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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 C07K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C07K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C07K
管理番号 1311514
審判番号 不服2014-17732  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-05 
確定日 2016-03-15 
事件の表示 特願2010-510175「抗汗抗原モノクローナル抗体」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日国際公開、WO2009/133951、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成21年5月1日(国内優先権主張 平成20年5月2日,平成20年12月26日)を国際出願日とする出願であって、平成26年5月29日付けで拒絶査定され、同年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成27年11月9日付けで当審より拒絶理由通知がなされ、それに対して平成28年1月5日付けで意見書および手続補正書が提出されたものである。
本願の請求項1?15に係る発明は、平成28年1月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
汗抗原組成物と反応し、かつ、該組成物による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができる抗体またはその抗原結合性断片の製造方法であって、
ヒト汗腺からの分泌物を陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにかけ、得られた0?1.0MのNaCl濃度勾配で0.25?0.3mol/L NaClの範囲に溶出されるヒスタミン遊離活性画分を逆相カラムクロマトグラフィーにかけ、得られた0.1v/v%TFA/蒸留水から0.1v/v%TFA/アセトニトリルの濃度勾配で30?35v/v%アセトニトリルの範囲に溶出されるヒスタミン遊離活性画分をゲル濾過カラムクロマトグラフィーにかけ、得られた15?60kDの位置のヒスタミン遊離活性画分を、抗ヒトCystatinA抗体アフィニティクロマトグラフィーにかけて得られた抗ヒトCystatinA抗体非吸着画分を抗原として用い、
汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標にしてハイブリドーマをスクリーニングし、ハイブリドーマから抗体を生産する、抗体またはその抗原結合性断片の製造方法。
【請求項2】
FERM BP-11110またはFERM BP-11111の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマから生産される、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
FERM BP-11110、FERM BP-11111またはFERM BP-11112の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマから生産される、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
FERM BP-11113の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマから生産される、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項5】
アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、および汗疱からなる群から選択される汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクの判定を補助する方法であって、請求項2または3に記載の抗体を用いて、被験試料中の汗抗原を検出する工程を含んでなる、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の抗体を更に用いる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項2または3に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片および/または請求項4に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片を含んでなる、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、および汗疱からなる群から選択される汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクの診断剤または診断用キット。
【請求項8】
請求項2または3に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項9】
FERM BP-11110、FERM BP-11111またはFERM BP-11112の受託番号のもと寄託された請求項8に記載のハイブリドーマ。
【請求項10】
請求項2または3に記載の抗体またはその抗原結合性断片と組み合わせて、サンドイッチ法を用いて汗抗原組成物を検出することができる、汗抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項11】
FERM BP-11113の受託番号のもと寄託された請求項10に記載のハイブリドーマ。
【請求項12】
請求項2または3に記載の抗体を用いて、被験試料中の汗抗原を検出する工程を含んでなる、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、および汗疱からなる群から選択される汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクを判定するための指標を検出する方法。
【請求項13】
請求項4に記載の抗体を更に用いる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
汗抗原組成物と反応し、かつ、該組成物による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができる抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング方法であって、
ヒト汗腺からの分泌物を陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにかけ、得られた0?1.0MのNaCl濃度勾配で0.25?0.3mol/L NaClの範囲に溶出されるヒスタミン遊離活性画分を逆相カラムクロマトグラフィーにかけ、得られた0.1v/v%TFA/蒸留水から0.1v/v%TFA/アセトニトリルの濃度勾配で30?35v/v%アセトニトリルの範囲に溶出されるヒスタミン遊離活性画分をゲル濾過カラムクロマトグラフィーにかけ、得られた15?60kDの位置のヒスタミン遊離活性画分を、抗ヒトCystatinA抗体アフィニティクロマトグラフィーにかけて得られた抗ヒトCystatinA抗体非吸着画分を得る工程、
抗原として前記抗ヒトCystatinA抗体非吸着画分を用いて抗体を産生するハイブリドーマを得る工程、
汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標として、ヒスタミン遊離抑制作用を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程、
を含んでなる、ハイブリドーマのスクリーニング方法。
【請求項15】
汗抗原組成物と反応し、かつ、該組成物による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができる抗体を産生するハイブリドーマの製造方法であって、
ヒト汗腺からの分泌物を陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにかけ、得られた0?1.0MのNaCl濃度勾配で0.25?0.3mol/L NaClの範囲に溶出されるヒスタミン遊離活性画分を逆相カラムクロマトグラフィーにかけ、得られた0.1v/v%TFA/蒸留水から0.1v/v%TFA/アセトニトリルの濃度勾配で30?35v/v%アセトニトリルの範囲に溶出されるヒスタミン遊離活性画分をゲル濾過カラムクロマトグラフィーにかけ、得られた15?60kDの位置のヒスタミン遊離活性画分を、抗ヒトCystatinA抗体アフィニティクロマトグラフィーにかけて得られた抗ヒトCystatinA抗体非吸着画分を得て、抗原として該抗ヒトCystatinA抗体非吸着画分を用いて抗体を産生するハイブリドーマを得る、方法であって、
(i)汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標として、ヒスタミン遊離抑制作用を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程;および
(ii)(i)で得られたハイブリドーマをクローニングする工程
を含んでなる、方法。

