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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1311310
審判番号 不服2014-17487  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-03 
確定日 2016-02-15 
事件の表示 特願2010-110844「ベチバーの粉末を含む化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月24日出願公開、特開2011-236174〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年5月13日の出願であって、平成26年5月30日付けで拒絶査定がなされたのに対して、平成26年9月3日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに同日付けの手続補正書が提出されたものである。

第2 平成26年9月3日付け手続補正についての補正の却下の決定
<補正の却下の決定の結論>
平成26年9月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

<理由>
1 補正の内容
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の請求項1の
「固形石鹸、入浴剤、入浴用化粧剤、洗顔化粧剤、洗髪化粧剤、洗浄パウダー、防虫クリーム、防虫化粧剤、ペット用化粧剤およびペット用洗浄パウダーの少なくとも一つである化粧料であって、
前記化粧料には、乾燥されたベチバーの根を粉砕して得られると共に平均として200メッシュ以下である粉末が混合されており、
前記粉末は、
(1)前記ベチバーの根を水洗いして、所定期間で天日乾燥する第1工程、
(2)前記第1工程の後で、前記ベチバーの根を、所定期間で風通しのよいところで陰干しする第2工程、
(3)前記第2工程の後で、前記ベチバーの根を、27℃?105℃、更に好ましくは27℃?60℃の空気で乾燥する第3工程、
(4)前記第3工程の後で、前記ベチバーの根を切断する第4工程、
(5)前記第4工程の後で、切断された前記ベチバーの根を粉砕する第5工程、
によって得られる、化粧料。」を
「固形石鹸、入浴剤、入浴用化粧剤、洗顔化粧剤、洗髪化粧剤、洗浄パウダー、防虫クリーム、防虫化粧剤、ペット用化粧剤およびペット用洗浄パウダーの少なくとも一つである化粧料であって、
前記化粧料には、乾燥されたベチバーの根を粉砕して得られると共に平均として50メッシュ以上70メッシュ以下である粉末が混合されており、
前記粉末は、
(1)前記ベチバーの根を水洗いして、所定期間で天日乾燥する第1工程、
(2)前記第1工程の後で、前記ベチバーの根を、所定期間で風通しのよいところで陰干しする第2工程、
(3)前記第2工程の後で、前記ベチバーの根を、27℃?105℃の空気で乾燥する第3工程、
(4)前記第3工程の後で、前記ベチバーの根を切断する第4工程、
(5)前記第4工程の後で、切断された前記ベチバーの根を粉砕する第5工程、
(6)前記第4工程の後で、更に追加的に乾燥させる工程、によって得られる、化粧料。」
とする補正、さらに、本件補正前の請求項7の
「固形石鹸、入浴剤、入浴用化粧剤、洗顔化粧剤、洗髪化粧剤、洗浄パウダー、防虫クリーム、防虫化粧剤、ペット用化粧剤およびペット用洗浄パウダーの少なくとも一つである化粧料の製造方法であって、
前記化粧料には、乾燥されたベチバーの根を粉砕して得られると共に平均として200メッシュ以下である粉末が混合されており、
前記粉末は、
(1)前記ベチバーの根を水洗いして、所定期間で天日乾燥する第1工程、
(2)前記第1工程の後で、前記ベチバーの根を、所定期間で風通しのよいところで陰干しする第2工程、
(3)前記第2工程の後で、前記ベチバーの根を、27℃?105℃、更に好ましくは27℃?60℃の空気で乾燥する第3工程、
(4)前記第3工程の後で、前記ベチバーの根を切断する第4工程、
(5)前記第4工程の後で、切断された前記ベチバーの根を粉砕する第5工程、
によって得られる、化粧料の製造方法。」を補正後の請求項5の
「固形石鹸、入浴剤、入浴用化粧剤、洗顔化粧剤、洗髪化粧剤、洗浄パウダー、防虫クリーム、防虫化粧剤、ペット用化粧剤およびペット用洗浄パウダーの少なくとも一つである化粧料の製造方法であって、
前記化粧料には、乾燥されたベチバーの根を粉砕して得られると共に平均として50メッシュ以上70メッシュ以下である粉末が混合されており、
前記粉末は、
(1)前記ベチバーの根を水洗いして、所定期間で天日乾燥する第1工程、
(2)前記第1工程の後で、前記ベチバーの根を、所定期間で風通しのよいところで陰干しする第2工程、
(3)前記第2工程の後で、前記ベチバーの根を、27℃?105℃の空気で乾燥する第3工程、
(4)前記第3工程の後で、前記ベチバーの根を切断する第4工程、
(5)前記第4工程の後で、切断された前記ベチバーの根を粉砕する第5工程、
(6)前記第4工程の後で、更に追加的に乾燥させる工程、によって得られる、化粧料の製造方法。」
とする補正を含むものである。

