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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1311636
審判番号 不服2015-211  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-06 
確定日 2016-02-23 
事件の表示 特願2011-530431「センサシステムのための制御装置、センサシステム、およびセンサシステムにおける信号を伝送するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月15日国際公開、WO2010/040587、平成24年 3月 1日国内公表、特表2012-505389〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に係る特許出願(以下、「本願」という。)は、2009年(平成21年)8月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年(平成20年)10月7日、独国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
平成23年 4月 7日 :翻訳文提出
平成26年 2月25日付け:拒絶理由の通知(同年3月3日発送)
平成26年 4月10日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年11月14日付け:拒絶査定(同年11月25日送達)
平成27年 1月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成27年 3月27日 :前置報告

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年1月6日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。)
「 センサシステム(1)のための制御装置(2)において、
前記制御装置(2)は少なくとも接続装置(9)および電流制限回路(10)を有しており、
前記接続装置(9)は、電流インターフェースとして少なくとも2つの線路(4a,4b)を備えるデータ接続部(4)を少なくとも1つのセンサ(3)に接続し、
前記接続装置(9)は、前記センサ(3)から前記データ接続部(4)を介して、インターフェース電流(I)の電流変調によって形成された信号(14)を受信し、
前記電流制限回路(10)は、前記データ接続部(4)の少なくとも1つの線路(4a,4b)での短絡時に、短絡電流(I_2,I_3)を制限し、
前記電流制限回路(10)は、前記短絡電流(I_2,I_3)を時間によって変化して制限し、
前記電流制限回路(10)は、短絡時に前記インターフェース電流(I)を、第1の期間(t1-t0)においては上側の短絡電流値(I_2)に制限し、前記第1の期間(t1-t0)の後には下側の短絡電流値(I_3)に制限し、
前記下側の短絡電流値(I_3)は、前記上側の短絡電流値(I_2)より小さく、センサ定常時電流(I_0)よりも大きく、
前記信号(14)はデジタルであり、前記第1の期間(t1-t0)は、前記信号(14)の信号幅(Δt)の少なくとも10倍である、
ことを特徴とする制御装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成26年4月10日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 センサシステム(1)のための制御装置(2)において、
前記制御装置(2)は少なくとも接続装置(9)および電流制限回路(10)を有しており、
前記接続装置(9)は、電流インターフェースとして少なくとも2つの線路(4a,4b)を備えるデータ接続部(4)を少なくとも1つのセンサ(3)に接続し、
前記接続装置(9)は、前記センサ(3)から前記データ接続部(4)を介して、インターフェース電流(I)の電流変調によって形成された信号(14)を受信し、
前記電流制限回路(10)は、前記データ接続部(4)の少なくとも1つの線路(4a,4b)での短絡時に、短絡電流(I_2,I_3)を制限し、
前記電流制限回路(10)は、前記短絡電流(I_2,I_3)を時間によって変化して制限し、
前記電流制限回路(10)は、短絡時に前記インターフェース電流(I)を、第1の期間(t1-t0)においては上側の短絡電流値(I_2)に制限し、前記第1の期間(t1-t0)の後には下側の短絡電流値(I_3)に制限し、
前記下側の短絡電流値(I_3)は、前記上側の短絡電流値(I_2)より小さく、センサ定常時電流(I_0)よりも大きく、
前記信号(14)はデジタルであり、前記第1の期間(t1-t0)は、前記信号(14)の信号幅(Δt)の数倍である、
ことを特徴とする制御装置。」

(3)本件補正の目的
「前記第1の期間(t1-t0)は、前記信号(14)の信号幅(Δt)の数倍である、」を「前記第1の期間(t1-t0)は、前記信号(14)の信号幅(Δt)の少なくとも10倍である、」とする本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1の期間(t1-t0)」について限定を付するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 本件補正発明の独立特許要件についての検討
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願のパリ条約による優先権主張の基礎となる出願の出願日(以下、「優先日」という。)前に頒布された刊行物である、米国特許出願公開第2007/0008671号明細書(平成19年1月11日公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審が付した。)。原文の引用の後に日本語訳(当審訳)を記載する。
a「[0001] The invention relates to a driver and receiver circuit for a remotely arranged circuit and a method for monitoring a line connection between a driver and receiver circuit and a remotely arranged circuit.」
(本発明は、遠隔配置された回路のためのドライバ及びレシーバ回路と、ドライバ及びレシーバ回路と遠隔配置された回路との間の配線接続を監視するための方法に関する。)

b「[0002] Driver and receiver circuits for a remotely arranged circuit are sufficiently known and serve for example for supplying voltage to remotely arranged sensors and for receiving sensor signals from such sensors.」
([0002] 遠隔配置された回路のドライバ及びレシーバ回路は、十分に知られており、例えば、遠隔配置されたセンサに電圧を供給し、また、このようなセンサからセンサ信号を受信する働きをする。)

