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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F16D
管理番号 1311144
審判番号 不服2015-2895  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-16 
確定日 2016-02-10 
事件の表示 特願2014-513879「揺動パッド式ブレーキキャリパー」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日国際公開、WO2012/167495、平成26年 7月 7日国内公表、特表2014-516143〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本件出願は、2011年8月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年6月9日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年12月2日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成26年1月23日に特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出され、平成26年5月13日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年8月18日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月6日付け(発送日:同年11月11日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1ないし20に係る発明は、特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文における明細書及び平成26年8月18日の手続補正により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
車両用ブレーキキャリパーアセンブリであって、
第一中心軸に沿って水平に配置される略シリンダ形状のピストンボア形成部と、前記ピストンボア形成部と一組のキャリパーフィンガー部との間に延設されるとともに前記キャリパーフィンガー部と前記ピストンボア形成部とを互いに連結するブリッジと、を有し、前記キャリパーフィンガー部が前記ブリッジから下方へ延設されて平坦面を形成しているキャリパーハウジングと、
第一側部および第二側部を形成して第二中心軸の回りに回転可能であり、前記キャリパーフィンガー部に隣接して配置される略ディスク状のロータと、
前記ロータの前記第一側部と前記キャリパーフィンガー部との間に位置する第一重心を有する外側ブレーキパッドと、
を備え、
前記キャリパーフィンガー部のそれぞれは、前記外側ブレーキパッドと前記キャリパーフィンガー部の前記平坦面との間で延設される揺動縁部を有しており、前記外側ブレーキパッドが前記揺動縁部の回りに揺動可能である、アセンブリ。」

2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された実願昭62-149540号(実開昭64-53648号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物」という。)には、「ディスクブレーキの制動間隙調整装置」に関し、図面(特に「第4図」参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア.「(産業上の利用分野)
本考案は、ディスクブレーキの制動間隙調整装置に関し、特に、操作レバーの回動によって摩擦パッドをディスク軸方向に移動させるディスクブレーキの制動間隙調整装置に関する。」(明細書2ページ2行ないし6行)

イ.「(従来の技術)
例えば第4図に示されるディスクブレーキ1は、車体に固設されるブラケット2に摺動ピン3を介してキャリパ4をディスク軸方向に移動可能に支持し、該キャリパ4に車体と一体に回転するディスク5の両側に対向配置される一対の摩擦パッド6,6をハンガーピン7にて吊持し、キャリパ4に形成されたシリンダ8にピストン9を液密かつ移動可能に嵌挿してシリンダ8の底部とピストン9の後端間に液圧室10を画成して液圧作動によりピストン9を前進させて制動作用を行なうとともに、機械式作動によるパーキングブレーキ装置として、ピストン9に一端を係止したプッシュロッド11をシリンダ8の底部を貫通してシリンダ8の外側に延出させており、さらに、シリンダ8の外側に、推力変換機構12を設けている。」(明細書2ページ7行ないし3ページ7行)

ウ.記載事項イ.の「キャリパ4に形成されたシリンダ8にピストン9を液密かつ移動可能に嵌挿して」との記載及び第4図によれば、シリンダ8が形成される部位はシリンダ中心軸に沿って水平に配置されることが分かる。

エ.第4図において、キャリパ4は、シリンダ8が形成される部位と左側の摩擦パッド6に対向する部位との間に、左側の摩擦パッド6に対向する部位とシリンダ8が形成される部位とを互いに連結する上方部位を有することが看取され、また、キャリパ4の左側の摩擦パッド6に対向する部位は、上方部位から下方へ延設されて平坦面を形成していることが看取される。

オ.第4図において、キャリパ4の左側の摩擦パッド6に対向する部位は、第4図が断面正面図であって、第4図の左側の摩擦パッド6に対向する部位に斜線が施されてないことから、刊行物における左側の摩擦パッド6に対向する部位は断面に対向して一組(一対)設けられていることは明らかである。

カ.記載事項イ.の「車体と一体に回転するディスク5」との記載及び第4図によれば、ディスク5は、左側面および右側面を形成し、キャリパ4の左側の摩擦パッド6に対向する部位に隣接して配置されることが分かり、また、ディスク5は、ディスク中心軸の回りに回転可能であることは明らかである。

キ.記載事項イ.の「ディスク5の両側に対向配置される一対の摩擦パッド6,6をハンガーピン7にて吊持し、」との記載及び第4図によれば、ディスク5の左側面とキャリパ4の左側の摩擦パッド6に対向する部位との間に位置する重心を有する左側の摩擦パッド6が設けられることが分かる。

