• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1310444
審判番号 不服2014-18785  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-19 
確定日 2016-01-27 
事件の表示 特願2013- 3616「グローバル電子シャッター制御を持つイメージ読み取り装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013-101664〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は,平成18年3月7日に出願した特願2008-500844号(パリ条約による優先権主張 平成17年3月11日,米国)の一部を平成25年1月11日に新たな特許出願としたものであって,平成25年10月4日付けで拒絶理由通知がなされ,平成26年3月10日に手続補正がなされたが,同年5月15日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで審判請求時の手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年9月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本願発明と補正後の発明

上記手続補正(以下,「本件補正」という。)は平成26年3月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項12に記載された
「バーコードシンボルからバーコードデータを集め,処理するバーコード読み取り装置であって,該バーコード読み取り装置は,
バーコードシンボルから反射される光放射を受ける2次元ピクセルアレイであって,該2次元ピクセルアレイは,第1の複数のピクセル,および第2の複数のピクセルよりなり,該バーコード読み取り装置は,該バーコード読み取り装置が,前記2次元アレイから,前記アレイの第2の複数のピクセルとは独立して該アレイの第1の複数のピクセルから,選択的にイメージデータをアドレスし,読み出すよう制御されることができ,該ピクセルの各々は,光感受領域,および不透明シールドされたデータ蓄積領域よりなる,2次元ピクセルアレイと,
前記2次元ピクセルアレイを収容するハンドヘルドハウジングと,
バーコードシンボルから反射された光放射を,2次元ピクセルアレイ上に向ける光学素子と,
前記2次元ピクセルアレイと関連したグローバル電子シャッターであって,該グローバル電子シャッターは,該2次元ピクセルアレイにおける全体フレームのピクセルのすべて,またはほとんどすべてを,同時に露光させることができるものである,グローバル電子シャッターと,
バーコード処理モジュールであって,該バーコード処理モジュールは,2次元ピクセルアレイと電気的に通信し,該バーコード処理モジュールは,集められたイメージデータにおけるバーコードシンボルの表示を識別することができる,バーコード処理モジュールとを備える,バーコード読み取り装置。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,補正後の特許請求の範囲の請求項12に記載された
「バーコードシンボルからバーコードデータを集め,処理するバーコード読み取り装置であって,該バーコード読み取り装置は,
バーコードシンボルから反射される光放射を受ける2次元ピクセルアレイであって,該2次元ピクセルアレイは,第1の複数のピクセル,および第2の複数のピクセルよりなり,該バーコード読み取り装置は,該バーコード読み取り装置が,前記2次元アレイから,前記アレイの第2の複数のピクセルとは独立して該アレイの第1の複数のピクセルから,選択的にイメージデータをアドレスし,読み出すよう制御されることができ,該ピクセルの各々は,光感受領域,および不透明シールドされたデータ蓄積領域よりなる,2次元ピクセルアレイと,
前記2次元ピクセルアレイを収容するハンドヘルドハウジングと,
バーコードシンボルから反射された光放射を,2次元ピクセルアレイ上に向ける光学素子と,
前記2次元ピクセルアレイと関連したグローバル電子シャッターであって,該グローバル電子シャッターは,該2次元ピクセルアレイにおける全体フレームのピクセルのすべて,またはほとんどすべてを,同時に露光させることができるものである,グローバル電子シャッターと,
バーコード処理モジュールであって,該バーコード処理モジュールは,2次元ピクセルアレイと電気的に通信し,該バーコード処理モジュールは,集められたイメージデータにおけるバーコードシンボルの表示を自動的に識別し,特定することができる,バーコード処理モジュールとを備え,
照準パターンが少なくとも露出タイミングパルス中に活性化するように,少なくとも1つの光源が照準パターンを投射するように構成される,バーコード読み取り装置。」
という発明(以下,「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(下線は,審判請求人が付与したものである。)

2.新規事項の有無,補正の目的要件について

本件補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において,補正前の「バーコードシンボルの表示を識別する」という構成を「バーコードシンボルの表示を自動的に識別し,特定する」という構成に補正するとともに,補正前の「光放射」に関して,「照準パターンが少なくとも露出タイミングパルス中に活性化するように,少なくとも1つの光源が照準パターンを投射するように構成される」との限定を付加することにより,特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)の規定に適合している。

3.独立特許要件について

本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明

上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用文献

A.原審の拒絶理由に引用された特表2004-533031号公報(以下,「引用文献」という。)には,「部分フレーム操作モードを有する光学読取装置」の発明に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0017】
図1a?図1gを参照すると,本発明は,部分フレーム取込みモードで作動するよう構成されている2D画像センサを備えた光学読取装置である。部分フレームクロックアウトモードでは,光学読取装置の制御回路は2D画像センサの画素の全てよりも少ない画素に対応する電気信号をクロックアウト(すなわち「読取り」)し,画素位置に対応する画像データをメモリに取込む。」

