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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1311755
審判番号 不服2014-17665  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-05 
確定日 2016-03-03 
事件の表示 特願2010-191635「液体クロマトグラフ装置及び分析方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月 8日出願公開、特開2012- 47655〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年8月30日の出願であって,平成26年6月4日付けで拒絶査定されたところ,平成26年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。
その後,当審において平成27年7月16日付けで拒絶理由が通知され,同年9月18日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1?10に係る発明は,平成27年9月18日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載の事項により特定される発明であると認める。
そのうち,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,当審にて(A)?(G)を付して分節して整理すると,次のように整理される。
「【請求項1】
(A) 生体試料中の低分子物質を分析する液体クロマトグラフ分析装置において,
(B) 第一の送液ポンプと,第二の送液ポンプと,試料溶液中の物質を選択的に吸着・溶離できる第一のカラム,第二のカラム,および第三のカラムと,これらへ繋がる流路を切替えるバルブとを有し,
前記バルブは,前記流路を,
(i-1) 前記第一の送液ポンプと接続され前記第一のカラムを通る第一の流路と,
(i-2)前記第二の送液ポンプに接続され前記第二のカラム及び前記第三のカラムを通る第二の流路と
に分ける第一の配置と,
(ii-1) 前記第一の送液ポンプと接続され前記第一のカラム及び前記第二のカラムを通る第三の流路と,
(ii-2) 前記第二の送液ポンプに接続され前記第三のカラムを通る第四の流路と
に分ける第二の配置と,を切り替えるものであって,
(iii) 前記第一のカラム及び前記第三のカラムを通る流路は無く,並びに,
(iv) 前記第一のカラム,前記第二のカラム及び前記第三のカラムを通る流路は無く,
(C) 前記第一の配置によって,前記第一の流路にて前記第一の送液ポンプからの送液により前記第一のカラムに前記生体試料を導入して当該生体試料中の分子量の大きな物質を先に排出させた後に,
(D) 前記バルブを前記第二の配置に切替えて前記第三の流路にて前記第二のカラムに分析対象である前記排出されなかった前記生体試料中の低分子量の物質を流し込んで吸着させ,
(E) さらにそのあと流路を前記第一の配置に切替えて,前記第二の流路にて前記第二の送液ポンプから送液される溶液で前記第二のカラムに吸着された前記低分子物質をカラムから解離させ,当該低分子物質を第三のカラムに流し込み,当該第三のカラムにて分離して検出器に流し込む液体クロマトグラフ装置であって,
(F) 前記第一の送液ポンプの耐圧範囲が40メガパスカル(MPa)以下であり,前記第二の送液ポンプの耐圧範囲が60メガパスカル(MPa)以上であり,
(G) 前記第一の送液ポンプは前記第二の送液ポンプの圧力よりも低圧で送液し,第二の送液ポンプは前記第一の送液ポンプの圧力よりも高圧で送液することを特徴とする液体クロマトグラフ装置。」

第3 刊行物記載の事項
当審から平成27年7月16日付けで通知された拒絶理由で引用され,本願出願日前に頒布された刊行物である
刊行物1:特開2005-300358号公報
刊行物2:特開平1-123145号公報
には,次の事項が記載されている。
なお,下線は当審にて付記したものである。
1 刊行物1記載の事項
(刊1-1)「【図1】



(刊1-2)「【図2】



(刊1-3)「【請求項1】
メラトニンを含む生体試料を導入する試料導入手段;
少なくとも複数のカラムを有し,前記生体試料を,濃縮し且つ分離して,前記メラトニンを含む画分を採取する処理手段;及び
単一の質量分析器を用いた選択イオン検出又は選択反応検出により,前記画分を用いて前記メラトニンに由来する成分を検出する検出手段;
を有する高速液体クロマトグラフィー装置。」

(刊1-4)「【0014】
本発明におけるHPLCシステムの一例は,3本のカラムと2つの六方バルブで構築した(図1)。図2には,タイムプログラムと操作の詳細なまとめを,目的成分の流れイメージとともに示した。シリカベースの混成機能C8又はフェニル基材を充填したプレカラムがオンライン試料クリーンアップを担うことで,唾液の直接注入分析が可能となった。プレカラムからの目的成分フラクションは,ハートカット(バルブ切り替えにより分画する操作)され,オンライン濃縮のために中間トラップカラムへと導いた。保持された目的成分は,引き続いて強い溶媒強度の移動相でバックフラッシュ(トラップカラムの終端から移動相を逆に流す操作)され,最後の分析カラムへの導入される。MLTは分析カラム先端で再度濃縮され,直ちに残存するマトリックス由来の妨害成分と分離される。第2のバルブ(図1のV2)は,不要な溶離液部分を排除するために用いた。」

(刊1-5)「【0018】
(b) プレカラムにおけるクロマトグラフ条件の最適化
プレカラムは,数種のシリカベースの混成機能型充填剤から選定した。プレカラムの選定基準は,(i)タンパク質の凝固を防ぐ低い有機溶媒濃度(10v/v%)の移動相でMLTが適度に保持されること,(ii)唾液由来の妨害成分の効果的な除去,且つ(iii)大量注入時にもMLTピーク形状が劣化しないこと,とした。」

