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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1311795
異議申立番号 異議2015-700029  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-09-28 
確定日 2015-12-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第5693067号「スロットマシン」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5693067号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5693067号の請求項1に係る特許についての出願は、平成22年7月9日に特許出願され、平成27年2月13日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第5693067号の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を横方向に並べて複数備え、
前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
表示結果が導出される前に、入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、
前記事前決定手段の決定結果および前記導出操作手段の操作に応じて、表示結果を導出する制御を行う手段であって、前記事前決定手段の決定結果が所定結果となった場合において、当該所定結果に応じて予め定められた有利手順で前記導出操作手段が操作されたときには、前記有利手順と異なる手順で前記導出操作手段が操作されたときに導出する表示結果の組合せよりも遊技者にとって有利な表示結果の組合せである有利組合せを導出可能な制御を行う導出制御手段と、
報知期間において前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果となったときに当該所定結果に対応する有利手順を特定するための情報を報知する制御を行う報知制御手段と、
所定契機の成立により有利条件が設定されたことに基づいて制御される状態であって、当該有利条件に対応する有利終了条件が成立して前記有利条件が設定されていない通常状態となるまで、前記報知期間となる割合が前記通常状態であるときよりも高い有利状態に制御する有利状態制御手段と、
前記有利状態において報知期間が終了した後に報知期間への移行条件が成立するまでの非報知期間を決定する非報知期間決定手段と、
所定遊技状態において前記有利組合せのうちの特定組合せが導出されたときに前記所定遊技状態よりも遊技者にとって有利な有利遊技状態に移行させる遊技状態移行手段と、
を備え、
前記非報知期間決定手段は、一の報知期間以前の非報知期間が所定期間以下であることを示す特殊条件が成立している場合には、成立していない場合に比べて、当該一の報知期間終了後の非報知期間の平均期間が長くなるように非報知期間を決定し、
前記導出制御手段は、
前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果のうち前記特定組合せの導出を許容する第1決定結果のときに、前記第1決定結果に対応する第1手順で操作されたときには前記特定組合せを導出可能な制御を行い、前記第1手順以外の手順で操作されたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行い、
前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果のうち前記特定組合せの導出を許容する第2決定結果のときに、前記第1手順と異なる手順であり前記第2決定結果に対応する第2手順で操作されたときには前記特定組合せを導出可能な制御を行い、前記第2手順以外の手順で操作されたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行い、
前記事前決定手段の決定結果が、前記第1決定結果となったとき、前記第2決定結果となったとき、のどちらのときでも前記第1手順でもなく前記第2手順でもない予め定められた共通手順で操作がされたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行い、
前記スロットマシンは、
前記所定遊技状態において前記有利手順を特定するための情報を報知していないときに、前記共通手順以外の手順で操作されたときには、前記共通手順であったときに行われることのない遊技者にとって不利な不利制御を行うことが可能であり、
前記共通手順は、前記複数の可変表示部のうち左の可変表示部から右の可変表示部に向かって順番に表示結果を導出させる手順を含む
ことを特徴とするスロットマシン。

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、主たる証拠として下記甲第1号証及び従たる証拠として下記甲第2号証乃至甲第5号証を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、さらに、本件特許請求の範囲の記載には不備があり、請求項1に係る特許は同法第36条第6項第1号又は第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるため、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

<証拠方法>

甲第1号証:特開2009-291419号公報
甲第2号証:特開2004-16376号公報
甲第3号証:特開2004-313508号公報
甲第4号証:特開2008-54923号公報
甲第5号証:特開2004-223054号公報

第4 甲第1号証ないし甲第5号証の記載事項
(1)甲第1号証には、以下のように記載されている。(下線は当審で付与した。)
(1-a)「【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、遊技媒体が投入され、各々複数の図柄が表示された複数のリールが回転した後、停止した時に、いずれかの役に対応した前記図柄の組合せが所定の表示位置に停止した場合、当該役に対応する処理が行われて1回の遊技が終了するスロットマシンであって、外部からの操作に応じて前記遊技の開始指示を行う遊技開始指示手段と、前記遊技開始手段からの開始指示に応じて、前記遊技媒体が投入されることなく次回の遊技を行うための処理がなされる再遊技役を含む複数の役のうち、いずれか1つの役または同時に複数の役に当選したか否かを定める抽選を行う役抽選手段と、前記抽選における前記複数の役の当選確率を変動させる当選確率制御手段と、前記複数のリールの各々に対応して設けられ、対応するリールの停止指示を外部からの操作に応じて行う複数の停止指示手段と、前記遊技開始手段からの開始指示に応じて前記複数のリールを回転させるとともに、前記複数の停止指示手段のいずれかにより前記停止指示が行われた場合、該停止指示を行った停止指示手段に対応するリールを停止させるリール制御手段とを備え、前記役抽選手段により同時に複数の役が当選した場合において、該当選した複数の役のうち所定の役について、各々、対応する前記図柄の組合せが前記表示位置に表示されるための、前記複数の停止指示手段に対する操作順序が予め対応付けられており、前記リール制御手段は、前記役抽選手段により同時に複数の役が当選したときに、前記複数の停止指示手段が順次操作されると、該当選した複数の役のうち前記複数の停止指示手段に対して行われた操作順序に対応付けられた役に対応する図柄組み合わせが、前記表示位置に表示されるように前記複数のリールを停止させ、前記当選確率変動手段は、前記役抽選手段により同時に複数の役が当選し、該当選した複数の役のうち特定の操作順序に対応付けられた役に対応する図柄組合せが前記表示位置に停止した場合、前記役抽選手段における前記再遊技役の当選確率が高くなる再遊技役高確率当選状態へ移行させることを特徴とする。」

