニット」に、「シャフト8」は「シャフト」に、「エンドエフェクタ12」は「エンドエフェクタ」に、「溝型部材22およびアンビル24」は「第1および第2のジョー部材」に、「メモリユニット308」は「記憶装置」に、「遠隔プログラミング装置320」は「遠隔コンピュータ装置」に、「無線の通信手段を用いること」は「データリンクを確立すること」に相当することも明らかである。
また、引用発明2の「制御ユニット300が、肯定応答およびハンドシェーク信号などの信号を遠隔プログラミング装置320に送信させたりすること」は、本件出願の発明の「手術用切断/結合器具の制御ユニットからのデータを遠隔コンピュータ装置へダウンロードする」に相当する。

したがって、本件出願の発明と引用発明2とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「手術用切断/結合器具に配置されたセンサからのデータを取り込む方法であって、前記手術用切断/結合器具は、制御ユニットと、シャフトと、前記シャフトに連結しているエンドエフェクタであって、旋回可能に連結され、対向し、組織をクランプする第1および第2のジョー部材、及び、作動されると前記エンドエフェクタを長さ方向に横切るように移動する切断器具を含むエンドエフェクタと、を備えている方法において、
制御ユニットが記憶装置を備え、
前記手術用切断/結合器具を伴う手術手技の間に、前記切断器具位置センサは、前記エンドエフェクタ内の前記切断器具の位置を検出し、前記制御ユニットと通信することと、
前記制御ユニットと遠隔コンピュータ装置との間にデータリンクを確立することと、
手術用切断/結合器具の制御ユニットからのデータを遠隔コンピュータ装置へダウンロードすることと、
を含む、方法。」

そして、本件出願の発明と引用発明2とは、以下の3点で相違している。<相違点1>
本件出願の発明は、「エンドエフェクタ内の切断器具位置センサ」からのデータを「記憶装置」内に保存するのに対して、引用発明2では、メモリユニット308を有しているものの、トランスポンダ368からのデータをメモリユニット308内に保存するか不明である点。
<相違点2>
本件出願の発明は、記憶装置に保存された切断器具位置センサからのデータを遠隔コンピュータ装置へダウンロードするのに対して、引用発明2では、遠隔プログラミング装置320にデータをダウンロードしているものの、そのデータがメモリユニット308に保存されたトランスポンダ368からのデータであるものか不明である点。
<相違点3>
本件出願の発明は、「手術手技の後」に、「切断器具位置センサからのデータを遠隔コンピュータ装置へダウンロード」しているのに対して、引用発明2は、「手術手技の後」に、データのダウンロードをしているのか不明である点。

4 相違点の検討
ア <相違点1>及び<相違点2>について
手術器具が備えたセンサからの検出信号を、記憶装置に保存して、外部機器からアクセス可能とすることは、従来周知の技術である(例えば、特開2007-229448号公報の特に段落[0093]-[0094]、特開2005-135344号公報の特に段落[0017]、特開2008-86777号公報の特に段落[0035]-[0036]、特開2007-203059号公報の特に[0078]-[0079]等を参照。)。
また、認定事項タによれば、引用発明2においても、トランスポンダ368からのデータをディスプレイで利用可能とするものであるから、センサからの検出信号を外部機器で利用することを念頭に置いていることは明らかである。
してみると、引用発明2において、上記従来周知の技術を踏まえて、トランスポンダ368からのデータをメモリユニット308内に保存することや、ナイフ32/ステープル器具の制御ユニット300が遠隔プログラミング装置320にデータをダウンロードする際に、保存されたトランスポンダ368からのデータをダウンロードすることは、当業者にとって容易になし得たものというべきである。

イ <相違点3>について
手術器具の使用状況の分析のために、手術手技の後に記録されたデータに外部からアクセスすることは、従来周知の技術である(例えば、特開2005-135344号公報の特に段落[0017]、特開2008-86777号公報の特に段落[0035]-[0036]などを参照。)。
また、引用発明2は、制御ユニット300が、遠隔プログラミング装置との間に通信手段を用いるものであって、該通信手段を用いるタイミングを手術手技の後とすることに阻害要因も認められない。
してみると、引用発明2において、上記従来周知の技術を踏まえて、手術器具の使用状況の分析等を目的として、手術手技の後に、制御ユニット300が、データを遠隔プログラミング装置へダウンロードするようにすることは、当業者にとって容易になし得たものというべきである。

5 むすび
以上により、本件出願の発明は、引用発明2及び上記従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-24 
結審通知日 2015-08-25 
審決日 2015-09-07 
出願番号 特願2009-216548(P2009-216548)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 平瀬 知明
竹下 和志
発明の名称 手術器具のメモリに保存されるアクセス用データ  
代理人 大島 孝文  
代理人 加藤 公延  

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