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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1311393
審判番号 不服2014-23339  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-17 
確定日 2016-02-18 
事件の表示 特願2010-189756「膨張弁」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月 8日出願公開、特開2012- 47393〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年8月26日の出願であって、平成26年3月4日付けで拒絶理由が通知され、平成26年5月12日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年8月28日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成26年11月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 平成26年11月17日付けの手続補正の補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成26年11月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成26年5月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2の
「 【請求項1】
コンデンサで凝縮した高圧の冷媒を導入する入口ポート、該入口ポートに連通する弁室、該弁室に設けられた弁孔、該弁孔で膨張した冷媒を外部に向けて導出する出口ポート及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する通路を有する弁本体と、前記弁孔を開閉する弁部材と、前記弁部材を駆動して前記弁孔の開度を制御する弁部材駆動装置とを備える膨張弁であって、前記出口ポートに圧入により固定される絞り部材を設けてあり、
前記絞り部材は、前記出口ポートに圧入されるフランジ部と、中央部に形成される1個の貫通孔を有する板状の部材であることを特徴とする膨張弁。
【請求項2】
コンデンサで凝縮した高圧の冷媒を導入する入口ポート、該入口ポートに連通する弁室、該弁室に設けられた弁孔、該弁孔で膨張した冷媒を外部に向けて導出する出口ポート及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する通路を有する弁本体と、前記弁孔を開閉する弁部材と、前記弁部材を駆動して前記弁孔の開度を制御する弁部材駆動装置とを備える膨張弁であって、前記出口ポートに圧入により固定される絞り部材を設けてあり、
前記絞り部材は、前記出口ポートに圧入されるフランジ部と、多数の小径貫通孔を有する板状の部材であることを特徴とする膨張弁。」を
「 【請求項1】
コンデンサで凝縮した高圧の冷媒を導入する入口ポート、該入口ポートに連通する弁室、該弁室に設けられた弁孔、該弁孔で膨張した冷媒を外部に向けて導出する出口ポート及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する通路を有する弁本体と、前記弁孔を開閉する弁部材と、前記弁部材を駆動して前記弁孔の開度を制御する弁部材駆動装置とを備える膨張弁であって、
前記出口ポートに、中央部に形成される1個の貫通孔又は複数の小径貫通孔を有する絞り部材が設けてあり、
前記絞り部材は、前記1個の貫通孔又は前記複数の小径貫通孔が形成された円盤状部と、前記円盤状部の外周部に形成され前記出口ポートの内面に接触しつつ圧入されるフランジ部と、からなることを特徴とする膨張弁。」と補正した。(下線は、補正前の請求項1に対して補正された箇所を示す。)

そして、この補正は、補正前の請求項1及び2を択一的な記載を用いて一つの請求項とするとともに、特許請求の範囲に記載した発明を特定するために必要な事項である絞り部材について、板状の部材が円盤状部であること、及び絞り部材のフランジ部が円盤状部の外周部に形成され、出口ポートの内面に接触しつつ圧入されることの限定を付加するものであり、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。

よって、本件補正における請求項1に係る発明の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮)を目的とするものである。

2 独立特許要件についての検討
(1)そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(2)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-98444号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空調装置或いは冷凍装置における冷凍サイクルに使用される膨張弁に関する。」

