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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B63B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B63B
管理番号 1311454
審判番号 不服2013-19572  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-08 
確定日 2016-03-02 
事件の表示 特願2009- 30758「船舶」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月26日出願公開、特開2010-184631〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成21年2月13日の出願であって、平成25年7月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年10月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされ、平成26年8月25日付けで当審により拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成26年10月27日に意見書及び手続補正書が提出された。平成26年11月12日付で当審により最後の拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成26年12月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものであって、本願の請求項1?3に係る発明は、平成26年12月5日の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「中規模港湾に出入港が可能なように、船の全長を162m以上200m未満で、計画最大満載喫水を12.0m以上13.5m未満とするとともに、船幅が32.31mを超えてかつ40.00m未満に形成した乾貨物をばら積みする船舶において、荷役用ジブ式デッキクレーンとエンドフォールディングタイプのハッチカバーを備え、現パナマックス幅に合致して整備された港湾荷役設備を使用できるように、貨物倉の倉口を前記船幅方向に一列のみとした前記貨物倉の倉口縁材側端部から船側までの距離を3.0m以上9.7m未満に抑えると共に、一層の縦通板材の厚さをより高いグレードの鋼材の使用を回避するために一定値以下に抑えた甲板を備え、貨物区域に、必要な船体横断面係数を確保するために縦通板材の板厚を上げて構成したトップサイドタンク、およびホッパーサイドタンクを設けたことを特徴とする船舶。」

2.引用文献の記載事項
(1)当審の平成26年8月25日付け拒絶の理由で引用された、本願出願日前に頒布された文献である登録実用新案第3107204号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1-ア)「【0008】
つぎに、本考案の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態のバルクキャリアー1の概略説明図であって、(A)は側面図であり、(B)は平面図である。図2は(A)は本実施形態のバルクキャリアー1の要部拡大図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。同図において、符号1は、穀物等のバラ荷を積載するバルクキャリアーを示している。バルクキャリアー1は、バラ荷を積載するための複数の船倉2を備えている。この船倉2の上部には、船倉2内にバラ荷を投入するためのハッチが設けられており、このハッチを開閉するハッチカバー2hが設けられている。」(段落【0008】)
(1-イ)
図1および図2から、バルクキャリアーが荷役用ジブ式デッキクレーンを備えていること、および船倉のハッチを船幅方向に一列のみとしたことが看取される。

上記の記載事項及び図面から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「バルクキャリアーにおいて、荷役用ジブ式デッキクレーン、船倉、船倉のハッチおよびハッチカバー(2h)を備え、ハッチを船幅方向に一列のみとした貨物倉を備えた船舶」

(2)当審の平成26年8月25日付け拒絶の理由で引用された、本願出願日前に頒布された文献である特開2005-231568号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(2-ア)「【0011】
そして、このハッチ開口部の大きさの問題を解決するために、エンドローリング型ハッチカバー装置において、ハッチ開口部を大きく取るために、船長方向に多数枚のハッチカバーを並べ、ハッチ開口時には、ハッチ開口部の一端側において、ハッチカバーを90度回転させて上下方向に立てて、順次連続して格納する方法が提案されている・・(省略)・・。」(段落【0011】)

(3)当審の平成26年8月25日付け拒絶の理由で引用された電子技術情報である ”MOLプレスリリース 石炭専用船”ISHIZUCHI”、[Online], 2006年12月21日, Mitsui O.S.K.Line、[平成26年8月21日検索] インターネット <http://www.mol.co.jp/pr/2006/6706.htm>
「(新造船「ISHIZUCHI」概要)
全長 229m
幅 36.50m
喫水 12.82m
積載重量 77,247トン
主機関 B&W 5S60MC
最大出力 9,855KW
船籍 リベリア」

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、その機能・構造からみて、引用発明の「バルクキャリアー」は、本願発明の「乾貨物をばら積みする船舶」に相当する。以下同様に、「船倉」は「貨物倉」に、「ハッチ」は「倉口」に相当するものである。