(刊1-6)「【0055】
110 ポンプ1
112 ポンプ2
120 オートインジェクター
130 プレカラム
140 六方バルブ
150 中間トラップカラム
160 分析カラム
170 六方バルブ
180 質量分析器
190 UV検出器」

(刊1-7)「【0030】
プレカラムには,シリカベースの混成機能C8相を充てんしたカートリッジタイプの短いカラムを用いた(図1の130に相当,CapcellPakMF-C8cartridge,particlediameter(dp)5μm,4.0mm(ID)×20mm,資生堂,東京,日本)。プレカラムの前には,0.55μmのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製フリットを組み込んだ低デッドボリュームのプレカラムマイクロフィルター(図1のFに相当,UpchurchScientific,Oakharbor,WA,USA)及びガードカラム(図1のGに相当,CapcellPakMF-C8又はMF-Ph1cartridge,dp5μm,2?6mmID×10mm,資生堂,東京,日本)を接続した。中間トラップカラムには,ポリマー被覆型シリカC18カートリッジ(図1の150に相当,CapcellPakC18UGcartridge,dp5μm,2?6mmID×10mm,資生堂,東京,日本)を用いた。主分析カラムは,セミミクロ内径のシリカベースのC18カラム(ODSカラム)(図1の160に相当,CapcellPakC18AQ,dp5μm,1?3mmID×150mm,資生堂,東京,日本)とした。分析カラムの前には,同じ充てん剤からなるガードカラム(図1のGに相当,1?3mmID×10mm)を接続した。プレカラム及び分析カラムは,40℃に保ったカラムオーブン中に入れて操作した。トラップカラムは,室温下で使用した(25±5℃)。」

(刊1-8)「【技術分野】
【0001】
本発明は,カラムスイッチング-セミミクロカラム液体クロマトグラフィー/質量分析法に関し,特に,ヒト唾液中内因性MLTの直接かつ高感度分析に用いるカラムスイッチング-セミミクロカラム液体クロマトグラフィー/質量分析法に関する。」

(刊1-9)「【0021】
(d)分析カラムにおけるクロマトグラフ条件
主分析カラムは以下の基準で選定した:(i)中?高レベルの有機溶媒を含む移動相(≧40v/v%)で適度なMLTの保持があること,(ii)MLTと唾液由来の起こりうる妨害成分との良い分離,そして(iii)低い背圧(≦10MPa)。基準(i)は,トラップカラムからの目的成分の迅速な溶離と,主カラムにおけるシャープな試料バンドの実現に不可欠である。基準(ii)もまた,イオン源の洗浄頻度を減らし,イオン化過程でのサプレッションをできる限り避けるのに重要である。本発明において,上記の基準を満たすカラムとしては,炭素数8乃至30の側鎖を有するシリカベースの基材又は炭素数8乃至30の側鎖を有するポリマーベースの基材からなるカラムが挙げることができる。」

(刊1-10)「【0049】
【表1】 ・・・(略)・・・
(e)耐久性
本システムは,少なくとも,70個の試料注入からなる一回の分析ラン(唾液総量として28mLを注入)の間,耐久性を示していた。QC試料はほぼ一定の値を示し,MS応答の絶対値も分析ランを通じて一定であった。唯一検出された変化は,プレカラムの前に配置したミクロフィルターの圧上昇であった。圧力は,70試料の分析ランで最大?7.5MPaに到達したが,定量結果への影響は皆無であった。フィルターの交換は,試料注入の合間に,分析法の信頼性へ影響を与えずに交換することも可能である。」
・・・」

2 刊行物2記載の事項
(刊2-1)「[従来の技術]
血清などのタンパク質を含む生体試料中の薬物などの分析に,クロマトグラフィー,特に高速液体クロマトグラフィー(以下,HPLCという)は,非常に有効な手段として汎用されている。このHPLC分析では,通常逆相系の充填剤が多く用いられているが,試料中のタンパク質は,この充填剤に非可逆的に吸着し,カラムにつまりを生じるなど重大な障害となるため,HPLC分析を行う前に,前処理によって除タンパク処理することが不可欠である。このような前処理は手作業で行うために非常に労力を要するものである。
しかし,最近になって,充填剤の内表面を疎水性とし,かつ外表面を親水性にするなどして,タンパク質が吸着され難くした新しいタイプの充填剤が開発され,これを前処理用カラムとして,カラムスイッチングバルブとともにHPLCに組み込み,オンラインで除タンパク処理ができるようにし,前述のような生体試料を直接分析に供することが可能となっている。・・・
この充填剤のカラムを用いて除タンパク前処理を行うには,カラムに適当な緩衝液を送液した後,分析すべき血清等の試料を注入する。このとき,低分子で比較的疎水性の高い薬物等の成分は,孔内表面のオクタデシル基に吸着されて保持されるが,一方,試料中のタンパク質等はサイズが大きいため,孔の内部には進入できず,かつ外表面にも吸着されないため,短時間でこのカラムより溶出してしまう。その後,この前処理用カラムの出口側流路を分離用カラムに接続し,移動相(溶出液)をより強い条件に切り換えると,保持されていた薬物などの成分がこの前処理カラムから離れて,分離カラムへ移動し,ここで各成分ごとに分離されることになる。」(2頁右下欄3行?3頁右上欄11行)

