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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G03B
管理番号 1311245
審判番号 無効2014-800197  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-11-26 
確定日 2016-02-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第5635773号発明「立体投影用の偏光変換システム、投影システムおよび立体画像投影方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第5635773号(以下「本件特許」という。)発明の請求項1ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32に係る発明についての特許を無効とすることを求める事案である。
なお、本件特許の請求項5、6、8、11、15、21、22及び24に係る発明についての特許に対する審判請求は、口頭審理期日において取り下げられた。

第2 手続の経緯
1 本件特許の登録までの経緯
平成18年 9月29日 優先権主張の日(米国)
平成19年 4月10日 優先権主張の日(米国)
平成19年 7月19日 優先権主張の日(米国)
平成19年 9月28日 出願(特願2009-530647)
平成26年10月24日 設定登録

2 本件無効審判の経緯
平成26年11月26日 審判請求書
平成27年 2月10日 手続補正書
(審判請求書の全文補正。以下、当該手続補正
書により補正された審判請求書を「審判請求
書」という。)
平成27年 5月18日 審判事件答弁書
平成27年 6月15日 審理事項通知書
平成27年 8月19日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
(以下「被請求人陳述要領書」という。)
平成27年 8月20日 口頭審理陳述要領書(請求人)
(以下「請求人陳述要領書」という。)
平成27年 9月 3日 口頭審理期日

第3 当事者の主張の概要
以下、本件特許の請求項1に係る発明を「本件特許発明1」といい、同様に、本件特許の請求項2ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32に係る発明を「本件特許発明2」ないし「本件特許発明4」、「本件特許発明7」、「本件特許発明9」、「本件特許発明10」、「本件特許発明12」ないし「本件特許発明14」、「本件特許発明16」ないし「本件特許発明20」、「本件特許発明23」及び「本件特許発明25」ないし「本件特許発明32」というとともに、これらの発明を総称して、「本件特許発明」ということにする。
なお、審判請求書に頁番号が付されていないため、審判請求書の記載箇所を特定する際には、その1枚目が1頁とされ、以下、順に頁番号が付加された(最終枚目は81頁となる。)ものとして示すことにする。

1 請求人の主張の概要
(1)無効理由(審判請求書及び請求人陳述要領書)
請求人は、以下の無効理由1、2及び4を主張している。なお、無効理由3は撤回された(請求人陳述要領書3頁)。

ア 無効理由1
(ア)本件特許発明1ないし4、9、10、12、14、17ないし20、23及び26ないし31は、甲第1号証に記載された発明、甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証に記載された発明及び甲第12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(理由1)。(審判請求書51?53・60?64・72?79頁、請求人陳述要領書2?4頁)

a 本件特許発明1について
(a)甲第1号証は、
「プロジェクタレンズからランダム偏光光束を受け取り、第1偏光状態(SOP)を有する第1光束を第1光路へ方向付け、第2SOPを有する第2光束を第2光路へ方向付ける、偏光ビームスプリッタ(PBS)と、
前記第2光路上に配置され、前記第2SOPを前記第1SOPに変換する、偏光回転子と、
前記第2光路上であって前記偏光回転子の後ろに配置され、前記偏光回転子からの前記第1SOPを有する第2光束を反射する反射器と、
前記反射器は、前記偏光回転子からの前記第1SOPを有する第2光束を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、当該偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路における第2光束を方向付ける、
偏光変換システム。」
を開示又は示唆する。(審判請求書51・60?63頁)
ここで、甲第1号証の図2は、偏光スプリッタ(35a)を通過した第1の光と偏光スプリッタ(35a)で反射された第2の光とが素子(21R)にて合流することを明確に示しており、この合流光は投影スクリーンに投影されるところ、本件特許発明の「前記第1光路の第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、」「前記第2光路の第2光束を方向付ける」との特定事項は、「前記第1光路の第1光束」の投影スクリーン上の照射領域全体と「前記第2光路の第2光束」の投影スクリーン上の照射領域全体とが一致する態様を含んでいるから、甲第1号証の反射器(36a)は、「第2光束を、投影スクリーン上であって第1光束と略同様の位置へと方向付ける」ものということができる。(審判請求書61頁、請求人陳述要領書2頁)
そして、甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証は、「前記第1光路上、および前記第2光路上であって前記反射器の後ろに配置され、前記第1光路から前記第1光束を、前記第2光路から前記第1SOPを有する第2光束を、それぞれ受け取り、当該第1光束および当該第1SOPを有する第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力SOPおよび第2出力SOPのうちのいずれか一方に選択的に変換する偏光スイッチ」を示唆する。(審判請求書51?53・62?63頁)
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書60?63頁)

(b)甲第12号証は、「前記反射器は、前記偏光回転子からの前記第1SOPを有する第2光束を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、当該偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路における第2光束を方向付ける」との構成を開示する。
したがって、甲第1号証に記載された発明及び甲第12号証に基づいて、上記構成を得ることは当業者が容易に想到し得たことでもある。(審判請求書63?64頁)

b 本件特許発明2ないし4、9、10、12、14、17ないし20、23及び26ないし31について
上記aと同様に、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書72?79頁)

(イ)本件特許発明7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証に記載された発明、甲第12号証に記載された発明及び周知技術(甲第7号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(理由1-1)。
すなわち、鏡を、光路を増加又は減少する手段として提供することは、この技術分野において周知である(甲第7号証)。(審判請求書74?75頁)

(ウ)本件特許発明13、16、25及び32は、甲第1号証に記載された発明、甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証に記載された発明、甲第12号証に記載された発明及び周知技術(甲第8号証ないし甲第11号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(理由1-2)。
すなわち、傾斜可能鏡を用いて、鏡で反射された像のアライメントを変えることができることは周知である(甲第8号証ないし甲第11号証)。(審判請求書76・77?79頁)

イ 無効理由2
(ア)本件特許発明1ないし4、9、12、17ないし20及び26ないし30は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(理由2)。(審判請求書53?55・64?66・72?79頁、請求人陳述要領書2?4頁)

a 本件特許発明1について
甲第3号証は、
「プロジェクタレンズからランダム偏光光束を受け取り、第1偏光状態(SOP)を有する第1光束を第1光路へ方向付け、第2SOPを有する第2光束を第2光路へ方向付ける、偏光ビームスプリッタ(PBS)と、
前記第2光路上に配置され、前記第2SOPを前記第1SOPに変換する、偏光回転子と、
前記第2光路上であって前記偏光回転子の後ろに配置され、前記偏光回転子からの前記第1SOPを有する第2光束を反射する反射器と、
前記第1光路上、および前記第2光路上であって前記反射器の後ろに配置され、前記第1光路から前記第1光束を、前記第2光路から前記第1SOPを有する第2光束を、それぞれ受け取り、当該第1光束および当該第1SOPを有する第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力SOPおよび第2出力SOPのうちのいずれか一方に選択的に変換する偏光スイッチと、
を備え、
前記反射器は、前記偏光回転子からの前記第1SOPを有する第2光束を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、当該偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路における第2光束を方向付ける、
偏光変換システム。」を開示又は示唆する。
したがって、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書53?55・64?66頁)

b 本件特許発明2ないし4、9、12、17ないし20及び26ないし30について
上記aと同様に、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書72?79頁)

(イ)本件特許発明7は、甲第3号証に記載された発明及び周知技術(甲第7号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(理由2-1)。
すなわち、鏡を、光路を増加又は減少する手段として提供することは、この技術分野において周知である(甲第7号証)。(審判請求書74?75頁)

(ウ)本件特許発明10、14、23及び31は、甲第3号証に記載された発明及び甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(理由2-2)。
すなわち、甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証は、出力偏光を画像フレームと同期することを開示している。(審判請求書75・76・78・79頁)

(エ)本件特許発明13、16、25及び32は、甲第3号証に記載された発明及び周知技術(甲第8号証ないし甲第11号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(理由2-3)。
すなわち、傾斜可能鏡を用いて、鏡で反射された像のアライメントを変えることができることは周知である(甲第8号証ないし甲第11号証)。(審判請求書76・77?79頁)

ウ 無効理由4
(ア)本件特許発明1ないし4、9、10、12、14、17ないし20、23及び26ないし31は、甲第5号証に記載された発明及び甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(理由4)。(審判請求書59?60・70?71・72?79頁、請求人陳述要領書2?4頁)

a 本件特許発明1について
本件特許発明1は、甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証に記載された発明による変更を加えられた甲第5号証に記載された発明から自明である。(審判請求書59?60・70?71頁)

b 本件特許発明2ないし4、9、10、12、14、17ないし20、23及び26ないし31について
上記aと同様に、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書72?79頁)

(イ)本件特許発明7は、甲第5号証に記載された発明、甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証に記載された発明及び周知技術(甲第7号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(理由4-2)。
すなわち、鏡を、光路を増加又は減少する手段として提供することは、この技術分野において周知である(甲第7号証)。(審判請求書74?75頁)

(ウ)本件特許発明13、16、25及び32は、甲第5号証に記載された発明、甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証に記載された発明及び周知技術(甲第8号証ないし甲第11号証参照。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(理由4-3)。
すなわち、傾斜可能鏡を用いて、鏡で反射された像のアライメントを変えることができることは周知である(甲第8号証ないし甲第11号証)。(審判請求書76・77?79頁)

(2)証拠方法
請求人は、以下の証拠方法を提出している。なお、甲第4号証及び甲第6号証は、上記口頭審理期日において撤回された。

ア 甲第1号証:特開2006-227361号公報及びその翻訳文
イ 甲第2-(1)号証:米国特許第4792850号明細書及びその翻訳文
甲第2-(2)号証:米国特許第4792850号明細書についての「CERTIFICATE OF CORRECTION」(訂正証明書)と題する書面及びその翻訳文
ウ 甲第3号証:米国特許第6206532号明細書及びその翻訳文
エ 甲第5号証:米国特許第6190013号明細書及びその翻訳文
オ 甲第7号証:国際公開第2005/069058号及びその翻訳文
カ 甲第8号証:米国特許第3208337号明細書及びその翻訳文
キ 甲第9号証:英国特許出願公告第672012号明細書及びその翻訳文
ク 甲第10号証:米国特許第5225861号明細書及びその翻訳文
ケ 甲第11号証:米国特許出願公開第2004/0263806号明細書及びその翻訳文
コ 甲第12号証:米国特許第6793341号明細書及びその翻訳文

2 被請求人の主張の概要
(1)無効理由に対する反論(審判事件答弁書、被請求人陳述要領書及び第1回口頭審理調書)
ア 無効理由1について
本件特許発明1ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32は、甲第1号証、甲第2-(1)号証及び甲第2-(2)号証に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。(審判事件答弁書3?12・23?38頁、被請求人陳述要領書3?12・24?27頁、第1回口頭審理調書)

a 本件特許発明19について
(a)本件特許発明の「投影スクリーン上に投影される」「光束」とは、投影スクリーン上の1像点を形成するための光束を意味する。(被請求人陳述要領書3?4頁)
他方、甲第1号証に記載された発明において、R光用照明装置10Rから光が出射される段階では、スクリーンに投影すべき画像光すら、まだ形成されておらず、甲第1号証における「第1の光」及び「第2の光」は、「投影スクリーン上の1像点を形成するための光束」ではない。したがって、上記の「第1の光」及び「第2の光」は、本件特許発明19の「第1光束」及び「第2光束」に該当しない。(被請求人陳述要領書6頁)
甲第12号証には、「投影スクリーン上の1像点を形成するための光束」のうち第2光束を、投影スクリーン上であって、当該光束の第1光束と略同様の位置へと方向付けるという思想について、記載も示唆もされていない。(被請求人陳述要領書8頁)

(b)甲第1号証に記載されたR光用照明装置10Rのビーム分割に関する概念と、甲第2-(1)号証に記載されたpush-pull modulator 20とは、技術分野も課題も異なることから、両者を組み合わせる動機付けが存在しない。(被請求人陳述要領書10頁)

(c)したがって、本件特許発明19は、当業者が甲第1号証、甲第2-(1)号証、甲第2-(2)号証及び甲第12号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(被請求人陳述要領書12頁)

b 本件特許発明17及び18について
上記aと同様の理由により、本件特許発明17及び18は、当業者が甲第1号証、甲第2-(1)号証、甲第2-(2)号証及び甲第12号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(被請求人陳述要領書26?27頁、第1回口頭審理調書)

c 本件特許発明1について
(a)甲第1号証に記載された偏光変換光学素子33の偏光分離面35a(請求人は、当該構成が、本件特許発明1の「偏光ビームスプリッタ」に相当すると主張する。)は、投射レンズ41の前段に配されているので、甲第1号証は、本件特許発明1の「プロジェクタレンズからランダム偏光を受け取り」との特定事項を開示していないし、示唆もない。(審判事件答弁書5頁)

(b)また、甲第1号証に記載された発明は、「第2光束を、投影スクリーン上であって第1光束と略同様の位置へと方向付ける」ものではない。(審判事件答弁書6?8頁)
甲第12号証にも、「第2光束を反射することにより、」「前記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、」「第2光束を方向付ける」との構成は開示されていないし、示唆もない。(審判事件答弁書8?9頁)

(c)したがって、本件特許発明1は、当業者が、甲第1号証、甲第2-(1)号証、甲第2-(2)号証及び甲第12号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(審判事件答弁書12頁)

d 本件特許発明2ないし4、7、9、10、12ないし14、16、20、23及び25ないし32について
上記cと同様の理由により、これらの本件特許発明は、当業者が甲第1号証、甲第2-(1)号証、甲第2-(2)号証及び甲第12号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(審判事件答弁書23?25・30?38頁)

イ 無効理由2について
本件特許発明1ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32は、甲第3号証、甲第2-(1)号証及び甲第2-(2)号証に記載された発明並びに周知技術に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。(審判事件答弁書12?17・23?38頁、被請求人陳述要領書13?16・27?29頁、第1回口頭審理調書)

a 本件特許発明1について
(a)甲第3号証のpolarizing means 3のpolarizing cube beam splitter 5(請求人は、当該構成が、本件特許発明1の「偏光ビームスプリッタ」に相当すると主張する。)は、converging lens 31(本件特許発明1の「プロジェクタレンズ」に相当する。)の前段に配されており、converging lens 31からの光を受け取っていないので、甲第3号証は、本件特許発明1の「プロジェクタレンズからランダム偏光を受け取り」との特定事項を開示していない。(審判事件答弁書14頁)

(b)甲第3号証の図1に示されているとおり、first transmitted p component light beam 20及びdeflected s component light beam 21の進行方向は、final image light beam 32においても平行である。そのため、甲第3号証に記載された発明において、first transmitted p component light beam 20及びdeflected s component light beam 21は、スクリーン上の異なる位置に投射される。したがって、甲第3号証には、本件特許発明1の「第2光束を反射することにより、」「前記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、」「第2光束を方向付ける」との構成は開示されていないし、示唆もない。(審判事件答弁書15?16頁)

(c)甲第3号証に記載された発明において、液晶セルのアレイ17は、画像を形成するために、各画素を形成する液晶セルのそれぞれを制御する。つまり、液晶セルのアレイ17は、polarizing cube beam splitter 5を通過した第1光束の一部、及び/又は、mirror 9により反射された第2光束の一部の偏光状態を変換しているにすぎず、本件特許発明1の「当該第1光束および当該第1SOPを有する第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力SOPおよび第2出力SOPのうちのいずれか一方に選択的に変換する」ことは行っておらず、示唆もない。(審判事件答弁書16?17頁)

