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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1311162
審判番号 不服2014-19097  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-24 
確定日 2016-02-12 
事件の表示 特願2010-49077「ガス注入装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年9月22日出願公開、特開2011-187539〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年3月5日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおり。
平成26年1月23日付け 拒絶理由通知
平成26年3月31日 意見書及び手続補正書提出
平成26年6月19日付け 拒絶査定
平成26年9月24日 本件審判請求と同時に手続補正書提出
平成27年5月11日付け 審尋
平成27年7月13日 回答書提出

第2 平成26年9月24日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成26年9月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1. 本件補正の内容
平成26年9月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、上記平成26年3月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するもので、請求項1についての補正を含むところ、本件補正前後の請求項1の記載は、補正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

(1) 補正前
「【請求項1】
底部と前記底部に設けられた位置決め溝と前記底部に設けられたガスの注入部とを有する、被収容体を収容する容器が載置される載置台と、
前記載置台から突出するように設けられ、前記容器の前記位置決め溝に係合可能な位置決めピンと、
前記容器の前記注入部を介して前記ガスを前記容器内に注入するためのノズルと、
前記容器の前記位置決め溝に前記位置決めピンが係合した状態で、前記ノズルを前記容器の前記注入部に接触させるように、前記ノズルを駆動することが可能な駆動部と、
前記容器が前記位置決めピンにより位置決めされて前記載置台に載置されているか否かを検出する着座センサとを具備し、
前記駆動部は、前記容器が位置決めされたことが前記着座センサにより検出された場合、前記ノズルを前記注入部に接触させる
ガス注入装置。」

(2) 補正後
「【請求項1】
底部と前記底部に設けられた位置決め溝と前記底部に設けられたガスの注入部とを有する、被収容体を収容する容器が載置される載置台と、
前記載置台から突出するように設けられ、前記容器の前記位置決め溝に係合可能な位置決めピンと、
前記容器の前記注入部を介して前記ガスを前記容器内に注入するためのノズルと、
前記容器の前記位置決め溝に前記位置決めピンが係合した状態で、前記ノズルを前記容器の前記注入部に接触させるように、前記ノズルを駆動することが可能な駆動部と、
前記位置決めピンが前記位置決め溝に適切に係合した状態であるか否かにより、前記容器が前記位置決めピンにより位置決めされて前記載置台に載置されているか否かを検出する着座センサとを具備し、
前記駆動部は、前記容器が位置決めされたことが前記着座センサにより検出された場合、前記ノズルを前記注入部に接触させる
ガス注入装置。」

2. 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1に係る上記補正は、「着座センサ」について、本件補正前の請求項1で特定された「前記容器が前記位置決めピンにより位置決めされて前記載置台に載置されているか否かを検出」との事項を、さらに「前記位置決めピンが前記位置決め溝に適切に係合した状態であるか否かにより」検出すると限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて、以下に検討する。

(1) 引用文献記載の事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願日前に頒布された刊行物である特開2003-60007号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の「基板の移送方法及びロードポート装置並びに基板移送システム」が記載されている(下線は、理解の便のため当審で付した。)。

ア.
「【0044】図4において、12は、ウェーハキャリア100の底部であるベースプレートを示し、13は、ベースプレートに備えられたV溝を示す、V溝13は、ウェーハキャリア100の位置決めのために使用される。なお、図4(a)では、ベースプレート12の部分を断面図で示している。
【0045】また、14は、ベースプレート12に設けられたフィルタを示す。フィルタ14は、従来から、ウェーハキャリア内に、異物が混入することを防止するために備えられているものであるが、ここでは、ウェーハキャリア100内に高圧気体を導入する手段と接続する導入口としての役割をも果たす。」

