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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23D
管理番号 1311149
審判番号 不服2013-15411  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-09 
確定日 2016-02-12 
事件の表示 特願2012-110143「卓上切断機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年9月13日出願公開、特開2012-176492〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成16年3月26日に出願した特願2009-219863号の一部を平成24年5月13日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年2月21日 手続補正書の提出
平成25年3月5日付け 拒絶理由通知
平成25年3月28日 意見書及び手続補正書の提出
平成25年4月11日付け 拒絶理由通知
平成25年4月25日 意見書の提出
平成25年5月9日付け 拒絶理由通知
平成25年6月6日 意見書及び手続補正書の提出
平成25年6月19日付け 拒絶査定
平成25年8月9日 本件審判請求
平成27年8月25日付け 拒絶理由通知
平成27年10月30日 意見書提出

2. 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成25年6月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2にそれぞれ記載された事項により特定されるものであると認められ、その請求項1には以下のとおり記載されている(以下、上記請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)。

「【請求項1】
被加工材を載置可能なベース部と、
電動機を収納し、前記電動機の駆動により回動する丸鋸刃を回動可能に支持する丸鋸部と、
前記丸鋸刃の軸方向と平行な揺動軸を支点として該丸鋸部を所定の最上方位置と、所定の最下方位置との間で揺動可能に支持する支持部材と、
前記丸鋸刃の軸方向と直交すると共に、前記ベース部上面に対して平行に延びる傾動軸を支点として傾動し、前記丸鋸刃の側面を、前記ベース部上面に対して垂直な位置から両方向に傾動可能なホルダと、
前記丸鋸部に設けられたサブハンドルと、
前記ホルダから前記ベース部側に延在し、上下方向に配置された一対のガイドバーと、を有し、
前記一対のガイドバーの軸心を結ぶ平面が前記丸鋸刃の側面と平行に配置された卓上切断機であって、
前記ガイドバーの任意の位置に前記支持部材を固定したときに、前記ガイドバーが前記ホルダの後方に出っ張らない状態で前記支持部材を前記ベース部上方の位置で固定可能にする第1の固定手段及び前記丸鋸刃を最下方に揺動した状態で、前記丸鋸部の揺動を固定する第2の固定手段の両固定手段を設け、
前記ガイドバーの一方の端部を前記ホルダに固定し、前記支持部材は前記ガイドバー上を摺動可能に設け、
前記サブハンドルは、前記丸鋸刃が最下方に揺動し、前記丸鋸部を固定したときに、前記ガイドバーとほぼ平行になると共に、前記ガイドバーに対する前記支持部材の摺動位置にかかわらず、前記サブハンドルは、前記支持部材と前記電動機との間で、且つ、前記一対のガイドバーの上側のガイドバーより上方に配置され、前記支持部材が前記ガイドバーの他端部側に摺動したときに、前記電動機と前記他端部との間に配置されるように構成したことを特徴とする卓上切断機。」

3. 引用文献
上記平成27年8月25日付けで通知された拒絶の理由に引用された遡及出願日前に頒布された刊行物である以下の引用文献1ないし5には、図面とともに、それぞれ以下の発明及び事項が記載されている。
引用文献1:カナダ国特許出願公開第02372451号明細書
引用文献2:特開平9-164504号公報
引用文献3:特開平8-252801号公報
引用文献4:特開2004-1551号公報
引用文献5:特開平11-170202号公報

(1) 引用文献1
引用文献1には、「Compact Sliding Compound Mitre Saw」(小型な摺動複合マイターソー)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、括弧内の日本語は、本願の原出願(特願2009-219863号)に係る特許第5107325号に対する無効審判(無効2013-800051号)において、請求人が提出した甲第6号証の英和仮訳である。
摘記箇所を示すページ数は、各ページ右上記載の「Page」の数に依った。摘記箇所を示す行数は、空白行及び各ページ最上部にある「Compact Sliding Compound Mitre Saw.」とページ数を記載した行は含まない(空白行を行数に含めない点は、以下同様。)。 また、下線は理解の便のため当審で付した。

ア.
「1. A sliding pivot arm saw, including a fixed slide rail system, comprising in combination
a main table, defining a base for the saw, and having a flat top working surface for holding materials to be cut,
a pivot arm tower, defining a vertical mount, attached to said table,
two slide rails, defining two straight elongated rails, arranged in parallel, said rails mounted rigidly at their backward ends to the top end of said pivot arm tower to be parallel to said working surface, and oriented to reach forward across said working surface,
a pivot arm carriage, defining a provision for mounting bearings on both sides, each bearing on one side parallel to the bearings on the other side, said bearings in combination slideably disposed on said two slide rails in combination to allow said carriage linear travel only, said provision further having a pivot mount for which the axis of rotation or long axis is square to the long axis of said slide rails, and parallel to said working surface,
a pivot arm, defining an elongated arm, the backward end of which is provided with a pivot means to mate with and engage said pivot mount on the pivot arm carriage to allow arcing motion only for said pivot arm within limits, on a plane which is square to said axis of rotation of said pivot mount on the said carriage and thus parallel to the linear travel of the said carriage,
a saw mount, defining a housing to rotatably support a shaft on bearings which allow rotating motion only for said shaft, and further including a drive to rotate said shaft, on an axis which is parallel to the axis of said pivot means on said pivot arm,
a circular saw, mounted on said shaft of said saw mount,
a chop travel limit stop, defining a means to limit the downward arcing of said pivot arm,
a handle, rigidly attached to said saw mount, to operare the saw,
a fence, attached to the main table, to retain material to be cut, whereby a sliding pivot arm saw is provided with rigidly attached slide rails.」(17ページ3行ないし18ページ11行 )
(1.固定スライドレールシステムを含む摺動ピボットアームソーであって、組合せにおいて、
のこぎりのための基部を画成し、被切断材料を保持するための平坦な頂部作業面を有する主作業台と、
垂直マウントを画成し、前記作業台に取り付けられたピボットアームタワーと、
2本のまっすぐな細長いレールを画成し、平行に配置された2本のスライドレールと、
前記レールは、前記作業面に平行であるように前記ピボットアームタワーの頂端にそれぞれの後端で剛直に取り付けられ、そして前記作業面にわたって前方に及ぶように向けられており、
ベアリングを両側で取り付けるための備えを画成するピボットアームキャリッジと、
片側の各ベアリングは他方側のベアリングと平行であり、組合せの前記ベアリングは、前記キャリッジの線形行程だけを可能にするために組合せの前記2本のスライドレールに摺動可能に配設されており、前記備えは、その回転軸または長軸が前記スライドレールの長軸と直角であり、かつ前記作業面に平行であるピボットマウントをさらに有しており、
細長いアームを画成するピボットアームと、
その後端には、前記キャリッジの前記ピボットマウントの前記回転軸と直角であり、それゆえ前記キャリッジの線形行程に平行な平面において前記ピボットアームだけの円弧運動を限度内で可能にするために、ピボットアームキャリッジの前記ピボットマウントと嵌合し係合するピボット手段を備えており、
前記シャフトだけの回転運動を可能にするベアリングでシャフトを回転自在に支持するハウジングを画成し、そして前記ピボットアームの前記ピボット手段の軸に平行な軸において前記シャフトを回転させる駆動装置をさらに含むのこぎりマウントと、
前記のこぎりマウントの前記シャフトに取り付けられた丸のこと、
前記ピボットアームの下方円弧運動を制限する手段を画成する切断行程制限ストップと、
前記のこぎりマウントに剛直に取り付けられのこぎりを操作するためのハンドルと、
主作業台に取り付けられ、被切断材料を保持するためのフェンスとを備えており、
それによって摺動ピボットアームソーは剛直に取り付けられたスライドレールを備える、摺動ピボットアームソー。)