(d)したがって、本件特許発明1は、当業者が甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(審判事件答弁書17頁)

b 本件特許発明2ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32について
上記aと同様に、これらの本件特許発明は、当業者が甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(審判事件答弁書23?38頁、被請求人陳述要領書13?16・27?29頁、第1回口頭審理調書)

ウ 無効理由4について
本件特許発明1ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32は、甲第5号証、甲第2-(1)号証及び甲第2-(2)号証に記載された発明並びに周知技術に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。(審判事件答弁書17?23・23?38頁、被請求人陳述要領書16?20・29?32頁、第1回口頭審理調書)

a 本件特許発明1について
(a)甲第5号証のpolarized beam splitter PBS(請求人は、当該構成が、本件特許発明1の「偏光ビームスプリッタ」に相当すると主張する。)は、projection lens 22(本件特許発明1の「プロジェクタレンズ」に相当する。)からの光を受け取っていないので、甲第5号証は、本件特許発明1の「プロジェクタレンズからランダム偏光を受け取り」との特定事項を開示していない。(審判事件答弁書19頁)

(b)甲第5号証の図10によれば、multilayered film 3により反射されたs-偏光のビームは、multilayered film 3を通過したp偏光のビームの進行方向と平行な向きに反射される。さらに、甲第5号証には、光源から照射された後、multilayered film 3により反射されたs-偏光のビームを、multilayered film 3を通過したp偏光のビームがスクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと方向づけることについて、記載も示唆もされていない。そのため、甲第5号証に記載された発明によれば、multilayered film 3により反射されたs-偏光のビームと、multilayered film 3を通過したp偏光のビームとは、スクリーン上の異なる位置に投影される。したがって、甲第5号証には、本件特許発明1の「第2光束を反射することにより、」「前記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、」「第2光束を方向付ける」との構成は開示されていない。(審判事件答弁書21頁)

(c)したがって、本件特許発明1は、当業者が甲第5号証、甲第2-(1)号証及び甲第2-(2)号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(審判事件答弁書23頁)

b 本件特許発明2ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32について
上記aと同様に、これらの本件特許発明は、当業者が甲第5号証、甲第2-(1)号証及び甲第2-(2)号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(審判事件答弁書23?38頁、被請求人陳述要領書16?20・29?32頁、第1回口頭審理調書)

(2)証拠方法
被請求人は証拠方法を提出していない。

第4 当審の判断
1 本件特許発明
本件特許発明1ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32に記載された次のとおりのものである。

(1)本件特許発明1
「プロジェクタレンズからランダム偏光光束を受け取り、第1偏光状態(SOP)を有する第1光束を第1光路へ方向付け、第2SOPを有する第2光束を第2光路へ方向付ける、偏光ビームスプリッタ(PBS)と、
前記第2光路上に配置され、前記第2SOPを前記第1SOPに変換する、偏光回転子と、
前記第2光路上であって前記偏光回転子の後ろに配置され、前記偏光回転子からの前記第1SOPを有する第2光束を反射する反射器と、
前記第1光路上、および前記第2光路上であって前記反射器の後ろに配置され、前記第1光路から前記第1光束を、前記第2光路から前記第1SOPを有する第2光束を、それぞれ受け取り、当該第1光束および当該第1SOPを有する第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力SOPおよび第2出力SOPのうちのいずれか一方に選択的に変換する偏光スイッチと、
を備え、
前記反射器は、前記偏光回転子からの前記第1SOPを有する第2光束を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、当該偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路における第2光束を方向付ける、
偏光変換システム。」

(2)本件特許発明2
「プロジェクタレンズからランダム偏光光束を受け取り、第1偏光状態(SOP)を有する第1光束を第1光路へ方向付け、第2SOPを有する第2光束を第2光路へ方向付ける、偏光ビームスプリッタ(PBS)と、
前記第2光路上に配置され、前記第2SOPを前記第1SOPに変換する、偏光回転子と、
前記第1光路上に配置される第1偏光スイッチパネルと、
前記第2光路上であって、前記偏光回転子の後ろに配置される第2偏光スイッチパネルと、
前記第2光路上であって前記第2偏光スイッチパネルの後ろに配置され、前記第2偏光スイッチパネルからの第2光束を反射する反射器と、
を備え、
前記第1偏光スイッチパネルは前記第1光路から前記第1光束を、前記第2偏光スイッチパネルは前記第2光路から前記第1SOPを有する第2光束を、それぞれ受け取り、前記第1偏光スイッチパネルおよび前記第2偏光スイッチパネルは、当該第1光束および当該第1SOPを有する第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力SOPおよび第2出力SOPのうちのいずれか一方に選択的に変換し、
前記反射器は、前記第1偏光スイッチパネルによって選択的に変換された前記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、前記第2偏光スイッチパネルによって選択的に変換された前記第2光路における第2光束を方向付ける、偏光変換システム。」

(3)本件特許発明3
プロジェクタレンズからランダム偏光光束を受け取り、第1偏光状態(SOP)を有する第1光束を第1光路へ方向付け、第2SOPを有する第2光束を第2光路へ方向付ける、偏光ビームスプリッタ(PBS)と、
前記第2光路上に配置され、前記PBSからの前記第2SOPを有する第2光束を反射する反射器と、
前記第2光路上であって前記反射器の後ろに配置され、前記第2SOPを有する前記第2光束を前記第1SOPに変換する、偏光回転子と、
前記第1光路上および前記第2光路上であって前記偏光回転子の後ろに配置され、前記第1光路から前記第1光束を、前記第2光路から前記第1SOPを有する第2光束を、それぞれ受け取り、当該第1光束および当該第1SOPを有する第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力SOPおよび第2出力SOPのうちのいずれか一方に選択的に変換する偏光スイッチと、
を備え、
前記反射器は、前記PBSからの前記第2SOPを有する第2光束を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、当該偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路における第2光束を方向付ける、偏光変換システム。」

(4)本件特許発明4
「前記偏光スイッチは、前記第1光路および前記第2光路から受光する単一のパネルを有する、請求項1または3に記載の偏光変換システム。」

(5)本件特許発明7
「前記第1光路上であって前記偏光スイッチの後ろに配置され、前記第1光路と前記第2光路との間の光路長を略均等化する一対のミラーをさらに備える、請求項1、3、4、5のいずれか1項に記載の偏光変換システム。」

(6)本件特許発明9
「前記第1出力SOPは前記第2出力SOPと直交する、請求項1から8のいずれか1項に記載の偏光変換システム。」

(7)本件特許発明10
「前記偏光スイッチは、プロジェクタによる画像フレーム送信に同期して、前記第1出力SOPおよび前記第2出力SOPの間の選択を行う、請求項1、3、4、5のいずれか1項に記載の偏光変換システム。」

(8)本件特許発明12
「前記偏光回転子はリターダスタックを有する、請求項1から11のいずれか1項に記載の偏光変換システム。」

(9)本件特許発明13
「前記第2光路上に配置された前記反射器は、前記第2光路上の光を方向付けるべく傾けることが可能である、請求項1から12のいずれか1項に記載の偏光変換システム。」

(10)本件特許発明14
「前記偏光スイッチは、受け取った前記第1光束および前記第2光束の偏光状態を、前記第1出力SOPと前記第2出力SOPとの間で交互に変換する、請求項1、3、4、5のいずれか1項に記載の偏光変換システム。」

(11)本件特許発明16
「前記第2光路上に配置され、当該第2光路における第2光束によって投影スクリーン上に生成される画像の倍率を、当該投影スクリーン上に前記第1光路の前記第1光束によって生成される画像の倍率と略同一の倍率となるように補正する倍率補正手段と、
前記投影スクリーン上において前記第1光束からの画像と前記第2光束からの画像とを略同様の位置へと調整する位置調整手段と、をさらに備え、
前記位置調整手段は、(i)前記偏光ビームスプリッタを傾けること、(ii)光パワーを用いて前記偏光ビームスプリッタ、前記偏光回転子、前記反射器の少なくとも1つを機械的に偏心させること、の少なくとも1つによって実現される、請求項1から14のいずれか1項に記載の偏光変換システム。」

(12)本件特許発明17
「第1光路および第2光路へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタと、
前記第2光路上に配置される偏光回転部材と、
前記第2光路上であって、前記偏光回転部材の後ろに配置される反射部材と、
前記第1光路上および前記第2光路上であって、前記反射部材の後ろに配置される偏光スイッチと、
を備え、
前記偏光スイッチは、前記第1光路の第1光束および前記第2光路の第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力偏光状態および第2出力偏光状態のうちのいずれか一方に選択的に変換し、
前記反射部材は、前記第2光路上の第2光束を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路の第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、前記偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路の第2光束を方向付ける、偏光変換システム。」

(13)本件特許発明18
「第1光路および第2光路へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタと、
前記第1光路上に配置される第1偏光スイッチパネルと、
前記第2光路上に配置される偏光回転部材と、
前記第2光路上であって、前記偏光回転部材の後ろに配置される第2偏光スイッチパネルと、
前記第2光路上であって、前記第2偏光スイッチパネルの後ろに配置される反射部材と、
を備え、
前記第1偏光スイッチパネルは前記第1光路の第1光束を、前記第2偏光スイッチパネルは前記第2光路の第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力偏光状態および第2出力偏光状態のうちのいずれか一方に選択的に変換し、
前記反射部材は、前記第1偏光スイッチパネルによって選択的に変換された前記第1光路における第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、前記第2偏光スイッチパネルによって選択的に変換された前記第2光路における第2光束を方向付ける、偏光変換システム。」

(14)本件特許発明19
「第1光路および第2光路へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタと、
前記第2光路上に配置される反射部材と、
前記第2光路上であって、前記反射部材の後ろに配置される偏光回転部材と、
前記第1光路上および前記第2光路上であって、前記偏光回転部材の後ろに配置される偏光スイッチと、
を備え、
前記偏光スイッチは、前記第1光路の第1光束および前記第2光路の第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力偏光状態および第2出力偏光状態のうちのいずれか一方に選択的に変換し、
前記反射部材は、前記第2光路上の第2光束を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路の第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、前記偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路の第2光束を方向付ける、偏光変換システム。」

(15)本件特許発明20
「前記偏光スイッチは、前記第1光路および前記第2光路から受光する単一のパネルを有する、請求項17または19に記載の偏光変換システム。」

(16)本件特許発明23
「前記偏光スイッチは、プロジェクタによる画像フレーム送信に同期して、前記第1出力偏光状態および前記第2出力偏光状態の間の選択を行う、請求項17、19、20のいずれか1項に記載の偏光変換システム。」

(17)本件特許発明25
「前記第2光路上に配置され、当該第2光路における第2光束によって投影スクリーン上に生成される画像の倍率を、当該投影スクリーン上に前記第1光路の第1光束によって生成される画像の倍率と略同一の倍率となるように補正する倍率補正手段と、
前記投影スクリーン上において前記第1光束からの画像と前記第2光束からの画像とを略同様の位置へと調整する位置調整手段と、をさらに備え、
前記位置調整手段は、(i)前記偏光ビームスプリッタを傾けること、(ii)前記反射部材を傾けること、(iii)光パワーを用いて前記ビームスプリッタ、前記偏光回転部材、前記反射部材の少なくとも1つを偏心させること、の少なくとも1つによって実現される、請求項17から24のいずれか1項に記載の偏光変換システム。」

(18)本件特許発明26
「立体画像のエンコーディングに偏光を利用する投影システムであって、
ランダム偏光を出力する投影レンズを有するプロジェクタと、
前記投影レンズに光学的に連結された、請求項17から19のいずれか1項に記載の偏光変換システムと、を備える投影システム。」

(19)本件特許発明27
「プロジェクタからランダム偏光を受け取る段階と、
第1偏光状態(SOP)の光を偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いて第1光路へ方向付ける段階と、
前記偏光ビームスプリッタを用いて第2SOPの光を第2光路へ方向付ける段階と、
前記第2光路上の前記第2SOPの光を、前記第2光路上に配置された偏光回転子を用いて第1SOPの光に変換する段階と、
前記第2光路上であって前記偏光回転子の後ろに配置された反射器を用いて、前記偏光回転子からの前記第1SOPの光を方向付ける段階と、
前記第1光路上の前記第1SOPの光および前記反射器からの前記第1SOPの光を、偏光スイッチを用いて、共に、第1出力SOPおよび第2出力SOPのうちのいずれか一方に選択的に変換する段階と、
を備え、
前記方向付ける段階は、前記反射器を用いて前記偏光回転子からの前記第1SOPの光を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路の前記第1SOPの光が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、当該偏光スイッチによって選択的に変換される前記反射器からの前記第1SOPの光を方向付ける段階を含む、立体画像投影方法。」

(20)本件特許発明28
「プロジェクタからランダム偏光を受け取る段階と、
第1偏光状態(SOP)の光を偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いて第1光路へ方向付ける段階と、
前記偏光ビームスプリッタを用いて第2SOPの光を第2光路へ方向付ける段階と、
前記第2光路上の前記第2SOPの光を、前記第2光路上に配置された偏光回転子を用いて第1SOPの光に変換する段階と、
前記第1光路上の前記第1SOPの光を前記第1光路上に配置された第1偏光スイッチパネルを用いて、前記偏光回転子からの前記第1SOPの光を前記第2光路上であって前記偏光回転子の後ろに配置された第2偏光スイッチパネルを用いて、共に、第1出力SOPおよび第2出力SOPのうちのいずれか一方に選択的に変換する段階と、
前記第2光路上であって前記第2偏光スイッチパネルの後ろに配置された反射器を用いて、当該第2偏光スイッチパネルにより選択的に変換された光を方向付ける段階と、
を備え、
前記方向付ける段階は、前記第1偏光スイッチパネルによって選択的に変換された前記第1光路上の光が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、前記第2偏光スイッチパネルによって選択的に変換された前記第2光路の光を反射する段階を含む、立体画像投影方法。」

(21)本件特許発明29
「プロジェクタからランダム偏光を受け取る段階と、
第1偏光状態(SOP)の光を偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いて第1光路へ方向付ける段階と、
第2SOPの光を偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いて第2光路へ方向付ける段階と、
前記第2光路上の前記第2SOPの光を、前記第2光路上に配置された反射器を用いて方向付ける段階と、
前記第2光路上であって前記反射器の後ろに配置された偏光回転子を用いて、前記第2光路上の前記第2SOPの光を第1SOPの光に変換する段階と、
前記第1光路上の前記第1SOPの光および前記偏光回転子からの前記第1SOPの光を、偏光スイッチを用いて、共に、第1出力SOPおよび第2出力SOPのうちのいずれか一方に選択的に変換する段階と、
を備え、
前記方向付ける段階は、前記射器を用いて前記第2光路上の前記第2SOPの光を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路上の光が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、当該偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路上の光を方向付ける段階を含む、立体画像投影方法。」

(22)本件特許発明30
「前記第1光路および前記第2光路を、投影スクリーンへと方向付ける段階をさらに備える、請求項27から29のいずれか1項に記載の立体画像投影方法。」