イ.
「【0049】図6は、基板処理装置に備えられたロードポート装置に、ウェーハキャリア100が載置された状態を示す断面模式図である。図6において、300は、基板処理装置21に備えられたロードポート装置を示す。
【0050】30Aは、ロードポート基台を示す。また、31は、ロードポート基台30Aの上に備えられたキネマ面を示し、31Aは、キネマ面に突出するキネマティックピンを示す。このキネマティックピン31Aと、ウェーハキャリア100に備えられたV溝13とが嵌まりあって、ウェーハキャリア100がロードポート装置300に載置される際の位置を決定する。
【0051】また、ロードポート基台30A、キネマ面31、キネマティックピン31Aを含んで、ロードポート装置300の台部30が構成される。
【0052】32は、ロードポートドアを示す。このロードポートドア32は、基板処理装置21の壁面の一部を構成する。また、この実施の形態では、基板処理装置21の壁面はSEMI規格のFOUPに対応するFIMS面の一部を構成する。」

ウ.
「【0054】図7は、ロードポート装置300に備えられた、ウェーハキャリア100内部を加圧するための気体供給手段の概念を示すための図である。
【0055】15は、ウェーハキャリア100内部を加圧するためのクリーンな乾燥高圧気体の供給源に接続されたバルブ、例えば電磁弁である。このバルブ15が開くことにより、供給源から、ウェーハキャリア100内部に乾燥高圧気体が供給される。また、このバルブ15に並列に、減圧弁15Aが備えられており、これによって気体の供給量を調節することができる。
【0056】また、16は、導入する気体の圧力を測定するための圧力センサを示し、17は、気体の導入開始や、終了、あるいは、導入量を制御する信号をバルブ15に与える制御手段を示す。この制御手段17は、キネマ面31にウェーハキャリア100がドッキングしたのを感知し、また圧力センサによる測定結果を受け取って、それに応じて制御を行う。
【0057】また、18は、ウェーハキャリア100に備えられた導入口14に接続される接続部を示す。この接続部は、ウェーハキャリア100がキネマ面31に載置されると、これに連動して自動的に導入口14に接続されるようになっている。
【0058】バルブ15、圧力センサ16、制御手段17、接続部18を含めて、気体供給手段400が構成される。なお、この気体供給手段400は、ロードポート装置300に備えられているものであるが、図6においては、図示を省略してある。」

エ.
「【0062】次いで、ウェーハキャリア100を、ホイスト機構22を用いて、基板処理装置21に備えられたロードポート基台30A上のキネマ面31上へ降ろして所定位置にセットする。ウェーハキャリア100は、そのベースプレート面12に設けられたV溝13に、キネマ面31の上面に設けられたキネマティックピン31Aが嵌まることにより、ロードポート基台30Aの上の適切な位置に載置される。
【0063】キネマ面31に、ウェーハキャリア100が載置されると、これに連動して、図7(b)に示すように、気体供給手段400の接続部18が、フィルタの備えられた導入口14に接続される。一方、制御手段17は、ウェーハキャリアが載置されたことを感知し、バルブ15を開き、気体の導入を開始する。
【0064】また、ホイスト機構22を、ウェーハキャリア100から外し、ウェーハキャリア100をロードポート基台30A上に残す。その後、ウェーハキャリア100を前進させて、キャリアドア2と、ロードポートドア32をドッキングさせる。ウェーハキャリア100は前進し、ロードポートドア32のFIMSシール面に押し当てられる。
【0065】この間、ウェーハキャリア100内部への気体の導入は、少なくとも引き抜かれるキャリアドア2の体積分を補うまでは続けられる。
【0066】また、この気体導入の際には、圧力センサ16によって、加圧気体の気圧が測られている。この測定結果は、制御手段17に伝えられ、制御手段17は、測定結果に応じて、バルブ15及び減圧弁15Aを制御し、ウェーハキャリア100の内部の圧力が、外気に対して、陽圧になるまで加圧される。また、基板処理装置21のエンクロージャー内と外部との差圧がある場合には、ウェーハキャリア100内も、この差圧分、外気に対して陽圧にして、エンクロージャー内と同程度あるいはそれ以上の陽圧となるようにする。この場合、差圧は10Pa以下でよい。」

