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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1310630 |
審判番号 | 不服2015-3029 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-17 |
確定日 | 2016-02-04 |
事件の表示 | 特願2010-127761「オーバーヘッドスキャナ装置、画像取得方法、および、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月15日出願公開、特開2011-254366〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 経緯 1.手続 本件出願は、平成22年6月3日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成26年 1月27日(起案日) 手続補正 :平成26年 4月 7日 拒絶査定 :平成26年11月11日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成27年 2月17日 手続補正 :平成27年 2月17日 前置報告書 :平成27年 4月28日 2.査定 原査定の理由は、概略、以下のとおりである。 本願の請求項1?5,7?9に係る発明(平成26年4月7日付け手続き補正後)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開2007-97043号公報 刊行物2:特開2000-308045号公報 刊行物3:特開2005-352531号公報 刊行物4:特開平8-204914号公報 刊行物5:特開平9-307712号公報 刊行物6:特開平10-65877号公報 刊行物7:特開平10-255024号公報 刊行物8:特開2006-172439号公報 第2 補正の却下の決定 平成27年2月17日付けの手続補正について次のとおり決定する。 《結論》 平成27年2月17日付けの手続補正を却下する。 《理由》 1.補正の内容 平成27年2月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1の記載を、以下のように、補正後の請求項1の記載とする補正を含むものである。 (補正前の請求項1) 【請求項1】 エリアセンサとリニアセンサと制御部とを備え、 前記制御部は、 前記エリアセンサを制御して、複数の画像を連続して取得するエリア画像取得手段と、 前記エリア画像取得手段により取得された前記複数の画像から、特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、 前記特徴点抽出手段により抽出された前記特徴点を前記複数の画像間で比較することにより、当該特徴点の速度ベクトルを演算する速度ベクトル演算手段と、 前記速度ベクトル演算手段により演算された前記速度ベクトルに基づいて、前記リニアセンサによる読み取り開始を判定する読取開始判定手段と、 を備えたことを特徴とするオーバーヘッドスキャナ装置。 (補正後の請求項1) 【請求項1】 エリアセンサとリニアセンサと制御部とを備え、 前記制御部は、 前記エリアセンサを制御して、複数の画像を連続して取得するエリア画像取得手段と、 前記エリア画像取得手段により取得された前記複数の画像から、特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、 前記特徴点抽出手段により抽出された前記特徴点を前記複数の画像間で比較することにより、当該特徴点の速度ベクトルを演算する速度ベクトル演算手段と、 前記速度ベクトル演算手段により演算された前記速度ベクトルに基づく動きが停止した場合に、前記リニアセンサによる読み取り開始を判定する読取開始判定手段と、 を備えたことを特徴とするオーバーヘッドスキャナ装置。 2.本件補正の適合性 (2-1)補正の範囲 上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書の記載(段落【0049】等)に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。 (2-2)補正の目的 上記補正事項は、「読取開始判定手段」の判定内容を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2-3)独立特許要件 上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、以下、独立特許要件について検討する。 (ア)補正後発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、以下のとおりである。 ((A)ないし(G)は当審において付与した。以下「構成要件(A)」等として引用する。) (A)エリアセンサとリニアセンサと制御部とを備え、 (B)前記制御部は、 (C)前記エリアセンサを制御して、複数の画像を連続して取得するエリア画像取得手段と、 (D)前記エリア画像取得手段により取得された前記複数の画像から、特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、 (E)前記特徴点抽出手段により抽出された前記特徴点を前記複数の画像間で比較することにより、当該特徴点の速度ベクトルを演算する速度ベクトル演算手段と、 (F)前記速度ベクトル演算手段により演算された前記速度ベクトルに基づく動きが停止した場合に、前記リニアセンサによる読み取り開始を判定する読取開始判定手段と、 (G)を備えたことを特徴とするオーバーヘッドスキャナ装置。 (イ)引用刊行物の記載 (イ-1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2007-97043号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、プロジェクタ装置等に接続し、書画台上に載置した書類を撮影してその画像データを出力し、上記プロジェクタ装置で投影表示させる書画カメラに好適な撮影画像出力装置、同装置の撮影制御方法及びプログラムに関する。」 「【0019】 以下本発明を書画カメラ装置、パーソナルコンピュータ(PC)、及びデータプロジェクタ装置からなる撮像投影システムに適用した場合について図面を参照して説明する。 【0020】 図1は、その外観と接続構成を示すものである。書画カメラ装置1とPC2とがUSB(Universal Serial Bus)ケーブル4で接続される。書画カメラ装置1ではその書画台1a上に載置された書類の画像が常時時間的に連続して撮影され、順次デジタル値の画像信号としてUSBケーブル4を介し、アイソクロナス転送によりリアルタイムにPC2に送られる。」 「【0023】 図2は、上記書画カメラ装置1の回路構成を示すものである。 なお、この書画カメラ装置1は、静止表示モードとスルー表示モードの2つの表示動作モードを有し、ユーザの任意選択によりいずれかの表示モードで撮影により得た画像データをPC2へ出力する。 【0024】 静止表示モードでは、動き検出動作を行ない、書画台1a上に載置された書類に動きがない限り同一の画像データを静止画表示させるべくPC2へ出力するものであり、撮影により得た画像データには各種の画像補正処理、具体的には輪郭抽出、切出し、輝度ムラ補正、色補正、輝度補正、回転補正、及び台形補正等を施した上で出力する。これらの画像補正処理はユーザにより任意の内容が選択設定可能となるものとする。 【0025】 また、スルー表示モードでは、書画台1a上に載置された画像を一定のフレームレート、例えば30[fps](毎秒30フレーム)で撮影し、得られる画像データを上述した画像補正処理等は一切行なわずにそのままリアルタイムでPC2へ出力する。 【0026】 同図において、その撮影系では、モータ(M)11の駆動によりズーム画角や絞り位置等が移動される、レンズ光学系12の撮影光軸後方に撮像素子であるCCD13が配置される。 【0027】 このCCD13は、タイミング発生器(TG)14、垂直ドライバ15によって走査駆動され、後述するフレームレートにしたがった周期毎に結像した光像に対応する光電変換出力を1画面分出力する。 【0028】 この光電変換出力は、アナログ値の信号の状態でRGBの各原色成分毎に適宜ゲイン調整された後に、サンプルホールド回路(S/H)16でサンプルホールドされ、A/D変換器17でデジタルデータに変換され、カラープロセス回路18で画素補間処理及びγ補正処理を含むカラープロセス処理が行なわれて、デジタル値の輝度信号Y及び色差信号Cb,Cr(YUV信号)が生成され、DMA(Direct Memory Access)コントローラ19に出力される。 