イ.
「2. A sliding pivot arm saw in accordance with claim 1 for which said fence is provided with a vertical axis pivot, including locking means for same,
whereby a sliding pivot arm mitre saw is provided.
3. A sliding pivot arm mitre saw in accordance with claim 2 wherein said pivot arm tower is provided with a bevel pivot means at its bottom end, said means having an axis of rotation which is parallel to the centerplane of said circular saw and also parallel to the top working surface of said main table, and wherein the main table is provided with a bevel pivot means to engage said bevel pivot means of said pivot arm tower to allow planar rotating travel within limits of said pivot arm tower in a plane which is square to the linear travel of said carriage, and further including a means to lock said bevel pivot means to said main table,
whereby a sliding pivot arm compound mitre saw is provided.」(18ページ12ないし26行 )
(2.前記フェンスは垂直軸ピボットを備えており、同品のためのロック手段を含み、
それによって摺動ピボットアームマイターソーが提供される請求項1に記載の摺動ピボットアームソー。
3.前記ピボットアームタワーはその底端にベベルピボット手段を備えており、前記手段は前記丸のこの中心平面に平行であるとともに前記主作業台の頂部作業面にも平行である回転軸を有しており、主作業台は、前記キャリッジの線形行程に直角である平面において前記ピボットアームタワーの限度内のプレーナ回転行程を可能にするために前記ピボットアームタワーの前記ベベルピボット手段と係合するベベルピボット手段を備えており、そして前記ベベルピボット手段を前記主作業台に固定する手段をさらに含み、
それによって摺動ピボットアーム複合マイターソーが提供される、請求項2に記載の摺動ピボットアームマイターソー。)

ウ.
「A "saw" is a circular blade mounted on a rotating shaft, the "arbor", capable of severing, named the "cut", a piece of material in two pieces, the whole piece being the "cut member". The arbor has a gear at one end, which is driven by a pinion gear on the motor; this arrangement is a "direct drive",」(8ページ3ないし7行)
(「のこぎり」は回転シャフトである「アーバ」に取り付けられ、1片の材料を2つの部片に分断することができ、すなわち指定された「切断」が可能な、円形の刃であり、部片全体は「被切断部材」である。アーバは一端に、モータのピニオンギヤによって駆動される歯車を有し、この構成は「直接駆動」である。)

エ.
「If a cut is square to all surface of the cut member, it is a “straight” cut. If square to the top and bottom, but not to the edges, it is a “mitre” cut. If square to the edges, but not to the top and bottom, it is a “bevel” cut. If neither square to top and bottom nor the edges, it is a “compound” cut. The mortion of the saw is limited to circular and planar by machine members. Chopping mortion is rigidly controlled by a "pivot arm", an approximately horizontal longitudinal rigid machine member extending back wards from the gearbox, rigidly attached to same, and provided with a horizontal axis "pivot arm pivot", parallel to the arbor, at the far end. The arbor and saw travel through an arc about said pivot arm pivot during cutting and caused by the human operator.」(8ページ19行ないし9ページ2行 )
(切り口が被切断部材の全部の表面に直角であれば、それは「垂直」切断である。上面及び底面に直角であるが端面にはそうでない場合、それは「留継ぎ」切断である。端面に直角であるが上面及び底面にはそうでない場合、それは「ベベル」切断である。上面および底面にも端面にも直角でない場合、それは「複合」切断である。のこぎりの運動は機械部材によって円またはプレーナに制限される。切断運動は、歯車箱から後方に延び、同物に剛直に取り付けられ、そしてアーバに平行な水平軸「ピボットアームピボット」を遠位端に備える、ほぼ水平の長手方向の剛直な機械部材、「ピボットアーム」によって剛直に制御される。アーバおよびのこぎりは、切断中に操作者によって生成される前記ピボットアームピボットのまわりの円弧を移動する。)
オ.
「In both cases of the existing art of sliding compound mitre saws the pivot arm is longer than in the conventional arrangement, to create a deeper “throat depth”, necessary to accommodate the wider lumber for which these saws are intended.」(10ページ7ないし10行 )
(摺動複合マイターソーの現行技術の両者の場合において、ピボットアームは従来の構成におけるよりも長く、これらののこぎりが意図されるより幅広の木材に対応するために必要な深い「のど深さ」を生じる。)