オ.
「【0068】このとき、ウェーハキャリア100では、キャリアドアが引き抜かれるため、キャリアドア2の体積分、負圧となる。しかし、乾燥高圧気体をウェーハキャリア100に導入することで、ウェーハキャリア100の内部は、予め高圧にされているために、この負圧によって、外気がウェーハキャリア100内に流入するのを防ぐことができる。このようにして、キャリアドア2の開放時に、ウェーハキャリア100内が負圧となって、巻き込みが発生することを防止できる。
【0069】また、外気に対して、エンクロージャー内部が陽圧である場合にも、その圧力差の分以上、ウェーハキャリア100内も陽圧にしてあるため、外気あるいは、エンクロージャー内からの気体の流入を防止することができる。
【0070】以上説明したように、気体供給手段400においては、ロードポート装置200の台部30に、ウェーハキャリア100が載置されるのに連動し、接続口18がフィルタ14に接続される。また、制御手段17は、ウェーハキャリアの載置に連動して、バルブ15を開き、気体の供給を開始する。更に、制御手段17は、キャリアドア2開放の動作を感知し、これに連動させて、キャリアドア2開放までに、ウェーハキャリア100内を加圧しておく。
【0071】このようにして、気体供給手段200は、制御手段17、バルブ15及び減圧弁15Aなどを用いることにより、キャリアドア2の開放動作に連動させて、ウェーハキャリア100内部を加圧する。しかし、この発明においては、加圧を、キャリアドア2の開放動作に連動できる場合に限るものではなく、キャリアドア2の解放前にウェーハキャリア100内部を加圧できるものであればよい。
【0072】また、ドア開放の際には、すでにウェーハキャリア100内部は、加圧されているため、気体の供給を止めるものであってもよい。また、ドア開放中も、気体を導入し続けるものであってもよい。これによって、ウェーハキャリア100内部への異物混入をいっそう抑えることができる。」

カ.
上記摘記事項ウ.には「18は、ウェーハキャリア100に備えられた導入口14に接続される接続部を示す。この接続部は、ウェーハキャリア100がキネマ面31に載置されると、これに連動して自動的に導入口14に接続されるようになっている。」との記載、上記摘記事項オ.には「以上説明したように、気体供給手段400においては、ロードポート装置200の台部30に、ウェーハキャリア100が載置されるのに連動し、接続口18がフィルタ14に接続される。」との記載がある。ここで、「ウェーハキャリア100がキネマ面31に載置され」た状態とは、「V溝13」と「キネマティックピン31A」とが適切に係合した状態であることは、技術常識である。さらに、【図7】の(a)及び(b)における「接続口18」の位置を対比すると、【図7】(a)では、「導入口14」に対して間隔をあけた下方位置であったものが、「気体供給手段400の接続部18が、フィルタの備えられた導入口14に接続され」(摘記事項エ.)た状態である【図7】(b)においては、「接続口18」が上昇し「導入口14」と接続されていることの図示とあわせると、引用文献1に記載されたものは、「接続口18」を上昇動作をさせるための駆動部を有することが当業者にとって自明である。
以上をまとめると、引用文献1に記載されたものは、「V溝13」に「キネマティックピン31A」が係合した状態で、「接続口18」を「フィルタ14」に接続させるように、「接続口18」を駆動することが可能な駆動部を有するものであると認められる。

【図7】


キ.
上記摘記事項ウ.には「この接続部は、ウェーハキャリア100がキネマ面31に載置されると、これに連動して自動的に導入口14に接続されるようになっている」との記載がある。そうすると、そのような動作を「自動的に」行うためには、まず、「ウェーハキャリア100がキネマ面31に載置」されたことを検出しなければならないから、引用文献1に記載されたものは、当該検出を行う何らかのセンサ等とされる手段を具備していることは、当業者にとって自明である。

上記摘記事項ア.ないしオ.の記載、【図7】の図示並びに認定事項カ.及びキ.を整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ベースプレート12と前記ベースプレート12に設けられたV溝13と前記ベースプレート12に設けられた気体の導入口であるフィルタ14とを有する、基板を収納するウェーハキャリア100が載置されるキネマ面31を上面に有するロードポート基台30Aと、
前記キネマ面31から突出するように設けられ、前記ウェーハキャリア100の前記V溝13に係合可能なキネマティックピン31Aと、
前記ウェーハキャリア100の前記フィルタ14を介して前記気体を前記ウェーハキャリア100内に注入するための接続口18と、
前記ウェーハキャリア100の前記V溝13に前記キネマティックピン31Aが係合した状態で、前記接続口18を前記フィルタ14に接続させるように、前記接続口18を駆動することが可能な駆動部と、
前記ウェーハキャリア100が前記キネマ面31に載置されているか否かを感知するセンサを具備し、
前記駆動部は、前記ウェーハキャリア100が位置決めされたことが前記センサにより検出された場合、前記接続口18を前記フィルタ14に接続させる
ロードポート装置300の台部30。」

