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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60L 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60L |
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管理番号 | 1311431 |
審判番号 | 不服2014-14568 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-25 |
確定日 | 2016-02-24 |
事件の表示 | 特願2012-256536「電気自動車及び電気自動車のプログラム運用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月10日出願公開,特開2013-116044〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件に係る出願(以下,「本願」と言う。)は,平成24年11月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年(平成23年)11月25日,韓国)の特許出願であって,平成26年3月14日付けで拒絶査定がされ(送達日は平成26年3月25日),これに対して,平成26年7月25日に本件拒絶査定不服審判が請求される同時に手続補正書が提出された。 その後,当審より平成27年4月23日付けで拒絶理由を通知し,これに対して平成27年7月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 当審が通知した拒絶理由の概要 当審において平成27年4月23日付けで通知した拒絶理由において,特許請求の範囲の請求項1,6について,以下の指摘をした。 「この審判事件に関する出願(以下,「本願」という。)は,明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 記 1.特許請求の範囲の請求項1に,「前記駆動プログラムの属性情報がパラメータの属性情報と異なると、前記パラメータの設定値を前記駆動プログラムに対応する設定値に更新する」と記載されているが,そのような更新に際して「前記駆動プログラムに対応する設定値」はどこから得るのか,また,駆動プログラムに対応する設定値であることが何によって判別されるのか,明細書にも記載されておらず不明というほかはない。 すなわち,明細書には,段落【0005】に「ソフトウェアプログラムのみアップデートし、パラメータのアップデートは行われないのが一般的である。」と記載されているだけであり,段落【0034】,【0045】を見れば,更新前の現在のパラメータが図3に示す領域に格納されているだけであって,更新すべきパラメータは格納されていない。 したがって,アップデートされた駆動プログラムに対応するパラメータは,どこから得て,どのような手段で「前記駆動プログラムに対応する設定値」とするのかは,明細書に記載されておらず不明である。 そもそも,上記従来の「一般的」な電気自動車ではどのように対応していたのかも不明であり,本願発明が前提としている技術的事項が十分明らかではない(通常はプログラムの更新と同時に必用なパラメータも更新されるものと考えられる。)。 上記指摘は,請求項6についても当てはまる。 よって,本願発明の解決しようとする課題及び解決手段が明確であるとはいえない。」 3 請求人の応答 請求人は,上記した当審の通知に応答して,特許請求の範囲のみを補正する手続補正書及び意見書を提出した。 (1)当該手続補正書により,当審の通知に係る特許請求の範囲の請求項1,6の記載は,それぞれ,次の【請求項1】,【請求項5】のとおりに補正された(以下,この補正を「本件補正」と言う。)。 「【請求項1】 電装品の駆動プログラムの実行命令を受信すると、電気自動車に具備される電装品を駆動するための更新時刻情報及び更新日情報を含む駆動プログラムの属性情報を判読するステップと、 前記駆動プログラムに対応する更新時刻情報及び更新日情報を含むパラメータの属性情報を判読するステップと、 前記駆動プログラムの属性情報と前記パラメータの属性情報とを比較するステップと、 前記の比較結果に応じて、前記駆動プログラムの更新時刻情報及び更新日情報がパラメータの更新時刻情報及び更新日情報と異なると、前記パラメータの更新時刻情報及び更新日情報を前記駆動プログラムの更新時刻情報及び更新日情報に対応する値に更新するステップと、 前記の更新されたパラメータに基づいて、前記駆動プログラムを前記電気自動車において実行するステップと、 を含むことを特徴とする電気自動車のプログラム運用方法。」 