【0029】 DMAコントローラ19は、カラープロセス回路18の出力する輝度信号Y及び色差信号Cb,Crを、同じくカラープロセス回路18からの複合同期信号、メモリ書込みイネーブル信号、及びクロック信号を用いて一度DMAコントローラ19内部のバッファに書込み、DRAMインタフェース(I/F)20を介してバッファメモリとして使用されるDRAM21にDMA転送を行なう。 【0030】 制御部22は、CPUと、このCPUで実行される動作プログラムを固定的に記憶した不揮発性メモリ、及びワークメモリ等により構成され、この書画カメラ装置1全体の制御動作を司る。 【0031】 制御部22は、スルー表示モード時において、上記輝度及び色差信号のDRAM21へのDMA転送終了後に、この輝度及び色差信号(YUV信号)をDRAMインタフェース20を介してDRAM21より読出し、USBインタフェース(I/F)23へ送出する。 【0032】 USBインタフェース23は、上記輝度及び色差信号をUSB規格に則ってアイソクロナス転送により上記USBケーブル4を介してリアルタイムにPC2に送出する。 【0033】 また制御部22は、静止表示モード時に、書画台1aに載置されている書類の動きの変化を検出し、動きを検出した後にその動きが停止したと判断した時点でCCD13から取込んでいる1画面分の画像データのDRAM21へのDMA転送を取り止め、あらためて適正な露出条件に従った絞り値及びシャッタ速度と解像度でCCD13を走査駆動して1画面分の画像データを得てDRAM21へ転送する。 【0034】 制御部22は、このDRAM21に保持された画像データを記憶部25に転送記憶させた上で、その時点で設定されている画像補正処理を施し、画像処理後の画像データを記憶部25から読出してUSBインタフェース23よりPC2へ出力させ、再び次の撮影に備えて画像の動きを検出する動作に戻る。」 「【0051】 次に上記実施の形態の動作について説明する。 図5は、電源を投入した当初からの静止表示モードでの処理内容を示すもので、その動作制御はすべて制御部22が内部の不揮発性メモリに記憶している動作プログラムにしたがって実行する。 【0052】 電源投入当初には、まず書画台1aに載置される書類に対する動き検出の感度を、例えば予め2段階ある感度「高」「低」のうちの「高」側に設定する(ステップS01)。 【0053】 ここで動き検出の感度「高」では、例えば書画台1a上の書類を撮影する際のフレームレートを30[fps](毎秒30フレーム)とし、直前のフレームと比較して動きのない画像が2フレーム連続した場合に動きなしと判断し、逆にそれぞれ直前のフレームと比較して動きのある画像が2フレーム連続した場合に動きありと判断するものとする。 【0054】 しかして、上記設定した内容で動き検出処理を実行し(ステップS02)、書画台1a上に記載された書類を撮影して得た画像の動きが静止したか否か、具体的には上述した如く直前のフレームと比較して動きのない画像が2フレーム連続したか否かを判断し(ステップS03)、動きを生じている場合には上記ステップS02に戻る、という処理を繰返し実行することで、書画台1aを所定のフレームレートで撮影した場合の画像が静止するのを待機する。 【0055】 しかして、撮影している画像に動きがなく静止していると判断すると、あらためて適正な露出条件に従った絞り値及びシャッタ速度と解像度でCCD13を走査駆動して撮影し、1画面分の画像データを得てDRAM21へ保持させる(ステップS04)。」 「【0068】 例えば、時間的に連続する2フレームの画像の比較により動き検出を行なう場合、各画像を構成する同一位置にある画素どうしで比較を行ない、全体の何パーセントの画素が異なっているのか、予め設定されたしきい値に対する上下で動きの有無を判断することになると思われるが、そのしきい値自体を任意に可変設定できるものとしてもよい。 【0069】 さらに、この場合、各画像を構成する同一位置にある画素どうしの比較に際しても、その差がどの程度異なるとその画素が異なるものであると判断するのか、画素単位での比較結果に対するしきい値を可変設定できるものとしてもよい。 【0070】 このように、動き検出に関しては非常に多くの要素を組合わせてフレーム間で動きを生じているか否かを判断することができるため、簡単な制御によって動きの変化に対する感度を容易に切換えることができる。」 (イ-2)同じく、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である特開平8-204914号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は文字や画像を読取りデジタルデータに変換するイメージスキャナに関し、特に原稿の位置設定を迅速にかつ正確に行う高解像度の読み取りが可能なイメージスキャナに関する。」 