(1-b)「【0013】
また、本発明は、上述したいずれかのスロットマシンにおいて、前記役抽選手段は、前記再遊技役高確率当選状態へ移行しているときに、同時に当選し得る複数の役として、前記複数の停止指示手段に対する固有の操作順序が対応付けられた第1の役と、該固有の操作順序以外の操作順序が対応付けられた第2の役とを含む複数の役を含めた抽選を行い、前記リール制御手段は、前記役抽選手段により前記第1の役と第2の役とを含む複数の役が同時に当選し、かつ、前記複数の停止指示手段が前記固有の操作順序以外の操作順序で操作された場合、前記第2の役に対応する前記図柄組合せが前記表示位置に表示されるように前記複数のリールを停止させ、前記当選確率変動手段は、前記第2の役が成立した場合、前記抽選における前記再遊技役の当選確率を、前記再遊技役高確率当選状態へ移行する前の当選確率に戻すことを特徴とする。」

(1-c)「【0016】
また、本発明は、上記のスロットマシンにおいて、前記図柄組合せを表示するための複数の表示位置を有し、前記役抽選手段は、前記複数の停止指示手段に対する特有の操作順序が対応付けられ、かつ、対応する前記図柄の組合せが表示された表示位置に応じて、異なる前記遊技媒体の数が払い出される小役を含んだ前記役抽選を行い、前記リール制御手段は、前記役抽選手段により前記第1の役と第2の役とを含む複数の役が同時に当選し、かつ、前記複数の停止指示手段が前記固有の操作順序で操作された場合、前記第1の役に対応する前記図柄組合せが複数の前記表示位置のいずれかに表示されるように前記複数のリールを停止させるとともに、前記役抽選手段において前記小役が当選し、かつ、前記複数の停止指示手段が前記特有の操作順序で操作された場合は、前記遊技媒体の払出数が多くなる表示位置に、該小役に対応する図柄の組合せが表示されるように前記複数のリールを停止させ、前記特有の操作順序以外の操作順序で操作された場合は、前記遊技媒体の払出数が少なくなる表示位置に、該小役に対応する図柄の組合せが表示されるように前記複数のリールを停止させ、前記リール制御手段により、前記複数の表示位置のいずれかに前記第1の役に対応する前記図柄組合せが表示された場合、所定の報知終了条件を満たすまで、前記役抽選手段により前記小役が当選したときに、前記特有の操作順序を示す情報を報知する操作順序報知手段を備えることを特徴とする。」

(1-d)「【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態に係るスロットマシン10の外観を図1に示す。図1は、スロットマシン10の正面図であり、同図において、スロットマシン10の筐体の前面部には、フロントパネル20が設けられている。このフロントパネル20の略中央には、スロットマシン10の内部に回転自在に設けられている3個のリール40L,40C及び40Rの外周面に印刷された図柄を表示するための表示窓22が形成されている。リール40L,40C及び40Rは、図1中、水平方向に並設され、各々リング状の形状を有し、その外周面には21個の図柄が等間隔で印刷された帯状のリールテープが貼り付けられている。そして、表示窓22からは、リール40L,40C及び40Rが停止しているとき、各リールに印刷された21個の図柄のうち連続した3つの図柄が視認可能となっている。よって、表示窓22には、3図柄×3リール=合計9つの図柄が停止表示される。ここで、リール40L,40C及び40Rが停止しているときに表示される3つの図柄のうち、最も上側の図柄位置を上段U、中央の図柄位置を中段M、最も下側の図柄位置を下段Lとする。」

