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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1311364
審判番号 不服2015-3683  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-26 
確定日 2016-02-19 
事件の表示 特願2014- 10285「多層プリント配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月17日出願公開、特開2014- 68047〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年3月2日に出願した特願2009-47591号の一部を平成26年1月23日に新たな特許出願としたものであって、平成26年11月25日付け(発送日:平成26年12月3日)で拒絶査定され、これに対して、平成27年2月26日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、当審において平成27年9月15日付けで拒絶理由が通知され、平成27年11月11日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成27年11月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
内層プリント配線が表面に形成されたコア基板と、前記コア基板の表面に設けられる絶縁層と、前記コア基板を介した複数の外層プリント配線と、二つの前記内層プリント配線間を接続するインナービアホールとを含むビルドアップ多層プリント配線板の製造方法であって、
二つの前記内層プリント配線間を接続する前記インナービアホールを有する少なくとも二つのコア基板を用意する準備工程と、
最も上に位置する前記コア基板の上と、最も下に位置する前記コア基板の下に、外層プリント配線を形成するための導電箔を、前記絶縁層となる半硬化状態樹脂シートをはさみ積み重ね、更に前記コア基板の間に前記絶縁層となる半硬化状態樹脂シートをはさみ積み重ねて積層体を形成する積層工程と、
前記積層体を熱プレスにより一回押圧することによって、前記インナービアホールに前記半硬化状態樹脂シートから溶融した樹脂を充填すると共に前記溶融した樹脂により隣接する前記コア基板間、および前記導電箔と隣接する前記コア基板間を接着して絶縁し、一体化構造に形成する熱押圧工程と、
前記熱押圧工程の後工程として、前記導電箔でブラインドビアホールを形成する部分を所定のパターニング処理により除去してから所定の内層プリント配線が露出するまでレーザー工法で穴明けする工程と、所定の貫通ビアホール位置で貫通ホールをドリル工法で穴明けする工程と、前記穴明け後の表面にめっき処理を行い、前記ブラインドビアホールおよび前記貫通ビアホールを形成する工程と、所定のパターニング処理により外層プリント配線を形成する工程と、
を含み、
前記積層工程では、前記コア基板、前記導電箔、および前記半硬化状態樹脂シートが互いに分離した状態から積層することを特徴とするビルドアップ多層プリント配線板の製造方法。」

第3 刊行物

1 刊行物1
当審において通知した拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開平2-181997号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の(1)の事項が記載されている。

(1)「〔従来の技術〕
従来の多層プリント配線板は第3図に示すように銅箔1を所定のパターンに形成したエポキシ樹脂よりなる内層回路基材2の両面に半硬化状(Bステージ)の熱硬化性のエポキシ樹脂よりなるプリプレグ3と表面層銅箔4を設置して加圧加熱積層して基材を形成した後、該基材の所定位置にスルーホール(図示せず)を形成し、無電解銅メッキおよび電解銅メッキを施し、感光性レジストにより所定のパターンを形成し、半田メッキ法により多層プリント配線板を形成している。」(第1ページ右欄第15行ないし第2ページ左上欄第7行)

(2)上記記載事項(1)から、多層プリント配線板の製造方法が把握できるところ、その製造方法において、半硬化状(Bステージ)の熱硬化性のエポキシ樹脂よりなるプリプレグ3は、加圧加熱積層を経て硬化するので、製造された多層プリント配線板の内層回路基材2の両面には、プリプレグ3が硬化した絶縁層があると認められる。