カ.
「FIG. 4 is a vertical cross section, taken on the centerplane of the saw, showing the main novel feature of the invention, namely two cantilevered rigidly mounted slide rails attached at their backward ends to a vertical extension of the bevel pivot, the bevel pivot tower, and provided with a pivot arm carriage, slideably mounted on the fixed slide rails, form which the saw unit is suspended via a conventional pivot arm rigidly attached to the gearcase of the direct drive. This embodiment has also many of the advantages of the conventional radial arm saw.」(13ページ1ないし7行 )
(図4は、のこぎりの中心平面で得られる垂直断面図であり、本発明の主要な新規の特徴、すなわち2本の片持ちにされ剛直に取り付けられたスライドレールを図示しており、スライドレールはそれぞれの後端でベベルピボットの垂直拡張部、ベベルピボットタワーに取り付けられ、固定スライドレールに摺動可能に取り付けられたピボットアームキャリッジを備えており、そこからのこぎりユニットが直接駆動の歯車箱に剛直に取り付けられた従来のピボットアームによって垂下されている。この実施形態はまた、従来のラジアルのこ盤の利点の多くを有する。)

キ.
「It is understood that normally dimensional relationships, even if novel, do not affect patentability, but in the case of tools like sliding compound mitre saw, component relationships particularly dimension wise, effect marketability greatly, since compactness is a prime prerequisite for portable tools; portability is the key and any serious protrusions are a detriment. In this invention, the slide rails do not protrude beyond the envelop size required to complete the cut.」(13ページ11ないし17行)
(通常、寸法関係は、たとえ新規であるとしても、特許性に影響を及ぼさないが、摺動複合マイターソーのような工具の場合、小型さが可搬型工具の主要な必要条件である、すなわち可搬性が鍵であり、あらゆる重大な突出も不利益であるので、特に寸法関係の構成要素の関係は市販可能性に大きく影響を及ぼすことが理解される。この発明において、スライドレールは、切断を完了するために要求される包絡面の大きさを越えて突出しない。)

ク.
「Pivot arm tower 37 is manually locked rigid to the working surface by tightening screw clamping means 17, which is prevented from being loosened too far by a locknut on pivot 16 as shown. Bevel pivot ring 38 mates with and engages a matching machined planar surface on bevel pivot boss 18, which is rigidly attached to rotunda 21. Said rotunda is a roud hat-like structure, with a flat circular top surface, the working surface of the saw for supporting cut member 19, and has an integral clearance channel for all situations, clearance channel 41; circumferential side wall 42 has a machined bottom edge which acts as a planar bearing 23, engaging a matching radial plane surface in main table 24, the base for the machine. Rotunda 21 may rotate whithin limits about rotunda pivot 22, supported in central pivot boss 45, and is locked to main table 24, after adjustment for mitre, by rotunda lock 25.」(14ページ26行ないし15ページ2行 )
(ピボットアームタワー37はねじクランプ手段17を締めることによって作業面に手動で剛直に固定され、ねじクランプ手段は図示の通りピボット16の止めナットによって過度に遠くまで緩められないようにされている。ベベルピボットリング38は、ロタンダ21に剛直に取り付けられたベベルピボットボス18の対応する機械仕上げプレーナ表面と嵌合し係合する。前記ロタンダは、平坦な円形上面、被切断部材19を支持するためののこぎりの作業面を備える、丸い帽子状構造であり、全部の状況に応じたのこぎり12の一体隙間溝、隙間溝41を有しており、周方向側壁42は、機械の基部である主作業台24の対応するラジアルプレーナ表面と係合するプレーナベアリング23として機能する機械仕上げの底端を有する。ロタンダ21は、中心ピボットボス45に支持されたロタンダピボット22に関して限度内で回転することができ、留継ぎのための調整後、ロタンダロック25によって主作業台24に固定される。)

ケ.
「Turning now to FIG. 7, there is shown a cross section of the preferred embodiment of the invention, taken of the ceterplane of the saw, except for the slide rails and pivot arm carriage, for which a sideview in the same direction as the rest of the drawing is shown. The description and numerals given for Fig.4 applies, except as follows; slide railes 20 are in a stacked arrangement on the side of circular saw 12 on the opposite side of saw mount 11. this has the advantage over the embodiment of Fig. 4 of allowing saw mout 11 to be raised to any position desired, within limmits, and be locked in a raised position by adjusting a screw in chop travel limit stop 35. This makes limited depth cuts simple. Pivot arm 13 is pivotably mounted on an outboard extension of pivot arm carriage 15, which simply comprises a pair of sleeves for mounting linear axial bearings 31, said sleeves connected together by an integral web and having an outboard mount for pivot arm pivot 14, as shown in Fig. 8. In addition to the advantage described above, this embodiment has the advantage of allowing a robust bridge, slide rail end stop 32, to rigidly connect the ends of slide rails 20 tugether for improved overall rigidity of linear guidace means for carriage 15.」(15ページ下から2行ないし16ページ14行)
(ここで図7に注目すれば、のこぎりの中心平面で得られる本発明の好ましい実施形態の断面図がスライドレールおよびピボットアームキャリッジを除いて図示されており、それらについては図面の残りと同じ方向での側面図が図示される。図4に提示された説明及び数字が適用されるが、次の点が異なる。すなわち、スライドレール20は、のこぎりマウント11の反対側の丸のこ12の側にスタック構成で存在する。これは、のこぎりマウント11を、限度内でいずれかの所望の位置まで持ち上げ、切断行程制限ストップ35のねじを調整することによって持ち上げ位置に固定することを可能にするという図4の実施形態に優る利点を有する。これは限定された深さの切断を単純にする。ピボットアーム13はピボットアームキャリッジ15の機外拡張部にピボット式に取りつけられており、それは単にリニアアキシャルベアリング31を取り付けるための一対のスリーブよりなり、前記スリーブは一体ウェブによって一緒に連結され、図8に図示のとおり、ピボットアームピボット14のための機外マウントを有する。上述の利点に加えて、この実施形態は、頑丈なブリッジ、スライドレール端ストップ32が、キャリッジ15の線形案内手段の向上した全剛性を得るためにスライドレール29の端を一緒に剛直に連結することを可能にするという利点を有する。)

