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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1311492
審判番号 不服2015-9890  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-27 
確定日 2016-02-25 
事件の表示 特願2012-244197「基礎パッキン及び断熱構造」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日出願公開、特開2013- 29019〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成20年3月18日に出願した特願2008-70190号(以下「原出願」という。)の一部を、平成24年11月6日に新たな特許出願としたものであって、平成25年12月24日付けで拒絶理由が通知され、平成26年3月6日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年9月19日付けで拒絶理由が通知され、同年11月18日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたところ、平成27年3月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。

(1)本願は原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「原出願の当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でないものを含んでおり、出願の分割要件を満たしておらず、出願日の遡及は認められない。

(2)請求項1?4に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である特開2009-221813号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(3)請求項1?4に係る発明は、上記刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



第3 当審の判断

1 分割要件について

本願が特許法第44条第1項に定める分割要件を満たすか否かについて検討する。

(1) 本願特許請求の範囲の記載

本願の請求項に係る発明は、平成26年11月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、同特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。

「 【請求項1】
布基礎の上面とその上に配置される土台との間に介装される基礎パッキンであって、
長尺の基礎パッキン本体と、この基礎パッキン本体における長手方向に延びる側面に取り付けられた長尺の断熱材と、を備え、
前記基礎パッキン本体における長手方向に延びる側面にわたって、連続的に複数の凹部が形成され、
前記断熱材における長手方向に延びる側面にわたって、連続的に複数の凸部が形成され、前記複数の凸部が前記複数の凹部に嵌め込まれることで、前記断熱材が前記基礎パッキン本体に取り付けられ、
前記断熱材が、硬質ウレタンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、高発泡ポリエチレン、発泡炭化カルシウム、フェノールフォーム、及び発泡ガラスのうちの何れかからなる、基礎パッキン。
【請求項2】
前記断熱材の上面と前記基礎パッキン本体の上面とが面一になり、かつ、前記断熱材の底面と前記基礎パッキン本体の底面とが面一になるように、前記断熱材が前記基礎パッキン本体に取り付けられた、請求項1に記載の基礎パッキン。
【請求項3】
前記複数の凹部は、通気孔である、請求項1又は2に記載の基礎パッキン。
【請求項4】
布基礎とその上方に配置された土台に囲まれた空間の断熱構造であって、
前記布基礎の上面と前記土台との間に介装される前記請求項1?3のいずれかに記載の基礎パッキンと、
前記布基礎の前記空間側の壁に取り付けられた断熱材と、を備えた断熱構造。」


上記記載によれば、請求項1に記載の「硬質ウレタンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、高発泡ポリエチレン、発泡炭化カルシウム、フェノールフォーム、及び発泡ガラスのうちの何れかからなる」「断熱材」は、その機能・構造が具体的に特定されていないため、通気性を有さない「硬質ウレタンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、高発泡ポリエチレン、発泡炭化カルシウム、フェノールフォーム、及び発泡ガラスのうちの何れかからなる」「断熱材」を含んでいると認められる。
また、請求項1に記載の「基礎パッキン本体における長手方向に延びる側面にわたって、連続的に」「形成され」る「複数の凹部」は、その機能・構造が具体的に特定されていないため、「基礎パッキン本体における長手方向に延びる側面にわたって、連続的に」「形成され」る、通気孔でない「複数の凹部」を含んでいると認められる。


(2) 原出願の記載事項

ア 原出願の当初明細書等には、「断熱材」及び「(複数の)凹部」に関して、以下の記載がある(下線は審決で付した。以下同様。)。

(ア) 「【請求項1】
布基礎の上面とその上に配置される土台との間に介装される基礎パッキンであって、通気孔が設けられた基礎パッキン本体、及び、前記通気孔を塞ぐ通気性を有する断熱材を備えたことを特徴とする基礎パッキン。
【請求項2】
浴室を設けるための区画を囲う布基礎上に設けられる請求項1に記載の基礎パッキン。
【請求項3】
換気孔が設けられた換気口本体、及び、前記換気孔を塞ぐ通気性を有する断熱材を備えたことを特徴とする床下換気口。
【請求項4】
浴室を設けるための区画を囲う布基礎に設けられる請求項3に記載の床下換気口。」