(3)上記記載事項(1)の「感光性レジストにより所定のパターンを形成する」処理により、表面層銅箔4からなるプリント配線が形成されると認められる。

(4)上記記載事項(1)に「半硬化状(Bステージ)の熱硬化性のエポキシ樹脂」とあるところ、Bステージとは、「熱硬化性樹脂の反応の中間的な段階であって、材料は加熱により軟化して膨張するが、ある種の液体と接触しても、完全には溶融や溶解をしない段階」(電子回路用語JPCA-TD01-2008,社団法人日本電子回路工業会、2008年発行)であるから、加圧加熱の工程では、硬化温度になる前にエポキシ樹脂の未硬化部分が溶融して銅箔1と内層回路基材2の段差を埋めると共に、硬化温度に達すると、隣接する内層回路基材2間や、表面層銅箔4と隣接する内層回路基材2間を接着して絶縁することになり、加圧加熱の工程の後に一体化構造の多層プリント配線板が得られると認められる。

(5)図面の第3図から、所定のパターンに形成した銅箔1が、内層回路基材2の表面に形成された準備の工程が見て取れる。

(6)図面の第3図から、内側の二つの内層回路基材2の間と、内層回路基材2と外側の表面層銅箔4の間に、合計三つのシート状のプリプレグ3が配置され、互いに分離した状態から積層体となるように積層され、ビルドアップされる積層の工程が見て取れる。

上記記載事項(1)、認定事項(2)ないし(6)及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「所定のパターンに形成した銅箔1が表面に形成された内層回路基材2と、前記内層回路基材2の表面に設けられる絶縁層と、前記内層回路基材2を介した複数の表面層銅箔4からなるプリント配線とを含むビルドアップ多層プリント配線板の製造方法であって、
二つの内層回路基材2を用意する準備の工程と、
最も上に位置する前記内層回路基材2の上と、最も下に位置する前記内層回路基材2の下に、プリント配線を形成するための表面層銅箔4を、前記絶縁層となる半硬化状(Bステージ)の熱硬化性のエポキシ樹脂よりなるシート状のプリプレグ3をはさみ積み重ね、更に前記内層回路基材2の間に前記絶縁層となる半硬化状(Bステージ)の熱硬化性のエポキシ樹脂よりなるシート状のプリプレグ3をはさみ積み重ねて積層体を形成する積層の工程と、
前記積層体を加圧加熱することによって、溶融したエポキシ樹脂により隣接する前記内層回路基材2間、および前記表面層銅箔4と隣接する前記内層回路基材2間4を接着して絶縁し、一体化構造に形成する加圧加熱の工程と、
加圧加熱の工程の後工程として、該基材の所定位置にスルーホールを形成する工程と、無電解銅メツキおよび電解銅メツキを施す工程と、感光性レジストにより所定のパターンを形成する処理により表面層銅箔4からなるプリント配線を形成する工程と、
を含み、
前記積層の工程では、前記内層回路基材2、前記表面層銅箔4、および前記半硬化状(Bステージ)の熱硬化性のエポキシ樹脂よりなるプリプレグ3が互いに分離した状態から積層するビルドアップ多層プリント配線板の製造方法。」

2 刊行物2
当審において通知した拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開2001-127437号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されているものと認められている。

(1)「【0002】
【従来の技術】従来は、多層プリント配線板の層間の接続を図る場合は貫通スルーホールや非貫通スルーホール(インナーバイアホールやブラインドスルーホール)等で層間接続を行っている。貫通スルーホールは全層の接続を図る場合は都合がよいが接続に必要のない箇所の層においてもスルーホールが形成されるためプリント配線板の平面積を専有し高密度化の弊害となる。また、プリント配線板の層間を接続するビアホール(非貫通スルーホール)は電気的に層間を接続する箇所のみに配置されスペース効率は良好であるが製造工程が非常に複雑となっている。
【0003】従来の非貫通スルーホールで層間接続をする多層プリント配線板の製造工程を図3に基づいて説明する。図3(a)に示すように、ガラス繊維エポキシ樹脂積層板1にドリルで穴明け加工をし、無電解めっき、電解めっきをしてからエッチング処理を行い、所定のスルーホール部2と内層回路導体3を形成する。次に、図3(b)に示すように、プリプレグや絶縁樹脂インクで絶縁樹脂層4を前記のパターン形成の済んだ両面プリント配線板の表面と裏面に形成する。」