コ. FIG.2及び3
FIG.2及び3には、「PRIOR ART(従来例)」として、「スライドレール20」が「丸のこ12」が図上左方へ位置した際に、同方向へ「ピボットアームタワー37」の上端に設けられた「ベアリング31」より突出することの図示がある。

FIG.2

FIG3


サ. Fig.7ないし9
FIG.7ないし9には、「スライドレール20」が直接駆動ユニットの反対側にある実施形態が示されており、2本の「スライドレール20」の軸心を結ぶ線が丸のこ12の側面に平行であり、かつ、「丸のこ12」の側面から離れていることが図示されている。
FIG.7には、「丸のこ12」の下端が「主作業台24」及び「ロタンダ21」の頂部作業面よりも下方に位置した状態で、「丸のこ12」の上端よりも、下側の「スライドレール20」が下方に配置されている点、図示されている。
上記摘記事項ア.の「細長いアームを画成するピボットアームと、その後端には、前記キャリッジの前記ピボットマウントの前記回転軸と直角であり、それゆえ前記キャリッジの線形行程に平行な平面において前記ピボットアームだけの円弧運動を限度内で可能にするために、ピボットアームキャリッジの前記ピボットマウントと嵌合し係合するピボット手段を備えており」との記載、上記摘記事項ク.の「ここで図7に着目すれば、のこぎりマウント11を、限度内でいずれかの所望の位置まで持ち上げ、切断行程制限ストップ35のねじを調整することによって持ち上げ位置に固定することを可能にするという図4の実施形態に優る利点を有する。これは限定された深さの切断を単純にする。ピボットアーム13はピボットアームキャリッジ15の機外拡張部にピボット式に取りつけられており、それは単にリニアアキシャルベアリングを取り付けるための一対のスリーブよりなり、前記スリーブは一体ウェブによって一緒に連結され、図8に図示のとおり、ピボットアームピボット14のための機外マウントを有する。」との記載並びにFIG.8及び9の「ピボットアームピボット14」が「丸のこ12」の回転軸と平行となっていることの図示から、引用文献1記載の「丸のこ12」の軸方向と「ピボットアームピボット14」は平行であり、「ピボットアームピボット14」を回転の支点として「ピボットアームキャリッジ15」は、ある制限された範囲を揺動することが理解できる。そうすると「ピボットアームキャリッジ15」は、所定の最上位位置と、所定の最下方位置との間で「丸のこ12」を揺動可能に支持するものである。
上記摘記事項イ.の「前記ピボットアームタワーはその底端にベベルピボット手段を備えており、前記手段は前記丸のこの中心平面に平行であるとともに前記主作業台の頂部作業面にも平行である回転軸を有しており、」との記載を踏まえると、FIG.9には、「丸のこ12」を挟んで、一方側に上側及び下側の「スライドレール20」を配置すると共に、他方側にモータを配置した点、そして、「ピボットアームタワー37」が直接駆動ユニットと反対側に45°傾斜した線がファントム輪郭線で示されている点、図示されている。























FIG7ないし9


シ.
上記摘記事項ア.の「前記シャフトだけの回転運動を可能にするベアリングでシャフトを回転自在に支持するハウジングを画成し、そして前記ピボットアームの前記ピボット手段の軸に平行な軸において前記シャフトを回転させる駆動装置をさらに含むのこぎりマウントと、前記のこぎりマウントの前記シャフトに取り付けられた丸のこと、」との記載から、「丸のこ」は、「のこぎりマウント」に含まれる「駆動装置」により回転させられる「シャフト」に取り付けられるものであるから、引用文献1記載の「のこぎりマウント」は、駆動装置の駆動により回動する「丸のこ」を回動可能に支持するものである。

ス. 引用発明
上記摘記事項ア.ないしケ、FIG.7ないし9及び認定事項コ.及びシ.から、引用文献1記載の事項を、技術常識を考慮しつつ整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「被切断部材を支持可能な主作業台24及びロタンダ21と、
駆動装置を含み、前記駆動装置の駆動により回動する丸のこ12を回動可能に支持するのこぎりマウント11と、
前記丸のこ12の軸方向と平行なピボットアームピボット14を支点として該丸のこ12を所定の最上位位置と、所定の最下方位置との間で揺動可能に支持するピボットアームキャリッジ15と、
前記丸のこ12の軸方向と直交するとともに、前記主作業台24の頂部作業面に対して平行に延びる回転軸を支点として傾動し、前記丸のこ12の側面を、前記主作業台24の頂部作業面に対して垂直な位置から傾動可能なピボットアームタワー37と、
前記ピボットアームタワー37から前記主作業台24及びロタンダ21に延在し、上下方向に配置された一対のスライドレール20と、を有し、
前記一対のスライドレール20の軸心を結ぶ平面が前記丸のこ12の側面と平行に配置された摺動ピボットアーム複合マイターソーであって、
前記スライドレール20の一報の端部を前記ピボットアームタワー37に固定し、前記ピボットアームキャリッジ15は前記スライドレール20上を摺動可能に設け、
た摺動ピボットアーム複合マイターソー」

(2) 引用文献2
引用文献2には、「滑り複式マイターソー用支持組立体」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.
「【0031】図1と図6に最も明瞭に示してあるように、ベース14は回転台58上に取り付けられた主支持シャフト226も備えている。主支持シャフト226は、クロムメッキした硬化ヘビーゲージ鋼管である。主支持シャフト226の一端230で、その一部が切除され、一対の貫通孔234(図1のみ)を有するスプーン状部材を形成している。ネジ(図示せず)が各孔を通して下方に差し込まれ、回転台58の上面62内へと延び、主支持シャフト226を回転台58に固定している。また主支持シャフト226は他端238(図7に想像線で示す)を備え、両端230と238間に延びた軸心242(図7のみ)を有する。好ましい実施例において、軸心242は回転台58の上面62と同一平面上にある。
【0032】ベース14は、両端250(図6)と254(図14)を有する補助支持シャフト246も備えている。補助支持シャフト246は、クロムメッキした硬化鋼管である。支持部材258と補助支持シャフト246の一端250は、補助支持シャフト246と支持部材258を貫き回転台58の上面62内へと延びる2本の締付具(図示せず)によって、主支持シャフト226の一端230近くで回転台58の上面62に固定されている。」

