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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H03H
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1310631
審判番号 不服2015-3520  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-24 
確定日 2016-02-04 
事件の表示 特願2013-254808「振動片、振動子、発振器、及びセンサー」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月27日出願公開、特開2014- 57366〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年 3月17日に出願した特願2010-60326号の一部を、平成25年12月10日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年12月20日 : 手続補正書及び上申書の提出
平成26年 7月14日付け: 拒絶理由の通知
平成26年 9月16日 : 意見書及び手続補正書の提出
平成26年11月20日付け: 拒絶査定
平成27年 2月24日 : 審判請求書及び手続補正書の提出

第2 平成27年 2月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年 2月24日付けの手続補正(以下、「本件補正3」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正3
(1)平成26年 9月16日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?9及び明細書の段落【0005】の記載は、各々以下のとおりである。

ア 特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
基部と、
平面視で前記基部から第1方向に延出されている振動腕部と、
を含み、
前記振動腕部は、
先端錘部と、
前記先端錘部よりも前記第1方向と交差する第2方向に沿った幅が小さく、且つ、平面視で前記先端錘部と前記基部との間に配置され、前記先端錘部に向って前記基部から延出されている腕部と、
平面視で前記先端錘部と前記腕部との間に配置され、前記第2方向に沿った幅が、前記先端錘部よりも小さく、且つ、前記腕部よりも大きい中間錘部と、
平面視で前記腕部と前記中間錘部との間に配置され、前記腕部から前記中間錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第1拡幅部と、を含み、
前記先端錘部の前記第2方向に沿った幅は一定であり、
前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合は、前記第1拡幅部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合よりも小さいことを特徴とする振動片。
【請求項2】
請求項1において、
前記振動腕部は、
平面視で、前記中間錘部と前記先端錘部との間に配置され、前記中間錘部と前記先端錘部とを接続し、前記中間錘部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第2拡幅部を含むことを特徴とする振動片。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記振動腕部は、平面視で主面に溝が設けられていることを特徴とする振動片。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項において、
平面視で、前記基部の前記振動腕部と反対側に設けられている支持部と、
前記支持部と前記基部とを接続し、前記基部よりも前記第2方向に沿った幅が小さい接続部と、
を含むことを特徴とする振動片。
【請求項5】
請求項4において、
前記基部と前記支持部との間に設けられ、前記第2方向に沿って前記接続部と並んで切込部が配置されていることを特徴とする振動片。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記支持部が、前記第1方向に沿って延出され、前記第2方向に沿って前記振動腕部と並んで配置されていることを特徴とする振動片。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の振動片と、
前記振動片が収納されているパッケージと、
を備えていることを特徴とする振動子。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の振動片と、
回路と、
を備えていることを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の振動片を備えていることを特徴とするセンサー。」

イ 明細書の記載
「【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例として実現することが可能である。
本発明のある形態に係る振動片は、基部と、平面視で前記基部から第1方向に延出されている振動腕部と、を含み、前記振動腕部は、先端錘部と、前記先端錘部よりも前記第1方向と交差する第2方向に沿った幅が小さく、且つ、平面視で前記先端錘部と前記基部との間に配置され、前記先端錘部に向って前記基部から延出されている腕部と、平面視で前記先端錘部と前記腕部との間に配置され、前記第2方向に沿った幅が、前記先端錘部よりも小さく、且つ、前記腕部よりも大きい中間錘部と、平面視で前記腕部と前記中間錘部との間に配置され、前記腕部から前記中間錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第1拡幅部と、を含み、前記先端錘部の前記第2方向に沿った幅は一定であり、前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合は、前記第1拡幅部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合よりも小さいことを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記振動腕部は、平面視で、前記中間錘部と前記先端錘部との間に配置され、前記中間錘部と前記先端錘部とを接続し、前記中間錘部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第2拡幅部を含むことを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記振動腕部は、平面視で主面に溝が設けられていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、平面視で、前記基部の前記振動腕部と反対側に設けられている支持部と、前記支持部と前記基部とを接続し、前記基部よりも前記第2方向に沿った幅が小さい接続部と、を含むことを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記基部と前記支持部との間に設けられ、前記第2方向に沿って前記接続部と並んで切込部が配置されていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記支持部が、前記第1方向に沿って延出され、前記第2方向に沿って前記振動腕部と並んで配置されていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動子は、前記振動片と、前記振動片が収納されているパッケージと、を備えていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る発振器は、前記振動片と、回路と、を備えていることを特徴とする発振器。
本発明のある別の形態に係るセンサーは、前記振動片を備えていることを特徴とする。」

(2)本件補正3により、特許請求の範囲及び明細書の段落【0005】の記載は、以下のとおり補正された。(下線部は、平成27年 2月24日付け手続補正書において請求人が示した補正箇所である。また、請求項2?9の記載は補正前と同じであるため、記載を省略した。)