(2)「【0011】その次に、図2(c)に示すように、導電性ペースト9をコア材の片面または両面に形成後、導電性ペースト9からなる凸状物を覆うように絶縁樹脂をスクリーン印刷法、浸漬法、カーテンコーター法、スプレー法などで塗布し絶縁樹脂層4を形成する。積層板を貫通しているスルーホール部2は絶縁樹脂の裏面への流れ込みを防止するため基本的には穴埋めを行った方がよい。(省略)」

(3)図面【図3】及び上記記載事項(1)の「図3(b)に示すように、プリプレグや絶縁樹脂インクで絶縁樹脂層4を前記のパターン形成の済んだ両面プリント配線板の表面と裏面に形成する。」(段落【0003】)との記載から、刊行物2の多層プリント配線板は、ビルドアップ多層プリント配線板であると認められる。

(4)図面【図3】(b)から、積層工程後の、スルーホール部2に、溶融したプリプレグの絶縁樹脂が充填された状態が見て取れる。

(5)上記記載事項(2)の「基本的には穴埋めを行った方がよい。」(段落【0011】)との記載から、積層板を貫通しているスルーホール部2は、穴埋めを行わなくてもよいと認められる。

上記記載事項(1)及び(2)、認定事項(3)ないし(5)並びに図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物2には、以下の方法(以下、「刊行物2に記載された方法」という。)が記載されているものと認められる。

「二つの内層回路導体3間を接続するスルーホール部2を含むビルドアップ多層プリント配線板の製造方法であって、
前記内層回路導体3間を接続する前記スルーホール部2を有するパターン形成の済んだ両面プリント配線板を用意する工程と、
前記スルーホール部2にプリプレグからの絶縁樹脂を充填する工程とを有する方法。」

3 刊行物3
当審において通知した拒絶の理由に周知例として引用され、本願出願前に頒布された特開2000-151116号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)「【0008】・第1工程……(a)参照
多層プリント基板の中心となる銅張り積層板と呼ばれるコア基板材20を示している。コア基板材20はエポキシ樹脂を含浸させたガラス繊維布を積層した積層板21の両面に、回路パターン形成用の銅箔23を張って硬化させている。銅張り積層板(コア基板材)20の一般的な板厚は0.4?0.8mmである。
・第2工程……(b)参照
コア基板材20の表裏面の回路接続のためのインナー ビア・ホールの穴25あけを行う。穴25のサイズは通常、直径0.3mm、密度は5,000?10,000/m^(2)である。
・第3工程……(c)参照
コア基板材20全体にめっきを施し、第2工程で穿孔した回路接続の穴25の内筒面にめっき230して、インナー ビア・ホール250を形成する。
・第4工程……(d)参照
積層板材20の表面をエッチングによって回路パターン24を形成する。これをコア基板30と呼ぶ。
【0009】・第5工程……(e)参照
コア基板30のインナー ビア ホール250、および回路パターン24の溝を樹脂で埋め(樹脂31,樹脂33)、全面に樹脂のコーティングを施して加熱硬化させる。硬化後、表面をサンディングして平滑化する。この場合の樹脂は、粘度の高い液状の熱硬化性エポキシ樹脂が使われる。この樹脂のコーテイングは、次の工程で行う絶縁(樹脂)層の表面の平面精度の確保、および、ボイドと呼ばれる空気の存在を無くすためである。絶縁層の表面の平面精度が悪いと、次の回路パターン形成のための露光印刷が正しくできない。また、空気が残ると、熱衝撃を受けたときに層間が剥離したり、吸湿して高温時に絶縁劣化を来たすので、この工程は丁寧に行う必要があり、CMP(Chemical Mechanical Polishing)などが採用されて、多くのコストを消費している。この穴と回路パターンの溝埋めと平滑化工程がビルドアップ成型法の1番目の問題である。」

