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審決分類 審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する E05F
管理番号 1310934
審判番号 訂正2015-390125  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2015-11-12 
確定日 2016-01-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5726556号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5726556号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5726556号は、平成23年2月2日に出願されたものであって、その請求項1ないし6に係る発明は平成27年4月10日に特許権の設定登録がなされ、その後、平成27年11月12日に請求項1ないし6に係る発明について本件訂正審判が請求されたものである。

第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5726556号の明細書(以下「本件特許明細書」という。)及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 訂正の内容
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記閉鎖体の開閉方向の前後位置にて捕捉するように構成されている」とあるのを、「前記開閉体の開閉方向の前後位置にて捕捉するように構成されている」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1、2または3に記載の開閉体閉止装置」とあるのを、「請求項3に記載の開閉体閉止装置」に訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0009】に「前記閉鎖体の開閉方向の前後位置にて捕捉するように構成されている」とあるのを、「前記開閉体の開閉方向の前後位置にて捕捉するように構成されている」に訂正する。

第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的の適否について
上記訂正事項1は、前記されていない「閉鎖体」を、開閉方向に移動するものである「開閉体」に訂正するものであるから、誤記の訂正を目的としたものといえる。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記(1)で述べたように、訂正事項1は、誤記を訂正したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件特許明細書には、「本発明は、引き戸や抽斗などの開閉体を強制的に閉止させるための開閉体閉止装置に関する。」(段落【0001】)、「図11(a)の状態(待機状態)から、引き戸2を閉方向へ移動させると、被捕捉部材11の突部11aは、キャッチ部100の当接ブロック110の当接面112aに当接する。さらに、当接面112aは、突部11aによって後方(紙面右側)へと押し込まれ、当接ブロック110は圧縮コイルばね113の付勢力に抗して後方(当接ブロック110が押圧される方向)へと移動する。」(段落【0062】)、「この解除状態では、図11(b)に示すように、リンクピン140は、当接ブロック110の後方への移動に伴い、傾斜孔111aに沿って上方へと押し上げられる。また、リンクピン140は、内包ブロック130の誘導孔131aに沿って上方へ移動する。すなわち、このリンク機構では、当接ブロック110が内包ブロック130に対して相対的に後方へ移動する。また、このリンク機構では、捕捉板120が内包ブロック130に対して相対的に上方へと移動する。これにより、被捕捉部材11の突部11aを、当接ブロック110の受け部112と、捕捉板120の捕捉爪121とで前後方向において捕捉する。・・・・」(同【0063】)と記載されているように(下線は審決で付した。以下同様。)、捕捉部材(捕捉板120)が当接ブロックとともに被捕捉部材を捕捉するのは、開閉体(引き戸)の開閉方向の前後位置であるといえるので、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

2 訂正事項2について
(1)訂正の目的の適否について
上記訂正事項2は、引用形式で記載された請求項4で引用する請求項について、訂正前は「請求項1、2または3」とあるのを、訂正後では「請求項3」と訂正するものである。
請求項4には、「前記リンク機構は、前記内包ブロックと前記当接ブロックとの間に」と記載されているように、「内包ブロック」が前記されていることが前提であるところ、請求項3には、「前記リンクピンが挿通される誘導孔を有し、前記誘導孔に沿って前記捕捉部材を上下に移動させる内包ブロック」と記載されているが、請求項1及び2には、「内包ブロック」は記載されていない。
したがって、請求項4で引用する請求項を、「内包ブロック」が記載されている請求項3のみとする、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものといえる。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記(1)で述べたように、訂正事項2は、引用する請求項を削除することにより構成を明瞭にしたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項2は、引用する請求項を削除したものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

3 訂正事項3
上記訂正事項3は、明細書の段落【0009】の「前記閉鎖体の開閉方向の前後位置にて捕捉するように構成されている」とあるのを、「前記開閉体の開閉方向の前後位置にて捕捉するように構成されている」に訂正するもの、すなわち、「閉鎖体」を「開閉体」に訂正するものであるから、上記訂正事項1と同様に、誤記の訂正を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