ア「【請求項1】
基部と、
平面視で前記基部から第1方向に延出されている振動腕部と、
を含み、
前記振動腕部は、
先端錘部と、
前記先端錘部よりも前記第1方向と交差する第2方向に沿った幅が小さく、且つ、平面視で前記先端錘部と前記基部との間に配置され、前記先端錘部に向って前記基部から延出されている腕部と、
平面視で前記先端錘部と前記腕部との間に配置され、前記第2方向に沿った幅が、前記先端錘部よりも小さく、且つ、前記腕部よりも大きい中間錘部と、
平面視で前記腕部と前記中間錘部との間に配置され、前記腕部から前記中間錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第1拡幅部と、を含み、
前記先端錘部の前記第2方向に沿った幅は一定であり、
前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合は、前記第1拡幅部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合よりも小さく、
前記中間錘部は、前記第1拡幅部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している部分を有することを特徴とする振動片。

(請求項2?9は省略)」

イ「【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例として実現することが可能である。
本発明のある形態に係る振動片は、基部と、平面視で前記基部から第1方向に延出されている振動腕部と、を含み、前記振動腕部は、先端錘部と、前記先端錘部よりも前記第1方向と交差する第2方向に沿った幅が小さく、且つ、平面視で前記先端錘部と前記基部との間に配置され、前記先端錘部に向って前記基部から延出されている腕部と、平面視で前記先端錘部と前記腕部との間に配置され、前記第2方向に沿った幅が、前記先端錘部よりも小さく、且つ、前記腕部よりも大きい中間錘部と、平面視で前記腕部と前記中間錘部との間に配置され、前記腕部から前記中間錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第1拡幅部と、を含み、前記先端錘部の前記第2方向に沿った幅は一定であり、前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合は、前記第1拡幅部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合よりも小さく、前記中間錘部は、前記第1拡幅部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している部分を有することを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記振動腕部は、平面視で、前記中間錘部と前記先端錘部との間に配置され、前記中間錘部と前記先端錘部とを接続し、前記中間錘部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第2拡幅部を含むことを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記振動腕部は、平面視で主面に溝が設けられていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、平面視で、前記基部の前記振動腕部と反対側に設けられている支持部と、前記支持部と前記基部とを接続し、前記基部よりも前記第2方向に沿った幅が小さい接続部と、を含むことを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記基部と前記支持部との間に設けられ、前記第2方向に沿って前記接続部と並んで切込部が配置されていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記支持部が、前記第1方向に沿って延出され、前記第2方向に沿って前記振動腕部と並んで配置されていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動子は、前記振動片と、前記振動片が収納されているパッケージと、を備えていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る発振器は、前記振動片と、回路と、を備えていることを特徴とする発振器。
本発明のある別の形態に係るセンサーは、前記振動片を備えていることを特徴とする。」

(3)すなわち、本件補正3は、請求項1及び段落【0005】に「前記中間錘部は、前記第1拡幅部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している部分を有する」という記載(以下、「補正事項3」という。)を追加することを含む補正である。

2 補正の適否
本件補正3が特許法第17条の2第3項の規定を満たすか否かについて検討する。

(1)当初明細書等の記載
補正事項3に関し、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。(下線は、当審にて付与。)

ア 特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
圧電材料により形成された基部と、
前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕部と、
前記振動腕部の長手方向に沿って形成された長溝部と、
前記振動腕部の腕幅より大きい腕幅を有して、前記振動腕部の先端に形成された中間錘部と、
前記中間錘部の腕幅より大きい腕幅を有して、前記中間錘部の先端に形成された先端錘部とを備えることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片において、
前記振動腕部と前記中間錘部との間に、前記振動腕部の腕幅から前記中間錘部の腕幅へと徐々に腕幅を拡幅する第1拡幅部を備えることを特徴とする圧電振動片。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電振動片において、
前記中間錘部と前記先端錘部との間に、前記中間錘部の腕幅から前記先端錘部の腕幅へと徐々に腕幅を拡幅する第2拡幅部を備えることを特徴とする圧電振動片。
【請求項4】
圧電材料により形成された基部と、
前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕部と、
前記振動腕部の長手方向に沿って形成された長溝部と、
前記振動腕部の腕幅より大きい腕幅を有して、前記振動腕部の先端に形成された中間錘部と、
前記中間錘部の腕幅より大きい腕幅を有して、前記中間錘部の先端に形成された先端錘部とを備える圧電振動片と、
前記圧電振動片を収納するパッケージとを備えることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電デバイスにおいて、
前記振動腕部と前記中間錘部との間に、前記振動腕部の腕幅から前記中間錘部の腕幅へと徐々に腕幅を拡幅する第1拡幅部を備えることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項6】
請求項4または5に記載の圧電デバイスにおいて、
前記中間錘部と前記先端錘部との間に、前記中間錘部の腕幅から前記先端錘部の腕幅へと徐々に腕幅を拡幅する第2拡幅部を備えることを特徴とする圧電デバイス。」