イ.
「【0034】滑り複式マイターソー10は、切断ユニット294(図1)も備えている。切断ユニット294は、主支持シャフト226に取り付けられたベベル支持体298を有する。図12に最も明瞭に示してあるように、ベベル支持体298は第1及び第2の支持部302と306を有する。両支持部302と306は一体に結合されて縦方向に延びた孔310を形成し、主支持シャフト226が孔310を貫いて延びている。孔310は縦方向に延びた軸心を有し、孔310の側壁は軸方向の両端部314(図7)を有し、各端部314にそれぞれ縦方向に延びた7つの貝殻状凹部(スカロップ)318(図12)が形成されている。また孔310は、両端部314の内径よりわずかに大きい内径を有するほぼ滑らかな円筒状中央部322を備えている。」

ウ.
「【0041】切断ユニット294は、補助支持体434の前面に取り付けられた滑りロック542(図6)も備えている。滑りロック542は切断ユニット294が両支持シャフト226と246に対して軸方向に滑るのを防止し、図15に示すように、取付タブ550を有する保持リング546を備え、保持リング546は取付タブ550によって補助支持体434に結合される。また保持リング546は延出部554を備え、ここに補助支持体434の軸心に対して半径方向に延びた貫通孔558が形成されている。浮動ピストン562が貫通孔558内に装着されている。ピストン562はディスク状ヘッド566を有する一端と、ディスク状ヘッド566より小さい球状ヘッド570を有する他端と、両ヘッド566と570間に延びた細い中央部もしくはシャフト574を備える。シャフト574は貫通孔558の内径より小さい外径を有し、一端(つまりディスク状ヘッド)566は貫通孔558の内径より大きい外径を有する。また滑りロック542は、貫通孔558にネジ込まれる止めネジ578を備えている。止めネジ578を締め付けると、ピストン562のディスク状ヘッド566が補助支持シャフト246に当接される。切断ユニット294を補助支持シャフト246に沿って軸方向に移動させようと試みると、ピストン562の長さ対ディスク状ヘッド566の比によってピストン562は傾こうとする(図16に想像線で示す)。ディスク状ヘッド566のエッジから球状ヘッド570までの直線距離はディスク状ヘッド566の中心から球状ヘッド570までの距離より常に大きいので、ピストンの傾き作用はディスク状ヘッド566のエッジを補助支持シャフト246の表面に対してのめり込ませつまりくさび作用で締め付け、切断ユニット294の補助支持シャフト246に対する移動を防止する。」

エ.
「【0050】また滑り複式マイターソー10は、Uリンク414を貫いて延びるロック締付具(ボルト)722も備えている。ロックボルト722はヒンジピンを中心として、ソーアーム578の自由移動を可能とする引出位置から、滑り複式マイターソー10の輸送中ソーアーム578を切断位置に固定するロック位置へ移動可能である。
【0051】動作時、ロックボルト722を解放位置に引き出すと、ソーアーム578が非切断位置へ上昇可能となる。・・・」

オ.
【図1】

【図6】

カ.
上記摘記事項ア.ないしエ.並びに【図1】及び【図6】の図示から、引用文献2には、以下の事項が記載されていると認められる。
「回転する鋸刃が水平歩行に移動可能とするための補助支持体434が、支持シャフト226と246に対して軸方向に滑るのを防止するための滑りロック542を設けた点。」(以下、「引用文献2記載事項1」という。)
「ヒンジピンを中心としてソーアーム578自由移動を可能とする引出位置から、滑り複式マイターソー10の輸送中にソーアーム578及びソーアーム578によって支持される鋸刃614を切断位置に固定するためのロック位置へ移動させることのできるロックボルト722を設けた点。」(以下、「引用文献2記載事項2」という。)

(3) 引用文献3
引用文献3には、「左右傾斜式鋸装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.
「【0002】
【従来の技術】従来の左右傾斜式鋸装置については、実開平5-49301号公報及び特開平6-71602号公報等に、その構造が開示されている。このうち、特開平6-71602号公報に記載されている左右傾斜式鋸装置を図1乃至図3に示す。これらの図において、支持部材4には、被切削材を支持するための支持面4aが形成されている。また、揺動アーム6は、支持部材4に対して左右方向に、すなわち図3に示す矢印L,R方向に揺動可能に構成されている。さらに、鋸刃12は上下揺動部材10とスライドバー8を介して、揺動アーム6に取り付けられている。この鋸刃12の刃面は、揺動アーム6の揺動に追従して傾斜する。図2と図3に示すモータ14は、鋸刃12を駆動する駆動源である。
・・・
【0004】いずれのタイプにせよ、左右傾斜式鋸装置は、図3に示すように、揺動アーム6の揺動に追従して、鋸刃12が図面左側に傾斜させる左傾斜角12L、支持面4aに直交する中立角12C及び図面右側に傾斜させる右傾斜角12Rの間で相互に揺動可能となっている。」

イ.【図3】

ウ.
上記摘記事項ア.及び図3の図示から、引用文献3には、以下の事項が記載されていると認められる。
「鋸刃12を、被切削材を支持するための支持面4aに対して垂直な位置から両側へ揺動可能とした点。」(以下、「引用文献3記載事項」という。)

(4) 引用文献4
引用文献4には、「卓上切断機」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.
「【請求項1】
被切削材を支持するベース後方に支持部材を設け、該支持部材の上方には、回転刃物と該回転刃物を回転駆動するモーターと切り込み用ハンドルとモーターを動作させるための主スイッチを配設した回転刃物部を、ベースに対し上下方向に揺動自在に軸支すると共に、前記支持部材に回転刃物部の揺動を固定するためのロックピンを配設した卓上切断機において、前記モータの電源を前記回転刃物部に着脱可能な電池としたことを特徴とする卓上切断機。
【請求項2】
前記回転刃物部は運搬用ハンドルを有することを特徴とする請求項1記載の卓上切断機。」

