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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1310626
審判番号 不服2014-26507  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-25 
確定日 2016-02-04 
事件の表示 特願2010-135023「マルチモダリティ動画像診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月 5日出願公開、特開2012- 135〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年6月14日に出願された特許出願であって、平成25年10月9日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年12月16日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに平成26年1月14日付けで最後の拒絶の理由が通知され、これに対して、同年3月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月25日付けで、同年3月20日にされた手続補正について補正の却下の決定がされた上で、同年9月25日付けで、拒絶の査定がなされ、同拒絶査定の謄本は同年10月7日に請求人に送達された。
これに対して、同年12月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年12月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
上記手続の経緯において認定したように、原審において、本願出願人である審判請求人が平成26年3月20日にした手続補正は、決定により却下されていることから、本件補正は、平成25年12月16日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1の記載(下記(1)参照)を平成26年3月20日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1に記載(下記(2)参照)されたとおりに補正することをその一部に含むものである。

(1)平成25年12月16日提出の手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
心拍、又は呼吸に同期した1周期分の動画である繰り返し画像を撮影する第1の診断装置と、前記繰り返し画像と異なるフレームレートを有する連続画像を撮影する第2の診断装置のそれぞれで撮像された画像データを取り込んで画像処理を行う画像診断装置において、
前記画像診断装置にデータを入力する入力手段と、
前記繰り返し画像および前記連続画像を含むデータを記憶する記憶手段と、
1周期分の動画を繰り返して表示する前記繰り返し画像の表示と、前記連続画像の表示とを行う表示手段と、
前記連続画像の撮影に連動させて同期信号を発生させる同期信号発生手段と、
前記繰り返し画像のフレームレートを前記同期信号に同期するように該フレームレートを補正処理する処理手段と、を有し、
前記繰り返し画像を表示する際に、前記繰り返し画像と前記連続画像とを同期させながら同時に前記表示手段に表示することを特徴とする画像診断装置。 」

(2)平成26年12月25日提出の手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
心拍、又は呼吸に同期した1周期分の動画である繰り返し画像を撮影する第1の診断装置と、前記繰り返し画像と異なるフレームレートを有する連続画像を撮影する第2の診断装置のそれぞれで撮像された画像データを取り込んで画像処理を行う画像診断装置において、
前記画像診断装置にデータを入力する入力手段と、
前記繰り返し画像および前記連続画像を含むデータを記憶する記憶手段と、
1周期分の動画を繰り返して表示する前記繰り返し画像の表示と、前記連続画像の表示とを行う表示手段と、
ドップラ信号の変化により同期信号を発生させる同期信号発生手段と、
前記繰り返し画像のフレームレートを前記同期信号に同期するように該フレームレートを補正処理する処理手段と、を有し、
前記繰り返し画像を表示する際に、前記繰り返し画像と前記連続画像とを同期させながら同時に前記表示手段に表示することを特徴とする画像診断装置。 」(下線は、補正箇所を示す。)

(3)請求項1の補正の内容について
本件補正前の「前記連続画像の撮影に連動させて同期信号を発生させる同期信号発生手段」を「ドップラ信号の変化により同期信号を発生させる」ものに限定するものであるから、本件補正前の請求項1に係る発明を減縮するものであって、その産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではないから、上記請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、次に、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かすなわち、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定する要件を満たすものであるか否か(いわゆる、「独立特許要件」を有するか否か)について検討する。