第4 刊行物1記載の発明
刊行物1を整理すると『』で括られた内容が,刊行物1から理解される。
1 図1(刊1-1)に記載の高速液体クロマトグラフィー装置は,オートインジェクターで導入されるサンプルを「ヒト唾液」(刊1-8)とするものである。

2 図1(刊1-1)の符合140(刊1-6)で示されるV1と表記された六方バルブ(140)の流路の状態は,図2(刊1-2)の「V1の状態」に,分離精製の工程に従って,「A」又は「B」と表記されることで示されている。
そして,図1(刊1-1)には,高速液体クロマトグラフィーの主な部品として,
『(B)ポンプ1(110)(刊1-6),ポンプ2(112)(刊1-6),プレカラムマイクロフィルター(F)(刊1-7),ガードカラム(G)(刊1-7),プレカラム(130)(刊1-6),中間トラップカラム(150)(刊1-6),分析カラム(160)(刊1-6)及びこれらに繋がる流路を切替える六方バルブV1(140)(刊1-6)』
があることが分かる。

3 前記「1」及び「2」を前提に図1(刊1-1)をみれば,
六方バルブV1(140)は,バルブの状態及び流路を
『(i-1)ポンプ1(110)から,ヒト唾液をサンプルとするオートインジェクター(120),プレカラムマイクロフィルター(F),ガードカラム(G),プレカラム(130)を通り,次いで,UV検出器(190)を通って排出される流路と,
(i-2)ポンプ2(112)から,中間トラップカラム(150)を通り,分析カラム(160)への導入される流路
とに分ける前記六方バルブV1(140)のBの状態』,
及び
『(ii-1)ポンプ1(110)から,プレカラムマイクロフィルター(F),ガードカラム(G),プレカラム(130),中間トラップカラム(150),UV検出器(190)を通って排出される流路,
(ii-2)ポンプ2(112)から,分析カラム(160)へと繋がる流路
とに分ける前記六方バルブV1(140)のAの状態』
としているものであることが分かる。

4 また,図1(刊1-1)からは,
『(iii)プレカラム(130)及び分析カラム(160)を通る流路は無いこと』
『(iv)プレカラム(130),中間トラップカラム(150)及び分析カラム(160)を通る流路は無いこと』
が理解される。

5 (刊1-9)の記載から,「分析カラム」は,「低い背圧(≦10MPa)」であったことが記載されている。
他方,(刊1-10)の記載から,「プレカラム」には,「70試料の分析ランで最大?7.5MPaに到達した」ことが記載されている。
以上のことから,『(f) 分析時には,分析カラム(160)に,低い背圧(≦10MPa)がかかるようにポンプ2(112)が運転される』ことが理解されるが,具体的にどの程度の圧力で運転されているか不明である。

6 小括
以上の1?5の事項を踏まえ,(刊1-3)の下線を付した分析手段,(刊1-4)の下線を付した分析工程及び(刊1-5)のプレカラムの機能を加えて整理すると,刊行物1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「(a) メラトニンを分析する高速液体クロマトグラフィー装置において,
(b) ポンプ1(110),ポンプ2(112),プレカラムマイクロフィルター(F),ガードカラム(G),プレカラム(130),中間トラップカラム(150),分析カラム(160)及びこれらに繋がる流路を切替える六方バルブV1(140)を有し,
前記六方バルブV1(140)は,前記流路を
(i-1) ポンプ1(110)から,ヒト唾液をサンプルとするオートインジェクター(120),プレカラムマイクロフィルター(F),ガードカラム(G),プレカラム(130)を通り,次いで,UV検出器(190)を通って排出される流路と,
(i-2) ポンプ2(112)から,中間トラップカラム(150)を通り,分析カラム(160)への導入される流路
とに分ける前記六方バルブV1(140)のBの状態
(ii-1) ポンプ1(110)から,プレカラムマイクロフィルター(F),ガードカラム(G),プレカラム(130),中間トラップカラム(150),UV検出器(190)を通って排出される流路,
(ii-2) ポンプ2(112)から,分析カラム(160)へと繋がる流路
とに分ける前記六方バルブV1(140)のAの状態
(iii) プレカラム(130)及び分析カラム(160)を通る流路は無く,また,
(iv) プレカラム(130),中間トラップカラム(150)及び分析カラム(160)を通る流路は無く,
(c) 前記六方バルブV1(140)のBの状態で,ポンプ1(110)から,オートインジェクター(120)を介して,プレカラムマイクロフィルター(F),ガードカラム(G)を通してプレカラム(130)にヒト唾液サンプルを流し,プレカラム(130)により,メラトニンが適度に保持されるが,唾液由来の妨害成分の効果的な除去がなされ,
(d) 次いで前記六方バルブV1(140)をAの状態とし,プレカラム(130)から,目的成分フラクションをオンライン濃縮のために中間トラップカラム(150)へと導き,
(e) 次いで前記六方バルブV1(140)をBの状態とし,中間トラップカラム(150)に保持されたメラトニンは,引き続いてポンプ2(112)から送られる強い溶媒強度の移動相でバックフラッシュ(中間トラップカラムの終端から移動相を逆に流す操作)され,ガードカラム(G)を介して最後の分析カラム(160)へ導入され,単一の質量分析器を用いた選択イオン検出又は選択反応検出により,前記メラトニンに由来する成分を検出手段を用いて検出し,
(f) 分析時には,分析カラム(160)に,低い背圧(≦10MPa)がかかるようにポンプ2(112)が運転される,
高速液体クロマトグラフィー装置。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 本願発明(A)の特定事項について
引用発明(a)の「メラトニン」は,本願発明(A)の「生体試料中の低分子物質に相当する。
よって,引用発明の「(a)メラトニンを分析する高速液体クロマトグラフィー装置」は,本願発明の「(A)生体試料中の低分子物質を分析する液体クロマトグラフ分析装置」に相当する。