(イ) 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
布基礎は、地面に平滑に形成されたベタ基礎上に型枠を組み、型枠内に生コンクリートを流し込み硬化して立設される。つまり、布基礎とベタ基礎とは別々に硬化されて形成されおり、布基礎とベタ基礎とは一体的に形成されておらず、隙間が生じてしまうこととなる。また、内側の型枠と外側の型枠とを一定の距離に位置決めするために、内側及び外側の型枠の下端を繋ぎとめる巾止金具が配置されることから、布基礎とベタ基礎との境目に隙間が生じてしまう。浴室は建物の外周に面する位置に作られることから、浴室の下方空間を形成する布基礎は建物の外側に面することとなり、上記隙間から雨水などの水分、湿気が浴室の下方空間に侵入する。
【0006】
また、浴室の下方空間を形成する布基礎には、浴室下を点検するための基礎点検口を設けておく必要があるのであるが、点検時による開閉や、基礎点検口に生じた僅かな隙間により気密性が損なわれることとなる。さらには、地盤からの湿気もコンクリート製のベタ基礎を通って、浴室の下方空間に侵入してくる。
【0007】
以上のようなことから、浴室の下方空間には当然に湿気が生じることになり、この湿気は浴室の下方空間の気密性を高めたゆえ逃げ場を失い、かえって浴室の断熱性を低下させることとなるといった問題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、建物の下方の空間の湿気を取り除き、且つ、断熱性を向上させることが可能な基礎パッキン、及び、床下換気口を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) 布基礎の上面とその上に配置される土台との間に介装される基礎パッキンであって、通気孔が設けられた基礎パッキン本体、及び、前記通気孔を塞ぐ通気性を有する断熱材を備えたことを特徴とする基礎パッキン。」

(ウ) 「【0010】
なお、本発明において、断熱材で基礎パッキン本体の通気孔を塞ぐとは、板状の断熱材を基礎パッキン本体の少なくとも一方側面に貼り合わせたり、通気孔内に断熱材を充填して通気孔を塞ぐなどを広く含むものである。
(1)の発明によれば、基礎パッキン本体には、通気孔が設けられており、この通気孔には、通気性を有する断熱材がこの通気孔を塞ぐように設けられている。従って、通気孔を塞いでいる断熱材は、通気性を有するため、この通気孔を介して、湿度を外部に排出することができる。また、通気孔を塞いでいるのは、断熱材であるため、通気孔から、熱(例えば、温められた空気の熱)が外部に排出されることを著しく防止し、断熱性を向上させることができる。このように、(1)の発明によれば、建築物の下方の空間の湿度を取り除くとともに、断熱性を向上させることが可能となる。
【0011】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(2) 上記(1)の基礎パッキンであって、浴室を設けるための区画を囲う布基礎上に設けられる。
【0012】
(2)の発明によれば、浴室を設けるための区画を囲う布基礎上に設けられるため、特に、湿気が溜まり易く、且つ、断熱の必要な浴室の下方空間において、湿度を取り除くとともに、断熱性を向上させることが可能となる。

・・・
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、建物の下方の空間の湿気を取り除き、且つ、断熱性を向上させることが可能な基礎パッキン、及び、床下換気口を提供することができる。」