4 独立特許要件について
訂正後の請求項1ないし6に記載されている事項により特定される発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。

第5 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
開閉体閉止装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸や抽斗などの開閉体を強制的に閉止させるための開閉体閉止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引き戸などの開閉体を強制的に閉止させるものとして、開閉体閉止装置が知られている。この開閉体閉止装置は、例えば、引き戸を案内するための引き戸レール側に取付られた被捕捉部材と、引き戸側に取り付けられた捕捉引込機構とで構成されている。
【0003】
この捕捉引込機構は、連結軸を中心に回動可能に構成された捕捉部材を備えており、この捕捉部材は、回動した所定位置で突起状の被捕捉部材を捕捉し、または捕捉解除する。また、捕捉引込機構は、引き戸を閉止する方向に引き寄せるためのばねと、このばね力を緩衝するダンパーとを備えている。
【0004】
この捕捉引込機構は、捕捉部材が被捕捉部材を捕捉していない状態では、その内部のばね力が作用しない(引き戸を閉止しない)ようになっている。一方、捕捉部材が被捕捉部材を捕捉している状態では、ばね力が作用して引き戸を閉止する方向に引き寄せるようになっている。
【0005】
これにより、開閉体閉止装置は、引き戸の閉まり際に、捕捉引込機構の捕捉部材が被捕捉部材を捕捉することによって、引き戸が強制的に閉位置に誘導されると共に、ダンパーによって引き戸が緩やかに閉止するようになる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-191469号公報
【特許文献2】特開2010-43472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した開閉体閉止装置では、引き戸が引き戸レール上を走行する際に所定位置で被捕捉部材と捕捉引込機構の捕捉部材とが係合(閉止時)または係合解除(開時)する動作が生じる。すなわち、捕捉部材は、この所定位置での引き戸の開閉力によって回動して被捕捉部材を捕捉する。そして、この捕捉部材が回動する速度は、この所定位置において引き戸を閉止させる速度とほぼ同じ速度になる。そのため、この所定位置で引き戸を勢いよく閉止させようとした場合、捕捉部材と被捕捉部材とが勢いよく係合してしまい、係合音が発生してしまう。この係合音は、特に、家庭の居室などに開閉体閉止装置を設置する場合に耳障りに聞こえてしまうことがある。
【0008】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、被捕捉部材と捕捉引込機構の捕捉部材との捕捉時に発生する係合音をより小さくすることができる開閉体閉止装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述課題を解決するため、本発明の開閉体閉止装置は、開閉体または前記開閉体を移動可能に案内する固定部材のいずれか一方に取り付けられた被捕捉部材と、前記開閉体または固定部材の他方に取り付けられ、前記被捕捉部材を捕捉するための捕捉部材、および、前記開閉体を前記固定部材に沿って移動させる開閉力によって前記被捕捉部材と当接して押圧されることによって前記捕捉部材を移動させて前記被捕捉部材を捕捉する当接ブロックを有する捕捉引込機構と、前記捕捉部材が前記被捕捉部材を捕捉した状態で、前記開閉体を強制的に閉じる方向へ付勢する第1の弾性体と、を備えた開閉体閉止装置であって、前記捕捉引込機構は、前記開閉体を前記固定部材に沿って移動させる開閉力によって前記捕捉部材および前記当接ブロックをスライド移動させるリンク機構を備え、前記被捕捉部材を捕捉する際に、前記被捕捉部材に対して前記当接ブロックが押圧される方向に移動するように構成され、前記捕捉部材は、前記当接ブロックが被捕捉部材に当接して押圧されると、前記被捕捉部材に近づく方向に移動して、前記当接ブロックと共に前記被捕捉部材を、前記開閉体の開閉方向の前後位置にて捕捉するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、前記捕捉部材が、前記開閉体を開閉させる速度よりも遅い速度で移動するようにしてもよい。
【0012】
さらに、前記リンク機構は、前記捕捉部材に取り付けられたリンクピンと、前記リンクピンが挿通される誘導孔を有し、前記誘導孔に沿って前記捕捉部材を上下に移動させる内包ブロックと、前記当接ブロックと、で構成され、前記当接ブロックには、前記リンクピンが挿通される傾斜孔が形成され、前記被捕捉部材に押圧されたときに、前記傾斜孔に沿って前記捕捉部材を上下方向に移動させると共に、前記傾斜孔に沿って前記内包ブロックに対して相対的に前後方向に移動するようにしてもよい。
【0013】
さらにまた、前記リンク機構は、前記内包ブロックと前記当接ブロックとの間に、捕捉解除時に前記当接ブロックを前方向に付勢して、捕捉解除時のリンク機構の動きを促進する第2の弾性体を設けていてもよい。
【0014】
また、前記捕捉引込機構は、前記捕捉部材をスライド移動させて捕捉解除したときに、前記第1の弾性体の付勢力を保持するロック機構を備えていてもよい。
【0015】