イ.
「【0002】
【従来の技術】
卓上切断機は、被切削材を支持するベース後方に支持部材を設け、支持部材の上方には、回転刃物と回転刃物を回転駆動するモーターと切り込み用ハンドルとモーターを動作させるための主スイッチを配設した回転刃物部を、ベースに対し上下方向に揺動自在に軸支すると共に、支持部材に回転刃物部の揺動を固定するためのロックピンを配設した構成をしており、卓上切断機本体の運搬時には、ロックピンによって回転刃物部の揺動を固定し、運搬用ハンドルやベースを持って運んでいる。」

ウ.
「【0007】
図において、ベース1上面に被切削材14を支持するフェンス2を固定する。ベース1後端には支持部材3を立設する。支持部材3上方にシャフト4を支点として、ベース1上面に対し上下揺動自在の回転刃物部5が軸支されている。回転刃物部5は図示しないスプリングによって上方に付勢されている。また、支持部材3上方にはロックピン6が出し入れ自在に配設されており、回転刃物部5を下方に位置させたときに、回転刃物部5に設けた穴7にロックピン6を挿入することにより、回転刃物部5が固定できる。
【0008】
支持部材3上方にはロックピン6に係合する遮断スイッチ8を装着し、ロックピン6が穴7に挿入されたとき遮断スイッチ8の接点は開放の状態となる。回転刃物部5には、回転刃物9、回転刃物9を駆動するモーター10、図示しないモーター10の動力を回転刃物9へ伝達する伝達機構、電源となる電池11、切り込み用ハンドル12が配設されている。切り込み用ハンドル12には、モーター10を動作させるための主スイッチ13が配設されており、図5に示すようにモーター10と主スイッチ13と遮断スイッチ8の接点は回路上直列に接続されている。」

エ.
「【0011】
卓上切断機本体を運搬する際には、回転刃物部5に設けた孔7にロックピン6を挿入し、回転刃物部5を固定し、回転刃物部5に設けられた運搬用ハンドルを持って運搬する場合や、・・・」

オ.
「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す卓上切断機の側面図である。
【図2】図1の回転刃物部をロックさせたときの側面図である。」

カ.【図1】及び【図2】
【図1】には、「切り込み用ハンドル12」に加え、「回転刃物部5」の上面に「運搬用ハンドル」を設けられたことが図示されている。【図2】には、回転刃物部をロックさせた状態で、「運搬用のハンドル」が「ベース1」の上面に対して平行で、かつ、「モータ10」と、「回転刃物部5」を支持する「シャフト4」との間に位置する点が図示されている。
【図1】


【図2】

キ. 上記摘記事項ア.ないしオ.及び認定事項カ.から、引用文献4には、以下の事項が記載されていると認められる(以下、「引用文献4記載事項」という。)。
「卓上切断機の回転刃物9が取り付けられた回転刃物部5に運搬用ハンドル設け、回転刃物部をロックさせた状態、すなわち、回転刃物部を最下方の位置へ下げた状態において、運搬用のハンドルがベース1の上面に対して平行で、かつ、モータ10と、回転刃物部5を支持するシャフト4との間に位置する点 」

(5) 引用文献5
引用文献5には、「スライド式卓上切断機」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.
「【0009】切断刃物部ホルダ10には、切断刃物部14がヒンジシャフト15によりターンテーブル4上面に対し上下揺動自在に軸支され、スプリング25により上方に付勢されている。切断刃物部14には図示しない上・下限位置を規制する各ストッパー、モーター16、切断刃物となるのこ刃30及び切断刃物部14を押し下げるハンドル17及び本体運搬用のハンドル18を備えている。また、切断刃物部14にはモーター16からのこ刃30へ動力を伝達するために、図示しないベルトやギヤなどの動力伝達機構を有している。なお、切断刃物部14の揺動支点とのこ刃30の軸間の距離は、常に一定に保たれている。」

イ.
「【0013】上記構成において、本体運搬時について説明する。運搬時は通常、ガイドバー9の摺動をノブ5で固定し、運搬用ハンドル18又はベース1の両端を両手で持って移動する。」

ウ.
「【図面の簡単な説明】
・・・
【図3】加工材切断時の部分側面図である。」

エ.【図1】及び【図3】
【図1】及び【図3】には、「切断刃物部14」を押し下げる「ハンドル17」に加え、「運搬用ハンドル18」を設け、かつ「運搬用ハンドル18」が、加工切断時に、「ターンテーブル4上面」に対して略平行となることの図示がある。さらに、「運搬用ハンドル18」は、加工切断時に、「モータ16」と、「切断刃物部14」を支持する「ヒンジシャフト15」との間に位置することの図示がある。

【図1】

【図3】


エ.
上記摘記事項ア.及びウ.並びに認定事項エ.から、引用文献5には、以下の事項が記載されていると認められる(以下、「引用文献5」記載事項という。)。
「のこ刃30が下方に位置する切断時において、運搬用ハンドル18が、ターンテーブル4に対して平行で、かつ、モータ16と、切断刃物部14を支持するヒンジシャフト15との間に位置する卓上切断機」

4. 対比
本願発明と、引用発明とを対比する。
引用発明の「主作業台24」及び「ロタンダ21」は、両者をあわせて、「被切断部材」を置くための面を構成するから、本願発明の「ベース部」に相当する。
引用発明の、「被切断部材」、「駆動装置」、「丸のこ12」、「のこぎりマウント11」、「ピボットアームピボット14」、「ピボットアームキャリッジ15」、「主作業台24の頂部作業面」、「回転軸」、「ピボットアームタワー37」、「ねじクランプ手段17」、「上下方向に配置された一対のスライドレール20」及び「摺動ピボットアーム複合マイターソー」は、それぞれ本願発明の「被加工部材」、「電動機」、「丸鋸刃」、「丸鋸部」、「揺動軸」、「支持部材」、「ベース部上面」、「傾動軸」、「ホルダ」、「傾動規制手段」、「一対のガイドバー」及び「卓上切断機」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、かつ相違する。