(23)本件特許発明31
「前記第1出力SOPおよび前記第2出力SOPを、前記プロジェクタからの画像フレーム送信と同期させる段階をさらに備える、請求項27から30のいずれか1項に記載の立体画像投影方法。」

(24)本件特許発明32
「前記第2光路上の光によって投影スクリーン上に生成される画像の倍率を、当該投影スクリーン上に前記第1光路の光によって生成される画像の倍率と略同一の倍率となるように補正する段階と、
前記第2光路上の光を、前記投影スクリーン上において前記第1光路上の光により生成される画像と前記第2光路上の光により生成される画像とを略同様の位置へと調整する段階と、をさらに備え、
前記調整する段階は、(i)前記偏光ビームスプリッタを傾けること、(ii)光パワーを用いて前記偏光ビームスプリッタ、前記偏光回転子、前記反射器の少なくとも1つを機械的に偏心させること、の少なくとも1つを含む、請求項27から31のいずれか1項に記載の立体画像投影方法。」

2 無効理由1について
(1)無効理由1は、甲第1号証を主引用例とし、甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証及び甲第12号証を副引用例とした理由であり、以下に判断する。

(2)引用例
ア 甲第1号証
(ア)本件特許に係る出願の最先の優先権主張の日(以下、単に「優先日」という。)前に頒布された刊行物である甲第1号証には、図とともに次の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。
a 「R光用照明装置10Rは、光源部11Rと、光源部11Rの射出端面に設けられたロッドインテグレータ21Rとを備えている。また、G光用照明装置10G,B光用照明装置10Bも同様に、光源部11G,11B及びロッドインテグレータ21G,21Bを有している。
また、ロッドインテグレータ21Rは、中実のガラスや樹脂などの透明な部材でできており、光源部11Rから射出された光を透過型液晶ライトバルブ20Rに導くとともに、内部で全反射を繰り返すことにより、光源部11Rから照射された光の照度分布を略均一にしている。」(段落【0018】)、
「次に、以上の構成からなる本実施形態のプロジェクタ1を用いて、画像をスクリーン42に投射する方法について説明する。
なお、R光用LED31R,G光用LED31G,B光用LED31Bから射出された各色光についての作用は同一であるので、R光用LED31Rから射出された赤色光についての作用を説明し、その他の緑色光、青色光についての作用は説明を省略する。」(段落【0029】)、
「まず、R光用照明装置10RのR光用LED31Rに電流が供給されると、図2に示すように、R光用LED31Rから赤色光がコリメータレンズ32に向けて射出される。
コリメータレンズ32に入射した赤色光は平行化され、偏光変換光学素子33に入射される。そして、偏光分離部35の偏光分離面35aにおいて、p偏光光のみが透過され、s偏光光は反射部36の反射面36aに向かって反射される。反射面36aにおいて反射されたs偏光光は、偏光分離面35aと反射面36aとが略平行に配されているため、偏光分離面35aを透過したp偏光光と略平行に進行する。次いで、s偏光光は反射部36の射出端面36bから射出される際、1/2波長板37により、p偏光光に変換され射出される。このようにして、偏光分離部35の偏光分離面35aにおいて、透過した光及び反射部36の射出端面36bより射出された光は、偏光方向が揃えられた光となっている。その後、偏光方向が揃えられた光は、ロッドインテグレータ21Rにより照度分布が均一化され、ロッドインテグレータ21Rから射出された後、透過型液晶ライトバルブ20Rに入射される。そして、プロジェクタ1に入力された映像信号に基づいて変調され、ダイクロイックプリズム40に向けて射出される。」(段落【0030】)、
「ダイクロイックプリズム40には、同様に、映像信号に基づいて変調された緑色光のp偏光及び青色光のp偏光も入射される。これらの色光が、青色光を反射する青色光反射ダイクロイック膜と赤色光を反射する赤色光反射ダイクロイック膜とによって合成されてカラー画像を表す光が形成され、投射レンズ41に向けて射出される。投射レンズ41は、カラー画像を表す光をスクリーン42に向けて拡大投射して、カラー画像を表示する。」(段落【0031】)、
「また、上述した各実施形態では、空間光変調装置として透過型の液晶表示装置を用いたが、反射型の液晶表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD、登録商標)等を用いることができる。また、投射装置として投射レンズ41を用いたが、複数のミラーを組み合わせてミラー投射方式を用いることも可能である。また、照明装置からロッドインテグレータを省いた構成としても良い。また、本発明の画像表示装置は、上述したプロジェクタ等の投射型表示装置以外の、直視型表示装置にも適用することが可能である。」(段落【0045】)

b 図1は次のとおりである。

c 図2は次のとおりである。

(イ)上記(ア)の各事項によれば、甲第1号証には、本件特許発明19にならって整理すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「p偏光光のみが透過され、s偏光光は反射部36の反射面36aに向かって反射されるようにするための偏光分離面35aを有する偏光分離部35と、
偏光分離面35aにより反射されたs偏光光を反射させる反射面36aを有する反射部36と、
反射部36の射出端面36bから射出されたs偏光光をp偏光光に変換するための1/2波長板37と、
を備え、
偏光分離面35aと反射面36aとが略平行に配置されているため、反射面36aにおいて反射されたs偏光光と、偏光分離面35aを透過したp偏光光とは略平行に進行するものであって、
偏光分離部35の偏光分離面35aにおいて、透過した光及び反射部36の射出端面36bより射出された光は、偏光方向が揃えられた光となり、
偏光方向が揃えられた光は、ロッドインテグレータ21Rにより照度分布が均一化され、ロッドインテグレータ21Rから射出された後、透過型液晶ライトバルブ20Rに入射され、プロジェクタ1に入力された映像信号に基づいて変調され、ダイクロイックプリズム40に向けて射出され、
その後、カラー画像を表す光が形成され、投射レンズ41に向けて射出され、投射レンズ41は、カラー画像を表す光をスクリーン42に向けて拡大投射して、カラー画像を表示するための、
偏光変換素子33であって、
ロッドインテグレータ21Rは、中実のガラスや樹脂などの透明な部材でできており、光源部11Rから射出された光を透過型液晶ライトバルブ20Rに導くとともに、内部で全反射を繰り返すことにより、光源部11Rから照射された光の照度分布を略均一にしている、
偏光変換素子33。」

イ 甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証
(ア)甲第2-(1)号証及び甲第2-(2)号証は、ともに、本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物であるところ、甲第2-(2)号証は、甲第2-(1)号証の誤記を訂正するためのものである。
そうすると、甲第2-(1)号証に記載された発明を認定するに当たっては、甲第2-(1)号証の記載のほか、甲第2-(2)号証の記載をも考慮できるものと解される。もっとも、以下に認定される甲2発明は、その引用箇所に、甲第2-(2)号証で特定された誤記を含んでいない。

(イ)甲第2-(1)号証には、図とともに次の記載がある。
a 「In the inventive system, the cells are driven electrically out of phase (so that when one cell is in a high voltage state, the other is in a low voltage state, and vice versa). When driven appropriately and positioned in front of a cathode ray or similar display unit (with the linear polarizer nearest the screen), and when the driver of the push-pull modulator is synchronized with the field rate of the CRT display unit, the light transmitted from the display unit through the push-pull modulator will be left-handed circular polarized light, alternating with right-handed circular polarized light at the field rate. When viewed through spectacles including left and right handed circular polarizer analyzers, half of the fields of the field-sequential display will be transmitted to one eye and half to the other eye, thus providing an appropriate selection mechanism for a stereoscopic field-sequential video display.」(5欄28行?44行)
(翻訳:本発明によるシステムにおいて、セルは、(一方のセルが高電圧状態であれば、他方が低電圧状態であるように、及び、その逆であるように)電気的に位相がずれた状態で駆動される。適切に駆動され、また、陰極線又は同様なディスプレイユニットの正面に(線形偏光子が画面に最も近い状態で)配置されると、また、プッシュプル変調器のドライバが、CRTディスプレイユニットのフィールドレートと同期していると、表示ユニットからプッシュプル変調器を通して送出された光は、左円偏光であり、フィールドレートで右円偏光と交番する。左右円偏光検光子を含むメガネを通して見る場合、フィールド順次ディスプレイのフィールドの半分は、一方の目に送出され、半分は、他方の目に送出され、これによって、立体フィールド順次映像ディスプレイの適切な選択メカニズムが提供される。)(翻訳文の7枚目の下から2行?8枚目の7行)

b 「FIG. 3 is a schematic representation of a preferred embodiment of the present invention. Video signal source 5 outputs a field-sequential stereoscopic image, such as that described in U.S. Pat. Nos. 4,523,226, or 4,562,463, to monitor 1, which may be a CRT unit or any kind of electronic video display. A push-pull modulator including linear polarizer 3 and liquid crystal cells 15 and 16 is placed in front of monitor 1's display screen 2. Liquid crystal cells 15 and 16 are of a construction first described by Fergason in U.S. Pat. No. 4,385,806. Cells 15 and 16 are surface mode liquid crystal cells which are fast acting, compared to the usual twisted nematic liquid crystal device. Cells 15 and 16 are driven by driver 17, which drives cells 15 and 16 electrically out of phase so that when cell 15 is at high potential, cell 16 is at low potential. Driver 17 is preferably of the type to be described below with reference to FIGS. 7-9. Alternatively, driver 17 may be of any commercially available type having the characteristics described below. Driver 17 is connected to cells 15 and 16 via cables 9 and 9'.
Driver 17 observes the sync pulses of the video signal output by source 5, and triggers the drive voltages to cells 15 and 16 in synchronization with the sync pulses so that the polarized light emerging from cells 15 and 16 will be in synchronization with the video fields produced by source 5. Conventional video signals include sync pulses of the type suitable for this purpose.」(6欄24行?51行)
(翻訳:図3は、本発明の好ましい実施形態の概略図である。映像信号源5は、米国特許第4,523,226号又は第4,562,463号において述べられた画像等のフィールド順次立体画像をモニタ1に出力するが、モニタ1は、CRTユニット又は任意のタイプの電子映像ディスプレイであってよい。線形偏光子3及び液晶セル15及び16を含むプッシュプル変調器が、モニタ1の表示画面2の正面に置かれている。液晶セル15及び16は、最初に米国特許第4,385,806号においてファーガソン(Fergason)によって述べられた構造である。セル15及び16は、通常のツイステッドネマチック液晶装置と比較して、高速動作の表面モード液晶セルである。セル15及び16は、ドライバ17によって駆動されるが、ドライバ17は、セル15が高い電位である場合、セル16が低い電位であるように、電気的に位相をずらしてセル15及び16を駆動する。ドライバ17は、好ましくは、図7乃至9を参照して後述するタイプのものである。他の選択肢として、ドライバ17は、後述する特性を有する任意の市販されているタイプのものであってよい。ドライバ17は、ケーブル9及び9’を介してセル15及び16に接続されている。
ドライバ17は、信号源5によって出力された映像信号の同期パルスを観察し、そして、セル15及び16から出現する偏光が、信号源5によって生成された映像フィールドと同期するように、同期パルスに同期してセル15及び16に対する駆動電圧のトリガをかける。従来の映像信号には、この目的に適するタイプの同期パルスが含まれる。」(翻訳文の9枚目の1行?18行)

c 「FIG. 6 shows a schematic layout for a video projector we have built, using an Electrohome Model ECP 2000 projector, in which push-pull modulator 20 is installed in front of the projection lens 19 of projector 18. The surface of reflecting screen 21 has an aluminum layer to conserve polarization. The projected image is observed with analyzing spectacles 10 of the same type as described with reference to the FIG. 3 embodiment.
Video source 5, driver unit 17, cables 9 and 9' and the push-pull modulator are of the same type, and serve the same function as in the FIG. 3 embodiment. The push-pull modulator outputs left an right-handed circularly polarized light alternately and in synchronization with the field rate of video source 5.
The ECP 2000 projector uses a single projection lens and three CRT's producing red, green and blue light respectively. It was found that the light emerging from the projector was partially polarized, resulting in variations in the projected color. The source of this unwanted polarization may have been the dichroic reflectors used within the projector's optical system. The result of this unwanted interaction between the projector light and the push-pull modulator was a red shading that grew in intensity from left to right across the screen. When a half wave plate was introduced as the rear element of the push-pull modulator, between the lens and polarizer, the red shading was entirely eliminated. The slow axis of the half wave plate was at 45 degrees to the axis of the polarizer, said polarizer's axis being oriented in the vertical direction.
The performance of the projection system of FIG. 6 was judged to be of extremely high quality, and a very satisfying stereoscopic image was observed.」(10欄28行?60行)
(翻訳:図6は、プッシュプル変調器20がプロジェクタ18のプロジェクションレンズ19の正面に据え付けられたElectrohome Model ECP2000プロジェクタを用いて我々が構築した映像プロジェクタの概略レイアウトを示す。反射画面21の表面は、偏光を保存するためのアルミニウム層を有する。投影された画像は、図3の実施形態を参照し上述したものと同じタイプの分析メガネネ10で観察される。
映像信号源5、ドライバユニット17、ケーブル9及び9’、並びにプッシュプル変調器は、同じタイプであり、また、図3の実施形態と同じ機能を提供する。プッシュプル変調器は、左右円偏光を交互に、映像信号源5のフィールドレートと同期して出力する。
ECP2000プロジェクタは、単一のプロジェクションレンズと、それぞれ赤、緑及び青光を生成する3つのCRTと、を用いる。プロジェクタから出現する光は、部分的に偏光されており、投影色にばらつきが生じていることが分かった。この望ましくない偏光源は、プロジェクタの光学系内に用いられているダイクロイック反射板の可能性がある。プロジェクタ光とプッシュプル変調器との間のこの望ましくない相互作用の結果は、左から右へ画面全体における輝度に生じる赤の陰影であった。半波長板が、プッシュプル変調器の後部要素としてレンズと偏光子との間に導入された時、赤の陰影は、完全に解消された。半波長板の遅相軸は、偏光子の軸に対して45度であり、前記偏光子の軸は、垂直方向に向いている。
図6のプロジェクションシステムの性能は、極めて高品質であると判断され、また、極めて満足できる立体画像が観察された。」(翻訳文の13枚目の18行?末行)

d 図3は次のとおりである。

e 図6は次のとおりである。

f 図6及び上記cの「反射画面21の表面は、偏光を保存するためのアルミニウム層を有する。投影された画像は、図3の実施形態を参照し上述したものと同じタイプの分析メガネネ10で観察される。」(「分析メガネネ10」は「分析メガネ10」の明らかな誤記と認める。)との記載に照らすと、反射画面21は、スクリーンであると認められる。

(ウ)上記(イ)の各事項によれば、甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「プッシュプル変調器20がプロジェクタ18のプロジェクションレンズ19の正面に据え付けられた映像プロジェクタであって、
偏光を保存するためのアルミニウム層の表面を有する反射画面21からなるスクリーンを備え、
プッシュプル変調器は、線形偏光子3及び液晶セル15及び16を含むものであって、左右円偏光を交互に、映像信号源5のフィールドレートと同期して出力するものであり、
プッシュプル変調器のドライバが、CRTディスプレイユニットのフィールドレートと同期していると、表示ユニットからプッシュプル変調器を通して送出された光は、左円偏光であり、フィールドレートで右円偏光と交番し、左右円偏光検光子を含むメガネを通して見る場合、フィールド順次ディスプレイのフィールドの半分は、一方の目に送出され、半分は、他方の目に送出され、これによって、立体フィールド順次映像ディスプレイの適切な選択メカニズムが提供される、
映像プロジェクタ。」