さらに、前記ロック機構は、前記リンクピンが挿通されるガイド孔を備え、このガイド孔は、前記リンクピンを前記第1の弾性体が付勢する方向へと案内する前後長孔と、前記リンクピンを前記第1の弾性体が付勢する方向と異なる方向へ案内する上下長孔とで構成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る開閉体閉止装置では、開閉体または前記開閉体を移動可能に案内する固定部材のいずれか一方に取り付けられた被捕捉部材と、前記開閉体または固定部材の他方に取り付けられ、前記被捕捉部材を捕捉するための捕捉部材、および、前記開閉体を前記固定部材に沿って移動させる開閉力によって前記被捕捉部材と当接して押圧されることによって前記捕捉部材を移動させて前記被捕捉部材を捕捉する当接ブロックを有する捕捉引込機構と、前記捕捉部材が前記被捕捉部材を捕捉した状態で、前記開閉体を強制的に閉じる方向へ付勢する第1の弾性体と、を備え、前記捕捉引込機構は、前記被捕捉部材を捕捉する際に、前記被捕捉部材に対して前記当接ブロックが押圧される方向に移動するように構成されているので、開閉体を勢いよく閉じたとしても、被捕捉部材に当接する勢いを緩衝することができる。これにより、捕捉時に当接ブロックと被捕捉部材とが接触するときの係合音(衝突音)を抑制し、係合音をより小さくすることができる。
また、前記捕捉部材が、前記開閉体を開閉させる速度よりも遅い速度で移動するようにしているので、捕捉部材が移動する勢いを緩め、捕捉部材をゆっくり移動させることができる。これにより、捕捉時に捕捉部材が上限まで移動したときに、リンクピンと誘導孔の上端部との衝突音を抑制し、動作音をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る開閉体閉止装置を備えた引き戸上部の正面図であって、(a)は開閉体の開時、(b)は装置作動時、(c)は開閉体の閉時を示す。
【図2】図1(a)の捕捉引込機構の拡大図であって、(a)は平面図、(b)はA-A線における断面図、(c)は正面図である。
【図3】図1(b)の捕捉引込機構の拡大図であって、(a)は平面図、(b)はB-B線における断面図、(c)は正面図である。
【図4】図1(c)の捕捉引込機構の拡大図であって、(a)は平面図、(b)はC-C線における断面図、(c)は正面図である。
【図5】図1(a)の捕捉引込機構を単体で示したものであって、左斜め上方から見た斜視図である。
【図6】図1(c)の捕捉引込機構を単体で示したものであって、左斜め上方から見た斜視図である。
【図7】図6の捕捉引込機構の分解斜視図である。
【図8】図7を右斜め上方から見た分解斜視図である。
【図9】キャッチ部を分解した状態の拡大図であって、(a)は図7のD部の拡大図、(b)は図8のE部の拡大図である。
【図10】図7に示す吊り下げ部と引込部との取付部分を拡大して示す分解斜視図である。
【図11】キャッチ部を組立てた状態の拡大図であって、(a)は図2(b)のF部拡大図、(b)は図3(b)のG部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る開閉体閉止装置10について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態では、開閉体閉止装置10を引き戸装置に使用したものについて説明する。
【0019】
図1(a)、(b)、(c)は、引き戸装置の正面図であって、引き戸の開閉時の状態を示したものである。また、図2?図4は、図1で示す捕捉引込機構20の拡大図であって、図2は図1(a)の状態に対応し、図3は図1(b)、図4は図1(c)の状態に対応するものである。この図2?図4において、(a)は捕捉引込機構20の平面図、(b)はA-A(B-B、C-C)線で切断した断面図、(c)は正面図である。
【0020】
図1に示す引き戸装置は、建物の開口部の上縁部に沿って延在するガイドレール1と、このガイドレール1に沿って移動することで開口部を開閉する引き戸2(開閉体)と、引き戸2の閉まり際に制動しつつ、この引き戸2を閉位置に誘導する開閉体閉止装置10とで構成されている。
【0021】
この開閉体閉止装置10は、ガイドレール1の戸当り3近傍の所定の位置に固定して設けられた被捕捉部材11と、このガイドレール1上を図1の紙面横方向に沿って走行可能な捕捉引込機構20とで構成されている。
【0022】
被捕捉部材11は、図1に示すように、下側に向けて突出する突部11aを有する突形状に形成されている。
一方、捕捉引込機構20は、ガイドレール1の内方に移動可能に取り付けられている。より詳細には、捕捉引込機構20には、その前側部と後側部とのそれぞれにガイドローラ21が設けられており、このガイドローラ21によってガイドレール1の長手方向に自由に移動可能になっている。
また、引き戸2は、その上端角部(紙面左斜め上の角部)が捕捉引込機構20(詳細には、後述する捕捉引込機構20の吊り下げ部300)に取り付けられている。これにより、引き戸2に開閉方向へ力を加えると、捕捉引込機構20のガイドローラ21がガイドレール1上を転動し、引き戸2が開閉するようになる。
【0023】
この捕捉引込機構20には、詳細は後述するキャッチ部100(図2?図4参照)が設けられており、このキャッチ部100が被捕捉部材11の突部11aを捕捉する。
【0024】
捕捉引込機構20は、図1(a)及び図2(b)に示すように、引き戸2の開状態では、被捕捉部材11の突部11aを捕捉しない位置にある。すなわち、この状態では、捕捉引込機構20は機能しておらず、待機状態である。
この待機状態から、引き戸2を左側に移動させると、引き戸2を閉めるときの閉まり際に、捕捉引込機構20が被捕捉部材11を捕捉する。また、上述したキャッチ部100のロックが解除される(解除状態)。
この解除状態では、捕捉引込機構20は、捕捉した被捕捉部材11を引き戸2側(図1の例では右側)に引き寄せるように作用する。これにより、引き戸2は、図1(b)および図3(b)に示すように、相対的に閉じる方向(図1の例では左側)へと強制的に移動する(移動状態)。そして、図1(c)および図4(b)に示すように、引き戸2が完全に閉じられるようになる(閉止状態)。
【0025】
図5は、図2の状態(待機状態)における捕捉引込機構20を単体で示したものであって、左斜め上方から見た斜視図である。また図6は、図4の状態(閉止状態)における捕捉引込機構20を単体で示したものであって、左斜め上方から見た斜視図である。さらに、図7は図6の捕捉引込機構20の分解斜視図、図8は図7の捕捉引込機構20を右斜め上方から見た分解斜視図、図9(a)は、図7のD部の拡大図、図9(b)は、図8のE部の拡大図である。さらに、図10は、図7に示す吊り下げ部と引込部との取付部分を拡大して示す分解斜視図である。
なお、以下の説明で使用する前後方向は、引き戸2を開閉する方向をいい、木口2b側を前側とする。また、上下、左右方向は、木口2b側から見た方向をいうものとする。