2 本願発明(B)の特定事項について
(1) 第一のカラム
引用発明(b)の「プレカラム(130)」は,(c)のように「ヒト唾液サンプルを流し,プレカラム(130)により,メラトニンが適度に保持されるが,唾液由来の妨害成分の効果的な除去がなされ」るものであり,メラトニンを適度に保持されるから,本願発明(B)の「試料溶液中の物質を選択的に吸着・溶離できる第一のカラム」に相当する。

(2) 第二のカラム
引用発明(b)の「中間トラップカラム(150)」は,「(d)・・・目的成分フラクションをオンライン濃縮のため」に用いられ,「(e)・・・中間トラップカラム(150)に保持された目的成分は,引き続いてポンプ2(112)から送られる強い溶媒強度の移動相でバックフラッシュ(中間トラップカラムの終端から移動相を逆に流す操作)され,最後の分析カラム(160)への導入され」ることとなるから,目的成分であるメラトニンを選択的に吸着・溶離できるという機能を有することは明らかであって,本願発明(B)の「試料溶液中の物質を選択的に吸着・溶離できる・・・第二のカラム」に相当する。

(3) 第三のカラム
引用発明(b)の「分析カラム(160)」は,分析対象物であるメラトニンを選択的に吸着及び溶離できることは自明なことであって,本願発明(B)の「試料溶液中の物質を選択的に吸着・溶離できる・・・第三のカラム」に相当する。

(4) 第一の送液ポンプ及び第二の送液ポンプ
引用発明(b)の「ポンプ1(110)」及び「ポンプ2(112)」は,それぞれ,本願発明(B)の「第一の送液ポンプ」及び「第二の送液ポンプ」に相当する。

(5) バルブ
引用発明(b)の
「プレカラムマイクロフィルター(F),ガードカラム(G),プレカラム(130),中間トラップカラム(150),分析カラム(160)及びこれらに繋がる流路を切替える六方バルブV1(140)」
は,上記(1)?(3)に照らし,本願発明(B)の
「試料溶液中の物質を選択的に吸着・溶離できる第一のカラム,第二のカラム,および第三のカラムと,これらへ繋がる流路を切替えるバルブ」
に相当する。

(6) 小括
以上のことから,引用発明の「(b) ポンプ1(110),ポンプ2(112),プレカラムマイクロフィルター(F),ガードカラム(G),プレカラム(130),中間トラップカラム(150),分析カラム(160)及びこれらに繋がる流路を切替える六方バルブV1(140)」は,本願発明の「(B) 第一の送液ポンプと,第二の送液ポンプと,試料溶液中の物質を選択的に吸着・溶離できる第一のカラム,第二のカラム,および第三のカラムと,これらへ繋がる流路を切替えるバルブ」と一致する。

3 本願発明(i-1)及び(i-2)で規定されるバルブの「第一の配置」について
引用発明(i-1)及び(i-2)で規定される「六方バルブV1(140)のBの状態」,すなわち,
「(i-1) ポンプ1(110)から,・・・,プレカラム(130)を通り,・・・排出される流路と,
(i-2) ポンプ2(112)から,中間トラップカラム(150)を通り,分析カラム(160)への導入される流路
とに分ける前記六方バルブV1(140)のBの状態」
は,本願発明(i-1)及び(i-2)で規定されるバルブの「第一の配置」,すなわち,
「(i-1) 前記第一の送液ポンプと接続され前記第一のカラムを通る第一の流路と,
(i-2)前記第二の送液ポンプに接続され前記第二のカラム及び前記第三のカラムを通る第二の流路と
に分ける第一の配置」
と一致する。