(エ) 「【0019】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る基礎パッキンを模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示した基礎パッキン本体を示す斜視図である。なお、基礎パッキンは、布基礎と土台との間に介装される部材である。
図1に示すように、第1実施形態に係る基礎パッキン40は、基礎パッキン本体41と断熱材50とから構成されている。
【0020】
まず、基礎パッキン本体41について説明する。
図2に示すように、基礎パッキン本体41は、所定の厚さを有する略矩形の板形状をしており、短手方向に抜ける複数の通気孔42が長手方向に連続して形成されている。通気孔42は、断面形状が矩形であり、上下いずれかの壁面に開放部43が形成されている。すなわち、通気孔42は、左右の側壁44と、上下いずれか一方の壁45とで形成された3方囲繞形態を有しており、開放された残りの一方により通気が可能である。これにより、通気面積を増加させて換気性能を高めることができ、かつ、上下に接する布基礎や土台の接触面を乾燥させることができる。またこの開放部43は、パッキンの長手方向及び短手方向に沿って、上下交互に形成されている。これにより、開放部43の形成に伴うパッキンの撓み強度の低下を抑制できる。
・・・
【0025】
次に、断熱材50について説明する。
なお、断熱材50は、通気性を有するものであり、基礎パッキン本体41に設けられている矩形孔47に略隙間なく嵌合させるものである。
断熱材50は、所定の厚さを有する略矩形の板形状をした断熱材本体51と、断熱材本体51に所定の間隔ごとに設けられた凸部52とから構成されている。
・・・
【0027】
基礎パッキン40は、基礎パッキン本体41に断熱材50を嵌合させたものである。基礎パッキン本体41に断熱材50を嵌合させるとき、断熱材50の凸部52は、基礎パッキン本体41の上側の壁が形成されていない通気孔42をふさぐように配置される。一方、凸部52同士の間に形成された凹部53は、下側の壁が形成されていない通気孔42をふさぐように配置される。基礎パッキン40では、通気孔53が設けられているため、この通気孔から湿度を外部に逃がすことができる。また、通気孔53が断熱材50で塞がれており、熱が通気孔53から逃げることを極力防止することができるため、断熱性を向上させることができる。
【0028】
断熱材50の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、プラスチック系断熱材、自然系断熱材、鉱物系断熱材を挙げることができる。プラスチック系断熱材としては、特に限定されるものでないが、例えば、硬質ウレタンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、高発泡ポリエチレン、発泡炭化カルシウム、フェノールフォーム、発泡ガラスを挙げることができる。自然系断熱材としては、特に限定されるものでないが、例えば、セルロースファイバー、軽量軟質木質繊維ボード、炭化発泡コルク、セルロースウール、ココヤシ繊維、綿状木質繊維、フラックス繊維、ハンフ繊維、コットン、ウールを挙げることができる。鉱物系断熱材としては、特に限定されるものでないが、例えば、グラスウール、ロックウールを挙げることができる。これらの材料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記材料の中では、高発泡ポリエチレンが好適である。
【0029】
このように、基礎パッキン40によれば、基礎パッキン本体41には、通気孔42が設けられており、通気孔42には、通気性を有する断熱材50がこの通気孔42を塞ぐように設けられている。通気孔42を塞いでいる断熱材50は、通気性を有するため、この通気孔43を介して、湿度を外部に排出することができる。また、通気孔42を塞いでいるのは、断熱材であるため、通気孔42から、熱(例えば、温められた空気の熱)が外部に排出されることを著しく防止し、断熱性を向上させることができる。このように、基礎パッキン40によれば、建築物の下方の空間の湿度を取り除くとともに、断熱性を向上させることが可能となる。」

(オ) 「【0030】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る断熱材を模式的に示す斜視図である。
図4は、図3に示した断熱材の正面図である。
図3、図4に示すように、第2実施形態に係る断熱材60は、所定の厚さを有する略矩形板状の基体61と、基体61から所定の間隔で短辺方向に突出した四角柱状の凸部62とから構成される。
【0031】
断熱材60は、基礎パッキン本体の側面に設けることにより基礎パッキンの通気孔を塞ぐことができる。基礎パッキン本体としては、凸部62により通気孔を塞ぐことが可能な形状を有していれば、特に限定されず、例えば、図2に示した基礎パッキン本体41を用いることができる。」