すなわち、本件補正の前後を対比すると、補正事項は次のとおり(以下、前者を「補正事項1」、後者を「補正事項2」という。)である。
・乾燥されたベチバーの根を粉砕して得られる粉末は「平均として200メッシュ以下」であったものが、「平均として50メッシュ以上70メッシュ以下」となった。
・粉末を得る工程として「(6)前記第4工程の後で、更に追加的に乾燥させる工程」が追加された。

2 補正の適否(新規事項について)
まず、本件補正が、特許法第17条の2第3項の規定に適合するか(本件補正が出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものか。)について検討する。
(A)補正事項2について
補正事項2は、本件補正前の請求項1を、その従属項である請求項6の規定
「前記第4工程の後で、更に追加的に乾燥させる工程を含む、請求項1から5のいずれか記載の化粧料」
により限定したものである。この補正は新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
(B)補正事項1について
補正事項に関し、本件補正前の請求項1に従属する請求項2には
「前記粉末は、平均として50メッシュ以上80メッシュ以下である、請求項1記載の化粧料。」
との規定があり、当初明細書【0024】、【0046】、【0047】、【0058】にはそれぞれ
「本発明の第2の発明に係る化粧料では、第1の発明に加えて、粉末は…平均として50メッシュ以上80メッシュ以下である。」、
「ベチバーの根は、上述の通り、乾燥工程を経て粉砕されて粉末にされる。この粉末は…平均して50メッシュ以上80メッシュ以下である。」、
「なお、粉末が…平均して50メッシュ以上80メッシュ以下であるとの点は、目安であって、粉砕機における粉末生成過程で生じるこれらの粒度に入らない粉末を除外する意図ではない。」、
「平均して50メッシュ?80メッシュである粉末であることで、固形石鹸や液体石鹸に混合したとしても、使用感に悪影響はない。」
と記載されているものの、該粉末の大きさの上限値を「70メッシュ」とすることの記載はなくまた示唆もない。
してみると、補正事項1は、当初明細書等に記載されていたものということはできず、新たな技術的事項を導入するものといわざるを得ない。
(C)小括
以上のとおりであるから、本件補正は、当初明細書等において記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に適合せず、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 補正の適否(独立特許要件(進歩性)について)
上記2で検討したとおり、本件補正は却下すべきものであるが、仮に補正事項1が当初明細書等において記載した事項の範囲内のものであるとして、本件補正の目的について検討する。
この仮定において、上記補正事項1及び2は、いずれも本件補正前の特定事項を限定するものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そうすると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項5に係る発明(以下、「補正発明5」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて、以下に検討する。
(A)補正発明5
補正発明5は、次のとおりである。
「固形石鹸、入浴剤、入浴用化粧剤、洗顔化粧剤、洗髪化粧剤、洗浄パウダー、防虫クリーム、防虫化粧剤、ペット用化粧剤およびペット用洗浄パウダーの少なくとも一つである化粧料の製造方法であって、
前記化粧料には、乾燥されたベチバーの根を粉砕して得られると共に平均として50メッシュ以上70メッシュ以下である粉末が混合されており、
前記粉末は、
(1)前記ベチバーの根を水洗いして、所定期間で天日乾燥する第1工程、
(2)前記第1工程の後で、前記ベチバーの根を、所定期間で風通しのよいところで陰干しする第2工程、
