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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1311236
審判番号 不服2015-9962  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-28 
確定日 2016-03-08 
事件の表示 特願2012-520133「複数のコンピュータデバイスを操作するためのシステム、方法及びコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月20日国際公開、WO2011/007288、平成24年12月27日国内公表、特表2012-533786、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年7月1日を国際出願日とする出願(パリ条約による優先権主張2009年7月14日、欧州特許庁)であって、平成27年1月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年5月28日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成27年5月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否

1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を
「 【請求項1】
複数のコンピュータデバイスを操作するためのコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは前記コンピュータデバイスのうちの1つと、表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニットとを有し、前記1つのコンピュータデバイスは、
前記表示デバイスの表示領域を複数の表示領域セクションに分割し、前記表示領域セクションのうちの少なくとも1つは少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに関連し、
少なくとも1つの入力デバイスから入力信号を受信し、前記入力信号は前記表示領域内の位置に関連付けられ、
前記少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに、前記位置が前記他のコンピュータデバイスに関連する前記表示領域セクションのうちの1つの中にあることに応じて前記入力信号を与える、
ように構成され、
前記画像作成ユニットが、前記表示デバイス上に表示するための画像成分を合成するように構成される画像合成ユニットであり、前記画像成分が、
前記1つのコンピュータデバイスと少なくとも1つの他のコンピュータデバイス、又は、
複数の他のコンピュータデバイスに関連し、
前記画像合成ユニットが、
ソース信号のセットを受信し、各ソース信号は一致するコンピュータデバイスに関連し、
前記1つのコンピュータデバイスの第1のソース信号からキー情報を決定し、
前記共通ビデオ信号を作るために前記決定されたキー情報に依存して異なる画像ソースのソース信号を切り替えるように構成される、
コンピュータシステム。」
とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。

2.補正の適否
本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニット」について、「前記画像作成ユニットが、前記表示デバイス上に表示するための画像成分を合成するように構成される画像合成ユニットであり、前記画像成分が、前記1つのコンピュータデバイスと少なくとも1つの他のコンピュータデバイス、又は、複数の他のコンピュータデバイスに関連し、前記画像合成ユニットが、ソース信号のセットを受信し、各ソース信号は一致するコンピュータデバイスに関連し、前記1つのコンピュータデバイスの第1のソース信号からキー情報を決定し、前記共通ビデオ信号を作るために前記決定されたキー情報に依存して異なる画像ソースのソース信号を切り替えるように構成される」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)引用文献1-2の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-305917号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、本審決で特に着目した箇所を示す。以下同様。)。

(ア) 段落【0021】-【0025】
「【0021】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像表示システムの構成図を示すブロック図である。
【0022】『 各部の説明 』図1の各ブロックの説明を行う。本実施の形態は、4つの独立した画像ソース(ノート型パソコン等)を1つのモニターに表示し各画像ソースの入出力機器例えば、マウスやキーボード、リモコン、スピーカ等をモニターに表示された画像データと連動して制御できるようにする実施の形態を示す。これら画像ソースは、4つよりさらに多い数でも、また少ない数でも良い。
【0023】31は本表示システムを示している。1-1、1-2、1-3、1-4は画像信号のソース(以下「画像ソース1」と記す)であり、例えばパソコン、ワークステーション、ディジタルテレビ、ビデオ等である。本実施の形態では4つ存在する。2-1、2-2、2-3、2-4は、それぞれ各画像ソース1から出力された画像データを受け取る入力部(以下「入力部2」と記す)である。各入力部2には、受け取る画像データがコンピュータのアナログ信号であれば、A/Dコンバータや画像データをサンプリングするためのPLL(Phase Locked Loop)を備えるようにし、また、受け取る画像データがLVDS(Low Voltage Differential Signaling)等のディジタル信号であれば、その復号器や差動のバッファを備えるようにし、さらにテレビやビデオのコンポジット信号であればそれをR、G、B信号にエンコードするエンコーダを備えるようにすればよい。各入力部2は各画像のソース1から画像データと画像データを受け取るための制御信号、例えば1ラインの同期を取る水平同期信号、1フレームもしくは1フィールドの同期を取る垂直同期信号、1画素をサンプルするクロック信号、有効画像データの転送期間を示すディスプレイイネーブル信号等も同時に受け取る。各入力部2はおのおの独立したタイミングで画像ソースから画像データを受け取る。また入力部2は後述する画像ソース1とのシリアル通信手段を有している。
【0024】3-1、3-2、3-3、3-4は各入力部2で受け取った画像データの表示フォーマット(表示ライン数やドット数、色数)を制御部6の制御に従って変換する表示フォーマット変換部(以下「表示フォーマット変換部3」と記す)、4-1、4-2、4-3、4-4は、独立した4つの画像データを1つの共通したバスに入力するためのバスインタフェース部、5は各バスインタフェース4から出力される画像データや、フレームメモリコントローラ7、重ねあわせデータコントローラ8から出力される画像データを受けると共に、それらからの転送要求を受け、優先順位に基づき画像データ転送を調停するバスコントローラである。
【0025】6は本表示器全体を制御する制御部(制御手段)であり、演算能力を持つCPU、データを一時格納するRAM、制御プログラムを格納するROM、時間を計測するカウンタ、周辺入出力インタフェース等(いずれも不図示)を有している。また、制御部6は論理ロジックのみで構成されていてもよい。制御を行うプログラムはROMに内蔵されていてもよいし、周辺入出力インタフェースを介して外部から転送されてもよい。7はバスコントローラ5の調停によって入力する画像データをフレームメモリ9に適したデータに演算により加工、制御するフレームメモリコントローラである。これはCPUや並列演算が可能なメディアプロセッサであってもよい。9は表示デバイスに描画する画像データを少なくとも1フレーム分貯えるフレームメモリである。フレームメモリ9は複数の階層を有する。8は、表示デバイス13に各入力部2とは別の画像データを表示デバイスに重ねて表示するための重ねあわせデータコントローラ、10は重ねあわせをするデータを格納しておくストアメモリ、11はバス上の画像データをバスコントローラ5の制御に従って入力し、表示駆動コントローラ12に適した表示フォーマットに変換する出力表示フォーマット変換部、12は、表示デバイスを駆動するための表示駆動コントローラである。13は表示デバイスであり、該デバイスはマトリクス電極構造を持つフラットパネル(液晶、プラズマ等)でも、CRTでも、画像を表示するデバイスであれば良い。この表示デバイス13は、1つのデバイスで構成されていても、複数のデバイスで構成されていてもよい。画像ソース1からの画像データはこの表示デバイス13に表示される。」