(カ) 「【0032】
[第3実施形態]
図5(a)は、第3実施形態に係る断熱材を模式的に示す断面図であり、図5(b)は、その平面図であり、図5(c)は、その側面図である。なお、図5(a)は、図5(b)に示すA-A線断面図である。
図5(a)、図5(b)及び図5(c)に示すように、第3実施形態に係る断熱材70は、所定の厚さを有する略矩形板状の基体71と、基体71から所定の間隔で短辺方向に突出した四角柱状の凸部72と、凸部72よりも短い板形状の段差部73(段差部73a又は段差部73b)とから構成されている。段差部73aは、凸部72の正面側に設けられており、段差部73bは、凸部72の底面側に設けられている。
【0033】
断熱材70は、基礎パッキン本体の側面に設けることにより基礎パッキンの通気孔を塞ぐことができる。基礎パッキン本体としては、凸部72により通気孔を塞ぐことが可能な形状を有していれば、特に限定されないが、特に、図2に示した基礎パッキン本体41を用いることが望ましい。段差部73a又は段差部73bが、基礎パッキン本体41の表面と面一となるように基礎パッキン本体41の通気孔42に嵌まり込むとともに、凸部72同士の間に形成された凹部75が、基礎パッキン本体41の側壁44と噛み合い、通気孔42を確実に塞ぐことができるからである。」

(キ) 「【0034】
[第4実施形態]
図6(a)は、第4実施形態に係る断熱材を模式的に示す平面図であり、図6(b)は、その側面図である。
図6(a)、図6(b)に示すように、第4実施形態に係る断熱材80は、所定の厚さを有する略矩形板状の基体81と、基体81から所定の間隔で短辺方向に突出した四角柱状の凸部82とから構成され、側面には所定の間隔ごとにスリット83が設けられている。スリット83は、基体81を側面方向に容易に折り曲げることを可能とするものである。スリット83が設けられているため、断熱材80を基礎パッキン本体の側面に取り付ける際、端から順に押し込むことができ、容易に取り付けることが可能となる。
【0035】
断熱材80は、基礎パッキン本体の側面に設けることにより基礎パッキンの通気孔を塞ぐことができる。基礎パッキン本体としては、凸部82により通気孔を塞ぐことが可能な形状を有していれば、特に限定されず、例えば、図2に示した基礎パッキン本体41を用いることができる。
【0036】
図7は、本発明に係る基礎パッキンが備えられた建物の一例を示す断面透視図である。図7に示すように、建物500では、コンクリート製のベタ基礎201に立設された布基礎(布基礎202及び布基礎203)に、基礎パッキン40を介して土台204が載置され、その上に、床510や壁(外周壁508や浴室壁(ドア)505)等が所定の位置に配置されている。これにより、建物500には、ユニットバス504が配設された浴室502と、例えば、洗面脱衣質などの浴室以外の居住部501とが形成される。なお、布基礎202は、屋外に面した布基礎であり、布基礎203は、浴室502の下方空間503と浴室以外の居住部501の床下511とを区画するための布基礎である。
【0037】
建物500は、浴室502の下方空間503を気密構造にして省エネ化を図っている。建物500では、下方空間503を囲む布基礎202及び布基礎203の内壁に断熱材507が設けられている。これにより、下方空間503の断熱性が高められている。
【0038】
また、下方空間503を囲む布基礎202及び布基礎203の上に載置されている基礎パッキン40は、すでに説明したように、通気孔42が設けられた基礎パッキン本体41、及び、通気孔41を塞ぐ通気性を有する断熱材50から構成された基礎パッキンである。通気孔42を塞いでいる断熱材50は、通気性を有するため、この通気孔42を介して、湿度を外部に排出することができる。また、通気孔42を塞いでいるのは、断熱材であるため、通気孔42から、空気(下方空間503の空気)が外部に排出されることを著しく防止し、断熱性を向上させることができる。
【0039】
本発明の基礎パッキンは、図7に示した基礎パッキン40のように、浴室502を設けるための区画を囲う布基礎202及び布基礎203上に設けられることが望ましい。浴室502を設けるための区画を囲う布基礎202及び布基礎203上に設けられるため、特に、湿気が溜まり易く、且つ、断熱の必要な浴室502の下方空間503において、湿度を取り除くとともに、断熱性を向上させることが可能となるからである。
・・・
【0043】
図8は、本発明に係る基礎パッキンが備えられた他の建物の一例を示す断面透視図である。
図8に示す建物600は、図7に示した建物500と比して、浴室602の上側には、2階部分がなく、屋根が設けられている点で異なり、他の点で略同様の構成を有している。
以下、建物600を説明する。
・・・
【0046】
また、下方空間603を囲む布基礎702及び布基礎703の上に載置されている基礎パッキン40は、すでに説明したように、通気孔42が設けられた基礎パッキン本体41、及び、通気孔41を塞ぐ通気性を有する断熱材50から構成された基礎パッキンである。
・・・
【0051】
本発明において、基礎パッキンを構成する断熱材は、板状のものであってもよい。
図9は、他の実施形態に係る基礎パッキンを模式的に示す斜視図である。
図9に示すように、断熱板材90は、板状の断熱材である。図9に示す基礎パッキンは、基礎パッキン本体(図9では、基礎パッキン本体41)の側壁面に、断熱板材90を貼り付けたものである。図9に示す基礎パッキンも本発明の基礎パッキンに含まれるものである。
【0052】
以上、本発明に係る基礎パッキン、及び、床下点検口の実施形態について説明したが、本発明の基礎パッキン、及び、床下点検口は、上述した例に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。」