(2)「【0012】サブトラクト法(第6工程で張り付けた銅箔に回路パターンを印刷し、余分な部分の銅箔をエッチングで除去して回路パターンを形成する方法)
この製法では、銅箔の熱伝導が高いため、層間接続のためのインナービア・ホールをレーザーで穴あけすることができないので、穴となる部分の銅箔を予めエッチングで取り除いた後、レーザーで穴あけする方法が採られている。この回路形成工程以外はアデイテイブ法と類似である。従来から、アデイテイブ法、サブトラクト法共に、ビルドアップ多層プリント基板の製法における第5工程で行っている樹脂による穴と凹みを埋める工程を省略する方法が試みられてきた。
【0013】ここで、樹脂による穴と凹みの穴埋めを省略した場合のサブトラクト法を図17により説明する。
(1) 内層回路パターンを形成したコア基材30の上下面に、樹脂351を付けた銅箔352を重合する。
(2) プレス熱板19により圧着する。
コア基材30に重合する樹脂351は溶けて内層回路パターン溝、ビア・ホール内を埋める。(省略)また、樹脂351が熱硬化する段階で収縮して銅箔352の表面に凹み353が発生する。(省略)」

(3)上記記載事項(2)の「従来から、アデイテイブ法、サブトラクト法共に、ビルドアップ多層プリント基板の製法における第5工程で行っている樹脂による穴と凹みを埋める工程を省略する方法が試みられてきた。」(段落【0012】)との記載から、サブトラクト法は、ビルドアップ多層プリント基板の製法の一種であると認められる。

(4)上記記載事項(2)の「従来から、アデイテイブ法、サブトラクト法共に、ビルドアップ多層プリント基板の製法における第5工程で行っている樹脂による穴と凹みを埋める工程を省略する方法が試みられてきた。」(段落【0012】)との記載及び上記記載事項(2)の「ここで、樹脂による穴と凹みの穴埋めを省略した場合のサブトラクト法を図17により説明する。
(1) 内層回路パターンを形成したコア基材30の上下面に、樹脂351を付けた銅箔352を重合する。
(2) プレス熱板19により圧着する。
コア基材30に重合する樹脂351は溶けて内層回路パターン溝、ビア・ホール内を埋める。」(段落【0013】)との記載から、段落【0013】に記載された「サブトラクト法」は、段落【0008】に記載された第1工程ないし第4工程からなる、準備の工程の存在を前提としつつ、インナービアホール250に樹脂351を埋める、プレス熱板19により圧着する工程を含んでいると認められる。

(5)上記記載事項(2)の「樹脂351が熱硬化する段階で収縮して銅箔352の表面に凹み353が発生する。」(段落【0013】)との記載及び図面【図17】から、プレス熱板19により圧着する工程の前、樹脂351は半硬化状体の熱硬化性樹脂のシートであると認められる。

上記記載事項(1)及び(2)、認定事項(3)ないし(5)並びに図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物3には、以下の方法(以下、「刊行物3に記載された方法」という。)が記載されているものと認められる。

「二つの回路パターン24間を接続するインナー ビア ホール250を含むビルドアップ多層プリント基板の製造方法であって、
前記回路パターン24間を接続する前記インナー ビア ホール250を有するコア基板30を用意する準備工程と
前記インナー ビア ホール250に半硬化状態の熱硬化性の樹脂351のシートからの樹脂を埋める、プレス熱板19により圧着する工程とを有する方法。」

4 刊行物4
当審において通知した拒絶の理由に周知例として引用され、本願出願前に頒布された特開平8-18228号公報(以下、「刊行物4」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)「【要約】
【目的】 多層プリント配線板の製造方法において、導体パターンの高密度化に対応し、容易な方法により高精度で軽量小型化を図る。
【構成】 銅箔をフォトエッチングし、導体パターン5およびランド6を形成した両面板3に、厚延銅箔7の片面にガラスクロスコア4のない熱硬化性樹脂8のみを塗布した基材9を貼り、銅箔層にフォトレジストを用いてバイアホール用の孔10をエッチングして樹脂層の表面を露出させ、銅箔層をマスクとして露出している樹脂層にレーザを使用してバイアホール用の孔11をエッチングする。」