(2) 対比
引用発明の「ベースプレート12」、「ベースプレート12に設けられたV溝」及び「ベースプレート12に設けられた気体の導入口であるフィルタ14」は、補正発明の「底部」、「底部に設けられた位置決め溝」及び「底部に設けられたガスの注入部」にそれぞれ相当する。
引用発明の「基板」及び「ウェーハキャリア100」は、それぞれ補正発明の「被収容体」及び「容器」に相当する。
引用発明の「キネマ面31を上面に有するロードポート基台30A」、「キネマティックピン31A」及び「接続口18」は、それぞれ補正発明の「載置台」、「位置決めピン」及び「ノズル」に相当する。
引用発明の「ロードポート装置300の台部30」は、「気体」を「ウェーハキャリア100内」に注入するものであるから、本願発明の「ガス注入装置」に相当する。

そうすると、補正発明と引用発明は、以下の点で一致し、かつ、相違する。

<一致点>
「底部と前記底部に設けられた位置決め溝と前記底部に設けられたガスの注入部とを有する、被収容体を収容する容器が載置される載置台と、
前記載置台から突出するように設けられ、前記容器の前記位置決め溝に係合可能な位置決めピンと、
前記容器の前記注入部を介して前記ガスを前記容器内に注入するためのノズルと、
前記容器の前記位置決め溝に前記位置決めピンが係合した状態で、前記ノズルを前記容器の前記注入部に接触させるように、前記ノズルを駆動することが可能な駆動部と、
前記容器が前記載置台に載置されているか否かを検出する着座センサとを具備し、
前記駆動部は、前記容器が位置決めされたことが前記着座センサにより検出された場合、前記ノズルを前記注入部に接触させる
ガス注入装置。」

<相違点>
「容器が載置台に載置されているか否かを検出する着座センサ」について、補正発明のものは、「位置決めピンが位置決め溝に適切に係合した状態であるか否か」を検出するものであるのに対し、引用発明の「センサ」が何を検出することにより、ウェーハキャリア100がキネマ面31を上面に有するロードポート基台30Aに載置されているか否かを検出するものであるかが、明らかではない点。

(3) 検討
上記(2)の相違点について検討する。
「容器が載置台に載置されているか否かを検出するセンサ」として、「位置決めピンが位置決め溝に適切に係合した状態であるか否か」を検出するものは、例えば、上記当審よりの審尋にて示した特開2003-174068号公報(特に、段落【0010】ないし【0014】、【図1】及び【図3】)、特開2006-351619号公報(段落【0027】)及び特開2009-267153号公報(段落【0022】ないし【0024】)に加えて、特開2007-96145号公報(特に、段落【0036】)、特開2007-96145号公報(特に、段落【0038】)においても記載されており、従来周知である。
そうすると、上記相違点に係る事項を備えたものとすることは、引用発明において容器が位置決めされたことを検知する「センサ」の検出対象として、上記従来周知のものを選択したに過ぎず、当業者にとって格別の困難性は認められない。