(ク) 上記摘記事項エを踏まえて図2をみると、基礎パッキン本体が長尺であること、及び、長尺の基礎パッキン本体における長手方向に延びる側面にわたって連続的に形成されている複数の凹部が通気孔42を構成していることがみてとれる。

(ケ) 上記摘記事項オを踏まえて図3をみると、断熱材60における基体61の長手方向に延びる側面にわたって、連続的に複数の凸部62が形成されていることがみてとれる。

イ 上記アの記載によれば、原出願の当初明細書等には、「建物の下方の空間の湿気を取り除き、且つ、断熱性を向上させることが可能な基礎パッキンを提供する」という課題を解決するために、通気性を備えた断熱材及び通気孔を形成する複数の凹部を設けた基礎パッキン本体を用いることは記載されていると認められるが、通気性を有さない断熱材や、通気孔でない複数の凹部を設けた基礎パッキン本体を用いることは記載されていないし示唆もない。

ウ 上記イに関して、請求人は、審判請求書「3.(2)」において、次のように主張している。

「原出願の出願当初の明細書に記載された上記「硬質ウレタンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、高発泡ポリエチレン、発泡炭化カルシウム、フェノールフォーム、及び発泡ガラス」は、実質的に通気性のない断熱材として当業者が認識しているものです。しかも、原出願の当初明細書の段落0037には、「浴室502の下方空間503を気密構造にして省エネ化を図っている」との記載があります。これらの記載に基づいて、通気性を有さない断熱材も開示されていると見るべきであり、当業者は必ずそのように理解します。このことから、原出願の当初明細書には、通気性を有することを必須の構成としない断熱材が、開示されていると言えます。」

しかし、硬質ウレタンフォーム等の断熱材であっても、その製造条件等によって通気性を持たせ得ることは技術常識であること、及び、原出願の当初明細書等において、段落【0025】に「断熱材50は、通気性を有するものであり」との記載があり、段落【0028】において、硬質ウレタンフォーム等の材料が「断熱材50」の材料として例示されていることからみて、原出願の当初明細書等においては、硬質ウレタンフォーム等からなる断熱材が、通気性を有する断熱材の材料として例示されていると解するのが自然である。
また、原出願の当初明細書等の段落【0037】には、「浴室502の下方空間503を気密構造にして省エネ化を図っている」との記載がある。しかしながら、続く段落【0038】において、「下方空間503を囲む布基礎202及び布基礎203の上に載置されている基礎パッキン40は、すでに説明したように、通気孔42が設けられた基礎パッキン本体41、及び、通気孔41を塞ぐ通気性を有する断熱材50から構成された基礎パッキンである。」との記載があることから、段落【0037】の記載を根拠にして通気性を有さない断熱材も開示されていると解することはできない。