ウ 甲第12号証
(ア)本件特許に係る出願の優先日の前に頒布された刊行物である、甲第12号証には、図とともに次の記載がある。
a 「FIG. 2 shows, generally at 20 , a schematic diagram of a first exemplary optical system for projection system 10 . The components of optical system 20 are described below in relative order along the overall optical path of optical system 20 . First, optical system 20 includes a light source 22 configured to produce a beam of light, represented as ray 23 .(中略)
Upon exiting the light source, beam of light 23 next may be directed through a color wheel 26 . A color wheel is an optical filtering device used to allow the projection of color images via the use of a single image-producing element for all three primary colors. (中略)
Beam of light 23 may also be passed through an integrator 28 if desired. Integrator 28 is a device configured to level the intensity distribution of beam of light 23 across the width of the beam, and thus provide the projected stereographic image a more even brightness across its width. (中略)
After passing through integrator 28 , beam of light 23 may next be directed, typically via one or more relay lenses 30 and/or mirrors 32 , to an image engine, indicated generally at 34 . Generally, image engine 34 is configured to form the left-eye and right-eye images from beam of light 23 , and to direct the left-eye and right-eye images toward projection lens 14 . Where a single light source is used, a suitable beam splitter 36 may be utilized to split the beam of light into a left image beam 38 and a right image beam 40 before the left-eye and right-eye images are formed. Beam splitter 36 may either be positioned optically upstream of image engine 34 , or, as shown in the depicted embodiment, may be integral with image engine 34 , as explained in more detail below.
Image engine 34 of the depicted embodiment is configured to project the left-eye image and right-eye image via light of different polarities. In FIG. 2 , this is accomplished via the use of a polarizing beam splitter 36 to split beam of light 23 into a first beam of a first polarity, indicated by solid ray 38 , and a second beam of a second polarity, indicated by dashed ray 40 . First polarized beam 38 is then directed toward a left image-producing element 42 , and second polarized beam 40 is directed toward a right image-producing element 44 .
Any suitable type of image-producing element may be used for left image-producing element 42 and right image-producing element 44 . In the embodiment depicted in FIG. 2 , each image-producing device takes the form of a reflective liquid crystal on silicon (LCOS) panel. LCOS panels, like ordinary liquid crystal panels, operate by selectively optically rotating portions of an incident beam of polarized light on a pixel-by-pixel basis. The beam of light is then passed through a downstream polarizer, which filters out either rotated or unrotated portions of the beam (depending upon the orientation of the polarizer) to form an image. Thus, an image engine using LCOS panels (or ordinary liquid crystal panels) typically also includes a polarizer positioned optically upstream of the liquid crystal material to polarize the light beam before it is directed onto the LCOS panel.
The use of LCOS panels as left image-producing element 42 and right image-producing element 44 may offer several advantages over the use of other types of image-producing elements. For example, the use of the reflective LCOS panels allows a single polarizing beam splitter 36 to act not only as the beam splitter, but also as the first, optically upstream polarizer and the second, optically downstream polarizer for each LCOS panel. Light from beam splitter 36 may be reflected from the LCOS panels directly back toward the beam splitter, without the use of any other mirrors or lenses, permitting the use of a smaller total number of optical components in optical system 20 , and thus reducing the space taken by optical system 20 inside of body 12 . Also, LCOS panels may offer smaller pixel sizes for a more reasonable cost than some transmissive LCD panels, and therefore may improve the resolution of the projected stereographic image while keeping the cost of the system reasonable. While the polarizing beam splitter acts as both the upstream and downstream polarizers for both LCOS panels, it will be appreciated that a projector according to the present invention may also have upstream polarizers, downstream polarizers and beam splitters as separate components without departing from the scope of the present invention. Furthermore, where separate upstream and downstream polarizers are used, it will be appreciated that a beam splitter other than a polarizing beam splitter, such as a 50/50 beam splitter or a dichroic beam splitter, may be used if desired.
When left image beam 38 strikes left image-producing element 42 , selected portions of the beam that strike activated pixels on the LCOS panel are optically rotated. The reflective backing of the panel then reflects left image beam 38 back toward polarizing beam splitter 36 . Optically rotated portions of left image beam 38 may then be reflected by polarizing beam 36 splitter(当審注:「polarizing beam 36 splitter」は「polarizing beam splitter 36」の誤記と認める。) toward projection lens 14 , while unrotated portions of the beam are not reflected toward the projection lens. Likewise, when right image beam 40 strikes right image-producing element 44 , selected portions of the right image beam that strike active pixels are optically rotated. The optically rotated portions of right image beam 40 then may pass through polarizing beam splitter 36 and through projection lens 14 . In this manner, the optically rotated portions of left image beam 38 and right image beam 40 are projected in an overlapping manner, forming the stereographic image on the viewing surface. The stereographic image may then be viewed via the use of appropriate polarization filters. While the depicted optical system utilizes LCOS panels as left image-producing element 42 and right image-producing element 44 , it will be appreciated that transmissive liquid crystal panels may also be used, along with appropriate mirrors and lenses to direct the left image beam and right image beam through the panels, without departing from the scope of the present invention.
Optical system 20 may also be configured to project ordinary two-dimensional images, simply by projecting left-eye and right-eye images of an identical perspective with left image-producing element 42 and right image-producing element 44 . The use of dual image-producing elements may offer some advantages over the use of a single image-producing element for the display of two-dimensional images. For example the use of two panels may offer a higher brightness efficiency than a single panel arrangement. Also, the use of two panels may allow a higher wattage light source to be used, as each panel may receive a lower flux load that a single panel for a selected lamp wattage.」(3欄49行?6欄19行)
(翻訳:図2は、投影システム10に対する光学システム20の第1の例を示す概略図である。この光学システム20の構成部品は、光学システム20の全体光学路に沿って相対的な順に従って以下に説明される。まず光学システム20は、符号23で示される光線を生成するように構成された光源22を備える。(中略)
次ぎに光線23は、前記光源から出射されるとカラーホイール26を通って導かれる。カラーホイールは、単一の画像生成エレメントを用いたカラー画像の投影を3原色全てに充てるために用いられる光学フィルタデバイスである。(中略)
また光線23は、所望ならば、インテグレータ28内を通されうる。このインテグレータ28は、光線23の幅全体に亘って光線の強さ分布をならすデバイスであって、投影されたステレオ投影画像を幅全体に亘ってより均一な明るさにする。(中略)
インテグレータ28を通過した後、続いて光線23は、一般的に、一または複数の中継レンズ30および/または反射鏡32を経由して符号34で示される画像エンジンまで導かれる。一般的に、画像エンジン34は、光線23から左目用画像および右目用画像を形成し、投影レンズ14に向かって左目用画像および右目用画像を導くように構成されている。単一の光源が用いられる場合、適切なビームスプリッタ36が、左目用画像および右目用画像が形成される前に光線を左画像用光線と右画像用光線とに分けるために利用されうる。ビームスプリッタ36は、画像エンジン34の光学的下流に位置されるか、記載された実施形態に示されるように画像エンジン34と一体的に形成されるかのいずれかである。詳細は後述する。
ここに記載された実施形態に係る画像エンジン34は、異なる極性の光を用いて左目用画像および右目用画像を投影するように構成される。図2では、これが偏光ビームスプリッタ36を用いることにより実現されており、これにより光線23を、実線38で示された第1の極性の第1の光線と、破線40で示された第2の極性の第2の光線とに分ける。そして第1の偏光された光線38は、左画像生成エレメント42に向かって導かれ、第2の偏光された光線40は、右画像生成エレメント44に向かって導かれる。
いかなる適用可能なタイプの画像生成エレメントも、左画像生成エレメント42および右画像生成エレメント44に用いられうる。図2に示す実施形態では、各画像生成デバイスは、反射型シリコン液晶(LCOS)パネルの形態をとる。LCOSパネルは、通常の液晶パネルと同様に、画素単位で入射する偏光光線の選択的にかつ光学的に回転する部分によって動作する。この光線は下流の偏光子を通過し、この偏光子が画像を形成するために(偏光子の向きに依存する)光線の回転部分か非回転部分のいずれか一方を取り除く。このように、LCOSパネル(または通常の液晶パネル)を用いる画像エンジンは、一般的に、さらに液晶材料の光学的上流に位置する偏光子を有しており、LCOSパネル上に導かれる前に光線を偏光させる。
左画像生成エレメント42や右画像生成エレメント44のようにLCOSパネルを使用することにより、他のタイプの画像生成エレメントを超える利点を得ることができる。例えば反射LCOSパネルを使用することにより、単一の偏光スプリッタ36がビームスプリッタとして働くだけでなく、各LCOSパネルに対して第1の光学的上流の偏光子および第2の光学的下流の偏光子として作用する。ビームスプリッタ36からの光は、いかなる他の反射鏡またはレンズを使用することなく、LCOSパネルからビームスプリッタに向けて直接反射して戻る。これにより光学システム20内の光学部品の総数を減らすことができ、その結果本体12内の光学システム20によって占有される空間も減少する。またLCOSパネルは、いくつかの透過型LCDパネルよりも合理的な値段でより小さい画素を提供しうるので、システムの値段を合理的に維持しながら投影されるステレオ投影画像の解像度を改善することができる。偏光ビームスプリッタは2つのLCOSに対して上流の偏光子および下流の偏光子の両方として作用するが、本発明による投影器も本発明の範囲を逸脱することなく、別個の部品として上流の偏光子、下流の偏光子およびビームスプリッタを備えても良い。さらに別個の上流の偏光子と下流の偏光子が使用される場合、偏光ビームスプリッタの以外のビームスプリッタ、例えば50/50ビームスプリッタまたは2色性のビームスプリッタを、所望ならば用いても構わない。
左画像用光線38が左画像生成エレメント42に当たるとき、LCOSパネルの活性化した画素に当たる光線の選択された部分は、光学的に回転される。このパネルの反射裏面が、左画像用光線38を偏光ビームスプリッタ36まで戻すように反射する。左画像用光線38の光学的に回転される部分は偏光ビームスプリッタ36によって投影レンズ14に反射され、一方前記光線38の回転されない部分は投影レンズ14に反射されない。同様に右画像用光線40が右画像生成エレメント44に当たるとき、活性化した画素に当たる右画像用光線の選択された部分が光学的に回転される。右画像用光線40の光学的に回転される部分は、偏光ビームスプリッタ36および投影レンズ14を通過しうる。このように、左画像用光線38および右画像用光線40の光学的に回転する部分は、投影面上に重ね合わせるように投影され、ステレオ投影画像を形成する。このステレオ投影画像は、適用可能な偏光フィルタを用いることによって見られる。記載された光学システムは左画像生成エレメント42および右画像生成エレメント44としてLCOSを用いているが、本発明の範囲を逸脱することなく前記パネルを通じて左画像用光線と右画像用光線とを導く適用可能な反射鏡およびレンズと共に、透過型液晶パネルを用いることが可能であることは理解されるであろう。
また光学システム20は、左画像生成エレメント42および右画像生成エレメント44を用いて同一の全体像を有する左目用画像および右目用画像を単純に投影することによって、通常の2次元画像を投影するように構成されてもよい。2つの画像生成エレメントを用いることにより、2次元画像の表示に対して、1つの画像生成エレメントを用いる場合よりも超える利点が得られる。例えば、2つのパネルの使用は、1つのパネルを配置する場合よりも高い輝度を得ることができる。また2つのパネルを用いることにより、高いワット数の光源を用いることが可能となり、各パネルは、選択されたランプのワット数に対して、1つのパネルより低いフラックスロードを受けうる。)(翻訳文の5枚目の下から2行?8枚目の下から7行)

b 図2は次のとおりである。

(イ)上記(ア)の各事項によれば、甲第12号証には、次の発明(以下「甲12発明」という。)が記載されていると認められる。
「光線23を生成するように構成された光源22と、
次ぎに光線23が導かれるカラーホイール26と、
所望ならば、光線23が通されうるインテグレータ28と、
インテグレータ28を通過した後、続いて光線23が、一または複数の中継レンズ30および/または反射鏡32を経由して導かれる画像エンジン34であって、光線23から左目用画像および右目用画像を形成し、投影レンズ14に向かって左目用画像および右目用画像を導くように構成されている画像エンジン34と、
投影レンズ14と、
を備える投影システム10であって、
画像エンジン34は、偏光ビームスプリッタ36を用いることにより、異なる極性の光を用いて左目用画像および右目用画像を投影するように構成することが実現されており、
偏光ビームスプリッタ36により、光線23を、第1の極性の第1の光線38と、第2の極性の第2の光線40とに分け、第1の偏光された光線38は、左画像生成エレメント42に向かって導かれ、第2の偏光された光線40は、右画像生成エレメント44に向かって導かれ、
左画像生成エレメント42や右画像生成エレメント44はLCOSパネルが使用され、
左画像用光線38が左画像生成エレメント42に当たるとき、LCOSパネルの活性化した画素に当たる光線の選択された部分は、光学的に回転され、このパネルの反射裏面が、左画像用光線38を偏光ビームスプリッタ36まで戻すように反射し、左画像用光線38の光学的に回転される部分は偏光ビームスプリッタ36によって投影レンズ14に反射され、一方前記光線38の回転されない部分は投影レンズ14に反射されず、
右画像用光線40が右画像生成エレメント44に当たるとき、活性化した画素に当たる右画像用光線の選択された部分が光学的に回転され、右画像用光線40の光学的に回転される部分は、偏光ビームスプリッタ36および投影レンズ14を通過しうるものであって、
このように、左画像用光線38および右画像用光線40の光学的に回転する部分は、投影面上に重ね合わせるように投影され、ステレオ投影画像を形成する、
投影システム10。」

(3)本件特許発明19について
ア 対比
(ア)本件特許発明19と甲1発明とを以下に対比する。
a 甲1発明の「偏光分離部35」、「反射部36」及び「s偏光光をp偏光光に変換するための1/2波長板37」は、それぞれ、本件特許発明19の「偏光ビームスプリッタ」、「反射部材」及び「偏光回転部材」に相当する。

b 甲1発明では、「偏光分離部35」の「偏光分離面35a」が「p偏光光のみ」を「透過」するから、甲1発明の「偏光分離部35」は、本件特許発明19の「第1光路」「へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタ」に該当する。

c 甲1発明では、「偏光分離部35」の「偏光分離面35a」が「s偏光光」を「反射」するから、甲1発明の「偏光分離部35」は、本件特許発明19の「第2光路」「へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタ」に該当する。

d 甲1発明の「反射部36」(本件特許発明19の「反射部材」に相当。)は、「偏光分離面35aにより反射されたs偏光光を反射させる反射面36aを有する」から、上記cに照らすと、本件特許発明19の「前記第2光路上に配置される」との特定事項を満足する。

e 甲1発明の「s偏光光をp偏光光に変換するための1/2波長板37」(本件特許発明19の「偏光回転部材」に相当。)は、「反射部36の射出端面36bから射出されたs偏光光をp偏光光に変換する」ものであるから、上記cに照らすと、本件特許発明19の「前記第2光路上であって、前記反射部材の後に配置される」との特定事項を満足する。

f 甲1発明の「偏光変換素子33」は、本件特許発明19の「偏光変換システム」に相当する。

(イ)上記(ア)によれば、本件特許発明19と甲1発明とは、
「第1光路および第2光路へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタと、
前記第2光路上に配置される反射部材と、
前記第2光路上であって、前記反射部材の後ろに配置される偏光回転部材と、
を備える、
偏光変換システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
「偏光スイッチ」について、本件特許発明19は、「前記第1光路上および前記第2光路上であって、前記偏光回転部材の後ろに配置される」ものであって、「前記第1光路の第1光束および前記第2光路の第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力偏光状態および第2出力偏光状態のうちのいずれか一方に選択的に変換」するものであるのに対し、甲1発明は、偏光スイッチを備えていない点。