2 本件補正発明についての独立特許要件についての検討
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)において説示したとおり、平成26年12月25日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用例
ア 本願の出願前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-192151号公報(以下、引用例1という。)には、つぎの事項が記載されている。(下線は、当審において付与した。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置、X線CT装置、又はMRI装置等の医用画像診断装置により時系列的に撮像された3次元で表される医用画像を画像処理して表示するための画像処理装置に関する。」
(イ)「【背景技術】
【0002】
超音波診断装置又はX線CT装置等の医用画像診断装置にて撮像された患者の医用画像を観察するために、画像表示及び画像処理が行える画像処理装置が用いられている。この画像処理装置は、2次元画像の表示に加え、3次元画像を観察することもできる。この観察の際には、画像同士を比較するため、例えば、各々の画像表示の観察角度及び拡大率を同じ状態にして観察することにより、画像同士の比較が容易になる。
【0003】
また、3次元画像を表示する画像処理装置では、複数の3次元画像を表示することができるものがあり、複数の3次元画像を表示する際に、撮影時の撮影情報及び表示パラメータに基づいて同期させて表示するものが知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2002-125937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の画像処理装置においては、所定の時間ごとに撮像された時系列的な3次元画像データを同期させて表示することは行われていない。そのため、医用画像診断装置にてスキャンが行なわれている最中に、いわゆるリアルタイムに複数の3次元画像データを同期させて表示させることは困難であり、また、異なる医用画像診断装置にて撮像された時系列的な3次元画像データを重畳させて表示することは困難であった。
【0006】
また、従来の画像処理装置においては、スキャン中に3次元画像データから観察したい領域を抽出して、抽出した観察領域に含まれる3次元画像同士を同期させて比較することが行われていなかった。そのため、時系列的な3次元画像データを扱う場合、特に、複数の時系列的な3次元画像データ同士を比較する場合に、各時相における3次元画像データを領域抽出する必要があるが、そのデータ量が膨大であるため、操作者は多大な労力と時間を費やす必要があった。これにより、例えば、術前と術後の時系列的な3次元画像データの比較や、典型症例との比較等が困難となっていた。
【0007】
以上のように、従来技術に係る画像処理装置においては、スキャン中(リアルタイム)に時系列的な3次元画像データ同士を比較することができず、一旦保存した3次元画像データに対する処理のみが可能となるため、その応用が限られていた。」
(ウ)「【0010】
この発明は上記の問題を解決するものであり、予め収集された時系列的な3次元画像データから抽出した観察領域の範囲に基づいて、スキャンにより時系列的に収集されている3次元画像データから時間ごとに所望の観察領域をリアルタイムに抽出することが可能な画像処理装置を提供することを目的とするものである。そのことにより、医用画像診断装置を用いて時系列的に収集される3次元画像データと、予め医用画像診断装置により収集されて保存されている時系列的な3次元画像データとを、表示装置にて表示して比較する際に、時間ごとに所望の観察領域に含まれる3次元画像同士の比較を容易にすることが可能な画像処理装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
また、心電信号等の生体情報を用いることにより、複数の3次元画像データを時間的に同期させことが可能な画像処理装置を提供することを目的とするものである。その結果、複数の3次元画像データ同士の比較を容易にすることが可能な画像処理装置を提供することを目的とするものである。」
(エ)「【0020】
(構成)
この発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の構成について、図1及び図2を参照しつつ説明する。図1は、この発明の第1の実施形態に係る画像処理装置を備えた医用画像システムの概略構成を示すブロック図である。医用画像システムは、医用画像診断装置1、位置情報収集部6、生体情報収集部7、画像処理装置20及び記憶装置40を備えて構成されている。
【0021】
医用画像診断装置1は、例えば、X線CT装置や超音波診断装置等で構成されている。図1には、X線CT装置の例が示されている。照射部2は、X線源、高電圧発生装置及びX線源制御装置等で構成され、被検体である撮影対象に向けてX線ビームを曝射するものである。X線源は、例えば、チャンネル方向とスライス方向(被検体の体軸方向)との2方向に広がるいわゆるコーンビームX線を発生する。検出器3は、照射部2から曝射され、被検体を透過したX線ビームを検出するX線検出器からなる。また、検出器3は、例えば、X線検出素子を互いに直交する2方向それぞれにアレイ状に複数個配列され、これにより2次元のX線検出器を成している。
【0022】
データ収集部4(DAS)は、検出器3の各X線検出素子と同様にアレイ状に配列されたデータ収集素子を有し、検出器3により検出されたX線ビームを、スキャン制御部(図示しない)により出力されたデータ収集制御信号に対応させて収集する。この収集されたデータがX線投影データとなる。
【0023】
画像再構成部5は、データ収集部4から出力されるX線投影データを逆投影処理することにより、画像データを再構成する。この逆投影の方法は公知の方法と同じであり、例えばFeldkamp法と呼ばれる方法に代表される3次元画像再構成アルゴリズムによる再構成を行い、スライス方向に広い対象領域(ボリューム)内におけるX線吸収係数の3次元的分布データ(以下、ボリュームデータと称する)を再構成する。再構成されたボリュームデータは、データ処理装置(図示しない)にて、操作者の指示に基づき、任意断面の断層像、任意方向からの投影像、レンダリング処理による特定臓器の3次元表面画像等のいわゆる擬似3次元画像データに変換され、画像処理装置20に送られる。
【0024】
位置情報収集部6は、例えば、磁気的又は光学的な原理により動作する3次元位置センサからなり、被検体(撮影対象)Pの3次元位置情報を収集し、その3次元位置情報を時間ごとに位置制御部33に出力する。つまり、位置情報収集部6は時系列的な3次元位置情報を収集して位置制御部33に出力する。なお、後述するが、3次元画像データから抽出される解剖学的特徴点も3次元位置情報とする。
【0025】
生体情報収集部7は、医用画像診断装置1にてスキャン中に、被検体の心電信号(ECG信号)、筋電信号(EMG信号)又は関節の動作情報等の生体情報を取得するものである。例えば心電計が用いられる場合は、生体情報収集部7は、被検体の心電信号(ECG信号)を検出し、検出された心電信号(ECG信号)をデジタル信号に変換する。そして、時系列的な3次元画像データと同時に得られる心電信号(ECG信号)は、時間ごとに収集される複数の3次元画像データの付帯情報として時間制御部34に出力され、更に生体情報記憶部43に保存される。なお、筋電信号(EMG信号)とは、筋の活動電位を皮膚表面から測定した信号である、また、関節の動作情報とは、意図的に被検体の関節を動かしたときのその関節がなす角度等を示すものであり、動かすことにより、時間ごとに変化して異なる角度となる。」
(オ)「【0032】
時間制御部34は、生体情報収集部7により収集された生体情報と、生体情報記憶部43に記憶されている生体情報とを読み込む。この生体情報は、時間ごとに変化する情報であり、上述した心電信号(ECG信号)や筋電信号(EMG信号)等が該当する。そして、時間制御部34は、読み込んだ生体情報に基づいて、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データと、画像記憶部41に保存されている時系列的な3次元画像データとを同期させる。つまり、同じ時刻(時相)に収集された3次元画像データを画像表示部22に同時に表示させるために、3次元画像データの付帯情報としての生体情報に基づいて、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データ及び予め収集されている時系列的な3次元画像データのうち、同じ時刻(時相)に収集された3次元画像データ同士を同期させ、画像表示部22は、同期させられた3次元画像データを同時に表示する。