(1-e)「【0055】
リール制御手段430は、スタートスイッチ36から発信されたリール回転開始信号を受信することによって、モータ80L、80C、80Rを駆動してリール40L、40C、40Rを回転させ、ストップスイッチ37L、37C、37Rから発信されたリール停止信号の受信によって、リール40L、40C、40Rを停止させるリール作動に関する制御を行う。リールの停止制御においては、役抽選手段410による役抽選の結果に応じて、各種役に対応する図柄組合せが有効ライン上で揃うように、または、揃わないように、リール40L、40C、40Rを停止させる。また、リール制御手段430は、遊技者によるストップスイッチ37L、37C、37Rの操作順序を判定する操作順序判定手段432を備え、一般遊技A、一般遊技B、RT遊技、または、AR遊技中に、役抽選手段410において複数の小役2または再遊技役が同時当選した場合、ストップスイッチの操作順序に応じて、同時当選した役のうち、どの役を成立させるのかを決定する。」

(1-f)「【0073】
また、図13(b)に示すB群には、再遊技役c,再遊技役d,再遊技役e(当選番号16)、再遊技役c,再遊技役d,再遊技役f(当選番号17)、再遊技役c,再遊技役d,再遊技役g(当選番号18)、再遊技役c,再遊技役d,再遊技役e,再遊技役f(当選番号19)、または、再遊技役c,再遊技役d,再遊技役e,再遊技役g(当選番号20)の各グループがあり、これらグループのいずれかが当選すると、ストップスイッチ37L,37C,37Rの操作順序に応じて、再遊技役cまたは再遊技役dが成立するようにリール40L,40C,40Rの停止制御を行う。各操作順序とリール停止制御との関係について、図12に示した内容との違いは、ストップスイッチ37L,37C,37Rが特定の操作順序で操作された場合、再遊技役cが成立し、それ以外の操作順序で操作された場合は、再遊技役dが成立する点である。
【0074】
すなわち、B群において、たとえば同時に当選し得る再遊技役c,再遊技役d,再遊技役e(図7の当選番号16)に着目した場合、再遊技役c,再遊技役d,再遊技役eが「複数の役」に相当し、このうち、再遊技役cが「第1の役」、再遊技役dが「第2の役」に各々相当する。そして、再遊技役cに対応付けられた操作順序1が「固有の操作順序」に相当し、再遊技役dに対応付けられた操作順序2?6が「固有の操作順序以外の操作順序」に相当する。また、詳しくは後述するが、RT遊技中に、「第1の役」に相当する再遊技役cが成立すると、「特有の操作順序を示す情報を報知する」AR遊技に移行し、「第2の役」に相当する再遊技役dが成立すると、一般遊技へ移行する(再遊技役の当選確率がRT遊技へ移行する前の当選確率に戻る)。また、再遊技役dは、A群およびB群のいずれにおいても成立すると遊技状態がRT遊技から一般遊技Bへ移行するため、「第2の役」および「第4の役」の双方に相当することになるが、A群におけるRT遊技から一般遊技Bへ移行する役と、B群におけるRT遊技から一般遊技Bへ移行する役とを、異なる役にしてもよい。」

(1-g)「【0076】
図5に戻り、入賞判定手段440は、リール制御手段430により、リール40L,40C,40Rのすべてについて停止制御が行われると、図10に示した配当情報を参照して有効ライン上に何らかの役に対応する図柄組合せが揃ったか否かを判定する。また、入賞判定手段440は、遊技状態制御手段442を備え、判定の結果、成立した役などに基づいて、前述した遊技状態(一般遊技A,一般遊技B,RT遊技,AR遊技,MB遊技,BB遊技)の移行について制御する。ここで、現在の遊技状態を示す情報は、図3に示したRAM110に記憶されており、図14に示す遊技状態の移行条件に基づいて当該遊技状態を示す情報を更新する。この遊技状態を示す情報は、前述した当選確率制御手段420が役抽選テーブルの切り替え制御を行う際に参照される。図14(a)に示すように、まず、現在の遊技状態が一般遊技Aであった場合、役抽選で小役1aに当選し、かつ、その遊技で小役1aを入賞させられなかった(すなわち、小役1aを取りこぼした)ときに、一般遊技Bへ移行する。また、現在の遊技状態が一般遊技Bであった場合は、再遊技役bが成立したときにRT遊技へ移行する。現在の遊技状態がRT遊技であった場合は、再遊技役dが成立すると一般遊技Bへ移行し、再遊技役cが成立するとAR遊技へ移行する。現在の遊技状態がAR遊技であった場合は、AR遊技へ移行してから遊技が50回行われる(50ゲーム消化)と、一般遊技Aへ移行する。」

(1-h)上記(1-e)によれば、役抽選手段410による役抽選の結果に応じて、各種役に対応する図柄組合せが有効ライン上で揃うように、または、揃わないように、リール40L、40C、40Rを停止させるのであるから、役抽選手段410による役抽選が、リール40L、40C、40Rを停止する前に行われていることは明らかである。