【0026】
捕捉引込機構20は、図5?図8に示すように、被捕捉部材11の突部11aを捕捉するキャッチ部100と、このキャッチ部100をガイドレール1の延在方向に沿って引き込むための引込部200と、吊り下げる態様で引き戸2が取り付けられる吊り下げ部300とを備えている。
【0027】
キャッチ部100は、図2?図4および図7、図8、特に図9に示すように、後述するリンクピン140の位置によって動作するリンク機構で構成されている。より詳細には、キャッチ部100は、図7?図9に示すように、突部11aと所定位置で当接する当接ブロック110と、被捕捉部材11の突部11aを捕捉するために上下方向に移動する捕捉板120と、これらの当接ブロック110と捕捉板120とを内包してこれら全体で移動する内包ブロック130と、これらの当接ブロック110、捕捉板120、内包ブロック130がリンク機構として動作するためのリンクピン140とで構成されている。
【0028】
当接ブロック110は、図7、図8、特に図9(a)、図9(b)に示すように、ほぼ直方体形状に形成された本体部111と、この本体部111の後方斜め上側に突出する態様で形成され、その上部が本体部111の上面よりも上側に突出している受け部112とで構成されている。
【0029】
本体部111は、その内側が空洞になっており、この空洞は上下に貫通する態様で形成されている。この空洞内には、その下側の開口から、捕捉板120が挿入されて組み付けられる。また、本体部111には、正面から見て、左斜め上側から右斜め下側に向かって延びる傾斜孔111aが形成されている。この傾斜孔111aは、本体部111の左右方向に貫通する態様で形成されており、キャッチ部100が組み付けられる際にリンクピン140が挿通されるようになる。
【0030】
受け部112の前側の面には、図7および図9(a)に示すように、本体部111の上面から上方に向けて起立する当接面112aが形成されている。この当接面112aは、引き戸2が所定の位置まで閉じられたときに、被捕捉部材11の突部11aと当接して押圧されるようになる(図3(b)参照)。
また、受け部112の後側の面には、図8および図9(b)に示すように、前後方向に窪んだ形状のばね受け溝112bが形成されている。このばね受け溝112bには、圧縮コイルばね113の一端部が支持される。
【0031】
捕捉板120は、図7、図8、特に図9(a)、図9(b)に示すように、略矩形状に形成され、その上面から上側に向けて突出する捕捉爪121が形成されている。この捕捉爪121は、捕捉板120が上方向に移動したときに、上述した受け部112とこの捕捉爪121とで被捕捉部材11の突部11aを前後方向において捕捉するようになっている(図3(b)参照)。
この捕捉爪121の後面には、テーパ当接面121aが形成されている。このテーパ当接面121aは、テーパの下側から前方斜め上側に向かって傾斜する傾斜面である。すなわち、引き戸2を開方向へ移動させるときに、このテーパ当接面121aに被捕捉部材11の突部11aが当接して、捕捉爪121をこのテーパ面と垂直な方向である前方斜め下側に向けて押し下げるようになる(図2(b)参照)。
【0032】
また、捕捉板120には、捕捉爪121の前側に位置する補助爪122が形成されている。この補助爪122は、上述した捕捉爪121と受け部112とによって突部11aを捕捉できなかったときに、捕捉爪121とこの補助爪122とで突部11aを捕捉する、いわば補助的に設けられたものである。
【0033】
この補助爪122は、捕捉爪121と補助爪122とで被捕捉部材11を捕捉した場合であっても、開閉体閉止装置10が引き戸2を閉止させることができるようになっている。より詳細には、補助爪122は、引き戸2を開くときであって被捕捉部材11の突起11aによって前方に向けて押圧されたときに、補助爪122が下側に撓んで被捕捉部材11を補助爪122の前側に逃がすようになっている。なお、捕捉板120は、この補助爪122が押圧される位置では、詳細は後述するガイド孔211(図2?図4参照)の上下長孔211bの位置に到達していない(捕捉爪121と受け部112で捕捉した位置が上下長孔211bの位置になる)ので、下側に移動することはできない。そのため、補助爪122は、下側に撓んで逃がすように構成されており、捕捉板120が上下長孔211bの位置まで達したときに、当接ブロック110が圧縮コイルばね113の付勢力によって前側に移動するのに伴って、下側に移動するようになっている。
【0034】
さらに、捕捉板120には、捕捉爪121の下側に位置し、左右方向に貫通する取付孔123が形成されている。この取付孔123は、リンクピン140の外径と同じか少し大きな径の丸穴であり、この取付孔123には、詳細は後述するリンクピン140が挿通される。これにより、捕捉板120は、リンクピン140の移動に伴ってリンクピン140と一緒に移動することになる。
【0035】
内包ブロック130は、図7?図9に示すように、ほぼ直方体形状に形成された外郭部131と、この外郭部131の後端から後側に突出する支持部132と、外郭部131の左右の両側部からそれぞれ左右の外側に向けて突出する案内突部133とで構成されている。
【0036】
外郭部131は、図7?図9に示すように、その内部が空洞になっている。この空洞は上下に貫通する態様で形成されており、この空洞内には、その上側の開口から、当接ブロック110が挿入されて組み付けられる。また、外郭部131には、正面から見て、上下方向に延在する誘導孔131aが形成されている。この誘導孔131aは、外郭部131の左右方向に貫通する態様で形成されており、キャッチ部100が組み付けられる際にリンクピン140が挿通されるようになる。
【0037】
また、外郭部131の空洞内の後端部には、上下に起立する受け面131bが形成されている。この受け面131bには、内包ブロック130内に当接ブロック110が組み付けられた状態で、上述した圧縮コイルばね113の他端部が支持される。
【0038】
さらに、外郭部131の下側後部(支持部132の下側)には、詳細は後述する引張ばねユニット225のばね受け227のくびれ部227aを収容するくびれ部収容溝131cが形成されている。このくびれ部収容溝131cは、ばね受け227の左右方向および前後方向の位置を規制する。
