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審決分類 |
審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L |
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管理番号 | 1311725 |
審判番号 | 不服2014-14358 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-23 |
確定日 | 2016-02-29 |
事件の表示 | 特願2011-546674「ポリカーボネート成形組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月29日国際公開、WO2010/083974、平成24年7月12日国内公表、特表2012-515816〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 本願は、平成22年1月19日(パリ条約による優先権主張 2009年1月23日 ヨーロッパ特許庁(EP))を国際出願日とする特許出願であって、平成26年3月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲の記載に係る手続補正書が提出され、平成26年9月24日付けで特許法第162条の規定による審査における拒絶理由(以下、「本件拒絶理由」という。)及び特許法第39条第6項に基づく協議指令が通知され、平成27年1月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが協議指令に基づく回答はなく、同年3月13日付けで特許法第164条第3項に基づく報告がなされ、同年9月28日に上申書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?7に係る発明は、平成27年1月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。 「 A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを、A)およびB)の総量に対して52?95重量部、および B)バルク、溶液またはバルク懸濁重合プロセスによって調製された、ゴム変性グラフトポリマーを、A)およびB)の総量に対して5?48重量部、 0を超えそして4ppm以下の量のリチウム、および それぞれ2.8ppm以上の量のナトリウムおよび/またはカリウム、 を含み、 但し、ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が、それぞれ50ppmを超えないことを条件とする、 熱可塑性成形組成物。」(以下、「本願発明」という。) 第3 本件拒絶理由の概要 本件拒絶理由は、要するに、本願発明は本願と同一の出願人による同日に出願したとみなされる出願(特願2014-149900号。以下「同日出願」という。)に係る発明と同一と認められるから、本件指令書に記載した届出がないときは、本願発明は、特許法39条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 第4 本願が拒絶されるべき理由 1 同日出願に係る発明 本件拒絶理由における同日出願に係る発明の内容は、職権で取り調べたところによれば、平成27年9月30日時点において、特願2014-149900号における平成26年8月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを、A)およびB)の総量に対して52?95重量部、および B)バルク、溶液またはバルク懸濁重合プロセスによって調製された、ゴム変性グラフトポリマーを、A)およびB)の総量に対して5?48重量部、 0を超えそして4ppm以下の量のリチウム、および それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウムおよび/またはカリウム、 を含む、熱可塑性成形組成物。 【請求項2】 リチウムの量が、0を超えそして4ppm以下であり、および ナトリウムおよび/またはカリウムの量が、それぞれ1.5ppmを超え、 但し、ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が、それぞれ100ppmを超えないことを条件とする、 請求項1記載の熱可塑性成形組成物。 【請求項3】 リチウムの含有量が、0.2ppm?3.6ppmである、請求項1または2いずれかに記載の組成物。 【請求項4】 前記ゴム変性グラフトポリマーが、 B.1 B)に対して65?95重量%である、下記混合重合物 B.1.1 ビニル芳香族および環置換ビニル芳香族からなる群から選択される少なくとも1種を、B.1)に対して50?99重量% B.1.2 シアン化ビニル、(メタ)アクリル酸(C_(1)-C_(8))アルキルエステルおよび不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を、B.1)に対して1?50重量%、 の、 B.2 B)に対して5?35重量%である、ガラス転移温度-10℃未満である1種またはそれ以上のグラフトベース、への、グラフト物、 を含む、 請求項1?3いずれかに記載の組成物。 【請求項5】 B.2)が、ポリブタジエンゴムおよびポリブタジエン/スチレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の組成物。 【請求項6】 エマルション重合によって調製されたグラフトポリマーDをさらに含む、請求項1または2記載の組成物。 【請求項7】 成形組成物中における前記リチウムの含有量が、0.3?3.2ppmであり成形組成物中における前記ナトリウムおよび/またはカリウムの含有量が、それぞれ2ppmを超える量であり、および ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が、それぞれ10ppmを超えない量である、 請求項1記載の組成物。 【請求項8】 請求項1?7いずれかに記載の組成物を含む成形品。」 2 同日出願の請求項2に記載の発明(以下、「同日出願発明」という。) 同日出願発明を、請求項1を引用しないものとして記載すると以下のとおりである。 「A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを、A)およびB)の総量に対して52?95重量部、および B)バルク、溶液またはバルク懸濁重合プロセスによって調製された、ゴム変性グラフトポリマーを、A)およびB)の総量に対して5?48重量部、 0を超えそして4ppm以下の量のリチウム、および それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウムおよび/またはカリウム、 但し、ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が、それぞれ100ppmを超えないことを条件とする、 を含む、熱可塑性成形組成物。」 