エ また、上記イに関して、請求人は平成26年11月18日付け意見書「3.(2)」において、次のように主張している。

「原出願の当初明細書において、「通気孔」との凹部を有する基礎パッキン本体が開示されています(原出願の当初明細書の段落0020)。この様な断熱材の凸部が基礎パッキン本体の凹部に嵌め込まれることで、断熱材が基礎パッキン本体に取り付けられます。
上述したように、原出願の当初明細書には、通気性を有さない断熱材が開示されております。この様な通気性を有さない断熱材を凹部に嵌め入れて取り付けるうえで、凹部が通気孔であることは必ずしも必要ではありません。」

しかし、上記イ、ウに記載したとおり、原出願の当初明細書等には、通気性を有さない断熱材が開示されているとまではいえないため、請求人の主張は採用できない。


(3) 分割の適否のまとめ

そうすると、本願の請求項1に記載された「硬質ウレタンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、高発泡ポリエチレン、発泡炭化カルシウム、フェノールフォーム、及び発泡ガラスのうちの何れかからなる」「断熱材」のうちの通気性を有さない「断熱材」、又は、「基礎パッキン本体における長手方向に延びる側面にわたって、連続的に」「形成され」る「複数の凹部」のうち通気孔でない「複数の凹部」は、原出願の当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、本願は特許法第44条第1項により適法に分割出願されたものではない。

したがって、本願の出願日は、現実の出願日である平成24年11月6日である。


2 本願発明の特許性について

(1) 本願発明

本件出願の請求項1?4に係る発明は、上記「第3 2」に記載されたとおりであり、このうち請求項1に係る発明を、以下「本願発明」という。


(2) 刊行物に記載された発明及び技術的事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開2009-221813号公報(以下「刊行物」という。)は、原出願の公開公報であり、前記「第3 3(1)」のア?ケに摘記した事項が記載されている。

そして、前記「第3 3(1)」のア?オ、ク、ケから、刊行物には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が開示されているということができる。

「布基礎の上面とその上に配置される土台との間に介装される基礎パッキンであって、通気孔42が設けられた長尺の基礎パッキン本体41、及び、基礎パッキン本体41の側面に設けることにより基礎パッキンの通気孔を塞ぐ通気性を有する断熱材60を備え、基礎パッキン本体41における長手方向に延びる側面にわたって通気孔42を構成している複数の凹部が連続的に形成され、断熱材60における基体61の長手方向に延びる側面にわたって、連続的に複数の凸部62が形成され、断熱材60は、基礎パッキン本体の側面に設けることにより凸部62により基礎パッキンの通気孔42を塞ぐ、基礎パッキン。」

また、前記「第3 3(1)」のイ?エから、刊行物には、次の技術的事項(以下「刊行物に記載の技術的事項」という。)が開示されているということができる。

「布基礎の上面とその上に配置される土台との間に介装される基礎パッキン40であって、通気孔42が設けられた基礎パッキン本体41、及び、基礎パッキン本体41に設けられている矩形孔47に略隙間なく嵌合させる通気性を有する断熱材50を備えた基礎パッキン40において、断熱材50の材料を硬質ウレタンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、高発泡ポリエチレン、発泡炭化カルシウム、フェノールフォーム、発泡ガラスとすること。」


(3) 本願発明と刊行物発明との対比

本願発明と刊行物発明を対比する。

ア 刊行物発明における「基礎パッキン本体41」、「断熱材60」、「通気孔42」、及び、「凸部62」は、本願発明の「基礎パッキン本体」、「断熱材」、「通気孔」、及び、「凸部」に相当する。

イ 刊行物発明における「布基礎の上面とその上に配置される土台との間に介装される基礎パッキン」は、本願発明の「布基礎の上面とその上に配置される土台との間に介装される基礎パッキン」に相当する。