イ 明細書の段落【0023】?【0025】の記載
「【0023】
2本の振動腕部3は、基部2から、互いに平行に延びて腕幅Wに形成されている。なお、ここで述べた互いに平行とは、振動腕部3のそれぞれの延伸方向が平行となっている状態を言う。振動腕部3は、B-Bで示す一点鎖線に関して対称に形成されている。2本の振動腕部3は間隔Pで配置されている。
中間錘部4は、振動腕部3の腕幅Wより大きい腕幅W1を有して、振動腕部3の先端に形成されている。先端錘部5は、中間錘部4の腕幅W1より大きい腕幅W2を有して、中間錘部4の先端に形成されている。中間錘部4および先端錘部5は、B-Bで示す一点鎖線に関して対称に形成されている。
【0024】
図1(b)に示すように、振動腕部3と中間錘部4との間には、振動腕部3の腕幅Wから中間錘部4の腕幅W1へと徐々に腕幅を拡幅する第1拡幅部7が形成されている。そして、中間錘部4と先端錘部5との間には、中間錘部4の腕幅W1から先端錘部5の腕幅W2へと徐々に腕幅を拡幅する第2拡幅部8が形成されている。
【0025】
本実施形態では、腕幅W、腕幅W1、および腕幅W2のそれぞれの1/2の位置が、図1(b)に一点鎖線で示す直線上に並ぶように配置されている。言い換えると、振動腕部3、中間錘部4、および先端錘部5は、図1(b)に示す一点鎖線に関して対称に形成されている。そして、先端錘部5は、図1(a)でB-Bで示す一点鎖線に関して対称に形成されているため、先端錘部5の腕幅W2は、振動腕部3の間隔P未満の値である。」

ウ 明細書の段落【0028】?【0037】の記載
「【0028】
本実施形態によれば、振動腕部3の腕幅Wより大きく(太く)、且つ先端錘部5の腕幅W2より小さい(細い)腕幅W1を有して形成された中間錘部4を備えることで、中間錘部4を振動腕部3の振動(振幅)に追従させる。さらに中間錘部4の腕幅W1より大きい(太い)腕幅W2を有して形成された先端錘部5を備えることで、振動腕部3および中間錘部4の振動(振幅)に追従させるので、振動腕部3の振動、および水晶振動片1の振動周波数を安定させることができる。
【0029】
そして、振動腕部3の腕幅Wと中間錘部4の腕幅W1との違いを、第1拡幅部7の腕幅を振動腕部3の腕幅Wから中間錘部4の腕幅W1へと徐々に拡幅させることにより、圧電材料の異方性によるエッチングの非対称性を抑制するので、振動腕部3と中間錘部4との間において、振動方向(振幅方向)に対して対称性を持たせることができる。これにより、2本の振動腕部3の間でバランスを維持することができ、水晶振動片1の振動特性を安定させることができる。
【0030】
また、中間錘部4の腕幅W1と先端錘部5の腕幅W2との違いを、第2拡幅部8の腕幅を中間錘部4の腕幅W1から先端錘部5の腕幅W2へと徐々に拡幅させることにより、圧電材料の異方性によるエッチングの非対称性を抑制するので、中間錘部4と先端錘部5との間において、振動方向(振幅方向)に対して対称性を持たせることができる。これにより、2本の振動腕部3の間でバランスを維持することができ、水晶振動片1の振動特性を安定させることができる。
【0031】
以下、第1実施形態における中間錘部4および先端錘部5に関する変形例について、図2を参照して説明する。
(変形例1)
図2(a)に変形例1を示す。図2(a)に示すように、変形例1の中間錘部4は、一点鎖線に関して対称に形成されていなく、先端錘部5は、一点鎖線に関して対称に形成されている。そして、中間錘部4の腕幅W1の一端は、先端錘部5の腕幅W2の一端と一直線に形成されている。
【0032】
また、変形例1は、中間錘部4が一点鎖線に関して対称に形成されていないとしたが、これに限定されるものではなく、中間錘部4が一点鎖線に関して対称に形成され、先端錘部5が一点鎖線に関して対称に形成されていないとしてもよい。
【0033】
(変形例2)
図2(b)に変形例2を示す。図2(b)に示すように、変形例1と同様に、変形例2の中間錘部4は、一点鎖線に関して対称に形成されていなく、先端錘部5は、一点鎖線に関して対称に形成されている。
そして、変形例1との相違は、中間錘部4の腕幅W1の一端が、振動腕部3の腕幅Wの一端と一直線に形成されている点である。
【0034】
また、変形例2は、中間錘部4の腕幅W1の一端が、振動腕部3の腕幅Wの一端と一直線に形成されているとしたが、これに限定されるものではなく、図2(c)に示すように、中間錘部4の腕幅W1の一端が、先端錘部5の腕幅W2の一端と一直線に形成されているとしてもよい。
【0035】
(変形例3)
図2(d)に変形例3を示す。図2(d)に示すように、変形例3の中間錘部4および先端錘部5は、一点鎖線に関して対称に形成されていない。中間錘部4の腕幅W1および先端錘部5の腕幅W2の一端は、振動腕部3の腕幅Wの一端と一直線に形成されている。
【0036】
(変形例4)
図2(e)に変形例4を示す。図2(e)に示すように、中間錘部4および先端錘部5の両方が一点鎖線に関して対称に形成されていない。そして、変形例1?3との相違は、振動腕部3の腕幅Wの一端および他端、中間錘部4の腕幅W1の一端および他端、および先端錘部5の腕幅W2の一端および他端は、一直線に形成されていない点である。
【0037】
また、変形例4は、中間錘部4および先端錘部5の両方が一点鎖線に関して対称に形成されていないとしたが、これに限定されるものではなく、中間錘部4または先端錘部5の一方が一点鎖線に関して対称に形成されていないとし、他方が一点鎖線に関して対称に形成されているとしてもよい。」