(2)「【0007】また、多層プリント配線板の製造方法において、(1)銅箔を貼った基板を用意する工程と、(2)前記銅箔をフォトエッチングし、導体パターンおよびランドを形成する工程と、(3)厚延銅箔の片面に熱硬化性樹脂のみが塗布されている基材を用意する工程と、(4)前記導体パターンおよびランドが形成された基板の上に、前記基材の樹脂層側を貼る工程と、(5)前記基材の銅箔層にフォトレジストを用いてバイアホール用の孔をエッチングして前記樹脂層の表面を露出させる工程と、(6)前記銅箔層をマスクとし、露出している前記樹脂層にレーザを使用してバイアホール用の孔をエッチングする工程と、(7)前記樹脂層のバイアホール用の孔以外の所で、前記基板上に形成されているランド中央部にスルホール用の貫通孔を形成する工程と、(8)サブトラクティブ法による回路形成により、前記基材の銅箔層に導体パターンとバイアホールを形成すると同時にスルホールを形成する工程と、からなることを特徴とする。」

(3)(工程F)(【図2】)の図面から、「樹脂層にレーザを使用してバイアホール用の孔11をエッチング」する工程は、導体パターン5が露出するまで行われることが見て取れる。

上記記載事項(1)及び(2)、認定事項(3)及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物4には、以下の方法(以下、「刊行物4に記載された方法」という。)が記載されているものと認められる。

「銅箔層でバイアホール用の孔10をフォトレジストを用いてエッチングしてから導体パターン5が露出するまでレーザを使用して孔11をエッチングする工程を有する方法。」

5 刊行物5
当審において通知した拒絶の理由に周知例として引用され、本願出願前に頒布された特開昭58-64097号公報(以下、「刊行物5」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)「第3図(a)?(e)は本発明の一実施例である外層と内層との接続方法を示す図である。まず、第3図(a)に示す如く、外層銅箔4に設ける端子6の中心位置6’に、後に孔明けに使用する炭酸ガスレーザのビーム径より少し小さな孔をエツチングにより形成しておく。次いで、第3図(b)に示す如く、樹脂層のみが除去される強度と照射時間の炭酸ガスレーザLにより基板表面を走査し、前記エツチングにより設けた孔の位置の樹脂層8を除去し、孔を明ける。以下、第3図(c)に示す如く、ブラズマスミア除去装置等により前記樹脂層8に設けた孔内の樹脂層を除去した後、銅めつき(結果を第3図(d)に示す。),エツチング(結果を第3図(e)に示す。)を行い、配線パターン9,端子6を形成する。
第3図(b)において、内層端子5には孔が明いていないので、レーザは前記内層端子5より内部(図の下方)には侵入せず、外層と所望の内層との接続を行うことができる。」(第2ページ右上欄第3行ないし左下欄第1行)

(2)図面の第3図(b)から、「炭酸ガスレーザLにより、前記エツチングにより設けた孔の位置の樹脂層8を除去」する工程は、内層端子5が露出するまで行われる工程であることが見て取れる。

上記記載事項(1)、認定事項(2)及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物5には、以下の方法(以下、「刊行物5に記載された方法」という。)が記載されているものと認められる。

「外層銅箔4で中心位置6’に孔をエツチングしてから、内層端子5が露出するまで炭酸ガスレーザLにより、前記エツチングにより設けた孔の位置の樹脂層8を除去する工程を有する方法。」