ロ.「【0024】
光学読取装置110は,1D又は2Dバーコードシンボルなどの対象オブジェクトTを照らす照射アセンブリ120と,該オブジェクトTの画像を受信し,内部で光学的に符号化されたデータを示す電気出力信号を発生させる画像化アセンブリ130を具備する。照射アセンブリ120は,例えば,照明源アセンブリ122と,光源122からの光を対象オブジェクトTの方向に向けさせるための,1つ以上のレンズ,散光器,ウェッジ,反射器,又はこれらの要素の組み合わせなどの照射光学部品アセンブリ124とを併せ持つことができる。照射アセンブリ120は,例えば,レーザや,白色発光ダイオード(LED)や赤色LEDなどの発光ダイオード(LED)からなることができる。照射アセンブリ120は,対象Tに照準パターン127を投影する対象照射・光学部品を備えることができる。周囲光のレベルがオブジェクトTの高画質画像を取ることができるほど十分に高いことが確実ならば,照射アセンブリ120は省くことができる。画像化アセンブリ130は,1D又は2DのCCD,CMOS,NMOS,PMOS,CID,又はCMD固体画像センサなどの画像センサ132と,オブジェクトTの画像を受信し画像センサ132上に集束させる画像化光学部品アセンブリ134とを併せ持つことができる。図2aに示されたアレイベースの画像化アセンブリは複数のレーザ源,走査機構,発光及び受光用光学部品,少なくとも1つの光検出器及び付属の信号処理回路を備えるレーザアレイベースの画像化アセンブリと替えることができる。
【0025】
部分フレームクロックアウトモードは,画像データの部分フレームをクロックアウトするよう指示されることの可能な画像センサ,あるいは個々にアドレス指定できる画素で構成されている画像センサを用いて容易に実施される。CMOS製造技術を用いれば,画像センサは,センサの特定の画素に対応する電気信号が,センサの残りの画素に対応する電気信号をクロックアウトすること無く選択的にクロックアウトされるように,容易に作成される。」

ハ.「【0026】
図2aに示す光学読取装置110はさらに,集積回路マイクロプロセッサ142及び特定用途向け集積回路(ASIC 144)を好ましくは備えたプログラム可能な制御回路140も具備する。ASIC144の機能はまた,フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)によっても提供されることができるであろう。プロセッサ142及びASIC144はいずれも,読み書きランダムアクセスメモリ,すなわちRAM146,及び消去可能読み出し専用メモリ,すなわちEROM147などのメモリ素子を備えることができるメモリ装置145に記憶された内蔵プログラムに従って,データを受信,出力,及び処理することができるプログラム可能な制御装置である。・・・(中略)・・・
【0027】
さらに詳細には,プロセッサ142は図2aの回路の全体制御を行うが,EROM147に記憶されたプログラムデータに従ってRAM146に記憶された画像データを復号することに大部分の時間を当てる汎用標準VLSI集積回路マイクロプロセッサであることが好ましい。」・・・(中略)・・・

ニ.「【0030】
・・・(中略)・・・プロセッサ144はさらに,多くのタイミング調節及び通信動作も行うことができる。プロセッサ144は,例えば,LED122の照射,・・・(中略)・・・または該プロセッサからのデータの送受信を制御することができる。」

ホ.「【0032】
図2b?図2gは,本発明が組み込まれうるハウジングの種類の例を示している。図2b?図2gは,1D/2D光学読取装置110-1,110-2,及び110-3を示す。各光学読取装置110-1から110-3のハウジング112は,人間の手でつかむことができるようになされており,画像取込みおよび復号化,及び/又は画像取込みおよび文字認識動作を作動させるための少なくとも1つのトリガスイッチ174をその中に組み込んでいる。」

ヘ.「【0039】
本発明に従って作動している読取装置110の操作の状態は通常,参照により本明細書に引用した同一出願人による特許第5,929,418号に説明されているように,キーボード178の適切なボタンまたはGUIの制御を起動することによって,又はメニューシンボルの読取りによって選択される。
・・・(中略)・・・
【0042】
本発明に従って作動する読取装置の第3の操作状態は,図1d及び図1eを参照して説明される。第3の操作状態に従って作動する場合,読取装置は視野10内の所定のパターンと位置に対応する有効ゾーン12-10の画像データをクロックアウトし取込むように部分フレーム取込みモードで作動する。シンボル16-4はスタックド線形バーコードとして知られる2Dシンボルの種類であるため,ゾーン12-10の画像データの読取りはシンボル16-4を復号するのには有効でないということがわかる。しかしながら,有効ゾーン12-10はシンボル16-4のファインダパターン16fを横切っているので,制御回路140はこのシンボルが2Dシンボルであることを検出するであろう。
【0043】
有効ゾーン12-10に対応する部分フレーム画像データを読取る時に2Dシンボルが視野の中に存在している可能性があると感知したら,第3の操作状態で作動している読取装置は,部分フレームモードで作動し続けて,図1eに示されるような画素位置を持つ第2の有効ゾーン12-11を定める画像データをクロックアウトし取込む。第2の有効ゾーン12-11は所定の寸法および位置のものではなく,むしろ適応性のある位置のもので,その位置,そしておそらく寸法,方向及び形は第1の有効ゾーン12-10に対応する画像データの読取りの結果によって決まる。詳細には,第2の有効ゾーン12-11は通常少なくとも,第1の有効ゾーン12-10の画像データを読取る時に存在していると検出されたシンボル16-4を包含するであろう寸法および位置のものである。第3の操作状態は,関係のない画像データのクロックアウト及び取込みをさらに減らすよう作動できる可能性があり,従って復号速度をさらに高める可能性があるということがわかる。第3の操作状態では,第1の適応可能な有効ゾーン12-11の画像データの読取りによってシンボルが復号されるという結果にならない場合,更なる適応可能な位置の有効ゾーンがクロックアウトされ取込まれることが可能である。」

前記イ.?へ.及び関連する図面の記載を考慮すると,引用文献には,次の事項が記載されているといえる。

(光学読取装置)
・前記イ.の「本発明は,部分フレーム取込みモードで作動するよう構成されている2D画像センサを備えた光学読取装置である。」の記載によれば,引用文献には「部分フレーム取込みモードで作動するよう構成されている2D画像センサを備えた光学読取装置」が記載されているといえる。