【0039】
支持部132には、図8および図9に示すように、その後端部に上下方向に延びる取付溝132aが形成されている。この取付溝132aには、詳細は後述するダンパーユニット221の出力軸221aの先端部が挿入され、この出力軸221aの左右方向の取付位置を規制している。
【0040】
案内突部133は、前後方向(引き戸2の移動方向)に延在しており、引込部200のガイド孔211(詳細は後述する。図7および図8参照)に嵌合される。これにより、キャッチ部100が引込部200に対して、このガイド孔211に沿って移動可能になっている。
【0041】
引込部200は、図7および図8に示すように、キャッチ部100が内側に組み付けられるガイド部210と、このガイド部210の後側に取り付けられるダンパー支持部220とで構成されている。
【0042】
ガイド部210は、図7および図8に示すように、前後方向に延在しており、この前後方向と直交する面における断面形状は、上側が開口するコ字形状に形成されている。すなわち、ガイド部210には、この上側の開口からキャッチ部100が挿入され、組み付けられるようになっている。
【0043】
また、ガイド部210の左右のそれぞれの側部には、逆L字形状をなすガイド孔211が形成されている。より詳細には、ガイド孔211は、前後方向に延びる前後長孔211aと、この前後長孔211aの前端部から下側に向けて延びる上下長孔211bとで形成されている。
このガイド孔211には、上述したリンクピン140が挿入される。すなわち、リンクピン140は、上述したキャッチ部100をガイド部210内に挿入した後に、ガイド部210の外側からガイド孔211、内包ブロック130の誘導孔131a、当接ブロック110の傾斜孔111a、捕捉板120の取付孔123の順に挿通される。
また、上述したように、ガイド孔211の前後長孔211aには、内包ブロック130の案内突部133が嵌合し、この前後長孔211aに沿ってキャッチ部100を前後方向に案内するようになっている。
【0044】
また、ガイド孔211の上下長孔211bは、リンクピン140をこの上下長孔211bの下側に移動させたときに、キャッチ部100が前後方向に移動するのを阻むようにする。すなわち、ガイド孔211は、キャッチ部100の移動をロックするためのロック機構としても機能する。
【0045】
さらに、ガイド部210には、取り付けのために、ガイド部210の底面を前方向に延ばし、この延ばした底面に取付孔212が形成されている。この取付孔212には、図7および図8に示すように、下側から取り付けねじ213が挿通され、取付ブロック240を介して吊り下げ部300側に取り付けられる。
【0046】
この取付ブロック240は、図7および図8、特に図10に示すように、正面から見て略コ字形状をなしており、上ブロック241、下ブロック242、および側ブロック243とで構成されている。この上ブロック241および下ブロック242には、取付ねじ213が挿通される取付孔241a、242aが上下方向に揃えてそれぞれ設けられている。また、側ブロック243には、左右方向に貫通する取付孔243aが設けられている。
【0047】
また、ガイド部210の後端部の左右の下側には、ダンパー支持部220に組み付けて位置決めするための延出部214が形成されている。
さらに、ガイド部210の左右側部の前側には、取付ブロック240の取付孔243aに取付ピン215を介して取り付けるための取付孔216が形成されている。さらにまた、ガイド部210の左右側部の後側には、ダンパー支持部220の取付孔219に取付ピン217を介して取り付けるための取付孔218が形成されている。
【0048】
ダンパー支持部220は、図7および図8に示すように、左右に分割して形成されており(左側のダンパー支持部を220a、右側のダンパー支持部220bで示す)、組み合わせた状態で、その内部にダンパーユニット221が収容されている。このダンパーユニット221は、出力軸221aと、この出力軸221aを軸方向に進退自在に保持しているユニット本体221bとを有している。ユニット本体221b内には、出力軸221aの縮長方向への移動に制動力を作用させるオイルなどの抵抗流体(図示省略)が収容されている。また、出力軸221aの先端部は、キャッチ部100と引込部200とが組み付けられた状態で、支持部132の取付溝132aに挿入され、ダンパーユニット221がキャッチ部100の内包ブロック130の前後方向への移動を緩衝する。
【0049】
この左右のダンパー支持部220a、220bには、ダンパーユニット本体221bの形状に合わせたダンパー収容溝224がそれぞれ形成されており、このダンパー収容溝224にダンパーユニット本体221bを入れ込む(収容する)態様で左右のダンパー支持部220a、220bを組み合わせることで、ダンパーユニット221が組み付けられる。
【0050】
また、左側のダンパー支持部220aの上側および下側には、右側のダンパー支持部220bに向けて突出する係合爪222がそれぞれ2つづつ(合計4つ)設けられている。一方、右側のダンパー支持部220bには、この係合爪222と対応する位置に係止溝223が設けられている。この左右のダンパー支持部220a、220bを組み合わせ、係合爪222を係止溝223に係止させることで、ダンパー支持部220が組み付けられるようになっている。
【0051】
また、ダンパー支持部220には、ダンパーユニット221の下側に、引張ばねユニット225が取り付けられている。この引張ばねユニット225は、引張ばね226と、この引張ばね226の両端部に取り付けられた2つのばね受け227とで構成されている。
【0052】
引張ばね226は、コイルばねであり、引張ばねユニット225では、引張ばねとして使用されている。また、2つのばね受け227は、その先端部分にくびれ部227aが形成されている。
【0053】
前側に位置するばね受け227は、左右のダンパー支持部220a、220bに形成され前後方向に延在するばね受け収容溝228に組み付けられ、ばね受け227のくびれ部227aが、内包ブロック130のくびれ部収容溝131cに組み付けられる。これにより、前側のばね受け部227の前後方向の位置が規制される。