c「[0003] In order to afford a better understanding, the basic construction of such a driver and receiver circuit and its interconnection with a remotely arranged circuit, which is referred to hereinafter as“satellite circuit”, are explained with reference to FIG. 1.
[0004] In FIG. 1, the driver and receiver circuit is designated by the reference symbol 10 and the satellite circuit is designated by the reference symbol 20. The driver and receiver circuit 10 has output terminals 101, 102 for connecting a line connection 30. Via said line connection 30, during operation, voltage is supplied to the satellite circuit 20 and information is transmitted from the satellite circuit 20 to the driver and receiver circuit 10.
[0005] The driver and receiver circuit 10 makes a supply voltage Vbias available via the connecting terminals 101, 102 at the line connection 30 by means of a voltage source 13. By means of a current measuring arrangement 12, the driver and receiver circuit 10 additionally determines a current Iout flowing via the terminals 101, 102 and supplies an item of current information to a central control circuit 14.
[0006] The satellite circuit 20 is connected to the line connection 30 via terminals 201, 202 and is designed to modulate the current flowing via the line connection 30 such that it assumes a first or a second current value. For this purpose, the satellite circuit 20 has two current sources 21, 22, for example, a first 21 of which is always connected to the line connection 30 and a second of which can be connected in parallel with the first current source 21 via a switch 23 according to a control signal 24. The satellite circuit 20 comprises a sensor 26, for example, such as an airbag sensor, for example, which provides a sensor signal S26, according to which a driver circuit 24 generates the control signal S24 for the modulation of the current Iout.
[0007] An internal supply voltage Vint of the satellite circuit 20 is generated from the voltage Vbias present at the line connection 30 by a voltage supply circuit 25.
[0008] FIG. 2 shows by way of example the temporal profile of the current Iout flowing via the line connection 30. During disturbance-free operation, said current assumes two current values, a first current value I1 corresponding to the current supplied by the first current source 21, and a second current value I2 corresponding to the sum of the currents supplied by the two current sources 21, 22 of the satellite circuit 20. The current Iout flowing via the line connection 30 represents a coded or modulated signal. In this case, the information to be transmitted from the satellite circuit 20 to the receiver circuit 10 may be contained in the two different levels of the current signal Iout or in the level changes of said current signal Iout. The information from the satellite circuit 20 to the receiver circuit 10 is transmitted in the form of“data packets”, for example, the individual information symbols of which are transmitted successively within a time duration Td.
[0009] The receiver circuit 10 is designed to demodulate and, if appropriate, decode the information contained in the current signal Iout and to generate a control signal S10, which may be for example a firing signal for an occupant protection system of a motor vehicle.
[0010] An erroneous operating state can occur in the case of such a receiver circuit when a short circuit occurs between the connecting terminals 101, 102, as is illustrated by the reference symbol 42 in FIG. 1. A further erroneous operating state is present when there is a short circuit between the line connection 30 and a terminal for a supply potential Vs. The effects of such an error are that the communication link to the satellite circuit 20 is interrupted. Furthermore, the driver and receiver circuit 10 may be damaged on account of such an error because the currents flowing during such an error state may be considerably greater than the currents flowing during normal operation. Moreover, a permanent overcurrent may lead to a dip in the voltage supply and thus also to a disturbance of adjacent channels (not illustrated).」
([0003] より良好な理解を提供するために、このようなドライバ及びレシーバ回路の基本構成及び遠隔配置された回路(以下、「サテライト回路」という。)とそれとの相互接続は、後述する図1を用いて説明する。
[0004] 図1において、ドライバ及びレシーバ回路は参照符号10で、サテライト回路は参照符号20で示されている。ドライバ及びレシーバ回路10は、配線接続30を接続するための出力端子101、102を有している。前記配線接続30を介して、動作中に、電圧がサテライト回路20に供給され、情報がサテライト回路20からドライバ及びレシーバ回路10に送信される。
[0005] ドライバ及びレシーバ回路10は、配線接続30の接続端子101、102を介して利用可能な電源電圧Vbiasを電圧源13によって生成する。ドライバ及びレシーバ回路10は、さらに、電流測定装置12によって、端子101、102を介して流れる電流Ioutを決定し、電流情報を中央制御回路14に供給する。
[0006] 一方、端子201、202を介して配線接続30に接続されるサテライト回路20は、配線接続30を介して流れる電流が、第1又は第2の電流値となるよう変調するように設計されている。この目的のために、サテライト回路20は、例えば二つの電流源21、22を有しており、前者の21は配線接続30に常時接続され、後者は制御信号24に応じてスイッチ23を介して第1電流源21と並列に接続得る。サテライト回路20は、例えばエアバッグセンサのようなセンサ26を備えている。このセンサはセンサ信号S26を提供し、このセンサ信号に基づいて、ドライバ回路24は電流Ioutを変調するための制御信号S24を生成する。
[0007] サテライト回路20の内部電源電圧Vintは、電圧供給回路25によって配線接続30の電圧Vbiasから生成される。
[0008] 図2は配線接続30を介して流れる電流Ioutの時間プロファイルの一例を示している。障害なく動作している間は、前記電流は二つの電流値をとる。すなわち、第1電流源21が供給する電流に対応する第1電流値I1と、サテライト回路20の二つの電流源21、22によって供給される電流の和に対応する第2電流値I2である。配線接続30を介して流れる電流Ioutは、符号化された、又は変調された信号を表している。この場合、サテライト回路20からレシーバ回路10に送信されるべき情報は、電流信号Ioutの二つの異なるレベル又は前記電流信号Ioutのレベル変化に含まれ得る。サテライト回路20からレシーバ回路10への情報は、例えば、「データパケット」の形式で送信され、その個々の情報シンボルは、時間Td内に連続して送信される。
[0009] レシーバ回路10は、復調し、もし適切であるならば、電流信号Ioutに含まれる情報を復号し、制御信号S10を生成するように設計されている。制御信号S10は、例えば自動車の乗員保護システムのための点火信号である。
[0010] 接続端子101、102間の短絡(図1に参照符号42で示す)が発生したとき、そのようなレシーバ回路の場合に誤作動状態が発生し得る。配線接続30と電源電位Vsの端子との短絡がある場合にも、誤作動状態が存在する。このようなエラーの影響は、サテライト回路20との通信リンクが切断されることである。また、誤作動状態の間に流れる電流は、通常動作時に流れる電流よりもかなり大きくなり得るため、ドライバ及びレシーバ回路10が、このようなエラーのために損傷しかねない。さらに、永続的な過電流は、電源電圧の一時的な低下につながるおそれがあり、したがってまた、隣接チャネルの妨害をする可能性がある(図示せず)。)

d「[0037] FIG. 3 shows a first exemplary embodiment of a driver and receiver circuit according to the invention. This driver and receiver circuit has output terminals 101, 102 for connecting a line connection (not illustrated in FIG. 3). A bias voltage source 13 is coupled to said output terminals 101, 102 and makes a bias voltage or supply voltage Vbias available at the connecting terminals 101, 102 according to a control signal LEN.
[0038] A current measuring arrangement 12 is connected between the voltage source 13 serving as voltage supply arrangement and one of the connecting terminals 101. This current measuring arrangement 12 has the task of detecting an output current Iout flowing via the connecting terminals 101, 102 and making available a current measurement signal V12 dependent on said output current Iout. The current measurement signal V12 is fed to an evaluation and control circuit 14, which generates an output signal DOUT from the voltage measurement signal V12.
[0039] The control and evaluation circuit 14 may be a conventional control and evaluation circuit which, for example, is designed to demodulate data information modulated on the output current Iout or the current measurement signal V12 and to convert it into the output signal DOUT. The control and evaluation circuit 14 additionally makes the control signal LEN available, according to which the voltage source 13 is activated and deactivated.
[0040] The driver and receiver circuit has a monitoring circuit 15 having an input 151 operably connected to receive the current measurement signal V12. The monitoring circuit 15 is designed to generate an error signal S15 depending on the current measurement signal V12 at an output 152. The monitoring circuit 15 is designed to generate a level of the error signal S15 indicating an error when the current measurement signal V12 has a value indicating that the output current Iout lies above a predetermined threshold value for longer than a predetermined first time duration. The current measurement signal V12 is advantageously proportional to the output current Iout, so that the monitoring circuit 15 generates a level of the error signal S15 indicating an error when the current measurement signal V12 lies above a measurement signal limit value for a period of time that is longer than the predetermined first time duration.
[0041] In order to be able to identify an erroneous operating state as rapidly as possible, the first time duration is as short as possible. In this embodiment, the first time duration is also longer than a data block period (Td in FIG. 2) during which the output current Iout is modulated by a satellite circuit (not illustrated in FIG. 3). Such data blocks are separated by time segments during which the output current Iout assumes a low current level in the error-free operating state. If the output current Iout remains above the lower current level I1 during a time duration that is longer than said data block period Td, then this already indicates an erroneous operating state. The current level with which the output current Iout is compared by the monitoring circuit must lie above the lower current level I1 but may be less than the upper current level I2 since, in error-free operation, the output current Iout falls at the latest after the data block period Td has elapsed. 」
([0037] 図3は、本発明に係るドライバ及びレシーバ回路の第1の実施形態を示す。このドライバ及びレシーバ回路(図3には不図示)は、配線接続を接続するための出力端子101、102を有している。バイアス電圧源13は、前記出力端子101、102に接続されており、制御信号LENに基づき、接続端子101、102においてバイアス電圧または電源電圧Vbiasが利用できるようにする。
[0038] 電流測定装置12は、電圧供給装置としての電圧源13と接続端子101のひとつとの間に接続されている。この電流測定装置12は、接続端子101、102を介して流れる出力電流Ioutを検出し、前記出力電流Ioutに応じた電流測定信号V12を利用できるようにする役割を担っている。電流測定信号V12は、電圧測定信号V12から出力信号DOUTを生成する評価及び制御回路14に供給される。
[0039] 制御及び評価回路14は、従来の制御及び評価回路であってよく、例えば、出力電流Iout又は電流測定信号V12に変調されたデータ情報を復調し、出力信号DOUTに変換するように設計されている。制御及び評価回路14は、さらに、電圧源13を活性化及び非活性化するための制御信号LENを利用可能にする。
[0040] ドライバ及びレシーバ回路は、電流測定信号V12を受信するように動作可能に接続された入力151を有する監視回路15を有している。監視回路15は、出力152における電流測定信号V12に応じてエラー信号S15を生成するように設計されている。監視回路15は、電流測定信号V12が、出力電流Ioutが所定の第1の期間より長い間、所定のしきい値より上にあることを示す値を有する場合に、エラーを示すエラー信号S15のレベルを発生するように設計されている。電流測定信号V12は、有利には出力電流Ioutに比例し、それゆえ監視回路15は、所定の第1の期間よりも長い時間にわたって電流測定信号V12が計測信号の制限値よりも上方にあるときにエラーを示すエラー信号S15のレベルを生成するようになっている。
[0041] できるだけ迅速に誤作動状態を識別できるようにするため、第1の期間はできるだけ短くする。また、本実施形態では、第1の期間は、出力電流Ioutがサテライト回路(図3には不図示)によって変調されるデータブロック期間(図2におけるTd)よりも長い。このデータブロックは、出力電流Ioutが誤りのない動作状態における低電流レベルとなる時間部分によって分離されている。出力電流Ioutが、前記データ・ブロック期間Tdよりも長い時間、低電流レベルI1を超える値に留まる場合は、既に誤作動状態を示している。監視回路によって出力電流Ioutと比較される電流レベルは、下電流レベルI1よりも上になければならないが、エラーのない動作時には、出力電流Ioutは遅くともデータブロック期間Tdが経過した後には立ち下がるので、上電流レベルI2未満でもよい。)