(光学読取装置の照射アセンブリ)
・前記ロ.の「光学読取装置110は,1D又は2Dバーコードシンボルなどの対象オブジェクトTを照らす照射アセンブリ120と,該オブジェクトTの画像を受信し,内部で光学的に符号化されたデータを示す電気出力信号を発生させる画像化アセンブリ130を具備する。照射アセンブリ120は,例えば,照明源アセンブリ122と,光源122からの光を対象オブジェクトTの方向に向けさせるための,1つ以上のレンズ,散光器,ウェッジ,反射器,又はこれらの要素の組み合わせなどの照射光学部品アセンブリ124とを併せ持つことができる。照射アセンブリ120は,例えば,レーザや,白色発光ダイオード(LED)や赤色LEDなどの発光ダイオード(LED)からなることができる。照射アセンブリ120は,対象Tに照準パターン127を投影する対象照射・光学部品を備えることができる。」の記載によれば,
光学読取装置は,「1D又は2Dバーコードシンボルなどの対象オブジェクトを照らす照射アセンブリ」を備え,その照射アセンブリは,「照明源アセンブリと,光源からの光を対象オブジェクトの方向に向けさせるための照射光学部品アセンブリとを併せ持ち,レーザや発光ダイオードからなることができ,対象オブジェクトに照準パターンを投影する対象照射・光学部品を備えることができ」るものである。

(光学読取装置の画像化アセンブリ)
・前記ロ.の「光学読取装置110は,1D又は2Dバーコードシンボルなどの対象オブジェクトTを照らす照射アセンブリ120と,該オブジェクトTの画像を受信し,内部で光学的に符号化されたデータを示す電気出力信号を発生させる画像化アセンブリ130を具備する。・・・(中略)・・・画像化アセンブリ130は,1D又は2DのCCD,CMOS,NMOS,PMOS,CID,又はCMD固体画像センサなどの画像センサ132と,オブジェクトTの画像を受信し画像センサ132上に集束させる画像化光学部品アセンブリ134とを併せ持つことができる。」の記載によれば,
光学読取装置は,「対象オブジェクトの画像を受信し,内部で光学的に符号化されたデータを示す電気出力信号を発生させる画像化アセンブリ」を備え,この画像化アセンブリは,「CMOS固体画像センサなどの2D画像センサと,対象オブジェクトの画像を受信し2D画像センサ上に集束せる画像化光学部品アセンブリとを併せ持つ」といえる。

(光学読取装置の制御回路)
・前記ハ.の「図2aに示す光学読取装置110はさらに,集積回路マイクロプロセッサ142及び特定用途向け集積回路(ASIC 144)を好ましくは備えたプログラム可能な制御回路140も具備する。」の記載によれば,
光学読取装置は,制御回路を備えるといえる。

・前記イ.の「部分フレームクロックアウトモードでは,光学読取装置の制御回路は2D画像センサの画素の全てよりも少ない画素に対応する電気信号をクロックアウト(すなわち「読取り」)し,画素位置に対応する画像データをメモリに取込む。」の記載によれば,
制御回路は,「部分フレームクロックアウトモードにおいて,2D画像センサの画素の全てよりも少ない画素に対応する電気信号をクロックアウトすなわち読取りし,画素位置に対応する画像データをメモリに取込み」するものである。

・前記ハ.の「集積回路マイクロプロセッサ142及び特定用途向け集積回路(ASIC 144)を好ましくは備えたプログラム可能な制御回路140」の記載,
前記ハ.の「読み書きランダムアクセスメモリ,すなわちRAM146,・・・(中略)・・・などのメモリ素子を備えることができるメモリ装置145」の記載,
前記ハ.の「プロセッサ142は図2aの回路の全体制御を行うが,EROM147に記憶されたプログラムデータに従ってRAM146に記憶された画像データを復号する」の記載によれば,
制御回路は,「メモリに記憶された画像データを復号する」ものである。

・前記ハ.の「集積回路マイクロプロセッサ142及び特定用途向け集積回路(ASIC 144)を好ましくは備えたプログラム可能な制御回路140」の記載,
前記ニ.の「プロセッサ144は,例えば,LED122の照射,・・・(中略)・・・または該プロセッサからのデータの送受信を制御することができる。」の記載,
前記ロ.の「照射アセンブリ120は,例えば,照明源アセンブリ122と,光源122からの光を対象オブジェクトTの方向に向けさせるための,1つ以上のレンズ,散光器,ウェッジ,反射器,又はこれらの要素の組み合わせなどの照射光学部品アセンブリ124とを併せ持つことができる。照射アセンブリ120は,例えば,レーザや,白色発光ダイオード(LED)や赤色LEDなどの発光ダイオード(LED)からなることができる。」の記載によれば,
制御回路は,「照射アセンブリの光源の照射を制御する」ものである。

(光学読取装置の2D画像センサ)
・前記ロ.の「部分フレームクロックアウトモードは,画像データの部分フレームをクロックアウトするよう指示されることの可能な画像センサ,あるいは個々にアドレス指定できる画素で構成されている画像センサを用いて容易に実施される。CMOS製造技術を用いれば,画像センサは,センサの特定の画素に対応する電気信号が,センサの残りの画素に対応する電気信号をクロックアウトすること無く選択的にクロックアウトされるように,容易に作成される。」の記載によれば,
2D画像センサは,「部分フレームクロックアウトモードにおいて,画像データの部分フレームをクロックアウトするよう指示されることの可能な画像センサ,あるいは個々にアドレス指定できる画素で構成されている画像センサであり,CMOS製造技術を用いれば,センサの特定の画素に対応する電気信号が,センサの残りの画素に対応する電気信号をクロックアウトすること無く選択的にクロックアウトされ」るものである。