(1-i)上記(1-b)及び(1-c)によれば、固有の操作順序が対応付けられた第1の役と、該固有の操作順序以外の操作順序が対応付けられた第2の役が同時に当選した場合に、前記固有の操作順序以外の操作順序で操作された場合、第1の役が成立すると、所定の報知終了条件を満たすまで、特有の操作順序を示す情報を報知し、第2の役が成立すると、再遊技役の当選確率を再遊技役高確率当選状態へ移行する前の当選確率に戻す。そして、第1の役の方が第2の役よりも遊技者にとって有利であることは明らかである。
また、特有の操作順序が対応付けられた小役に当選し、かつ、特有の操作順序で操作された場合は、前記遊技媒体の払出数が多くなる表示位置に、該小役に対応する図柄の組合せが表示される、前記特有の操作順序以外の操作順序で操作された場合は、前記遊技媒体の払出数が少なくなる表示位置に、該小役に対応する図柄の組合せが表示される。そして、遊技媒体の払出数が多くなる表示位置に、該小役に対応する図柄の組合せが表示される方が、前記遊技媒体の払出数が少なくなる表示位置に、該小役に対応する図柄の組合せが表示されるよりも遊技者にとって有利であることは明らかである。
このことから、固有の操作順序が対応付けられた第1の役と該固有の操作順序以外の操作順序が対応付けられた第2の役が同時に当選した場合、若しくは、特有の操作順序が対応付けられた小役が当選した場合において、固有の操作順序若しくは特有の操作順序で操作された場合には、固有の操作順序若しくは特有の操作順序以外の操作順序で操作された場合よりも遊技者にとって有利な図柄組み合わせが表示されることは明らかであるといえる。

(1-j)図13(b)からは、当選番号16が当選したときに、操作順序1で操作された場合には第1の役(再遊技役c)を成立させ、それ以外の操作順序で操作された場合には第2の役(再遊技役d)を成立させ、当選番号17が当選したときに、操作順序2で操作された場合には第1の役を成立させ、それ以外の操作順序で操作された場合には第2の役を成立させ、当選番号18が当選したときに、操作順序3,4で操作された場合には第1の役を成立させ、それ以外の操作順序で操作された場合には第2の役を成立させ、当選番号19が当選したときに、操作順序5で操作された場合には第1の役を成立させ、それ以外の操作順序で操作された場合には第2の役を成立させ、当選番号20が当選したときに、操作順序6で操作された場合には第1の役を成立させ、それ以外の操作順序で操作された場合には第2の役を成立させることが把握できる。
また、操作順序1は、ストップスイッチ37L(左)→37C(中)→37R(右)の順に操作することを指していることが把握できる。

上記の事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。
「各々複数の図柄が表示された複数のリール40L,40C及び40Rを水平方向に並設し、
前記リール40L、40C、40Rを回転させた後、前記リール40L、40C、40Rを停止させ、各役に対応する図柄組合せのいずれかが、有効ライン上に停止表示された場合、その図柄組合せに対応する役が成立したことになるスロットマシン10において、
前記リール40L、40C、40Rが停止する前に、役抽選を行う役抽選手段410と、
前記リール40L、40C、40Rを停止させるストップスイッチ37L、37C、37Rと、
同時当選した役のうち、ストップスイッチの操作順序に応じて、どの役を成立させるのかを決定する手段であって、役抽選手段により、固有の操作順序が対応付けられた第1の役と該固有の操作順序以外の操作順序が対応付けられた第2の役が同時に当選した場合、若しくは、特有の操作順序が対応付けられた小役が当選した場合において、固有の操作順序若しくは特有の操作順序で操作された場合には、固有の操作順序若しくは特有の操作順序以外の操作順序で操作された場合よりも遊技者にとって有利な図柄組み合わせが表示されるようにリール停止制御を行うリール制御手段430と、
AR遊技にて、所定の報知終了条件を満たすまで、前記役抽選手段により前記小役が当選したときに、前記特有の操作順序を示す情報を報知する操作順序報知手段と、
RT遊技中に、第1の役が成立すると、特有の操作順序を示す情報を報知するAR遊技に移行させる遊技状態制御手段442と、を備え、
リール制御手段430は、
役抽選手段410により当選番号18が当選したときに、操作順序3,4で操作された場合には第1の役を成立させ、それ以外の操作順序1,2,5,6で操作された場合には第2の役を成立させ、
役抽選手段410により当選番号20が当選したときに、操作順序6で操作された場合には第1の役を成立させ、それ以外の操作順序1-5で操作された場合には第2の役を成立させ、
役抽選手段410により当選番号18が当選したとき、当選番号20が当選したとき、のどちらのときでも操作順序3,4でもなく操作順序6でもない操作順序1,2,5で操作されたときには、第2の役を成立させ、
操作順序1,2,5は、ストップスイッチ37L(左)→37C(中)→37R(右)の順に操作する操作順序1を含むスロットマシン10。」