<一致点>
「被加工材を載置可能なベース部と、
電動機を収納し、前記電動機の駆動により回動する丸鋸刃を回動可能に支持する丸鋸部と、
前記丸鋸刃の軸方向と平行な揺動軸を支点として該丸鋸部を所定の最上方位置と、所定の最下方位置との間で揺動可能に支持する支持部材と、
前記丸鋸刃の軸方向と直交すると共に、前記ベース部上面に対して平行に延びる傾動軸を支点として傾動し、前記丸鋸刃の側面を、前記ベース部上面に対して垂直な位置から傾動可能なホルダと、
前記ホルダから前記ベース部側に延在し、上下方向に配置された一対のガイドバーと、を有し、
前記一対のガイドバーの軸心を結ぶ平面が前記丸鋸刃の側面と平行に配置された卓上切断機であって、
前記ガイドバーの一方の端部を前記ホルダに固定し、前記支持部材は前記ガイドバー上を摺動可能に設けた、
卓上切断機。」

<相違点1>
本願発明1の「ホルダ」の傾動は、「ベース部上面に対して垂直な位置から両方向に傾動可能」であるのに対し、引用発明の「丸のこ12」の側面は、一方向に傾動するものではあるものの、両方向に傾動可能であるかは明らかではない点。

<相違点2>
本願発明1は、「ガイドバーの任意の位置に支持部材を固定したときに、前記ガイドバーがホルダの後方に出っ張らない状態で前記支持部材をベース部上方の位置で固定可能にする第1の固定手段及び丸鋸刃を最下方に揺動した状態で、前記丸鋸部の揺動を固定する第2の固定手段の両固定手段を設け」たものであるのに対し、引用発明は、そのようなものであるかが不明である点。

<相違点3>
本願発明1は、「サブハンドル」を「丸鋸部」に設け、さらに、当該「サブハンドル」は、「丸鋸刃が最下方に揺動し、前記丸鋸部を固定したときに、ガイドバーとほぼ平行になると共に、前記ガイドバーに対する支持部材の摺動位置にかかわらず、サブハンドルは、支持部材と電動機との間で、且つ、一対のガイドバーの上側のガイドバーより上方に配置され、前記支持部材が前記ガイドバーの他端部側に摺動したときに、前記電動機と前記他端部との間に配置される」ものであるのに対し、引用発明がサブハンドルを有するものであるかが不明である点。

5. 相違点についての検討
上記4.の<相違点1>ないし<相違点3>について検討する。

(1) 相違点1について
上記3.(1)の摘記事項キ.の記載より、引用発明は、「摺動ピボットアーム複合マイターソー」に関する発明であり、「straight(垂直)」、「mitre(留継ぎ)」、「bevel(ベベル)」並びにそれらを組み合わせた「compound(複合)」切断を可能とするものであるから、引用発明には、より多様な切断の仕方を可能とすることへの動機付けが存在するといえる。一方、鋸刃の傾動を1方向ではなく両方向へ可能とすることで、「ベベル」切断の方向が2方向となり、切断の仕方が多様となることは、当業者にとって自明である。
ここで、引用文献3記載事項は、「鋸刃12」を、被切削材を支持するための「支持面4a」に対して垂直な位置から両方へ「揺動」可能とするものである。引用発明と引用文献3に記載された事項とは、被加工材料を支持する面に対して、鋸刃を傾動させて切断することを可能とする鋸装置である点で共通するから、1方向のみ傾動可能な引用発明の「丸のこ12」を両方向へ傾動可能とすることは、上記動機付けにしたがって、上記引用文献3の記載事項を適用することで当業者が容易になし得た事項である。

(2) 相違点2について
相違点2は、本願発明が「第1の固定手段」及び「第2の固定手段」を有する点で、引用発明と相違する、というものであるから、それぞれの固定手段について検討する。

ア. 第1の固定手段を設けた点について
上記3.(1)の摘記事項キ.には、以下の記載がある。
「通常、寸法関係は、たとえ新規であるとしても、特許性に影響を及ぼさないが、摺動複合マイターソーのような工具の場合、小型さが可搬型工具の主要な必要条件である、すなわち可搬性が鍵であり、あらゆる重大な突出も不利益であるので、特に寸法関係の構成要素の関係は市販可能性に大きく影響を及ぼすことが理解される。」(13ページ11?16行)
上記記載から、引用文献1には、引用発明に可搬性を具備せしめることが少なくとも示唆されている。搬送中に、引用発明の「slide rails(スライドレール)20」に対して摺動する「pivot arm carriage (ピボットアームキャリッジ)15」や、「pivot arm pivot (ピボットアームピボット)14」を中心に揺動する「pivot arm(ピボットアーム)13」等が意図しない動きをすることは不都合であるから、搬送中にそうした動きを防止する固定手段を引用発明に設けることは、引用発明に内在する課題であるといえる。
上記引用文献2記載事項1の「補助支持体434」の前面に取り付けられた「滑りロック542」は、「両支持シャフト226と246に対して軸方向に滑るのを防止」するものであり、さらに、回転する鋸刃が水平方向に移動可能とするために、棒状体を摺動するものである点で、引用発明の「ピボットアームキャリッジ15」と機能的に共通する。
そうすると、引用発明に対して「ピボットアームキャリッジ15」を固定するための手段を設けることは、上記引用発明に内在する課題に基づいて、引用文献2記載事項1の「滑りロック542」のような固定手段を、引用文献2記載事項1の「補助支持体434」と機能的に共通する引用発明の「ピボットアームキャリッジ15」に設けることで当業者が容易になし得た事項である。

イ. 第2の固定手段を設けた点について
引用文献2記載事項2の「ロックボルト722」は、「ヒンジピンを中心として、ソーアーム578の自由移動を可能とする引出位置から、滑り複式マイターソー10の輸送中ソーアーム578を切断位置に固定するロック位置へ移動可能」なものであり、その際、「ソーアーム578」は「鋸刃614」を支持するから、「鋸刃614」も固定するものである。ここで、揺動する部材を固定するためのタイミングとして、丸鋸刃がなおも下方向へ揺動することができない「最下方に揺動した状態」を選択することに格別の困難性は認められない。
そうすると引用発明の「丸のこ12」とともに揺動する「saw mount(のこぎりマウント)11」の揺動を「最下方に揺動した状態」で固定するための手段を設けることは、上記引用発明に内在する課題を解決しようとして、引用文献2記載事項2の「ロックボルト722」のような固定手段を、引用発明の「のこぎりマウント11」に設けることで、当業者が容易になし得た事項である。

