• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1311731
審判番号 不服2015-7968  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-28 
確定日 2016-02-29 
事件の表示 特願2010-270670「透明シート付タッチパネルセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月21日出願公開、特開2012-118936〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成22年12月3日の出願であって、平成26年5月13日付けで拒絶理由が通知され、同年7月15日付けで手続補正がなされたが、平成27年1月30日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成26年7月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
タッチパネルセンサと、タッチパネルセンサの一側に接着層を介して接着された透明シートとからなる透明シート付タッチパネルセンサにおいて、
前記タッチパネルセンサは、基材フィルムと、基材フィルムの一側の面上にパターニングされた第1透明導電体と、を備え、
基材フィルムは、透明なフィルム本体と、フィルム本体の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1アンダーコート層と、第1アンダーコート層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1高屈折率層と、第1高屈折率層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1低屈折率層と、を有し、
前記第1アンダーコート層および前記第1低屈折率層の光屈折率は、前記第1透明導電体および前記第1高屈折率層の光屈折率よりも小さくなっており、
前記第1高屈折率層の光屈折率は、前記第1透明導電体の光屈折率よりも大きくなっており、
前記タッチパネルセンサと前記透明シートとの間に介在された前記接着層の光屈折率は、その光屈折率が1.4?1.8の範囲内となっている
ことを特徴とする透明シート付タッチパネルセンサ。」


3.引用発明

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2010-15861号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は透明プラスチックフィルムからなる基材上に高屈折率層、低屈折率層及び透明導電性薄膜層をこの順で積層した透明導電性フィルムに関するものである。特に静電容量式タッチパネル等のパターニングされた電極フィルムとして用いた場合、透明導電性薄膜層を有する部分と除去された部分での光学特性の差が小さいため、視認性を向上できる透明導電性フィルムに関するものである。」(2頁34?40行)

イ.「【背景技術】
【0002】
透明プラスチックフィルムからなる基材上に、透明でかつ抵抗が小さい薄膜を積層した透明導電性フィルムは、その導電性を利用した用途、例えば、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(ELと略記される場合がある)ディスプレイなどのようなフラットパネルディスプレイや、抵抗膜式タッチパネルの透明電極など、電気、電子分野の用途に広く使用されている。
【0003】
近年、静電容量式のタッチパネルが携帯電話、携帯音楽端末などのモバイル機器に搭載されるケースが増えてきた。このような静電容量式のタッチパネルではパターニングされた導体上に誘電体層を積層した構成を有し、指などでタッチすることにより、人体の静電容量を介して接地される。この際、パターニング電極と接地点との間の抵抗値に変化が生じ、位置入力を認識する。しかしながら従来の透明導電性フィルムを用いた場合、透明導電性薄膜層を有する部分と除去された部分での光学特性の差が大きいため、パターニングが強調され、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置した際に視認性が低下するという問題があった。
【0004】
透明導電性フィルムの透過率または色目を向上させるために、反射防止加工等で用いられている屈折率の異なる層を積層させ光の干渉を利用する方法が提案されている。すなわち、透明導電性薄膜層と基材フィルムの間に屈折率の異なる層を設けて光学干渉を利用する方法が提案されている(特許文献1?3)。
【特許文献1】特開平11-286066号公報
【特許文献2】特許第3626624号公報
【特許文献3】特開2006-346878号公報 しかしながら、これらの特許文献1?3記載の透明導電性フィルムは、透明導電性フィルムとしての視認性の改善はできるものの、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電性薄膜が有る部分と無い部分とでの光学特性の差を小さくすることは考慮されておらず、パターニングした箇所が強調されてしまう。」(2頁41行?3頁18行)

ウ.「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、本発明の目的は、上記の従来の問題点に鑑み、透明導電性薄膜層を有する部分と除去された部分の光学特性の差を小さくすることによって、液晶ディスプレイ等に使用した際に視認性が良好で、かつパターニングが強調されない透明導電性積層フィルムを提供することにある。」(3頁20?25行)

エ.「【0008】
本発明の透明導電性積層フィルムは、透明プラスチックフィルムからなる基材上に、高屈折率層、低屈折率層及び透明導電性薄膜層をこの順に積層した構成を有する。
さらに、上記透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層をパターニングした透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層側に、誘電体層を積層したことを特徴とする透明導電性積層フィルムである。
以下、各層別に詳細に説明する。」(4頁13?19行)