e「[0049] (中略)In this connection, a high level of the error signal S15 indicates an error-free operating state.
[0050] The flip-flop 158 is reset by means of a high level of the counter signal S157, as a result of which the error signal S15 assumes a low level, which in this case indicates an erroneous operating state.」
([0049] (中略)これに関して、エラー信号S15のハイレベルは、エラーのない動作状態を示している。
[0050] フリップフロップ158は、カウンタ信号S157のハイレベルによりリセットされ、その結果、エラー信号S15は、ここでは誤った動作状態を示すローレベルである。)

f「[0051] The temporal profile of the output current Iout and the temporal profile of the current measurement signal V12 proportional to said output current Iout are plotted by way of example in FIG. 6. It is assumed in the example illustrated that an error-free state is present up to an instant T1(当審注、「T1」は「t1」の誤記と思われる。), so that, up to said instant t1, the output current Iout is switched back and forth between a lower current level I1 and an upper current level I2 in a manner modulated by a satellite circuit. A first current measurement signal level V1 of the current measurement signal V12 corresponds to the lower current level I1, and an upper current measurement signal level V2 corresponds to the upper current level I2. At the instant t1 an error occurs, as a result of which the output current Iout rises permanently to a value lying above the upper current level I2. Referring to FIG. 1, such an error may occur for example by virtue of the connecting terminals 101, 102 of the driver and receiver circuit 10 being short-circuited. The output current Iout is limited to an upper limit value I_lim in such a case by means of a current limiting circuit, the current limiting circuit being designated by the reference symbol 16 in FIG. 3.
[0052] In the example, the reference value Vref with which the voltage measurement signal is compared is greater than the second current measurement signal level V2. The current measurement signal V12 reaches said reference level Vref at an instant t2.」
([0051] 出力電流Ioutの時間プロファイルと前記出力電流Ioutに比例した電流測定信号12の時間プロファイルは、図6に一例としてプロットされている。図示の例では、T1までエラーの無い状態であるから、そのt1までは、出力電流Ioutは、サテライト回路の変調により、低電流レベルI1、高電流レベルI2との間で切り替えられる。電流測定信号12Vの第1の電流測定信号レベルV1は低電流レベルI1に対応し、高い電流測定用信号レベルV2は、高電流レベルI2に対応する。t1においてエラーが発生すると、出力電流Ioutが高電流レベルI2よりも大きい値に永続的に上昇することになる。図1を参照して、このようなエラーは、例えば短絡しているドライバ及びレシーバ回路10の接続端子101、102により生じる可能性がある。このようなケースでは、出力電流Ioutは、電流制限回路により、上限値I_limに制限される。この電流制限回路は、図3において参照符号16で指定されている。
[0052] この例では、電圧測定信号と比較される基準値Vrefは、第2の電流測定信号レベルV2よりも大きい。電流測定信号V12はt2において前記基準レベルVrefに到達する。)

g「[0053] In this example, the first time duration T1 is the time duration between the instant t2, at which the current measurement signal V12 exceeds the reference value Vref, and an instant t3, at which the error signal is set to a low level.」
([0053] この例では、第1の期間T1は、電流測定用信号V12が基準値Vrefを超えた時刻t2と、エラー信号がローレベルに設定される時刻t3との時間差である。)

(イ)引用文献1に記載された技術事項
a [0037]の記載から、図3はドライバ及びレシーバ回路を示していることが分かる。
また、[0004]の記載から、ドライバ及びレシーバ回路10が出力端子101、102を有していることが分かる。
さらに、[0005]の記載から、ドライバ及びレシーバ回路10が電流測定装置12を有していることが分かる。
また、[0051]の記載から、電流制限回路は、図3において参照符号16で指定されていることが分かる。
以上のことから、「ドライバ及びレシーバ回路10は少なくとも出力端子101、102、電流測定装置12および電流制限回路16を有している。」という技術事項が読み取れる。

b [0004]の記載から、出力端子101、102は、配線接続30を接続するためものであることが分かる。
次に、[0006]の記載から、サテライト回路20が配線接続30に接続されていることが分かる。
また、FIG 1から、配線接続30が2つの線路を備えることが分かる。
以上のことから、「出力端子101、102は、2つの線路を備える配線接続30をサテライト回路20に接続する。」という技術事項が読み取れる。

c [0006]や[0051]の記載から、サテライト回路20は、配線接続30を介して流れる電流Ioutが、低電流レベルI1又は高電流レベルI2となるよう変調することが分かる。
次に、[0008]及び[0038]の記載から、配線接続30を介して流れる電流Ioutは、符号化された信号を表しており、電流測定装置12によって検出されることが分かる。
以上のことから、「電流測定装置12は、サテライト回路20によって低電流レベルI1又は高電流レベルI2となるよう変調され符号化された信号を表す、配線接続30を介して流れる電流Ioutを検出する。」という技術事項が読み取れる。