エ 【図1】(b)の記載




オ 【図2】の記載




(2)中間錘部、第1拡幅部及び第2拡幅部の定義
上記記載の段落【0024】及び【0029】の記載では、「第1拡幅部」は腕部の腕幅Wから中間錘部の腕幅W1へと徐々に拡幅する部分であること、すなわち、腕部から中間錘部へ拡幅している部分は、第1拡幅部であることが定義されている。
また、上記記載の段落【0024】及び【0030】の記載では、「第2拡幅部」は中間錘部の腕服W1から先端錘部の腕幅W2と徐々に拡幅する部分であること、すなわち、中間錘部から先端錘部へと拡幅している部分は、第2拡幅部であることが定義されている。
さらに、上記で示した段落に記載されたものの変形例に対応する段落【0031】?【0037】の記載においても、中間錘部の腕幅は、上記で示した段落と同様に、W1であると定義されている。
以上から、当初明細書等に記載されたものにおいては、拡幅している部分が第1拡幅部又は第2拡幅部に属し、中間錘部は拡幅していない部分に属することが明らかである。

(3)小括
したがって、当初明細書等には「前記中間錘部は、前記第1拡幅部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している部分を有する」に対応する事項は記載されていない。
よって、本件補正3は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項の規定を満たしていない。

3 請求人の主張
請求人は、平成27年 2月24日付け審判請求書にて、以下のとおり主張する。

『(2)補正の根拠
請求項1の下線部の補正は、本願明細書の段落0031、0032、0036、0037、図2(a)および図2(e)に基づいて行ったものであり、適法な補正である。

(3)拒絶理由について
今回の拒絶査定の通知では、「「中間錘部」が第2方向に沿って幅が変化する態様をも含むものと認められるところ、そのような態様の「中間錘部」は出願当初の明細書、特許請求の範囲、図面に記載されていない。」とのご指摘をいただいた。
そこで、今回の補正にて、「前記中間錘部は、前記第1拡幅部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している部分を有する」と特定する補正を行った。また、今回の補正にて、本願明細書の段落[0005]においても、本願明細書の段落0031、0032、0036、0037、図2(a)および図2(e)に基づいて「前記中間錘部は、前記第1拡幅部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している部分を有する」と特定する補正を行った。
なお、この補正は本願明細書の図2(a)および図2(b)に明確に示されていることを文章にしたものである。具体的には、図2(a)および図2(e)に基づく下記参考図を参照ください。参考図を見ても解るように、中間錘部は、前記第1拡幅部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している部分を有している。よって、この補正は新規事項の追加にあたらない。
【参考図】


以上のことから、請求項1および明細書の段落[0005]は出願当初の明細書等に開示されていない内容を含むものであるされた点は解消され、補正の各請求項に係る発明について特許法第17条の2第3項に係る拒絶理由が解消されるものと思われる。 』

しかしながら、前記2(2)でも示したように、本願明細書の段落【0024】及び【0029】の記載では、腕部の腕幅Wから中間錘部の腕幅W1へと腕幅が変化している部分は第1拡幅部であると定義されており、請求人が根拠として主張する段落【0031】、【0032】、【0036】、【0037】並びに【図2】(a)及び(b)においても、異なる定義はされていないから、中間錘部の一部に幅が変化している部分を含むとする請求人の上記主張は当初明細書等に基づくものでなく、採用することができない。

4 むすび
以上のとおり、本件補正3は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 原査定の理由
平成27年 2月24日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、次に、原査定の理由について検討する。原査定に至る経緯は以下のとおりである。