(3)前記第2工程の後で、前記ベチバーの根を、27℃?105℃の空気で乾燥する第3工程、
(4)前記第3工程の後で、前記ベチバーの根を切断する第4工程、
(5)前記第4工程の後で、切断された前記ベチバーの根を粉砕する第5工程、
(6)前記第4工程の後で、更に追加的に乾燥させる工程、によって得られる、化粧料の製造方法。」
(B)引用刊行物およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物は、次の刊行物1-5である。
1 国際公開第2009/081463号
2 特開2010-94506号公報
3 特開平7-61918号公報
4 特開2003-113029号公報
5 特開2002-104953号公報
(C)引用刊行物の記載事項
刊行物1-4には、次の事項が記載されている。
ア 刊行物1の記載事項
a 「本発明の多機能天然資材において、ベチバーの根は、害虫忌避機能、消臭機能、または、ホルムアルデヒド除去機能を備えるので、様々な用途に使用できる。」([0011])
b 「本発明を適用した多機能天然資材は、香り成分が除去された、揮発成分を除去可能なベチバーの根を有する。ベチバー(学名「Vetiveria zizaniodes」)は、インド原産のイネ科の多年生草木である。
また、香り成分を除去できればどのような方法を用いてもよいが、例えば、前処理として、ベチバーの根を水洗い後1?2日間天日乾燥し、その後約1週間、風通しのよいところで陰干しをする。そして、4?5気圧の蒸気圧による水蒸気蒸留にて、12?30時間の長い時間をかけて、ベチバーの根から香り成分を抽出(除去)する。
香り成分が除去されたベチバーの根は、次に27?105℃、好ましくは27?60℃の温風で乾燥されて、水分が取り除かれる。また、乾燥することができれば、必ずしも温風で乾燥しなくてもよく、例えば自然乾燥でもよい。
そして、乾燥されたベチバーの根は、例えば1?30cmの長さに切断され、切断されたベチバーの根は、通気性の良い容器または不織布等に入れられて、用途に応じて、消臭剤や害虫忌避剤となる。
また、切断後に乾燥を行なってもよく、切断後に例えば温風乾燥することで、切断残さを除去でき、また、袋詰め密封の前に湿気を除去して袋内でのカビ発生を防ぐことができる。
また、乾燥と同時に滅菌処理を行なってもよく、滅菌処理を行なうことで、本発明の多機能天然資材は、抗菌機能も有することになる。例えば、香り成分が除去されたベチバーの根を切断し、15?17時間、乾燥及び滅菌室に入れた後、密封袋に詰める。
また、本発明を適用した多機能天然資材が、香り成分が除去された、揮発成分を除去可能なベチバーの根を有するのであれば、必ずしも香り成分を除去した後に乾燥しなくてもよく、また、必ずしも香り成分が除去されたベチバーの根は1?30cmの長さに切断されなくてもよく、例えば、粒状もしくは粉状に粉砕もしくは破砕して使用することができ、形状や長さ等は限定されない。」([0022]-[0024])
c 「〔アンモニア消臭試験〕
先ず、香り成分が除去されずに乾燥されたベチバーの根(以下、「ベチバー乾燥根」とする。)と、水蒸気蒸留によって香り成分が除去されていると共に乾燥されたベチバーの根(以下、「水蒸気蒸留後ベチバー乾燥根」とする。)を、粉砕機(mill)で粉末状にし、また、活性炭を乳鉢と乳棒で粉末状にして、各種試料を得た。…
[表1]

」([0027]-[0028])
d 「〔イソ吉草酸消臭試験〕
先ず、ベチバー乾燥根と、水蒸気蒸留後ベチバー乾燥根を、粉砕機で粉末状にし、また、活性炭を乳鉢と乳棒で粉末状にして、各種試料を得た。…
[表3]

」([0033]-[0034])
e 「〔酪酸消臭試験〕
先ず、水蒸気蒸留後ベチバー乾燥根を、粉砕機で粉末状にして試料を得た。また、活性炭粉末試料として、粒径約350メッシュのものを用意した。…
[表4]

」([0036]-[0037])
f 「〔トリメチルアミン消臭試験〕
先ず、水蒸気蒸留後ベチバー乾燥根を、粉砕機で粉末状にして試料を得た。また、活性炭粉末試料として、粒径約350メッシュのものを用意した。…
[表5]