オ.「【0009】
(透明プラスチックフィルムからなる基材)
本発明で用いる透明プラスチックフィルムからなる基材とは、有機高分子をフィルム状に溶融押出し又は溶液押出しをしてフィルム状に成形し、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、熱固定、熱弛緩処理を施したフィルムである。有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーなどが挙げられる。
【0010】
これらの有機高分子のなかで、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが好適である。また、これらの有機高分子は他の有機重合体の単量体を少量共重合してもよいし、他の有機高分子をブレンドしてもよい。
【0011】
本発明で用いる透明プラスチックフィルムからなる基材の厚みは、10?300μmであることが好ましく、より好ましくは70?260μmである。プラスチックフィルムの厚みが10μm未満では機械的強度が不足し、透明導電性薄膜のパターン形成工程でのハンドリングが難しくなるため好ましくない。一方、厚みが300μmを越えると、タッチパネルの厚みが厚くなりすぎるため、モバイル機器などには適さない。」(4頁20行?43行)

カ.「【0012】
本発明で用いる透明プラスチックフィルムからなる基材は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記フィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0013】
また、本発明で用いる透明プラスチックフィルムからなる基材には、高屈折率層との密着性向上、耐薬品性の付与、オリゴマーなどの低分子量物の析出防止を目的として、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層を設けてもよい。
【0014】
前記の硬化型樹脂は、加熱、紫外線照射、電子線照射などのエネルギー印加により硬化する樹脂であれば特に限定されなく、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。生産性の観点からは、紫外線硬化型樹脂を主成分とする硬化型樹脂が好ましい。
【0015】
このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなどから合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。必要に応じて、これらの多官能性の樹脂に単官能性の単量体、例えば、ビニルピロリドン、メチルメタクリレート、スチレンなどを加えて共重合させることができる。
【0016】
また、高屈折率層と硬化物層との付着力を向上するために、硬化物層を更に表面処理することが有効である。具体的な方法としては、グロー放電又はコロナ放電を照射する放電処理法を用いて、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基を増加させる方法、酸又はアルカリで処理する化学薬品処理法を用いて、アミノ基、水酸基、カルボニル基などの極性基を増加させる方法、などが挙げられる。
【0017】
紫外線硬化型樹脂は、通常、光重合開始剤を添加して使用される。光重合開始剤としては、紫外線を吸収してラジカルを発生する公知の化合物を特に限定なく使用することができ、このような光重合開始剤としては、例えば、各種ベンゾイン類、フェニルケトン類、ベンゾフェノン類などを挙げることができる。光重合開始剤の添加量は、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、1?5質量部とすることが好ましい。
【0018】
塗布液中の樹脂成分の濃度は、コーティング法に応じた粘度などを考慮して適切に選択することができる。例えば、塗布液中に紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤の合計量が占める割合は、通常は20?80質量%である。また、この塗布液には、必要に応じて、その他の公知の添加剤、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などのレベリング剤などを添加してもよい。
【0019】
本発明において、調製された塗布液は透明プラスチックフィルムからなる基材上にコーティングされる。コーティング法には特に限定されなく、バーコート法、グラビアコート法、リバースコート法などの従来から知られている方法を使用することができる。
【0020】
また、硬化物層の厚みは0.1?15μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5?10μm、特に好ましくは1?8μmである。硬化物層の厚みが0.1μm未満の場合には、十分に架橋した構造が形成されにくくなるため、耐薬品性が低下しやすくなり、オリゴマーなどの低分子量による密着性の低下もおこりやすくなる。一方、硬化物層の厚みが15μmを超える場合には、生産性が低下する傾向がある。」(4頁44行?5頁41行)

キ.「(高屈折率層)
本発明で用いることのできる高屈折率層の屈折率は1.70?2.50の範囲であり、好ましくは1.9?2.3である。1.70未満の場合、低屈折率層との屈折率差が小さすぎるため、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電性薄膜層を有する部分と有しない部分の光学特性を近づけることが困難となる。一方、屈折率が2.50を越える場合、斜め方向のパターニングの見やすさを低減することが困難となる。高屈折率層の具体的素材としては、TiO2、Nb2O5、ZrO2、Ta2O5、ZnO、In2O3、SnO2等およびこれらの複合酸化物が挙げられる。これらのなかでも産性の観点からZnO、In2O3、SnO2およびこれらの複合酸化物が好ましい。
【0023】
高屈折率層の膜厚は、4?20nmであり、好ましくは、7?15nmである。膜厚が4nm未満の場合、不連続な膜となり、膜の安定性が低下する。一方、膜厚が20nmを超える場合、光の反射が強くなるため、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電性薄膜層を有する部分と有しない部分の光学特性を近づけることが困難となり、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置した際に透明導電性薄膜層のパターニングが見え視認性が低下する。
【0024】
本発明における高屈折率層の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができるが、膜厚のバラツキを低減するという観点からスパッタリング法が好ましい。
スパッタリング法では一般的に金属ターゲットから反応性ガスを導入して金属酸化物を作製する反応性スパッタリング法と酸化物ターゲットから金属酸化物をする方法がある。反応性スパッタリング法においては反応性ガスの流量によって成膜速度が急激に変化する遷移領域が存在する。このため膜厚のバラツキを抑制するには酸化物ターゲットを用いることが好ましい。」(6頁10?35行)

