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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1310637 |
審判番号 | 不服2015-6962 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-13 |
確定日 | 2016-02-04 |
事件の表示 | 特願2012-504440「半導体発光素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月15日国際公開、WO2011/111642〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年3月5日(優先権主張2010年3月8日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成26年9月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月20日に手続補正がなされたが、平成27年1月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月13日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において、同年9月11日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月16日に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成27年11月16日付けの手続補正により補正された請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。 「半導体層上にパッド電極を有し、少なくとも前記半導体層が保護膜で被覆されている半導体発光素子であって、 前記パッド電極の上面の偏心させた位置に、前記保護膜から離間しプローブ針を前記パッド電極上に留めるためのストッパ部材を少なくとも一つ有し、 前記ストッパ部材が、前記パッド電極の縁に沿うように湾曲された半弧状であることを特徴とする半導体発光素子。」(なお、下線は、請求人が手続補正書において付したものである。また、請求項1には、最後に「導体発光素子。」と記載されているが、誤記と認め、本願発明を上記のように認定した。) 第3 刊行物の記載 (1)当審拒絶理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である 特開2007-258445号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。 ア 「【請求項9】 窒化ガリウム系化合物半導体素子のp型半導体層上に透光性導電酸化膜が積層されてなる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子であって、 前記透光性導電酸化膜が、水素(H_(2))を含むガス雰囲気中でアニール処理されたものであることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。 【請求項10】ないし【請求項13】は、省略。 【請求項14】 前記透光性導電酸化膜上に積層して保護層が形成されていることを特徴とする請求項9?13の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。」 イ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 以下、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子(以下、発光素子と略称することがある)の製造方法、窒化ガリウム系化合物半導体発光素子、及びそれを用いたランプの一実施形態について、図1?5を適宜参照しながら説明する。 但し、本発明は以下の実施形態の各々に限定されるものではなく、例えば、これら実施形態の構成要素同士を適宜組み合わせても良い。 …… 【0015】 図1は、本発明で得られる発光素子の一例を、断面図で模式的に示した図である。 図1に示す発光素子1は、基板11上に、n型GaN層12、発光層13、及びp型GaN層(p型半導体層)14が、この順で積層された窒化ガリウム系化合物半導体素子の前記p型GaN層14上に、透光性導電酸化膜が成膜されてなる正極15が積層され、概略構成されている。また、正極15上には正極ボンディングパッド16が形成されており、n型GaN層12上の負極形成領域には負極17が形成されている。 本発明では、p型GaN層上に成膜された正極が、前記水素アニール工程において、透光性導電酸化膜に水素アニール処理が施されてなるものとされている。」 ウ 「【0026】 「正極ボンディングパッド及び負極」 正極ボンディングパッド16は、透光性導電酸化膜層からなる正極15上に形成され、Au、Al、NiおよびCu等の材料を用いた各種構造が周知であり、これら周知の材料、構造のものを何ら制限無く用いることができる。 正極ボンディングパッド16の厚さは、100?1000nmの範囲内であることが好ましい。また、ボンディングパッドの特性上、厚さが大きい方が、ボンダビリティーが高くなるため、正極ボンディングパッド16の厚さは300nm以上とすることがより好ましい。さらに、製造コストの観点から500nm以下とすることが好ましい。 …… 【0028】 「保護層」 本発明では、水素アニール処理が施された透光性導電酸化膜の酸化を防止するため、例えば、図4に示す発光素子2のように、透光性導電酸化膜上に保護層が成膜されていることがより好ましい。 図示例では、保護層18が、透光性導電酸化膜からなる正極15を覆うとともに、正極ボンディングパッド16の外周部を覆うように形成されているが、これには限定されない。例えば、保護層が、さらにn型GaN層、発光層およびp型GaN層の各側面を覆うように形成された構成としても良い。」 エ 「【0048】 [実施例1] 図3に、本実施例の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子に用いるために作製した、エピタキシャル構造体の断面模式図を示す。また、図1に本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の断面模式図を、図2にその平面模式図を示し、以下、適宜参照しながら説明する。 …… 【0051】 ITOからなる透光性導電酸化膜の成膜後、RTAアニール炉を用いて、200℃?900℃の水素(H_(2))アニール処理を行った。この際の水素アニール処理は、H_(2)を体積%で1%含むN_(2)雰囲気中にて行った。その後、周知のフォトリソグラフィーとウェットエッチングにより、p型GaNコンタクト層27上の正極を形成する領域にのみITOが成膜された状態とした。このようにして、p型GaNコンタクト層27上に、本発明の正極(図1及び図2の符号15を参照)を形成した。 …… 【0054】 「発光素子の分割」 正極ボンディングパッド16及び負極17を形成した後、サファイアからなる基板11の裏面をダイヤモンド微粒などの砥粒を使用して研磨し、最終的に鏡面に仕上げた。その後、積層構造体を裁断して350μm角の正方形の個別のチップへと分離し、リードフレーム状に載置した後、金(Au)線でリードフレームと結線した。 【0055】 「駆動電圧(Vf)および発光出力(Po)の測定」 これらのチップを、プローブ針による通電により、電流印加値20mAにおける順方向電圧(駆動電圧:Vf)を測定した。また、一般的な積分球で発光出力(Po)を測定した。発光面の発光分布は、正極15の全面で発光していることが確認できた。 上述のようにして測定した発光素子の駆動電圧(Vf)を、水素アニール温度を横軸として図6のグラフに示す。 なお、Poは、水素アニール温度に関わらず、すべて10mWであった。 実施例1の素子特性の一覧を下記表2に示す。」 オ 上記ウで引用する図4は、以下のものである。 カ 上記エで引用される図2は、以下のものである。 (2)引用文献に記載された発明 ア 上記(1)アの記載によれば、引用文献には、 「窒化ガリウム系化合物半導体素子のp型半導体層上に透光性導電酸化膜が積層されてなる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子であって、 前記透光性導電酸化膜上に積層して保護層が形成されている、 窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。」 が記載されているものと認められる。 イ 上記(1)イの記載によれば、 図1ないし5は、「本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」を示すものであるから、図4に示された符合は、図1の説明を参酌する。 上記(1)イないしエの記載に照らして、図2及び図4を見ると、以下のことが理解できる。 (ア)上記アの「窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」は、基板11上に、n型GaN層12、発光層13、及びp型GaN層(p型半導体層)14が、この順で積層されていること。 (イ)上記アの「透光性導電酸化膜」上に、「正極ボンディングパッド16」が形成され、図2に示された形状からして「円形」であること。 (ウ)上記アの「保護層」は、正極ボンディングパッド16の外周部を覆うとともに、さらにn型GaN層、発光層およびp型GaN層の各側面を覆うように形成された構成としてもよいこと。 ウ 上記(1)エの【0055】の記載によれば、 上記アの「窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」は、 プローブ針を用いて駆動電圧が測定されることが理解できる。 エ 上記アないしウより、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「基板上に、n型GaN層、発光層、及びp型GaN層(p型半導体層)が、この順で積層されている窒化ガリウム系化合物半導体素子のp型半導体層上に透光性導電酸化膜が積層されてなる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子であって、 前記透光性導電酸化膜上に円形の正極ボンディングパッドが形成され、 前記正極ボンディングパッドの外周部を覆うとともに、さらにn型GaN層、発光層およびp型GaN層の各側面を覆うように形成された保護層を備え、 プローブ針を用いて駆動電圧が測定される、 窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。」 