(イ) 段落【0055】-【0061】
「【0055】図2は、複数の画像ソースが入力された場合の表示デバイス13における表示レイアウトの例を示す図である。
【0056】図2に示したように、画像ソース1-1から入力された第1の画像入力(1-1)が表示部の画面全体に描画されている時に、画像ソース1-2から第2の画像入力(1-2)が入力された場合、その画像(1-1)、(1-2)の表示結果例として、同図(a、b、c、d、e)に示したとおり5通り以上考えられる。それぞれの表示例は、表示フォーマット変換部3-1、3-2の各表示のスケーリングを変化させることと、各階層に優先順位を持つフレームメモリ9に画像データをストアする階層を変更することにより実現できる。
【0057】図2中の(a)の場合は、次のようにした場合である。すなわち、表示フォーマット変換部3-1はスケーリングを行わないで入力部2-1からの画像データをそのままフレームメモリ9の優先順位の2番目の階層に入力する。一方、表示フォーマット変換部3-2は画像ソース1-2からの画像にスケーリングを行い、入力表示ドット、ラインを間引いたり、演算処理により縮小する。そしてフレームメモリ9の優先順位の1番目に入力する。
【0058】同図(b)の場合は、表示フォーマット変換部3-1、3-2ともにスケーリングを行い、2つの画像が重ならないようにした場合である。
【0059】同図(c)、(d)はそれぞれ(a)、(b)の画像(1-1)、(1-2)の条件を反対にしたものである。(e)は、表示フォーマット変換部3-1、3-2ともにスケーリングは行わず、またフレームメモリ9に入力する際はフレームメモリコントローラ7内の演算回路により画像(1-1)、(1-2)の各画像データを少なくとも最小1画素単位で演算し、その結果を、優先順位1番目に入力した場合である。
【0060】上述したように2つ以上の画像データが入力された場合は、その表示方法を表示フォーマット変換部3のスケーリングとフレームメモリ9のストア階層により自由に変えられる。
【0061】この変更制御は、表示ポインタコントローラ21のボタン30を押すことにより受光部20、赤外線データ制御部19の各部分を介して制御部6に図2の(a?e)の表示切り替えを指示することで可能となる。制御部6はその都度、各表示フォーマット変換部3とバスコントローラ5、フレームメモリコントローラ7にパラメータの切り替えを指示する。」