ク.「(低屈折率層)
本発明で用いる低屈折率層の屈折率は1.30?1.60であり、好ましくは1.4?1.5である。屈折率が1.30未満の場合、ポーラスな膜となるため、その上に形成した透明導電性薄膜層の電気特性を低下させてしまう。一方、屈折率が1.60を越える場合、透明導電性薄膜層との光の干渉が弱くなりすぎるため、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電性薄膜層を有する部分と有しない部分の光学特性を近づけることが困難となり、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置した際に透明導電性薄膜層のパターニングが見え視認性が低下する。
屈折率層の具体的素材としては、SiO2、Al2O3などの透明金属酸化物及びSiO2-Al2O3等の複合金属酸化物が挙げられる。
【0025】
低屈折率層の膜厚は、20?50nmであり、好ましくは25?45nmである。50nmを超えると透明導電性薄膜層との光の干渉により、波長依存性が強くなりすぎるため、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電性薄膜層を有する部分と有しない部分の光学特性を近づけることが困難となる。一方20nm未満の場合、透明導電性薄膜層との光の干渉が起こりにくく、透過率を向上することができないため、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電性薄膜層を有する部分と有しない部分の光学特性を近づけることが困難となり、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置した際に透明導電性薄膜層のパターニングが見え視認性が低下する。
【0026】
本発明における低屈折率層の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができるが、膜厚のバラツキを低減するという観点からスパッタリング法が好ましい。一般的にスパッタリングで形成する場合は反応性DC又はACスパッタリング法が用いられる。成膜速度を向上するためにDC又はAC電源の電圧値を一定に保つように反応性ガス流量を制御するインピーダンス制御又は特定元素のプラズマ中での発光強度を一定に保つように反応性ガス流量を制御するプラズマエミッション法が用いられる。」(6頁36行?7頁13行)

ケ.「【0027】
(透明導電性薄膜層)
本発明における透明導電性薄膜としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム-スズ複合酸化物、スズ-アンチモン複合酸化物、亜鉛-アルミニウム複合酸化物、インジウム-亜鉛複合酸化物などが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム-スズ複合酸化物が好適である。
本発明において透明導電性薄膜層を積層して、透明導電性積層フィルムの表面抵抗値を好ましくは50?2000Ω/□、更に好ましくは100?1500Ω/□とすることによって、透明導電性積層フィルムとしてタッチパネルなどに使用できる。表面抵抗値が50Ω/□未満であったり、2000Ω/□を超える場合、タッチパネルの位置認識精度が悪くなり、好ましくない。
【0028】
透明導電性薄膜の膜厚は、4?30nmの範囲が好ましく、更に好ましくは10?25nmである。透明導電性薄膜の膜厚が4nm未満の場合、連続した薄膜になりにくく、良好な導電性が得られにくくなる。一方、透明導電性薄膜の膜厚が30nmよりも厚い場合、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電性薄膜層を有する部分と有しない部分の光学特性を近づけることが困難となる。
【0029】
透明導電性薄膜層は非晶質であることが好ましい。結晶質な透明導電性薄膜層を用いた場合、塩酸などで透明導電性薄膜をパターニングする際に溶けにくいため、加工に時間がかかる、微細なパターニングがきれいにできない等の問題が生じる。
【0030】
非晶質な透明導電性薄膜層を得るために、ドーパント量を調整することが好ましい。例えば、透明導電性薄膜層としてインジウム-スズ複合酸化物を用いる場合、酸化スズの含有率は10?60質量%が好ましく、更に好ましくは20?50質量%である。酸化スズ含有率が10質量%未満の場合、成膜中に結晶化を抑制することが困難となる。一方、酸化スズの含有率が60質量%を超える場合、ターゲットの密度を向上させることが困難となり、生産中に放電異常が発生しやすくなり生産性の観点から好ましくない。
【0031】
また生産性の観点から透明導電性薄膜は高屈折率層と同じ組成であることが好ましい。組成が異なる場合、高屈折率用、透明導電性薄膜用のそれぞれのターゲットおよびカソードが必要となり、設備的にも大掛かりな装置となってしまう。
【0032】
透明導電性薄膜の層構造は、単層構造でもよいし、2層以上の積層構造でもよい。2層以上の積層構造を有する透明導電性薄膜の場合、各層を構成する前記の金属酸化物は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
本発明における透明導電性薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができる。
例えば、スパッタリング法の場合、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素、等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。」(7頁14行?8頁8行)