第4 対比・判断 1 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「n型GaN層、発光層、及びp型GaN層(p型半導体層)」は、本願発明の「半導体層」に相当し、 以下、同様に、 「円形の正極ボンディングパッド」は、「パッド電極」に、 「保護層」は、「保護膜」に、 「窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」は、「半導体発光素子」に、それぞれ、相当する。 (2)ア 本願明細書には、「パッド電極」に関連して、以下の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明によれば、前記課題は次の手段により解決される。 【0012】ないし【0017】は、省略。 【0018】 さらにまた半導体発光素子は、前記半導体層とパッド電極との間に、全面電極を設けることができる。これにより、パッド電極が小径化しても、全面電極を通して半導体層へ均等に電流を拡散でき、効率よく発光させることができる。 【0019】 さらに前記全面電極を、透光性電極とすることで、半導体層側からの光を全面電極を透過させて、半導体発光素子外部側に効率よく取り出すことができ、発光出力を改善できる。」 上記記載からして、本願発明は、「パッド電極」と「半導体層」との間に「透光性電極」を設けた「半導体発光素子」を包含するものと解される。 イ 一方、引用発明の「窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」は、「円形の正極ボンディングパッド」と「p型半導体層」との間に「透光性導電酸化膜」を備えたものであり、該「透光性導電酸化膜」は「透光性電極」に相当する。 ウ してみると、引用発明と本願発明とは、 「半導体層上にパッド電極を有する」 点で一致する。 (3)引用発明の「窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」の「n型GaN層、発光層およびp型GaN層の各側面」は、「保護層」により覆われていることに照らせば、 引用発明と本願発明とは、 「少なくとも半導体層が保護膜で被覆されている半導体発光素子」 である点で一致する。 (4)以上のことから、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。 <一致点> 「半導体層上にパッド電極を有し、少なくとも前記半導体層が保護膜で被覆されている半導体発光素子。」 (5)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明は、「前記パッド電極の上面の偏心させた位置に、前記保護膜から離間しプローブ針を前記パッド電極上に留めるためのストッパ部材を少なくとも一つ有し、 前記ストッパ部材が、前記パッド電極の縁に沿うように湾曲された半弧状である」のに対して、 引用発明は、プローブ針を用いて駆動電圧が測定されるものではあるが、プローブ針を留めるためのストッパ部材を有していない点。 2 判断 (1)上記<相違点>について検討する。 ア パッド電極が形成された半導体装置において、プローブ針を押し当てた際、プローブ針が滑らないように、パッド電極の上面の偏心させた位置に、プローブ針の先端を受け止める「凹状のストッパ」を、パッド電極の縁に沿うように配置することは、当審拒絶理由で引用した特開2009-239090号公報(【0097】ないし【0100】及び図24を参照。)、特開平10-325844号公報(【0021】ないし【0023】、【0034】、【0035】及び図7を参照。)及び特開昭54-128272号公報(特許請求の範囲、第1頁左欄ないし同頁右欄及び第1図を参照。)に記載されているように、本願の優先日時点で周知である(以下「周知技術」という。)。 イ してみると、引用発明は、「正極ボンディングパッドが形成され」、「プローブ針を用いて駆動電圧が測定される」ものであるから、上記周知技術に基づいて、引用発明の「円形の正極ボンディングパッド」にプローブ針を押し当てた際に、プローブ針が滑らないように、該パッドの上面の偏心させた位置に、「凹状のストッパ」を円形のパッドの縁に沿うように配置することは、当業者が容易になし得たことである。 その際、「凹状のストッパ」を、「円形の正極ボンディングパッド」の縁に沿うように「湾曲された半弧状のストッパ」とすることは、適宜なし得た設計事項である。 ウ 上記イのようにした引用発明においては、 「保護層」が「円形の正極ボンディングパッド」の外周部を覆うものであることに照らせば、「湾曲された半弧状のストッパ」は、該「保護層」に覆われることなく離間したものであるといえる。 エ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点>に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。 (2)効果 本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-11-25 |
結審通知日 | 2015-12-01 |
審決日 | 2015-12-15 |
出願番号 | 特願2012-504440(P2012-504440) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小濱 健太 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
▲高▼ 芳徳 星野 浩一 |
発明の名称 | 半導体発光素子及びその製造方法 |
代理人 | 豊栖 康弘 |
代理人 | 豊栖 康司 |