d [0051]の記載から、t1においてエラーが発生すると、出力電流Ioutが高電流レベルI2よりも大きい値に永続的に上昇することになることが分かる。
また、このようなエラーが、短絡しているドライバ及びレシーバ回路10の接続端子101、102により生じる可能性があることが分かる。
さらに、このようなケースでは、出力電流Ioutが、電流制限回路16により、上限値I_limに制限されることが分かる。
ここで、[0010]の記載及びFIG 1を参照すると、短絡しているドライバ及びレシーバ回路10の接続端子101、102により生じるエラーは、配線接続30間の短絡や、配線接続30と電源電位Vsの端子との短絡により生じることが分かる。
以上のことから、「電流制限回路16は、配線接続30での短絡時に、電流Ioutを上限値I_limに制限する。」という技術事項が読み取れる。

e [0040]及び[0053]の記載から、ドライバ及びレシーバ回路が有する監視回路15は、電流測定信号V12が、出力電流Ioutが第1の期間T1より長い間、所定のしきい値より上にあることを示す値を有する場合に、エラーを示すエラー信号S15のレベルを発生することが分かる。
このことから、「ドライバ及びレシーバ回路10は、電流Ioutが第1の期間T1より長い間、所定のしきい値より上にある場合に、エラーを示す。」という技術事項が読み取れる。

f [0041]及び[0053]の記載から、「第1の期間T1は、データブロック期間Tdよりも長い。」という技術事項が読み取れる。

(ウ)引用発明1
以上、技術事項aないしfを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「 ドライバ及びレシーバ回路10において、
前記ドライバ及びレシーバ回路10は少なくとも出力端子101、102、電流測定装置12および電流制限回路16を有しており、
前記出力端子101、102は、2つの線路を備える配線接続30をサテライト回路20に接続し、
電流測定装置12は、サテライト回路20によって低電流レベルI1又は高電流レベルI2となるよう変調され符号化された信号を表す、配線接続30を介して流れる電流Ioutを検出し、
前記電流制限回路16は、配線接続30での短絡時に、電流Ioutを上限値I_limに制限し、
前記ドライバ及びレシーバ回路10は、前記電流Ioutが第1の期間T1より長い間、所定のしきい値より上にある場合に、エラーを示し、
前記第1の期間T1は、データブロック期間Tdよりも長い、
ことを特徴とするドライバ及びレシーバ回路。」

イ 引用文献2
(ア)記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2001-39263号公報(平成13年2月13日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審が付した。)。
a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は乗員保護装置用制御装置に関するものであり、特に、電源回路の保護に関するものである。」

b「【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明をエアバッグ装置用制御装置に適用した場合を例に取り、図面に基づいて詳細に説明する。図1に、乗員保護装置たるエアバッグ装置10およびエアバッグ装置用制御装置12を概略的に示す。エアバッグ装置用制御装置12は、中央装置14,サテライト装置16,通信装置18,電流検出器20および電流供給抑制装置22を含む。
【0007】中央装置14は、フロアトンネル上であって、車両のほぼ中央に設けられ、電源回路26,マイクロコンピュータ28(以下、マイコン28と略称する),点火回路30およびGセンサ32を含む。電源回路26には、電源としてのバッテリ34から電流が供給される。電流は、イグニッションスイッチ36が運転者によってON,OFFされることにより電源回路26に供給され、あるいは供給が遮断される。電源回路26の電流により、マイコン28,点火回路30,Gセンサ32が作動させられる。」

c「【0009】通信装置18は、電流検知回路44,送信回路46および受信回路48を含む。電流検知回路44および受信回路48は中央装置14と共に設けられ、送信回路46はサテライト装置16と共に設けられており、通信装置18は中央装置14とサテライト装置16との間の電流通信を行う。受信回路48が送信回路46から受信した信号は、マイコン28に供給される。
【0010】電流検出器20は、過大電流検知回路50を含み、中央装置14と共に設けられており、出力信号をマイコン28に供給する。電流供給抑制装置22は保護回路52を含み、中央装置14と共に設けられている。保護回路52はマイコン28により制御され、後述するように、電源回路26の電流が過大なとき、サテライト装置16への電流供給を遮断して電源回路26を保護する。
【0011】サテライト装置16は、本実施形態においては2つ設けられ、中央装置14に対して、車両前部であって、左右のサイドフレームにそれぞれ設けられている。中央装置14とサテライト装置16とは離れて設けられているのであり、各サテライト装置16は、電源回路56,マイクロコンピュータ58(以下、マイコン58と略称する),衝撃センサたるGセンサ60を含み、電源線62および接地線64によって中央装置14に電気的に接続されている。なお、通信装置18,電流検出器20,電流供給抑制装置22および電源回路26は、2つのサテライト装置16の各々について設けられているが、図1には、一方のサテライト装置16、その一方のサテライト装置16について設けられた通信装置18等、ならびにマイコン28およびエアバッグ装置10が図示されている。
【0012】電源回路26には、電源線62により、前記電源回路26から電流が供給され、マイコン58およびGセンサ60は電源回路56の電流により作動する。Gセンサ60は、本実施形態においては減速度センサにより構成されており、車両の衝突時にサテライト装置16に加えられる衝撃を減速度により検知する。前記通信装置18の送信回路46は、マイコン58により制御される。
【0013】電源回路26,電流検出器20,電流供給抑制装置22,受信回路48,送信回路46を図2に基づいて詳細に説明する。送信回路46は、スイッチング素子68を備えている。スイッチング素子68は、例えば、電界効果トランジスタによって構成されており、スイッチング動作により、中央装置14から電源線62によって供給される電流の入力部を接地線64により断続的に短絡させ、サテライト装置16に供給される電流を増大させる。スイッチング素子68が導通状態になると、サテライト装置16への供給電流は通常より増大し、遮断状態になると通常の大きさに戻る。通常の供給電流は、例えば、サテライト装置16の作動に要する電流である。この電流を作動電流と称し、電流通信のために増大させられた電流を通信実行電流と称する。
【0014】この供給電流の増減が電流検知回路44および受信回路48によって検知され、サテライト装置16からの情報が受信される。受信回路48は、比較回路74および反転回路76を含み、比較回路74には、ミラー回路78からの電流に基づく電圧が入力され、基準電圧たる通信検知電圧と比較される。ミラー回路78は、電流検知回路44の電流を、電源線62に供給される電流に対して一定の比率にするものであり、比較回路74への入力電圧は供給電流に1対1に対応している。このミラー回路78により電流を比較回路74に入力させる部分が電流検知回路44を構成している。通信検知電圧は、バッテリ34から供給される電流を一定の大きさに制限する定電流回路80および抵抗82によって決まる。通信検知電圧は、電流通信の実行を検知するための通信検知電流に対応している。通信検知電流は、作動電流より大きく、通信実行電流より小さい。
【0015】比較回路74は、通信検知電圧と入力電圧とを比較し、その出力は反転回路76により反転されて出力端子84からマイコン28へ出力される。供給電流が通信検知電流より大きく、入力電圧が通信検知電圧より大きければ、ロー信号が出力され、通信検知電圧以下であればハイ信号が出力される。出力端子84からの信号の変化により、マイコン28において電流通信の有無がわかるとともに、サテライト装置16のGセンサ60の検出値が伝達される。サテライト装置16のマイコン58において、Gセンサ60の検出値に基づいてエアバッグ装置10を作動させるほどの衝撃が加えられたか否かを判定し、その判定結果をマイコン28に伝達するようにしてもよい。
【0016】ミラー回路78からの電流はまた、分けられて、その電流により得られる電圧が出力端子86からマイコン28へ出力される。マイコン28において、供給電流の大きさがわかるようにされているのであり、電流検知回路44の電流に基づく電圧をマイコン28へ出力する部分が過大電流検知回路50を構成し、電流検知回路44と共に電流検出器20を構成している。電流検出器20は、通信装置18と電流検知回路44を共用しているのである。
【0017】電源回路26は、定電流回路96を有する。定電流回路96は、ミラー回路78より上流側に設けられており、バッテリ34から出力端子100を経て電源線62へ供給される電流に対して制限機能を備えている。定電流回路96は、供給電流の上限を制限するとともに、供給電流が上限値、すなわち予め定められた最大電流である状態が設定時間以上継続した場合に、供給電流を最大電流より小さい制限電流まで減少させる機能を有し、供給電流が最大電流以上の状態となる原因が消滅し、電源線62の電流が制限電流より小さくなれば、供給電流を制限電流に減少させない状態であって、電流が過大に増大するのであれば、その上限を最大電流に制限することとなる状態に自然に復帰する機能を有する。最大電流が設定電流であり、通信実行電流より大きく、供給電流が過大であることがわかり、長くは継続できないが、ノイズを除去する程度には継続し得る大きさに設定されている。供給電流が過大でなく、正常な大きさであれば、供給電流は最大電流より小さい範囲で変化するため、定電流回路96は供給電流を制限せず、供給電流が通信実行電流を越えて過大に増大するとき、最大電流に制限する。また、制限電流は、本実施形態においては、前記通信実行電流と同じ大きさとされており、最大電流より小さく、サテライト装置16の作動に要する電流より大きい。定電流回路96の供給電流を制限電流に減少させる状態が、〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の (2)項に記載の作用状態であり、供給電流を減少させず、供給電流が過大に増大するのであれば、その上限を最大電流に制限することとなる状態が非作用状態である。」