(イ)「【0014】
【発明の実施の形態】本発明の膨張弁の用途として、図3に、空調装置や冷凍装置に使用される冷凍サイクル20を例示する。21は圧縮機、22は凝縮器、23はレシーバ、24は蒸発器であって、それらは接続配管25によって接続されて1つの冷媒回路を構成している。気体状の冷媒は圧縮機21によって圧縮され、凝縮器22を通過するときに冷却されて液化してレシーバ23に蓄えられる。高圧となるレシーバ23と、低圧となる蒸発器24との間には膨張弁が設けられるが、図3においては、膨張弁として後に構造を詳しく説明する本発明の第1実施例の膨張弁Iと同様なものを図示している。レシーバ23を出た液状の冷媒は膨張弁Iの減圧部を通過する際に減圧されて気液混合の状態となって蒸発器24へ流入し、そこで熱を奪って気化する。気化した冷媒は再び圧縮機21へ吸入されて圧縮される。
【0015】図1に本発明の第1実施例としての膨張弁Iの構造を示す。1はケーシングであって、その下端寄りの部分には冷媒出口室1aと冷媒入口室1bが上下の位置関係において形成されており、それらの室1a,1bの間を連通するように、減圧部としての流路を構成するオリフィス1sが形成されている。オリフィス1sの上部の出口から上方に向かって急に拡径すると共に、流れの方向が90°転向して冷媒出口室1aに接続する流路1cは滑らかに円弧状に湾曲している。
【0016】ケーシング1の上端寄りの部分には冷媒通路1dが横方向に貫通しており、冷媒通路1dの左右の開口部は配管によって図3に示すように蒸発器24と圧縮機21に接続される。オリフィス1sの下部の入口の近傍に、弁体としてのボール2が弁押さえ6に載って支持されている。弁押さえ6はスプリング7の弾力によって上方に向かって付勢されており、このスプリング7の下端部は、冷媒入口室1bの下部の開口を閉塞するようにケーシング1の螺子部に螺合された調節ネジ5によって支持されている。従って、ボール2はスプリング7によって常に上方のオリフィス1sの入口を狭める方向に付勢されており、その強さは調節ネジ5の螺入の程度によって調節される。
【0017】オリフィス1s及びそれと同一の軸線上においてケーシング1を縦に貫通する段付き穴には細い作動棒3が上下方向に摺動可能に緩挿され、オリフィス1s内に小さな断面積を有する絞られた流路を形成する。この絞られた流路が加圧された液状冷媒のための減圧部となる。作動棒3の下端はボール2に接触していて、スプリング7の付勢に抗してそれを押し下げることができる。
【0018】オリフィス1sと同一軸線上の段付き穴の上部に形成された太い穴には感温筒4の軸部の一部が気密状態で摺動可能に挿入されており、その下端は作動棒3の上端と接触していて、相互に押し合うことによって連動するようになっている。感温筒4の軸部の相当の部分は、蒸発器24から圧縮機21へ帰る戻り冷媒が流れる冷媒通路1dを横切る位置に露出しており、戻り冷媒の温度や圧力に応じて後述のダイヤフラム8等と協働して上下方向に移動するようになっている。
【0019】感温筒4の上端に一体的に形成された傘部4aの広い上面に接触するように金属製で円形のダイヤフラム8が設けられている。ダイヤフラム8の周縁部は上部のカバー半部9と、それに対して一体化されて殻状となる下部のカバー半部10との間に挟着されている。下方のカバー半部10はケーシング1の上部開口に形成された螺子部に螺合することによって取り付けられる。このようにして殻状のカバー9,10の内部はダイヤフラム8によって上下2つの空間に区画される。上部空間8aには上部の開口から冷媒が封入され、その開口は密閉材11によって閉じられている。なお、図1において、参照符号12,13,14は気密状態を維持するために用いられたOリングを示している。
【0020】感温筒4は、冷媒通路1dを通過する戻り冷媒の温度が高いときは、その熱をダイヤフラム8と共に上部の空間8aへ伝える。それによって空間8a内に封入された冷媒が膨張してダイヤフラム8を押し下げるので、その変位が感温筒4を介して作動棒3に伝えられ、スプリング7の付勢力に抗してボール2を押し下げて、オリフィス1sの入口の開度を大きくすることにより、オリフィス1sを通過する冷媒の流量を増大させる。それと反対に、戻り冷媒の温度が低いときはダイヤフラム8の上部空間8a内の冷媒が収縮するので、スプリング7の付勢によってダイヤフラム8は感温筒4や作動棒3と共に押し上げられ、ボール2がオリフィス1sの入口の開度を小さくして、通過する冷媒の流量を減少させる。」