(ウ) 段落【0062】-【0069】
「【0062】『 表示ポインタによる入出力デバイス切り替え制御 』次に、本発明のポイントである、表示ポインタによる画像ソースの入出力デバイスの切り替え方法について説明する。
【0063】表示ポインタコントローラ21には、上述したように、画像ソースの入力デバイスになるジョイスティック(マウス)22、ジョイスティック22の確定ボタンとして機能する制御ボタン23、表示デバイス13に入力画像データと重ねあわせて表示されるポインタを制御する(ポインタ)ジョイステック24及びその確定ボタンとして機能する制御ボタン25で構成される。本実施の形態では、画像ソース1の入力デバイスとしてジョイステックマウスを例示しているが、このほかにキーボード、タブレット等の入力デバイス、液晶ディスプレイ、小型プリンタのような出力デバイスでも良い。
【0064】X、Yの座標の基準を決める初期化を表示デバイス13に表示されている重ねあわせポインタを見ながら行った後、ジョイステック22は、X、Yの座標を、受光部20、赤外線データ制御部19を介して制御部6に送る。制御部6は、表示デバイス上で現在表示している入力画像のウィンドウの頂点4点の座標を各表示フォーマット3でスケーリングを行うときのドット数、ライン数から演算し、常時貯えておく。
【0065】ジョイステック24から送られてきたX、Y座標値は、ある一定期間毎に制御部6に送られ、その座標位置に重ね合わせデータストアメモリ10に格納されたポインタ図形を表示デバイス13に表示させるように、重ねあわせデータを出力表示フォーマット変換11に出力する。この時、画像ソース入出力デバイスの1つであるジョイステック22は画像ソース1-1と受光部20、赤外線データ制御部19、赤外線データ変換部18、FIFOメモリ17、パケット分配制御15、選択部14を介して接続されている。
【0066】また、重ねあわせデータストアメモリ10内のポインタ図形は、各画像ソース1から選択部14、FIFOメモリ付きパケット制御部16、制御部6、バスコントローラ5、重ね合わせデータコントローラ8の各部を経由して書き換えてもよいし、制御部6にあらかじめ備えられたROMからバスコントローラ5、重ね合わせデータコントローラ8を経由して書き換えてもよい。
【0067】ある時ユーザーが、ジョイステック22を画像ソース1-1ではなく画像ソース1-2を制御する入出力デバイスとして使いたい場合には、ユーザーは画像データ(1-2)が表示されている画面にジョイステック24によって描画される重ねあわせデータの図形を移動させ、座標確定用の制御ボタン25を押す。この制御ボタン25が押された情報は受光部20、赤外線データ制御部19を介して制御部6に転送される。制御部6はそのボタン情報を受けとったときのX、Y座標情報とあらかじめわかっている各画像ソース1からの画像データ表示ウィンドウの4つの頂点座標値とを使い演算を行い、表示ポインタジョイスティク24のX、Y座標がどの表示ウィンドウの上にあったかを求め、これにより画像を選択する。
【0068】そして、制御部6は、制御信号を用いて選択部14の接続を一度非接続にした後、ある一定時間後に画像ソース1-2から出力されるシリアルデータ線がパケット分配制御15に接続されるように切り替える。
【0069】この動作により、ホットプラグが可能なシリアルデータプロトコールを用いた周辺デバイスとホストCPU(本実施の形態では、画像ソース1)は、周辺デバイスの接続の再構築が可能になるので、ジョイステック22は画像ソース1-2の入出力デバイス(マウス等)として動作可能になる。一例を挙げれば、USB(Universal Serial Bus)を用いた周辺デバイスは、ホストCPUとの接続時にある決まった周辺デバイスアドレスが割り振られ、また周辺デバイスの特性をホストCPUに転送し、これを受け取ったホストCPUは、接続されている周辺デバイスのアドレスをすべて再構築し、アドレスを設定し直すことによりホットプラグを実現している。」

そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「画像表示システムは、
4つの独立した画像ソースを1つのモニターに表示し各画像ソースの入出力機器例えば、マウスやキーボード、リモコン、スピーカ等をモニターに表示された画像データと連動して制御できるようにするものであり、
画像ソース1-1、1-2、1-3、1-4と、表示システム31と、表示ポイントコントローラ21を備え、
画像ソース1-1、1-2、1-3、1-4は、例えばパソコン、ワークステーション、ディジタルテレビ、ビデオ等であり、
表示システム31は、それぞれ各画像ソース1から出力された画像データを受け取る入力部2-1、2-2、2-3、2-4と、表示フォーマット変換部3-1、3-2、3-3、3-4と、バスインタフェース部4-1、4-2、4-3、4-4と、バスコントローラ5と、演算能力を持つCPU、データを一時格納するRAM、制御プログラムを格納するROM等を有している、制御部6と、フレームメモリコントローラ7と、フレームメモリ9と、表示デバイス13と、を備え、画像ソース1-1、1-2、1-3、1-4からの画像データはこの表示デバイス13に表示され、
画像ソース1-1から入力された第1の画像入力(1-1)が表示部の画面全体に描画されている時に、画像ソース1-2から第2の画像入力(1-2)が入力された場合、
変更制御は、制御部6に(a?e)の表示切り替えを指示することで可能となり、制御部6はその都度、各表示フォーマット変換部3とバスコントローラ5、フレームメモリコントローラ7にパラメータの切り替えを指示し、
(a)の場合は、表示フォーマット変換部3-1はスケーリングを行わないで入力部2-1からの画像データをそのままフレームメモリ9の優先順位の2番目の階層に入力する一方、表示フォーマット変換部3-2は画像ソース1-2からの画像にスケーリングを行い、入力表示ドット、ラインを間引いたり、演算処理により縮小してフレームメモリ9の優先順位の1番目に入力し、
(b)の場合は、表示フォーマット変換部3-1、3-2ともにスケーリングを行い、2つの画像が重ならないようにし、
(c)、(d)はそれぞれ(a)、(b)の画像(1-1)、(1-2)の条件を反対にしたものであり、
(e)は、表示フォーマット変換部3-1、3-2ともにスケーリングは行わず、またフレームメモリ9に入力する際はフレームメモリコントローラ7内の演算回路により画像(1-1)、(1-2)の各画像データを少なくとも最小1画素単位で演算し、その結果を、優先順位1番目に入力するものであり、
表示ポインタコントローラ21は、画像ソースの入力デバイスになるジョイスティック(マウス)22、ジョイスティック22の確定ボタンとして機能する制御ボタン23、表示デバイス13に入力画像データと重ねあわせて表示されるポインタを制御する(ポインタ)ジョイステック24及びその確定ボタンとして機能する制御ボタン25で構成され、
ある時ユーザーが、ジョイステック22を画像ソース1-1ではなく画像ソース1-2を制御する入出力デバイスとして使いたい場合には、ユーザーは画像データ(1-2)が表示されている画面にジョイステック24によって描画される重ねあわせデータの図形を移動させ、座標確定用の制御ボタン25を押し、
この制御ボタン25が押された情報は受光部20、赤外線データ制御部19を介して制御部6に転送され、
制御部6はそのボタン情報を受けとったときのX、Y座標情報とあらかじめわかっている各画像ソース1-1、1-2、1-3、1-4からの画像データ表示ウィンドウの4つの頂点座標値とを使い演算を行い、表示ポインタジョイスティク24のX、Y座標がどの表示ウィンドウの上にあったかを求め、これにより画像を選択し、
制御部6は、制御信号を用いて選択部14の接続を一度非接続にした後、ある一定時間後に画像ソース1-2から出力されるシリアルデータ線がパケット分配制御15に接続されるように切り替え、
この動作により、ホットプラグが可能なシリアルデータプロトコールを用いた周辺デバイスとホストCPU(画像ソース1-1、1-2、1-3、1-4)は、周辺デバイスの接続の再構築が可能になるので、ジョイステック22は画像ソース1-2の入出力デバイス(マウス等)として動作可能になる、
画像表示システム。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-040190号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