d「【0019】次に、作動を説明する。イグニッションスイッチ36がONにされれば、中央装置14の電源回路26に電流が供給されるとともに、電源線62によりサテライト装置16に電流が供給される。そして、衝突等により車両に衝撃が加えられれば、マイコン58は送信回路46を制御してGセンサ60の検出値をマイコン28へ伝達する。スイッチング素子68を導通状態と遮断状態とに切り換え、図4に示すように、サテライト装置16への供給電流を増減させるのである。供給電流の増減は受信回路48により検知され、Gセンサ60の検出値がマイコン28に伝達される。
【0020】車両に加えられた衝撃等により電源線62の噛み込み等が生じ、短絡等が生ずれば、図4に示すように、供給電流が増大し、定電流回路96により最大電流に制限される。供給電流が最大電流である状態が設定時間である第1設定時間t1以上継続すれば、定電流回路96は供給電流を制限電流まで減少させ、電源回路26の過熱を遅らせつつ、供給電流が過大となる原因が消滅することを待つ。第1設定時間t1 は、ノイズによる過大電流の継続時間より長く、例えばマイクロ秒単位の長さに設定されている。そのため、供給電流が最大電流に制限される状態がノイズによって生じたのであれば、その状態が第1設定時間t1 以上継続することはなく、定電流回路96は作用状態にならず、供給電流が制限電流まで減少させられることはない。
【0021】マイコン28は、過大電流検知回路50からの出力に基づいて供給電流および定電流回路96の作動を監視し、供給電流が制限電流まで減少させられる状態が設定時間続けば電流供給の遮断を行う。以下、供給電流が過大である場合のマイコン28の作動を図3を用いて説明する。
【0022】マイコン28においては、電源投入と同時に電源回路保護ルーチンが実行されており、ステップ1(以下、S1と略記する。)においては、フラグがセットされているか否かの判定が行われる。フラグはRAMに設けられており、初期設定においてリセットされている。そのため、S1の判定結果はNOになってS2が実行され、供給電流が電流過大検知電流より大きいか否かの判定が行われる。電流過大検知電流は、最大電流より小さく、制限電流より大きく設定されており、供給電流が電流過大検知電流より大きいか否かを検出することにより、定電流回路96において供給電流が最大電流に制限されて設定電流になっているか否かを検出する。マイコン28は過大電流検知回路50からの入力により、供給電流の大きさがわかり、S2の判定はその入力に基づいて行われる。供給電流が電流過大検知電流以下であれば、S2の判定結果はNOになり、ルーチンの実行は終了する。
【0023】供給電流が電流過大検知電流より大きくなれば、S2の判定結果がYESになってS3が実行され、供給電流が過大な状態が設定時間t1 ´続いたか否かの判定が行われる。設定時間t1 ´は、前記第1設定時間t1 より長く、第1設定時間t1 の経過を確実に検出し得る長さに設定されている。設定時間t1 ´は、定電流回路96の作動監視時間であると考えることができる。S3の判定結果は当初はNOであり、ルーチンの実行は終了する。供給電流が電流過大検知電流以下になることなく、設定時間t1 ´が経過すれば、S3の判定結果はYESになってS4が実行され、フラグがセットされる。供給電流が最大電流である状態が第1設定時間t1 続き、定電流回路96により供給電流が減少させられることが記憶されるのである。」

(イ)引用文献2に記載された技術事項
a 段落0007の記載から、中央装置14は、電源回路26を含むことが分かる。
また、段落0017の記載から、電源回路26は、定電流回路96を有することが分かる。
以上により、「中央装置14は定電流回路96を有している。」という技術事項が読み取れる。

b 段落0011の記載から、「2つのサテライト装置16が、電源線62および接地線64によって中央装置14に接続されている。」という技術事項が読み取れる。

c 段落0013、及び、段落0014の記載から、中央装置14から電源線62によってサテライト装置16に供給される供給電流の増減が電流検知回路44および受信回路48によって検知され、サテライト装置16からの情報が受信されることが分かる。
段落0009の記載から、電流検知回路44および受信回路48は中央装置14と共に設けられること、及び、中央装置14とサテライト装置16との間で電流通信が行われることが分かる。
以上のことから、「中央装置14は、中央装置14から電源線62によってサテライト装置16に供給される供給電流の増減を検知して、サテライト装置16からの情報を受信する。」という技術事項が読み取れる。

d 段落0020の記載から、定電流回路96は、電源線62に短絡が生ずれば、供給電流を最大電流に制限し、供給電流が最大電流である状態が第1設定時間t1以上継続すれば、供給電流を制限電流まで減少させ、電源回路26の過熱を遅らせることが分かる。
換言すれば、「定電流回路96は、短絡時に供給電流を、第1設定時間t1においては最大電流に制限し、第1設定時間t1の後には制限電流に制限することで、電源回路26の過熱を遅らせる。」という技術事項が読み取れる。