6 刊行物6
当審において通知した拒絶の理由に周知例として引用され、本願出願前に頒布された特開平5-110263号公報(以下、「刊行物6」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)「【0024】次に、外層となっている銅箔2のブラインドスルーホール形成部に、フォトエッチングにより開孔部4aを形成し(同図d)、さらにその開孔部4aを形成した外層の銅箔2をマスクとして補強材が入っていないプリプレグ12に化学的エッチングまたはレーザ加工を施すことによりブラインドスルーホール用の孔4bを形成し、またドリル加工、レーザー加工等を施すことによりスルーホール用の孔8を形成する(同図e)。この場合、ブラインドスルーホール用の孔4bの形成に際しては、プリプレグ12がイミド樹脂からなる場合には、加工性の点から抱水ヒドラジン、アルカリ水溶液もしくはそれらの混合溶液でエッチン処理することが好ましく、プリプレグ12がエポキシ樹脂からなる場合にはレーザ加工することが好ましい。」

(2)図面【図1】の工程の進む様子から、スルーホール用の孔8は、貫通ビアホールのための孔であることが見て取れる。

上記記載事項(1)、認定事項(2)及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物6には、以下の方法(以下、「刊行物6に記載された方法」という。)が記載されているものと認められる。

「所定の貫通ビアホールの位置でスルーホール用の孔8をドリル加工する工程を有する方法。」

7 刊行物7
当審において通知した拒絶の理由に周知例として引用され、本願出願前に頒布された特開平6-112649号公報(以下、「刊行物7」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)「【0032】又、通常のドリルにより貫通孔加工(0.35φ)した。孔あけした多層板をプリント板の常法により、過マンガン酸塩をデスミャー後、無電解銅メッキ、更に電気銅メッキにより20μm厚のメッキ処理した。できあがった4層板の導通孔(レーザー加工部)の断面を観察した所良好な導通孔である事を確認した。」

(2)図面【図1】及び【図2】の工程の進む様子から、貫通孔6は、貫通ビアホールのための孔であることが見て取れる。

上記記載事項(1)、認定事項(2)及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物7には、以下の方法(以下、「刊行物7に記載された方法」という。)が記載されているものと認められる。

「所定の貫通ビアホールの位置で貫通孔6を通常のドリルにより貫通孔加工する工程を有する方法。」

第4 対比

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「所定のパターンに形成した銅箔1」は、その技術的意義及び機能から、本願発明の「内層プリント配線」に相当し、以下同様に、「内層回路基材2」は「コア基板」に、「表面層銅箔4からなるプリント配線」は「外層プリント配線」に、「準備の工程」は「準備工程」に、「表面層銅箔4」は「外層プリント配線を形成するための導電箔」に、「半硬化状(Bステージ)の熱硬化性のエポキシ樹脂よりなるシート状のプリプレグ3」は「半硬化状態樹脂シート」に、「積層の工程」は「積層工程」に、「加圧加熱」は、「熱プレスにより一回押圧」に、「溶融したエポキシ樹脂」は「溶融した樹脂」に、「加圧加熱の工程」は「熱押圧工程」に、「感光性レジストにより所定のパターンを形成する処理」は「パターニング処理」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「内層プリント配線が表面に形成されたコア基板と、コア基板の表面に設けられる絶縁層と、コア基板を介した複数の外層プリント配線とを含むビルドアップ多層プリント配線板の製造方法であって、
少なくとも二つのコア基板を用意する準備工程と、
最も上に位置するコア基板の上と、最も下に位置するコア基板の下に、外層プリント配線を形成するための導電箔を、絶縁層となる半硬化状態樹脂シートをはさみ積み重ね、更に前記コア基板の間に絶縁層となる半硬化状態樹脂シートをはさみ積み重ねて積層体を形成する積層工程と、
積層体を熱プレスにより一回押圧することによって、溶融した樹脂により隣接するコア基板間、および導電箔と隣接するコア基板間を接着して絶縁し、一体化構造に形成する熱押圧工程と、
熱押圧工程の後工程として、所定のパターニング処理により外層プリント配線を形成する工程と、
を含み、
積層工程では、コア基板、導電箔、および半硬化状態樹脂シートが互いに分離した状態から積層するビルドアップ多層プリント配線板の製造方法。」
で一致し、以下の相違点1及び相違点2で相違する。