」([0039]-[0040])
g 「また、本発明の害虫忌避効果を確認するために、次のような忌避試験を行なった。
〔ダニ忌避試験〕…
結果を表6に示す。表中、「アカルB-150」は、香り成分が除去されたベチバーの根で構成された試料を示し、ダニ数は試験3回分の合計である。
また、比較のために、「アカルB-150」の代わりに香り成分が除去されていないベチバーの根で構成された試料(ペーパーホルダーカバー)を用いた点と、生存ダニ(ヤケヒョウヒダニ)数約2400匹を含む量のダニ培地を用いた点以外は、上記と同様に試験を行なった。結果を表7に示す。
[表6]

[表7]

〔ゴキブリ忌避試験〕…
なお、忌避試験は容器を3つ用意して行なったが、アカルB-150のシェルター内のゴキブリ数が、通常のベニヤ板のシェルター内のゴキブリ数を超えるものがあった時は、忌避効果は認められないものとして、全体の忌避率は0%とした。結果を表8に示す。
また、比較のために、「アカルB-150」の代わりに香り成分が除去されていないベチバーの根で構成された試料(ペーパーホルダーカバー)を用いた点以外は、上記と同様に試験を行なった。結果を表9に示す。
[表8]

[表9]

表6及び表8から判るように、香り成分が除去されたベチバーの根は、ダニやゴキブリが寄り付きにくく、優れた害虫忌避効果を奏する。特に、ゴキブリの忌避効果については、香り成分が除去されていないベチバーの根(芳香)よりも、香り成分が除去されたベチバーの根(無香)の方が優れていることが判る。」([0042]-[0048])
h 「[1]安全性が高い天然素材を用いた多機能天然資材において、
香り成分が除去された、揮発成分を除去可能なベチバーの根を有する
ことを特徴とする多機能天然資材。
[2]前記ベチバーの根は、害虫忌避機能を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の多機能天然資材。
[3]前記ベチバーの根は、消臭機能を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の多機能天然資材。」(請求の範囲)
イ 刊行物2の記載事項
a 「【請求項1】
ベチバー植物の抽出物を含む
消臭剤。
【請求項2】
前記ベチバー植物はベチバーの根である
請求項1に記載の消臭剤。」(【特許請求の範囲】)
b 「また、ベチバー植物の水溶性抽出物を含む本発明の消臭剤を水に薄めて水溶液(消臭液)とし、この消臭液を加湿器等の中へ入れると部屋の臭いが消え続ける。また、洗濯水に本発明の消臭液を入れることで、衣類に付いた魚の生臭いニオイ(トリメチルアミン)、汗のニオイ(アンモニア臭)、ペット臭やタバコ臭が消臭される。また、本発明の消臭液を浴槽のお湯に入れて使用する入浴用消臭液は、加齢臭、アンモニア臭を除去しお湯の不快なニオイも抑止する。
また、本発明の消臭液によって、大腸菌やブドウ球菌等の細菌の増殖を抑えることや、ゴキブリやダニ等の害虫を寄せ付けにくくすることも期待できる。」(【0025】)
ウ 刊行物3の記載事項
a 「【請求項1】 ベチバー、インドサルサ、コウスイガヤ、ヒハツ、チャバコショウ、ヘルペストリス モンニエス(Herpestris monnies)、フウセンカズラ、イボナシツヅラフジ、デスモディウム ガンゲチクム(Desmodium gangeticm)、キンコウボク、およびコバノブラツシュノキよりなる群より選んだ少なくとも1種の植物の溶媒抽出物を含む化粧料。」(【特許請求の範囲】)
b 「(製造例1)ベチバーの根(乾燥品)を10gに50%エタノール水溶液300mlを加えて時々撹拌しつつ5日間放置した。これを濾過後凍結乾燥した。」(【0020】)
c 「(実施例1)ローション (重量%)
オリーブ油 0.5
製造例1のベチバーの根の50%エタノール抽出物 0.5
ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタンモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 2.0
エタノール 10.0
1.0%ヒアルロン酸ナトリウム水溶液 5.0
精製水 80.0」(【0039】)
d 「抗酸化試験、使用テストの結果より明らかなように、本発明の植物の溶媒抽出物は抗酸化作用に優れ、その結果、これを配合した化粧料を使用すると肌荒れを防ぎ、肌のつや、はりを良好に保つ作用に優れている。化粧品配合用に極めて優れた化粧品原料である。」(【0071】)
エ 刊行物4の記載事項
a 「【請求項1】薬用植物セドルの薬用部分と、人体に付着させるための付着物との混合物であって、基礎化粧品および清浄用化粧品として使用するようにしたことを特徴とする薬草を含む混合物。」(【特許請求の範囲】)
b 「【実施例1】セドル乾燥葉の微粉末を、清浄用化粧品では、石鹸の構成成分に、重量で1.1?55%配合する。特にボディ用クレンジング料ではセドル乾燥葉微粉末を1.5?55%配合する。またシャンプーでは、構成成分に2.5?55%配合する。通常の石鹸やシャンプーと同じ洗浄方法で、毛髪や皮膚を洗い、最後に流水で良くすすいだ後、流す。セドル乾燥葉微粉末は、保湿性があり後のリンスは特に不要である。