(2)甲第2号証には、以下のように記載されている。
(2-a)「【0019】
すなわち、複数の図柄(61)を表示可能な図柄表示手段(41)と、入賞図柄(61)の抽選を行うための当選抽選手段(110)と、前記当選抽選手段(110)の抽選結果、所定の入賞図柄(61)に当選し、且つ遊技状況が予め定められた入賞の態様になることにより入賞となるように設定された遊技制御手段と、前記通常遊技よりも遊技者側に有利な特殊遊技への移行を抽選により決定し、かかる移行抽選に当選した場合、移行フラグを成立させるための移行抽選決定手段(120)と、前記移行抽選決定手段(120)の抽選結果、前記特殊遊技の当選により、成立した前記移行フラグの個数を加算し、前記特殊遊技の実行により、前記移行フラグの個数を減算するためのフラグ数カウント手段(130)と、前記フラグ数カウント手段(130)によりカウントした前記移行フラグの個数を記憶するための移行フラグ数記憶手段(140)と、前記移行フラグ成立中に、所定条件を満足することにより、前記特殊遊技への移行を決定するための特殊遊技移行決定手段(150)と、前記特殊遊技終了時、前記移行フラグ数記憶手段(140)に前記移行フラグが未だ残っている場合、次の前記特殊遊技を開始する迄に、所定の遊技回数の通常遊技を実行させるための通常遊技消化手段(160)とを備えた遊技機(10)であって、前記特殊遊技移行決定手段(150)は、前記通常遊技消化手段(160)による所定の遊技回数の通常遊技の実行中、前記特殊遊技へ移行しないことを特徴とする。」

(2-b)「【0022】
また、ここで、「特殊遊技」とは、通常遊技よりも遊技者側に有利な遊技であって、具体的には、通常遊技よりも入賞図柄の抽選確率を高く設定することや、遊技者に払い出される遊技メダルの枚数を多く設定することや、その頻度を多く設定すること等により、通常遊技よりも遊技者に大きな利益を付与することができるように設定されている遊技を意味するものである。「特殊遊技」とは、具体的には、例えば、いわゆるリプレイタイム遊技(RTゲーム)や、アシストタイム遊技(ATゲーム)や、アシストリプレイタイム遊技(ARTゲーム)や、チャレンジタイム遊技(CTゲーム)等を含むものである。これらの遊技の内容を説明する。かかる「リプレイタイム遊技(RTゲーム)」とは、所定の遊技期間中、いわゆる再遊技(リプレイ)の当選抽選手段(110)の当選抽選確率が高確率に設定されている遊技である。このため、RTゲーム中は、遊技者の手持ちの遊技メダルの枚数を、ほとんど減らすことなく遊技を行うことが可能となるものである。具体的には、RTゲーム中は、当選抽選手段(110)の当選判定テーブル(113)として、通常遊技中の通常遊技用判定テーブル(115)よりも再遊技の抽選確率を高確率に設定した特殊遊技用判定テーブル(118)を使用して当選抽選が行われるものである。」

(2-c)「【0026】
ここで、ATゲームのうち、所定の当選図柄の当選抽選手段(110)の抽選結果に対応する停止制御に関する情報を報知可能なものとは、具体的には、いわゆる押し順ATゲームと呼ばれるもので、所定の遊技期間中、所定の当選図柄の入賞可能な停止操作順序、いわゆる複数のストップスイッチ(50)の停止操作順序に関する情報を遊技者に向かって報知するようなものである。例えば、3個の回転リール(40)を、それぞれ対応したストップスイッチ(50)により停止操作する順番の種類として、左→中→右や、右→中→左等の全部で6パターン有しており、特定の一つの停止操作パターン、すなわち、三個のストップスイッチ(50)の停止操作順番が、特定の順番に合致している場合にのみ、入賞するような停止制御に設定されているようなものである。かかる場合に入賞可能なストップスイッチ(50)の停止操作順序を、通常は遊技者に向かって報知しないが、ATゲーム中の場合に限って、報知可能とするようなものである。」