第2.当審の拒絶理由
当審が通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
[理由1]この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1に係る発明は、「抗体またはその機能的断片」という物の発明に係るものであるが、請求項1には、ヒト汗腺からの分泌物を陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー、抗ヒトCystatinA抗体アフィニティクロマトグラフィーにかけた画分を抗原として得ることや、この抗原を用いて得られる汗抗原刺激応答細胞から、ヒスタミン遊離量を指標にしてスクリーニングされるハイブリドーマから抗体が生産される、という、「抗体またはその機能的断片」の製造方法が記載されているものと認められる。

ここで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最判平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、同2658号)。
しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、また、出願人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。
また、請求項1には、「機能的断片」と記載されているが、この用語の意味するところが明確でない。この点については、請求項2?7、10?13、19、20についても同様である。
したがって、請求項1に係る発明は明確でない。また、請求項1を引用する請求項2?18についても同様である。

(2)請求項2には、「抗体」という物の発明について、「ハイブリドーマから生産される」という製造方法が記載されている。
そして、上記(1)のとおり、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載されていないから、請求項2の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するとはいえない。
また、同じくハイブリドーマから生産される抗体を記載する請求項3、6についても同様である。

(3)請求項19には、「ハイブリドーマのスクリーニング方法」の発明に係るものと認められるが、請求項19の記載全体が日本語として明りょうでなく、また、ハイブリドーマが抗体の断片を産生するといった、技術的に誤った事項が特定されており、「ハイブリドーマのスクリーニング方法」が明確に理解できるとは認められない。

(4)請求項20には、「ハイブリドーマの製造方法」の発明に係るものと認められるが、請求項19と同様に、「ハイブリドーマの製造方法」が明確に理解できるとは認められない。

[理由2]この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1には、汗を陰イオン交換樹脂カラム、逆相カラムクロマトグラフィーを用いて分画した画分からなる、ヒスタミン遊離活性を有する抗原物質が記載されており、この抗原物質には、本願請求項5にいう「請求項1?4に記載の抗体またはその機能的断片と抗原抗体反応する汗抗原」が含まれると認められる。
そして、引用例2には、アトピー性皮膚炎の診断に用いるために、ヒスタミン遊離活性を有する抗原物質の抗体を製造することが記載されているから、引用例1に記載された汗由来のヒスタミン遊離活性を有する抗原物質の抗体を製造することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、請求項5に特定される抗体は、そのようにして製造された抗体と相違するとは認められない。
請求項5を引用する請求項7、9、12も同様である。

引 用 文 献 等 一 覧
1.免疫アレルギー疾患予防・治療等研究事業研究報告書 平成14年度第1分冊,2003年,p.100-102 (拒絶査定の文献5)
2.国際公開第03/084991号 (拒絶査定の文献4)

[理由3]この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由4]この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項8には「請求項1?4のいずれか一項に記載の抗体を用いて、被験試料中の汗抗原に特異的なIgE抗体を検出する工程」が記載されており、汗抗原に反応する抗体を用いて汗抗原に特異的なIgE抗体を検出することが特定されていると認められる。
これに対し、発明の詳細な説明には、汗抗原に反応する抗体を用いるだけで、汗抗原に特異的なIgE抗体が検出できたことが記載されているとは認められない。
本願の実施例8には、コリン性蕁麻疹患者血清中の抗汗抗原特異的IgE抗体の測定について記載され、smith-2抗体をELISAプレートに固相化し、これにQRX画分を固定し、被験者血清(コリン性蕁麻疹患者および健常者血清)で反応させた後、パーオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgE抗体を用いて抗汗抗原IgE抗体を検出したことは記載されているが、この検出は、汗抗原に反応する抗体だけを用いる方法ではない。
したがって、請求項8の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。請求項8を引用する請求項9も同様である。
また、請求項17にも「請求項1?4のいずれか一項に記載の抗体を用いて、被験試料中の汗抗原に特異的なIgE抗体を検出する工程」が特定されており、上記と同様に、請求項17の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。請求項17を引用する請求項18も同様である。
よって、請求項8、9、17、18に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(2)請求項10には、汗抗原と反応する抗体を含んでなる、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、および汗疱からなる群から選択される汗抗原が関連する疾患の予防または治療に用いられる医薬組成物の発明が記載されている。
医薬についての用途発明においては、一般に、有効成分として記載されている物質自体から、それが発明の特定事項である医薬用途に利用できるかどうかを予測することは困難であるから、当業者がその実施をすることができる程度に記載されているというためには、明細書において、当該物質が当該医薬用途に利用できることを薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載により裏付ける必要がある。また、その裏返しとして、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超えるものである場合には、その特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
しかしながら、本願の発明の詳細な説明には、汗抗原と反応する抗体が、QRX画分によるアトピー性皮膚炎患者(2名)の好塩基球からのヒスタミン遊離を抑制したことは記載されているが、実際にアトピー性皮膚炎等が治療できたことは記載されておらず、また、このヒスタミン遊離の抑制の結果から、アトピー性皮膚炎等が治療できることが自明な事項であるとは認められない。
請求項11についても同様である。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項10、11に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているものとは認められない。また、請求項10、11に係る発明は、発明の詳細な説明において、発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。