(ウ)「【0046】次に、図26は、本発明の第11実施例の膨張弁XIを蒸発器24に対して配管を使用しないで直接に接続した状態を示す断面図である。膨張弁XIにおいて消音効果に関連する主要な部分を拡大して図27に示す。膨張弁XIは、図2に示す従来の膨張弁Cと同様に、オリフィス1sの下流側に単なる円孔1hを備えているが、勿論、この部分に前述の滑らかに湾曲する流路1cを形成する湾曲流路形成部材15等を設けて消音効果を発揮させることができる。しかしながら、第11実施例の膨張弁XIの特徴は、湾曲流路形成部材15を設けたり、滑らかに湾曲する流路1cを形成するという点にあるのではなく、オリフィス1sの下流側となる流路、この場合は膨張弁接続部30の内部にメッシュ状のフィルタ31を設けた点にある。
【0047】図27に拡大して示したように、フィルタ31は目の細かい金網からなり、全体が袋状に形成されていて、入口には円錐形のリング状部材32が取り付けられている。フィルタ31はリング状部材32によって、膨張弁接続部30に形成されたテーパー面に係合して取り付けられる。膨張弁接続部30は蒸発器24側に一体的に設けられたものであって、その突出部分が膨張弁XIの冷媒出口室1a及び冷媒通路1dに挿入されて、図示しないボルトのような締結手段によって固定される。なお、図26に示す33は、レシーバ23及び圧縮機21への配管のための接続部である。
【0048】第11実施例の膨張弁XIにおいては、その下流側にフィルタ31が設けられているので、オリフィス1sを通過して減圧されることにより内部に気泡が生じた気液混合の状態の冷媒が蒸発器24へ流入する前に、フィルタ31の細かな網目を通過することによって若干の抵抗を受けるため、図2に示す従来の膨張弁Cのように、気泡を含む冷媒の噴流が円孔1hの面に衝突することによって生じる冷媒の流れの圧力変動が減衰する。従って、圧力変動を有する冷媒が蒸発器24のフィン等を振動させて高周波音等の騒音を放散するのを抑制することができる。更にこの場合はリング状部材32が漏斗状に流路径を狭める形状を有するので、これもまた冷媒の流れに若干の抵抗を与えて、冷媒の流れの圧力変動による振動を減衰させるように作用する。このようにして、円孔1h内における激しい気泡の発生が抑えられ、円孔1hが高周波音の発生源となることが避けられる。」

(エ)「


(オ)「



イ 引用例1に記載された発明
上記ア(ウ)の第11実施例の前提となる構造は、上記(イ)の第1実施例と同じであるから、第11実施例(図26、27)に着目すると、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「気体状の冷媒は圧縮機21によって圧縮され、凝縮器22を通過するときに冷却されて液化してレシーバ23に蓄えられ、高圧となるレシーバ23と、低圧となる蒸発器24との間に設けられた膨張弁であって、
レシーバ23を出た液状の冷媒は膨張弁の減圧部を通過する際に減圧されて気液混合の状態となって蒸発器24へ流入し、そこで熱を奪って気化し、気化した冷媒は再び圧縮機21へ吸入されて圧縮され、
膨張弁のケーシング1は、その下端寄りの部分には冷媒出口室1aと冷媒入口室1bが上下の位置関係において形成されており、それらの室1a,1bの間を連通するように、減圧部としての流路を構成するオリフィス1sが形成され、オリフィス1sの下部の入口の近傍に、弁体としてのボール2が弁押さえ6に載って支持され、
ケーシング1の上端寄りの部分には、冷媒通路1dが横方向に貫通しており、冷媒通路1dの左右の開口部は配管によって蒸発器24と圧縮機21に接続され、
オリフィス1s及びそれと同一の軸線上においてケーシング1を縦に貫通する段付き穴には細い作動棒3が上下方向に摺動可能に緩挿され、オリフィス1s内に小さな断面積を有する絞られた流路を形成し、この絞られた流路が加圧された液状冷媒のための減圧部となり、作動棒3の下端はボール2に接触していて、スプリング7の付勢に抗してそれを押し下げることができ、 オリフィス1sと同一軸線上の段付き穴の上部に形成された太い穴には感温筒4の軸部の一部が気密状態で摺動可能に挿入されており、その下端は作動棒3の上端と接触していて、相互に押し合うことによって連動するようになっており、感温筒4の軸部の相当の部分は、蒸発器24から圧縮機21へ帰る戻り冷媒が流れる冷媒通路1dを横切る位置に露出しており、戻り冷媒の温度や圧力に応じて後述のダイヤフラム8等と協働して上下方向に移動するようになっており、
オリフィス1sの下流側となる流路にメッシュ状のフィルタ31を設けた膨張弁。」