1 願書に最初に添付した特許請求の範囲及び明細書の記載
願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1?6並びに願書に最初に添付した明細書の段落【0005】、【0023】、【0024】及び【0026】の記載は、各々以下のとおりである。

(1)特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
圧電材料により形成された基部と、
前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕部と、
前記振動腕部の長手方向に沿って形成された長溝部と、
前記振動腕部の腕幅より大きい腕幅を有して、前記振動腕部の先端に形成された中間錘部と、
前記中間錘部の腕幅より大きい腕幅を有して、前記中間錘部の先端に形成された先端錘部とを備えることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片において、
前記振動腕部と前記中間錘部との間に、前記振動腕部の腕幅から前記中間錘部の腕幅へと徐々に腕幅を拡幅する第1拡幅部を備えることを特徴とする圧電振動片。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電振動片において、
前記中間錘部と前記先端錘部との間に、前記中間錘部の腕幅から前記先端錘部の腕幅へと徐々に腕幅を拡幅する第2拡幅部を備えることを特徴とする圧電振動片。
【請求項4】
圧電材料により形成された基部と、
前記基部と一体に形成され、互いに平行に延びる複数の振動腕部と、
前記振動腕部の長手方向に沿って形成された長溝部と、
前記振動腕部の腕幅より大きい腕幅を有して、前記振動腕部の先端に形成された中間錘部と、
前記中間錘部の腕幅より大きい腕幅を有して、前記中間錘部の先端に形成された先端錘部とを備える圧電振動片と、
前記圧電振動片を収納するパッケージとを備えることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電デバイスにおいて、
前記振動腕部と前記中間錘部との間に、前記振動腕部の腕幅から前記中間錘部の腕幅へと徐々に腕幅を拡幅する第1拡幅部を備えることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項6】
請求項4または5に記載の圧電デバイスにおいて、
前記中間錘部と前記先端錘部との間に、前記中間錘部の腕幅から前記先端錘部の腕幅へと徐々に腕幅を拡幅する第2拡幅部を備えることを特徴とする圧電デバイス。」

(2)明細書の段落【0005】の記載
「【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例により実現することが可能である。」

(3)明細書の段落【0023】の記載
「【0023】
2本の振動腕部3は、基部2から、互いに平行に延びて腕幅Wに形成されている。なお、ここで述べた互いに平行とは、振動腕部3のそれぞれの延伸方向が平行となっている状態を言う。振動腕部3は、B-Bで示す一点鎖線に関して対称に形成されている。2本の振動腕部3は間隔Pで配置されている。
中間錘部4は、振動腕部3の腕幅Wより大きい腕幅W1を有して、振動腕部3の先端に形成されている。先端錘部5は、中間錘部4の腕幅W1より大きい腕幅W2を有して、中間錘部4の先端に形成されている。中間錘部4および先端錘部5は、B-Bで示す一点鎖線に関して対称に形成されている。」

(4)明細書の段落【0024】の記載
「【0024】
図1(b)に示すように、振動腕部3と中間錘部4との間には、振動腕部3の腕幅Wから中間錘部4の腕幅W1へと徐々に腕幅を拡幅する第1拡幅部7が形成されている。そして、中間錘部4と先端錘部5との間には、中間錘部4の腕幅W1から先端錘部5の腕幅W2へと徐々に腕幅を拡幅する第2拡幅部8が形成されている。」

(5)明細書の段落【0026】の記載
「【0026】
長溝部6は、振動腕部3の長手方向に沿って形成されている。長溝部6は、図1(c)に示すように、腕幅Wを有する面にそれぞれ形成されている。そして、図1(b)に示す一点鎖線に関して対称に形成されている。」

2 本件補正1
平成25年12月20日付け手続補正(以下、「本件補正1」という。)により、特許請求の範囲並びに明細書の段落【0005】、【0023】、【0024】及び【0026】の記載は、以下のとおり補正された。(下線部は、平成25年12月20日付け手続補正書において請求人が示した補正箇所である。)