(2-d)「【0032】
(請求項2)
請求項2記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
すなわち、前記通常遊技消化手段(160)は、次の前記特殊遊技開始迄の通常遊技の遊技回数を、抽選により決定することを特徴とする。
【0033】
本発明は、特殊遊技終了時に、移行フラグが残っている場合に、所定の遊技回数の通常遊技の期間、いわゆる潜伏期間の遊技回数を、抽選により、決定するものである。
(作用)
本発明は、特殊遊技終了時、移行フラグ数記憶手段(140)に移行フラグが未だ残っている場合、通常遊技消化手段(160)の抽選により、次の特殊遊技を開始する迄の通常遊技の遊技回数を、絶えず変更することができる。これにより、いわゆる潜伏期間である通常遊技の遊技回数を変化させることができ、かかる遊技回数が固定されているようなものと比較して、遊技に意外性を付与することができ、遊技を変化させることができる。」

上記の事項を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「移行抽選に当選した場合、移行フラグを成立させ、前記移行フラグ成立中に、所定条件を満足することにより、有利な所定の当選図柄の入賞可能な停止操作順序を遊技者に向かって報知する特殊遊技への移行を決定し、前記特殊遊技終了時、前記移行フラグ数記憶手段(140)に前記移行フラグが未だ残っている場合、次の前記特殊遊技を開始する迄に、所定の遊技回数の通常遊技を実行させ、所定の遊技回数の通常遊技の期間を抽選により決定する遊技機。」

(3)甲第3号証には、以下のように記載されている。
(3-a)「【0066】
パチスロ遊技機100は、以上のように構成されていて、遊技制御装置50等の制御系により、以下に説明する遊技制御を行うようになっている。
まず、遊技制御装置(メイン制御装置)50における一回のゲームのメインの制御を図4のフローチャートを参照して説明する。
なお、このパチスロ遊技機100のゲームには、ビッグボーナス入賞やレギュラーボーナス入賞等の特別入賞に当選して特別入賞を成立させる当選権利が記憶されている場合に、特別入賞を成立させることが可能な通常遊技状態のゲームと、通常遊技状態のゲームにおいて特別入賞が成立した場合に、遊技者に大量の遊技媒体を付与するように行われる特別遊技状態のゲームと、基本的に通常遊技状態のゲームと同等であるが、特別入賞が当選しても特別入賞の成立を保留制御する特定遊技状態のゲームとがある。なお、当選権利が記憶されていない場合は通常遊技状態となる。また、特定遊技状態中は、特別入賞が当選しても成立しないが、特別入賞が当選した状態で、さらに特別入賞が当選した場合には、特別入賞を成立させる当選権利が累積的に記憶(ストック)される。すなわち、パチスロ遊技機100は、特別入賞を成立させる複数の当選権利を記憶可能となっている。また、このパチスロ遊技機では、特別入賞の当選権利が記憶されていない状態の通常遊技状態のゲームで、特別入賞が当選した場合と、特別遊技状態が終了した際に特別入賞を成立させる当選権利が記憶されている場合に、特定遊技状態となり、特定遊技状態の後述する解除条件が成立した場合に、特定遊技状態から通常遊技状態となる。」

(3-b)「【0085】
そして、特別入賞に当選して当選権利が生じたので、当選した特別入賞を成立させない特別入賞の成立を保留制御する特定遊技状態とする(ステップS35)。ここで、特定遊技状態には、特定遊技状態の解除(特別入賞の成立の保留制御の解除)を行うための各々固有の解除条件が設定される複数のモードが存在し、これらモードのうちから後述するように選択されたモードにより保留制御の解除を行うようになっている。
ここで、以下の表3を参照して特定遊技状態の各モードにおける解除条件を説明する。」

(3-c)「【0146】
次ぎに、この実施の形態の第2の変形例を説明する。上記実施の形態においては、モードと解除条件との関係を示す表3と、表5のモード移行表とに示されるように、解除の成功率(解除率)が高い特定のモードであるE,Fモードの場合には、モード決定処理(ステップS83)において、30%の確率でAモードに移行し、70%の確率で特定のモードのままとなる。従って、特定モードでの特定遊技状態が繰り返される可能性があるが、第2の変形例では、特定モードでの特定遊技状態の繰り返し回数(特定遊技状態での滞在回数)が所定回数以上となった場合に強制的に特定モードから特定モードよりも特定遊技状態の解除率が低いモード(例えば、Aモード)にモードを変更するようになっている。」

上記の事項を総合すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「特別入賞が成立した場合に、遊技者に大量の遊技媒体を付与するように行われる特別遊技状態のゲームと、特別入賞が当選しても特別入賞の成立を保留制御する特定遊技状態のゲームを有し、特定遊技状態には、特定遊技状態の解除を行うための各々固有の解除条件が設定される複数のモードが存在し、特定モードでの特定遊技状態の繰り返し回数が所定回数以上となった場合に強制的に特定モードから特定モードよりも特定遊技状態の解除率が低いモードにモードを変更するパチスロ遊技機100。」