(光学読取装置のハウジング)
・前記ホ.の「図2b?図2gは,本発明が組み込まれうるハウジングの種類の例を示している。図2b?図2gは,1D/2D光学読取装置110-1,110-2,及び110-3を示す。各光学読取装置110-1から110-3のハウジング112は,人間の手でつかむことができるようになされており,画像取込みおよび復号化,及び/又は画像取込みおよび文字認識動作を作動させるための少なくとも1つのトリガスイッチ174をその中に組み込んでいる。」の記載によれば,
光学読取装置は,「人間の手でつかむことができるハウジング」を備える。

(光学読取装置の第3の操作状態)
・前記ヘ.の「本発明に従って作動している読取装置110の操作の状態は通常,参照により本明細書に引用した同一出願人による特許第5,929,418号に説明されているように,キーボード178の適切なボタンまたはGUIの制御を起動することによって,又はメニューシンボルの読取りによって選択される。」の記載によれば,
光学読取装置の操作状態は,「キーボードの適切なボタン等によって選択され」る。

・前記ヘ.の「第3の操作状態に従って作動する場合,読取装置は視野10内の所定のパターンと位置に対応する有効ゾーン12-10の画像データをクロックアウトし取込むように部分フレーム取込みモードで作動する。」の記載,
・前記ヘ.の「有効ゾーン12-10に対応する部分フレーム画像データを読取る時に2Dシンボルが視野の中に存在している可能性があると感知したら,第3の操作状態で作動している読取装置は,部分フレームモードで作動し続けて,図1eに示されるような画素位置を持つ第2の有効ゾーン12-11を定める画像データをクロックアウトし取込む。第2の有効ゾーン12-11は所定の寸法および位置のものではなく,むしろ適応性のある位置のもので,その位置,そしておそらく寸法,方向及び形は第1の有効ゾーン12-10に対応する画像データの読取りの結果によって決まる。詳細には,第2の有効ゾーン12-11は通常少なくとも,第1の有効ゾーン12-10の画像データを読取る時に存在していると検出されたシンボル16-4を包含するであろう寸法および位置のものである。」の記載によれば,
光学読取装置は,「第3の操作状態に従って作動する場合,視野内の所定のパターンと位置に対応する第1の有効ゾーンの画像データをクロックアウトし取込むように部分フレーム取込みモードで作動し,第1の有効ゾーンに対応する部分フレーム画像データを読取る時に2Dシンボルが視野の中に存在している可能性があると感知したら,2Dシンボルを包含するであろう寸法および位置の第2の有効ゾーンを定める画像データをクロックアウトし取込む」といえる。

したがって,上記の点を総合すれば,引用文献には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(引用発明)
「部分フレーム取込みモードで作動するよう構成されている2D画像センサを備えた光学読取装置であって,光学読取装置は,
1D又は2Dバーコードシンボルなどの対象オブジェクトを照らす照射アセンブリと,該対象オブジェクトの画像を受信し,内部で光学的に符号化されたデータを示す電気出力信号を発生させる画像化アセンブリと,制御回路と,人間の手でつかむことができるハウジングとを備え,
前記照射アセンブリは,照明源アセンブリと,光源からの光を対象オブジェクトの方向に向けさせるための照射光学部品アセンブリとを併せ持ち,レーザや発光ダイオードからなることができ,対象オブジェクトに照準パターンを投影する対象照射・光学部品を備えることができ,
前記画像化アセンブリは,CMOS固体画像センサなどの2D画像センサと,対象オブジェクトの画像を受信し2D画像センサ上に集束させる画像化光学部品アセンブリとを併せ持ち,
前記制御回路は,部分フレームクロックアウトモードにおいて,2D画像センサの画素の全てよりも少ない画素に対応する電気信号をクロックアウトすなわち読取りし,画素位置に対応する画像データをメモリに取込み,メモリに記憶された画像データを復号し,照射アセンブリの光源の照射を制御するものであり,
前記2D画像センサは,部分フレームクロックアウトモードにおいて,画像データの部分フレームをクロックアウトするよう指示されることの可能な画像センサ,あるいは個々にアドレス指定できる画素で構成されている画像センサであり,CMOS製造技術を用いれば,センサの特定の画素に対応する電気信号が,センサの残りの画素に対応する電気信号をクロックアウトすること無く選択的にクロックアウトされ,
光学読取装置の操作状態は,キーボードの適切なボタン等によって選択され,
第3の操作状態に従って作動する場合,視野内の所定のパターンと位置に対応する第1の有効ゾーンの画像データをクロックアウトし取込むように部分フレーム取込みモードで作動し,第1の有効ゾーンに対応する部分フレーム画像データを読取る時に2Dシンボルが視野の中に存在している可能性があると感知したら,2Dシンボルを包含するであろう寸法および位置の第2の有効ゾーンを定める画像データをクロックアウトし取込む,
光学読取装置。」

B.拒絶理由で引用された特開2002-368201号公報(以下,「引用文献2」という。)には,「個体撮像装置およびそれを用いた撮像システム」の発明に関し,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

イ.「【0003】図4はCMOSセンサ画素の典型的な例を示す回路図である。」

ロ.「【0005】上記の画素1を二次元的マトリックス状に配列したものは二次元固体撮像装置の画素領域を形成するが,そのマトリックス構成において出力線12は各列の画素の共通線,制御線8,9,10はそれぞれ各行の画素の共通線となっており,制御線10によって選択された行の画素のみが出力線12に信号出力される。」