(1)「【請求項1】
基部と、
平面視で前記基部から第1方向に延出されている振動腕部と、
を含み、
前記振動腕は、
先端錘部と、
前記先端錘部よりも前記第1方向と交差する第2方向に沿った幅が小さく、且つ、平面視で前記先端錘部と前記基部との間に配置され、前記先端錘部に向って前記基部から延出されている腕部と、
平面視で前記先端錘部と前記腕部との間に配置され、前記第2方向に沿った幅が、前記先端錘部よりも小さく、且つ、前記腕部よりも大きい中間錘部と、
平面視で前記腕部と前記中間錘部との間に配置され、前記腕部から前記中間錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅し、且つ、前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合と異なっている第1拡幅部と、
を含むことを特徴とする振動片。
【請求項2】
請求項1において、
前記振動腕は、
平面視で、前記中間錘部と前記先端錘部との間に配置され、前記中間錘部と前記先端錘部とを接続し、前記中間錘部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第2拡幅部を含むことを特徴とする振動片。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記振動腕は、平面視で主面に溝が設けられていることを特徴とする振動片。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項において、
平面視で、前記基部の前記振動腕と反対側に設けられている支持部と、
前記支持部と前記基部とを接続し、前記基部よりも前記第2方向に沿った幅が小さい接続部と、
含むことを特徴とする振動片。
【請求項5】
請求項4において、
前記基部と前記支持部との間に設けられ、前記第2方向に沿って前記接続部と並んで切込部が配置されていることを特徴とする振動片。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記支持部が、前記第1方向に沿って延出され、前記第2方向に沿って前記振動腕部と並んで配置されていることを特徴とする振動片。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の振動片と、
前記振動片が収納されているパッケージと、
を備えていることを特徴とする振動子。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の振動片と、
回路と、
を備えていることを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の振動片を備えていることを特徴とするセンサー。」

(2)「【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例として実現することが可能である。
本発明のある形態に係る振動片は、基部と、平面視で前記基部から第1方向に延出されている振動腕部と、を含み、前記振動腕は、先端錘部と、前記先端錘部よりも前記第1方向と交差する第2方向に沿った幅が小さく、且つ、平面視で前記先端錘部と前記基部との間に配置され、前記先端錘部に向って前記基部から延出されている腕部と、平面視で前記先端錘部と前記腕部との間に配置され、前記第2方向に沿った幅が、前記先端錘部よりも小さく、且つ、前記腕部よりも大きい中間錘部と、平面視で前記腕部と前記中間錘部との間に配置され、前記腕部から前記中間錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅し、且つ、前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合と異なっている第1拡幅部と、を含むことを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記振動腕は、平面視で、前記中間錘部と前記先端錘部との間に配置され、前記中間錘部と前記先端錘部とを接続し、前記中間錘部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第2拡幅部を含むことを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記振動腕は、平面視で主面に溝が設けられていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、平面視で、前記基部の前記振動腕と反対側に設けられている支持部と、前記支持部と前記基部とを接続し、前記基部よりも前記第2方向に沿った幅が小さい接続部と、含むことを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記基部と前記支持部との間に設けられ、前記第2方向に沿って前記接続部と並んで切込部が配置されていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記支持部が、前記第1方向に沿って延出され、前記第2方向に沿って前記振動腕部と並んで配置されていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動子は、前記振動片と、前記振動片が収納されているパッケージと、を備えていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る発振器は、前記振動片と、回路と、を備えていることを特徴とする発振器。
本発明のある別の形態に係る発振器は、前記振動片を備えていることを特徴とする。」

(3)「【0023】
2本の振動腕部3は、基部2から、第1方向に互いに平行に延びて腕部の腕幅W(図1(b))に形成されている。なお、ここで述べた互いに平行とは、振動腕部3のそれぞれの延伸方向が平行となっている状態を言う。振動腕部3は、B-Bで示す一点鎖線に関して対称に形成されている。2本の振動腕部3は間隔Pで配置されている。
中間錘部4は、振動腕部3の腕部の前記第1方向と交差する第2方向に沿った腕幅Wより大きい腕幅W1を有して、振動腕部3の前記腕部より先端側に形成されている。先端錘部5は、中間錘部4の前記第2方向に沿った腕幅W1より大きい腕幅W2を有して、中間錘部4より先端側に形成されている。中間錘部4および先端錘部5は、B-Bで示す一点鎖線に関して対称に形成されている。」

(4)「【0024】
図1(b)に示すように、振動腕部3の前記腕部と中間錘部4との間には、振動腕部3の前記腕部の腕幅Wから中間錘部4の腕幅W1へと徐々に腕幅を拡幅する第1拡幅部7が形成されている。そして、中間錘部4と先端錘部5との間には、中間錘部4の腕幅W1から先端錘部5の腕幅W2へと徐々に腕幅を拡幅する第2拡幅部8が形成されている。」

(5)「【0026】
長溝部6は、振動腕部3の長手方向に沿って形成されている。長溝部6は、図1(c)に示すように、腕幅Wを有する前記腕部の主面にそれぞれ形成されている。そして、図1(b)に示す一点鎖線に関して対称に形成されている。」