ウ 刊行物発明における「通気孔42が設けられた長尺の基礎パッキン本体41、及び、基礎パッキン本体41の側面に設けることにより基礎パッキンの通気孔を塞ぐ断熱材60を備え」は、「通気孔42」が、「断熱材60における基体61の長手方向に延びる側面にわたって、連続的に」「形成され」た「複数の凸部62」によって「塞」がれることを勘案すると、本願発明の「長尺の基礎パッキン本体と、この基礎パッキン本体における長手方向に延びる側面に取り付けられた長尺の断熱材と、を備え」に相当する。

エ 刊行物発明における「基礎パッキン本体41における長手方向に延びる側面にわたって通気孔42を構成している複数の凹部が連続的に形成され」は、本願発明の「基礎パッキン本体における長手方向に延びる側面にわたって、連続的に複数の凹部が形成され」に相当する。

オ 刊行物発明における「断熱材60における基体61の長手方向に延びる側面にわたって、連続的に複数の凸部62が形成され」は、本願発明の「断熱材における長手方向に延びる側面にわたって、連続的に複数の凸部が形成され」に相当する。

カ 刊行物発明における「断熱材60は、基礎パッキン本体41の側面に設けることにより凸部62により基礎パッキンの通気孔42を塞ぐ」は、「通気孔42」が「複数の凹部」によって「構成」されていることを勘案すると、本願発明の「複数の凸部が前記複数の凹部に嵌め込まれることで、前記断熱材が前記基礎パッキン本体に取り付けられ」に相当する。

キ したがって、本願発明と刊行物発明とは、
「布基礎の上面とその上に配置される土台との間に介装される基礎パッキンであって、長尺の基礎パッキン本体と、この基礎パッキン本体における長手方向に延びる側面に取り付けられた長尺の断熱材と、を備え、基礎パッキン本体における長手方向に延びる側面にわたって、連続的に複数の凹部が形成され、断熱材における長手方向に延びる側面にわたって、連続的に複数の凸部が形成され、複数の凸部が複数の凹部に嵌め込まれることで、断熱材が基礎パッキン本体に取り付けられた基礎パッキン。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]:「断熱材」に関して、
本願発明は、「硬質ウレタンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、高発泡ポリエチレン、発泡炭化カルシウム、フェノールフォーム、及び発泡ガラスのうちの何れかからなる」のに対し、
刊行物発明は、材料が特定されていない点。


(4) 判断

ア 刊行物には、「布基礎の上面とその上に配置される土台との間に介装される基礎パッキン40であって、通気孔42が設けられた基礎パッキン本体41、及び、基礎パッキン本体41に設けられている矩形孔47に略隙間なく嵌合させる通気性を有する断熱材50を備えた基礎パッキン40において、断熱材50の材料を硬質ウレタンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、高発泡ポリエチレン、発泡炭化カルシウム、フェノールフォーム、発泡ガラスとすること。」という技術的事項が記載されている。(上記2参照。)

イ そして、刊行物発明と刊行物に記載の技術的事項とは、ともに布基礎の上面とその上に配置される土台との間に介装される基礎パッキンに関するものであって、建物の下方の空間の湿気を取り除き、且つ、断熱性を向上させるという課題が共通しているので、刊行物発明における断熱材として、「硬質ウレタンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、高発泡ポリエチレン、発泡炭化カルシウム、フェノールフォーム、発泡ガラス」からなるものを採用することは、当業者であれば容易になし得た事項に過ぎない。

ウ また、上記相違点によって本願発明が奏する効果は、当業者が刊行物発明及び刊行物に記載の技術的事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

エ 以上より、本願発明は、当業者が刊行物発明及び刊行物に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものである。


(5) むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-20 
結審通知日 2015-11-24 
審決日 2016-01-08 
出願番号 特願2012-244197(P2012-244197)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 真理子  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 中田 誠
谷垣 圭二
発明の名称 基礎パッキン及び断熱構造  
代理人 特許業務法人梶・須原特許事務所  

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