ウ 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-162851号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
この発明は、冷媒サイクル等に使用されて冷媒の流量を全閉から全開まで連続的に制御する電動弁に関する。」

(イ)「【0023】
図4は、整流部材の詳細を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。図4に示すように、整流部材100は、円筒部101と底部103を有するカップ形状(筒状)に形成され、円筒部101の開口側の周縁部には取付け用のフランジ部102を備えている。フランジ部102を配管20,22の先端部と弁本体10の開口部21,23の間で挟み込み、配管20,22を固着することで整流部材100が開口部21,23に取り付けられる。
【0024】
整流部材100は、弁室14に対して流入・流出する冷媒を整流するため、カップの底部103には複数の整流孔が形成されている。整流孔を構成するため、整流部材100は、冷媒の絞り通路となる複数の整流孔を絞り・パンチングプレス加工等により形成されるが、これに限るものではない。整流孔は、中心に設けられる一つの第1整流孔110と、第1整流孔110の周囲に等角度で隔置して分散配置される複数(図示の例では8個)の第2整流孔120により構成される。整流部材100は、所定の開口率を有する絞り手段S1でもある。整流部材100は、通過する冷媒の整流機能及び絞り機能並びに二相流状態の冷媒中の気泡を細分化する機能を兼ね備える。整流孔110,120の径寸法は、弁本体10に形成される冷媒通路の径寸法に比べて小さな寸法に設定されている。この実施形態では、第2整流孔120の径寸法は、第1整流孔110の径寸法より小さく設定されているが、これに限定されるものではない。
【0025】
配管20又は配管22から弁室14に流入しようとする冷媒は、整流部材100を通過する間に整流される。即ち、冷媒中に混入する気泡のうちで大きな気泡はこの整流孔110,120を通過することができない。整流孔110,120は、大きな気泡を細分化する機能を有する。大きな気泡は、弁室14に流入する際に細分化された状態となる。この作用により、弁室14を通過する冷媒の通過音は低減される。整流孔の分散配置の形態については、詳細を後述する。
【0026】
図5(a)?(d)は、整流部材に形成される整流孔の分布についての種々の形態を示す。図5(a)は参考に示す図であり、底部103の中心に例えば孔径2.2φの整流孔110aのみを形成した例である。この例は、図3における絞り手段S2に相当する。本発明による整流孔の分散配置は、図5(b)?図5(d)に示されている。」

(ウ)「図3



(エ)「図4



(オ)「図5(a)



(オ)図4(a)、(b)より、カップの底部103は、円形であることが看取できる。

エ 引用例2に記載された事項
上記記載事項及び図3、4の記載を総合すると、引用例2には次の事項(以下「引用例2記載事項」という。)が記載されているといえる。

「冷凍サイクルに用いる電動弁において、弁室14に対して流出する冷媒の整流機能及び絞り機能並びに二相流状態の冷媒中の気泡を細分化する機能を兼ね備えるために、弁本体10の開口部23に設ける整流部材100が、冷媒の絞り通路となる1個又は複数の整流孔が形成されたカップの円形の底部103と、円筒部101及びフランジ部102を有している事項。」

オ 引用例3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-132498号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、閉鎖弁およびこの閉鎖弁を用いた空気調和機に関する。」

(イ)「【0025】
図1(B)は、本体1に嵌め込む前のオリフィス部材3の断面図である。上記オリフィス部材3は、図1(B)に示すように、凹部20を有する蓋状の環状部材であり、オリフィス21を有する円板状のオリフィス部22と、このオリフィス部22の外周部から軸方向に突出すると共に、上記オリフィス15の中心軸αと同一の中心軸αを有する円筒部23と、この円筒部23に連なる第1テーパ部24と、この第1テーパ部24に連なる第2テーパ部25とから構成されている。
【0026】
上記第1テーパ部24の中心軸αからの傾きは、第2テーパ部25の中心軸αからの傾きよりも大きくなっている。上記第1テーパ部24は、上記略鼓状の流体通路部分11の出口7側のテーパ面に適合するように、この流体通路部分11の出口7側のテーパ面の形状と略同一の形状に形づくられている。一方、第2テーパ部25は、中心軸αからの距離がオリフィス部22から離れるに従って大きくなるように形づくられており、オリフィス部22から離れるに従って流体通路8の略鼓形状の流体通路部分11の出口7側の円筒面の内径よりも大きな外径を有するようになっている。上記オリフィス部材3を、流体通路部分11の出口7側の円筒面に押し込んだとき、オリフィス部材3の第2テーパ部25と本体1の流体通路部分11の出口7側の円筒面の間には大きな静摩擦力が生じるようになっている。このことによって、オリフィス部材3を本体1に確実に固定することができる。」