「【請求項5】 電装品を駆動するための電装品駆動部と、 前記電装品駆動部は、 電装品の駆動プログラムの実行命令を受信すると、電装品の更新時刻情報及び更新日情報を含む駆動プログラムの属性情報及び、前記駆動プログラムに対応するパラメータの更新時刻情報及び更新日情報を含む属性情報を判読する属性情報判読部と、 前記駆動プログラムの更新時刻情報及び更新日情報と前記パラメータの更新時刻情報及び更新日情報とを比較する比較部と、 前記比較部が比較した結果に応じて、前記駆動プログラムの更新時刻情報及び更新日情報がパラメータの更新時刻情報及び更新日情報と異なると、前記パラメータの更新時刻情報及び更新日情報を駆動プログラムに対応する更新時刻情報及び更新日情報と同一となるように更新する更新部と、 を含むことを特徴とする電気自動車。」 (2)請求人は,当該意見書において,次のように主張する。 ア「補正後の請求項1についての補正は、補正前の請求項1を、補正後の請求項1に記載されるとおりに補正するものです。そして、この補正は、例えば、本願の明細書の段落〔0033〕?〔0045〕、図2の記載等を根拠とするものです。 また、補正後の請求項5についての補正は、補正前の請求項6を、補正後の請求項5に記載されるとおりに補正するものです。そして、この補正は、例えば、本願の明細書の段落〔0033〕?〔0045〕、図2の記載等を根拠とするものです。」 イ「「設定値」との用語を削除し、上記のとおり、請求項1を補正しております。したがって、補正後の請求項1に記載される発明の構成は明確であると考えます。」 4 当審の判断 (1)本願に係る発明の課題,効果について ア 本願の明細書(以下,「本願明細書」と言う。)には,本願に係る発明の技術分野,背景技術,解決しようとする課題が以下のように説明されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は電気自動車に関し、特に電気自動車のプログラム運用方法に関する。 【背景技術】 【0002】 大気汚染、二酸化炭素排出量の増加のような問題を解決するために、駆動モータを駆動源にして排出ガスが全く発生しない電気を使用する純粋な電気自動車(Eletric Vehicle:EV)や、エンジンと駆動モータを駆動源にするハイブリッド自動車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)などの電気自動車の開発に関心が集っている。 【0003】 一般に電気自動車は、バッテリ、インバータ、モータ、トランスミッションなどを具備する。外部から入力された電気エネルギーはバッテリに貯蔵され、インバータはバッテリから電気エネルギーを供給されて、所望のトルクと速度でモータを制御する。モータと機械的に連結されたトランスミッションを介して伝達された機械的な力がホイールを回転させて電気自動車を駆動する。 【0004】 他にも、電気自動車には多様な電子装置である電装品が装着される。電装品は電気自動車の駆動のために必要な装置から、使用者の便宜のために提供される装置まで多様に具備されるが、このような電装品はハードウェア装置とソフトウェアプログラムが連動して動作するのが一般的である。ソフトウェアプログラムは多数のパラメータを参照して実行され、パラメータには該当する電装品が最適に駆動するための動作基準値である複数の設定値が含まれる。 【0005】 一方、電装品の機能の改善、変更などのために、電装品を駆動するソフトウェアプログラムは修正、変更されて電気自動車に継続的にアップデートされる。このようなソフトウェアプログラムの修正及び変更にパラメータの変更が伴う場合が大部分であるにもかかわらず、ソフトウェアプログラムのみアップデートし、パラメータのアップデートは行われないのが一般的である。従って、ソフトウェアプログラムが不適合なパラメータを参照して実行されて電装品の駆動時に頻繁にエラーが発生し、ソフトウェアプログラムの信頼性が低下するという問題がある。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、上述した問題点を解決するために提案されたものであり、電装品の駆動プログラムに対応するパラメータを自動的に更新し得る電気自動車のプログラム運用方法を提供することを目的とする。」 イ このアの記載事項からは,電気自動車に装着される電装品に対するパラメータが,従来どのようにして変更されていたのか明らかではないのであるが,電装品を駆動するソフトウェアプログラムが修正,変更(アップデート)されれば,電装品に対するパラメータにも変更が必要となる場合があることは,技術常識を踏まえれば,当業者が当然に認識できることである。そしてまた,そのようなパラメータの変更の際には,当該電装品が最適に駆動するための動作基準値である設定値が変更される必要があることも,技術常識を踏まえれば,当業者が当然に認識できることである。 