(ア) 段落【0001】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される複数の映像(または画像)を切り替えて1台の表示装置(モニタ、スクリーンパネル、プロジェクタなど)に表示する映像切り替えシステムに関する。」

(イ) 段落【0013】-【0020】
「【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態を示すシステム構成図であり、2台のパソコンと1台のモニタ構成により映像を切り替える場合である。
【0014】
映像切り替え機1は、例えばパソコンを利用して構成され、マウスやキーボードからの位置、操作信号入力の受付け機能、モニタへの画像表示機能および外部からの映像入力機能をもつOSとアプリケーションを搭載する。
【0015】
これら機能を有する映像切り替え機1は、LANまたは映像入力ケーブルによって2台のパソコン2A,2Bに接続されてこれらパソコン2A,2Bからの映像出力を並行して取得可能にする。また、映像切り替え機1は、映像出力ケーブルによってモニタ3に接続されて該モニタ3への映像信号出力を可能にする。さらに、映像切り替え機1には操作入力装置としてマウス4とキーボード5が接続される。
【0016】
さらに、映像切り替え機1は、本実施形態の実現のため、以下の映像切り替え機能をもつアプリケーションを搭載する。
【0017】
(1A)モニタの画面表示
画面表示は各パソコン2A、2Bからの映像入力をそれぞれ1画面表示して切り替える表示機能と、図2に示すように、表示画面を2分割し、各表示画面領域には両パソコン2A、2Bからの映像をそれぞれ分割表示する分割表示機能をもつ。なお、境界エリアによる画面分割は等分に限らず、1/3と2/3などに変更可能とするのが好ましい。
【0018】
(1B)キーボード・マウス入力
モニタにパソコン2Aまたは2Bの一方の映像を1画面表示する場合は、当該画面に対してギーボード5またはマウス4による入力操作を可能にする。
【0019】
また、分割画面表示の場合、ギーボードまたはマウス入力を可能にした画面は、当該画面枠を太く表示し画面の濃淡で表し、操作入力と映像との対応付けを容易にする。パソコン2Aの画面領域に対するキーボード・マウス入力有効時の例を図3の(a)に示し、パソコン2Bの画面領域に対するキーボード・マウス入力有効時の例を図3の(b)に示す。
【0020】
(1C)キーボード・マウス入力有効画面切り替え
キーボードまたはマウス入力の有効画面切り替えは、マウスカーソルの移動により切り替える。例えば、図4の(a),(b)に示すように、カーソルがAの画面領域からBの画面領域に移動したときにキーボード・マウス入力有効画面を切り替える。」

(ウ) 段落【0032】-【0034】
「【0032】
(実施形態3)
図16は、本発明の実施形態を示すシステム構成図であり、N台のパソコン2A?2Nと1台のモニタ構成による映像切り替えの場合である。本実施形態の場合は、実施形態とは以下の点で異なる。
【0033】
(3A)モニタの画面表示
画面表示は、図17に示すように、各パソコン2A?2Nからの映像入力をマルチウィンドウ画面で表示し、そのうち選択した1台のパソコンからの映像に対してのみキーボード・マウス入力を有効とする。なお、各パソコンからの映像画面のウィンドウの大きさは変更可能とすると共に、画面の位置の移動も可能とする。
【0034】
(3B)境界エリアによる入力有効画面の移動
各ウィンドウ画面の枠線を境界エリアとし、実施形態1,2と同様に、マウスカーソルが境界エリアに入った次の動作により、キーボード・マウスの切り替えのチェックを行う。」