コ.「【0034】
(屈折率が1.40?1.70の誘電体層(保護層))
本発明において屈折率が1.40?1.70の誘電体層とは、表示体の部材として透明導電性積層フィルムを使用する際に透明導電性薄膜を保護するために積層する保護層としての目的と、指などでタッチした際の静電容量変化を大きくし、位置入力精度を向上させる目的を併せ持つ層である。
屈折率が1.40?1.70の誘電体層としては、例えば、SiO2、Al2O3などの透明金属酸化物及びSiO2-Al2O3等の複合金属酸化物、アクリル、シリコーン、ポリエステル系の樹脂からなる有機物等が用いられる。」(8頁9?17行)

サ.「【0053】
また、雰囲気の酸素分圧をスパッタプロセスモニター(LEYBOLD INFICON社製、XPR2)にて常時観測しながら、インジウム-スズ複合酸化物薄膜中の酸化度が一定になるように酸素ガスの流量計及びDC電源にフィートバックした。以上のようにして、厚さ15nm、屈折率1.96のインジウム-スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を堆積させた。」(11頁1?6行)

シ.「【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の透明導電性積層フィルムは、透明導電性薄膜層のパターニング部と非パターニング部の光学特性の差が小さく、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置した際、視認性に優れるため、静電容量式のタッチパネル用の電極フィルムとして特に好適である。」(12頁28?32行)


上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

a.上記ア.、及び上記シ.の記載によれば、引用例1には、透明導電性積層フィルムを備えるタッチパネルが記載されているといえる。

b.上記エ.の記載よれば、透明導電性積層フィルムは、透明プラスチックフィルムからなる基材上に、高屈折率層、低屈折率層及び透明導電性薄膜層をこの順に積層し、透明導電性薄膜層をパターニングした透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層側に、誘電体層を積層したものであり、さらに、上記カ.の段落【0013】には、透明プラスチックフィルムからなる基材には、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層を設けてもよい、ことが記載されており、また、図1においては、透明プラスチックフィルムからなる基材上に、硬化物層、高屈折率層、低屈折率層、透明導電性薄膜層、誘電体層が、順次積層された透明導電性積層フィルムが記載されているものと認められる。
してみれば、引用例1には、透明導電性積層フィルムは、透明プラスチックフィルム上に、順次、硬化物層、高屈折率層、低屈折率層、透明導電性薄膜層、誘電体層が積層されている、ことが記載されているといえる。

c.上記カ.の段落【0013】には、硬化物層は、高屈折率層との密着性向上、耐薬品性の付与、オリゴマーなどの低分子量物の析出防止を目的とし設けられること、さらに、段落【0014】には、、硬化物層は、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂など硬化型樹脂で構成され、また、段落【0020】には、硬化物層の厚みは0.1?15μmの範囲であることが記載されている。
してみれば、引用例1には、硬化物層は、高屈折率層との密着性向上、耐薬品性の付与、オリゴマーなどの低分子量物の析出防止を目的とし設けられるものであり、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂など硬化型樹脂で構成され、厚みは0.1?15μmである、ことが記載されているといえる。

d.上記キ.の記載によれば、高屈折率層は、屈折率が1.70?2.50の範囲であり、厚みは、4?20nmである、ことが記載されているといえる。

e.上記ク.の記載によれば、低屈折率層は、屈折率が1.30?1.60の範囲であり、厚みは、20?50nmである、ことが記載されているといえる。

f.上記ケ.には、透明導電性薄膜層が、透明導電性薄膜としてはインジウム-スズ複合酸化物からなり、厚みは、4?30nmの範囲であること、さらに、上記サの記載よれば、インジウム-スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜層の屈折率が1.96であることが記載されている。
してみれば、引用例1には、透明導電性薄膜層は、透明導電性薄膜がインジウム-スズ複合酸化物からなり、厚みは、4?30nmの範囲であり、屈折率が1.96である、ことが記載されているといえる。

g.上記コ.には、屈折率が1.40?1.70の誘電体層とは、表示体の部材として透明導電性積層フィルムを使用する際に透明導電性薄膜を保護するために積層する保護層としての目的と、指などでタッチした際の静電容量変化を大きくし、位置入力精度を向上させる目的を併せ持つ層である、と記載されている。
してみれば、引用例1には、誘電体層は、透明導電性薄膜を保護する目的と、指などでタッチした際の静電容量変化を大きくし、位置入力精度を向上させる目的を併せ持つ層であり、屈折率が1.40?1.70である、ことが記載されているといえる。

h.上記シ.には、透明導電性積層フィルムは、透明導電性薄膜層のパターニング部と非パターニング部の光学特性の差が小さく、表示体の前面に配置した際、視認性に優れるている、ことが記載されている。


上記引用例1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、結局、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。