【0033】
さらに、スキャンにより得られている3次元画像データと予め収集された3次元画像データとで、単位時間当たり(例えば1秒当たり)の画像数が異なる場合は、単位時間当たりの画像数が少ない画像データに対して補間処理を行って、スキャンにより得られている3次元画像データと予め収集された3次元画像データとを同期させる。」
(カ)「【0041】
また、記憶装置40は、画像記憶部41、位置情報記憶部42、生体情報記憶部43、領域情報記憶部44及び操作情報記憶部45を備えて構成されている。
【0042】
画像記憶部41には、医用画像診断装置1により予め所定時間ごとに収集された時系列的な3次元画像データが保存されている。例えば、X線CT装置、超音波診断装置又はMRI装置等により収集された、時間ごとに少しずつ異なる時系列的な3次元画像データが保存されている。この実施形態に係る医用画像診断装置1はX線CT装置を想定しているが、画像記憶部41には、X線CT装置により収集された画像データの他、別の装置、例えば、超音波診断装置やMRI装置等により収集された画像データが保存されていても良い。つまり、同じ診断装置で収集された画像データのみならず、別の診断装置で収集された画像データが保存されていても構わないことになる。例えば、異なる診断装置で収集された画像同士を比較するために、異なる診断装置で収集された画像データを保存しておく。
【0043】
位置情報記憶部42には、解剖学的特徴点や予め撮像時に被検体に装着された補助具によるマーカ等により表される、時間ごとに少しずつ異なる時系列的な3次元位置情報が記憶されている。または、位置情報収集部6により収集された被検体Pの3次元位置情報が記憶されている。
【0044】
生体情報記憶部43には、心電信号(ECG)、筋電信号(EMG)又は関節動作情報等からなる時間ごとに変化する生体情報が記憶されている。この生体情報は、医用画像診断装置1によるスキャン中に同時に被検体Pから収集される情報であり、時間ごとに収集される複数の3次元画像データの付帯情報を成すものである。
(キ)「【0049】
上述した例においては、医用画像診断装置1としてX線CT装置を用いているが、この他、超音波診断装置やMRI装置等を用いても良い。図2に、医用画像診断装置として超音波診断装置を用いた例を示す。図2のブロック図に示す医用画像システムにおいては、医用画像診断装置の構成のみが異なっている。図2に示す医用画像診断装置10は、超音波診断装置からなり、超音波プローブ11、送受信部12、信号処理部13及びDSC(デジタルスキャンコンバータ)14を備えて構成されている。
・・・
【0054】
信号処理部13は、Bモード処理部、ドプラ処理部及びカラーモード処理部を備えている。送受信部12から出力されたRFデータは、いずれかの処理部にて所定の処理を施される。
【0055】
Bモード処理部は、エコーの振幅情報の映像化を行い、エコー信号からBモード超音波ラスタデータを生成する。具体的には、RFデータに対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。その他、エッジ強調等の処理が行われる場合もある。このBモード処理部で生成されるデータをBモード超音波ラスタデータという。
【0056】
ドプラ処理部は、位相検波回路及びFFT演算回路等から構成され、RFデータからドプラ偏移周波数成分を取り出し、更にFFT処理等を施して血流情報を有するデータを生成する
【0057】
カラーモード処理部は、動いている血流情報の映像化を行い、カラー超音波ラスタデータを生成する。血流情報には、速度、分散、パワー等の情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。具体的には、カラーモード処理部は、位相検波回路、MTIフィルタ、自己相関器、及び流速・分散演算器から構成されている。このカラーモード処理部は、組織信号と血流信号とを分離するためのハイパスフィルタ処理(MTIフィルタ処理)が行われ、自己相関処理により血流の移動速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。その他、組織信号を低減及び削減するための非線形処理が行われる場合もある。」
(ク)「【0074】
このように各3次元画像データの向き及び位置が一致させられた後、各3次元画像データは時間制御部34に出力される。時間制御部34は、生体情報収集部7により収集される心電波形(ECG信号)等の生体情報に基づいて、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データBと、予め収集された時系列的な3次元画像データAとを同期させる。この時間制御部34による制御について、図5乃至図11を参照しつつ説明する。図5は、この発明の第1の実施形態に係る画像処理装置により、2つの時系列的な3次元画像データを同期させて表示する処理を順番に示すフローチャートである。
【0075】
まず、時間制御部34は、位置制御部33から出力された3次元画像データAと3次元画像データBとを受け、更に、生体情報記憶部43に記憶されている、予め収集された3次元画像データAの付帯情報である生体情報を読み込む(ステップS10)。次に、時間制御部34は、生体情報収集部7から、スキャンにより得られている3次元画像データBの付帯情報である生体情報を読み込む(ステップS11)。
【0076】
生体情報収集部7として、心電計を用いた場合は、被検体(撮影対象)Pの心電信号(ECG信号)が収集されるため、その心電信号(ECG信号)が生体情報となる。また、筋電計を用いた場合は、EMG信号が収集されるため、そのEMG信号が生体情報となる。その他、意図的に被検体の関節を動かしたときのその動きを示す関節動作情報を生体情報とすることもできる。
【0077】
時間制御部34は、3次元画像データAの付帯情報としての生体情報と、3次元画像データBの付帯情報としての生体情報とが一致しているか否かの判断を行い(ステップS12)、生体情報が異なっている場合は(ステップS12、No)、時間制御部34は、生体情報を一致させる(ステップS13)。例えば、3次元画像データAの生体情報として筋電信号(EMG信号)が読み込まれ、3次元画像データBの生体情報として心電信号(ECG信号)が読み込まれた場合は、生体情報が異なっている。この場合、時間制御部34は、例えば、3次元画像データAの生体情報として心電信号(ECG信号)を生体情報記憶部43から読み込み、生体情報を一致させる。」
(ケ)「【0061】
(動作)
次に、この発明の第1の実施形態に係る画像処理装置に動作について、図3乃至図18を参照しつつ説明する。まず、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データと、予め収集されて画像記憶部41に保存されている時系列的な3次元画像データとの座標系を一致させるための制御について、図3及び図4を参照しつつ説明する。図3は、この発明の第1の実施形態に係る画像処理装置による座標変換処理を順番に示すフローチャートである。図4は、この発明の第1の実施形態に係る画像処理装置による座標変換処理を説明するための図である。
【0062】
まず、X線CT装置又は超音波診断装置等からなる医用画像診断装置1(10)により、時間的に少しずつ異なる時系列的な3次元画像データが収集され、図1又は図2に示す画像制御部32を介して画像記憶部41に保存される。この時系列的な3次元画像データは、画像制御部32からシステム制御部31を介して画像表示部22に出力され、画像表示部22にて時間ごとに少しずつ異なる3次元画像データが表示される。これにより、操作者は、3次元画像データを動画としていわゆるリアルタイムに観察することが可能となる。この画像記憶部41に保存されている時系列的な3次元画像データを、予め収集された時系列的な3次元画像データ(過去に収集された時系列的な3次元画像データ)とし、便宜的に「時系列的な3次元画像データA」と称する場合もある。
【0063】