[相違点2]
「反射部材」について、本件特許発明19は、「前記第2光路上の第2光束を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路の第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、前記偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路の第2光束を方向付ける」ものであるのに対し、甲1発明は、そうなっていない点。

相違点の判断
(ア)上記各相違点について検討する。
a [相違点2]について
(a)本件特許発明19の「前記第2光路上の第2光束を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路の第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、前記偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路の第2光束を方向付ける」における、「第1光束」及び「第2光束」の意義について検討する。

i 「前記第1光路の第1光束」は、「投影スクリーン上に投影される」ところ、「投影スクリーン」とは、「投影」装置、すなわち、プロジェクタのための「スクリーン」であることが明らかであるから、「投影される」との「投影」とは、投影スクリーン上に像を形成することと解される。
そうすると、「第1光束」の「光束」は、投影スクリーン上に像を形成するためのものと解されることになるところ、その「光束」が、1つの像点を形成するためのものなのか、像全体を形成するためのものなのか、その意義が多義的であるので、本件特許の明細書及び図面(以下、それぞれ、「本件特許明細書」及び「本件特許図面」という。)の記載を参酌する。

ii 本件特許明細書には、
「動作において、光束A、B、およびCが、レンズ122からランダム偏光により生じて、スクリーン130へと投影されて画像を形成する。本実施形態においては、PBS112は、図1に示す偏光子22の代わりに挿入される。PBS112はP‐偏光124を透過して、S‐偏光126を反射する。P‐偏光124は、偏光スイッチを透過して(光束A、B、およびC)、図1の光束A、B、およびC同様に、偏光スイッチにより交互フレームで回転される。」(段落【0020】)、
「PBS112で反射したS‐偏光126は、偏光回転子114(例えば、1/2波長板、幾らかの実施形態では好適にはアクロマートである)を透過して、回転させられてp‐偏光128となる。この新たなp‐偏光128は、フォールドミラー116へと透過する。フォールドミラー116は、この新たなp‐偏光128を反射して、偏光スイッチ120へと透過させる。偏光スイッチ120は、p‐偏光光束A'、B'、およびC'に働きかけ、光束A、B、およびCの回転に同期するよう、光束の偏光を交互フレームで回転させる。光束A'、B'、およびC'のスクリーンでの位置は、光束A、B、およびCのスクリーンの位置と略または正確に同じになるように(例えば、フォールドミラー116の傾きを調節することにより)調節されてよい。投影レンズ122からのランダム偏光106の略全てがスクリーン130上に単一の偏光状態で結像するので、図2のシステムが生じる画像は、図1のシステムのスクリーンに生じる画像よりも約2倍明るいことになる。」(段落【0021】)、
と記載されている。
また、本件特許図面の図2は次のとおりである。

iii 上記iiによれば、本件特許明細書では、「A」、「B」、「C」、「A'」、「B'」及び「C'」が、それぞれ「光束」と称されているものと認められる。
さらに、図2から、A、B、Cがそれぞれ異なった方向に進行しているとともに、A'、B'、C'がそれぞれ異なった方向に進行していることが見て取れる。
そうすると、本件特許明細書及び図面では、「第1光束」の「光束」との用語は、1つの像点を形成するためのものを意味するものとして使用されていることが認められる。

iv 以上によれば、「投影スクリーン上に投影される」「第1光路の第1光束」とは、投影スクリーン上の1像点を形成するための光束のうち、第1光路のものを意味すると解される。
また、「前記第2光路上の第2光束」は、「前記第1光路の第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと」「方向付け」られるものであるから、「第1光束」と同様に、「投影スクリーン上に投影される」ものということができ、よって、投影スクリーン上の1像点を形成するための光束であって、第2光路上のものを意味すると解される。

(b)他方、甲1発明の「偏光方向が揃えられた光」は、「偏光分離面35aを透過したp偏光光」(以下、この経路の各光線を束ねたものを「第1の光線束」という。)と、「反射面36aにおいて反射されたs偏光光」が「1/2波長板37」により「p偏光光に変化された」光(以下、この経路の各光線を束ねたものを「第2の光線束」という。)とからなるところ、第1の光線束と第2の光線束は、その後、「ロッドインテグレータ21Rにより照度分布が均一化され、ロッドインテグレータ21Rから射出された後、透過型液晶ライトバルブ20Rに入射され、プロジェクタ1に入力された映像信号に基づいて変調され、ダイクロイックプリズム40に向けて射出され、その後、」「投射レンズ41に向けて射出され」るものであって、「投射レンズ41は、」この「光をスクリーン42に向けて拡大投射」するものである。
ここで、「ロッドインテグレータ21R」は、「中実のガラスや樹脂などの透明な部材でできており、光源部11Rから射出された光を透過型液晶ライトバルブ20Rに導くとともに、内部で全反射を繰り返すことにより、光源部11Rから照射された光の照度分布を略均一にしている」ものであるから、第1の光線束に属する各光線及び第2の光線束に属する各光線は、ロッドインテグレータ21Rを射出した後は、それぞれの光線が、ロッドインテグレータ21Rの射出領域のほぼ全域にまで拡がっているものと解される。
そして、これらの光線は、ロッドインテグレータ21Rから射出された後は、透過型液晶ライトバルブ20Rにより変調がなされるのであるから、結局、第1の光線束に属する各光線及び第2の光線束に属する各光線は、ロッドインテグレータ21Rに入射される前の時点では、それぞれの光線が、スクリーン42上の像のほぼ全体を形成するためのものとなっているものと認められる。

(c)そうすると、甲1発明の第2の光線束又はそれに属する各光線は、「反射部36」(本件特許発明19の「反射部材」に相当。)により反射される時点では、本件特許発明19の「投影スクリーン上に投影される」「前記第2光路上の第2光束」に相当することはなく、したがって、甲1発明は、本件特許発明19の「前記反射部材は、前記第2光路上の第2光束を反射する」との特定事項を備えていないことになる。

(d)さらに、甲1発明の第2の光線束及びそれに属する各光線は、「反射部36」により反射される時点では、スクリーン42上の像のほぼ全体を形成するためのものとなっているのであるから、これらを、「反射部36」により反射される時点において、「投影スクリーン上に投影される」「前記第2光路上の第2光束」にすること、すなわち、本件特許発明19の「前記反射部材は、前記第2光路上の第2光束を反射することにより」との構成とすることが当業者にとって容易に想到できるとはいえないことも明らかである。

(e)そして、上記(d)の判断は、以下のとおり、甲12発明を考慮しても変わることはない。
甲12発明は、「左画像用光線38が左画像生成エレメント42に当たるとき、LCOSパネルの活性化した画素に当たる光線の選択された部分は、光学的に回転され」るものであるとともに「左画像用光線38の光学的に回転される部分は偏光ビームスプリッタ36によって投影レンズ14に反射され」るものであるから、「偏光ビームスプリッタ36」は、「左画像生成エレメント42」を経由した後の光学的に回転した光線に対して反射作用を有するものということができる。
しかしながら、ここでいう「偏光ビームスプリッタ36」の反射作用は、変調された光線に対して奏されるものであるのであって、甲1発明の「反射部36」のように、変調される前の光線を対象とするものとは異なる。
したがって、甲1発明の「反射部36」(本件特許発明19の「反射部材」に相当。」)に関して、甲12発明を適用することはできないというべきである。

(f)なお、甲第1号証の段落【0045】には、「照明装置からロッドインテグレータを省いた構成としても良い。」と記載されているが、甲1発明として、この態様を認定したとしても、以下のとおり、結論が変更されることはない。
甲1発明において、「ロッドインテグレータ21R」を省いた場合、その構成からみて、第1の光線束に属する各光線は、それぞれ、透過型液晶ライトバルブ20Rの画素のうち、いずれか1つに入射することになり、その後、「投射レンズ41に向けて射出され、投射レンズ41は、」「光をスクリーン42に向けて拡大投射」されるのであるから、第1の光線束に属する各光線を、いずれも、本件特許発明19の「第1の光路の第1光束」に相当するとみることができる。そして、同様に、第2の光線束に属する各光線を、いずれも、本件特許発明19の「第2の光路上の第2光束」に相当するとみることができる。
しかしながら、上記態様の構成からみて、第1の光線束に属する各光線が入射する透過型液晶ライトバルブ20Rの画素と、第2の光線束に属する各光線が入射する透過型液晶ライトバルブ20Rの画素とは異なるものと解され、よって、第1の光線束に属する各光線と第2の光線束に属する各光線とは、「スクリーン42」上の異なる位置に投射されることになる。
他方、本件特許発明19の[相違点2]に係る構成においては、「第1光路の第1光束」と「第2光路上の第2光束」とが、「投影スクリーン上」の「略同様の位置へと」「投影され」ているものである。
そうすると、甲1発明において、「ロッドインテグレータ21R」を省いた態様を認定した場合は、本件特許発明19とは、この点で実質的に相違することになり、また、この相違点を容易想到とはできないことも明らかである。

b 上記aによれば、[相違点1]について検討するまでもなく、本件特許発明19は、甲1発明、甲2発明及び甲12発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。

(イ)よって、本件特許発明19は、甲1発明、甲2発明及び甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)他の独立項に係る本件特許発明1ないし3、17、18及び27ないし29について
ア 本件特許発明17について
本件特許発明17は、本件特許発明19と対比すると、第2光路上の偏光回転部材と反射部材との前後配置関係を交換したものに相当する。
そうすると、本件特許発明17と甲1発明とは、依然として、本件特許発明19と同様の[相違点2](上記(3)ア(イ))で相違するから、本件特許発明19と同様に、甲1発明、甲2発明及び甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明18について
本件特許発明18は、本件特許発明19と対比すると、第2光路上の偏光回転部材と反射部材との前後配置関係を交換するとともに、偏光スイッチを第1光路上の第1偏光スイッチパネル及び第2光路上の第2偏光スイッチパネルに変更し、さらに、第2偏光スイッチパネルと偏光回転部材及び反射部材との位置関係を特定したものに相当する。
そうすると、本件特許発明18と甲1発明とは、依然として、本件特許発明19と同様の[相違点2](上記(3)ア(イ))で相違するから、本件特許発明19と同様に、甲1発明、甲2発明及び甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件特許発明1ないし3について
本件特許発明1ないし3は、それぞれ、本件特許発明17ないし19の下位概念に実質的に相当する。
そうすると、本件特許発明1ないし3と甲1発明とは、依然として、本件特許発明19と同様の[相違点2](上記(3)ア(イ))で実質的に相違するから、本件特許発明19と同様に、甲1発明、甲2発明及び甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件特許発明27ないし29について
本件特許発明27ないし29は立体画像投影方法に係るものであるところ、それぞれ、本件特許発明1ないし3の偏光変換システムを方法として表現したものに実質的に相当する。
そうすると、本件特許発明27ないし29と甲1発明を方法として表現した発明とは、依然として、本件特許発明19と同様の[相違点2](上記(3)ア(イ))で相違するから、本件特許発明19と同様に、甲1発明、甲2発明及び甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)従属項に係る本件特許発明4ないし16、20ないし26及び30ないし32について
ア 上記(3)及び(4)のとおり、独立項に係る本件特許発明が、甲1発明、甲2発明及び甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、従属項に係るこれらの本件特許発明も、同様に、甲1発明、甲2発明及び甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ なお、請求人は、本件特許発明7について、鏡を、光路を増加又は減少する手段として提供することは周知(甲第7号証)である旨主張する(理由1-1)とともに、本件特許発明13、16、25及び32について、傾斜可能鏡を用いて、鏡で反射された像のアライメントを変えることができることが周知(甲第8号証ないし甲第11号証)である旨主張する(理由1-2)ところ、請求人の主張通りの周知技術を認定できたとしても、上記アの判断が変更されることがないことは明らかである。

(6)無効理由1についてのまとめ
以上のとおり,本件特許発明1ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではない。
よって、無効理由1は、理由がない。