(4)甲第4号証には、以下のように記載されている。
(4-a)「【0117】
一方、BB遊技中でもSB遊技中でもなかった場合には(S600:no)、前回の遊技で回胴停止ボタン38a,38b,38cを操作した順序(押し順)が適正であったか否かを判断する(S602)。図15を用いて前述したように回胴20a,20b,20cは、遊技者が回胴停止ボタン38a,38b,38cをどのような順序で操作しても停止するようになっている。しかし、本実施例の遊技機1には、予め適正な押し順が定められており、通常時(ここでは、AT中ではないとき)には、順押し(左、中、右の順で操作)だけを許容し、ATが開始されると、順押し以外の押し順も許容するようになっている。そして、前回の遊技で押し順が適正ではなかった場合、すなわち、通常時であるのに順押し以外の押し順で回胴を停止していた場合には(S602:no)、押し順が適正ではなかったペナルティとして、ATの抽選を行わない期間(AT抽選中止期間)を設定した後(S604)、図21のAT抽選処理を終了して、図20のAT制御処理に復帰する。本実施例の遊技機1では、AT抽選中止期間として、所定回数(例えば、50回)の遊技を終了するまで間はATの抽選を行わないように設定されている。」

(4-b)「【0127】
D.本実施例の遊技機によって得られる遊技性 :
図23は、遊技を繰り返す中でアシストタイムが設定される様子を示したタイムチャートである。図21を用いて前述したように、アシストタイム(AT)を開始するか否かは、サブ制御基板220が行うAT抽選によって決定されている(図21のS614)。ATが開始される前の通常時は、回胴停止ボタン38a,38b,38cを順押し(左、中、右の順で操作)しなければ、AT抽選が行われないというペナルティが科されるように設定されているので、遊技者は順押しで回胴を停止するのが一般的である。そして、通常時にベル小役とSB役との重複役に内部当選して、遊技者が回胴停止ボタン38a,38b,38cを順押しすると、SB役の入賞を成立させる図柄組合せが優先して揃うように各回胴20a,20b,20cが停止し、ベル小役の入賞は成立しないようになっている

【0128】
これに対して、AT抽選に当選することによって、アシストタイム(AT)が開始されると(図20のS516)、回胴停止ボタン38a,38b,38cの操作順序の制限がなくなって、逆押し可能となる。そして、AT中にベル小役とSB役との重複役に内部当選すると、当選したSB役の色(赤、青、黄の何れか)、および逆押しが有利である旨を遊技者に報知する演出が行われる(図20のS510)。図9に示されているように、ベル小役は色違いのSB役と重複しているので、当選したSB役の色が報知されれば、重複当選しているベル小役の色の予測が容易になる。例えば、赤のSB役に当選した旨が報知された場合には、遊技者は、青あるいは黄のベル小役を狙って、回胴停止ボタン38a,38b,38cを逆押しすることにより、効率的にベル小役の入賞を成立させることができるように設定されている。
【0129】
ここで、図6に示したように、重複するベル小役とSB役とでは付与される特典に違いがあり、ベル小役の入賞が成立すると15枚の遊技メダルが払い出されるのに対して、SB役の入賞が成立するとSB遊技が開始される。このSB遊技は、通常遊技よりも遊技役の入賞が成立し易くなっているものの(図9、図14参照)、必ず遊技役の入賞を成立させることができるわけではなく、しかも遊技を1回行うと終了するので、遊技者にとっては、確実に遊技メダルが払い出されるベル小役の方がSB役よりも価値の高いものとなっている。従って、ベル小役の入賞が成立し得るようになるアシストタイム(AT)は、遊技者にとって有利な期間である。」

(5)甲第5号証には、以下のように記載されている。
(5-a)「【0038】
ここで、一般遊技状態では、“6種類”の各停止順序が「許可順序」と決定される確率に偏りを持たせるようにしている。具体的には、「ベルの小役」に内部当選したゲームでは、“0”?“255”の範囲から抽出された乱数値に基づいて、「左中右」が「許可順序」と決定される確率が“11/256”、「左中右」以外の各々の停止順序が「許可順序」と決定される確率が“49/256”となるようにしている。
【0039】
また、実施例の遊技機1は、「左中右」以外の停止順序で停止操作を行った場合、遊技者が一のゲームを行うために賭けた単位遊技価値(“1枚”のメダル)に対して遊技者に付与される遊技価値の期待値が“1”を超えないように設計されている。すなわち、「左中右」以外の停止順序で停止操作を継続して行った場合のいわゆる「機械割」が“100%”を超えないように設計されている。また、補助期間以外の一般遊技状態において「左中右」で停止操作を継続して行った場合の上記期待値は、「左中右」以外の停止順序で停止操作を継続して行った場合と比べて高くなるように設計されている。」