4 本願発明(ii-1)及び(ii-2)で規定されるバルブの「第二の配置」について
引用発明(ii-1)及び(ii-2)で規定される「六方バルブV1(140)のAの状態」,すなわち,
「(ii-1) ポンプ1(110)から,・・・,プレカラム(130),中間トラップカラム(150)・・・を通って排出される流路,
(ii-2) ポンプ2(112)から,分析カラム(160)へと繋がる流路
とに分ける前記六方バルブV1(140)のAの状態」
は,本願発明(ii-1)及び(ii-2)で規定されるバルブの「第二の配置」,すなわち,
「(ii-1) 前記第一の送液ポンプと接続され前記第一のカラム及び前記第二のカラムを通る第三の流路と,
(ii-2) 前記第二の送液ポンプに接続され前記第三のカラムを通る第四の流路と
に分ける第二の配置」
と一致する。

5 本願発明(iii)及び(iv)の特定事項について
引用発明「(iii) プレカラム(130)及び分析カラム(160)を通る流路は無」いこと及び「(iv) プレカラム(130),中間トラップカラム(150)及び分析カラム(160)を通る流路は無」いことは,それぞれ,本願発明の「(iii) 前記第一のカラム及び前記第三のカラムを通る流路は無」いこと,及び,「(iv) 前記第一のカラム,前記第二のカラム及び前記第三のカラムを通る流路は無」いことに相当する。

6 本願発明(C)の特定事項について
本願発明「(C)」の「第一カラム」で除去される「生体試料中の分子量の大きな物質」は,本願明細書の「例えば妨害の要因であるタンパク質を除去したり」(【0002】)との記載からみて,妨害物質であると理解される。
そうすると,引用発明の「(c) 前記六方バルブV1(140)のBの状態で,ポンプ1(110)から,オートインジェクター(120)を介して,プレカラムマイクロフィルター(F),ガードカラム(G)を通してプレカラム(130)にヒト唾液サンプルを流し,プレカラム(130)により,メラトニンが適度に保持されるが,唾液由来の妨害成分の効果的な除去がなされ」ることは,唾液由来の妨害成分が何か具体的に不明であると共にカラムによりどのように除去されるか不明であるから,本願発明の「(C)前記第一の配置によって,前記第一の流路にて前記第一の送液ポンプからの送液により前記第一のカラムに前記生体試料を導入して当該生体試料中の分子量の大きな物質を先に排出させ」ることとは,「(C)前記第一の配置によって,前記第一の流路にて前記第一の送液ポンプからの送液により前記妨害物質除去カラムに前記生体試料を導入して,妨害物質を除去させ」ることで共通する。

7 本願発明(D)の特定事項について
引用発明(d)の「次いで前記六方バルブV1(140)をAの状態とし,・・・プレカラム(130)から,目的成分フラクションをオンライン濃縮のために中間トラップカラム(150)へと導」くことは,プレカラム(130)から溶出したメラトニンが,中間トラップカラムに吸着され濃縮されることとなるから,本願発明の「(D)前記バルブを前記第二の配置に切替えて前記第三の流路にて前記第二のカラムに分析対象である前記排出されなかった前記生体試料中の低分子量の物質を流し込んで吸着させ」ることに相当する。

8 本願発明(E)の特定事項について
引用発明の「(E)次いで前記六方バルブV1(140)をBの状態とし,中間トラップカラム(150)に保持されたメラトニンは,引き続いてポンプ2(112)から送られる強い溶媒強度の移動相でバックフラッシュ(トラップカラムの終端から移動相を逆に流す操作)され,最後の分析カラム(160)への導入され,単一の質量分析器を用いた選択イオン検出又は選択反応検出により,メラトニンに由来する成分を検出手段を用いて検出する」ことは,バックフラッシュにより,中間トラップカラム(150)に保持されたメラトニンが分析カラム(160)に導入され分離され検出手段に送られることとなるから,本願発明の「(D)さらにそのあと流路を前記第一の配置に切替えて,前記第二の流路にて前記第二の送液ポンプから送液される溶液で前記第二のカラムに吸着された前記低分子物質をカラムから解離させ,当該低分子物質を第三のカラムに流し込み,当該第三のカラムにて分離して検出器に流し込む」ことに相当する。

9 本願発明(F)の特定事項について
(1) 第一の送液ポンプの耐圧範囲について
本願明細書の【0011】には,「上記の目的を達成する構成例としては,例えば2台の送液ポンプと流路切替用の六方バルブを持つ液体クロマトグラフ装置であり,前処理用カラムに送液する送液ポンプには,概ね40MPa以下の圧力で送液が可能な通常型のポンプを用い(所謂セミミクロLC,または汎用LC用),カラム内圧力が上がり過ぎないように前処理を行う。」と記載されている。このことから,本願発明(F)の「前記第一の送液ポンプの耐圧範囲が40メガパスカル(MPa)以下」とは,前処理用カラムである本願発明(C)の「第一のカラム」に使用する圧力を考慮して選ばれた,通常型ポンプの耐圧範囲であることが理解される。