「【0010】このような一次元イメージセンサによるスキャナに対し、数十万画素程度の2次元イメージセンサを内蔵したCCDカメラを用いて画像を読取るものがあり、例えば書画カメラがある。これは専用の原稿台に置かれた原稿の画像を、一定高さに固定されたCCDカメラにより読み取るものであり。このCCDカメラを用いれば、前記した各形式のイメージスキャナに比べて読取り速度が速いため(約30画面/秒)、短時間で読込みが行なえるため、読込み範囲が不適切の場合にやり直しが容易になる。しかしながら安価な2次元イメージセンサでは解像度が不足するため文書等を読み込むには最適ではない。 【0011】 【発明の目的】本発明の目的は読み込み範囲の設定を迅速を行うことを可能とする一方で、高解像度での読み取りを実現するイメージスキャナとその画像読込み方法を提供することにある。」 「【0015】 【作用】本発明では、最初に2次元イメージセンサにより原稿画像を読み込んでその画像を表示し、この表示と共に少なくとも一部が高解像度で取込まれることを示す範囲を同時に表示する。そして使用者は高解像度で読込ませたい原稿がこの範囲内に位置されるように原稿位置を設定することで、その後に1次元イメージセンサでの画像読み込みを実行すれば、所要の画像を高解像度でしかも高速に読み込むことが可能とされる。 【0016】 【実施例】次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明によるイメージスキャナの第1実施例の斜視図である。原稿台1は平板で構成され、その一部の面上に読み込み原稿2を原稿面を上向きに載置するように構成される。なお、この原稿台1には、後述するように、1次元イメージセンサによる読込み範囲1Aと、2次元イメージセンサによる読込み範囲1Bとを示す枠が設けられている。 【0017】前記原稿台1には可撓構造のアーム3が立設され、このアーム3の先端部に読込みユニット4が設けられている。この読込みユニット4は、原稿台1上の一定高さで水平に保持されており、ここには1次元イメージセンサ5と、レンズ6と、反射鏡7と、副走査機構8とを備えている。また、これとは独立して前記原稿台1上に載置された原稿2を一括して読み取ることが可能な2次元イメージセンサ9とを備えている。」 「【0021】以上の構成のイメージスキャナによる原稿の読み取り動作を図2のフローチャートを参照して説明する。先ず、原稿台1に設けられた1次元イメージセンサ読込み範囲1A内に原稿2を載置した上で(S1)、2次元イメージセンサ9で原稿2の読み込みを実行する(S2)。この2次元イメージセンサ9で得られた電気信号は信号処理部10において2次元イメージセンサ読込み画像12とされ、表示装置11において画像が表示される(S3)。この表示装置11では2次元イメージセンサ読込み画像12と共に1次元イメージセンサ読込み範囲枠11Aが表示されるため、これらを見ながら原稿の位置合わせを行い、読み込み原稿2が1次元イメージセンサ読込み範囲11A内に入るようにする(S4)。 【0022】次いで、今度は1次元イメージセンサ5で読み込みを開始する命令を入力すると、副走査機構8が反射鏡7を一方向に回動させ、原稿2の反射像をレンズ6により1次元イメージセンサ5に結像し、その読み込みを実行する(S5)。そして、1次元イメージセンサ5で得られた電気信号により信号処理部10は1次元イメージセンサ読込み画像とし、この読み込まれた画像を表示装置11に表示する(S6)。これにより、1次元イメージセンサ読込み画像は、1次元イメージセンサ読込み範囲11A内に読み込まれることになる。また、1次元イメージセンサ読込み画像の画像データは信号処理部10に記憶され、以降の利用に供される(S10)。 【0023】したがって、このイメージスキャナでは、最初に読込み動作を迅速に行うことができる2次元イメージセンサ9により原稿2の全体を読み込み、得られた画像に基づいて1次元イメージセンサ5に対する原稿2の位置決めを行うため、原稿2の位置設定を迅速に行うことができる。このとき、2次元イメージセンサ9は、画像の全体を読み込むだけでよいため、高解像度で画像の読み込みを実行する必要がなく安価な低価格のイメージセンサを利用することができる。 【0024】そして、原稿の位置設定を行った後に1次元イメージセンサ5による画像の読み込みを実行するために、高解像度の画像を読み込むことができ、以降の画像データを有効に利用することが可能となる。」 (ウ)刊行物1に記載された発明 (ウ-1)刊行物1には、CCD13は、タイミング発生器(TG)14、垂直ドライバ15によって走査駆動され、フレームレートに従った周期毎に1画面分の画像データを取込むことが記載されており(段落【0027】,【0033】,図2等)、刊行物1に記載の発明は、「1画面分の画像データを取込むCCD13」を有する。 (ウ-2)刊行物1には、制御部22は、CPUと、このCPUで実行される動作プログラムを固定的に記憶した不揮発性メモリ、及びワークメモリ等により構成され、この書画カメラ装置1全体の制御動作を司ることが記載されており(段落【0030】,図2等)、刊行物1に記載の発明は、「書画カメラ装置1全体の制御動作を司る制御部22」を有する。 (ウ-3)刊行物1には、静止表示モードの時、上記制御部22の動作プログラムに従い、CCD13を走査駆動して書画台1a上に載置された書類の画像を、フレームレートを30[fps](毎秒30フレーム)で連続して撮影することが記載されており(段落【0033】、【0051】、【0053】等)、刊行物1に記載の発明は、「上記制御部22の動作プログラムに従い、CCD13を制御して、書画台1a上に載置された書類の画像をフレームレートを30[fps](毎秒30フレーム)で撮影」している。 (ウ-4)刊行物1には、上記制御部22のプログラムに従ってなされる処理であって、撮影して得た画像を直前のフレームと比較し、動き検出処理を実行し(ステップS02)、直前のフレームと比較して動きのない画像が2フレーム連続したか否かを判断し(ステップS03)、撮影している画像に動きがなく静止していると判断すると、あらためて適正な露出条件に従った絞り値及びシャッタ速度と解像度でCCD13を走査駆動して撮影し、1画面分の画像データを得る(ステップS04)ことが記載されており(段落【0051】?【0055】,図5等)、刊行物1に記載の発明は、「上記制御部22のプログラムに従い、撮影して得た画像を直前のフレームと比較する画像の動き検出処理を実行し(ステップS02)、直前のフレームと比較して動きのない画像が2フレーム連続したか否かを判断し(ステップS03)、撮影している画像に動きがなく静止していると判断すると、あらためて適正な露出条件に従った絞り値及びシャッタ速度と解像度でCCD13を走査駆動して撮影し、1画面分の画像データを得る(ステップS04)」構成を有している。 (ウ-5)刊行物1には、書画台1a上に載置された書類の画像を撮影する書画カメラ装置1が記載されており(段落【0020】,図1等)、刊行物1に記載の発明は、「書画カメラ装置1」に関する発明であるといえる。 (ウ-6)まとめ 以上(ウ-1)ないし(ウ-5)の記載によれば、刊行物1には以下の発明(以下、刊行物1発明という。)が開示されている。 ((a)ないし(e)は当審において付与し、以下「構成要件(a)」等として引用する。) (a)1画面分の画像データを取込むCCD13と書画カメラ装置1全体の制御動作を司る制御部22とを備え、 (b)上記制御部22の動作プログラムに従い、 (c)CCD13を制御して、書画台1a上に載置された書類の画像をフレームレートを30[fps](毎秒30フレーム)で撮影し、 (d)撮影して得た画像を直前のフレームと比較する画像の動き検出処理を実行し(ステップS02)、直前のフレームと比較して動きのない画像が2フレーム連続したか否かを判断し(ステップS03)、撮影している画像に動きがなく静止していると判断すると、あらためて適正な露出条件に従った絞り値及びシャッタ速度と解像度でCCD13を走査駆動して撮影し、1画面分の画像データを得る(ステップS04) (e)ことを特徴とする書画カメラ装置1。 (エ)対比 補正後発明と刊行物1発明とを対比する。 (エ-1)補正後発明の構成要件(A)と刊行物1発明の構成要件(a)とを対比する。 刊行物1発明の「1画面分の画像データを取込むCCD13」は、1画面というエリアの画像を撮影するセンサといえるから、補正後発明の「エリアセンサ」といえる。 また、刊行物1発明の「制御部22」は、以下で検討するように、書画カメラ装置1の動作を制御しているから、補正後発明の「制御部」に対応している。 したがって、刊行物1発明は、補正後発明の「エリアセンサと制御部」を備える点で一致する。 もっとも、刊行物1発明は、補正後発明の「リニアセンサ」を有していない点で相違する。 (エ-2)補正後発明の構成要件(B)と刊行物1発明の構成要件(b)とを対比する。 補正後発明の「制御部」と刊行物1発明の「制御部22」とが対応していることは、上記(エ-1)で検討したとおりである。 (エ-3)補正後発明の構成要件(C)と刊行物1発明の構成要件(c)とを対比する。 刊行物1発明は、「上記制御部22の動作プログラムに従い、CCD13を制御して、書画台1a上に載置された書類の画像をフレームレートを30[fps](毎秒30フレーム)で撮影し」ているから、制御部22は、当該CCD13の制御を行い、撮影する手段を有しているといえる。 そして、刊行物1発明のCCD13が補正後発明のエリアセンサに相当することは、上記(エ-1)のとおりであり、「フレームレートを30[fps](毎秒30フレーム)」で撮影を行うということは、上記フレームレートで「複数の画像を連続して取得」していることは明らかである。 したがって、刊行物1発明は補正後発明の構成要件(C)を有している。 (エ-4)補正後発明の構成要件(D)と刊行物1発明とを対比する。 刊行物1発明は、特徴点抽出に関する構成を有していないから、補正後発明の構成要件(D)を有していない。 (エ-5)補正後発明の構成要件(E)と刊行物1発明の構成要件(d)とを対比する。 補正後発明の「速度ベクトル演算手段」は、構成要件(F)で上記演算手段で算出された速度ベクトルにより動きの停止を検出しているから、動きの停止を検出するための速度ベクトル演算手段といえる。 これに対して、刊行物1発明では、「撮影して得た画像を直前のフレームと比較する画像の動き検出処理を実行し」、「直前のフレームと比較して動きのない画像が2フレーム連続したか否かを判断し」ているから、上記動き検出の処理は、画像の動きがないこと(動きの停止)を検出するため検出処理であるといえ、上記検出処理は、複数のフレームの画像を比較する処理である。 上記検出処理を行う為には、検出処理手段が必要であることは明らかであるから、刊行物1発明は、「動きの停止を検出するために前記複数の画像間で比較する処理手段」を有している点で、補正後発明と相違がない。 もっとも、補正後発明では、上記比較する処理手段が、「前記特徴点抽出手段により抽出された前記特徴点を前記複数の画像間で比較することにより、当該特徴点の速度ベクトルを演算する速度ベクトル演算手段」であるのに対し、刊行物1発明では、「前記複数の画像間で比較する」こと以外の特定事項を有していない点で相違する。 (エ-6)補正後発明の構成要件(F)と刊行物1発明の構成要件(d)とを対比する。 刊行物1発明では、「直前のフレームと比較して動きのない画像が2フレーム連続したか否かを判断し(ステップS03)、撮影している画像に動きがなく静止していると判断すると、あらためて適正な露出条件に従った絞り値及びシャッタ速度と解像度でCCD13を走査駆動して撮影し、1画面分の画像データを得」ている。 刊行物1発明の上記「直前のフレームと比較」(する手段)が、「比較する処理手段」である点で、補正後発明の「演算手段」に対応していることは、(エ-5)のとおりである。 そして、刊行物1発明で「動きのない画像が2フレーム連続したか否かを判断し(ステップS03)、撮影している画像に動きがなく静止していると判断する」ことは、補正後発明の「動きが停止した場合」に相当する。 上記の場合、刊行物1発明では、「あらためて適正な露出条件に従った絞り値及びシャッタ速度と解像度でCCD13を走査駆動して撮影し、1画面分の画像データを得」ているが、上記あらためて得る1画面分の画像データは、動きの有無を判断するためにフレームレートを30[fps](毎秒30フレーム)で撮影した画像データと比較して、「適正な露出条件に従った絞り値及びシャッタ速度と解像度でCCD13を走査駆動して撮影し」ていることからみて、よりよい画質の画像といえることは明らかである。 この点、補正後発明のエリアセンサにより得られるエリア画像とリニアセンサにより得られる画像とを対比すれば、リニアセンサにより得られる画像の方が、よりよい画質の画像であることは明らかであるから、補正後発明と刊行物1発明とでは、動きが停止した場合によりよい画像の読み取りを開始している点、すなわち、上記開始を判定する「判定手段」を有している点で共通する。 したがって、補正後発明と刊行物1発明とは、「上記処理手段の比較処理に基づき動きが停止した場合に、よりよい画像の読み取り開始を判定する読取開始判定手段」を備えている点で一致する。 