ハ.「【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来例においては,読み出しのための行を順次選択する。画素のフォトダイオードの蓄積開始,終了のタイミングは信号電荷転送時で決まるため,行毎にフォトダイオードの蓄積開始,終了のタイミングがずれることになる。二次元固体撮像装置においては,1画面すなわち1フィールドの信号は全行の画素信号によって形成されるので,行毎の蓄積タイミングがずれると,高速度で動く被写体の形状がゆがんでとらえられるという問題があった。
【0010】そこで本発明は,信号蓄積動作の開始,終了タイミングを全画素同時に可能とすることにより,動く被写体でもゆがみのない画像を得ることができる固体撮像装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述の従来のCMOSセンサの課題を解決するため,本発明は,入射した光によって発生した信号電荷を蓄積するフォトダイオードと,該信号電荷を転送するための転送手段と,該信号電荷が転送されるフローティングディフュージョン領域と,該フローティングディフュージョン領域に転送された信号電荷に基づいて増幅された信号を出力するための増幅手段とを備えた単位画素を複数配列して構成される固体撮像装置において,前記転送手段の転送ゲートの下のチャネルの一部に設けられた前記信号電荷を保持する信号電荷保持領域と,該信号電荷保持領域と前記フローティングディフュージョン領域との間にポテンシャル障壁を提供するポテンシャル障壁部とを備えていることを特徴とする。
【0012】信号増幅を行うアクティブ画素型のCMOSセンサの画素構成において,信号電荷転送用のゲート下のチャネル部の一部にフォトダイオードで蓄積した信号電荷を保持するためのポテンシャルの低い信号電荷保持領域を設け,フローティングディフュージョン領域と前記保持領域との間に,ポテンシャル障壁を提供し完全空乏化する半導体領域からなるポテンシャル障壁部を設ける。そして,信号電荷保持領域は転送ゲート電位制御によってフォトダイオードからの信号電荷転送,信号電荷保持,フローティングディフュージョン領域への信号電荷転送という動作をおこなうことが可能となる。上記構成において,フォトダイオードから前記電荷保持領域への信号電荷転送は全画素同時におこない,前記電荷保持領域からフローティングディフュージョン部への電荷転送は従来どおり線順次におこなえば,フォトダイオードの蓄積タイミングは全画素について同じとなるので,高速で動く被写体を撮像してもゆがみのない像を得ることができる。
【0013】また前記保持領域への光入射をさえぎるための遮光手段を設けることも好ましいものである。」

ニ.「【0020】・・・(中略)・・・電荷保持領域21における信号電荷は,その両端に存在するポテンシャル障壁によって孤立し,また遮光層23のために,光励起によって発生する電子が領域21に入り込むこともおさえられているため,信号電荷の保持動作ができる。」

ホ.「【0022】上記の構成,動作を持つ画素によって二次元センサが形成されるならば,「フォトダイオードに蓄積された信号電荷を電荷保持領域21に転送する」という動作は全画素同時に行うことができ,したがって信号蓄積動作の開始,終了タイミングは全画素同時となるため,ゆがみのない画像を得ることができる。」

前記イ.?ホ.によれば,引用文献2には,次の事項が記載されているといえる。

(従来のCMOSセンサの課題,本発明の目的)
「従来の二次元のCMOSセンサは,行毎にフォトダイオードの蓄積開始,終了のタイミングがずれるので,高速度で動く被写体の形状がゆがんでとらえられるという問題があり,本発明は,信号蓄積動作の開始,終了タイミングを全画素同時に可能とすることにより,動く被写体でもゆがみのない画像を得ることができる固体撮像装置の提供を目的とすること。」

(固体撮像装置の構成)
「入射した光によって発生した信号電荷を蓄積するフォトダイオードと,該信号電荷を転送するための転送手段と,該信号電荷が転送されるフローティングディフュージョン領域と,該フローティングディフュージョン領域に転送された信号電荷に基づいて増幅された信号を出力するための増幅手段とを備えた,CMOSセンサの単位画素を複数配列して構成される二次元固体撮像装置において,
前記転送手段の転送ゲートの下のチャネルの一部に設けられた前記信号電荷を保持する信号電荷保持領域と,
該信号電荷保持領域と前記フローティングディフュージョン領域との間にポテンシャル障壁を提供するポテンシャル障壁部と,
前記信号電荷保持領域への光入射をさえぎるための遮光手段を設け,
前記フォトダイオードに蓄積された信号電荷を信号電荷保持領域に転送する動作を全画素同時に行い,信号蓄積動作の開始,終了タイミングが全画素同時となる,
二次元固体撮像装置。」

(3)対比

以下,補正後の発明と引用発明を対比する。

(装置全体)
引用発明の「部分フレーム取込みモードで作動するよう構成されている2D画像センサを備えた光学読取装置」は,1D又は2Dバーコードシンボルなどの対象オブジェクトを読込み,その画像を復号するから,補正後の発明の「バーコードシンボルからバーコードデータを集め,処理するバーコード読み取り装置」に相当する。

(2次元ピクセルアレイ)
・引用発明の2D画像センサが,1D又は2Dバーコードシンボルなどの対象オブジェクトから反射される,照射アセンブリの照射光を受けることは技術常識である。
したがって,引用発明の「2D画像センサ」は,補正後の発明の「バーコードシンボルから反射される光放射を受ける2次元ピクセルアレイ」に相当する。

・本願明細書には,補正後の発明の「第1の複数のピクセル」,「第2の複数のピクセル」について,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