第3.当審の判断
当審の拒絶理由のうち、[理由1]の(1)、(3)、(4)、[理由2]、[理由3][理由4]の理由は、平成28年1月5日付け手続補正書による補正によって解消したと認められる。
そこで、当審の拒絶理由のうち、[理由1]の(2)の理由について、以下検討する。
本願の請求項2には、「FERM BP-11110またはFERM BP-11111の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマから生産される、抗体またはその抗原結合性断片。」と記載されており、「抗体」という物の発明について、「ハイブリドーマから生産される」という製造方法が記載されており、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されていると認められる。

しかし、最高裁判決(最判平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、同2658号)によれば、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である、とされていることから、請求項2に係る発明が上記事情に該当するものであるかについて、以下検討する。

まず、請求項2に記載される「ハイブリドーマ」は、発明の詳細な説明の段落【0127】や段落【0153】に記載されているように、「汗抗原組成物を免疫することによって得られるリンパ球」と「ミエローマ細胞」を融合して得られた典型的な「ハイブリドーマ」であるから、特定の「ハイブリドーマ」から生産される「抗体」(モノクローナル抗体)は、唯一つであることが技術常識から当業者において明らかである(必要であれば、「遺伝子工学キーワードブック」羊土社、1996年4月25日発行、299頁『ハイブリドーマ』の項、「生化学事典(第2版)」東京化学同人、1990年11月22日発行、993頁『ハイブリドーマ』の項参照。)。
そして、請求項2に記載されるハイブリドーマは、「FERM BP-11110またはFERM BP-11111の受託番号のもと寄託され」ているから、「ハイブリドーマから生産される、抗体」は、該受託番号のハイブリドーマを寄託機関よりそれぞれ入手して抗体を生産すれば、請求項2の「抗体」を得ることができ、使用することができるのである。つまり、請求項2に「抗体」の化学構造(アミノ酸配列など)が記載されていなくても、「ハイブリドーマから生産される、抗体」と特定すれば、生産される「抗体」(モノクローナル抗体)は唯一つであり、その「抗体」を作り、使用できると認められる。この点については、審判請求人も平成28年1月5日付け意見書において「一つのハイブリドーマが生産する抗体は一つであり、ハイブリドーマを特定すれば、抗体も一義的に特定されます。」と述べている。
一方、「ハイブリドーマから生産される、抗体」について、さらにその化学構造を特定しようとする場合、「抗体」は低分子化合物ではなく三次元構造を有する高分子量のタンパク質であるから、審判請求人が平成28年1月5日付け意見書において主張するように、「抗体」の化学構造を決定するためには、時間、手間、さらには費用がかかると考えられる。

したがって、上述したような技術常識の下、実施可能要件(「物の発明」について「その物を作れる」こと及び「その物を使用できる」こと)を満たしていることが明らかな抗体について、その「抗体」の化学構造を決定するためだけにそのような時間、手間、費用をかけることは「非実際的」であるといえ、また、そのために出願時期が遅くなることは、先願主義の見地からも「非実際的」であるといえる。しかも、本願に係る発明が属するバイオテクノロジー分野は、技術が急速に進歩している国際規模でも競争の激しい分野であり、迅速に特許出願をすることがきわめて重要であることから、なおさら「非実際的」であるという事情が存在する。

そして、上記最高裁判決の補足意見では、「『およそ実際的でない』とは,出願時に当業者において,どちらかといえば技術的な観点というよりも,およそ特定する作業を行うことが採算的に実際的でない時間や費用が掛かり,そのような特定作業を要求することが,技術の急速な進展と国際規模での競争の激しい特許取得の場面においては余りにも酷であるとされる場合などを想定している。」とされており、上記事情は、この補足意見にいう「およそ実際的でない」事情に該当すると認められる。

そうすると、請求項2の記載は、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するとき、に該当すると認められ、したがって、請求項2は特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえる。
また、同様の理由から、請求項3及び請求項4も「発明が明確であること」という要件に適合するといえる。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件に適合すると認められる。

第4.むすび
以上のとおりであるから、本願については、当審が通知した拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-03-02 
出願番号 特願2010-510175(P2010-510175)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (C07K)
P 1 8・ 537- WY (C07K)
P 1 8・ 121- WY (C07K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 馬場 亮人  
特許庁審判長 田村 明照
特許庁審判官 ▲高▼ 美葉子
中島 庸子
発明の名称 抗汗抗原モノクローナル抗体  
代理人 浅野 真理  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 大森 未知子  
代理人 反町 洋  
代理人 中村 行孝  

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