実施例1では、清浄用化粧料に含有される油脂中の、色素、異臭、或いは脂肪酸中和有害物質をセドル乾燥葉微粉末が吸着するため、これらの除去ができる。安全で、使用感も快適であり、頭皮、毛髪、皮膚の細部や、毛穴の汚れ、皮脂、臭いを吸着し、セドル乾燥葉の殺菌清浄効果が発揮される。該清浄用化粧料を、水又は湯で洗い流す際、汚れや皮脂は身体より除外され、セドル乾燥葉の保湿性により使用後の皮膚はすべすべと滑らかで、頭皮はすっきりし、毛髪はしっとりとツヤがあった。」(【0006】-【0007】)
c 「本発明は、上記一実施形態に記述したように、清浄用化粧品、基礎化粧品にセドル乾燥葉微粉末を混合し、セドル乾燥葉微粉末が有するきわめて優秀な殺菌清浄効果、および吸着脱臭作用と保湿性を利用することで、清浄用化粧品や基礎化粧品に含有される油脂中の、色素、異臭、或いは脂肪酸中和有害物質をセドル乾燥葉微粉末が吸着することにより除去する。これにより、使用者が安心しかつ満足して使用できる清浄用化粧品、基礎化粧品を提供することが可能となる。該清浄用化粧品、基礎化粧品を指標することにより、頭皮、毛髪、皮膚等に付着した臭いや汚れを効果的に除去し、その保湿性により、頭皮、毛髪皮膚はきわめて清浄で良好な健康状態が得られる。」(【0012】)
(D)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、乾燥されたベチバーの根(上記(C)アb-f)を粉砕して得られる粉末(上記(C)アb-f)、ベチバーの根の処理は、ベチバーの根を水洗い後1?2日間天日乾燥し(上記(C)アb)、その後約1週間、風通しのよいところで陰干しし(上記(C)アb)、4?5気圧の蒸気圧による水蒸気蒸留にて、12?30時間の長い時間をかけて、ベチバーの根から香り成分を抽出(除去)し(上記(C)アb)、次に27?105℃の温風で乾燥され(上記(C)アb)、乾燥されたベチバーの根は、例えば1?30cmの長さに切断され(上記(C)アb)、切断後に乾燥を行なってもよいこと(上記(C)アb)が記載されている。また、ベチバーの根は、害虫忌避機能、消臭機能を有していること(上記(C)アa)も記載されている。
そうすると、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「乾燥されたベチバーの根の粉末を、
(1) 前記ベチバーの根を水洗い後1?2日間天日乾燥し、
(2) (1)の後で、前記ベチバーの根を、約1週間風通しのよいところで陰干しし、
(3) (2)の後で、前記ベチバーの根を、27℃?105℃の空気で乾燥し、
(4) (3)の後で、前記ベチバーの根を切断し、
(5) (4)で切断された前記ベチバーの根を粉砕し、
(6) また、(4)の切断後で、更に追加的に乾燥させる工程、によって得られる、害虫忌避機能、消臭機能を有する多機能天然資材の製造方法。」
(E)対比
補正発明5と引用発明1を対比する。
引用発明1における(1)の「1?2日間」や(2)の「約1週間」は、本願発明でいう「所定期間」に相当する。また、引用発明1における(1)-(6)の各工程は、それぞれ本願発明の(1)-(6)に規定される工程、すなわち、請求人が「新規な構成要件(3)?(8)」(【請求の理由】3(e))と主張する工程に相当する。
そうすると、補正発明5と引用発明1とは
「乾燥されたベチバーの根を粉砕して得られ、
前記粉末は、
(1)前記ベチバーの根を水洗いして、所定期間で天日乾燥する第1工程、
(2)前記第1工程の後で、前記ベチバーの根を、所定期間で風通しのよいところで陰干しする第2工程、
(3)前記第2工程の後で、前記ベチバーの根を、27℃?105℃の空気で乾燥する第3工程、
(4)前記第3工程の後で、前記ベチバーの根を切断する第4工程、
(5)前記第4工程の後で、切断された前記ベチバーの根を粉砕する第5工程、
(6)前記第4工程の後で、更に追加的に乾燥させる工程、によって得られる」
ことで一致し、次の点で相違する。
相違点1:補正発明5は、ベチバーの根の粉末が「固形石鹸、入浴剤、入浴用化粧剤、洗顔化粧剤、洗髪化粧剤、洗浄パウダー、防虫クリーム、防虫化粧剤、ペット用化粧剤およびペット用洗浄パウダーの少なくとも一つである化粧料」に混合されているのに対し、引用発明1は、「多機能天然資材」に混合されていること。
相違点2:補正発明5の該粉末は「平均として50メッシュ以上70メッシュ以下である」のに対し、引用発明1の該粉末の大きさは明らかでないこと。
相違点3:引用発明1の該粉末は「香り成分が除去された」ものであるのに対し、補正発明5の該粉末にはそのような特定はなされていないこと。
(F)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点3について