3 無効理由2について
(1)無効理由2は、甲第3号証を主引例とした理由であり、以下に判断する。

(2)引用例
ア 甲第3号証
(ア)本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、図とともに次の記載がある。
a 「Referring to FIGS. 1 to 3 of the drawings, a light projection system 1 has as its main components a source of unpolarized light (not shown), polarizing means 3, and image means 4.
The source of unpolarized light can be a conventional high power light bulb, typically of power 1.2 to 5 kW, light from which passes through appropriate optical components. The unpolarized light 2 passes through a converging lens 10 and a diverging lens 11, which reduce the width of the light beam to a size suitable for entering the polarizing means 3.
Polarizing means 3, shown in more detail in FIG. 3, comprises a polarizing cube beam splitter 5 into which the unpolarized light 2 passes. A birefringent layer 6 is formed across one diagonal of the polarizing cube beam splitter 5 in a known manner as shown. The polarizing cube beam splitter 5 is "tuned" so that it only operates on specific wavelengths of light. Polarizing cube beam splitters 5 are available to cover the optical range of 450 to 700 nm and which have broad band anti-reflection coatings to minimize reflection losses at boundaries.
The unpolarized light 2 which is incident on the polarizing cube beam splitter 5 is divided into its two components of plane polarization (the "p" and "s" polarizations). The "p" component 20, which may be polarized in the vertical direction in the drawings for example, passes straight through the polarizing cube beam splitter 5. The "s" component 21, which may be polarized in the horizontal direction in the drawings, is reflected upwards by the birefringent layer 6 as indicated at "A". Deflection means 7, which can be formed by a deflecting cube 8 having a planar mirror 9 across one diagonal or a right angled prism for example, is fitted on top of the polarizing cube beam splitter 5 to receive the deflected s component light beam 21. The deflected s component light beam 21 is reflected by the mirror 9 so as to travel in the same direction as the first transmitted p component light beam 20. A half-wave plate 12 is fixed to the surface of the deflecting cube 8 through which the deflected s component light beam 21 exits. The half-wave plate 12 rotates through 90.degree. the polarization of light that passes through the half-wave plate 12. Thus, the polarization of the deflected s component light beam 21 after emerging from the half-wave plate 12 is in the same plane or direction as the polarization of the transmitted polarized p component light beam 20, which was transmitted directly by the polarizing cube beam splitter 5.
It will be appreciated that substantially all of the light incident on the polarizing means 3 is converted into plain polarized light emitted in the same direction. The only losses are the practically negligible losses at any boundaries, such as at the birefringent layer 6, the mirror 9, and the surfaces of the cubes 5, 8 through which light passes. In contrast, in the prior art, when light is polarized by passing through a conventional polarizer prior to entry into a liquid crystal cell, only half of the light is polarized. The other half is absorbed by the polarizer, leading to loss of light intensity and also to heating of the polarizer. Where the light source is bright (as required for a projection system), the heating of the polarizer can be substantial and has conventionally ruled out the possibility of using a liquid crystal in a projection system of this type.
The beam 22 of p and s component light emerging from the polarizing means 3, which consists of the separate polarized light beams 20, 21 discussed above, then passes through a diverging rectangular lens 13 and then through a converging rectangular lens 14. The rectangular lenses 13, 14 convert the incident polarized light beam 22 into a polarized light beam 23 of an appropriate size and shape. The polarized light beam 23 then passes through a diverging lens 15 and a converging lens 16, which cause the polarized light beam 23 to expand to the size suitable to fill the single image means 4 constituted by an array of liquid crystal cells 17.
The liquid crystal cells 17 are formed by a layer of liquid crystal 18 sandwiched between opposed layers of glass 19. The image means 4 can consist of many "pixels" of liquid crystal cells. There may be, for example, 640.times.480 pixels. Each cell/pixel can be individually addressed by appropriate control means to determine by how much each pixel/cell rotates the polarization of light passing through it. These pixels collectively make up or generate the required graphic image to be projected. It will be appreciated that the liquid crystal cells do not have a polarizer or analyzer as is the case with a conventional liquid crystal display.
Depending on the type, liquid crystal cells rotate the polarization of light transmitted by the liquid crystal by 90.degree. if no voltage is applied to the liquid crystal. When a voltage is applied across the liquid crystal, light is transmitted without its state of polarization being affected. In a conventional liquid crystal display, a polarizer and an analyzer that are aligned in the same direction are fixed on the front and back of the liquid crystal cell respectively. Light entering the device is polarized by the polarizer. If a voltage is applied to the liquid crystal, light passing through the liquid crystal remains in the same state of polarization and therefore passes through the analyzer; the pixel is "on." If a voltage is not applied to the liquid crystal, the state of polarization of the polarized light passing through the liquid crystal is rotated by 90.degree. and is therefore completely blocked by the analyzer; the pixel is "off."
In another type of liquid crystal cell, the opposite applies so that the polarization of light is rotated only if a voltage is applied to the liquid crystal cell.
Thus, in the present invention, which uses the polarizing means 3, the polarized light beam 23 incident on the liquid crystal cells 17 either has its state of polarization rotated through 90.degree. or left unaltered, according to whether or not a voltage is applied across the individual liquid crystal cells 17. Gray scale can be achieved in conventional manner by either varying the angle of rotation of the polarization or toggling between complete "on" and "off" states at varying frequencies as required, depending on how the liquid crystal cell is controlled.
The modulated light emerging from the image means 4 is preferably passed through a converging lens 24 and a diverging lens 25 to bring the light beam down to a size suitable for passing through a second polarizing cube beam splitter 26. The second polarizing cube beam splitter 26 is used in place of the analyzer conventionally attached to a liquid crystal cell in a conventional liquid crystal display device. It will be appreciated that an analyzer could be used as is conventional, instead of the second polarizing cube beam splitter 26. However, a conventional analyzer would suffer from the problem of heating by virtue of absorbing the light that it does not transmit. This problem is avoided by use of the second polarizing cube beam splitter 26 because, instead of absorbing light that is not transmitted, the non-transmitted light is deflected away as shown at 27 and can be directed to a suitable heat sink 28 if desired. Furthermore, it will be appreciated that the non-transmitted light 27 that is deflected away by the second polarizing cube beam splitter 26 is the inverse image of the light 29 that is transmitted by the second polarizing cube beam splitter 26. This inverse image could be used to be projected to a different screen from the main transmitted beam 29 so that additional lighting effects can be achieved if desired, or used for some other purpose.
The main transmitted beam 29 that passes through the second polarizing cube beam splitter 26 is preferably passed through a diverging lens 30 and then through a converging lens 31, so as to produce a final image light beam 32 of the desired size to be projected onto a wall or other screen (not shown).」(3欄下から4行?6欄4行)
(翻訳:図面の図1乃至3において、光投影システム1は、その主構成要素として、非偏光光源(図示せず),偏光手段3、及び画像手段4を有する。
非偏光光源は、従来の高出力白熱電球であってよく、通常、1.2乃至5kW出力のものであって、そこからの光は、適切な光学構成要素を通過する。非偏光光2は、収束レンズ10及び発散レンズ11を通過し、これらによって光ビームの幅が小さくなり偏光手段3に入射するのに適するサイズになる。
図3に更に詳細に示す偏光手段3には、非偏光光2が進む偏光立方ビームスプリッタ5が含まれる。複屈折層6は、図示する既知の方法で偏光立方ビームスプリッタ5の1つの対角線に沿って形成される。偏光立方ビームスプリッタ5は、特定の光の波長でのみ動作するように「調整」される。偏光立方ビームスプリッタ5は、450乃至700nmの光学範囲を網羅するのに利用可能であり、また、境界における反射損失を最小にする広帯域の反射防止膜を有する。
偏光立方ビームスプリッタ5に入射する非偏光光2は、その平面偏光の2つの成分(「p」及び「s」偏光)に分割される。「p」成分20は、例えば、図面の垂直方向に偏光し得るが、偏光立方ビームスプリッタ5を真っ直ぐに通過する。「s」成分21は、図面の水平方向に偏光し得るが、「A」に示すように、複屈折層6によって上方に反射される。偏向手段7は、例えば、1つの対角線に沿う平面鏡9又は直角プリズムを有する偏向立方体8によって形成し得るが、偏光立方ビームスプリッタ5上に設置されて、偏向s成分光ビーム21を受光する。偏向s成分光ビーム21は、第1透過p成分光ビーム20と同じ方向に進むように、鏡9によって反射される。半波長板12は、偏向立方体8の表面に固定され、それを通して、偏向s成分光ビーム21が出射する。半波長板12は、半波長板12を通過する光の偏光を90°回転する。従って、半波長板12から出現した後の偏向s成分光ビーム21の偏光は、偏光立方ビームスプリッタ5によって直接透過された透過偏光p成分光ビーム20の偏光と同じ面又は方向である。
偏光手段3に入射するほぼ全ての光は、同じ方向に放出される平面偏光に変換されることが理解されよう。唯一の損失は、複屈折層6,鏡9,及びそれを通して光が進む立方体5,8の表面等の任意の境界おける現実的に無視できる損失である。対照的に、従来技術においては、液晶セルへの入射に先立って従来の偏光子を通過することによって光が偏光されると、その光の半分だけが偏光される。他の半分は、偏光子によって吸収され、光強度の損失及び偏光子の加熱につながる。(投影システムに要求されるように)光源が明るい場合、偏光子の加熱は、かなりのものであり、従来、このタイプの投影システムにおいて、液晶を用いる可能性は除外されてきた。
上述した別々の偏光ビーム20,21を含む、偏光手段3から出射するp及びs成分光ビーム22は、発散矩形レンズ13を通過し、そして、収束矩形レンズ14を通過する。矩形レンズ13,14は、入射偏光ビーム22を適切なサイズ及び形状の偏光ビーム23に変換する。そして、偏光ビーム23は、発散レンズ15及び収束レンズ16を通過し、これらによって、偏光ビーム23は、アレイ状の液晶セル17によって構成された単一の画像手段4を満たすのに適するサイズに拡大される。
液晶セル17は、ガラス19の対向層間に挟まれた液晶18の層によって形成される。画像手段4は、液晶セルの多くの「画素」から構成できる。例えば、640×480画素があってよい。各セル/画素は、適切な制御手段によって個別にアドレス指定して、どれだけ各画素/セルが、それを通過する光の偏光を回転するか決定できる。これらの画素は、要求される投影対象のグラフィック画像を全体として構成又は生成する。液晶セルは、従来の液晶表示装置の場合のように偏光子又は検光子を有さないことが理解されよう。
種類に応じて、液晶セルは、電圧が液晶に印加されないと、液晶によって透過された光の偏光を90°回転する。電圧が液晶間に印加されると、光は、その偏光状態が影響を受けることなく透過される。従来の液晶表示装置において、同じ方向に配向されている偏光子及び検光子は、それぞれ、液晶セルの前面及び後面に固定される。装置に入射する光は、偏光子によって偏光される。電圧が液晶に印加される場合、液晶を通過する光は、同じ偏光状態に維持され、従って、検光子を通過し、即ち、画素が「オン」になる。電圧が液晶に印加されない場合、液晶を通過する偏光光の偏光状態は、90°だけ回転され、従って、検光子によって完全にブロックされ、即ち、画素が「オフ」になる。
他のタイプの液晶セルでは、逆のことが当てはまり、光の偏光は、電圧が液晶セルに印加された場合にのみ回転される。
従って、偏光手段3を用いる本発明では、液晶セル17に入射する偏光ビーム23は、電圧が個々の液晶セル17間に印加されるかどうかにより、その偏光状態が90°回転されるか又は変更されずそのままの状態が維持されるかのいずれかである。グレースケールは、液晶セルの制御方法に応じて、偏光の回転の角度を変えるか又は必要に応じて様々な周波数で完全な「オン」状態と「オフ」状態との間で切り換えるかのいずれかによって、従来通りの方法で達成し得る。
画像手段4から出射する変調光は、好適には、収束レンズ24及び発散レンズ25を通過し、その光ビームは、第2偏光立方ビームスプリッタ26を通過するのに適したサイズにされる。第2偏光立方ビームスプリッタ26は、従来の液晶表示装置の液晶セルに従来取り付けられる検光子の代わりに用いられる。検光子は、第2偏光立方ビームスプリッタ26の代わりに、従来のように用い得ることが理解されよう。しかしながら、従来の検光子は、それが透過しない光を吸収するおかげで熱くなるという問題を被る。この問題は、第2偏光立方ビームスプリッタ26を用いることによって回避されるが、この理由は、透過されない光を吸収する代わりに、非透過光が、27に示すように偏向されて遠ざかり、望まれる場合、適切なヒートシンク28に導くことができるためである。更に、第2偏光立方ビームスプリッタ26によって偏向されて遠ざかる非透過光27は、第2偏光立方ビームスプリッタ26によって透過される光29の逆の画像であることが理解されよう。この逆の画像は、追加の照明効果を希望に応じて実現し得るように又は何らかの他の目的のために用い得るように、主透過ビーム29から異なるスクリーンへの投影に用いることができる。
第2偏光立方ビームスプリッタ26を通過する主透過ビーム29は、好適には、発散レンズ30を通過し、そして、壁又は他のスクリーン(図示せず)に投影される所望のサイズの最終的な画像光ビーム32を生成するように、収束レンズ31を通過する。)(翻訳文5頁12行?6頁下から13行)

b 図1は次のとおりである。

c 図3は次のとおりである。

d 図1によれば、半波長板12が、偏向手段7の出射面に取り付けられていることが見て取れる。

(イ)上記(ア)の各事項によれば、甲第3号証には、本件特許発明19にならって整理すると、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「非偏光光の「p」成分20が真っ直ぐに通過されるとともに、「s」成分21が上方に反射される偏光立方ビームスプリッタ5と、
偏光立方ビームスプリッタ5上に設置されて、偏向s成分光ビーム21を受光するとともに、第1透過p成分光ビーム20と同じ方向に進むように反射する偏向手段7と、
偏向s成分光ビーム21を通過させてその偏光を90°回転するものであって、偏向手段7の出射面に取り付けられている半波長板12と、
別々の偏光ビーム20,21を含む、p及びs成分光ビーム22の形状及びサイズが変換された偏光ビーム23が入射される画像手段4と、
を備え、
画像手段4は、液晶セルの多くの「画素」から構成され、各セル/画素は、適切な制御手段によって個別にアドレス指定して、どれだけ各画素/セルが、それを通過する光の偏光を回転するか決定でき、これらの画素は、要求される投影対象のグラフィック画像を全体として構成又は生成するものであって、液晶セル17に入射する偏光ビーム23は、電圧が個々の液晶セル17間に印加されるかどうかにより、その偏光状態が90°回転されるか又は変更されずそのままの状態が維持されるかのいずれかであり、
液晶セルは、電圧が液晶に印加されないと、液晶によって透過された光の偏光を90°回転し、電圧が液晶間に印加されると、光は、その偏光状態が影響を受けることなく透過されるものであって、
画像手段4から出射する変調光は、検光子の代わりに用いられる第2偏光立方ビームスプリッタ26を通過し、
第2偏光立方ビームスプリッタ26を通過する主透過ビーム29は、好適には、発散レンズ30を通過し、そして、壁又は他のスクリーンに投影される所望のサイズの最終的な画像光ビーム32を生成するように、収束レンズ31を通過する、
光投影システム1。」

イ 他の引用例
本件特許発明19に対する無効理由2では、他の引用例に記載された発明は主張されていない。

(3)本件特許発明19について
ア 対比
(ア)本件特許発明19と甲3発明とを以下に対比する。
a 甲3発明の「偏光立方ビームスプリッタ5」、「反射する偏向手段7」及び「偏向s成分光ビーム21を通過させてその偏光を90°回転する」「半波長板12」は、それぞれ、本件特許発明19の「偏光ビームスプリッタ」、「反射部材」及び「偏光回転部材」に相当する。

b 甲3発明の「偏光立方ビームスプリッタ5」は、「非偏光光の「p」成分20が真っ直ぐに通過される」ものであるから、本件特許発明19の「第1光路」「へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタ」に該当する。

c 甲3発明の「偏光立方ビームスプリッタ5」は、「非偏光光の」「「s」成分21が上方に反射される」ものであるから、本件特許発明19の「第2光路」「へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタ」に該当する。

d 甲3発明の「反射する偏向手段7」(本件特許発明19の「反射部材」に相当。)は、「偏光立方ビームスプリッタ5上に設置されて、偏向s成分光ビーム21を受光するとともに、第1透過p成分光ビーム20と同じ方向に進むように反射する」ものであるから、上記cに照らすと、本件特許発明19の「前記第2光路上に配置される」との特定事項を満足する。

e 甲3発明の「偏向s成分光ビーム21を通過させてその偏光を90°回転する」「半波長板12」(本件特許発明19の「偏光回転部材」に相当。)は、「偏向s成分光ビーム21を通過させ」るものであって、「偏向手段7の出射面に取り付けられている」ものであるから、上記cに照らすと、本件特許発明19の「前記第2光路上であって、前記反射部材の後に配置される」との特定事項を満足する。

f 甲3発明の「画像手段4」は、「液晶セルの多くの「画素」から構成され、各セル/画素は、適切な制御手段によって個別にアドレス指定して、どれだけ各画素/セルが、それを通過する光の偏光を回転するか決定でき」るものであり、「液晶セル17に入射する偏光ビーム23は、電圧が個々の液晶セル17間に印加されるかどうかにより、その偏光状態が90°回転されるか又は変更されずそのままの状態が維持されるかのいずれかであ」るから、本件特許発明19の「偏光スイッチ」に該当する。

g 甲3発明の「第1透過p成分光ビーム20」及び「偏向s成分光ビーム21」は、それぞれ光線束であると認められるところ、「第1透過p成分光ビーム20」に属する各光線は、「画像手段4」の「多くの「画素」」のうち、いずれか1つに入射することになり、その後、「壁又は他のスクリーンに投影される所望のサイズの最終的な画像光ビーム32を生成するように、収束レンズ31を通過する」ことになるから、「第1透過p成分光ビーム20」に属する各光線を、いずれも、本件特許発明19の「第1の光路の第1光束」に相当するとみることができる。
そして、同様に、甲3発明の「偏向s成分光ビーム21」に属する各光線を、いずれも、本件特許発明19の「第2の光路上の第2光束」に相当するとみることができる。

h 甲3発明の「画像手段4」(本件特許発明19の「偏光スイッチ」に該当。)は、「液晶セル17に入射する偏光ビーム23は、電圧が個々の液晶セル17間に印加されるかどうかにより、その偏光状態が90°回転されるか又は変更されずそのままの状態が維持されるかのいずれかであ」るから、上記f及びgに照らすと、甲3発明は、本件特許発明19の「前記偏光スイッチは、前記第1光路の第1光束および前記第2光路の第2光束の各偏光状態を、」「第1出力偏光状態および第2出力偏光状態のうちのいずれか一方に選択的に変換し、」との特定事項を備えていることになる。

i 甲3発明の「反射する偏向手段7」(本件特許発明19の「反射部材」に相当。)は、上記d及びgに照らすと、本件特許発明19の「前記第2光路上の第2光束を反射する」との特定事項を満足する。

j 甲3発明の「画像手段4」(本件特許発明19の「偏光スイッチ」に該当。)は、「別々の偏光ビーム20,21を含む、p及びs成分光ビーム22の形状及びサイズが変換された偏光ビーム23が入射される」ものであるから、本件特許発明19の「前記第1光路上および前記第2光路上であって、前記偏光回転部材の後ろに配置される」との特定事項を満足する。

k 甲3発明の「光投影システム1」は、「偏光立方ビームスプリッタ5上に設置されて、偏向s成分光ビーム21を受光するとともに、第1透過p成分光ビーム20と同じ方向に進むように反射する偏向手段7と、偏向s成分光ビーム21を通過させてその偏光を90°回転するものであって、偏向手段7の出射面に取り付けられている半波長板12と」を備えているから、本件特許発明19の「偏光変換システム」に該当する。