そして、医用画像診断装置1(10)により、時間ごとに少しずつ異なる、新たな時系列的な3次元画像データを収集する。ここで、今現在スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データを、便宜的に「時系列的な3次元画像データB」と称する場合もある。この新たな時系列的な3次元画像データBは、逐次、医用画像診断装置1(10)から画像処理装置20の画像制御部32に出力される。
【0064】
そして、スキャンにより新たな時系列的な3次元画像データBを収集しているときに、画像制御部32は、画像記憶部41から予め収集された時系列的な3次元画像データAを読み込む。そして、画像制御部32は、予め収集された時系列的な3次元画像データAと、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データBとを位置制御部33に出力する。
(コ)「【0078】
この実施形態においては、生体情報収集部7に心電計を用いて、被検体Pの心電信号(ECG信号)を収集する場合について説明する。生体情報が一致している場合は(ステップS12、Yes)、時間制御部34は、その生体情報のタイムスケールを一致させ、互いの生体情報の時刻(時相)を一致させる(ステップS14)。ここで、生体情報として心電信号(ECG信号)を用いた場合において、タイムスケールを一致させる処理について図6及び図7を参照しつつ説明する。図6は、心電信号(ECG信号)を示す図である。図7は、この発明の第1の実施形態に係る画像処理装置により、2つの時系列的な3次元画像を同期させて表示する処理を説明するための図である。
【0079】
図6に示す、ECG1は、予め収集された時系列的な3次元画像データAを収集する際に、同時に収集された心電信号(ECG信号)である。また、ECG2は、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データBを収集している際に、同時に収集されている心電信号(ECG信号)である。この例においては、ECG2よりもECG1の方が心拍の間隔が短い。なお、図6に示すように、心電信号(ECG信号)には、「P」、「Q」、「R」、「S」、「T」、「U」と命名されたピークがある。
【0080】
時間制御部34は、ECG1とECG2とを利用して、3次元画像データAと3次元画像データBのタイムスケールを一致させる。時間制御部34は、例えば、ECG信号のR波(ピークR)のみを抽出して、R波(ピークR)を一致させることにより、タイムスケールを一致させる。例えば図7に示すように、ECG1のR波(ピークR)が、ECG2のR波(ピークR)に一致するようにECG1の時間軸を延ばしてECG1’とする。また、R波(ピークR)のみならず、他のピークも使用してタイムスケールを一致させても良い。例えば、時間制御部34は、ECG1の各ピークが、ECG2の各ピークにそれぞれ一致するようにECG1の時間軸を延ばしてECG1’としても良い。このように、3次元画像データAと3次元画像データBのタイムスケールを一致させ、同じ時刻(時相)における3次元画像データ同士を同期させ、それらを画像表示部22に出力して画像表示部22にて同時に表示することで、同じ時刻(時相)にて収集された3次元画像同士の比較が可能となる。
【0081】
そして、時間制御部34は、3次元画像データA及び3次元画像データBの単位時間当たり(例えば1秒当たり)の画像数をそれぞれ算出し、単位時間当たりの画像数が少ない方の画像データに対して補間処理を施して所定の時刻(時相)の3次元画像データを生成する。例えば、単位時間当たりの画像数が、3次元画像データAよりも3次元画像データBの方が多い場合は(ステップS15、Yes)、3次元画像データAに対して補間処理を施して、単位時間当たりの画像数を3次元画像データBに一致させる(ステップS17)。一方、単位時間当たりの画像数が、3次元画像データBよりも3次元画像データAの方が多い場合は(ステップS15、No)、3次元画像データBに対して補間処理を施して、単位時間当たりの画像数を3次元画像データAに一致させる(ステップS16)。」
(サ)「【0087】
次に、単位時間当たりの画像数が、3次元画像データAよりも3次元画像データBの方が多い場合(ステップS15、Yes)について説明する。この場合においては、ある時刻(時相)において収集された3次元画像データBに対応する3次元画像データAが欠けて存在しないため、3次元画像データAに対して補間処理を施して、その時刻(時相)における欠けている3次元画像データを生成して、その時刻(時相)の3次元画像データBに一致させる。
【0088】
予め収集された時系列的な3次元画像データAを補間する場合について、図8及び図9を参照しつつ説明する。図8及び図9は、この発明の第1の実施形態に係る画像処理装置による画像補間処理を説明するための図である。
【0089】
図8に示すように、時間制御部34によりタイムスケールが延ばされた状態において、画像データg23に対応する画像データg13が存在しない。つまり、時刻(時相)t3(ピークT)における3次元画像データAが欠けて存在しない。従って、3次元画像データAと3次元画像データBとを比較する場合に、時刻(時相)t3(ピークT)における画像データ同士の比較が不可能となってしまう。そこで、時間制御部34は、時刻(時相)t3の前後の時刻(時相)t2、t4にて収集された画像データg12及びg14を用いて、時刻(時相)t3の欠けている画像データg13を補間して求める。
【0090】
図9(a)に、時刻(時相)t2、t4におけるボリュームデータ内のボクセル位置とボクセル値との関係を示す。横軸は、ボリュームデータのボクセル位置を示し、縦軸はそのボクセル位置におけるボクセル値を示している。例えば、任意のボクセル位置nにおける時刻(時相)t2のボクセル値はv2となり、時刻(時相)t4のボクセル値はv4となる。
【0091】
図9(b)に、任意のボクセル位置nにおける、時刻(時相)t2のボクセル値と、時刻(時相)t4のボクセル値とを示す。時刻(時相)t3におけるボクセル値v3は、ボクセル値v2とv4との間にあると推測されるため、ボクセル値v2とv4を結ぶ、ユーザ指定の関数「v=f(t)」により、時間制御部34は、時刻(時相)t3におけるボクセル値v3を算出する。この関数「v=f(t)」は、線形又は非線形の関数の指定が可能である。そして、時間制御部34は、全てのボクセル位置におけるボクセル値を算出し、時刻(時相)t3における欠けている画像データg13を生成する。
【0092】
このように、画像データを補間して3次元画像データA及び3次元画像データBを、画像表示部22にて同時に表示することで、同じ時刻(時相)の3次元画像データを表示して比較することが可能となる。
【0093】
次に、単位時間当たりの画像数が、3次元画像データBよりも3次元画像データAの方が多い場合(ステップS15、No)について説明する。この場合においては、ある時刻(時相)において収集された3次元画像データAに対応する3次元画像データBが欠けて存在しないため、3次元画像データBに対して補間処理を施して、その時刻(時相)における画像データを生成して、3次元画像データAに一致させる。
【0094】
スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データBを補間する場合について、図10及び図11を参照しつつ説明する。図10及び図11は、この発明の第1の実施形態に係る画像処理装置による画像補間処理を説明するための図である。
【0095】
例えば図10に示すように、画像データg13に対応する画像データg23が欠けて存在しないものとする。つまり、時刻(時相)t3における3次元画像データBが欠けて存在しない。この場合も上述した補間方法により補間して時刻t3における3次元画像データBを生成すれば良いが、3次元画像データBは今現在、スキャンにより収集しているデータであるため、時刻t3における3次元画像データを表示するまでに、時刻t4における3次元画像データが収集されていなければ、時刻t3における3次元画像データを補間することができない。つまり、図10に時刻t0で表す現在の時刻においては、画像データg24以降のデータが存在しないため、時刻t0の段階においては、上述したように時刻t2と時刻t4における3次元画像データを用いて補間処理を行って、時刻(時相)t3における欠けている画像データg23を生成することはできない。
【0096】
そこで、スキャンにより現在得られている時系列的な3次元画像データBを補間する場合は、画像表示部22の表示更新のタイミングをずらすことによって、補間処理を完了して画像データを生成し、補完された画像データを表示する。」