そうしてみると,本願に係る発明が解決せんとする課題として,電装品を駆動する際に当該電装品に対するパラメータが当該電装品が最適に駆動するための動作基準値である設定値に変更されているようにすることまでは,当業者が把握し得るものである。 ウ 本願明細書には,本願に係る発明の効果が以下のように記載されている。 「【0022】 本発明は、電装品駆動プログラムで参照するパラメータに属性情報を付加してパラメータの更新履歴を判断し、駆動プログラムの更新によってパラメータを自動的に更新することで、駆動プログラムが不適合なパラメータを参照することで発生し得るエラー及び電装品の誤動作を防止し得る利点がある。」 エ このウの記載からも,本願に係る発明は,上記イで指摘したような課題を解決するものと理解することができる。 (2)本願に係る発明の構成について ア 本願明細書には,段落【0007】?【0021】に発明の一実施例の一態様なるものが列記され,発明の実施例自体が,段落【0024】?【0052】で図1?図4の記載を伴って説明されている。この発明の実施例についての記載は,以下のとおりである。 「【0024】 本明細書で使用された用語は単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定することを意図していない。単数の表現は文脈上明白に異なることを意味しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はそれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はそれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。 【0025】 以下、本発明に関する電気自動車について図面を参照して詳しく説明する。図面上において、同じ符号は同じ要素を示す。以下の説明で使用される構成要素に対する接尾語である「モジュール」及び「部」は明細書を容易に作成するためにのみ付与されるか混用されるものであり、それ自体で互いに区別される意味又は役割を有するものではない。 【0026】 図1は、電気自動車の概略的な構成を示すブロック図である。 【0027】 図1を参照すると、電気自動車はバッテリ110、インバータ120、モータ130、電装品駆動部140、電装品150を含む。図1は一般的な電気自動車の概略的な構成のみを示す図であり、電気自動車がそれより多い構成要素から構成されるということは本発明の属する技術分野の通常の知識を有する者にとっては自明なことであるといえる。 【0028】 電気自動車は、バッテリ110から駆動電源を提供されたインバータ120が所定のトルク、速度に従ってモータ130の駆動を制御する。モータ130と機械的に連結されたトランスミッション(図示せず)を介して伝達された機械的な力が電気自動車のホイールを回転させる。 【0029】 電気自動車は、バッテリ110から駆動電源を提供された電装品駆動部140が予め決められたプログラムに従って電装品150の駆動を制御する。 【0030】 電気自動車のバッテリ110は、モータ130、インバータ120などの高電圧系部品を駆動するための駆動電源を供給する高圧バッテリ111と、電気自動車に具備される各種の電装品150の駆動電源を供給する低圧バッテリ113とが具備されるのが一般的である。 【0031】 電気自動車には多数の電装品150が具備されるが、車両内部に具備される低電圧DC-DCコンバーター(Low Voltage DC-DC Converter:LDC)、バッテリ管理システム(Battery Management System:BMS)、搭載型充電器(On-board Charger:OBC)等と、車両のラジオ、ダッシュボードなどが電装品150に属する。そのような電装品150は、電装品駆動部140を構成するハードウェア装置及びそれを駆動するソフトウェアプログラムによって正常に駆動し得る。以下、電装品の駆動プログラムの運用方法について説明する。 【0032】 図2は、本発明の一実施例による電気自動車のプログラム運用方法を説明するためのフローチャートである。電気自動車のプログラム運用方法は、電気自動車に具備される電装品の駆動プログラムに適用され得る。駆動プログラムは、電気自動車の最初の駆動の際、最初に実行され、その後機能の改善、変更などのために継続的に更新される。以下の説明において、本発明の一実施例による電気自動車のプログラム運用方法が、駆動プログラムが数回更新された後実行される場合に適用される例を説明するが、それには限られず、駆動プログラムが最初に駆動される場合(即ち、更新が一度も行われていない場合)、駆動プログラムが更新される時点においても適用され得るということは、本発明の属する技術分野の通常の知識を有する者にとっては自明なことであるといえる。 【0033】 図2を参照すると、電装品駆動部140は電装品の駆動プログラムの実行命令を受信すると(S200)、駆動プログラムに付加された属性情報を判読する(S210)。