(イ)上記(ア)によれば、本件特許発明19と甲3発明とは、
「第1光路および第2光路へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタと、
前記第2光路上に配置される反射部材と、
前記第2光路上であって、前記反射部材の後ろに配置される偏光回転部材と、
前記第1光路上および前記第2光路上であって、前記偏光回転部材の後ろに配置される偏光スイッチと、
を備え、
前記偏光スイッチは、前記第1光路の第1光束および前記第2光路の第2光束の各偏光状態を、第1出力偏光状態および第2出力偏光状態のうちのいずれか一方に選択的に変換し、
前記反射部材は、前記第2光路上の第2光束を反射する、
偏光変換システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
「前記第1光路の第1光束および前記第2光路の第2光束の各偏光状態を、」「第1出力偏光状態および第2出力偏光状態のうちのいずれか一方に選択的に変換」する「偏光スイッチ」について、本件特許発明19は、前記第1光路の第1光束および前記第2光路の第2光束の各偏光状態を、「共に、」第1出力偏光状態および第2出力偏光状態のうちのいずれか一方に選択的に変換するものであるのに対し、甲3発明は、そうなっていない点。

[相違点2]
「反射部材」について、本件特許発明19は、「前記第2光路上の第2光束を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路の第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、前記偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路の第2光束を方向付ける」ものであるのに対し、甲3発明は、そうであるのか明らかではない点。

相違点の判断
(ア)上記各相違点について検討する。
a [相違点1]について
甲3発明では、上記ア(ア)gのとおり、「第1透過p成分光ビーム20」に属する各光線は、「画像手段4」の「多くの「画素」」のうち、いずれか1つに入射することになり、「偏向s成分光ビーム21」に属する各光線は、「画像手段4」の「多くの「画素」」のうち、いずれか1つに入射することになるところ、甲3発明の構成からみて、「第1透過p成分光ビーム20」に属する各光線(本件特許発明19の「第1光路の第1光束」に相当。)が入射する「画像手段4」の「画素」と、「偏向s成分光ビーム21」に属する各光線(本件特許発明19の「第2光路上の第2光束」に相当。)が入射する「画像手段4」の「画素」とは、異なるものと解される。
そうすると、甲3発明の「画像手段4」(本件特許発明19の「偏光スイッチ」に該当。)において、「前記第1光路の第1光束および前記第2光路の第2光束の各偏光状態を、『共に、』第1出力偏光状態および第2出力偏光状態のうちのいずれか一方に選択的に変換する」ことはあり得ない。
したがって、[相違点1]は当業者が容易に想到し得たものではない。

b [相違点2]について
上記aのとおり、甲3発明では、「第1透過p成分光ビーム20」に属する各光線が入射する「画像手段4」の「画素」と、「偏向s成分光ビーム21」に属する各光線が入射する「画像手段4」の「画素」とは、異なるものと解される。
そうすると、「第1透過p成分光ビーム20」に属する各光線(本件特許発明19の「第1光路の第1光束」に相当。)と「偏向s成分光ビーム21」に属する各光線(本件特許発明19の「第2光路上の第2光束」に相当。)とは、「壁又は他のスクリーン」上の異なる位置に投射されることになる。
他方、本件特許発明19の[相違点2]に係る構成においては、「第1光路の第1光束」と「第2光路上の第2光束」とが、「投影スクリーン上」の「略同様の位置へと」「投影され」ているものである。
そうすると、本件特許発明19と甲3発明とは、この点で実質的に相違することになり、また、この相違点を容易想到とはできないことが明らかである。

(イ)よって、本件特許発明19は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)他の本件特許発明については、依然として、本件特許発明19と甲3発明との間の[相違点1]及び[相違点2](上記(3)ア(イ))を実質的に有するといえるから、無効理由1での検討(上記2(4)?(6))と同様に、甲3発明、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)無効理由2についてのまとめ
以上のとおり,本件特許発明1ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではない。
よって、無効理由2は、理由がない。

4 無効理由4について
(1)無効理由4は、甲第5号証を主引例とするとともに甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証を副引例とした理由であり、以下に判断する。

(2)引用例
ア 甲第5号証
(ア)本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、図とともに次の記載がある。
a 「FIG. 9 is a construction diagram of a liquid crystal projector embodying the invention. This liquid crystal projector includes an illumination optical system 100, three liquid crystal panels 23 to 25, a color separation optical system 200, and a projection optical system 300. The illumination optical system 100 produces a visible light having an aligned polarization direction. The color separation optical system 200 separates the visible light from the illumination optical system 100 into rays of a plurality of primary colors and projects these rays of the respective primary colors on the corresponding liquid crystal panels 23 to 25. The projection optical system 300 introduces the rays of the respective color components to a screen while causing the optical axes thereof to coincide with each other, thereby projecting images formed on the liquid crystal panels 23 to 25 onto the screen. Respective constructions of the elements will be successively described.
The illumination optical system 100 is constructed such that visible light in a specified visible spectrum is caused to be incident on the polarized beam splitter PBS by a light source 101, a parabolic mirror 102, and an IR-UV cutoff filter 103. Specifically, the light source 101 is a metal halide lamp for irradiating a white beam of randomly polarized light. The parabolic mirror 102 has a reflection surface 102a which is a partial surface including a pole of a paraboloid of revolution and has a cross section which is symmetrical with respect to a line. The parabolic mirror 102 is adapted to reflect a light irradiated from a focus (the light source 101 is located in this focus position) to the outside (rightward in FIG. 9) of an opening 102b. An IR-UV filter 103 is arranged in the vicinity of the opening 102b and is adapted to produce a desired visible light by removing light components within wavelength ranges unnecessary for lights of the three primary colors from the direct light from the light source 101 and the light reflected by the reflection surface 102a.
The thus produced visible light is incident on the first lens array 104 constructing an optical integrator. The first lens array 104 includes a plurality of two-dimensionally arranged first lenses 104a and projects the visible light to the polarized beam splitter PBS while dividing it into a plurality of beams.
The polarized beam splitter PBS is, for example, constructed similarly to the one of the first embodiment. Specifically, the polarized beam splitter PBS is such that the polarizing multilayered film 3 is formed between a transparent glass (first transparent base) 1 in the form of a triangular prism and a glass plate (second transparent base) 2. The splitter PBS is arranged such that the polarizing multilayered film 3 and a rear surface 2a of the glass plate 2 are at 45.degree. to the optical axis of the first lens array 104. When a plurality of beams split by the first lens array 4 are incident on the polarizing multilayered film 3, they are split into rays of first linearly polarized light components (S-polarized light) 6 and rays of second linearly polarized light components (P-polarized light) 7 whose polarization directions are mutually perpendicular. In other words, the first linearly polarized light components of the visible light incident from the first lens array 4 are reflected at right angles by the polarizing multilayered film 3 for the incident angle of 45.degree., and emerge as the rays (S-polarized light) 6. On the other hand, the rear surface 2a of the glass plate 2 spaced from the polarizing multilayered film 3 by a thickness 2b functions as a full reflection surface. The second linearly polarized light components of the visible light incident from the first lens array 4 and perpendicular to the first linearly polarized light components are reflected at right angles by the rear surface 2a for the incident angle of 45.degree. and emerge as the rays (P-polarized light) 7. The thickness 2b is set based on the interval between the rays 6 and 7 (21/2 times the thickness 2b) and the interval between second lenses 10a.
A second lens array 10 constructing the optical integrator includes the second lenses 10a which are arranged in a two-dimensional manner in the vicinity of a position where the plurality of rays 6, 7 split by the polarized beam splitter PBS converge and are as many as a sum of the rays 6 and 7. Specifically, the second lens array 10 has twice as many second lenses 10a as the first lenses 104a of the first lens array 104, i.e., two second lenses 10a adjacent to each other along a vertical direction of FIG. 1 correspond to one first lens 4a. On a portion of the emergent surface of the second lens array 10 where the rays 7 emerge, there are mounted half-wave plates 9 for converting the second linearly polarized light components of the rays 7 so as to have the same polarization direction as the first linearly polarized light components of the rays 6. Accordingly, the visible rays emerging from the second lens array 10 and the half-wave plates 10b have their polarization directions aligned to that of the first linearly polarized light.
The illumination optical system 100 thus constructed can efficiently split the visible beams from the lens array 104 into two linearly polarized rays (S-polarized light and P-polarized light) since the inventive polarized beam splitter is incorporated, and the split rays can efficiently be used to illuminate the liquid crystal panel 23 brightly.
The liquid crystal panel 23 is a transmission type liquid crystal panel and forms an optical image of B; the liquid crystal panel 24 is a transmission type liquid crystal panel and forms an optical image of G; and the liquid crystal panel 25 is a transmission type liquid crystal panel and forms an optical image of R.
The color separation optical system 200 for separating the rays into rays of three primary colors to illuminate the corresponding three liquid crystal panels 23 to 25 includes dichroic filters 11, 12. The dichroic filter 11 has a cutoff value of a wavelength of 510 nm and is adapted to reflect the rays in the wavelength range of B while transmitting the rays in the wavelength ranges of R and G. A full reflection mirror 13 directs the separated rays in the wavelength range of B toward the liquid crystal panel 23. A field lens 14 projects the rays in the wavelength range of B reflected by the full reflection mirror 13 onto the liquid crystal panel 23. The dichroic filter 12 has a cutoff value of a wavelength of 580 nm and is adapted to reflect the rays in the wavelength range of G of those having transmitted the dichroic filter 11 while transmitting the rays in the wavelength range of R. A field lens 15 projects the rays in the wavelength range of G separated by the dichroic filter 12 onto the liquid crystal panel 24. Lenses 19, 20 and full reflection mirrors 17, 18 construct a relay optical system for introducing the rays in the wavelength range of R having transmitted the dichroic filter 12 to the liquid crystal panel 25 while maintaining their illuminance. A field lens 16 projects the rays in the wavelength range of R introduced by the relay optical system onto the liquid crystal panel 25.
A dichroic prism 21 is formed by joining four right-angle prisms so as to have a cubic shape or a rectangular parallelepipedic shape, and dichroic mirror portions are formed on its junction surfaces. The dichroic prism 21 combines the optical images of the respective colors R, G, B formed by the three liquid crystal panels 23 to 25.
A projection lens 22 constructs a projection optical system 300 for enlargedly projecting the color optical image combined by the dichroic prism 21 onto the screen.
As described above, since the polarized beam splitter according to the invention is incorporated in the illumination optical system 100 in this liquid crystal projector, the liquid crystal panels 23 to 25 can be illuminated brightly. As a result, an amount of the lights emerging from the liquid crystal panels 23 to 25 can be increased to make the projected image on the screen brighter.
In the above description, the inventive polarized beam splitter is applied to the liquid crystal projector. However, it is not limited to the application to liquid crystal projectors, but it is also applicable to usual projectors. In such a case as well, similar effects can be obtained.」(12欄47行?14欄56行)
(翻訳:図9は、本発明を具現化した液晶プロジェクタの構成図である。この液晶プロジェクタは、照明光学系100、3つの液晶パネル23?25、色分離光学系200、及び投影光学系300を含む。照明光学系100は、アライメントされた偏光方向を有する可視光を生成する。色分離光学系200は、照明光学系100からの可視光を複数の原色の光線へと分離し、各原色のこれらの光線を対応する液晶パネル23?25上に投影する。投影光学系300は、各色成分の光線をそれらの光軸を互いに一致させながらスクリーンに導入し、その結果、液晶パネル23?25上に形成された画像をスクリーン上に投影する。これらの素子の各構成を順に説明する。
照明光学系100は、ある特定の可視スペクトル内の可視光が、光源101、放物面鏡102、及びIR-UVカットフィルタ103によって、偏光ビームスプリッタPBSに入射させられるように構成される。具体的には、光源101は、ランダム偏光の白色ビームを照射するメタルハライドランプである。放物面鏡102は、回転放物面の極を含む部分面である反射面102aを有し、線対称の断面を有する。放物面鏡102は、焦点(光源101は、この焦点位置に位置付けられる)から照射された光を開口部102bの外側(図9の右側)へと反射するように構成される。IR-UVフィルタ103は、開口部102bの近くに配置され、光源101からの直射光及び反射面102aによって反射された光から、三原色の光にとって不必要な波長範囲の光成分を除去することによって所望の可視光を生成するように構成される。
このように生成された可視光は、光結合器を構成する第1のレンズアレイ104に入射する。第1のレンズアレイ104は、複数の二次元配置された第1のレンズ104aを含み、可視光を複数のビームへと分割しながら、偏光ビームスプリッタPBSへと投影する。
偏光ビームスプリッタPBSは、例えば、第1の実施形態のものと同様に構成される。具体的には、偏光ビームスプリッタPBSは、偏光多層フィルム3が、三角柱状の透明ガラス(第1の透明ベース)1と、ガラス板(第2の透明ベース)2との間に形成されるものである。スプリッタPBSは、偏光多層フィルム3及びガラス板2の裏面2aが第1のレンズアレイ104の光軸に対して45°であるように配置される。第1のレンズアレイ4によって分割された複数のビームが偏光多層フィルム3に入射すると、これらのビームは、偏光方向が互いに垂直である、第1の直線偏光成分の光線(S偏光)6と、第2の直線偏光成分の光線(P偏光)7とに分割される。つまり、第1のレンズアレイ4から入射した可視光の第1の直線偏光成分は、45°の入射角の場合、偏光多層フィルム3によって直角に反射され、光線(S偏光)6として出射する。一方、厚さ2b分だけ偏光多層フィルム3から間隔を空けたガラス板2の裏面2aは、全反射面として機能する。第1のレンズアレイ4から入射し、第1の直線偏光成分に対して垂直な可視光の第2の直線偏光成分は、45°の入射角の場合、裏面2aによって直角に反射され、光線(P偏光)7として出射する。厚さ2bは、光線6と7との間隔(厚さ2bの2.5倍)及び第2のレンズ10a間の間隔に基づいて設定される。
光結合器を構成する第2のレンズアレイ10は、偏光ビームスプリッタPBSによって分割された複数の光線6及び7が収束する位置の近くに二次元に配置され、光線6及び7の合計と同数の第2のレンズ10aを含む。具体的には、第2のレンズアレイ10は、第1のレンズアレイ104の第1のレンズ104aの2倍の数の第2のレンズ10aを含む、すなわち図1の垂直方向に沿って互いに隣接した2つの第2のレンズ10aが1つの第1のレンズ4aに対応する。光線7が出射する第2のレンズアレイ10の出射面の部分上には、光線6の第1の直線偏光成分と同じ偏光方向を持つように光線7の第2の直線偏光成分を変換するための半波長板9が取り付けられている。従って、第2のレンズアレイ10及び半波長板10bから出射する可視光線は、第1の直線偏光の偏光方向にアライメントされた偏光方向を有する。
このように構成された照明光学系100は、本発明の偏光ビームスプリッタが組み込まれているので、レンズアレイ104からの可視ビームを2つの直線偏光光線(S偏光及びP偏光)へと効率的に分割することができ、分割された光線を効率的に用いることにより、液晶パネル23を明るく照明することができる。
液晶パネル23は、透過型液晶パネルであり、かつBの光学像を形成し、液晶パネル24は、透過型液晶パネルであり、かつGの光学像を形成し、液晶パネル25は、透過型液晶パネルであり、かつRの光学像を形成する。
光線を三原色の光線へと分離して対応する3つの液晶パネル23?25を照明するための色分離光学系200は、ダイクロイックフィルタ11及び12を含む。ダイクロイックフィルタ11は、510nmの波長のカットオフ値を有し、R及びGの波長範囲の光線を透過させながら、Bの波長範囲の光線を反射するように構成される。全反射鏡13は、Bの波長範囲の分離された光線を液晶パネル23へと向ける。視野レンズ14は、全反射鏡13によって反射されたBの波長範囲の光線を液晶パネル23上に投影する。ダイクロイックフィルタ12は、580nmの波長のカットオフ値を有し、Rの波長範囲の光線を透過させながら、ダイクロイックフィルタ11を透過した光線の内、Gの波長範囲の光線を反射するように構成される。視野レンズ15は、ダイクロイックフィルタ12によって分離されたGの波長範囲の光線を液晶パネル24上に投影する。レンズ19及び20並びに全反射鏡17及び18は、ダイクロイックフィルタ12を透過したRの波長範囲の光線をそれらの照度を維持しながら液晶パネル25へと導入するためのリレー光学系を構成する。視野レンズ16は、リレー光学系によって導入されたRの波長範囲の光線を液晶パネル25上に投影する。
ダイクロイックプリズム21は、立方体形状又は直方体形状を有するように4つの直角プリズムを接合することによって形成され、ダイクロイックミラー部分は、その接合面上に形成される。ダイクロイックプリズム21は、3つの液晶パネル23?25によって形成された各色R、G、及びBの光学像を合成する。
投影レンズ22は、ダイクロイックプリズム21によって合成されたカラー光学像をスクリーン上に拡大して投影するための投影光学系300を構成する。
上記のように、本発明による偏光ビームスプリッタが、この液晶プロジェクタ内の照明光学系100に組み込まれているので、液晶パネル23?25を明るく照明することができる。その結果、液晶パネル23?25から出射する光の量を増加させて、スクリーン上の投影画像をより明るくさせることができる。
上記の記載では、本発明の偏光ビームスプリッタを液晶プロジェクタに適用した。但し、液晶プロジェクタへの適用に限られず、通常のプロジェクタにも適用可能である。その場合も同じ様に、同様の効果が得られる。」(翻訳文10頁19行?11頁下から7行)