本願明細書には、補正発明5の第2工程と第3工程の間において、「工程3:4?5気圧の蒸気圧による水蒸気蒸留を行う。所定時間(一例として、12?30時間)の水蒸気蒸留を行う。この工程3によって、ベチバーの根から余分な香り成分が除去される。」(【0041】)との工程が記載されており、併せて、「なお、工程3は、ベチバーの根が有する香り成分(ベチバーの根を精製して得られる精油は、この除去される香り成分を多く含む)を除去する工程であるが、ベチバーの根を乾燥させるだけであれば、この工程3を省略しても構わない。」(【0043】)との記載も存在する。
ところで、引用発明1の実施例(上記(C)アc、d、e、f)では、アンモニア、イソ吉草酸、酪酸、トリメチルアミンに対する消臭試験が示されており、イソ吉草酸、酪酸、トリメチルアミンそれぞれにおける「水蒸気蒸留後ベチバー乾燥根粉末」の消臭率の値は、本願明細書【0098】表1の値と一致する。アンモニアについてもほぼ同等である。(なお、本願明細書では「酢酸(酢酸臭)」の消臭効果を実験した旨述べているが、【0098】表1では「酪酸」のデータが示されており、経過時間2分のデータが存在しないことも含めて引用発明1の実施例における「酪酸」の試験データと一致する。)加えて、防虫試験(忌避率)に関し、ダニ忌避試験では、香り成分が除去されたものでは66.3%、除去されていないものでは87.0%(上記(C)アg)で、本願発明の「66?87%」(本願明細書【0128】)と同等であり、ゴキブリ忌避試験では、香り成分が除去されたものでは100%(上記(C)アg)で、本願発明の「100%」(本願明細書【0127】)と一致する。
このため、補正発明5においても、香り成分を除去する工程を含まないものとは言えず、この工程の有無により両者が実質的に異なるものではない。
イ 相違点2について
本願実施例において使用されるベチバーの根の粉末に関し、その大きさは明らかにされていない。上記(F)アで検討したとおり、引用発明1の実施例で使用される「水蒸気蒸留後ベチバー乾燥根粉末」と本願実施例のベチバーの根の粉末の間に、消臭試験、防虫試験による格別の差異は見いだせない。そうすると、該粉末の大きさについては、化粧料に配合する際に当業者が適宜設定しうる程度のものと認められ、「平均として50メッシュ以上70メッシュ以下」と規定したことによる何らかの格別の作用効果を見出すことができない。
ウ 相違点1について
刊行物4には、石鹸、ボディ用クレンジング料、シャンプーにセドル乾燥葉微粉末を配合して清浄用化粧料を構成し、臭いの除去の効果を奏させること(上記(C)エb)が記載されており、植物乾燥微粉末を化粧料に添加して、人体の防臭を行うことは本願出願前において公知である。また、ベチバー由来の抽出物を用いて、消臭、防虫効果を奏させることは刊行物2(上記(C)イa、b)により、化粧料を構成することは刊行物3(上記(C)ウa-d)により、本願出願前公知である。そうすると、防臭、防虫効果を奏する引用発明1に記載されたベチバーの根の粉末を、これらの刊行物の記載に倣って、化粧料の成分としてみることに困難性は見いだせない。また、上記(F)アで検討したとおり、引用発明1の実施例で使用される「水蒸気蒸留後ベチバー乾燥根粉末」と本願実施例のベチバーの根の粉末の間に、消臭試験、防虫試験による格別の差異は見いだせないことからみて、引用発明1のベチバーの根の粉末を上記化粧料とした際に、何らかの格別の作用効果を奏すると解することはできない。
(G)小括
以上のとおり、補正発明5は、引用例1-4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項の規定に違反しているものと認められるので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2で結論したとおり平成26年9月3日付け手続補正書による補正は却下されたので、本願に係る発明は平成26年3月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-8にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項7に係る発明(以下、「本願発明7」という。)は次のとおりである。
「固形石鹸、入浴剤、入浴用化粧剤、洗顔化粧剤、洗髪化粧剤、洗浄パウダー、防虫クリーム、防虫化粧剤、ペット用化粧剤およびペット用洗浄パウダーの少なくとも一つである化粧料の製造方法であって、
前記化粧料には、乾燥されたベチバーの根を粉砕して得られると共に平均として200メッシュ以下である粉末が混合されており、
前記粉末は、
(1)前記ベチバーの根を水洗いして、所定期間で天日乾燥する第1工程、
(2)前記第1工程の後で、前記ベチバーの根を、所定期間で風通しのよいところで陰干しする第2工程、
(3)前記第2工程の後で、前記ベチバーの根を、27℃?105℃、更に好ましくは27℃?60℃の空気で乾燥する第3工程、
(4)前記第3工程の後で、前記ベチバーの根を切断する第4工程、
(5)前記第4工程の後で、切断された前記ベチバーの根を粉砕する第5工程、
によって得られる、化粧料の製造方法。」