電装品駆動部140は、当該駆動プログラムが実行されていない状態又は実行されている状態でステップS200のように動作することができるが、これには限られない。ここで、属性情報は、駆動プログラムのバージョン情報、更新日情報、更新時刻情報などを含んでもよい。 【0034】 次に、電装品駆動部140は駆動プログラムに対応するパラメータの属性情報を判読する(S220)。ここで、パラメータは、駆動プログラムが実行される場合、プログラムで参照される変数を示す。パラメータの属性情報は、パラメータの更新日情報、更新時刻情報、又はパラメータに対応する駆動プログラムのバージョン情報などを含んでもよい。ここで、パラメータに対応する駆動プログラムのバージョン情報は、現在格納されているパラメータに対応する駆動プログラムのバージョン情報を意味する。この際、図面符号S210の動作とS220の動作は手順に関係なく処理されてもよく、同時に処理されてもよい。 【0035】 S210で判読した駆動プログラムの属性情報と、S220で判読したパラメータの属性情報とを比較し(S230)、比較結果に従ってパラメータを更新するか駆動プログラムの実行を続いて行う。 【0036】 即ち、S230における比較の結果、駆動プログラムの属性情報とパラメータの属性情報が同じである場合は、電装品駆動部140は駆動プログラムを実行する(S240)。 【0037】 S230にける比較の結果、駆動プログラムの属性情報とパラメータの属性情報が異なる場合は、電装品駆動部140はパラメータを更新する(S250)。パラメータは、現在実行しようとする駆動プログラムと連動するパラメータを意味し得る。ここで、パラメータは複数の設定値を含むが、S250で行われるパラメータの更新は設定値の更新を意味する。設定値は電装品の動作基準値を示すものであり、例えば、LDCが充電するバッテリの最大充電電流値、各電装品の電圧、電流の最大値、最小値などを示す。 【0038】 S250でパラメータの更新が完了すると、電装品駆動部140はパラメータの属性情報をS210で判読した駆動プログラムの属性情報に更新する(S260)。 【0039】 S250におけるパラメータの更新(即ち、設定値の更新)とS260におけるパラメータの属性情報の更新が完了すると駆動プログラムとパラメータのバージョンが一致し、駆動プログラムとパラメータの組み合わせが一致する。 【0040】 このように、パラメータの設定値の属性情報の更新が完了して駆動プログラムの属性情報とパラメータの属性情報が同じになると、電装品駆動部140は駆動プログラムを実行する(S240)。 【0041】 従って、本発明の一実施例による電気自動車のプログラム運用方法によると、駆動プログラムが不適合なパラメータを参照して発生する駆動プログラムのエラー及び電装品の誤動作を防止し得る。 【0042】 図3は電装品の駆動プログラムに対応するパラメータを説明するための一実施例を示す図であり、パラメータに含まれる情報を概略的に示す。 【0043】 図3を参照すると、パラメータが格納される領域は複数の設定値310が格納される領域と、属性情報320が格納される領域と、に区分され得る。 【0044】 複数の設定値310は、上述したように該当する電装品の動作基準値を示す。 【0045】 パラメータの属性情報320は、パラメータの更新日情報、更新時刻情報又はパラメータに対応する駆動プログラムのバージョン情報などを示すものであり、パラメータに対応する駆動プログラムのバージョン情報は現在格納されている設定値310と連動する駆動プログラムのバージョンを示し得る。 【0046】 本発明の一実施例による電気自動車のプログラム運用方法では、実行しようとする駆動プログラムの属性情報と現在格納されているパラメータの属性情報320とが不一致の場合、現在格納されているパラメータを更新する。この際、パラメータに含まれるそれぞれの設定値310を駆動プログラムに対応する設定値として更新する。設置値310の更新が完了すると、パラメータの属性情報320を駆動プログラムの属性情報と同じになるように更新する。これによって、同じ駆動プログラムの次回の実行では、駆動プログラムが更に更新された場合でなければ、駆動プログラムの属性情報と現在格納されているパラメータの属性情報とが一致するため、パラメータの更新過程を経ずに駆動プログラムの実行を続ける。従って、駆動プログラムの更新によってパラメータの更新も一緒に行われるため、両者のバージョン情報の違いにより引き起こされるエラーを防止して電装品の駆動プログラムの信頼性を向上させ得る。 【0047】 図4は、本発明の一実施例による電気自動車の構成図である。以下、上述した内容と重複する内容に関する説明は省略する。 【0048】 図4を参照すると、電装品駆動部140は、属性情報判読部410、比較部420、更新部430、駆動プログラム実行部440を含む。 【0049】 属性情報判読部410は、駆動プログラム属性情報判読部411、パラメータ属性情報判読部413を含む。