もっとも、上記読取開始判定手段が、補正後発明では、「前記速度ベクトル演算手段により演算された前記速度ベクトルに基づく」動きが停止した場合を判定しているのに対し、刊行物1発明では、「前記速度ベクトル演算手段により演算された前記速度ベクトルに基づ」いて、動きが停止した場合を判定していることを特定していない点、および、上記よりよい画像の読み取りが、補正後発明では、「前記リニアセンサによる読み取り」であるのに対し、刊行物1発明では、「あらためて適正な露出条件に従った絞り値及びシャッタ速度と解像度でCCD13を走査駆動して撮影」である点で相違する。 (エ-7)補正後発明の構成要件(G)と刊行物1発明の構成要件(e)とを対比する。 刊行物1発明の「書画カメラ装置1」は、書画台上に載置した書類を上部より読み取るものであり(段落【0020】,図1等)、補正後発明の「オーバーヘッドスキャナ装置」と相違しない。 (エ-8)まとめ(一致点・相違点) 以上まとめると、補正後発明と刊行物1発明とは以下の一致点で一致し相違点で相違する。 (一致点) エリアセンサと制御部とを備え、 前記制御部は、 前記エリアセンサを制御して、複数の画像を連続して取得するエリア画像取得手段と、 動きの停止を検出するために前記複数の画像間で比較する処理手段と、 上記処理手段の比較処理に基づき動きが停止した場合に、よりよい画像の読み取り開始を判定する読取開始判定手段と、 を備えたことを特徴とするオーバーヘッドスキャナ装置。 (相違点1) 相違点1 補正後発明は「リニアセンサ」を備えているのに対して、刊行物1発明は「リニアセンサ」は備えていない点。 相違点2 刊行物1発明は、補正後発明の「前記エリア画像取得手段により取得された前記複数の画像から、特徴点を抽出する特徴点抽出手段」を備えていない点。 相違点3 上記比較する処理手段が、補正後発明では、「前記特徴点抽出手段により抽出された前記特徴点を前記複数の画像間で比較することにより、当該特徴点の速度ベクトルを演算する速度ベクトル演算手段」であるのに対し、刊行物1発明では、「前記複数の画像間で比較する」演算手段であること以外の特定事項を有していない点。 相違点4 上記読取開始判定手段が、補正後発明では、「前記速度ベクトル演算手段により演算された前記速度ベクトルに基づく」動きが停止した場合を判定しているのに対し、刊行物1発明では、「前記速度ベクトル演算手段により演算された前記速度ベクトルに基づ」いて、動きが停止した場合を判定していることを特定していない点。 相違点5 上記よりよい画像の読み取りが、補正後発明では、「前記リニアセンサによる読み取り」であるのに対し、刊行物1発明では、「あらためて適正な露出条件に従った絞り値及びシャッタ速度と解像度でCCD13を走査駆動して撮影」である点。 (オ)判断 (オ-1)相違点1、相違点5について 刊行物1発明では、よりよい画質の画像を得ることを、エリアセンサで撮影を行う時の条件(絞り値及びシャッタ速度と解像度)を変えることで実現している。 刊行物1発明と同じ、いわゆる、書画カメラにおいて、2次元イメージセンサ(エリアセンサ)と1次元イメージセンサ(リニアセンサ)とを備え、位置決めのための低画質の画像を得るときには2次元イメージセンサを用い、画像データを取り込むための高画質の画像データを得るときには1次元イメージセンサを用いることが、上記刊行物2には開示されている。 したがって、刊行物1発明の書画カメラにおいて、動きを検出することができる程度の画像を得るときにはエリアセンサを用い、画像データとして保存するための高画質画像データを得るときにはリニアセンサを採用して、上記相違点1、相違点5の構成とすることは、当業者が容易になしえたことである。 (オ-2)相違点2、相違点3、相違点4について 上記相違点2ないし相違点4は、まとめると、補正後発明では、動きを検出するために、前記エリア画像取得手段により取得された前記複数の画像から、特徴点を抽出する特徴点抽出手段を備え、上記抽出された特徴点を前記複数の画像間で比較することにより、当該特徴点の速度ベクトルを演算する速度ベクトル演算し、その演算結果に基づき動きの停止を判断しているのに対し、刊行物1発明では、複数の画像から動きの停止を判断していることを特定しているのみで、具体的な構成が特定されていない点で相違するというものである。 ところで、画像を連続して撮影し、上記連続撮影した画像から、動きの状態を判断する手段として、取得された前記複数の画像から、特徴点を抽出する特徴点抽出手段を備え、上記抽出された特徴点を前記複数の画像間で比較することにより、当該特徴点の速度ベクトルを演算する速度ベクトル演算し、その演算結果に基づき動きの状態を判断する手段は、審査官が原査定で引用した刊行物である特開2000-308045号公報の段落【0025】,【0085】?