2 引用刊行物およびその記載事項
上記第2 3(B)で示したとおり、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物は、次の刊行物1-5である。
1 国際公開第2009/081463号
2 特開2010-94506号公報
3 特開平7-61918号公報
4 特開2003-113029号公報
5 特開2002-104953号公報
ここで、刊行物1-4には、上記第2 3(C)で示したとおりの事項が記載されている。
そして、刊行物1には、上記第2 3(D)で認定したとおりの引用発明1が記載されている。

3 進歩性の判断
本願発明7は、上記第2で検討した補正発明5におけるベチバーの根の粉末の大きさ「平均として50メッシュ以上70メッシュ以下」を「平均として200メッシュ以下」、第3工程の乾燥温度「27℃?105℃」を「27℃?105℃、更に好ましくは27℃?60℃」、さらには工程(6)を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明7の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する補正発明5が、上記第2 3に記載したとおり、引用発明1及び刊行物2-4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明7も、同様の理由により、引用発明1及び刊行物2-4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願については、他の請求項について検討するまでもなく上記理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-23 
結審通知日 2015-11-17 
審決日 2015-11-30 
出願番号 特願2010-110844(P2010-110844)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 537- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今村 明子  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 大熊 幸治
齊藤 光子
発明の名称 ベチバーの粉末を含む化粧料  
代理人 溝口 督生  
代理人 溝口 督生  

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