(2) 第二の送液ポンプの耐圧範囲について
本願明細書の【0005】には,「・・・例えば,近年通常より細かい粒子が充てんされたカラムに概ね60MPa程度の高圧力のポンプでバッファを流し込むことで分離性能を高め,短時間で分析が可能な超高速型の液体クロマトグラフが開発されている。短時間で分析ができれば,大量の試料の分析にも対応可能となり,臨床検査などに液体クロマトグラフを使用しやすくなる。」と記載されている。このことから,本願発明(F)の「第二の送液ポンプの耐圧範囲が60メガパスカル(MPa)以上」とは,分析用カラムである本願発明の(E)「第三のカラム」に使用する圧力を考慮して選ばれた耐圧範囲であることが理解される。

(3) 引用発明のポンプ1(110)の圧力について
引用発明において,ポンプ1(110)の圧力は不明であるが,引用発明の「(c) 前記六方バルブV1(140)のBの状態で,ポンプ1(110)から,オートインジェクター(120)を介して,プレカラムマイクロフィルター(F),ガードカラム(G)を通してプレカラム(130)にヒト唾液サンプルを流し,プレカラム(130)により,メラトニンが適度に保持されるが,唾液由来の妨害成分の効果的な除去がなされ」るという機能に照らし,妨害成分の除去という目的に沿い,且つ,各カラムの性能及び耐圧範囲に適した圧力で送液されていることは明白である。

(4) 引用発明のポンプ2(112)の圧力について
引用発明によれば,ポンプ1(110)の耐圧範囲は不明である。
また,引用発明の「(f) 分析時には,分析カラム(160)に,低い背圧(≦10MPa)がかかるようにポンプ2(112)が運転され」ていることに照らし,ポンプ2(112)の耐圧範囲は10MPaより大きいことは明らかであるが,具体的な数値は不明である。

しかしながら,本願発明も引用発明も,流路全体に生じる圧力に耐えうる耐圧範囲のポンプが選ばれることは当然のことである。
そうすると,引用発明(i-1)及び(ii-1)の「流路」で使われる「ポンプ1(110)」並びに引用発明(i-2)の流路で使われる「ポンプ2(112)」の耐圧範囲と,本願発明「(F) 前記第一の送液ポンプの耐圧範囲が40メガパスカル(MPa)以下であり,前記第二の送液ポンプの耐圧範囲が60メガパスカル(MPa)以上」であることとは,本願発明の「第一の送液ポンプ」が(C)の「第一の流路」及び(D)の「第三の流路」で使われ、「第二の送液ポンプ」が(E)の「第二の流路」で使われていることに鑑みれば、「(F) 前記第一の送液ポンプの耐圧範囲が,第一の流路及び第三の流路全体に生じるいずれの圧力にも耐えうるものであり,前記第二の送液ポンプの耐圧範囲が,第二の流路全体に生じる圧力に耐えうるもの」であることで共通する。

10 本願発明(G)の特定事項について
引用発明の「高速液体クロマトグラフィー装置」は,本願発明の「液体クロマトグラフ装置」に包含される。

そして,引用発明の「ポンプ1(110)」及び「ポンプ2(112)」を有する「高速液体クロマトグラフィー装置」は,両ポンプが何らかの圧力で移動相を送液していることは明らかであるが,その圧力は規定されていないから,本願発明の「(G)前記第一の送液ポンプは前記第二の送液ポンプの圧力よりも低圧で送液し,第二の送液ポンプは前記第一の送液ポンプの圧力よりも高圧で送液することを特徴とする液体クロマトグラフ装置」とは,「(G)前記第一の送液ポンプ及び前記第二の送液ポンプは所定の圧力により送液する液体クロマトグラフ装置」という点で共通する。

11 小括
以上の事項を総合すると,両発明は次の(一致点)並びに(相違点1)及び(相違点2)を有する。

(一致点)
「(A) 生体試料中の低分子物質を分析する液体クロマトグラフ分析装置において,
(B) 第一の送液ポンプと,第二の送液ポンプと,試料溶液中の物質を選択的に吸着・溶離できる第一のカラム,第二のカラム,および第三のカラムと,これらへ繋がる流路を切替えるバルブとを有し,
前記バルブは,前記流路を,
(i-1) 前記第一の送液ポンプと接続され前記第一のカラムを通る第一の流路と,
(i-2) 前記第二の送液ポンプに接続され前記第二のカラム及び前記第三のカラムを通る第二の流路
とに分ける第一の配置と,
(ii-1) 前記第一の送液ポンプと接続され前記第一のカラム及び前記第二のカラムを通る第三の流路と,
(ii-2) 前記第二の送液ポンプに接続され前記第三のカラムを通る第四の流路
とに分ける第二の配置と,
を切り替えるものであって,
(iii) 前記第一のカラム及び前記第三のカラムを通る流路は無く,並びに,
(iv) 前記第一のカラム,前記第二のカラム及び前記第三のカラムを通る流路は無く,
(C) 前記第一の配置によって,前記第一の流路にて前記第一の送液ポンプからの送液により前記妨害物質除去カラムに前記生体試料を導入して,妨害物質を除去させた後に,
(D) 前記バルブを前記第二の配置に切替えて前記第三の流路にて前記第二のカラムに分析対象である前記排出されなかった前記生体試料中の低分子量の物質を流し込んで吸着させ,
(E) さらにそのあと流路を前記第一の配置に切替えて,前記第二の流路にて前記第二の送液ポンプから送液される溶液で前記第二のカラムに吸着された前記低分子物質をカラムから解離させ,当該低分子物質を第三のカラムに流し込み,当該第三のカラムにて分離して検出器に流し込む液体クロマトグラフ装置であって,
(F) 前記第一の送液ポンプの耐圧範囲が,カラムを含めた第一の流路及び第三の流路全体に生じる圧力に耐えうるものであり,前記第二の送液ポンプの耐圧範囲が,第三のカラムを含めた第二の流路全体に生じるいずれの圧力にも耐えうるものであり,
(G) 前記第一の送液ポンプ及び前記第二の送液ポンプは所定の圧力により送液する液体クロマトグラフ装置。」