(ウ)「【0029】
また、上記第1実施形態の閉鎖弁によれば、オリフィス部材3を圧入によって簡単安価に閉鎖弁の入口と出口の間に組み込んだので、キャピラリやオリフィスをコストや工数を要するろう付けによって閉鎖弁外の回路中に設ける必要がない。したがって、空気調和機を製造するときのコストと工数を大幅に低減できる。」

カ 引用例3に記載された事項
上記記載事項及び図1の記載を総合すると、引用例3には次の事項(以下「引用例3記載事項」という。)が記載されているといえる。

「オリフィス部材3を圧入によって簡単安価に閉鎖弁に組み込むために、上記オリフィス部材3を、流体通路部分11の出口7側の円筒面に押し込んだとき、オリフィス部材3の第2テーパ部25と本体1の流体通路部分11の出口7側の円筒面の間には大きな静摩擦力が生じる事項。」

(3)本願補正発明と引用発明の対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「凝縮器22」は、その構造及び機能から本願補正発明の「コンデンサ」に相当し、以下同様にそれぞれ、「冷媒入口室1b」は「入口ポート」に、「オリフィス1s」は「弁孔」に、「冷媒出口室1a」は「出口ポート」に、「蒸発器24」は「エバポレータ」に、「圧縮機21」は「コンプレッサ」に、「ケーシング1」は「弁本体」に、「ボール2」は「弁部材」に相当する。

(イ)引用発明の「冷媒」は、「凝縮器22を通過」し、「レシーバ23に蓄えられ」、「冷媒入口室1b」に導入され、「冷媒入口室1b」から「オリフィス1s」、「冷媒出口室1a」に、その後、「蒸発器24」、「冷媒通路1d」を通り、「圧縮機21」に供給されている。そして、引用発明の「凝縮器22を通過するときに冷却されて液化してレシーバ23に蓄えられ、高圧となるレシーバ23」からの冷媒が導入される「冷媒入口室1b」は、冷媒入口室1bに導入される冷媒がレシーバ23からの高圧の冷媒であるから、本願補正発明の「コンデンサで凝縮した高圧の冷媒を導入する入口ポート」に相当する。

(ウ)引用発明の「膨張弁のケーシング1は、その下端寄りの部分には冷媒出口室1aと冷媒入口室1bが上下の位置関係において形成されており、それらの室1a,1bの間を連通するように、減圧部としての流路を構成するオリフィス1sが形成され、オリフィス1sの下部の入口の近傍に、弁体としてのボール2が弁押さえ6に載って支持され」ていることは、「冷媒入口室1b」と「冷媒出口室1a」との間に、「オリフィス1s」及び「オリフィス1sの下部の入口」と「ボール2」とからなる弁機構を有しているから、当該弁機構を有する弁室を有しているといえ、当該弁室は、「冷媒入口室1b」に連通しており、弁室には「オリフィス1s」が設けられているといえる。したがって、引用発明の当該構成は、本願補正発明の「該入口ポートに連通する弁室、該弁室に設けられた弁孔」を有していることに相当する。

(エ)上記(イ)のとおり、引用発明の「冷媒」が、「オリフィス1s」、「冷媒出口室1a」に、その後、「蒸発器24」に供給されることは、「オリフィス1s」を通過した「冷媒」を「蒸発器24」に供給する「冷媒出口室1a」と表現でき、「オリフィス1s内に小さな断面積を有する絞られた流路を形成し、この絞られた流路が加圧された液状冷媒のための減圧部とな」っていることは、「オリフィス1s」で冷媒の膨張が起きることであり、蒸発器24は、ケーシング1の外部と表現できるから、本願補正発明の「該弁孔で膨張した冷媒を外部に向けて導出する出口ポート」を有することに相当する。