3 平成25年12月20日付け上申書による請求人の主張
平成25年12月20日付け上申書による、本件補正1に関する請求人の主張は以下のとおりである。

『(2)補正の根拠について
以下に、この補正の根拠を説明致します。
新請求項1の補正の根拠は、例えば、本分割出願の明細書段落[0023]?[0025]、段落[0031]?[0037]、図1及び図2です。
新請求項2の補正の根拠は、例えば、本分割出願の明細書段落[0023]?[0025]、段落[0031]?[0037]、図1及び図2です。
新請求項3の補正の根拠は、例えば、本分割出願の明細書段落[0026]及び図1です。
新請求項4の補正の根拠は、例えば、本分割出願の明細書段落[0021]、段落[0022]及び図1です。
新請求項5の補正の根拠は、例えば、本分割出願の明細書段落[0022]及び図1です。
新請求項6の補正の根拠は、例えば、本分割出願の明細書段落[0022]及び図1です。
新請求項7の補正の根拠は、例えば、本分割出願の明細書段落[0039]、段落[0040]及び図3です。
新請求項8の補正の根拠は、例えば、本分割出願の明細書段落[0051]及び図4です。
新請求項9の補正の根拠は、例えば、本分割出願の明細書段落[0064]です。

以上説明しましたように、今回行った手続補正は、出願当初の明細書の記載の範囲でなされたものであり、新規な事項を追加するものではない適正な補正であることは明らかであると思料致します。』

4 平成26年 7月14日付け拒絶理由
平成26年 7月14日付けで通知された拒絶の理由は以下のとおりである。

『この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。

理 由

平成25年12月20日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



出願人は請求項1及び明細書の段落【0005】において、「第1拡幅部」は「前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合と異なっている」ものとする補正を行っている。
しかしながら、出願当初の明細書等には、(1)「中間錘部」が「前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化」を示すことは記載されておらず、(2)したがって、「第1拡幅部」が「中間錘部」の当該「変化」の割合と異なっていることも記載されていない。
また、上記補正された事項は出願当初の明細書等から自明であるものともいえない。
よって、請求項1-9、明細書の段落【0005】に記載された事項は出願当初の明細書に記載された事項の範囲内のものではない。

なお、当該補正がなされた請求項1-9に記載した事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないことが明らかであるから、当該請求項に係る発明については新規性進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。』

5 本件補正2
平成26年 9月16日付け手続補正(以下、「本件補正2」という。)により、特許請求の範囲及び明細書の段落【0005】の記載は、以下のとおり補正された。(下線部は、平成26年 9月16日付け手続補正書において請求人が示した補正箇所である。また、請求項5?9の記載は補正前と同じであるため、記載を省略した。)

(1)「【請求項1】
基部と、
平面視で前記基部から第1方向に延出されている振動腕部と、
を含み、
前記振動腕部は、
先端錘部と、
前記先端錘部よりも前記第1方向と交差する第2方向に沿った幅が小さく、且つ、平面視で前記先端錘部と前記基部との間に配置され、前記先端錘部に向って前記基部から延出されている腕部と、
平面視で前記先端錘部と前記腕部との間に配置され、前記第2方向に沿った幅が、前記先端錘部よりも小さく、且つ、前記腕部よりも大きい中間錘部と、
平面視で前記腕部と前記中間錘部との間に配置され、前記腕部から前記中間錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第1拡幅部と、を含み、
前記先端錘部の前記第2方向に沿った幅は一定であり、
前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合は、前記第1拡幅部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合よりも小さいことを特徴とする振動片。
【請求項2】
請求項1において、
前記振動腕部は、
平面視で、前記中間錘部と前記先端錘部との間に配置され、前記中間錘部と前記先端錘部とを接続し、前記中間錘部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第2拡幅部を含むことを特徴とする振動片。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記振動腕部は、平面視で主面に溝が設けられていることを特徴とする振動片。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項において、
平面視で、前記基部の前記振動腕部と反対側に設けられている支持部と、
前記支持部と前記基部とを接続し、前記基部よりも前記第2方向に沿った幅が小さい接続部と、
を含むことを特徴とする振動片。

(請求項5?9は省略)」

(2)「【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例として実現することが可能である。
本発明のある形態に係る振動片は、基部と、平面視で前記基部から第1方向に延出されている振動腕部と、を含み、前記振動腕部は、先端錘部と、前記先端錘部よりも前記第1方向と交差する第2方向に沿った幅が小さく、且つ、平面視で前記先端錘部と前記基部との間に配置され、前記先端錘部に向って前記基部から延出されている腕部と、平面視で前記先端錘部と前記腕部との間に配置され、前記第2方向に沿った幅が、前記先端錘部よりも小さく、且つ、前記腕部よりも大きい中間錘部と、平面視で前記腕部と前記中間錘部との間に配置され、前記腕部から前記中間錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第1拡幅部と、を含み、前記先端錘部の前記第2方向に沿った幅は一定であり、前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合は、前記第1拡幅部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合よりも小さいことを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記振動腕部は、平面視で、前記中間錘部と前記先端錘部との間に配置され、前記中間錘部と前記先端錘部とを接続し、前記中間錘部から前記先端錘部へ向かうに従って前記第2方向に沿った幅が徐々に拡幅している第2拡幅部を含むことを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記振動腕部は、平面視で主面に溝が設けられていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、平面視で、前記基部の前記振動腕部と反対側に設けられている支持部と、前記支持部と前記基部とを接続し、前記基部よりも前記第2方向に沿った幅が小さい接続部と、を含むことを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記基部と前記支持部との間に設けられ、前記第2方向に沿って前記接続部と並んで切込部が配置されていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動片は、前記支持部が、前記第1方向に沿って延出され、前記第2方向に沿って前記振動腕部と並んで配置されていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る振動子は、前記振動片と、前記振動片が収納されているパッケージと、を備えていることを特徴とする。
本発明のある別の形態に係る発振器は、前記振動片と、回路と、を備えていることを特徴とする発振器。
本発明のある別の形態に係るセンサーは、前記振動片を備えていることを特徴とする。」