ク.第4図において、キャリパ4の左側の摩擦パッド6に対向する部位は、左側の摩擦パッド6と前記キャリパ4の左側の摩擦パッド6に対向する部位の平坦面との間で段部により形成される縁部(第4図におけるキャリパ4の左側の摩擦パッド6に対向する部位であって、左側の摩擦パッド6の略中央部が接する部位)を有することが看取される。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合して、本願発明に則って整理すると、刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ディスクブレーキ1であって、
シリンダ中心軸に沿って水平に配置されるシリンダ8が形成される部位と、前記シリンダ8が形成される部位と一組の左側の摩擦パッド6に対向する部位との間に延設されるとともに前記左側の摩擦パッド6に対向する部位と前記シリンダ8が形成される部位とを互いに連結する上方部位と、を有し、前記左側の摩擦パッド6に対向する部位が前記上方部位から下方へ延設されて平坦面を形成しているキャリパ4と、
左側面および右側面を形成してディスク中心軸の回りに回転可能であり、前記左側の摩擦パッド6に対向する部位に隣接して配置されるディスク5と、
前記ディスク5の前記左側面と前記左側の摩擦パッド6に対向する部位との間に位置する重心を有する左側の摩擦パッド6と、
を備え、
前記左側の摩擦パッド6に対向する部位のそれぞれは、前記左側の摩擦パッド6と前記左側の摩擦パッド6に対向する部位の前記平坦面との間で延設される段部により形成される縁部を有する、ディスクブレーキ1。」

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、その機能、構造及び技術的意義からみて、引用発明における「ディスクブレーキ1」は、本願発明における「車両用ブレーキキャリパーアセンブリ」及び「アセンブリ」に相当し、以下同様に、「シリンダ中心軸」は「第一中心軸」に、「シリンダ8が形成される部位」は「略シリンダ形状のピストンボア形成部」及び「ピストンボア形成部」に、「左側の摩擦パッド6に対向する部位」は「キャリパーフィンガー部」に、「上方部位」は「ブリッジ」に、「キャリパ4」は「キャリパーハウジング」に、「左側面」は「第一側部」に、「右側面」は「第二側部」に、「ディスク中心軸」は「第二中心軸」に、「ディスク5」は「略ディスク状のロータ」及び「ロータ」に、「重心」は「第一重心」に、「左側の摩擦パッド6」は「外側ブレーキパッド」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「段部により形成される縁部」は、「縁部」という限りにおいて、本願発明の「揺動縁部」と共通する。

したがって、本願発明と引用発明は、
「車両用ブレーキキャリパーアセンブリであって、
第一中心軸に沿って水平に配置される略シリンダ形状のピストンボア形成部と、前記ピストンボア形成部と一組のキャリパーフィンガー部との間に延設されるとともに前記キャリパーフィンガー部と前記ピストンボア形成部とを互いに連結するブリッジと、を有し、前記キャリパーフィンガー部が前記ブリッジから下方へ延設されて平坦面を形成しているキャリパーハウジングと、
第一側部および第二側部を形成して第二中心軸の回りに回転可能であり、前記キャリパーフィンガー部に隣接して配置される略ディスク状のロータと、
前記ロータの前記第一側部と前記キャリパーフィンガー部との間に位置する第一重心を有する外側ブレーキパッドと、
を備え、
前記キャリパーフィンガー部のそれぞれは、前記外側ブレーキパッドと前記キャリパーフィンガー部の前記平坦面との間で延設される縁部を有する、アセンブリ。」
という発明である点で一致し、次の点で一応相違している。

本願発明においては、「縁部」が「揺動縁部」であって、「外側ブレーキパッドが前記揺動縁部の回りに揺動可能である」のに対して、引用発明においては、「段部により形成される縁部」が「揺動縁部」として機能するかどうかが明らかでなく、また、「左側の摩擦パッド6(本願発明における「外側ブレーキパッド」に相当。)が「段部により形成される縁部」の回りに揺動可能であるかどうかが明らかでない点(以下、「相違点」という。)。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
まず、引用発明における「左側の摩擦パッド6」が揺動可能であるかどうかについて検討する。
ハンガーピンによって摩擦パッドを吊持する場合、通常は、摩擦パッドが傾く等、摩擦パッドが揺動可能となる程度の大きさの摩擦パッドに設けられるハンガーピン挿通穴を吊持するものである(例えば、実願昭55-101520号(実開昭57-25225号)のマイクロフィルムのピン6が挿通される摩擦パッド2の裏板3の穴及び第2図並びに実願昭55-19013号(実開昭56-120435号)のマイクロフィルムのパッド支持部材24が挿通されるパッド5の穴32等参照。)から、引用発明における「左側の摩擦パッド6」も揺動可能であることは明らかである。
そして、部材が揺動可能に支持されている場合において、当該部材は、「段部により形成される縁部」の回りを揺動することは技術的にみて明らかである(例えば、この点に関しては特開昭55-69332号公報の2ページ右下欄の13行ないし15行、第4図及び第8図参照。キャリパ5bの当接面20に形成された段差18aの回りを摩擦パッド9が揺動する。)。
そうすると、引用発明における左側の摩擦パッド6(本願発明における「外側ブレーキパッド」に相当。)が揺動可能であることから、揺動可能である左側の摩擦パッド6が「段部により形成される縁部」に接した場合は、左側の摩擦パッド6は「段部により形成される縁部」の回りに揺動可能であるといえるから、引用発明における「段部により形成される縁部」は「揺動縁部」であるということができる。
したがって、相違点は実質的な相違点ではなく、本願発明は、引用発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-27 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-25 
出願番号 特願2014-513879(P2014-513879)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F16D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 小関 峰夫
中川 隆司
発明の名称 揺動パッド式ブレーキキャリパー  
代理人 加藤 秀忠  

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