イ 引用例2(特開2003-61961号公報)記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2003-61961号公報(以下、「引用例2」という。)には、つぎの事項が記載されている。
(ア)「【0008】
【発明の概要】本発明は、以前に取得した画像と比較するために生理学的構造の画像を取得するとき正しい投影/切断平面が得られるように超音波スキャナのユーザを案内し支援するシステム及び方法を対象とする。本発明の好ましい実施形態によれば、超音波スキャナ画面領域は2つの部分に分割され、その内の一方の部分は参照画像ループを示し、他方の部分は生の画像ループを示す。2つ以上の参照画像ループを示してもよく、例えば、ベースライン及び以前のストレス・レベルの両方からのストレス・エコー参照画像ループを3画像画面レイアウトで示すことができる。
【0009】参照画像ループは患者のECG信号に基づいて生の撮像と同期させる。この代わりに、心拍動と同期して変化する幾つかの他の生理学的信号、例えば、血圧、ドップラー信号、フレーム相関係数や、画像自身内の関心のある領域からの平均グレースケールさえも使用することが可能である。ループの周期(繰返し時間)が、以前の心拍動サイクル(1つ又は複数)を使用して予測される。 前記X線撮像ユニット2は、前記支点軸5の前端部に連結固定された支持フレーム11、この支持フレーム11の一端側に装備されたX線照射部12、支持フレーム11の他端部に装備されたフラットパネルディテクタ(FPD)利用の撮像部13とで構成されている。さらに、詳細には図1,2に示すように、支持フレーム11は、X線照射部12が移動可能に装備されている部分であるX線照射支持部40と、撮影部13が装備されている部分である撮影支持部41とに分かれている。また、これらX線照射支持部40と撮影支持部41とは、支持フレーム11に連結されている支点軸5の部分で分かれているものである。さらに、撮影支持部41は、X線照射支持部40に装備されたX線照射部12が移動する方向とは異なる方向(図2で示す左側に凹んだコの字状に)に曲げられて撮影部13と接続されている。」
(イ)「【0030】本発明の好ましい実施形態によれば、参照画像ループを患者のECG信号に基づいて生の撮像と同期させる。ループの周期(繰返し時間)は以前の心拍動サイクル(1つ又は複数)を使用して予測する。ストレス検査における参照画像ループは、典型的には、ベースライン及び/又は以前のストレス・レベル(1つ又は複数)を示し、また参照画像は、ユーザがプロトコル検査を行っているとき正しい投影/切断平面に自動的に更新される。」
(ウ)「【0032】図4は本発明の好ましい実施形態による医用超音波イメージング・システムのブロック図である。画像フレーム取得サブシステムがトランスジューサ・プローブ2、送信/受信ビームフォーマ4及び画像プロセッサ26で構成される。ストレス・プロトコル検査の際、トランスジューサ・プローブ2は患者の心臓の方へ向けられる。ビームフォーマ4は、オペレータ・インターフェース24を介して人のオペレータ34によって入力された指令に応答して、スキャナ制御装置28の制御の下に動作する。完全な走査を実施するために一連のエコーを取得する。その際、送信ビームフォーマが一時的にオンにゲート駆動されて、各トランスジューサ素子を付勢し、その後、各トランスジューサ素子がエコー信号を作成して受信ビームフォーマに印加する。受信ビームフォーマは受信信号にそれぞれのビーム形成用遅延を加え、次いでこれらの時間遅延した信号を組み合わせて、単一の加算後エコー信号を作成する。この処理は、一フレーム全体が取得されるまで各走査線について繰り返される。各フレームの画像データはシネ・メモリ16に記憶され且つ表示プロセッサ14へ送られる。表示プロセッサ14は表示のために画像データをマッピングして、これらのマッピングされた画像フレームを表示モニタ18へ送る。
【0033】ECGモニタ32が患者に結合されていて、ストレス・プロトコル検査の際に患者の心臓を監視する。進行中の薬理学的ストレス・プロトコル検査の状態のソフトキー表示の一例を図5に示している。各々の番号を付けた区域は、休止、低供給量、ピーク供給量及び回復の4つの段(行)を持つストレス・プロトコルのそれぞれのセルを表す。異なる投影又はビュー が、4-ch(すなわち、4室)、2-ch(すなわち、2室)、PLAX(すなわち、胸骨傍長軸)及びPSAX(すなわち、胸骨傍短軸)の見出しを付けたそれぞれの列に与えられる。これらは心臓超音波イメージングにおいて使用される標準のビュー(投影)の幾つかである。画像ループは通常、プロトコル内のセルの番号によって指示された通りに取得される。濃く陰影を付けたセルは、これらのセルが充たされていることを示しており、他方、軽く陰影を付けたセルはアクティブなセルである。システム・オペレータがプロトコルに従って画像取得を開始したとき、システムはアクティブなセルをプロトコ内の第1のセルに設定する。システム・オペレータは通常、画像ループをアクティブなセルに記憶させることによって次のセルへ移るが、アクティブなセルはまた、システム・オペレータがオペレータ・インターフェース24上の(所望のセルへ移す)矢印キーを押すことによって変更することができる。これらのキーは、グラフィカル・ユーザ・インターフェース上に表示される仮想キーであってよい。
【0034】本発明の好ましい実施形態によれば、ストレス・プロトコル・ソフトウエア30により、どのセルがアクティブであるか、またどのセルが充たされているか監視して、アクティブなセルが変更されたときに新しいセルを識別する「参照ビュー選択」命令を出力する。「参照ビュー選択」命令に応答して、表示プロセッサ14がシネ・メモリから該識別された参照画像ループを検索して表示させる。表示プロセッサ14はまた、ECGモニタ32からQRSトリガ及び心拍数データを受け取る。表示プロセッサ14はこの情報を使用して、選択された参照画像ループの表示のために開始時点を決定し且つ表示フレーム速度を設定する。
【0035】前に述べたように、参照画像ループはシネ・メモリからロードされる。実際には、先ずハードディスクからシネ・メモリへロードされ、次いでシネ・メモリから表示される。」
(エ)「【0036】オペレータがストレス・プロトコル検査を行っているとき、プロトコル・ソフトウエアが図5に示されているストレス・プロトコル・セルの行列の表示を連続的に更新する。もしアクティブなセルが第1の段の後の任意の段にある場合、参照画像(すなわち、同じ投影又はビューについての前の段で取得された画像)を、図6に見られるように、生の画像と一緒に表示することができる。参照画像は、アクティブなセルの投影と同じ投影についての前の段の1つから取られる。生の画像ループは、生のECGと共に、表示モニタの右側に刻々と表示される。参照画像ループ(一心臓サイクルについて)は、対応するECGと共に、左側に刻々と表示される。参照画像ループについての画像フレームは、表示プロセッサ14によってシネ・メモリ16から検索される。正しい参照画像ループは、ストレス・プロトコル・ソフトウエア30によって送られた、どのセルがアクティブであるかに関する「参照ビュー選択」信号に基づいて検索される。参照画像ループは、生のECG取得によって得られたカレントの心拍数に基づいた速度で循環させる。参照ループの表示は、ECGモニタ32によって出力されている生のECG波形の中のQRSトリガを表示プロセッサ14で検出したことに応答して「リセット」される(ループ内の第1の画像から開始する)。表示プロセッサは参照画像ループと生の画像ループとをモニタ18へ同時に出力する。この同時表示により、システム・オペレータは循環する参照画像と循環する生の画像とを比較して、参照画像ループと生の画像ループとの視覚による類似性が充分に近く、従ってカレントのプローブ位置が参照画像ループを取得したときの位置と実質的に同じであることを示している確信されるまでトランスジューサ・プローブ2の位置を調節することが可能になる。」