「【0056】・・・(中略)・・・リーダー100がイメージセンサアレイ182のすべてのピクセルより少ないピクセルから,選択的にイメージデータをアドレスし,読み出すウインドウ表示のフレームの動作モードで動作するイメージリーダー100のさらなる詳細は,図28A,28B,および28Cと関連して記述される。一般に,イメージリーダー100は,CMOSベースイメージセンサアレイ182aから,アレイ内の第1の複数のピクセルからイメージデータを選択的にアドレスし,読み出すことを,アレイ内の第2の複数のピクセルをアドレスし読み出すこととは独立に行うようプログラムされ,あるいは構成することができる。」

「【0092】・・・(中略)・・・
図28Aの実施形態において,ウインドウ表示のフレームの動作モードが図示されており,そこでは,ウインドウ表示のイメージデータは,イメージセンサアレイモジュール182の中心にある1セットの行のピクセルよりなる中央線パターンのピクセルを,選択的にアドレスし,読み出すことにより,イメージセンサアレイ182より読み出される。
・・・(中略)・・・
図28Bの実施形態において,ウインドウ表示のフレームの動作モードが,図示され,そこでは,ウインドウ表示のイメージデータは,イメージセンサアレイモジュール182の中心にある,位置的に連続するピクセルの集まり(例えば,お互いに隣接するピクセルの集まり)のみを,選択的にアドレスし,読み出すことにより,イメージセンサアレイモジュール182から読み出される。図28Cの実施形態において,ウインドウ表示のフレームの動作モードが図示され,そこでは,ウインドウ表示のイメージデータは,位置的に連続するピクセルの10×10ブロックの,離れて配置されたクラスターを,選択的に読み出すことにより,イメージセンサアレイモジュール182から読み出される。
・・・(中略)・・・
ウインドウ表示のフレームの動作モードで動作するとき,イメージリーダー100は,図28A,28Bあるいは28Cで図示されるパターンの1つ,またはそれ以上のピクセルに対応する入射光に対応するイメージデータを集めることができる。」

上記記載によれば,「第1の複数のピクセル」,「第2の複数のピクセル」は,CMOSベースイメージセンサアレイ182aから,選択的に読み出されるピクセルの集合あるいはパターンのことである。
一方,引用発明の「視野内の所定のパターンと位置に対応する第1の有効ゾーン」,「2Dシンボルを包含するであろう寸法および位置の第2の有効ゾーン」は,2D画像センサから読取られる画素の集合,パターンということができ,その画素の集合,パターンは,2D画像センサから選択的に読取られるものである。
したがって,引用発明の「視野内の所定のパターンと位置に対応する第1の有効ゾーン」,「2Dシンボルを包含するであろう寸法および位置の第2の有効ゾーン」は,補正後の発明の「第1の複数のピクセル」,「第2の複数のピクセル」に相当する。

・引用発明の2D画像センサは,「部分フレームクロックアウトモードにおいて,画像データの部分フレームをクロックアウトするよう指示されることの可能な画像センサ,あるいは個々にアドレス指定できる画素で構成されている画像センサであり,CMOS製造技術を用いれば,センサの特定の画素に対応する電気信号が,センサの残りの画素に対応する電気信号をクロックアウトすること無く選択的にクロックアウトされ」るものであるから,第1の有効ゾーン及び第2の有効ゾーンの画素を読取る際に,2次元アレイから「選択的にイメージデータをアドレスし,読み出すよう制御」していることは明らかである。
また,第1の有効ゾーンからの読取りは,第2の有効ゾーンの読取りとは別個に行われることから,それぞれの読取りは「独立」しているといえる。

・引用発明の「CMOS固体画像センサなどの2D画像センサ」が,光感受領域を有することは技術常識である。

・上記の点を総合すると,引用発明の2D画像センサと,補正後の発明の「バーコードシンボルから反射される光放射を受ける2次元ピクセルアレイであって,該2次元ピクセルアレイは,第1の複数のピクセル,および第2の複数のピクセルよりなり,該バーコード読み取り装置は,該バーコード読み取り装置が,前記2次元アレイから,前記アレイの第2の複数のピクセルとは独立して該アレイの第1の複数のピクセルから,選択的にイメージデータをアドレスし,読み出すよう制御されることができ,該ピクセルの各々は,光感受領域,および不透明シールドされたデータ蓄積領域よりなる,2次元ピクセルアレイ」は,「バーコードシンボルから反射される光放射を受ける2次元ピクセルアレイであって,該2次元ピクセルアレイは,第1の複数のピクセル,および第2の複数のピクセルよりなり,該バーコード読み取り装置は,該バーコード読み取り装置が,前記2次元アレイから,前記アレイの第2の複数のピクセルとは独立して該アレイの第1の複数のピクセルから,選択的にイメージデータをアドレスし,読み出すよう制御されることができ,該ピクセルの各々は,光感受領域よりなる,2次元ピクセルアレイ」の点で共通する。
そして,2次元ピクセルアレイが,補正後の発明では「不透明シールドされたデータ蓄積領域」を有するのに対し,引用発明では,「不透明シールドされたデータ蓄積領域」を有していない点で相違する。

(ハウジング)
引用発明の「人間の手でつかむことができるハウジング」は,補正後の発明の「2次元ピクセルアレイを収容するハンドヘルドハウジング」に相当する。

(光学素子)
引用発明の「対象オブジェクトの画像を受信し2D画像センサ上に集束させる画像化光学部品アセンブリ」は,補正後の発明の「バーコードシンボルから反射された光放射を,2次元ピクセルアレイ上に向ける光学素子」に相当する。