e 上記dから、短絡時の供給電流への制限が、時間によって変化することになるのは明らかである。
よって、「定電流回路96は、電源線62の短絡時の供給電流を時間によって変化して制限する。」という技術事項が読み取れる。

f 段落0017の記載から、制限電流は、最大電流より小さく、通信実行電流と同じ大きさであることが分かる。
また、段落0013の記載から、通常の供給電流を作動電流と称し、電流通信のために増大させられた電流を通信実行電流と称することが分かる。これは、通信実行電流が差動電流よりも大きいことを意味する。
以上のことから、「制限電流は、最大電流より小さく、差動電流よりも大きい。」という技術事項が読み取れる。

g 段落0020の記載から、定電流回路96は、供給電流を最大電流に制限し、供給電流が最大電流である状態が第1設定時間t1以上継続すれば、供給電流を制限電流まで減少させ、電源回路26の過熱を遅らせること、及び、供給電流が最大電流である状態がノイズによって生じたのであれば、その状態が第1設定時間t1 以上継続することはないことが分かる。
換言すれば、定電流回路96は、供給電流が最大電流である状態から制限電流まで減少させるまでに、第1設定時間t1だけ待つことになる。そして、第1設定時間t1だけ待つのは、「供給電流が最大電流である状態」がノイズではなく電源線62の短絡によって生じたことを確認するためであることは、当業者にとって明らかである。
以上のことから、「定電流回路96は、供給電流を最大電流に制限し、電源線62の短絡が確認された場合に、供給電流を制限電流まで減少させ、電源回路26の過熱を遅らせる。」という技術事項が読み取れる。

(ウ)引用発明2-1
上記技術事項aないしc、f及びgを総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2-1」という。)が記載されていると認められる。
「 中央装置14において、
前記中央装置14は定電流回路96を有しており、
2つのサテライト装置16が、電源線62および接地線64によって前記中央装置14に接続されており、
前記中央装置14は、前記中央装置14から前記電源線62によって前記サテライト装置16に供給される供給電流の増減を検知して、前記サテライト装置16からの情報を受信し、
前記定電流回路96は、前記供給電流を最大電流に制限し、前記電源線62の短絡が確認された場合に、前記供給電流を制限電流まで減少させ、電源回路26の過熱を遅らせ、
前記制限電流は、前記最大電流より小さく、作動電流よりも大きい、
ことを特徴とする中央装置。」

(エ)引用発明2-2
また、上記技術事項aないしfを総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2-2」という。)が記載されていると認められる。
「 中央装置14において、
前記中央装置14は定電流回路96を有しており、
2つのサテライト装置16が、電源線62および接地線64によって前記中央装置14に接続されており、
前記中央装置14は、前記中央装置14から前記電源線62によって前記サテライト装置16に供給される供給電流の増減を検知して、前記サテライト装置16からの情報を受信し、
前記定電流回路96は、前記電源線62の短絡時の前記供給電流を時間によって変化して制限し、
前記定電流回路96は、短絡時に前記供給電流を、第1設定時間t1においては前記最大電流に制限し、前記第1設定時間t1の後には前記制限電流に制限することで、電源回路26の過熱を遅らせ、
前記制限電流は、前記最大電流より小さく、作動電流よりも大きい、
ことを特徴とする中央装置。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。

(ア)本願明細書の段落0013の記載を参照すると、本件補正発明における「センサ(3)」は、センサエレメント5を有し、測定結果に依存してセンサ信号を変調するものである。
一方、引用文献1の[0006]及び[0008]の記載を参照すると、サテライト回路20はセンサ26を備えており、センサ信号S26に基づき電流信号を変調するものである。
よって、引用発明1の「サテライト回路20」は、本件補正発明の(少なくとも1つの)「センサ(3)」に相当する。

(イ)引用文献1の[0009]の記載を参照すると、ドライバ及びレシーバ回路10は、自動車の乗員保護システムのための制御信号を生成している。また、[0037]及び[0039]の記載を参照すると、ドライバ及びレシーバ回路10は制御及び評価回路14を有しており、これによって電圧源13を制御している。つまり、引用発明1におけるドライバ及びレシーバ回路10は、制御を行う装置である。
次に、本願明細書の段落0011の記載を参照すると、本件補正発明における「センサシステム(1)」は、「制御装置(2)」(すなわち、制御を行う装置)及び「センサ(3)」から形成されていることが分かる。
すると、引用発明1の「ドライバ及びレシーバ回路10」及び「サテライト回路20」(本件補正発明の「センサ(3)」に相当)は、センサシステムを形成しているということができる。
したがって、引用発明1の「ドライバ及びレシーバ回路10」は、本件補正発明の(センサシステム(1)のための)「制御装置(2)」に相当する。

(ウ)引用発明1の「電流制限回路16」は、本件補正発明の「電流制限回路(10)」に相当する。

(エ)一般に、「インターフェース」という語は多義的であるが、例えば、機器や装置が他の機器や装置などと交信し、制御を行う接続部分のことを意味する(新村 出,「広辞苑」,第六版,株式会社岩波書店,平成20年1月11日,第221ページ)。
そこで、引用文献1の[0008]の記載を参照すると、配線接続30は、ドライバ及びレシーバ回路10とサテライト回路20とを接続するものであるから、これをインターフェースということができる。しかも、配線接続30は、そこに流れる電流によって信号を表すものである。
してみると、引用発明1の(2つの線路を備える)「配線接続30」は、本件補正発明の(電流インターフェースとして少なくとも2つの線路(4a,4b)を備える)「データ接続部(4)」に相当する。

(オ)本件補正発明において、「インターフェース電流(I)」とは、データ接続部(4)を流れる電流のことである。そして、その「インターフェース電流(I)」を「センサ(3)」が電流変調することで「信号(14)」を形成する。
一方、引用発明1の「電流Iout」は、「配線接続30」(本件補正発明の「データ接続部(4)」に相当)を介して流れる電流であり、それを「サテライト回路20」(本件補正発明の「センサ(3)」に相当)が変調することで信号を表している。
してみると、引用発明1の「電流Iout」は、本件補正発明の「インターフェース電流(I)」に相当する。
また、符号化された信号とはデジタル信号にほかならない。
すると、引用発明1の(配線接続30を介して流れる電流Ioutが表すサテライト回路20によって低電流レベルI1又は高電流レベルI2となるよう変調され符号化された)「信号」は、本件補正発明の(インターフェース電流(I)の電流変調によって形成された、デジタルである)「信号(14)」に相当する。