(オ)引用発明の「冷媒通路1dが横方向に貫通しており、冷媒通路1dの左右の開口部は配管によって蒸発器24と圧縮機21に接続され」ることは、「蒸発器24」と「圧縮器」との間に接続される「冷媒通路1d」を有していることであるから、本願補正発明の「エバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する通路を有する」ことに相当する。

(カ)そして、上記(イ)?(オ)の引用発明の「冷媒入口室1b」、「オリフィス1s」、「冷媒出口室1a」、「冷媒通路1d」及び上記(ウ)の「弁室」を「ケーシング1」が有しているから、引用発明の当該構成は、本願補正発明の「コンデンサで凝縮した高圧の冷媒を導入する入口ポート、該入口ポートに連通する弁室、該弁室に設けられた弁孔、該弁孔で膨張した冷媒を外部に向けて導出する出口ポート及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する通路を有する弁本体」に相当する。

(キ)引用発明の「オリフィス1sの下部の入口の近傍に、」「弁押さえ6に載って支持され、」「オリフィス1sの入口の開度を調整」する「ボール2」は、「オリフィス1s」の入口の開度を調整することが「オリフィス1s」を開閉していることといえるから、本願補正発明の「前記弁孔を開閉する弁部材」に相当する。

(ク)引用発明の「オリフィス1s及びそれと同一の軸線上においてケーシング1を縦に貫通する段付き穴には細い作動棒3が上下方向に摺動可能に緩挿され、オリフィス1s内に小さな断面積を有する絞られた流路を形成し、この絞られた流路が加圧された液状冷媒のための減圧部となり、作動棒3の下端はボール2に接触していて、スプリング7の付勢に抗してそれを押し下げることができ、オリフィス1sと同一軸線上の段付き穴の上部に形成された太い穴には感温筒4の軸部の一部が気密状態で摺動可能に挿入されており、その下端は作動棒3の上端と接触していて、相互に押し合うことによって連動するようになっており、感温筒4の軸部の相当の部分は、蒸発器24から圧縮機21へ帰る戻り冷媒が流れる冷媒通路1dを横切る位置に露出しており、戻り冷媒の温度や圧力に応じて後述のダイヤフラム8等と協働して上下方向に移動するようになって」いることは、ダイヤフラム8及び感温筒4によって作動棒3を押し下げてボール2を駆動していることであるから、本願補正発明の「前記弁部材を駆動して前記弁孔の開度を制御する弁部材駆動装置」に相当する。

(ケ)引用発明の「フィルタ31」は、段落【0046】【0048】を参酌すると騒音を防止するために設けられており、引用発明の「オリフィス1sの下流側となる流路」は、図26を参酌すると本願補正発明の「出口ポート」といえるから、引用発明の「オリフィス1sの下流側となる流路にメッシュ状のフィルタ31を設け」たことと、本願補正発明の「前記出口ポートに、中央部に形成される1個の貫通孔又は複数の小径貫通孔を有する絞り部材が設けて」あることとは、「前記出口ポートに、騒音防止部材が設けて」あることの限りで一致する。

イ 一致点
したがって、両者は、
「コンデンサで凝縮した高圧の冷媒を導入する入口ポート、該入口ポートに連通する弁室、該弁室に設けられた弁孔、該弁孔で膨張した冷媒を外部に向けて導出する出口ポート及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する通路を有する弁本体と、前記弁孔を開閉する弁部材と、前記弁部材を駆動して前記弁孔の開度を制御する弁部材駆動装置とを備える膨張弁であって、
前記出口ポートに、騒音防止部材が設けてある膨張弁。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

ウ 相違点
相違点
騒音防止部材が、本願補正発明は、中央部に形成される1個の貫通孔又は複数の小径貫通孔を有するものであって、前記1個の貫通孔又は複数の小径貫通孔が形成された円盤状部と、前記円盤状部の外周部に形成され出口ポートの内面に接触しつつ圧入されるフランジ部と、からなるのに対し、引用発明は、メッシュ状のフィルタ31であって、その固定手段についての特定がない点(以下「相違点」という。)。