また、補正発明が奏する効果についても、当業者が予測し得る範囲内のものであるにすぎず、格別なものではない。

なお、当審は、平成27年5月11日付けで、以下の事項を審尋した。
「2 本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-174068号公報には『ウエーハ搬送容器の着座確認装置』に関連して、結合ピン4が規定どおりにウエーハ搬送容器の底面に設けたV字溝2に収まったことを検出するセンサについて記載されているところ、このセンサと上記請求項1記載の「着座センサ」との間に違いがあるのか否かについて見解を述べられたい。
3 もし、両者の間に格別の違いがないとすると、結合ピンが規定どおりにウエーハ搬送容器の底面に設けた位置決め溝に収まったことを検出するセンサは、上記公報のほか特開2006-351619号公報、特開2009-267153号公報にも記載されているように従来周知であり、本件出願の請求項1に係る発明は、原査定の際に、第1引用例として挙げられた特開2003-60007号公報記載の発明に上記従来周知の着座センサを適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるといわざるを得ない。」
それに対し、請求人は、平成27年7月13日付け回答書で、
「本願の『着座センサ』は、当該特開2003-174068号公報のセンサの形態を採り得るだけでなく、審尋書で引用されている、特開2006-351619号公報に記載の『加圧センサ47』(明細書段落[0022])や、特開2009-267153号公報に記載の『センサ93とフォトセンサ95を組み合せた着座センサ』の形態も採り得ます。」(4ページ6ないし10行)と回答している。

(4) 小活
上記(3)で検討したとおり、補正発明は、引用発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3. むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるから、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について

1. 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成26年3月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1.(1)に示したとおりのものである。

2. 引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項並びに引用発明は、上記第2の2.(1)に示したとおりである。

3. 対比
上記第2の2.(2)に示した補正発明と引用発明との対比に倣って、本願発明と、引用発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、かつ、相違する。

<一致点>
「底部と前記底部に設けられた位置決め溝と前記底部に設けられたガスの注入部とを有する、被収容体を収容する容器が載置される載置台と、
前記載置台から突出するように設けられ、前記容器の前記位置決め溝に係合可能な位置決めピンと、
前記容器の前記注入部を介して前記ガスを前記容器内に注入するためのノズルと、
前記容器の前記位置決め溝に前記位置決めピンが係合した状態で、前記ノズルを前記容器の前記注入部に接触させるように、前記ノズルを駆動することが可能な駆動部と、
前記容器が前記載置台に載置されているか否かを検出する着座センサとを具備し、
前記駆動部は、前記容器が位置決めされたことが前記着座センサにより検出された場合、前記ノズルを前記注入部に接触させる
ガス注入装置。」

<相違点>
「容器が前記載置台に載置されているか否かを検出する着座センサ」について、本願発明のものは、「容器が位置決めピンにより位置決めされて載置台に載置されているか否か」を検出するものであるのに対し、引用発明の「センサ」が何を検出することにより、ウェーハキャリア100がキネマ面31を上面に有するロードポート基台30Aに載置されているか否かを検出するものであるかが、明らかではない点。

4. 検討
上記3.の相違点について検討する。上記第2の2.(1)の認定事項カ.で示したように、引用文献において、「ウェーハキャリア100がキネマ面31に載置され」た状態とは、「V溝13」と「キネマティックピン31A」と適切に係合した状態であることは、技術常識である。そうすると、引用発明の「前記ウェーハキャリア100が前記キネマ面3」に載置されているか否かを感知」するための「センサ」を、「容器が載置台に載置されているか否かを検出する」ものとしたことは、当業者が容易になし得た事項である。

また、本願発明が奏する効果も当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別なものではない。

したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5. むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。

<平成27年7月13日付け回答書記載の補正案について>
請求人は、当審の平成27年5月11日付け審尋に対する平成27年7月13日付け回答書において、補正案を提示している。本来審尋で予定されている手続中に、補正の意志を表明することは求められないところではあるが、以下その提示された補正案について付記する。

当該補正案の請求項1の記載を、補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである(以下、当該補正案の請求項1に係る発明を「補正案発明」という。)。
「【請求項1】
底部と前記底部に設けられた位置決め溝と前記底部に設けられたガスの注入部とを有する、被収容体を収容する容器が載置される載置台と、
前記載置台から突出するように設けられ、前記容器の前記位置決め溝に係合可能な位置決めピンと、
前記ガスを供給するための配管および開閉弁を有し、前記容器の前記注入部を介して前記ガスを前記容器内に注入するためのノズルと、
前記容器の前記位置決め溝に前記位置決めピンが係合した状態で、前記ノズルを前記容器の前記注入部に接触させるように、前記ノズルを駆動することが可能な駆動部と、
前記位置決めピンが前記位置決め溝に適切に係合した状態であるか否かにより、前記容器が前記位置決めピンにより位置決めされて前記載置台に載置されているか否かを検出する着座センサとを具備し、
前記駆動部は、前記容器が位置決めされたことが前記着座センサにより検出された場合、前記ノズルを前記注入部に接触させ、前記ノズルを前記注入部に接触させた後、前記開閉弁が開いて前記ガスの注入を開始する
ガス注入装置。 」(4ページ下から6行?5ページ11行)