「透明導電性積層フィルムを備えるタッチパネルであって、
該透明導電性積層フィルムは、透明プラスチックフィルム上に、順次、硬化物層、高屈折率層、低屈折率層、透明導電性薄膜層、誘電体層が積層されて、
前記硬化物層は、前記高屈折率層との密着性向上、耐薬品性の付与、オリゴマーなどの低分子量物の析出防止を目的とし設けられるものであり、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂など硬化型樹脂で構成され、厚みは0.1?15μmであり、
前記高屈折率層は、屈折率が1.70?2.50の範囲であり、厚みは、4?20nmであり、
前記低屈折率層は、屈折率が1.30?1.60の範囲であり、厚みは、20?50nmであり、
前記透明導電性薄膜層は、透明導電性薄膜がインジウム-スズ複合酸化物からなり、厚みは、4?30nmの範囲であり、屈折率が1.96であり、
前記誘電体層は、前記透明導電性薄膜を保護する目的と、指などでタッチした際の静電容量変化を大きくし、位置入力精度を向上させる目的を併せ持つ層であり、屈折率が1.40?1.70であり、
前記透明導電性積層フィルムは、前記透明導電性薄膜層のパターニング部と非パターニング部の光学特性の差が小さく、表示体の前面に配置した際、視認性に優れている、
タッチパネル。」


(2)引用例2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第2006/126604号(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

ア.「技術分野
[0001] 本発明は、透明面状体及び透明タッチスイッチに関する。」(1頁3?4行)

イ.「[0003] この透明タッチスイッチは、液晶表示装置やCRTなどの表面に装着して用いられるが、透明面状体に形成された透明導電膜のパターン形状が目立ってしまい、視認性の低下を招いていた。」(1頁12?14行)

ウ.「(第2実施形態)
次に、本発明の第2実態形態について添付図面を参照して説明する。尚、各図面は、構成の理解を容易にするため、模式的に表すと共に、実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されている。
[0076] 図9は、本発明に係る透明タッチスイッチの第2実施形態を示す概略断面図である。この透明タッチスイッチ101は、静電容量式のタッチスイッチであり、透明基板11にアンダーコート層13を介して透明導電膜12が形成された第1の透明面状体1と、透明基板21にアンダーコート層23を介して透明導電膜22が形成された第2の透明面状体2とを備えている。第1の透明面状体1と第2の透明面状体2とは、それぞれの透明導電膜12,22が対向するようにして、粘着層15を介して貼着されている。
[0077] 透明基板11,21は、基材層111,211の表裏面にハードコート層112,112;212,212を備えて構成されている。基材層111,211は、透明性が高い材料からなることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネイト(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアクリル(PAC)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂、シロキサン架橋型アクリルシリコン樹脂などの可撓性フィルムやこれら2種以上の積層体、或いは、ガラス板などを挙げることができる。基材層111,211の厚みは、20?500μm程度が好ましく、ハードコート層112,212の厚みは、3?5μm程度が好ましい。基材層111,211は、剛性を付与するために支持体を貼着してもよい。
[0078] ハードコート層112,212は、耐久性及びアンダーコート層13,23の密着性を高めるために、基材層111,211の表裏面に設けることが好ましいが、いずれか一方であってもよく、更には、ハードコート層112,212を全く設けずに透明基板11,21を構成することも可能である。
[0079] アンダーコート層13,23は、それぞれ低屈折率層13a,23aと、低屈折率層13a,23aよりも光屈折率が高い高屈折率層13b,23bとの積層体から構成されており、低屈折率層13a,23a側に透明導電膜12,22が形成されるように配置され、透明性を向上させている。」(14頁4行?15頁4行)

エ.「[0087] また、本発明者らのシミュレーション結果によれば、粘着層15の屈折率を適宜変更することにより、透明タッチスイッチ101の視認性を更に向上させることができる。このシミュレーションについて以下に説明する。透明基板11,21は、PETフィルムからなる基材層(厚み:188μm、屈折率:1.65)の表裏面にハードコート層(各厚み:5μm、屈折率:1.52)が形成されたものとし、アンダーコート層13,23は、高屈折率層がシリコン錫酸化物膜(厚み:25nm、屈折率:1.7)、低屈折率層が酸化珪素膜(厚み:30nm、屈折率:1.43)とした。また、透明導電膜12,22は、ITO膜(厚み:30nm、屈折率:1.95)とした。粘着層15の厚みは、25μmとした。この粘着層15の屈折率をパラメータにとり、その値を変化させて、透明導電膜12,22が形成された部分と、透明導電膜12,22が形成されていない部分(被覆層16,26が形成されている部分)との反射率(%)の差をシミュレーションにより求めた。反射率の算出は、サイバネットシステム(株)製薄膜設計ソフトウエア(OPTAS-FILM)を用いて行った。このシミュレーションによって算出した反射率(%)の差の絶対値を図10に示す。なお、このシミュレーションにおいては、ナノオーダーの厚みを有するアンダーコート層13,23や透明導電膜12,22等に比べて、極めて厚みの大きい部材である透明基板11,21や粘着層15等の部材については、その厚みを∞(無限大)として反射率の算出を行った。
[0088] 透明導電膜12,22のパターン形状の目立ちにくさは、透明導電膜12,22が形成されている部分と形成されていない部分との反射率差と相関性を有しており、可視領域全体(波長:約400?800nm)における反射率差の絶対値が小さいほど、パターン形状が目立ちにくく、視認性を良好にすることができる。図10に示すように、反射率差の絶対値は、いずれも粘着層15の屈折率が高くなるほど小さくなっており、視認性の観点からは粘着層15の屈折率を大きくするほど良いことがわかる。」(16頁26行?17頁20行)