そうすると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「2台のパソコンと1台のモニタ構成により映像を切り替える、映像切り替えシステムであって、
映像切り替え機1は、例えばパソコンを利用して構成され、マウスやキーボードからの位置、操作信号入力の受付け機能、モニタへの画像表示機能および外部からの映像入力機能をもつOSとアプリケーションを搭載し、
これら機能を有する映像切り替え機1は、LANまたは映像入力ケーブルによって2台のパソコン2A,2Bに接続されてこれらパソコン2A,2Bからの映像出力を並行して取得可能にし、
また、映像切り替え機1は、映像出力ケーブルによってモニタ3に接続されて該モニタ3への映像信号出力を可能にし、
さらに、映像切り替え機1には操作入力装置としてマウス4とキーボード5が接続され、
さらに、映像切り替え機1は、以下の映像切り替え機能をもつアプリケーションを搭載し、
画面表示は各パソコン2A、2Bからの映像入力をそれぞれ1画面表示して切り替える表示機能と、表示画面を2分割し、各表示画面領域には両パソコン2A、2Bからの映像をそれぞれ分割表示する分割表示機能をもち、
ここで、画面表示は、各パソコン2A?2Nからの映像入力をマルチウィンドウ画面で表示してもよく、
分割画面表示の場合、キーボードまたはマウス入力を可能にした画面は、当該画面枠を太く表示し画面の濃淡で表し、操作入力と映像との対応付けを容易にし、
キーボードまたはマウス入力の有効画面切り替えは、マウスカーソルの移動により切り替え、例えば、カーソルがAの画面領域からBの画面領域に移動したときにキーボード・マウス入力有効画面を切り替える、
映像切り替えシステム。」

(2)対比
ア 補正発明と引用発明1との対比

まず、補正発明と引用発明1とを対比する。

(ア) 引用発明1の「例えばパソコン」である「4つの独立した画像ソース(1-1、1-2、1-3、1-4)」と、「表示デバイス13」は、それぞれ、補正発明の「複数のコンピュータデバイス」と、「表示デバイス」に相当する。
引用発明1の「表示システム31」は、「各画像ソースの入出力機器例えば、マウスやキーボード、リモコン、スピーカ等をモニターに表示された画像データと連動して制御できるようにする」から、補正発明の「複数のコンピュータデバイスを操作するためのコンピュータシステム」に相当する。
また、引用発明1の「表示システム31」は、「4つの独立した画像ソースを1つのモニターに表示」するから、補正発明の「前記コンピュータシステムは前記コンピュータデバイスのうちの1つと、表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニットとを有し」ていることと、「前記コンピュータシステムは」、「表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニットとを有し」ている点で共通するといえる。

(イ) 引用発明1の「表示システム31」が、「画像ソース1-1から入力された第1の画像入力(1-1)」及び「画像ソース1-2から第2の画像入力(1-2)が入力された場合」、一方の画像入力を「演算処理により縮小して」他方の画像入力より優先して表示したり、「2つの画像が重ならないように」表示したり、「演算回路により画像(1-1)、(1-2)の各画像データを少なくとも最小1画素単位で演算し、その結果を」表示することは、補正発明の「前記1つのコンピュータデバイスは」、「前記表示デバイスの表示領域を複数の表示領域セクションに分割し、前記表示領域セクションのうちの少なくとも1つは少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに関連し」ていることと、「前記表示デバイスの表示領域を複数の表示領域セクションに分割し、前記表示領域セクションのうちの少なくとも1つは少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに関連し」ている点で共通するといえる。

(ウ) 引用発明1の「表示システム31」(補正発明の「画像作成ユニット」(「画像合成ユニット」)に相当。)が、「ある時ユーザーが、ジョイステック22を画像ソース1-1ではなく画像ソース1-2を制御する入出力デバイスとして使いたい場合には」、「ユーザーは画像データ(1-2)が表示されている画面にジョイステック24によって描画される重ねあわせデータの図形を移動させ、座標確定用の制御ボタン25を押し」、「表示ポインタジョイスティク24のX、Y座標がどの表示ウィンドウの上にあったかを求め、これにより画像を選択」することで、「制御部6は、制御信号を用いて選択部14の接続を一度非接続にした後、ある一定時間後に画像ソース1-2から出力されるシリアルデータ線がパケット分配制御15に接続されるように切り替え、この動作により、……ジョイステック22は画像ソース1-2の入出力デバイス(マウス等)として動作可能になる」ことは、補正発明の「前記1つのコンピュータデバイスは」、「少なくとも1つの入力デバイスから入力信号を受信し、前記入力信号は前記表示領域内の位置に関連付けられ、前記少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに、前記位置が前記他のコンピュータデバイスに関連する前記表示領域セクションのうちの1つの中にあることに応じて前記入力信号を与える」ことと、「少なくとも1つの入力デバイスから入力信号を受信し、前記入力信号は前記表示領域内の位置に関連付けられ、前記少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに、前記入力信号を与える」点で共通するといえる。