そして、補正案発明について、以下のとおり主張している。
「本願発明(当審注:「補正案発明」のこと。以下同様。)では、「位置決め溝に前記位置決めピンが適切に係合」していることを「着座センサ」により検出された場合、つまり、容器が載置台に確実に位置決めされて載置され、注入部が所定のノズル接触位置にあることが検出された場合に、ノズルが注入部に接触した後、ガスが容器内に注入されます。この点、・・・接続部18が上昇して導入口に接続されるタイミングと、バルブ15が開いてガスが導入されるタイミングとが関連しない第1引用例とは異なります。そして、本願発明では、容器が確実に位置決めされた状態で、駆動部は「前記ノズルを前記注入部に接触させた後、前記開閉弁が開いて前記ガスの注入を開始する」ことで、上記のように多量のガスを効率良く迅速に容器内に導入することができ、これにより、ガスを容器外に漏らすことがなく、ガスの使用効率の低下もありません。以上のように、本願発明および第1引用例(当審注:「引用文献」のこと。以下同様。)において、ガスの導入のための最初の契機となる「載置」の概念は、両者の目的から根本的に異なるものであり、第1引用例には、本願発明の構成および作用効果は開示も示唆もされておりません。そして、・・・位置決めされていない状態でのノズルと容器との接触を回避して、迅速に容器内のガスの濃度を高めることを実現する、という本願発明の特有の課題は、第1引用例には記載も示唆もしておらず、本願発明によって初めて解決されます。」(8ページ2ないし18行)

●当審の見解
上記第2の2.(1)摘記事項ウ.の「15は、ウェーハキャリア100内部を加圧するためのクリーンな乾燥高圧気体の供給源に接続されたバルブ、例えば電磁弁である。このバルブ15が開くことにより、供給源から、ウェーハキャリア100内部に乾燥高圧気体が供給される。また、このバルブ15に並列に、減圧弁15Aが備えられており、これによって気体の供給量を調節することができる。」との記載から、引用文献に記載されたものは「ウェーハキャリア100内部」に「クリーンな乾燥高圧気体」を供給するための「バルブ15」を備えるものである。そうすると、引用文献には、上記引用発明において更にバルブ15を備えた発明が記載されている。ここで、引用発明の「接続口18」を「フィルタ14」に接触させる前に、上記「バルブ15」を開いたならば、上記「クリーンな乾燥高圧気体」が「接続口18」から吐出され、「ウェーハキャリア100」の内部に供給されない状態が発生し、かつ、引用文献【図7】の(b)に示すように、「接続口18」が「フィルタ14」に接近するに際して、「接続口18」から吐出される「クリーンな乾燥高圧気体」は、両者の接近を妨げる力を生じせしめるといった不都合が生じるであろうことは、当業者にとって明らかである。
そうすると、バルブ15を備えた引用発明において、バルブ15を開くタイミングを「接続口18」が「フィルタ14」に接触させた後、としたことは、上記十分に予見できる不都合への常識的な対応というべきであって、当業者が容易になし得た事項である。
また、補正案発明の奏する効果も当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものではない。
したがって、補正案発明は、引用文献に記載された発明及び上記従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないと思われ、回答書に提示された補正案の内容は、結論を左右するものではない。
 
審理終結日 2015-12-14 
結審通知日 2015-12-15 
審決日 2015-12-28 
出願番号 特願2010-49077(P2010-49077)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牧 初金丸 治之  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 久保 克彦
渡邊 真
発明の名称 ガス注入装置  
代理人 大森 純一  
代理人 折居 章  

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