上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

a.上記ウ.の[0076]の記載によれば、透明タッチスイッチ101は、静電容量式のタッチスイッチであり、透明基板11にアンダーコート層13を介して透明導電膜12が形成されている。
そして、段落[0077]には、透明基板11には、表面にハードコート層を備えており、さらに、段落[0078]によれば、ハードコート層は、耐久性及びアンダーコート層13,23の密着性を高めるために設けられることが記載されている。
さらに、段落[0079]には、アンダーコート層13,は、それぞれ低屈折率層13a,と、低屈折率層13aよりも光屈折率が高い高屈折率層13bとの積層体から構成されていることが記載されている。
してみれば、引用例2には、透明なフィルムに、密着をたかめるためのハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、透明導電膜が順次積層される透明タッチスイッチ、が記載されているといえる。

b.上記エ.の段落[0087]の記載には、ハードコート層の屈折率を1.52、高屈折率層の屈折率を1.7、低屈折率層の屈折率を1.43、透明導電膜12の屈折率を1.95としたものが記載されている。
してみれば、引用例2には、ハードコート層の屈折率および低屈折率の光屈折率は、透明導電膜および高屈折率の光屈折率よりも大きくした透明タッチスイッチ、が記載されているといえる。

上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用例2には、次の技術(以下、「引用例2記載の技術」という。)が開示されていると認められる。

「透明なフィルムに、密着をたかめるためのハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、透明導電膜が順次積層される透明タッチスイッチにおいて、ハードコート層の屈折率および低屈折率の光屈折率は、透明導電膜および高屈折率の光屈折率よりも大きくした、透明タッチスイッチ。」


(3)引用例3
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特表2007-508639号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチスクリーンに関し、さらに詳しくは、タッチセンシング要素として透明導体のパターンを使用するオンディスプレイ(on-display)タッチスクリーンに関する。」(4頁37?41行)

イ.「【課題を解決するための手段】
【0003】
一つの態様において、本発明は、基板、その基板を実質的に覆うコーティング、そのコーティングの上に配置された透明導体パターン(そのパターンには、コーティングで覆われない領域が残っている)、および透明導体パターンと透明導体パターンによって覆われていないコーティングの領域との両方を覆いそして接触している充填材料を含む、タッチスクリーンのための構成を提供する。そのコーティングは、基板の屈折率より低く、かつ透明導体パターンの屈折率より低い屈折率を有している。場合によっては、充填材料の上に第二の基板を配置することも可能である。」(5頁8?16行)

ウ.「【0012】
基板、その基板の上のコーティング、そのコーティングの上の透明導体パターン、および透明導体パターンの上に配置され、パターンの部分の間のギャップを充填する充填材料、を含む本発明の構成においては、例に挙げる材料を選択することによって、それぞれの成分における屈折率が以下のようにすることができる:基板の屈折率:約1.6?1.7(たとえば、ポリエチレンテレフタレート基板では約1.67);コーティングの屈折率:約1.4?1.5(たとえば、二酸化ケイ素コーティングでは約1.45);透明導体の屈折率:約1.8?2.1(たとえば、インジウムスズ酸化物では約2.0);充填材料の屈折率:約1.4?1.8(たとえば、約1.7)。」(7頁3?11行)

エ.「【0016】
基板の表面112または充填材料の表面142を、そのタッチ表面とすることができる。別な方法として、場合によっては使用者と基板110または充填材料142との間に1層または複数の追加の層を配して、タッチ表面とすることも可能である。たとえば、除去可能で張り替え可能なオーバーレイ層を設けて、タッチ表面に傷が付いたりその他損傷があったりした場合には、そのタッチスクリーンのタッチ表面を「更新(refresh)」することも可能である。別な例としては、特に基板110がプラスチック基板であるような場合には、基板110の表面112の上にハードコートを配して、タッチ表面とすることもできる。また別な例としては、基板110または充填材料140に、望ましい耐久性あるいはその他の性質を有するガラスまたはその他の材料のシートを積層するかまたはその他の方法で接着させることも可能であるが、その際にはそれらの間に他の構造用の層または機能性層が存在していても、存在していなくてもよい。」(7頁38?49行)