(相違点1)
(C)の「妨害物質」が,本願発明では「該生体試料中の分子量の大きな物質」であり,第一のカラムから「先に排出」させているのに対して,引用発明では,唾液由来の妨害成分であり,分子量は不明であるし,プレカラムから先に排出させて除去しているかも不明である点。

(相違点2)
第一の送液ポンプ及び第二の送液ポンプの送液圧及び耐圧範囲について,本願発明では(G)に規定されているよう送液圧が規定され,(F)に規定されるように耐圧範囲が規定されているのに対して,引用発明では,ポンプ1(110)及びポンプ2(112)の送液圧力の具体的な規定は無く,そして,耐圧範囲は具体的に規定されていない点。

第6 検討
1 相違点1について
刊行物2に従来技術として「血清などのタンパク質を含む生体試料中の薬物などの分析」において,「試料中のタンパク質は,この充填剤に非可逆的に吸着し,カラムにつまりを生じるなど重大な障害となるため,HPLC分析を行う前に,前処理によって除タンパク処理することが不可欠である。」と記載されている。そして,それを解決するために,「低分子で比較的疎水性の高い薬物等の成分は,孔内表面のオクタデシル基に吸着されて保持されるが,一方,試料中のタンパク質等はサイズが大きいため,孔の内部には進入できず,かつ外表面にも吸着されないため,短時間でこのカラムより溶出してしまう。」と記載されているように,相違点1に記載の本願発明の特定事項のごとくのカラムが周知のものとして本願出願前から使われている。

そうすると,除タンパク処理を行うことは技術常識であって必要不可欠とされているのだから,タンパク質を多く含む「(i-1)・・・ヒト唾液」をサンプルとする引用発明において,刊行物2に記載のような周知のプレカラムを採用し,相違点1に記載の本願発明のごとく構成することは,当業者にとって困難なことではない。

2 相違点2について
(1) 下記刊行物Aに記載のように「HPLCの分離能を向上させるためには,より微細な充てん剤を使用することが有効である」が,「充てん剤の粒径が小さくなるほどカラム内での圧力抵抗が増加するため」「耐圧性に優れた装置が必要となる」ことが技術常識となっている。刊行物Aには「400MPaでも操作可能なHPLC装置を試作」され,「”超高圧(ultrahigh pressure)”LCと名付けられたこの分離法に関する研究が進められている。」との記載もある。
そして,下記刊行物Bに「幾つかの現行のカラムは1ミクロンという小ささの粒子を含み,15,000から100,000psi(およそ100から690MPa)という高さの圧力で作動する」と記載されているように,100MPaの圧力で作動する分析カラムも本願出願日前に普通に知られているのだから,ましてや,それより低い60メガパスカル(MPa)の耐圧性能を有する分析カラムが普通に用いられたことは明らかである。

刊行物A:鎗田 孝,「”超”高速液体クロマトグラフィー -超高圧・高温下での分離」,化学と工業,第56巻,第12号,2003年,1350頁
(刊A-1)「HPLCの分離能を向上させるためには,より微細な充てん剤を使用することが有効である。しかし,充てん剤の粒径が小さくなるほどカラム内での圧力抵抗が増加するために,実用的な時間で分析を行うためにはより耐圧性に優れた装置が必要となる。そのため,通常のHPLCで使用される充てん剤の径はたかだか3μm程度までである。これに対し,Mac Nairらは400MPaでも操作可能なHPLC装置を試作し,粒径1.5μmのODS-シリカ充てん剤を用いた分離を行うことにより,300,000段/m以上(通常のHPLCの約4倍)という高効率の分離を行った^(1))。以来,”超高圧(ultrahigh pressure)”LCと名付けられたこの分離法に関する研究が進められている。」(1350頁左欄本文7?19行)