(4) 当審の判断
ア 相違点の検討
上記相違点について以下検討する。

引用例2記載事項の「弁本体10の開口部23」は本願補正発明の「出口ポート」に相当し、以下同様に「整流部材100」は、絞り機能と冷媒中の大きな気泡を細分化する機能とを有しているから(【0024】、【0025】参照。)、「絞り部材」に、「冷媒の絞り通路となる1個又は複数の整流孔が形成されたカップの底部103」は「1個の貫通孔又は複数の小径貫通孔が形成された円盤状部」に、「円筒部101及びフランジ部102」は、カップの底部103の外周に形成されているから、「円盤状部の外周部に形成されるフランジ部」に相当する。また、引用例2記載事項の「電動弁」は、冷媒の流量を全閉から全開まで連続的に制御するものであるから(【0001】)、「絞り弁」と表現できるものである。
したがって、引用例2記載事項には、冷凍サイクルの騒音防止部材を、出口ポートに設ける1個の貫通孔又は複数の小径貫通孔が形成された円盤状部と、前記円盤状部の外周部に形成されるフランジ部と、からなる絞り部材により構成する点が記載されているといえる。

引用例3記載事項の「オリフィス部材3」は、その機能から絞り部材といえ、引用例3記載事項の「閉鎖弁」は、オリフィス部材3を有しているから、「絞り弁」といえるものであり、また、引用例3記載事項の「流体通路部分11の出口7側」は、本願補正発明の「出口ポート」に相当する。引用例3記載事項の「オリフィス部材3の第2テーパ部25」は、段落【0025】を参酌すると、オリフィス部22の外周部から軸方向に突出した円筒部23、円筒部23に連なる第1テーパ部24、第1テーパ部24に連なるものであり、「オリフィス部22」が本願補正発明の「円盤状部」に相当するから、「第2テーパ部25」は、「円盤状部の外周部に形成され」る「フランジ部」に相当し、引用例3記載事項の「上記オリフィス部材3を、流体通路部分11の出口7側の円筒面に押し込んだとき、オリフィス部材3の第2テーパ部25と本体1の流体通路部分11の出口7側の円筒面の間には大きな静摩擦力が生じる」ことは、流体通路部分11の出口7側の円筒面と、オリフィス部材3とは、オリフィス部材3の第2テーパ部25と流体通路部分11の出口7側の円筒面の間は接触して圧力が生じている状態で押し込まれることであるといえるから、本願補正発明の「絞り部材を出口ポートの内面に接触しつつ圧入されるフランジ部により固定する」ことに相当する。
したがって、引用例3記載事項は、絞り弁において、出口ポートに絞り部材を設ける際に、絞り部材を出口ポートの内面に接触しつつ圧入されるフランジ部により固定する点が記載されているといえる。

そうすると、引用発明、引用例2記載事項及び引用例3記載事項は、いずれも絞り弁の出口ポートに騒音防止部材を設けるものである。そして、引用発明の冷媒による騒音を防止するメッシュ状のフィルタ31に換えて、更なる音の発生防止効果の期待できる引用例2記載の絞り弁を用いることは当業者が容易に想到し得たことである。そして、絞り弁の固定手段の選択は、当業者が適宜なし得ることであって、引用例3記載の事項を採用することも当業者にとって困難なことではない。
したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
本願発明により奏されるとされる効果は、引用発明、引用例2及び3に記載された技術的事項からみて格別なものとはいえない。

ウ まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2及び3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5) 小括
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおりであり、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年11月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1又は2に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成26年5月12日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1又は2に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成26年11月17日付けの手続補正の補正却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成26年11月17日付けの手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2) 引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明1又は2は、本願補正発明から、絞り部材について、絞り部材の板状の部材が円盤状部であること、及び絞り部材のフランジ部が、円盤状部の外周部に形成され、出口ポートの内面に接触しつつ圧入されることの限定を省き、択一的記載をそれぞれ別の請求項としたものである。
そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、更に他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 平成26年11月17日付けの手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(3)本願補正発明と引用発明の対比」及び「(4)当審の判断」に記載したとおりの引用発明、引用例2及び3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1及び2も同様の理由により、引用発明、引用例2及び3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができない。ゆえに、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-16 
結審通知日 2015-12-22 
審決日 2016-01-05 
出願番号 特願2010-189756(P2010-189756)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二仲村 靖  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 佐々木 正章
山崎 勝司
発明の名称 膨張弁  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  
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