後側に位置するばね受け227は、前側のばね受け部の後方に位置し、同様にばね受け収容溝228に組み付けられる。また、ばね受け227のくびれ部227aは、このばね受け収容溝228の後端部に形成されたくびれ部収容溝229に組み付けられる。これにより、後側のばね受け部227の前後方向の位置が規制される。
【0054】
また、左右のダンパー支持部220a,220bには、図7および図8に示すように、ダンパー支持部220a、220bの後端部から後方に向けて延びる係合爪230がそれぞれ形成されている。この係合爪230は、引込部200の後部に取り付けられる後側ガイドローラ部400と着脱可能に取り付けられる。より詳細には、後側ガイドローラ部400は、中央に位置する取付カバー401と、左右方向に延在する回転軸402と、この回転軸402に回転自在に取り付けられた2つのガイドローラ21とで構成されている。
【0055】
取付カバー401には、上述した係合爪230と係合可能な係合孔401aが形成されている。これらの係合爪230および係合孔401aは、締結部材等を使用せずに着脱可能に取り付けられている。すなわち、係合爪230の弾性によって係合孔401aと係合又は係合解除が可能になっている。
【0056】
吊り下げ部300は、図7、図8、特に図10に示すように、ガイドローラ21を備えた前側ガイドローラ部310と、この前側ガイドローラ部310の下側に取り付けられ、引き戸2を固定すると共にその取付位置を微調整可能な固着ユニット320とを備えている。
【0057】
前側ガイドローラ部310には、その中央に位置する本体部311に、図示しない回転軸を介して4つのガイドローラ21が回転自在に取り付けられている。また、本体部311の後端部には、この後端部から後方に向けて延在し、上下方向に隙間をあけて形成された挟持部311aが形成されている。この挟持部311aには、取付孔311bが上下に貫通する態様で形成されている。
この挟持部311aには、前述した取付ブロック240の上ブロック241が間に挟まれる態様で取り付けられ、取付ピン213が、それぞれ取付孔212、242a、241a、311bに挿通される。これにより、ガイド部210が、取付ブロック240を介して、吊り下げ部300に固定される。
【0058】
固着ユニット320は、その前端に表出している調整部321にドライバーを差し込んで回転させることにより、この固着ユニット320に取り付けられた引き戸2の左右方向の位置を微調整できるようになっている。
【0059】
次に、本発明の実施の形態に係る開閉体閉止装置の作用について図2?図4および図11(a)、(b)を用いて説明する。
図11(a)は、キャッチ部100が被捕捉部材11の突部11aを捕捉していない状態(待機状態)を示す側部断面図であって、図2(b)のF部拡大図である。また、図11(b)は、キャッチ部100が被捕捉部材11の突部11aを捕捉している状態(移動状態)を示す側部断面図であって、図3(b)のG部拡大図である。
【0060】
待機状態(引き戸2が開いた状態。図2(a)?図2(c)、および図11(a)の状態)では、被捕捉部材11は、捕捉引込機構20のキャッチ部100よりも前側(紙面左側)の離れた位置にある。この状態では、リンクピン140は、図2(c)に示すように、ガイド孔211の上下長孔211bの下側に位置する。そのため、キャッチ部100を前後方向(紙面左右)に移動させようとしても、リンクピン140がロックされており、キャッチ部100が移動しないようになる。
【0061】
このとき、リンクピン140は、図11(a)に示すように、内包ブロック130の誘導孔131aの下側に位置し、かつ、当接ブロック110の傾斜孔111aの斜め下側の位置にある。すなわち、捕捉板120は、捕捉引込機構20に対して、相対的に下側の位置にある。この状態では、図11(a)に示すように、捕捉爪121が被捕捉部材11の突部11aよりも下側の位置にあり、キャッチ部100が突部11aを捕捉しない。
【0062】
図11(a)の状態(待機状態)から、引き戸2を閉方向へ移動させると、被捕捉部材11の突部11aは、キャッチ部100の当接ブロック110の当接面112aに当接する。さらに、当接面112aは、突部11aによって後方(紙面右側)へと押し込まれ、当接ブロック110は圧縮コイルばね113の付勢力に抗して後方(当接ブロック110が押圧される方向)へと移動する。
【0063】
この解除状態では、図11(b)に示すように、リンクピン140は、当接ブロック110の後方への移動に伴い、傾斜孔111aに沿って上方へと押し上げられる。また、リンクピン140は、内包ブロック130の誘導孔131aに沿って上方へ移動する。すなわち、このリンク機構では、当接ブロック110が内包ブロック130に対して相対的に後方へ移動する。また、このリンク機構では、捕捉板120が内包ブロック130に対して相対的に上方へと移動する。これにより、被捕捉部材11の突部11aを、当接ブロック110の受け部112と、捕捉板120の捕捉爪121とで前後方向において捕捉する。
ここで、捕捉板120の上方への移動速度は、傾斜孔111aの長さを基準にすると、誘導孔131aの長さが短いため、当接ブロック110の移動速度よりも遅くすることができる。すなわち、捕捉板120は、引き戸2を開閉させる速度(当接ブロック110の移動速度)よりも遅い速度で移動するようになる。
【0064】
さらに、リンクピン140は、ガイド部210の上下長孔211bの上方へ移動する。これにより、リンクピン140のロックが解除され、キャッチ部100がガイド部210の前後長孔211aに沿って前後方向へ自由に移動できるようになる(解除状態)。
【0065】
解除状態では、キャッチ部100は、引張ばねユニット225の引張ばね力によって、後方(紙面)右側方向へと付勢される。より詳細には、キャッチ部100は、被捕捉部材11の固定位置で移動を停止し、キャッチ部100を除く他の捕捉引込機構20の部分が、ガイド部100の前後長孔211aに沿って、相対的に前方向(紙面左側方向。閉止方向)へと移動する(移動状態)。すなわち、この引張ばねユニット225の引張ばね力は、引き戸2を強制的に閉止する方向へと付勢する。これにより、引き戸2は、半開きの状体であっても、このばね力によって強制的に閉じられ、引き戸2が完全に閉じられる(閉止状態)。