刊行物B:特表2010-527003号公報(【公表日】平成22年8月5日)
(刊B-1)「 【0007】
クロマトグラフィー分離媒体には,(通常はステンレス鋼もしくは溶融シリカで製造される)管状カラムに充填された小粒子が含まれ,もしくはキャピラリ管の内壁上のコーティングが含まれ得る。幾つかの現行のカラムは1ミクロンという小ささの粒子を含み,15,000から100,000psi(およそ100から690MPa)という高さの圧力で作動する。これらのカラムは,一般に,より大きな粒子を含むカラムよりも高い分離効率を示すが,用いられる高圧により適する分離媒体を用いることによってさらにより高い効率が実現可能であるものと考えられる。」

(2) 分析カラムにおいて,分離能を向上することは,クロマトグラフィーの技術分野における自明な課題である。また,分離能の高いカラムはコストが高く,妨害物質を除去することを目的とするプレカラムは,一般的に分離カラムに比較して高い分離能を要求されないことも技術常識であり,プレカラムより分析カラムの作動圧を高く設定することも,例えば,下記刊行物Cに「分離カラムC_(2)は高分離能を得るために,プレカラムC_(1)に比べ粒子径の細かい充填剤を長いカラムに充填しているため背圧が高く,これをサンプル溶液が通過するためには高い送出圧が必要となる。 」(刊C-1)と記載されているように普通に行われていることである。

そうすると,分析カラムの分離能の向上を図るべく,引用発明において,分析カラムを微細な充てん剤からなる分離能の高い分析カラムに置換し,プレカラムへの移動相の送液圧より高い60メガパスカル(MPa)以上の高圧で移動相を送液することで,本願発明(G)のごとくの構成することに困難性は無い。

刊行物C:特開2008-298173号公報
(刊C-1)「【0064】
図10(A)において,矢印S_(1)から流路121へ供給された試料を含む溶媒(以下,「サンプル溶液」という)は,流路ヘッド部12及び流路ポート部22から流路211へ導入される。この際,分離カラムC_(2)は高分離能を得るために,プレカラムC_(1)に比べ粒子径の細かい充填剤を長いカラムに充填しているため背圧が高く,これをサンプル溶液が通過するためには高い送出圧が必要となる。従って,流路211へ導入されたサンプル溶液は,分離カラムC_(2)へ送出されることなく,流路ポート部21に連通する流路ヘッド部11及び流路111を通って,図中矢印S_(2)方向へ排出されることとなる(図中矢印F1参照)。この際,試料がプレカラムC_(1)に吸着される。」

(3) その結果,引用発明(e)においてメラトニン成分を分離するために分析カラムに送液するポンプ2(112)の耐圧範囲も分析カラムの性能に合わせて60メガパスカル(MPa)以上としなければならないことは,自明なことである。引用発明において,60メガパスカル(MPa)の耐圧性能を有する分析カラムを採用することにより,必然的に本願発明(F)の「前記第二の送液ポンプの耐圧範囲が60メガパスカル(MPa)以上」のごとく構成されるものといえる。

(4) 他方,引用発明のプレカラム(130)に用いられるポンプ1の耐圧範囲は,上記「(2)」で述べたように,妨害物質を除去することを目的とするプレカラムは,一般的に分離カラムに比較して高い分離能を要求されないことは技術常識であるから,引用発明(c)の「ポンプ1(110)から,・・・プレカラム(130)により,メラトニンが適度に保持されるが,唾液由来の妨害成分の効果的な除去」を行う際の圧力は低くてよい。引用発明の「ポンプ1(110)」の使用形態に照らし,不必要に高い耐圧範囲のポンプを使用する必要が無いことから,本願発明(F)の「前記第一の送液ポンプの耐圧範囲が40メガパスカル(MPa)以下」とすることは,当業者が適宜案出し得る単なる設計的事項といえる。

3 本願発明の効果について
本願発明(F)の送液ポンプの耐圧範囲について,本願明細書では「・・・,前処理用カラムに送液する送液ポンプには,概ね40MPa以下の圧力で送液が可能な通常型のポンプを用い」(【0011】)と記載されている。
「・・・例えば,近年通常より細かい粒子が充てんされたカラムに概ね60MPa程度の高圧力のポンプでバッファを流し込むことで分離性能を高め,・・・」(【0005】)と記載されている。
このことから,本願発明(F)の送液ポンプの耐圧範囲の数値限定は,液体クロマトグラフ装置がカラムの性能に見合うように作動できる程度のことであって,刊行物1並びに上記技術常識及び周知の技術事項に接した当業者の予測を超えるようなものではない。
また,他の本願発明の効果についても,刊行物1並びに上記技術常識及び周知の技術事項から当業者が予測できるものであって,格別顕著なものとはいえない。

第7 結語
以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された発明並びに上記技術常識及び周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。 よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-25 
結審通知日 2016-01-05 
審決日 2016-01-19 
出願番号 特願2010-191635(P2010-191635)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤坂 祐樹  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 郡山 順
▲高▼橋 祐介
発明の名称 液体クロマトグラフ装置及び分析方法  
代理人 井上 学  
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