(3)引用発明
ア 上記(2)ア(カ)の段落【0041】及び【0042】には、「記憶装置40」に備えられている「画像記憶部41」に、「別の診断装置で収集された画像データが保存されていても構わない」と記載されていることから、引用発明の「画像記憶部41」に、「別の診断装置で収集された画像データ」が保存されており、同(オ)の段落【0032】に、「読み込んだ生体情報に基づいてスキャンにより得られている時系列的な3次元画像データと、画像記憶部41に保存されている時系列的な3次元画像データとを同期させ」、「同じ時刻(時相)に収集された3次元画像データを画像表示部22に同時に表示させる」ことが記載されているから、引用例1には、当該画像データと、「超音波診断装置からなる医用画像診断装置10でスキャンにより得られる時系列的な3次元画像データ」とを同期して表示するものが記載されているものと言い得る。

イ また、上記(2)ア(サ)において、「予め収集された時系列的な3次元画像データ」に対して補間を行うことが記載されているから、「別の診断装置で収集された時系列的な3次元画像データ」を補間することが記載されているものと言い得る。

ウ 上記ア及びイ並びに上記(2)ア(ア)ないし(サ)によれば、上記引用例1には、つぎの発明が記載されているものと認められる。
「医用画像診断装置10、位置情報収集部6、生体情報収集部7、画像処理装置20及び記憶装置40を備えて構成された医用画像システムであって、医用画像診断装置10は、超音波診断装置からなり、超音波プローブ11、送受信部12、信号処理部13及びDSC(デジタルスキャンコンバータ)14を備えて構成されており、信号処理部13は、Bモード処理部、ドプラ処理部及びカラーモード処理部を備え、ドプラ処理部は、位相検波回路及びFFT演算回路等から構成され、RFデータからドプラ偏移周波数成分を取り出し、更にFFT処理等を施して血流情報を有するデータを生成するものであり、
生体情報収集部7は、被検体の心電信号(ECG信号)を検出し、検出された心電信号(ECG信号)をデジタル信号に変換し、時系列的な3次元画像データと同時に得られる心電信号(ECG信号)は、時間ごとに収集される複数の3次元画像データの付帯情報として時間制御部34に出力され、生体情報記憶部43に保存され、
予め収集された時系列的な3次元データを画像制御部32を介して画像記憶部41に保存し、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データは画像処理装置20の画像制御部32に出力され、
時間制御部34は、読み込んだ生体情報である、被検体の心電信号を利用して、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データと、画像記憶部41に保存されている別の診断装置で収集された時系列的な3次元画像データのタイムスケールを一致させ、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データと、画像記憶部41に保存されている別の診断装置で収集された時系列的な3次元画像データの同じ時刻(時相)に収集された3次元画像データ同士を同期させるものであって、その際、スキャンにより得られている3次元画像データと別の診断装置で収集された3次元画像データとで、単位時間当たり(例えば1秒当たり)の画像数が異なる場合は、単位時間当たりの画像数が少ない別の診断装置で収集された3次元画像データに対して補間処理を行って、スキャンにより得られている3次元画像データと別の診断装置で収集された3次元画像データとを同期させるものであり、画像表示部22は、同期させられた3次元画像データを同時に表示する医用画像システム」の発明(以下、「引用発明」という。)