【0099】,図15等、同じく原査定で引用した刊行物である特開2005-352531号公報の段落【0015】?【0044】,図1?3等や、さらに必要ならば、特開平5-135177号公報の段落【0001】-【0006】等、特開2007-243250号公報の段落【0024】等、特開2008-123057号公報の段落【0019】?【0023】等、特開2006-343813号公報の段落【0005】等にもあるとおり、本願出願前周知の技術事項である。 したがって、刊行物1発明において、上記相違点2ないし相違点4の構成を採用することは、当業者が容易になしえたことである。 (カ)効果 以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。 (キ)まとめ(独立特許要件) 以上によれば、補正後発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載の技術、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正却下の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成27年2月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項9に係る発明は、平成26年4月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項9に係る発明のとおりであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 【請求項1】 エリアセンサとリニアセンサと制御部とを備え、 前記制御部は、 前記エリアセンサを制御して、複数の画像を連続して取得するエリア画像取得手段と、 前記エリア画像取得手段により取得された前記複数の画像から、特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、 前記特徴点抽出手段により抽出された前記特徴点を前記複数の画像間で比較することにより、当該特徴点の速度ベクトルを演算する速度ベクトル演算手段と、 前記速度ベクトル演算手段により演算された前記速度ベクトルに基づいて、前記リニアセンサによる読み取り開始を判定する読取開始判定手段と、 を備えたことを特徴とするオーバーヘッドスキャナ装置。 2.刊行物1の記載 審査官が拒絶の査定で引用した刊行物1には、上記第2 2.(2-3)(イ)(イ-1)に示したとおりの事項が記載されている。 3.刊行物1記載の発明 上記刊行物1には、上記第2 2.(2-3)(ウ)に示した、刊行物1発明が記載されている。 4.対比・判断 本願発明は、前記第2 2.(2-3)(ア)で認定した補正後発明から、上記第2 2.(2-2)で検討した付加して限定する構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項の全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する補正後発明が上記第2 2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載の技術、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載の技術、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 まとめ 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載の技術、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、残る請求項2ないし9に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 |
審理終結日 | 2015-11-27 |
結審通知日 | 2015-12-01 |
審決日 | 2015-12-14 |
出願番号 | 特願2010-127761(P2010-127761) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮島 潤 |
特許庁審判長 |
藤井 浩 |
特許庁審判官 |
渡邊 聡 渡辺 努 |
発明の名称 | オーバーヘッドスキャナ装置、画像取得方法、および、プログラム |
代理人 | 香島 拓也 |
代理人 | 伊藤 剣太 |
代理人 | 特許業務法人酒井国際特許事務所 |