(1)相違点1
準備の工程及び積層の工程に関して、本願発明は、「内層プリント配線間を接続する前記インナービアホールを有するコア基板を用意する方法」及び「熱プレスにより一回押圧することによって、前記インナービアホールに半硬化状態樹脂シートから溶融した樹脂を充填する方法」
であるのに対し、
引用発明は、
「内層回路基材2がインナービアホールを有する方法」でなく、
「加圧加熱することによってシート状のプリプレグ3」のエポキシ樹脂の未硬化部分を溶融させる方法であるものの、「インナービアホールにエポキシ樹脂を充填する方法」でない点。

(2)相違点2
本願発明は、「導電箔でブラインドビアホールを形成する部分を所定のパターニング処理により除去してから所定の内層プリント配線が露出するまでレーザー工法で穴明けする工程と、所定の貫通ビアホール位置で貫通ホールをドリル工法で穴明けする工程と、穴明け後の表面にめっき処理を行い、ブラインドビアホールおよび貫通ビアホールを形成する工程」 を有する方法であるのに対し、 引用発明は、加圧加熱の工程の後「該基材の所定位置にスルーホールを形成する工程と、無電解銅メツキおよび電解銅メツキを施す工程」を有する方法である点。

第5 周知技術の把握

1 刊行物2及び刊行物3から把握される周知技術
本願発明と刊行物2に記載された方法とを対比すると、刊行物2に記載された方法の「内層回路導体3」は、その技術的意義及び機能からみて、本願発明の「内層プリント配線」に相当し、以下同様に、「スルーホール部2」は「インナービアホール」に、「パターン形成の済んだ両面プリント配線板」は「コア基板」に、「用意する工程」は「用意する準備工程」に、「プリプレグからの絶縁樹脂」は「半硬化状態樹脂シートからの樹脂」に、にそれぞれ相当する。
そして、プリプレグからの樹脂をスルーホール部2に充填するためには、プリプレグの未硬化の樹脂を溶融させるための熱と、溶融した樹脂をスルーホール部2に流すための圧力が不可欠であるから、刊行物2に記載された方法の「前記スルーホール部2にプリプレグからの絶縁樹脂を充填する工程」は、本願発明の「熱押圧工程」に相当するといえる。

また、本願発明と刊行物3に記載された方法とを対比すると、刊行物3に記載された方法の「回路パターン24」は、その技術的意義及び機能からみて、本願発明の「内層プリント配線」に相当し、以下同様に、「インナー ビア ホール250」は「インナービアホール」に、「コア基板30」は「コア基板」に、「半硬化状態の熱硬化性の樹脂351のシート」は「半硬化状態樹脂シート」に、「埋める」は「充填する」に、「プレス熱板19により圧着する工程」は「熱押圧工程」にそれぞれ相当する。

したがって、刊行物2に記載された方法及び刊行物3に記載された方法から、以下の周知技術(以下、「周知技術1」という。)が把握できる。

「二つの内層プリント配線間を接続するインナービアホールを含むビルドアップ多層プリント配線板の製造方法であって、
内層プリント配線間を接続するインナービアホールを有するコア基板を用意する準備工程と
インナービアホールに半硬化状態樹脂シートからの樹脂を充填する熱押圧工程とを有する方法。」

2 刊行物4、刊行物5から把握される周知技術
本願発明と刊行物4に記載された方法とを対比すると、刊行物4に記載された方法の「銅箔層」は、その技術的意義及び機能からみて、本願発明の「導電箔」に相当し、以下同様に、「バイアホール用の孔10」は「ブラインドビアホールを形成する部分」に、「フォトレジストを用いてエッチング」は「所定のパターニング処理により除去」に、「導体パターン5」は「所定の内層プリント配線」に、「レーザを使用して孔11をエッチング」は「レーザー工法で穴明け」に、それぞれ相当する。