一方、上述した移動状態では、引張ばねユニット225のばね力によって、引き戸2が勢いよく戸当り3に衝突しないように、ダンパーユニット221でばね力を緩衝している。
【0066】
他方、引き戸2を閉じられた状態から開く場合(閉止状態から移動状態へと移行する場合)には、図11(b)において引き戸2を後方(紙面右側)へと移動させる。このとき、突部11aは、捕捉板120の捕捉爪121(詳細には、捕捉爪121のテーパ当接面121a)に当接する。この場合、キャッチ部100は被捕捉部材11の固定位置で停止し、キャッチ部100を除く他の捕捉引込機構20の部分は、ガイド部100の前後長孔211aに沿って、相対的に後方向(紙面右側方向。開方向)へと移動する。この移動は、引張ばねユニット225の引張ばね226を引っ張る方向である。
【0067】
さらに引き戸2を開くと、やがてリンクピン140がガイド部210の前後長孔211aの前側端部に突き当たる(解除状態)。この状態からさらに引き戸2をさらに開くと、被捕捉部材11の突部11aが捕捉爪121のテーパ当接面121aを強く押圧する。これにより、捕捉板120は、テーパ当接面121aのテーパに沿って被捕捉部材11の突部11aから離れる方向、すなわち、下側へ沈むように直線的にスライド移動し、リンクピン140を下側へと押し下げる。
【0068】
このとき、リンクピン140は、捕捉板120と共に、内包ブロック130の誘導孔131aに沿って下側に移動する。これにより、捕捉板120は、内包ブロック130に対して相対的に下側に移動することになる(待機状態)。
また、当接ブロック110は、リンクピン140が傾斜孔111aに沿って右斜め下側に移動する。これにより、当接ブロック110は、内包ブロック130に対して相対的にその傾斜分だけ前側へと移動する。
また、この当接ブロック110は、圧縮コイルばね113の付勢力によって、前方へと移動する力が促進(補助)されることになる。これにより、捕捉解除時(解除状態から待機状態への移行時)のリンク機構の動きがよりスムーズになる。
【0069】
これにより、リンクピン140は、ガイド部210の上下長孔211bへの下側へと移動する。この状態では、リンクピン140は左右方向への移動がロックされ、待機状態になる。また、引用ばねユニット225の引張ばね226は、引張された状態で保持されることになる。
【0070】
本発明の実施の形態に係る開閉体閉止装置によれば、捕捉引込機構20は、被捕捉部材11の突部11aを捕捉する際に、被捕捉部材11の突部11aに対して当接ブロック110が後側へと押圧される方向に移動するように構成されているので、引き戸2を勢いよく閉じたとしても、被捕捉部材11に当接する勢いを緩衝することができる。これにより、捕捉時に当接ブロック110と被捕捉部材11の突部11aとが接触するときの係合音(衝突音)を抑制し、係合音をより小さくすることができる。
【0071】
また、捕捉板120の捕捉爪121が、引き戸2を開閉させる速度よりも遅い速度で上方へと移動するようにしているので、捕捉板120が上方に移動する勢いを緩め、捕捉板120をゆっくり上昇させることができる。これにより、捕捉時に捕捉板120が上限まで移動したときに、リンクピン140と誘導孔131aの上端部との衝突音を抑制し、動作音をより小さくすることができる。
【0072】
また、捕捉引込機構20は、引き戸2をガイドレール1に沿って移動させる開閉力によって捕捉板120および当接ブロック110をスライド移動させるリンク機構で構成されているので、捕捉板120および当接ブロック110を一緒に移動させる動作を容易に実現することができる。
【0073】
さらに、このリンク機構は、捕捉板120に取り付けられたリンクピン140と、リンクピン140が挿通される誘導孔131aを有し、誘導孔131aに沿って捕捉板120を上下に移動させる内包ブロック130と、当接ブロック110とで構成され、当接ブロック110には、リンクピン140が挿通される傾斜孔111aが形成され、被捕捉部材11の突部11aに押圧されたときに、傾斜孔111aに沿って捕捉板120を上下方向に移動させると共に、傾斜孔111aに沿って内包ブロック130に対して相対的に前後方向に移動するようにしているので、上述した捕捉板120および当接ブロック110を一緒に容易に移動させることができる。
【0074】
さらにまた、このリンク機構は、内包ブロック130と当接ブロック110との間に、捕捉解除時に当接ブロック110を前方向に付勢して、捕捉解除時のリンク機構の動きを促進する圧縮コイルばね113を設けているので、捕捉解除時のリンク機構の動きを軽くすることができる。
【0075】
また、捕捉引込機構20は、捕捉板120をスライド移動させて捕捉解除したときに、引張ばね226の付勢力を保持するロック機構を備えているので、上述したリンク機構を利用して、ロック機構を容易に構成することができる。
【0076】
さらに、ロック機構はリンクピン140が挿通されるガイド孔211を備え、このガイド孔211は、リンクピン140を引張バネ226が付勢する方向(前後方向)へと案内する前後長孔211aと、リンクピン140を引張バネ226が付勢する方向と異なる方向(上下方向)へ案内する上下長孔211bとで構成されているので、引き戸2をガイドレール1に沿って移動させる開閉力によって捕捉板120および当接ブロック110を移動させるだけでなく、上述したリンク機構を利用して、ロック機構を容易に構成することができる。そのため、ロック機構を別個に設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態に係る開閉体閉止装置について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、引き戸2について記載しているが、これに限定されるものではない。例えば、抽斗や観音開きの戸などを開閉する場合であっても、戸を強制的に閉じる方向に付勢する装置であれば、本発明を利用することができる。
【0078】
また、本実施の形態では、引き戸の上部に開閉体閉止装置10を設けているが、下部に設けることもできる。すなわち、ガイドレール1を開口部の下縁部に取り付けてある場合であっても、本発明に係る開閉体閉止装置20をその下部に取り付けるようにしてもよい。
【0079】