電装品駆動部140は電装品の駆動プログラムの実行命令を受信すると、駆動プログラム属性情報判読部411は駆動プログラムに付加された属性情報を判読し、パラメータ属性情報判読部413はパラメータの属性情報を判読する。 【0050】 比較部420は、駆動プログラム属性情報判読部411が判読した駆動プログラム属性情報と、パラメータ属性情報判読部413が判読したパラメータ属性情報とを比較する。駆動プログラムの属性情報とパラメータの属性情報が異なる場合、比較部420は比較結果を更新部430に伝送し得る。駆動プログラムの属性情報とパラメータの属性情報が同じである場合、比較部420は比較結果を駆動プログラム実行部440に伝送し得る。 【0051】 更新部430は、パラメータ更新部431とパラメータ属性情報更新部433とを含む。パラメータ更新部430は、比較部420から伝送された駆動プログラムの属性情報とパラメータの属性情報が異なるという結果を受信すると、複数の設定値が含まれたパラメータを更新し得る。パラメータ属性情報更新部433は、パラメータ更新部430から伝送されたパラメータの更新結果を受信する場合、パラメータの属性情報を駆動プログラム属性情報判読部411が判読した駆動プログラムの属性情報に更新し得る。 【0052】 駆動プログラム実行部440は、比較部420又は更新部430から、駆動プログラム属性情報とパラメータ属性情報が同じであるという内容の情報が伝送されると、駆動プログラムを実行する。例えば、駆動プログラム実行部440は、駆動プログラムのバージョンと駆動プログラムが参照するパラメータのバージョンが同じである場合、駆動プログラムを実行し得る。」 イ 上記アの記載から,以下のようなことが理解できる。 (ア)駆動命令の実行命令を受信すると,当該プログラムに付加された属性情報を判読し,次に,駆動プログラムに対応するパラメータの属性情報を判読すること。 (イ)駆動プログラムの属性情報とパラメータの属性情報が異なる場合は,パラメータを更新すること。 (ウ)パラメータの更新が完了すると,パラメータの属性情報を駆動プログラムの属性情報に更新すること。 (エ)パラメータの属性情報の更新が完了して駆動プログラムの属性情報とパラメータの属性情報が同じになると,更新されたパラメータに基づき駆動プログラムを実行すること。 (オ)“パラメータの更新”とは,“設定値”の更新を意味すること。 (3)本件補正後の明細書,特許請求の範囲及び図面の記載について ア 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 (ア)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には「前記の更新されたパラメータに基づいて、前記駆動プログラムを前記電気自動車において実行するステップ」という発明特定事項が記載されている。これのうちの「前記の更新されたパラメータ」という事項は,それに先行する記載にパラメータを更新することを直接的に意味する表現が見当たらないため,それが意味する技術的内容が十分に明確であるとは言えない。ここで,“パラメータを更新する”という概念は,当該請求項1で上記発明特定事項より前に記載された “前記パラメータの更新時刻情報及び更新日情報を前記駆動プログラムの更新時刻情報及び更新日情報に対応する値に更新する”という発明特定事項から把握される更新の概念とは,明らかに別異のものである。 そして,既に述べたように,本願明細書の記載を踏まえれば,本願に係る発明は,駆動プログラムを実行するに際し,駆動プログラムの属性情報とパラメータの属性情報が異なっていたら,パラメータ自体,すなわち設定値を当該プログラムに対応した適正なものに変更するためのものと理解される。 そうしてみれば,上記発明特定事項は,“パラメータの設定値を更新して,更新されたパラメータに基づいて,駆動プログラムを実行するステップ”といった意味のものと解さないと,甚だ不合理である。 (イ)当審が通知した拒絶理由においては,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に,「前記駆動プログラムの属性情報がパラメータの属性情報と異なると、前記パラメータの設定値を前記駆動プログラムに対応する設定値に更新する」と記載されていることに起因する不備を指摘したのであるが(前記2参照),本件補正後の請求項1の記載も,上述したように,パラメータを更新すること,すなわち,パラメータの設定値を更新することを含んでいるものと解せる。 そうしたところ,本件補正後の請求項1の記載自体からは,パラメータ自体,すなわち,パラメータの設定値の更新がどのようにしてなされるのかは不明である。 (ウ)本願明細書の記載からは,図面の記載内容も参酌してみても,更新後のパラメータの設定値がどこからもたらされるのか,また,駆動プログラムに対応する設定値であることが何によって判別されるのか,いずれも,不明であって,結局,パラメータの更新作業が具体的にどのようにして実現できるのかが明らかでない。 (エ)既に述べたように,本願の各発明が解決せんとしている課題は,必ずしも十分明確であるとは言い難いが,それでも,電装品を駆動プログラムによって駆動したときに,当該電装品のパラメータがそれに見合うような,当該電装品が最適に駆動するための動作基準値である設定値になっているようにすることであると,一応,把握することはできる。 しかし,本願に係る発明が解決しようとする課題がこのようなものであったとしても,本件補正後の請求項1の記載事項により特定される発明がそうした課題を解決して本願明細書に記載される効果を奏するものと理解することはできない。 (オ)そうしてみると,当審が通知した拒絶理由において指摘した,パラメータ自体すなわちパラメータの設定値の更新がどのようにしてなされるのか不明,といった点は,依然として不明と言うほかはない。 したがって,本件補正後の請求項1の記載は,特許を受けようとする発明を明確に表現したものとは言い得ない。 また,本願明細書の記載は,当業者が本件補正後の請求項1の記載事項により特定される発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとは言えない。 (カ)当審で通知した拒絶理由1に対し,請求人は,3(2)イに記載したように,請求項1(及び請求項5)の記載から「設定値」との用語を削除したことをもって解消した旨主張する。 本件補正後の請求項1の記載には,たしかに「設定値」という表現は存在していないが,既に述べたことを踏まえれば,本件補正後の請求項1の記載内容として,パラメータを更新すること,すなわち,パラメータの設定値を更新することが排除されたものとは解せないから,上記した請求人の主張は,採用することができない。 なお,請求人が意見書において本件補正に係る請求項1の記載の根拠として挙げた本願明細書の段落【0033】?【0045】及び図2の記載個所からは,パラメータの設定値の更新が必要であることが把握されるものである。 イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項5 さらに,本件補正後の請求項5の記載自体について言えば,パラメータ自体を更新すること自体について何らの言及,特定がないものとなっている。 本願に係る発明は,既に述べたように,電装品を駆動プログラムによって駆動したときに,当該電装品のパラメータがそれに見合うような,当該電装品が最適に駆動するための動作基準値である設定値になっているようにする,すなわち,パラメータ自体を駆動プログラムに見合う適正なものにする,という点に課題を有すると把握し得るところ,本件補正後の請求項5の記載事項により特定される発明は,プログラムの属性情報を更新するにとどまっている。 そして,本願明細書の記載からでは,プログラム自体を更新せずにプログラムの属性情報のみを更新する発明が説明されているとは把握できない。 請求人は,意見書において本件補正に係る請求項5の記載の根拠として,本願明細書の段落【0033】?【0045】及び図2を挙げているが(3(2)ア参照),これらの記載個所からは,パラメータの設定値の更新が必要であることが把握されるものである。 そうしてみると,本件補正後の請求項5の記載事項により特定される発明は,明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるとは言えない。 また,本件補正後の請求項5の記載事項により特定される発明によりもたらされる効果,あるいは,技術的な意義も不明であると言うほかはない。 5 むすび 以上のとおりであるから,本願は,依然として,特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 したがって,本願は,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-09-17 |
結審通知日 | 2015-09-29 |
審決日 | 2015-10-13 |
出願番号 | 特願2012-256536(P2012-256536) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(B60L)
P 1 8・ 536- WZ (B60L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 永石 哲也、久保田 創 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
新海 岳 松永 謙一 |
発明の名称 | 電気自動車及び電気自動車のプログラム運用方法 |
代理人 | 南山 知広 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 中村 健一 |
代理人 | 鶴田 準一 |