(4)本件補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア まず、本件補正発明の「心拍、又は呼吸に同期した1周期分の動画である繰り返し画像を撮影する第1の診断装置と、前記繰り返し画像と異なるフレームレートを有する連続画像を撮影する第2の診断装置のそれぞれで撮像された画像データを取り込んで画像処理を行う画像診断装置」と引用発明の「医用画像診断装置10、位置情報収集部6、生体情報収集部7、画像処理装置20及び記憶装置40を備えて構成された医用画像システム」とを対比する。
(ア)引用発明の「スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データ」と本件補正発明の「連続画像を撮影する第2の診断装置」で撮像された「連続画像」とは、「第2の診断装置で撮影された連続画像である第2の動画像」である点で共通するものといえる。
(イ)引用発明の「別の診断装置で収集された時系列的な3次元画像データ」と本件補正発明の「心拍又は呼吸に同期した1周期分の動画である繰り返し画像を撮影する第1の診断装置」で「撮像された画像データ」であって、「1周期分の動画を繰り返して表示する」「繰り返し画像」とは、「第1の診断装置で撮影された第1の動画像」である点で共通するものといえる。
(ウ)そして、引用発明の「医用画像診断装置10、位置情報収集部6、生体情報収集部7、画像処理装置20及び記憶装置40を備えて構成された医用画像システム」は、「スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データと画像記憶部41に保存されている別の診断装置で収集された時系列的な3次元画像データ」を、「被検体の心電信号を利用して」、「同期」して表示するものであり、「その際に、スキャンにより得られている3次元画像データと別の診断装置で収集された3次元画像データとで、単位時間当たり(例えば1秒当たり)の画像数が異なる場合は、単位時間当たりの画像数が少ない画像データに対して補間処理を行って、スキャンにより得られている3次元画像データと別の診断装置で収集された3次元画像データとを同期させる」ものであるから、本件補正発明と引用発明とは、「第1の診断装置で撮影された第1の動画像」及び「第2の診断装置で撮影された連続画像である第2の動画像」を取り込んで画像処理を行うものである点で共通するものであるし、ここでの、「単位時間あたりの画像数が異なる」とは、ここで、「フレームレートが異なる」ことにほかならないから、本件補正発明と引用発明とは、「第1の診断装置で撮影された第1の動画像」と「第2の診断装置で撮影された連続画像である第2の動画像」が「フレームレートが異なる」点でも共通するものといえる。
(エ)以上のことをまとめると、本件補正発明の「心拍、又は呼吸に同期した1周期分の動画である繰り返し画像を撮影する第1の診断装置と、前記繰り返し画像と異なるフレームレートを有する連続画像を撮影する第2の診断装置のそれぞれで撮像された画像データを取り込んで画像処理を行う画像診断装置」と引用発明の「医用画像診断装置10、位置情報収集部6、生体情報収集部7、画像処理装置20及び記憶装置40を備えて構成された医用画像システム」であって、「スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データと画像記憶部41に保存されている別の診断装置により収集された時系列的な3次元画像データ」を、「被検体の心電信号を利用して」、「同期」して表示する」こととは、「第1の診断装置で撮影された第1の動画像と、異なるフレームレートを有し、第2の診断装置で撮影された連続画像である第2の動画像とを撮影し、撮影された第1及び第2の動画像データを取り込んで画像処理を行う画像診断装置」である点で共通するものといえる。

イ 引用発明が「予め収集された時系列的な3次元データを画像制御部32を介して画像記憶部41に保存し、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データは画像処理装置20の画像制御部32に出力され」るものであることからすれば、引用発明が「スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データ」や「別の診断装置により収集された時系列的な3次元画像データ」を「画像処理装置20の画像制御部32」に入力する手段を備えることは技術的に明らかであるから、本願補正発明と引用発明は、「画像診断装置にデータを入力する入力手段」を備えるものである点で共通する。

ウ 引用発明の「生体情報収集部7」は、「被検体の心電信号(ECG信号)を検出し、検出された心電信号(ECG信号)をデジタル信号に変換し」同期に用いるものであるから、本件補正発明の「ドップラ信号の変化により同期信号を発生させる同期信号発生手段」と引用発明の「生態情報収集部7」とは、共に「心拍に関連する生体情報に基づいて同期信号を発生させる同期信号発生手段」である点で共通するものといい得る。

エ 本件補正発明の「1周期分の動画を繰り返して表示する前記繰り返し画像の表示と、前記連続画像の表示とを行う表示手段」であって「前記繰り返し画像を表示する際に、前記繰り返し画像と前記連続画像とを同期させながら同時に前記表示手段に表示する」ものと、引用発明の「同期させられた3次元画像データを同時に表示する」「画像表示部22」とは、共に「同期した第1の動画像と、第2の動画像を表示する表示手段」である点で共通するものである。

オ 引用発明の「画像記憶部41」は、「医用画像診断装置10」の「スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データ」や「別の診断装置により収集された時系列的な3次元画像データ」を記憶するものであるから、本件補正発明の「前期繰り返し画像および前記連続画像を含むデータを記憶する記憶手段」と引用発明の「画像記憶部41」は、「第1の動画像と第2の動画像を記憶する記憶手段」である点で共通するものである。

カ 引用発明の「読み込んだ生体情報である、被検体の心電信号を利用して、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データと、画像記憶部41に保存されている別の診断装置で収集された時系列的な3次元画像データのタイムスケールを一致させ、スキャンにより得られている3次元画像データと別の診断装置で収集された3次元画像データとで、単位時間当たり(例えば1秒当たり)の画像数が異なる場合は、単位時間当たりの画像数が少ない別の診断装置で収集された3次元画像データに対して補間処理を行って、スキャンにより得られている3次元画像データと別の診断装置で収集された3次元画像データとを同期させる」ことは、2つの3次元画像データを同期信号に同期するように補正処理することにほかならない。
してみると、本件補正発明の「前記繰り返し画像のフレームレートを前記同期信号に同期するように該フレームレートを補正処理する処理手段」と引用発明の「読み込んだ生体情報である、被検体の心電信号を利用して、スキャンにより得られている時系列的な3次元画像データと、画像記憶部41に保存されている別の診断装置で収集された時系列的な3次元画像データのタイムスケールを一致させ、スキャンにより得られている3次元画像データと別の診断装置で収集された3次元画像データとで、単位時間当たり(例えば1秒当たり)の画像数が異なる場合は、単位時間当たりの画像数が少ない別の診断装置で収集された3次元画像データに対して補間処理を行って、スキャンにより得られている3次元画像データと別の診断装置で収集された3次元画像データとを同期させる」こととは、「第1の動画像のフレームレートを同期信号に同期するように該フレームレートを補正処理する補正処理手段」を有する点で共通するものである。