3 本願発明と同日出願発明との対比 本願発明と同日出願発明とを対比すると、 「A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを、A)およびB)の総量に対して52?95重量部、および B)バルク、溶液またはバルク懸濁重合プロセスによって調製された、ゴム変性グラフトポリマーを、A)およびB)の総量に対して5?48重量部、 0を超えそして4ppm以下の量のリチウム、および それぞれ所定量以上の量のナトリウムおよび/またはカリウム、 を含み、 但し、ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が、それぞれ所定量を超えないことを条件とする、 熱可塑性成形組成物。」の点で一致し、以下の点で一応相違している。 <相違点> 含有するナトリウムおよび/またはカリウムの量について、本願発明では下限が「2.8ppm」であり、上限が「50ppm」と特定するのに対して、同日出願発明では、下限が「1.5ppm」であり、上限が「100ppm」と特定する点。 以下、相違点について検討する。 まず、両者は、下限が「2.8ppm」かつ、上限が「50ppm」の数値範囲において重複一致していて、同日出願発明が本願発明を包含する関係になっている。 次に、ナトリウムおよび/またはカリウムの配合量についての本願明細書の記載をみると 「リチウムイオンの含有量が少ない、耐衝撃性が改質されたポリカーボネート組成物は、アルカリの総含有量が比較的高いにもかかわらず、リチウムイオンの含有量が比較的高い比較組成物と比べて、耐加水分解性が有意に優れることを見出した。先行技術の観点からは、これは驚くべきことであり、特に、組成物におけるナトリウムおよび/またはカリウムの含有量がある特定の最小限度を超える場合であっても、組成物の耐加水分解性の点において利点がある。」(段落 【0009】) 「従って本発明は、 ・・・ それぞれ1.5ppmを超える、好ましくは2ppmを超える量の、ナトリウムおよび/またはカリウム、を含む、熱可塑性成形組成物を提供する。 本発明の好ましい実施態様においては、ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が、それぞれ100ppmを超えず、より好ましくは50ppmを超えず、特に好ましくは20ppmを超えず、最も好ましくは10ppmを超えない。 本発明の特に好ましい実施態様においては、組成物のリチウム含有量が0.2?3.6ppmであり、組成物のナトリウムおよび/またはカリウムのそれぞれの含有量が1.5 ppmを超え、そして、ナトリウムおよびカリウム両方の含有量がそれぞれ20ppmを超えない。最も好ましくは、組成物のリチウム含有量が0.3?3.2ppmであり、ナトリウムおよび/またはカリウムのそれぞれの含有量が2ppmを超え、そして、ナトリウムおよびカリウム両方の含有量がそれぞれ10ppmを超えない。」(段落 【0010】?【0012】 「 <イメージ表1> 」(段落 【0071】) また、同日出願の明細書においても全く同じ記載がなされている。 以上の記載から、本願におけるナトリウムおよび/またはカリウムの含有量と同日出願発明におけるナトリウムおよび/またはカリウムの含有量とは、同一の技術的な意義を有するものであり、ナトリウムおよび/またはカリウムの含有量の下限を1.5ppmとするか2.8ppmとするかに、特段の技術的意義を見出すことはできないし、ナトリウムおよび/またはカリウムの含有量の上限を50ppm以下とするか、100ppm以下とするかについても、特段の技術的な意義を見出すことができない。そして、本願発明と同日出願発明は、共通の実施例を有するものであり、共通の技術思想のものであるから、相違点は、同一の技術思想に基づく発明についての、請求項における単なる発明表現上の差異というしかなく、本願発明と同日出願発明とは技術思想として異なるものということはできない。そうすると、相違点は、実質上の相違点とはいえない。 したがって、本願発明は、同日出願発明と同一である。 そして、同日出願は、本願の明細書に記載された発明について分割出願としたものであるから、両者の出願日は同一である。 また、特許法第39条第6項の協議の届出は提出されていないので、特許法第39条第7項の規定により、協議が成立しなかったものとみなされる。 以上のことから、本願発明は、同日出願発明と同一であるから、特許法第39条2項の規定により、特許を受けることができない。 第5 請求人の主張の検討 請求人は、平成27年9月28日付け上申書において、以下の主張を行っている。 「請求人は、当初明細書の表1に記載の実施例3を根拠に、ナトリウムおよび/またはカリウムの含有量の上限値を6.8ppmに減縮し、請求項1に規定するナトリウムおよび/またはカリウムの含有量を2.8ppm?6.8ppmの範囲に限定する補正を行うとともに、分割出願についても、請求項1に請求項2の限定を行い、請求項7を削除する手続補正書を提出する予定でおります。 そして、分割出願においては、上記の補正に基づいて、ナトリウムおよび/またはカリウムの含有量が1.5ppm?100ppmの範囲においても発明の効果が奏されることを明らかにするための追加実験を現在行っており、意見書に添付して実験成績証明書を提出する予定でおります。 本願および分割出願を上記のように補正することによって、特許法第39条第2項違背は解消するものと請求人は考えております。」 上記主張について検討する。 請求人の本願の補正案に係る発明と同日出願に補正案に係る発明とを対比すると、以下の点で相違する。 <相違点2> 含有するナトリウムおよび/またはカリウムの量について、補正案に係る発明では「2.8ppm?6.8ppm」と特定するのに対して、同日出願発明の補正案に係る発明では、「1.5ppm?100ppm」との特定である点。 上記相違点2について検討すると、上記第4における相違点の検討のとおりであって、数値範囲の違いによって、技術思想として異なる発明が特定されているとは認められないから、上記相違点2は実質上の相違点とはいえない。 よって、請求人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであって、本願の請求項1に係る発明は、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件拒絶理由は妥当なものであり、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、この理由によって拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-10-05 |
結審通知日 | 2015-10-06 |
審決日 | 2015-10-19 |
出願番号 | 特願2011-546674(P2011-546674) |
審決分類 |
P
1
8・
4-
WZ
(C08L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 阪野 誠司、車谷 治樹 |
特許庁審判長 |
田口 昌浩 |
特許庁審判官 |
小野寺 務 大島 祥吾 |
発明の名称 | ポリカーボネート成形組成物 |
代理人 | 反町 洋 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 浅野 真理 |