(エ) 引用発明1の「表示システム31」は、「4つの独立した画像ソースを1つのモニターに表示」するから、補正発明の「前記表示デバイス上に表示するための画像成分を合成するように構成される画像合成ユニット」にも相当するといえる。
よって、上記(イ)のように、引用発明1の「表示システム31」が、「画像ソース1-1から入力された第1の画像入力(1-1)」と「画像ソース1-2から第2の画像入力(1-2)が入力された場合」、一方の画像入力を「演算処理により縮小して」他方の画像入力より優先して表示したり、「2つの画像が重ならないように」表示したり、「演算回路により画像(1-1)、(1-2)の各画像データを少なくとも最小1画素単位で演算し、その結果を」表示することは、「前記画像作成ユニットが、前記表示デバイス上に表示するための画像成分を合成するように構成される画像合成ユニットであり、前記画像成分が、前記1つのコンピュータデバイスと少なくとも1つの他のコンピュータデバイス、又は、複数の他のコンピュータデバイスに関連し」ていること、及び、「前記画像合成ユニットが、ソース信号のセットを受信し、各ソース信号は一致するコンピュータデバイスに関連し」ていることにも相当するといえる。

したがって、補正発明と引用発明1との一致点・相違点は次のとおりである。

<一致点>
「複数のコンピュータデバイスを操作するためのコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニットとを有し、
前記表示デバイスの表示領域を複数の表示領域セクションに分割し、前記表示領域セクションのうちの少なくとも1つは少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに関連し、
少なくとも1つの入力デバイスから入力信号を受信し、前記入力信号は前記表示領域内の位置に関連付けられ、
前記少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに、前記入力信号を与える、
ように構成され、
前記画像作成ユニットが、前記表示デバイス上に表示するための画像成分を合成するように構成される画像合成ユニットであり、前記画像成分が、
前記1つのコンピュータデバイスと少なくとも1つの他のコンピュータデバイス、又は、
複数の他のコンピュータデバイスに関連し、
前記画像合成ユニットが、
ソース信号のセットを受信し、各ソース信号は一致するコンピュータデバイスに関連し、ているように構成される、
コンピュータシステム。」

<相違点A>
「コンピュータシステム」が、補正発明では、「前記コンピュータデバイスのうちの1つと、表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニットとを有し」ているのに対して、引用発明1の「表示システム31」は、「前記コンピュータデバイスのうちの1つ」を有するものではなく、また、入力信号を授受する主体に関して、補正発明では、「前記1つのコンピュータデバイス」が、「少なくとも1つの入力デバイスから入力信号を受信し、前記入力信号は前記表示領域内の位置に関連付けられ」ると共に、「前記少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに、前記位置が前記他のコンピュータデバイスに関連する前記表示領域セクションのうちの1つの中にあることに応じて前記入力信号を与える」のに対して、引用発明1では、「表示システム31」(補正発明の「画像作成ユニット」(「画像合成ユニット」)に相当。)が、ジョイスティック22(本願発明の「入力デバイス」に相当。)から入力信号を受信して、画像ソース1-2(本願発明の「他のコンピュータデバイス」に相当。)に入力信号を与えるものであって、引用発明1における「画像ソース1-1」等は、ジョイステック22からの入力信号を受信して、受信した入力信号を、他の画像ソースに与えるものではない点。

<相違点B>
表示領域セクションの選択に用いる手段に関して、補正発明では、入力手段(例えばマウス)が関連付けられている、表示領域内の「前記位置が前記他のコンピュータデバイスに関連する前記表示領域セクションのうちの1つの中にあることに応じて」、すなわち「入力手段」によって選択を行うのに対して、引用発明1では、「画像ソースの入力デバイスになるジョイスティック(マウス)22」と別に設けられた、「ジョイステック24」を用いて、「ユーザーは画像データ(1-2)が表示されている画面にジョイステック24によって描画される重ねあわせデータの図形を移動させ、座標確定用の制御ボタン25を押し」、「表示ポインタジョイスティク24のX、Y座標がどの表示ウィンドウの上にあったかを求め、これにより画像を選択し」、すなわち、入力装置(ジョイスティック22)を表示領域セクションの選択に用いていない点。

<相違点C>
異なるソース信号を切り替える信号処理に関して、補正発明の「前記画像合成ユニット」は、「前記1つのコンピュータデバイスの第1のソース信号からキー情報を決定し、前記共通ビデオ信号を作るために前記決定されたキー情報に依存して異なる画像ソースのソース信号を切り替えるように構成される」のに対して、引用発明1は、「キー情報」を用いるものではない点。