(グローバル電子シャッター)
引用発明は,補正後の発明が備えるグローバル電子シャッターの構成を備えていない。

(バーコード処理モジュール)
引用発明の制御回路は,「部分フレームクロックアウトモードにおいて,2D画像センサの画素の全てよりも少ない画素に対応する電気信号をクロックアウトすなわち読取りし,画素位置に対応する画像データをメモリに取込み,メモリに記憶された画像データを復号」することから,バーコードシンボルを処理する手段であり,2D画像センサと電気的に通信するといえる。
また,画像データを復号することは,画像データの中にに含まれるバーコードシンボルの表示を自動的に識別し,特定することにほかならない。
したがって,引用発明における,画像データを復号する制御回路と,補正後の発明の「バーコード処理モジュールであって,該バーコード処理モジュールは,2次元ピクセルアレイと電気的に通信し,該バーコード処理モジュールは,集められたイメージデータにおけるバーコードシンボルの表示を自動的に識別し,特定することができる,バーコード処理モジュール」は,「バーコード処理手段であって,該バーコード処理手段は,2次元ピクセルアレイと電気的に通信し,該バーコード処理手段は,集められたイメージデータにおけるバーコードシンボルの表示を自動的に識別し,特定することができる,バーコード処理手段」の点で共通する。
そして,バーコード処理手段が,補正後の発明では「バーコード処理モジュール」であるのに対し,引用発明では「制御回路」であり,モジュールではない点で相違する。

(照準パターンの照射)
引用発明の照射アセンブリは,「照明源アセンブリと,光源からの光を対象オブジェクトの方向に向けさせるための照射光学部品アセンブリとを併せ持ち,レーザや発光ダイオードからなることができ,対象オブジェクトに照準パターンを投影する対象照射・光学部品を備える」ことから,光源が照準パターンを投影するように構成されているといえる。
したがって,引用発明における,照射アセンブリの光源が照準パターンを投影するよう構成されていることと,補正後の発明の「照準パターンが少なくとも露出タイミングパルス中に活性化するように,少なくとも1つの光源が照準パターンを投射するように構成される」は,「少なくとも1つの光源が照準パターンを投射するように構成される」の点で共通する。
そして,補正後の発明では,「照準パターンが少なくとも露出タイミングパルス中に活性化する」のに対し,引用発明は,当該構成を備えてない点で相違する。

したがって,補正後の発明と引用発明は,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)
「バーコードシンボルからバーコードデータを集め,処理するバーコード読み取り装置であって,該バーコード読み取り装置は,
バーコードシンボルから反射される光放射を受ける2次元ピクセルアレイであって,該2次元ピクセルアレイは,第1の複数のピクセル,および第2の複数のピクセルよりなり,該バーコード読み取り装置は,該バーコード読み取り装置が,前記2次元アレイから,前記アレイの第2の複数のピクセルとは独立して該アレイの第1の複数のピクセルから,選択的にイメージデータをアドレスし,読み出すよう制御されることができ,該ピクセルの各々は,光感受領域よりなる,2次元ピクセルアレイと,
前記2次元ピクセルアレイを収容するハンドヘルドハウジングと,
バーコードシンボルから反射された光放射を,2次元ピクセルアレイ上に向ける光学素子と,
バーコード処理手段であって,該バーコード処理手段は,2次元ピクセルアレイと電気的に通信し,該バーコード処理手段は,集められたイメージデータにおけるバーコードシンボルの表示を自動的に識別し,特定することができる,バーコード処理手段とを備え,
少なくとも1つの光源が照準パターンを投射するように構成される,バーコード読み取り装置。」

(相違点1)
「2次元ピクセルアレイ」に関し,補正後の発明は「該ピクセルの各々は,光感受領域,および不透明シールドされたデータ蓄積領域よりなる」ものであるのに対し,引用発明は,上記「不透明シールドされたデータ蓄積領域」を備えているか否か不明である点。

(相違点2)
補正後の発明は「前記2次元ピクセルアレイと関連したグローバル電子シャッターであって,該グローバル電子シャッターは,該2次元ピクセルアレイにおける全体フレームのピクセルのすべて,またはほとんどすべてを,同時に露光させることができるものである,グローバル電子シャッター」の構成を備えているのに対し,引用発明は当該構成を備えていない点。