オ.「【0024】
図2は、図1に示したものと同様ではあるが、第二の基板をさらに含むタッチスクリーン構成200を示す。タッチスクリーン構成200に含まれるのは、第一の基板210、その第一の基板210を覆うコーティング220、コーティング220の上に配置された透明導体パターン230、透明導体パターン230を覆い、パターン230によって覆われていない領域にあるコーティング220と接触する充填材料240、およびその充填材料240の上に配置された第二の基板250である。基板250は、充填材料240と基板250との間に配置された接着剤を使用することによって、構成200に接着させることができる。別な方法として、充填材料240それ自体を接着材料として、基板250を構成200に接着させるのに使用することも可能である。充填剤層240が接着剤であるようないくつかの実施態様においては、透明導体パターン230およびコーティング220の上に配置することが可能な各種適切な接着剤を使用することによって、その接着剤を透明導体パターン230およびコーティング220の覆われていない部分に接触させることができる。接着剤の例としては、感圧接着剤および/またはアクリル系の接着剤を挙げることができ、それらは光学的に透明であるのが好ましい。基板250はガラスおよびプラスチックを含めた各種適切な材料であればよく、それらは剛性であっても、可撓性であってもよい。」(9頁15?31行)

上記引用例3の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用例3には、次の技術(以下、「引用例3記載の技術」という。)が開示されていると認められる。

「透明導電体がパターニングされるタッチセンサにおいて、保護のために該透明導電体上に、接着剤であり屈折率が1.7である充填剤で可撓性のプラスチック基板を接着させること。」


4.対 比

本願発明と引用発明1とを対比する。

a.引用発明1の「タッチパネル」は、「タッチパネルセンサ」ともいい得るものであり、また、引用発明1の「透明導電性積層フィルム」の「誘電体層」は、透明導電性薄膜を保護する目的のために、「透明導電性積層フィルム」の最も外側の層として形成されるものであるから、引用発明1の「タッチパネル」と、本願発明の「透明シート付タッチパネルセンサ」は、「タッチパネルセンサと、タッチパネルセンサの一側に保護層が設けられる保護層付タッチパネルセンサ」の点で共通する。

b.引用発明1の「透明プラスチックフィルム」は、本願発明の「透明なフィルム本体」に相当する。
そして、引用発明においては「透明プラスチックフィルム上」に、「順次」、「硬化物層、高屈折率層、低屈折率層、透明導電性薄膜層」が積層されていることから、引用発明の「硬化物層」、「高屈折率層」、「低屈折率層」が、それぞれ、本願発明の「第1アンダーコート層」、「第1高屈折率層」、「第1低屈折率層」に相当し、また、引用発明の「透明導電性積層フィルム」の一部である、「透明プラスチックフィルム」上に、順次、「硬化物層、高屈折率層、低屈折率層」が積層された部分を「基材フィルム」と称することは任意である。
さらに、引用発明1の「透明導電性積層フィルム」は、「透明導電性薄膜層のパターニング部と非パターニング部の光学特性の差」が小さいものであるから、引用発明1の「透明導電性薄膜」はパターニングされているものと認められ、また、「透明導電性薄膜」は、「透明プラスチックフィルム」上に、順次、「硬化物層、高屈折率層、低屈折率層」が積層されたフィルムの上に積層されていると認められることから、引用発明1の「透明導電性薄膜」は、本願発明の「基材フィルムの一側の面上にパターニングされた第1透明導電体」に相当する。

c.引用発明1の「低屈折率層」の「屈折率」は「1.30?1.60」であり、「透明導電性薄膜」、及び「高屈折率層」の「屈折率」は、各々「1.96」、及び「1.70?2.50」であるから、「低屈折率層」の「屈折率」は、「透明導電性薄膜」、及び「高屈折率層」の「屈折率」より小さいと認められ、引用発明1と、本願発明は、「前記第1低屈折率層の光屈折率は、前記第1透明導電体および前記第1高屈折率層の光屈折率よりも小さくなっている」という構成を有する点で共通する。

そうすると、本願発明と引用発明1とは次の点で一致ないし相違するものと認められる。

(一致点)

「タッチパネルセンサと、タッチパネルセンサの一側に保護層が設けられる保護層付タッチパネルセンサにおいて、
前記タッチパネルセンサは、基材フィルムと、基材フィルムの一側の面上にパターニングされた第1透明導電体と、を備え、
基材フィルムは、透明なフィルム本体と、フィルム本体の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1アンダーコート層と、第1アンダーコート層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1高屈折率層と、第1高屈折率層の前記第1透明導電体側の面上に設けられた第1低屈折率層と、を有し、
前記第1低屈折率層の光屈折率は、前記第1透明導電体および前記第1高屈折率層の光屈折率よりも小さくなっている、
保護層付タッチパネルセンサ。」