キ 以上のことから、両者はつぎの一致点において一致し、つぎの相違点において相違する。
<一致点>
第1の診断装置で撮影された第1の動画像と、異なるフレームレートを有し、第2の診断装置により撮影された連続画像である第2の動画像とを撮像し、撮像された第1及び第2の動画像データを取り込んで画像処理を行う画像診断装置において、
前記画像診断装置にデータを入力する入力手段と、
第1の動画像と第2の動画像を記憶する記憶手段と
同期した第1の動画像と、第2の動画像を表示する表示手段と
心拍に関連する生体情報に基づいて同期信号を発生させる同期信号発生手段と
第1の動画像のフレームレートを前記同期信号に同期するように該フレームレートを補正処理する処理手段と、
前記第1の動画像を表示する際に、前記第1の動画像と前記第2の動画像とを同期させながら同時に前記表示手段に表示することを特徴とする画像診断装置」である点

<相違点1>
第1及び第2の動画像に関して、本件補正発明の第1の動画像が「第1の診断装置で得られる」「心拍、又は呼吸に同期した1周期分の動画である繰り返し画像」であって、第2の動画像が「第2の診断装置」で撮像された「前記繰り返し画像と異なるフレームレートを有する連続画像」であるのに対して、引用発明の第1の動画像が「別の診断装置により収集された時系列的な3次元画像データ」であって、「心拍、又は呼吸に同期した1周期分の動画である繰り返し画像」であることが特定されていない点

<相違点2>
心拍に関連する生体情報に基づいて同期信号を発生させる同期信号発生手段に関して、本件補正発明が「ドップラ信号の変化により同期信号を発生させる」ものであるのに対して、引用発明は「生体情報収集部7」が「被検体の心電信号(ECG信号)を検出し、検出された心電信号(ECG信号)をデジタル信号に変換し」て発生されるものである点

(5)判断
ア 相違点1について
(ア)上記(2)イに摘記した事項によれば、引用例2には、「超音波スキャナ画面領域」を「2つの部分に分割」し、「その内の一方の部分は参照画像ループを示し、他方の部分は生の画像ループを示す」ようにし、「参照画像ループ」を「患者のECG信号に基づいて生の撮像と同期させる」ようにしたものであって、「参照画像ループ」が「一心臓サイクル」についてのものであり「生のECG取得によって得られたカレントの心拍数に基づいた速度で循環させ」るようにした医用画像診断装置の発明(上記(2)イ(エ)参照)が記載されている。
(イ)この引用例2に記載の発明の「生の画像ループ」は、本件補正発明の「連続画像」に相当し、また、引用例2に記載の発明の「一心臓サイクル」の「ループ画像」は、本件補正発明の「心拍、又は呼吸に同期した1周期分の動画である繰り返し画像」に相当するものであるといえる。
(ウ)そして、引用発明のシステムにおいて、「一心臓サイクルのループ画像」とライブ画像である「スキャンにより得られている3次元画像データ」とを表示するようにすることで、引用例2と同様に超音波ストレス検査時において必要とされる表示が可能となることは、当業者であれば容易に理解し得ることである。
(エ)してみると、引用発明において、超音波ストレス検査時において必要とされる表示をするために、引用例2に記載されている発明のように、「別の診断装置により収集された時系列的な3次元画像データ」を「参照画像ループ」、すなわち、「一心臓サイクル」の「ループ画像」とし、また、「スキャンにより得られる時系列的な3次元画像データ」を「生の画像ループ」とすることにより、本件補正発明の相違点1に係る構成のようにすることは、当業者が容易になし得ることというべきである。

イ 相違点2について
上記(2)イ(ア)には「参照画像ループは患者のECG信号に基づいて生の撮像と同期させる。この代わりに、心拍動と同期して変化する幾つかの他の生理学的信号、例えば、血圧、ドップラー信号、フレーム相関係数や、画像自身内の関心のある領域からの平均グレースケールさえも使用することが可能である。」と記載されているように、異なる動画像を同期して表示する際に、その同期信号をドップラー信号を用いて生成することが示唆されている。
ここで、例えば、特開2009-119250号公報の段落【0029】ないし【0031】及び図4や特開昭63-240841号公報の特許請求の範囲等に記載されているように、心拍同期信号をドップラ信号を用いて生成することは、本願出願前従来周知の技術である。
そして、引用発明がドップラ信号を検出可能であることに鑑みるに、引用発明における同期のための同期信号をECG信号に代えて、ドップラ信号を用いて生成するようにすることで、本件補正発明の相違点2に係る構成のようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことにすぎない。

ウ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果は、引用例1及び2に記載された事項並びに周知技術に基づいて当業者が予測し得る程度のことであって、格別のものともいえない。

エ 小括
上記アないしウで検討したように、本件補正発明は、引用発明および引用例2に記載の発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(6)補正の却下の決定のまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2の補正の却下の決定により、本件補正は却下された。
また、平成26年3月20日にされた手続補正についても、原審において同年9月25日付けの補正の却下の決定により却下されていることは、上記第1の手続の経緯において説示したとおりである。
したがって、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成25年12月16日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、単に、「本願発明」という。)は上記第2の1(1)において摘示したとおりのものである。

2 引用例に記載された事項及び引用発明について
引用例1(特開2006-192151号公報)の記載事項及び引用例2(特開2003-61961号公報)の記載事項は、上記第2の2(2)ア及びイにおいて摘示したとおりであって、また、引用発明は、上記第2の2(3)ウにおいて認定したとおりである。

3 判断
本願発明は、上記第2の1(3)で説示したように、同期信号発生手段について特定されていた「ドップラ信号の変化により同期信号を発生させる」特定を削除するものであることから、本願発明は、本件補正発明を包含するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに「同期信号発生手段」を「ドップラ信号の変化により同期信号を発生させる」ものに限定されるものに相当する本件補正発明が、上記第2の(4)及び(5)に説示したように、引用発明及び引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-30 
結審通知日 2015-12-01 
審決日 2015-12-14 
出願番号 特願2010-135023(P2010-135023)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 幸仙多田 達也  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 ▲高▼場 正光
尾崎 淳史
発明の名称 マルチモダリティ動画像診断装置  
代理人 ポレール特許業務法人  

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