(カ)本件補正発明において、「接続装置(9)」は「制御装置(2)」が有するものであり、データ接続部(4)をセンサ(3)に接続し、また、信号(14)を受信する。
一方、引用発明1において、「出力端子101、102」及び「電流測定装置12」は、いずれも「ドライバ及びレシーバ回路10」(本件補正発明の「制御装置(2)」に相当)が有するものである。
さらに、「出力端子101、102」は「配線接続30」(本件補正発明の「データ接続部(4)」に相当)を「サテライト回路20」(本件補正発明の「センサ(3)」に相当)に接続するものである。
また、「電流測定装置12」は、電流Ioutを検出するものであるところ、この電流Ioutは「サテライト回路20によって変調され符号化された信号」を表しているのであるから、「電流測定装置12」は、サテライト回路20によって低電流レベルI1又は高電流レベルI2となるよう変調され符号化された「信号」(本件補正発明の「信号(14)」に相当)を受信することになる。
以上のことから、以下のaないしcがいえる。
a 引用発明1の「出力端子101、102」及び「電流測定装置12」は、本件補正発明の「接続装置(9)」に相当する。

b 引用発明1の「前記出力端子101、102は、2つの線路を備える配線接続30をサテライト回路20に接続し、」は、本件補正発明の「前記接続装置(9)は、電流インターフェースとして少なくとも2つの線路(4a,4b)を備えるデータ接続部(4)を少なくとも1つのセンサ(3)に接続し、」に相当する。

c 引用発明1の「電流測定装置12は、サテライト回路20によって低電流レベルI1又は高電流レベルI2となるよう変調され符号化された信号を表す、配線接続30を介して流れる電流Ioutを検出し、」は、本件補正発明の「前記接続装置(9)は、前記センサ(3)から前記データ接続部(4)を介して、インターフェース電流(I)の電流変調によって形成された信号(14)を受信し、」に相当する。

(キ)引用文献1の[0010]の記載及びFIG 1を参照すると、「短絡」は、配線接続30間の短絡や、配線接続30と電源電位Vsの端子との短絡のことである。つまり、この「短絡」は、配線接続30が備える2つの線路のうち、少なくとも1つの線路での短絡であることが分かる。
してみると、引用発明1の「配線接続30での短絡時」は、本件補正発明の「前記データ接続部(4)の少なくとも1つの線路(4a,4b)での短絡時」に相当する。
また、引用発明1の「電流Ioutを上限値I_limに制限し、」は、短絡時の電流を制限するということであるから、本件補正発明の「短絡電流(I_2,I_3)を制限し、」に相当する。

(ク)引用発明1の「上限値I_lim」と、本件補正発明の「上側の短絡電流値(I_2)」とは、いずれも電流の上限である。
よって、引用発明1の「上限値I_lim」は、本件補正発明の「上側の短絡電流値(I_2)」に相当する。

(ケ)引用発明1の「低電流レベルI1」と、本件補正発明の「センサ定常時電流(I_0)」とは、いずれも変調された電流の下限である。
よって、引用発明1の「低電流レベルI1」は、本件補正発明の「センサ定常時電流(I_0)」に相当する。

イ 以上の(ア)ないし(キ)から、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「 センサシステム(1)のための制御装置(2)において、
前記制御装置(2)は少なくとも接続装置(9)および電流制限回路(10)を有しており、
前記接続装置(9)は、電流インターフェースとして少なくとも2つの線路(4a,4b)を備えるデータ接続部(4)を少なくとも1つのセンサ(3)に接続し、
前記接続装置(9)は、前記センサ(3)から前記データ接続部(4)を介して、インターフェース電流(I)の電流変調によって形成された信号(14)を受信し、
前記電流制限回路(10)は、前記データ接続部(4)の少なくとも1つの線路(4a,4b)での短絡時に、短絡電流(I_2,I_3)を制限し、
前記信号(14)はデジタルである、
ことを特徴とする制御装置。」

(相違点)
本件補正発明の「電流制限回路(10)」が、
短絡電流(I_2,I_3)を時間によって変化して制限し、短絡時にインターフェース電流(I)を、第1の期間(t1-t0)においては上側の短絡電流値(I_2)に制限し、第1の期間(t1-t0)の後には下側の短絡電流値(I_3)に制限し、下側の短絡電流値(I_3)は、上側の短絡電流値(I_2)より小さく、センサ定常時電流(I_0)よりも大きく、第1の期間(t1-t0)は、前記信号(14)の信号幅(Δt)の少なくとも10倍である
のに対し、引用発明1の「電流制限回路16」は、そのように時間によって変化する制限を行わない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア まず、引用発明1及び引用発明2-1について、後の検討に必要な整理をしておく。
(ア)引用発明1及び引用発明2-1は、いずれもエアバッグの制御に用いられる装置である点で共通する(引用文献1の[0006]の記載、及び、引用文献2の段落0006の記載を参照)。

(イ)引用発明2-1の「中央装置14」は、マイクロコンピュータ28等を有して制御のために用いられるものである(引用文献2の段落0007の記載を参照)。
よって、引用発明2-1の「中央装置14」と、引用発明1の「サテライト回路20」とは、いずれも制御装置である点で共通する。

(ウ)引用発明2-1の「サテライト装置16」はGセンサ60を有している(引用文献2の段落0011の記載を参照)。
よって、引用発明2-1の「サテライト装置16」と、引用発明1の「サテライト回路20」とは、いずれもセンサである点で共通する。

(エ)引用発明2-1の「電源線62および接地線64」と、引用発明1の「配線接続30」とは、いずれも制御装置とセンサとを接続する線路である点で共通する。

(オ)引用発明2-1の「定電流回路96」と、引用発明1の「電流制限回路16」とは、いずれも短絡時に電流を制限するための回路である点で共通する。

(カ)引用発明2-1の「供給電流」と、引用発明1の「電流Iout」と、本件補正発明の「インターフェース電流(I)」とは、いずれも制御装置とセンサとを接続する線路を流れる電流である点で共通する。
また、引用発明2-1の「供給電流」は、本件補正発明の「インターフェース電流(I)」に相当する。

(キ)引用発明1の「上限値I_lim」と、引用発明2-1の「最大電流」と、本件補正発明の「上側の短絡電流値(I_2)」とは、いずれも電流の上限である。
また、引用発明2-1の「最大電流」は、本件補正発明の「上側の短絡電流値(I_2)」に相当する。

(ク)引用発明1の「低電流レベルI1」と、引用発明2-1の「作動電流」と、本件補正発明の「センサ定常時電流(I_0)」とは、いずれも変調された電流の下限である。
また、引用発明2-1の「作動電流」は、本件補正発明の「センサ定常時電流(I_0)」に相当する。

(ケ)引用発明2-1の「制限電流」と、本件補正発明の「下側の短絡電流値(I_3)」は、いずれも制限された電流であって上限よりも低いものである。
よって、引用発明2-1の「制限電流」は、本件補正発明の「下側の短絡電流値(I_3)」に相当する。

イ 引用発明1において、「第1の期間T1」は、「データブロック期間Td」よりも長い。「データブロック期間Td」とは、引用文献1の[0008]の記載を参照するに、「データブロック」([0008]では「データパケット」)の個々の情報シンボルが連続する時間である。すると、「第1の期間T1」が、一つの情報シンボルすなわち「サテライト回路20によって変調され符号化された信号」の信号幅に、データブロックを構成する情報シンボルの数を乗じた期間よりも長いことは、当業者が容易に認識し得ることである。
してみると、「第1の期間T1」は、データブロックを構成する「サテライト回路20によって変調され符号化された信号」の数に応じて当業者が適宜定め得る程度の設計的事項というべきであるから、これを信号の10個分、すなわち、信号幅の少なくとも10倍と定めることに格別の困難性は存しない。