(3) 相違点3について
上記(2)で示したように、引用文献1には、引用発明において可搬性を具備せしめることが示唆されている。
一方、引用文献4記載事項及び引用文献5記載事項は、いずれも、回転する丸鋸を揺動させて切断加工をおこなう切断機において、当該切断機の運搬のためのハンドルを設けるもので、当該運搬用ハンドルは、丸鋸を最下方へ押し下げた状態で、被切断材を置くためのベースに対して平行となるようにし、かつ、当該ハンドルが丸鋸を支持する部分と丸鋸を回転させるためのモータとの間に位置させるものである。
引用発明も、回転する丸鋸を揺動させて切断加工をおこなう運搬可能な切断機である点で、共通する。
そうすると、引用発明において、回転刃物である「丸のこ12」を有している「のこぎりマウント11」に対して、サブハンドルを設けることは、上記示唆するところにしたがって、引用文献4記載事項及び引用文献5記載事項である「運搬用ハンドル」を適用することで当業者が容易になし得たものである。その際、サブハンドルの構成として、「丸鋸刃が最下方に揺動し、前記丸鋸部を固定したときに、ガイドバーとほぼ平行になると共に、前記ガイドバーに対する支持部材の摺動位置にかかわらず、サブハンドルは、支持部材と電動機との間で、且つ、一対のガイドバーの上側のガイドバーより上方に配置され、前記支持部材が前記ガイドバーの他端部側に摺動したときに、前記電動機と前記他端部との間に配置される」としたことは、引用発明においては「スライドレール20」に対して平行である「working surface (作業面)」に対して平行となるように、上記引用文献4あるいは5記載の「運搬用ハンドル」を適用しようとすれば、おのずと採用する構成であるに過ぎない。特に、「一対のガイドバーの上側のガイドバーより上方に配置され、前記支持部材が前記ガイドバーの他端部側に摺動したときに、前記電動機と前記他端部との間に配置される」については、「運搬用ハンドル」を引用発明に取り付けた場合において、「運搬用ハンドル」を把持するにあたって、上側の「スライドレール20」が邪魔となることは、当業者にとって明らかであるから、それを避けようとすれば当然に採用する構成であるに過ぎない。

<平成27年10月30日付け意見書について>
請求人は、当審が通知した平成27年8月25日付け拒絶の理由に対して、平成27年10月30日付けで意見書を提出して、大要、以下のとおり主張している。

「引用文献1には、『通常、寸法関係は、たとえ新規であるとしても、特許性に影響を及ぼさないが、摺動複合マイターソーのような工具の場合、小型さが可搬型工具の主要な必要条件である、すなわち可搬性が鍵であり、あらゆる重大な突出も不利益であるので、特に寸法関係の構成要素の関係は市販可能性に大きく影響を及ぼすことが理解される。』(当審注:13ページ11ないし16行、上記3.(1)の摘記事項キ.)との記載がある。そうすると、仮に引用発明に運搬性を向上させる目的で、引用文献4あるいは5記載の「運搬用ハンドル」を適用することは想起されたとしても、上記記載に基づけば、運搬用ハンドルを適用する際には、「ガイドバーの上方に配置する」ことは運搬用ハンドルが上方に突出し、不利益に該当するため、本願発明のように、「サブハンドルが支持部材と電動機との間において、一対のガイドバーの上側のガイドバーの上方に配置される」構造が容易に想到されるとは到底思われない。」

そこで、上記請求人の主張について検討する。
出願人が摘記した引用文献1の記載に続いて、引用文献1には、「この発明において、スライドレールは、切断を完了するために要求される包絡面の大きさを越えて突出しない。」(上記3.の(1)の摘記事項キ.)との記載がある。また、引用文献1の図2及び3には、「PRIOR ART(従来例)」として、「スライドレール20」が「丸のこ12」が左方へ位置した際に、同方向へ「ピボットアームタワー37」の上端に設けられた「ベアリング31」より突出することの図示がある(同認定事項コ.)。上記請求人の主張に係る引用文献1の記載事項に加えて、これらの事項を総合すると、引用文献1記載の「重大な突出」とは、上記引用文献1の図2及び図3に記載された「スライドレール20」の突出のような、「摺動複合マイターソー」を持ち運んだ際に、他のものと意図しない衝突を起こすことで可搬性を阻害するような「突出」であると解される。この点を踏まえて、引用発明に運搬用ハンドルを設けることについて検討すると、運搬用ハンドルが設けられたものを持ち運ぶ際には、運搬用ハンドルは手で把持される部分であり、通常、人が移動する際には、自己の身体部分が他と不用意な接触を避けるよう行動するから、手で把持された運搬用ハンドルは、「摺動複合マイターソー」を構成する部材のうちで、比較的意図しない接触が起こりにくい部材であることは、当業者にとって明らかである。そうすると、「サブハンドルが支持部材と電動機との間において、一対のガイドバーの上側のガイドバーの上方に配置される」ように構成した場合、請求人の上記主張のとおり、「運搬用ハンドル」は、(上側のガイドバーを超えて)上方に突出することがあったとしても、それが、上記可搬性を阻害するような「重大な突出」であるとは解されない。よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(4) 作用・効果について
本願発明が奏する作用・効果も、引用発明及び引用文献2ないし5記載事項から当業者が容易に予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

(5) 小括
以上のとおりであるから、本願発明は引用発明及び引用文献2ないし5記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

6. むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2015-12-04 
結審通知日 2015-12-08 
審決日 2015-12-21 
出願番号 特願2012-110143(P2012-110143)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩瀬 昌治  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 久保 克彦
渡邊 真
発明の名称 卓上切断機  

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