(相違点3)
「バーコード処理手段」に関し,補正後の発明は「バーコード処理モジュール」であるのに対し,引用発明は「制御回路」である点。

(相違点4)
照準パターンに関し,補正後の発明は「照準パターンが少なくとも露出タイミングパルス中に活性化する」のに対し,引用発明は当該構成を備えていない点。

(4)相違点の検討・判断

(相違点1)(相違点2)について
引用文献2には,従来の二次元CMOSセンサでは,行毎にフォトダイオードの蓄積開始,終了のタイミングがずれるので,高速度で動く被写体の形状がゆがんでとらえられるという課題が示され,その課題を解決するために,CMOSセンサの単位画素に,光入射をさえぎるための遮光手段を設けた信号電荷保持領域を設け,フォトダイオードに蓄積された信号電荷を,この信号電荷保持領域に転送する動作を全画素同時に行うことで,信号蓄積動作の開始,終了タイミングを全画素同時とすることが記載されている。
引用文献2に記載された二次元CMOSセンサにおいて,信号蓄積動作の開始,終了タイミングを全画素同時とする構成は,補正後の発明の「前記2次元ピクセルアレイと関連したグローバル電子シャッターであって,該グローバル電子シャッターは,該2次元ピクセルアレイにおける全体フレームのピクセルのすべて,またはほとんどすべてを,同時に露光させることができるものである,グローバル電子シャッター」にほかならない。
また,引用文献2に記載された,光入射をさえぎるための遮光手段を設けた信号電荷保持領域は,補正後の発明の「不透明シールドされたデータ蓄積領域」に相当する。
さらに,引用文献2に記載されたフォトダイオードは,補正後の発明の「光感受領域」に相当する。
したがって,引用文献2に記載された二次元CMOSセンサは,補正後の発明の「該ピクセルの各々は,光感受領域,および不透明シールドされたデータ蓄積領域よりなる」構成を有するといえる。
一方,引用発明は,引用文献2に記載された二次元CMOSセンサと同じ種類の,2DのCMOS固体画像センサを使用することから,引用文献2に記載された,行毎にフォトダイオードの蓄積開始,終了のタイミングがずれると高速度で動く被写体の形状がゆがんでとらえられるという,二次元CMOSセンサの分野における一般的に広く知られた課題を解決するために,引用発明の二次元CMOSセンサに,引用文献2に記載された画素の構成を採用することは格別困難ではない。
してみると,引用発明において,引用文献2に記載された,被写体の形状がゆがんでとらえられるという周知の課題を解決するために,二次元CMOSセンサに引用文献2記載の画素の構成を採用して,信号蓄積動作の開始,終了タイミングを全画素同時とするように構成し,これにより,「該ピクセルの各々は,光感受領域,および不透明シールドされたデータ蓄積領域よりなる」ものとし,「前記2次元ピクセルアレイと関連したグローバル電子シャッターであって,該グローバル電子シャッターは,該2次元ピクセルアレイにおける全体フレームのピクセルのすべて,またはほとんどすべてを,同時に露光させることができるものである,グローバル電子シャッター」を設けることは容易に想到し得ることである。

(相違点3)について
プロセッサ及び機能プログラムをモジュールとして構成すること自体は単なる慣用手段であるところ,引用発明のバーコード処理手段は制御回路即ちプロセッサ142及びプログラムデータに基づいて画像データを復号するのであるから,当該プロセッサのうちのバーコードの復号化にかかわる部分及びプログラムを,前記慣用手段に基づいて,モジュール構造として構成することにより,引用発明の「制御回路」を補正後の発明のような「バーコード処理モジュール」として構成する程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。

(相違点4)について
相違点4に係る,照準パターンの活性化について検討する。
本願明細書には,「活性化」について,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した)。
「【0012】
もう1つの側面において,本発明は,目標からイメージデータを集めるための方法を特徴づける。該方法は,照明制御タイミングパルスに応答して,目標を照明するよう光源を活性化する。光源の活性化は,照明制御タイミングパルスの期間中の間,起こる。」
「【0044】・・・(中略)・・・一方,照準照明光源160a,160bは,照準パターン1838を投射する。図33-36に関連して記述された実施形態において,照準照明光源160a,160bからの光は,スリット1840を,基板s上に撮像し,図33-36の実施形態ではラインパターン1838である照準パターン1838を形成するレンズ1842と結合して,スリット開口1840により整形される。」
「【0064】
プロセス300(図9)を参照して,イメージリーダー100は,照明制御パルス350,350',350'',350'''が,ステップ304で,照準LED160aまたは160bの少なくとも1つ,および照明LED160c?160tの少なくとも1つを,同時にエネルギー供給し,基板s上の,特に基板s上の照明パターン1830および照準パターン1838が同時に投射される領域上の照明の強度を増大させるように構成することができる。」

上記記載によれば,「光源の活性化」は,照明制御タイミングパルスの期間中,起こり,その照明制御タイミングパルスは,照準パターンを投射するための照準照明光源にエネルギーを供給することから,補正後の発明の「照準パターンが少なくとも露出タイミングパルス中に活性化する」という構成は,照準パターンの投射期間と,露出タイミングパルスを発生する期間すなわち露出期間とが,少なくともその一部で重複していることを指しているに過ぎない。
一方,引用発明において,照射アセンブリが対象オブジェクトを照明する理由は,2D画像センサが対象オブジェクトを読み取るために必要な光量を得るためであることは明らかであり,照明期間と露出期間とが一部で重複することは当然のことにすぎない。
その場合,照射アセンブリは,「対象オブジェクトに照準パターンを投影する対象照射・光学部品」を備えることから,照明期間中に照準パターンを投影し,その結果,照準パターンの投影期間と露出期間とが,少なくともその一部で重複することは普通に想到されることである。
また,引用文献2に記載された固体撮像装置は,信号蓄積動作の開始,終了タイミングを全画素同時とするものであるから,全画素の信号蓄積動作の開始,終了タイミングを制御するための信号として,信号蓄積動作期間すなわち露出期間を規定する露出タイミングパルスを用いることも格別困難ではない。
してみると,引用発明において,照射アセンブリの照明が2D画像センサの露出に使用されるようにするために,照明期間と露出期間とを一部で重複させ,その照明期間中に照準パターンを投影し,また,露出期間の制御に露出タイミングパルスを用いて,「照準パターンが少なくとも露出タイミングパルス中に活性化するように,少なくとも1つの光源が照準パターンを投射する」という構成とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。

そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明及び引用文献2の記載事項から予測される範囲のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,補正後の発明は,引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.補正却下の決定のむすび

以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明

引用文献の記載事項は,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用文献」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断

そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり,引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いた本願発明も,同様の理由により,容易に発明できたものである。

4.むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-31 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-15 
出願番号 特願2013-3616(P2013-3616)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 浩和田 財太  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 川崎 優
手島 聖治
発明の名称 グローバル電子シャッター制御を持つイメージ読み取り装置  
代理人 夫馬 直樹  
代理人 山本 修  
代理人 小林 泰  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小野 新次郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