したがって、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「乾貨物をばら積みする船舶において、荷役用ジブ式デッキクレーンとハッチカバーを備え、貨物倉の倉口を前記船幅方向に一列のみとした船舶。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明は、「中規模港湾に出入港が可能なように、船の全長を162m以上200m未満で、計画最大満載喫水を12.0m以上13.5m未満とするとともに、船幅が32.31mを超えてかつ40.00m未満に形成した乾貨物をばら積みする船舶」であるのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。

(相違点2)
ハッチカバーが、本願発明は、「エンドフォールディングタイプ」であるのに対して、引用発明は、そのような特定がなされていない点。

(相違点3)
本願発明は、「現パナマックス幅に合致して整備された港湾荷役設備を使用できるように、貨物倉の倉口を前記船幅方向に一列のみとした前記貨物倉の倉口縁材側端部から船側までの距離を3.0m以上9.7m未満に抑える」のに対し、引用発明では「貨物倉の倉口を前記船幅方向に一列のみとし」ているがそれ以外の目的や倉口縁材側端部から船側までの距離の限定がなされていない点。

(相違点4)
本願発明では「一層の縦通板材の厚さをより高いグレードの鋼材の使用を回避するために一定値以下に抑えた甲板を備え、貨物区域に、必要な船体横断面係数を確保するために縦通板材の板厚を上げて構成したトップサイドタンク、およびホッパーサイドタンクを設けている」のに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

以下、上記相違点について判断する。

(相違点1について)
”MOLプレスリリース”、[Online], 2006年12月21日, Mitsui O.S.K.Line、[平成26年8月21日検索] インターネット <http://www.mol.co.jp/pr/2006/6706.htm>の電子的技術情報には、新造船「ISHIZUCHI」の概要として、喫水12.82m、幅36.50mであることが示されており、引用発明を「計画最大満載喫水を12.0m以上13.5m未満とするとともに、船幅を32.31mを超えてかつ40.00m未満に形成」することは当業者が容易に想到することである。前記電子的技術情報には、全長229mが示されているが、船の全長については、必要とされる載荷重量、操縦性能、就航する航路・港湾の大きさ等を考慮し船主、造船会社等で適宜決める設計的事項であり、引用発明において船の全長を「162m以上200m未満」とすることは当業者が適宜なし得ることである。

(相違点2について)
引用文献2(特開2005-231568号公報)には、摘記(2-ア)にあるようにエンドフォールディングタイプ(エンドローリング型)のハッチカバーが示されており、また「図説船舶工学」(高城 清 著、昭和54年4月16日、第4版発行、海文堂出版株式会社)133?135頁、「造船工学」(全国造船教育研究会編、昭和59年3月15日、第7版発行、海文堂出版株式会社)90頁に記載されているように周知技術でもあり、引用発明においてエンドフォールディングタイプのハッチカバーを採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点3について)
貨物倉の倉口縁材側端部から船側までの距離については、港湾の荷役設備、荷役作業の効率性、船体強度等を考慮し船主、造船会社等で適宜決める設計的事項であり、パナマックス型の船幅よりも大きい幅の船においてパナマックス幅に合致して整備された港湾荷役設備を使用できるように、引用発明において「貨物倉の倉口縁材側端部から船側までの距離を3.0m以上9.7m未満に抑える」ことは当業者が適宜なし得ることである。

(相違点4について)
船体設計において、経済性、船体強度等を考慮し、鋼材、板厚等を選択することは当業者にとって慣用の事項であり、甲板の板厚を一定以下に抑えることにより、不足する船体横断面係数を、船側縦通板材の板厚と、トップサイドタンク底板縦通板材の板厚を増すことにより、必要な船体横断面係数を確保することは、当業者であれば、容易に想到し得ることである。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明、電子的技術情報、周知技術、慣用の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、電子的技術情報、周知技術、慣用の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、 本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-04 
結審通知日 2015-02-10 
審決日 2015-02-23 
出願番号 特願2009-30758(P2009-30758)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (B63B)
P 1 8・ 121- WZ (B63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増沢 誠一  
特許庁審判長 丸山 英行
特許庁審判官 新海 岳
鳥居 稔
発明の名称 船舶  
代理人 境澤 正夫  
代理人 小川 信一  
代理人 平井 功  
代理人 佐藤 謙二  
代理人 清流国際特許業務法人  
代理人 昼間 孝良  
代理人 野口 賢照  

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