イ 補正発明と引用発明2との対比

次に、補正発明と引用発明2とを対比する。

(ア) 引用発明2の「2台のパソコン2A,2B」と、「モニタ3」は、それぞれ、補正発明の「複数のコンピュータデバイス」と、「表示デバイス」に相当する。
引用発明2の「映像切り替え機1」は、「操作入力装置としてマウス4とキーボード5が接続され」、「キーボードまたはマウス入力の有効画面切り替えは、マウスカーソルの移動により切り替え、例えば、カーソルがAの画面領域からBの画面領域に移動したときにキーボード・マウス入力有効画面を切り替える」から、補正発明の「複数のコンピュータデバイスを操作するためのコンピュータシステム」に相当する。
また、引用発明2の「映像切り替え機1」は、「表示画面を2分割し、各表示画面領域には両パソコン2A、2Bからの映像をそれぞれ分割表示する分割表示機能をも」つから、補正発明の「前記コンピュータシステムは前記コンピュータデバイスのうちの1つと、表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニットとを有し」ていることと、「前記コンピュータシステムは」、「表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニットとを有し」ている点で共通するといえる。

(イ) 引用発明2の「映像切り替え機1」が、「表示画面を2分割し、各表示画面領域には両パソコン2A、2Bからの映像をそれぞれ分割表示する分割表示機能をも」つことは、補正発明の「前記1つのコンピュータデバイスは」、「前記表示デバイスの表示領域を複数の表示領域セクションに分割し、前記表示領域セクションのうちの少なくとも1つは少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに関連する」ことと、「前記表示デバイスの表示領域を複数の表示領域セクションに分割し、前記表示領域セクションのうちの少なくとも1つは少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに関連し」ている点で共通するといえる。

(ウ) 引用発明2の「映像切り替え機1」が、「マウスやキーボードからの位置、操作信号入力の受付け機能……をもつOSとアプリケーションを搭載し」、「キーボードまたはマウス入力の有効画面切り替えは、マウスカーソルの移動により切り替え、例えば、カーソルがAの画面領域からBの画面領域に移動したときにキーボード・マウス入力有効画面を切り替える」ことは、補正発明の「前記1つのコンピュータデバイスは」、「少なくとも1つの入力デバイスから入力信号を受信し、前記入力信号は前記表示領域内の位置に関連付けられ、前記少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに、前記位置が前記他のコンピュータデバイスに関連する前記表示領域セクションのうちの1つの中にあることに応じて前記入力信号を与える」ことと、「少なくとも1つの入力デバイスから入力信号を受信し、前記入力信号は前記表示領域内の位置に関連付けられ、前記少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに、前記位置が前記他のコンピュータデバイスに関連する前記表示領域セクションのうちの1つの中にあることに応じて前記入力信号を与える」点で共通するといえる。

(エ) 引用発明2の「映像切り替え機1」は、「両パソコン2A、2Bからの映像をそれぞれ分割表示する分割表示機能をも」つから、補正発明の「前記表示デバイス上に表示するための画像成分を合成するように構成される画像合成ユニット」にも相当する。
よって、上記(イ)のように、引用発明2の「映像切り替え機1」が、「表示画面を2分割し、各表示画面領域には両パソコン2A、2Bからの映像をそれぞれ分割表示する分割表示機能をも」つことは、「前記画像作成ユニットが、前記表示デバイス上に表示するための画像成分を合成するように構成される画像合成ユニットであり、前記画像成分が、前記1つのコンピュータデバイスと少なくとも1つの他のコンピュータデバイス、又は、複数の他のコンピュータデバイスに関連し」ていること、及び、「前記画像合成ユニットが、ソース信号のセットを受信し、各ソース信号は一致するコンピュータデバイスに関連し」ていることにも相当するといえる。

したがって、補正発明と引用発明2との一致点・相違点は次のとおりである。

<一致点>
「複数のコンピュータデバイスを操作するためのコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニットとを有し、
前記表示デバイスの表示領域を複数の表示領域セクションに分割し、前記表示領域セクションのうちの少なくとも1つは少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに関連し、
少なくとも1つの入力デバイスから入力信号を受信し、前記入力信号は前記表示領域内の位置に関連付けられ、
前記少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに、前記位置が前記他のコンピュータデバイスに関連する前記表示領域セクションのうちの1つの中にあることに応じて前記入力信号を与える、
ように構成され、
前記画像作成ユニットが、前記表示デバイス上に表示するための画像成分を合成するように構成される画像合成ユニットであり、前記画像成分が、
前記1つのコンピュータデバイスと少なくとも1つの他のコンピュータデバイス、又は、
複数の他のコンピュータデバイスに関連し、
前記画像合成ユニットが、
ソース信号のセットを受信し、各ソース信号は一致するコンピュータデバイスに関連し、ているように構成される、
コンピュータシステム。」

<相違点A’>
「コンピュータシステム」が、補正発明では、「前記コンピュータデバイスのうちの1つと、表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニットとを有し」ているのに対して、引用発明2の「映像切り替え機1」は、「前記コンピュータデバイスのうちの1つ」を有するものではなく、また、入力信号を授受する主体に関して、補正発明では、「前記1つのコンピュータデバイス」が、「少なくとも1つの入力デバイスから入力信号を受信し、前記入力信号は前記表示領域内の位置に関連付けられ」ると共に、「前記少なくとも1つの他のコンピュータデバイスに、前記位置が前記他のコンピュータデバイスに関連する前記表示領域セクションのうちの1つの中にあることに応じて前記入力信号を与える」のに対して、引用発明2では、「映像切り替え機1」に「操作入力装置としてマウス4とキーボード5が接続され」ており、「映像切り替え機1」が「マウスやキーボードからの位置、操作信号入力の受付け機能」を備えて、「例えば、カーソルがAの画面領域からBの画面領域に移動したときにキーボード・マウス入力有効画面を切り替える」、すなわち、「映像切り替え機1」が入力信号をパソコンに与えるものであって、引用発明2における「パソコン2A」(補正発明の「前記1つのコンピュータデバイス」に相当。)は、操作入力装置としてのマウス4とキーボード5から入力信号を受信して、受信した入力信号を、他のパソコンに与えるものではない点。