6 平成26年 9月16日付け意見書による請求人の主張
平成26年 9月16日付け意見書による、本件補正2に関する請求人の主張は以下のとおりである。

『<補正の根拠>
請求項1の補正の根拠は、例えば、請求項1の補正の根拠は、例えば、本願明細書の段落0023?0025、図1(a)、図1(b)、図2です。なお、請求項1中にて「前記先端錘部の前記第2方向に沿った幅は一定であり」なる部分を追加する補正をしたが、この補正は、本願明細書の図1(b)に明確に示されていることを文章にしたものである。よって、この補正は、新規事項の追加にはあたらない。
したがって、上記各請求項の補正は、適法な補正であります。

(3)本願発明と拒絶理由との関係
今回の補正にて、旧請求項1中の「前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合と異なっている」なる部分を削除し、新請求項1中にて「前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合は、前記第1拡幅部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合よりも小さい」を追加する補正を行った。この補正は本願明細書の図1(a)、図1(b)、図2に明確に示されていることを文章にしたものである。よって、この補正は、新規事項の追加にはあたらない。
また、この請求項1の補正に伴い、明細書の段落【0005】についても同様な補正を行った。
以上により、請求項1-9、明細書の段落【0005】に記載された事項は出願当初の明細書に記載された事項の範囲内のものとなり、拒絶理由は解消したと思慮する。』

7 平成26年11月20日付け拒絶査定
平成26年11月20日付け拒絶査定は以下のとおりである。

『この出願については、平成26年 7月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

出願人は平成26年9月16日付け手続補正書により、請求項1及び明細書の段落【0005】において「前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合は、前記第1拡幅部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合よりも小さい」ことを規定し、同日付け意見書において、当該補正は本願明細書の図1(a)、図1(b)、図2に明確に示されている旨の主張を行っている。
しかしながら、上記補正された記載によれば、「中間錘部」が第2方向に沿って幅が変化する態様をも含むものと認められるところ、そのような態様の「中間錘部」は出願当初の明細書、特許請求の範囲、図面に記載されていない。また、当該態様は出願当初の明細書等から自明なものともいえないから、出願人の上記主張は採用できない。
したがって、補正後の請求項1及び明細書の段落【0005】は出願当初の明細書等に開示されていない内容を含むものであり、依然として、本願は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。』

第4 当審の判断
本件補正1及び本件補正2により、請求項1及び段落【0005】に追加される部分には、「前記中間錘部の前記第1方向の単位長さあたりの前記第2方向に沿った幅の変化の割合」という記載(以下、「共通補正事項」という)が共通して存在する。
そこで、共通補正事項を追加する補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえるか否かについて検討する。
前記「第2」[理由]2(2)でも示したとおり、当初明細書等に記載したものにおいては、拡幅している部分が第1拡幅部又は第2拡幅部に属し、中間錘部は拡幅していない部分に属することが明らかであるから、共通補正事項に含まれる、「中間錘部」の「幅の変化の割合」という概念は、当初明細書等に記載したものに含まれていない。
また、平成25年12月20日付け上申書による請求人の主張、及び、平成26年 9月16日付け意見書による請求人の主張について、請求人が請求項1について補正の根拠であるとする当初明細書等の記載箇所についても、前記「第2」[理由]2(2)及び3において検討済みであるから、当該主張は上記結論に影響を与えない。
したがって、共通補正事項を追加する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえない。
よって、共通補正事項を追加する補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものである。

第5 むすび
以上のとおり、共通補正事項を追加する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3号の規定を満たしていないものである。
したがって、その余の点を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-27 
結審通知日 2015-12-01 
審決日 2015-12-14 
出願番号 特願2013-254808(P2013-254808)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (H03H)
P 1 8・ 561- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 和志  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 吉田 隆之
清水 祐樹
発明の名称 振動片、振動子、発振器、及びセンサー  
代理人 増田 達哉  

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