また、本願発明と刊行物5に記載された方法とを対比すると、刊行物5に記載された方法の「外層銅箔4」は、その技術的意義及び機能からみて、本願発明の「導電箔」に相当し、以下同様に、「中心位置6’」は「ブラインドビアホールを形成する部分」に、「孔をエツチング」は「所定のパターニング処理により除去」に、「内層端子5」は「所定の内層プリント配線」に、「炭酸ガスレーザLにより、前記エツチングにより設けた孔の位置の樹脂層8を除去」は「レーザー工法で穴明け」に、それぞれ相当する。

したがって、刊行物4に記載された方法及び刊行物5に記載された方法から、以下の周知技術(以下、「周知技術2」という。)が把握できる。

「導電箔でブラインドビアホールを形成する部分を所定のパターニング処理により除去してから所定の内層プリント配線が露出するまでレーザー工法で穴明けする工程を有する方法。」

3 刊行物6、刊行物7から把握される周知技術
本願発明と刊行物6に記載された方法とを対比すると、刊行物6に記載された方法の「貫通ビアホールの位置」は、その技術的意義及び機能からみて、本願発明の「所定の貫通ビアホール位置」に相当し、以下同様に、「スルーホール用の孔8」は「貫通ホール」に、「ドリル加工」は「ドリル工法で穴明け」に、それぞれ相当する。

また、本願発明と刊行物7に記載された方法とを対比すると、刊行物7に記載された方法の「貫通ビアホールの位置」は、その技術的意義及び機能からみて、本願発明の「所定の貫通ビアホール位置」に相当し、以下同様に、「スルーホール用の孔8」は「貫通ホール」に、「通常のドリルにより貫通孔加工」は「ドリル工法で穴明け」に、それぞれ相当する。

したがって、刊行物6に記載された方法及び刊行物7に記載された方法から、以下の周知技術(以下、「周知技術3」という。)が把握できる。

「所定の貫通ビアホール位置で貫通ホールをドリル工法で穴明けする工程を有する方法。」

第6 判断
以下、上記相違点1及び相違点2について検討する。

1 相違点1の検討
引用発明は「該基材の所定位置にスルーホールを形成する工程」を有していて、層間接続を意図した発明であるところ、層間接続の設計自由度を大きくすることは、多層プリント配線板の製造方法における一般的課題と認められる。
そうであれば、層間接続の設計自由度を大きくするために、引用発明に上記周知技術1を適用し、二つの銅箔1間を接続するインナービアホールを有するコア内層回路基材2を用意する準備の工程と、加圧加熱することによってシート状のプリプレグ3からのエポキシ樹脂をインナービアホールに充填する加圧加熱の工程とを有する方法にすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。

そうすると、相違点1の本願発明の方法とすることは、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

2 相違点2の検討
引用発明のスルーホールを、ブラインドスルーホール及び貫通スルーホールの両方とすることは、層間接続の設計自由度の観点から、当業者が通常行う程度のことと認められる。
そうであれば、引用発明の「該基材の所定位置にスルーホールを形成する工程」として、ブラインドスルーホールの穴開けのために周知技術2を適用するとともに、貫通スルーホールのための穴開けのために周知技術3を適用することに、格別の困難性は認められない。

そうすると、相違点2の本願発明の方法とすることは、引用発明、周知技術2及び周知技術3に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術1ないし3から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するとは認められない。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたといえる。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-15 
結審通知日 2015-12-16 
審決日 2016-01-05 
出願番号 特願2014-10285(P2014-10285)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 悟史吉澤 秀明  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 内田 博之
中川 隆司
発明の名称 多層プリント配線板の製造方法  
代理人 佐々木 敬  
代理人 池田 憲保  

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