ウ 上記アの(ア)ないし(オ)から分かるように、引用発明1及び引用発明2-1は、いずれもエアバッグの制御に用いられ、制御装置と、センサと、両者を接続する線路と、短絡時に電流を制限するための回路とを有する装置である。
また、引用文献1の[0010]にも記載されているように、短絡時の過大電流から装置を保護することは、当業者にとって周知の課題である。
さて、引用発明1において、「ドライバ及びレシーバ回路10」は、配線接続30を介して流れる電流Ioutが第1の期間T1より長い間、所定のしきい値より上にある場合に、エラーを示す。「エラー」が、配線接続30での短絡が確認されたことを意味することは明らかである。
してみると、短絡時の過大電流から装置を保護する目的で、引用発明1に対して、電源回路の過熱を遅らせるために引用発明2-1を適用し、引用発明1において「ドライバ及びレシーバ回路10」がエラーを示した場合、すなわち、短絡が確認された場合に、「電流Iout」(引用発明2-1では「供給電流」)を、「上限値I_lim」(引用発明2-1では「最大電流」)より小さく、「低電流レベルI1」(引用発明2-1では「作動電流」)よりも大きい「制限電流」まで減少させるよう構成することに格別の困難性は存しない。
すると、結果的に、引用発明1の「電流制限回路16」は、短絡電流を時間によって変化して制限することとなり、また、「第1の期間T1」は、本件補正発明の(短絡時にインターフェース電流(I)が上側の短絡電流値(I_2)に制限される)「第1の期間(t1-t0)」に相当するものとなる。
なお、引用発明1において、「第1の期間T1」には、「電流Iout」が「上限値I_lim」に達していない時間帯が含まれているが、このような時間帯においても「電流Iout」の取り得る上限が「上限値I_lim」であることに変わりないので、やはり「電流Iout」は「上限値I_lim」に制限されているといえる。

エ 上記アないしウを総合すると、引用発明1において、
「電流制限回路16」(本件補正発明の「電流制限回路(10)」に相当)が、
短絡時の「電流Iout」、すなわち、短絡電流を時間によって変化して制限し、
短絡時に「電流Iout」(本件補正発明の「インターフェース電流(I)」に相当)を、「第1の期間T1」(本件補正発明の「第1の期間(t1-t0)」に相当)においては「上限値I_lim」(本件補正発明の「上側の短絡電流値(I_2)」に相当)に制限し、「第1の期間T1」の後には「制限電流」(本件補正発明の「下側の短絡電流値(I_3)」に相当)に制限し、
「制限電流」は、「上限値I_lim」より小さく、「低電流レベルI1」(本件補正発明の「センサ定常時電流(I_0)」に相当)よりも大きく、
「第1の期間T1」を「信号」(本件補正発明の「信号(14)」に相当)の信号幅の少なくとも10倍とする、
ように構成することは、当業者が容易になし得たことである。

オ そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用発明2-1の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

カ したがって、本件補正発明は、引用発明1及び引用発明2-1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正却下の決定のむすび
上記のとおり、本件補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年1月6日に提出された手続補正書による補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成26年4月10日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用文献2、それらの記載事項、及び、引用発明1ないし引用発明2-2は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明における「少なくとも10倍」を「数倍」としたものである。
すると、本願発明と引用発明1とは、上記第2の[理由]2(3)イに挙げた、本件補正発明と引用発明1との一致点と同様の点で一致する一方、以下の点で相違する。
(本願発明と引用発明1との相違点)
本願発明の「電流制限回路(10)」が、
短絡電流(I_2,I_3)を時間によって変化して制限し、短絡時にインターフェース電流(I)を、第1の期間(t1-t0)においては上側の短絡電流値(I_2)に制限し、第1の期間(t1-t0)の後には下側の短絡電流値(I_3)に制限し、下側の短絡電流値(I_3)は、上側の短絡電流値(I_2)より小さく、センサ定常時電流(I_0)よりも大きく、第1の期間(t1-t0)は、前記信号(14)の信号幅(Δt)の数倍である
のに対し、引用発明1の「電流制限回路16」は、そのように時間によって変化する制限を行わない点。

イ 本願発明と引用発明1との相違点について検討する。
(ア)上記第2の[理由]2(4)アの(ア)ないし(ケ)において、引用発明2-1と本件補正発明とについて述べたことは、引用発明2-2と本願発明とについても同様に当てはまる。

(イ)引用発明2-2の「第1設定時間t1」は、短絡時の「供給電流」(本願発明の「インターフェース電流(I)」に相当)を「最大電流」(本願発明の「上側の短絡電流値(I_2)」に相当)に制限する時間であるから、本願発明の「第1の期間(t1-t0)」に相当する。

(ウ)引用発明2-2の「第1設定時間t1」が、信号幅、すなわち、供給電流が増加している時間の何倍であるかは、具体的に明らかでない。
もっとも、本願発明にもある「数倍」とは、必ずしも整数倍のみを指す概念ではなく、任意の正の実数倍をも包含するものと考えられる。
してみると、引用発明2-2の「第1設定時間t1」もまた、信号の信号幅の「数倍」であるといえる。

(エ)引用発明1及び引用発明2-2は、いずれもエアバッグの制御に用いられ、制御装置と、センサと、両者を接続する線路と、短絡時に電流を制限するための回路とを有する装置である。
また、引用文献1の[0010]にも記載されているように、短絡時の過大電流から装置を保護することは周知の課題である。
してみると、短絡時の過大電流から装置を保護する目的で、引用発明1に対して、電源回路の過熱を遅らせるために引用発明2-2を適用し、引用発明1において、
「電流制限回路16」(本願発明の「電流制限回路(10)」に相当)が、
短絡時の「電流Iout」、すなわち、短絡電流を時間によって変化して制限し、
短絡時に「電流Iout」(本願発明の「インターフェース電流(I)」に相当)を、「第1設定時間t1」(本願発明の「第1の期間(t1-t0)」に相当)においては「上限値I_lim」(本願発明の「上側の短絡電流値(I_2)」に相当)に制限し、「第1設定時間t1」の後には「制限電流」(本願発明の「下側の短絡電流値(I_3)」に相当)に制限し、
「制限電流」は、「上限値I_lim」より小さく、「低電流レベルI1」(本願発明の「センサ定常時電流(I_0)」に相当)よりも大きく、
「第1設定時間t1」を「信号」(本願発明の「信号(14)」に相当)の信号幅の数倍とする、
ように構成することは、当業者が容易になし得たことである。

(オ)そして、上記本願発明と引用発明1との相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用発明2-2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(カ)したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2-2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-25 
結審通知日 2015-09-28 
審決日 2015-10-09 
出願番号 特願2011-530431(P2011-530431)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01R)
P 1 8・ 575- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳 重幸関根 洋之  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 酒井 伸芳
堀 圭史
発明の名称 センサシステムのための制御装置、センサシステム、およびセンサシステムにおける信号を伝送するための方法  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  

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