b 「Further, the illumination optical system of the projector is not limited to the one shown in FIG. 9. For example, polarizing multilayered films 3 may be held between a plurality of transparent prisms 400 as shown in FIGS. 10 and 11 so as to split the polarized beam by the respective polarizing multilayered films 3. Since the inventive polarized beam splitter PBS is adopted in either case, the visible beam from the light source 101 can efficiently be split into two linearly polarized lights (S-polarized light and P-polarized light) to efficiently illuminate a specimen brightly.」(14欄57行?67行)
(翻訳:さらに、プロジェクタの照明光学系は、図9に示されたものに限られない。例えば、偏光多層フィルム3は、図10及び11に示されるように、各偏光多層フィルム3によって偏光ビームを分割するように複数の透明プリズム400間に保持されてもよい。どちらの場合でも本発明の偏光ビームスプリッタPBSが採用されるので、光源101からの可視ビームを2つの直線偏光(S偏光及びP偏光)へと効率的に分割して、試料を効率的に明るく照明することができる。)(翻訳文11頁下から6行?下から2行)

c 図9は次のとおりである。

d 図10は次のとおりである。

e 図10、上記a及びbの記載からみて、偏光ビームスプリッタPBSが、偏光多層フィルム3が各偏光多層フィルム3によって偏光ビームを分割するように複数の透明プリズム400間に保持されることで構成されている場合は、光源101からの可視ビームが各偏光多層フィルム3を透過するP偏光のビームと反射するS偏光のビームとに分割され、前記S偏光のビームが反射手段により反射されてS偏光として透明プリズム400から出射し、前記P偏光のビームは半波長板(上記aの翻訳文の「光線7が出射する第2のレンズアレイ10の出射面の部分上には、光線6の第1の直線偏光成分と同じ偏光方向を持つように光線7の第2の直線偏光成分を変換するための半波長板9が取り付けられている。」との記載を参照。)によりS偏光に変換されて透明プリズム400から出射し、両出射光が平行であることが認められる。

(イ)上記(ア)の各事項によれば、甲第5号証には、本件特許発明19にならって整理すると、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「光源101からの可視ビームを、各偏光多層フィルム3を透過するP偏光のビームと反射するS偏光のビームとに分割する偏光ビームスプリッタPBSと、
前記S偏光のビームを反射する反射手段と、
前記P偏光のビームをS偏光に変換する半波長板と、
を備え、
反射手段により反射されたS偏光のビーム及び半波長板によりS偏光に変換されたS偏光のビームが偏光ビームスプリッタPBSから平行に出射するものであり、
その後、光線は、三原色の光線へと分離して対応する3つの液晶パネル23?25を照明するための色分離光学系200と、光学像を形成する透過型液晶パネル23?25と、3つの液晶パネル23?25によって形成された各色R、G、及びBの光学像を合成するダイクロイックプリズム21と、ダイクロイックプリズム21によって合成されたカラー光学像をスクリーン上に拡大して投影するための投影光学系300を構成する投影レンズ22を透過する、
光学系。」

イ 甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証
甲第2-(2)号証を考慮した甲第2-(1)号証及びその記載については、無効理由1で述べた内容(上記2(2)イ)と同様である。

(3)本件特許発明19について
ア 対比
(ア)本件特許発明19と甲5発明とを以下に対比する。
a 甲5発明の「偏光ビームスプリッタPBS」、「反射手段」及び「前記P偏光のビームをS偏光に変換する半波長板」は、それぞれ、本件特許発明19の「偏光ビームスプリッタ」、「反射部材」及び「偏光回転部材」に相当する。

b 甲5発明の「偏光ビームスプリッタPBS」は、「光源101からの可視ビームを、各偏光多層フィルム3を透過するP偏光のビーム」「に分割する」から、本件特許発明19の「第1光路」「へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタ」に該当する。

c 甲5発明の「偏光ビームスプリッタPBS」は、「光源101からの可視ビームを、各偏光多層フィルム3を」「反射するS偏光のビーム」「に分割する」から、本件特許発明19の「第2光路」「へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタ」に該当する。

d 甲5発明の「反射手段」(本件特許発明19の「反射部材」に相当。)は、「各偏光多層フィルム3を」「反射するS偏光のビーム」を「反射する」から、上記cに照らすと、本件特許発明19の「前記第2光路上に配置される」との特定事項を満足する。

e 甲5発明の「透過型液晶パネル23?25」は「光学像を形成する」ためのものであるから、複数の画素を有していることが明らかである。
そして、甲5発明の「偏光ビームスプリッタPBSから平行に出射する」「半波長板によりS偏光に変換されたS偏光のビーム」及び「反射手段により反射されたS偏光のビーム」は、それぞれ光線束であると認められるところ、「半波長板によりS偏光に変換されたS偏光のビーム」に属する各光線は、「透過型液晶パネル23?25」の複数の画素のうち、いずれか1つに入射することになり、その後、「スクリーン上に拡大して投影」されるから、「半波長板によりS偏光に変換されたS偏光のビーム」に属する各光線を、いずれも、本件特許発明19の「第1の光路の第1光束」に相当するとみることができる。
そして、同様に、甲5発明の「反射手段により反射されたS偏光のビーム」に属する各光線を、いずれも、本件特許発明19の「第2の光路上の第2光束」に相当するとみることができる。

f 甲5発明の「反射手段」(本件特許発明19の「反射部材」に相当。)は、上記eに照らすと、本件特許発明19の「前記第2光路上の第2光束を反射する」との特定事項を満足する。

g 甲5発明の「光源101からの可視ビームを、各偏光多層フィルム3を透過するP偏光のビームと反射するS偏光のビームとに分割する偏光ビームスプリッタPBSと、前記S偏光のビームを反射する反射手段と、前記P偏光のビームをS偏光に変換する半波長板と、を備え、反射手段により反射されたS偏光のビーム及び半波長板によりS偏光に変換されたS偏光のビームが偏光ビームスプリッタPBSから平行に出射する」「光学系」は、本件特許発明19の「偏光変換システム」に相当する。

(イ)上記(ア)によれば、本件特許発明19と甲5発明とは、
「第1光路および第2光路へ光を方向付ける偏光ビームスプリッタと、
前記第2光路上に配置される反射部材と、
偏光回転部材と、
を備え、
前記反射部材は、前記第2光路上の第2光束を反射する、
偏光変換システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
「偏光回転部材」について、本件特許発明19では、「前記第2光路上であって、前記反射部材の後ろに配置され」ているのに対し、甲5発明では、「各偏光多層フィルム3を透過するP偏光のビーム」を「S偏光に変換する」ものである、すなわち、第1光路上に配置されている点。

[相違点2]
「偏光スイッチ」について、本件特許発明19は、「前記第1光路上および前記第2光路上であって、前記偏光回転部材の後ろに配置される」ものであって、「前記第1光路の第1光束および前記第2光路の第2光束の各偏光状態を、共に、第1出力偏光状態および第2出力偏光状態のうちのいずれか一方に選択的に変換」するものであるのに対し、甲5発明は、偏光スイッチを備えていない点。

[相違点3]
「反射部材」について、本件特許発明19は、「前記第2光路上の第2光束を反射することにより、前記偏光スイッチによって選択的に変換された前記第1光路の第1光束が投影スクリーン上に投影されるのと略同様の位置へと、前記偏光スイッチによって選択的に変換される前記第2光路の第2光束を方向付ける」ものであるのに対し、甲5発明はそうなっていない点。

相違点の判断
(ア)上記各相違点について検討する。
a [相違点1]について
甲5発明の「半波長板」(本件特許発明19の「偏光回転部材」に該当。)は、「各偏光多層フィルム3を透過するP偏光のビーム」を「S偏光に変換する」ものである。
ここで、偏光変換システムの技術分野において、偏光ビームスプリッタにより分割されたS偏光のビームをP偏光ビームに変換するとともに、同分割されたP偏光を偏光変換せずに出射させることは周知である(例えば、甲3発明を参照。)。
また、光学要素の順序については、当業者が性能を満たす限りにおいて適宜配置できることが明らかである。
そうすると、甲5発明において、[相違点1]の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことというべきである。

b [相違点3]について
甲5発明では、上記ア(ア)eのとおり、「半波長板によりS偏光に変換されたS偏光のビーム」に属する各光線は、「透過型液晶パネル23?25」の複数の画素のうち、いずれか1つに入射することになり、「反射手段により反射されたS偏光のビーム」に属する各光線は、「透過型液晶パネル23?25」の複数の画素のうち、いずれか1つに入射することになるところ、甲5発明の構成からみて、「半波長板によりS偏光に変換されたS偏光のビーム」に属する各光線が入射する「透過型液晶パネル23?25」の画素と、「反射手段により反射されたS偏光のビーム」に属する各光線が入射する「透過型液晶パネル23?25」の画素とは、一の透過型液晶パネル上において、異なるものと解される。
そうすると、「半波長板によりS偏光に変換されたS偏光のビーム」に属する各光線(本件特許発明19の「第1光路の第1光束」に相当。)と「半波長板によりS偏光に変換されたS偏光のビーム」に属する各光線(本件特許発明19の「第2光路上の第2光束」に相当。)とは、「スクリーン」上の異なる位置に投射されることになる。
他方、本件特許発明19の[相違点3]に係る構成においては、「第1光路の第1光束」と「第2光路上の第2光束」とが、「投影スクリーン上」の「略同様の位置へと」「投影され」ているものである。
そうすると、本件特許発明19と甲5発明とは、この点で実質的に相違することになり、また、この相違点を容易想到とはできないことが明らかである。

c 上記bによれば、[相違点2]について検討するまでもなく、本件特許発明19は、甲5発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。

(イ)よって、本件特許発明19は、甲5発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)他の本件特許発明については、依然として、本件特許発明19と甲5発明との間の[相違点3](上記(3)ア(イ))を実質的に有するといえるから、無効理由1での検討(上記2(4)?(6))と同様に、甲5発明、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)無効理由4についてのまとめ
以上のとおり,本件特許発明1ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではない。
よって、無効理由4は、理由がない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許発明1ないし4、7、9、10、12ないし14、16ないし20、23及び25ないし32に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-28 
結審通知日 2015-09-30 
審決日 2015-10-14 
出願番号 特願2009-530647(P2009-530647)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 居島 一仁鉄 豊郎  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 山村 浩
西村 仁志
登録日 2014-10-24 
登録番号 特許第5635773号(P5635773)
発明の名称 立体投影用の偏光変換システム、投影システムおよび立体画像投影方法  
代理人 龍華国際特許業務法人  
代理人 東山 忠義  
代理人 網盛 俊  
代理人 水野 勝文  
代理人 須澤 洋  
代理人 龍華 明裕  
復代理人 藤島 直己  

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