また、本実施の形態では、引張ばね226および圧縮コイルばね113を、弾性体であるばねとして記載したが、ばねに限定されない。すなわち、弾性によって付勢力を生じさせるものであれば本発明に使用することができる。
【0080】
さらに、本実施の形態では、ガイド部210に形成されたガイド孔211(前後長孔211a、上下長孔211b)が逆L字形状に形成されているが、リンク機構におけるリンクピン140の移動方向と引張ばねユニット225の引張ばね226の付勢方向とに基づいて、他の形状に形成することもできる。すなわち、引張ばね226の付勢方向と同じ方向に延びる前後長孔211aに対し、上下長孔は、引張ばね226の付勢方向と異なる方向に向いていれば、引張ばね226の付勢力を保持することができ、ロック機構が機能することになる。
【符号の説明】
【0081】
1 ガイドレール(固定部材)
2 引き戸(開閉体)
3 戸当り
10 開閉体閉止装置
11 被捕捉部材
11a 突部
20 捕捉引込機構
21 ガイドローラ
100 キャッチ部
110 当接ブロック
111 本体部
111a 傾斜孔
112 受け部
112a 当接面
113 圧縮コイルばね(第2の弾性体)
120 捕捉板(捕捉部材)
121 捕捉爪
121a テーパ当接面
122 補助爪
130 内包ブロック
131 外郭部
131a 誘導孔
131b 受け面
132 支持部
132a 取付溝
133 案内突部
140 リンクピン
200 引込部
210 ガイド部
211 ガイド孔
211a 前後長孔
211b 上下長孔
213 取り付けねじ
214 延出部
215、217 取付ピン
220(220a、220b) ダンパー支持部
221 ダンパーユニット
222 係合爪
225 引張ばねユニット
226 引張ばね(第1の弾性体)
227 ばね受け
228 ばね受け収容溝
229 くびれ部収容溝
230 係合爪
240 取付ブロック
241 上ブロック
242 下ブロック
243 側ブロック
300 吊り下げ部
310 前側ガイドローラ部
311 本体部
311a 挟持部
320 固着ユニット
321 調整部
400 後側ガイドローラ部
401 取付カバー
402 回転軸
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉体または前記開閉体を移動可能に案内する固定部材のいずれか一方に取り付けられた被捕捉部材と、
前記開閉体または固定部材の他方に取り付けられ、前記被捕捉部材を捕捉するための捕捉部材、および、前記開閉体を前記固定部材に沿って移動させる開閉力によって前記被捕捉部材と当接して押圧されることによって前記捕捉部材を移動させて前記被捕捉部材を捕捉する当接ブロックを有する捕捉引込機構と、
前記捕捉部材が前記被捕捉部材を捕捉した状態で、前記開閉体を強制的に閉じる方向へ付勢する第1の弾性体と、
を備えた開閉体閉止装置であって、
前記捕捉引込機構は、前記開閉体を前記固定部材に沿って移動させる開閉力によって前記捕捉部材および前記当接ブロックをスライド移動させるリンク機構を備え、前記被捕捉部材を捕捉する際に、前記被捕捉部材に対して前記当接ブロックが押圧される方向に移動するように構成され、
前記捕捉部材は、前記当接ブロックが被捕捉部材に当接して押圧されると、前記被捕捉部材に近づく方向に移動して、前記当接ブロックと共に前記被捕捉部材を、前記開閉体の開閉方向の前後位置にて捕捉するように構成されていることを特徴とする開閉体閉止装置。
【請求項2】
前記捕捉部材が、前記開閉体を開閉させる速度よりも遅い速度で移動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の開閉体閉止装置。
【請求項3】
前記リンク機構は、
前記捕捉部材に取り付けられたリンクピンと、
前記リンクピンが挿通される誘導孔を有し、前記誘導孔に沿って前記捕捉部材を上下に移動させる内包ブロックと、
前記当接ブロックと、
で構成され、
前記当接ブロックには、前記リンクピンが挿通される傾斜孔が形成され、前記被捕捉部材に押圧されたときに、前記傾斜孔に沿って前記捕捉部材を上下方向に移動させると共に、前記傾斜孔に沿って前記内包ブロックに対して相対的に前後方向に移動するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の開閉体閉止装置。
【請求項4】
前記リンク機構は、前記内包ブロックと前記当接ブロックとの間に、捕捉解除時に前記当接ブロックを前方向に付勢して、捕捉解除時のリンク機構の動きを促進する第2の弾性体を備えたことを特徴とする請求項3に記載の開閉体閉止装置。
【請求項5】
前記捕捉引込機構は、前記捕捉部材をスライド移動させて捕捉解除したときに、前記第1の弾性体の付勢力を保持するロック機構を備えていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の開閉体閉止装置。
【請求項6】
前記ロック機構は、前記リンクピンが挿通されるガイド孔を備え、このガイド孔は、前記リンクピンを前記第1の弾性体が付勢する方向へと案内する前後長孔と、前記リンクピンを前記第1の弾性体が付勢する方向と異なる方向へ案内する上下長孔とで構成されていることを特徴とする請求項5に記載の開閉体閉止装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-12-24 
結審通知日 2016-01-04 
審決日 2016-01-15 
出願番号 特願2011-20957(P2011-20957)
審決分類 P 1 41・ 832- Y (E05F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川島 陵司  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 小野 忠悦
住田 秀弘
登録日 2015-04-10 
登録番号 特許第5726556号(P5726556)
発明の名称 開閉体閉止装置  
代理人 上島 類  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 上島 類  

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