(相違点1)「保護層」が、本願発明では、「タッチパネルセンサの一側に接着層を介して接着された透明シート」であるのに対して、引用発明1では、「誘電体層」であって「接着層を介して接着された透明シート」ではない点。

(相違点2)本願発明では、「前記第1アンダーコート層」も「前記第1透明導電体および前記第1高屈折率層の光屈折率よりも小さくなって」いるのに対して、引用発明1では、「硬化物層」(本願の 「前記第1アンダーコート層」に相当。)の屈折率は特定されておらず、「透明導電性薄膜」(本願の 「前記前記第1透明導電体」に相当。)および「高屈折率層」(本願の「 第1高屈折率層」に相当。)より小さくなっているとは限らない点

(相違点3)本願発明では、「前記第1高屈折率層の光屈折率は、前記第1透明導電体の光屈折率よりも大きくなって」いるのに対して、引用発明1では、「高屈折率層」の「光屈折率」は、「透明導電性薄膜」の「光屈折率」より大きいとは特定されていない点。

(相違点4)本願発明では、「前記タッチパネルセンサと前記透明シートとの間に介在された前記接着層の光屈折率は、その光屈折率が1.4?1.8の範囲内」であるのに対して、引用発明1では、そのような「接着層」を有するとはされていない点。


5.検討

そこで、上記相違点について検討する。
(相違点1)、及び(相違点4)について
透明導電体がパターニングされるタッチセンサにおいて、保護のために該透明導電体上に、接着剤であり屈折率が1.7である充填剤で可撓性のプラスチックの基板を接着させる、ことは上記引用例3記載の技術として公知である。
一方、引用発明1の保護のための「誘電体層」として、どのようなものを選択するかは、当業者が設計時に適宜選択なし得た事項であり、また、引用発明1の保護のための「誘電体層」を、「接着層」及び「透明シート」として構成できないものでもない。
してみれば、引用発明1における「誘電体層」に引用例3記載の技術を適用して、接着層を介して透明シートを接着し、該接着層の屈折率を1.7とするようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、そのようにすることは、引用発明1において、相違点1、及び相違点4に係る本願発明の構成を採用することにほかならない。

(相違点2)について
透明なフィルムに、密着をたかめるためのハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、透明導電膜が順次積層される透明タッチスイッチにおいて、ハードコート層の屈折率および低屈折率の光屈折率は、透明導電膜および高屈折率の光屈折率よりも大きくした、透明タッチスイッチは、上記引用例2記載の技術として公知である。
一方、引用発明1において「硬化物層」の「光屈折率」を具体的にどのようにするかは、当業者が、「硬化物層」の目的を鑑みて適宜選択し得たことであり、また、引用発明1の「硬化物層」の「光屈折率」を、「透明導電性薄膜」、及び「高屈折率層」の「光屈折率」よりも小さくできないものでもない。
してみれば、引用発明1における、密着を高めるための層である「硬化物層」に、引用例2記載の技術を適用して、「透明導電性薄膜」、及び「高屈折率層」の「光屈折率」よりも小さくすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、そのようにすることは、引用発明1において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することにほかならない。

(相違点3)について
引用発明1の「高屈折率層」の「光屈折率」の範囲は、当業者が、引用発明1の課題が解決される範囲で適宜選択可能な事項である。
また、引用発明1では、「高屈折率層」の「光屈折率」は1.70?2.50、「透明導電性薄膜」の「光屈折率」は1.96であり、「高屈折率層」の「光屈折率」が「透明導電性薄膜」の「光屈折率」より大きくなる範囲も含まれていることから、引用発明1においては、「高屈折率層」の「光屈折率」を、「透明導電性薄膜」の光屈折率より大きくできるものである。
さらに、「高屈折率層」の「光屈折率」を、「透明導電性薄膜」の「光屈折率」より大きくすることは、当該技術分野における常套手段(例えば、拒絶査定で引用した、特開2007-299534号公報(特に、段落【0025】等参照)、特開平11-053114号公報(特に、段落【0019】等参照)等参照。)でもある。
してみれば、引用発明1において、「高屈折率層」の「光屈折率」を、「透明導電性薄膜」の「光屈折率」より大きくすることは、当業者が容易に想到し得たことである。


また、本願発明の効果も、引用発明1から容易に想到される構成から当業者が予想できる範囲のものである。

6.むすび

以上のとおりであって、本願発明は、上記引用発明1、及び引用例2、引用例3記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-04 
結審通知日 2016-01-05 
審決日 2016-01-18 
出願番号 特願2010-270670(P2010-270670)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 円子 英紀  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 山澤 宏
玉木 宏治
発明の名称 透明シート付タッチパネルセンサ  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 岡村 和郎  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 永井 浩之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