<相違点C’>
異なるソース信号を切り換える信号処理に関して、補正発明の「前記画像合成ユニット」は、「前記1つのコンピュータデバイスの第1のソース信号からキー情報を決定し、前記共通ビデオ信号を作るために前記決定されたキー情報に依存して異なる画像ソースのソース信号を切り替えるように構成される」のに対して、引用発明2は、「キー情報」を用いるものではない点。

(3)判断
ア 引用発明1について
<相違点A>について
複数のコンピュータデバイスを操作するためのコンピュータシステムであって、前記コンピュータデバイスのうちの1つと、表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニットとを有したコンピュータシステムにおいて、「前記1つのコンピュータデバイス」が、入力デバイスから入力信号を受信して、受信した入力信号を、他のコンピュータデバイスに与えることは、引用文献1に記載や示唆はなく、周知技術とも言えないから、上記相違点Aに係る構成は、引用発明1に基づいて、容易に想到できたものであるとはいえない。

<相違点C>について
前置審査で引用された、特開2003-29732号公報(段落【0001】、【0011】、図2)には、パソコン画面とビデオ画面とを合成する画像オーバレイ装置において、パソコン画面の特定の色(クロマキ色)についてのみビデオ画像をオーバレイするための構成が記載され、特開平11-313339号公報(段落【0001】、【0035】-【0041】、図2-図4)には、コンピュータのグラフィックス画像信号と動画像信号とを合成してTVに表示する表示制御装置において、グラフィック画像データがクロマキーカラーに一致した場合には動画像データを選択するための構成が記載されるように、コンピュータ画像と動画像とを合成する技術において、第1のソース信号からキー情報を決定し、共通ビデオ信号を作るために前記決定されたキー情報に依存して異なる画像ソースのソース信号を切り換えることは、「クロマキー」などの名称で周知の技術である。
しかし、引用発明1に開示された「複数の画像の合成」は、具体的には、制御部6の指示によって、一方の画像の画面全体をスケーリング(縮小)してから、他方の画面に重ねて表示するもの(引用発明1の(a)、(c))、又は、両画面を並べて表示するもの(引用発明1の(b)、(d))、あるいは、フレームメモリコントローラ7内の演算回路が、2つの画面を「画素単位で演算」合成するもの(引用発明1の(e))、すなわち、原則として2つのコンピュータ画像の「画面単位」での合成をするものにおいて、さらに両画面の「画素単位の演算」による合成を可能としたものであって、このような引用発明1において、コンピュータ画像と動画像との合成技術における、1方の画面から決定されたキー情報によって画像ソース信号間の切り替えを制御することで、共通ビデオ信号を作る、上記周知の技術を採用する動機付けはない。

したがって、補正発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 引用発明2について
<相違点A’>について
上記アの「<相違点A>について」と同様の理由により、複数のコンピュータデバイスを操作するためのコンピュータシステムであって、前記コンピュータデバイスのうちの1つと、表示デバイス用の共通ビデオ信号を生成するための画像作成ユニットとを有したコンピュータシステムにおいて、「前記1つのコンピュータデバイス」が、入力デバイスから入力信号を受信して、受信した入力信号を、他のコンピュータデバイスに与えることは、引用文献2に記載や示唆はなく、周知技術とも言えないから、上記相違点A’に係る構成は、引用発明2に基づいて、容易に想到できたものであるとはいえない。

<相違点C’>について
上記アの「<相違点C>について」と同様の理由により、引用発明2に開示された「複数の画像の合成」は、具体的には、映像切り替え機1の指示によって、「両パソコン2A、2Bからの映像をそれぞれ分割表示する分割表示」、又は、「各パソコン2A?2Nからの映像入力をマルチウィンドウ画面で表示」するもの、すなわち、2つのコンピュータ画像の「画面単位」での合成をするものであって、このような引用発明2において、コンピュータ画像と動画像とを合成する技術における、1方の画面から決定されたキー情報によって画像ソース信号間の切り替えを制御することで、共通ビデオ信号を作る、周知の技術を採用する動機付けはない。

したがって、補正発明は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-12に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-02-23 
出願番号 特願2012-520133(P2012-520133)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 572- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 桜井 茂行
稲葉 和生
発明の名称 複数のコンピュータデバイスを操作するためのシステム、方法及びコンピュータプログラム  
代理人 五十嵐 貴裕  
代理人 津軽 進  
代理人 笛田 秀仙  

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