(5-b)「【0043】
また、「一般遊技状態」では、補助期間の他に「ペナルティ(罰則)期間」が設けられる。「ペナルティ期間」とは、「一般遊技状態」において「プラムの小役」に内部当選した場合でも補助期間の発生回数を決定するための抽選が行われない期間をいう。この「ペナルティ期間」の発生条件は、「一般遊技状態(補助期間を除く)」において「左中右」以外の停止順序で停止操作を行うことである。また、その「終了条件」は、基本的に上記発生条件が成立した後、“5回”のゲームが終了することである。「ペナルティ期間」が終了するまでに必要なゲームの回数を、以下「ペナルティゲーム回数」という。なお、「一般遊技状態」では、「ペナルティ期間」及び「補助期間」の両方が発生した状態が生じ得る。また、後述のペナルティゲーム回数カウンタ112の値が“1以上”である一般遊技状態が「ペナルティ期間」である。「ペナルティ期間」の存在により、遊技者は、より多くのメダルの獲得を目的として「左中右」で停止操作を行い、「補助期間」が発生することに期待して遊技を進めることとなる。」

第5 当審の判断
(1)特許法第29条第2項について
ア 対比
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「各々複数の図柄が表示された複数のリール40L,40C及び40Rを水平方向に並設し」との構成は、本件発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を横方向に並べて複数備え」との構成に相当する。

(イ)甲1発明の「前記リール40L、40C、40Rを回転させた後、前記リール40L、40C、40Rを停止させ、各役に対応する図柄組合せのいずれかが、有効ライン上に停止表示された場合、その図柄組合せに対応する役が成立したことになるスロットマシン10」は、本件発明の「前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシン」に相当する。

(ウ)甲1発明の「前記リール40L、40C、40Rが停止する前に、役抽選を行う役抽選手段410」は、本件発明の「表示結果が導出される前に、入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段」に相当する。

(エ)甲1発明において、リール40L、40C、40Rの停止により、図柄組合せが停止表示されることは明らかである。
よって、甲1発明の「前記リール40L、40C、40Rを停止させるストップスイッチ37L、37C、37R」は、本件発明の「遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段」に相当する。

(オ)甲1発明の「同時当選した役のうち、ストップスイッチの操作順序に応じて、どの役を成立させるのかを決定する手段であって、役抽選手段により、固有の操作順序が対応付けられた第1の役と該固有の操作順序以外の操作順序が対応付けられた第2の役が同時に当選した場合、若しくは、特有の操作順序が対応付けられた小役が当選した場合において、固有の操作順序若しくは特有の操作順序で操作された場合には、固有の操作順序若しくは特有の操作順序以外の操作順序で操作された場合よりも遊技者にとって有利な図柄組み合わせが表示されるようにリール停止制御を行うリール制御手段430」は、本件発明の「前記事前決定手段の決定結果および前記導出操作手段の操作に応じて、表示結果を導出する制御を行う手段であって、前記事前決定手段の決定結果が所定結果となった場合において、当該所定結果に応じて予め定められた有利手順で前記導出操作手段が操作されたときには、前記有利手順と異なる手順で前記導出操作手段が操作されたときに導出する表示結果の組合せよりも遊技者にとって有利な表示結果の組合せである有利組合せを導出可能な制御を行う導出制御手段」に相当する。

(カ)甲1発明の「AR遊技にて、所定の報知終了条件を満たすまで、前記役抽選手段により前記小役が当選したときに、前記特有の操作順序を示す情報を報知する操作順序報知手段」は、本件発明の「報知期間において前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果となったときに当該所定結果に対応する有利手順を特定するための情報を報知する制御を行う報知制御手段」に相当する。

(キ)甲1発明の「AR遊技」は「RT遊技」の機能に加えて、特有の操作順序を報知する機能を更に有するものであるから、「RT遊技」よりも遊技者にとって有利であることは明らかである。
よって、甲1発明の「RT遊技中に、第1の役が成立すると、特有の操作順序を示す情報を報知するAR遊技に移行させる遊技状態制御手段442」は、本件発明の「所定遊技状態において前記有利組合せのうちの特定組合せが導出されたときに前記所定遊技状態よりも遊技者にとって有利な有利遊技状態に移行させる遊技状態移行手段」に相当する。

(ク)甲1発明において「当選番号18」が当選したときに「操作順序3,4」で操作された場合に、RT遊技からAR遊技に移行させる「第1の役」を成立させ、「操作順序1,2,5,6」で操作された場合には第1の役ではない「第2の役」が成立する。これより、甲1発明の「当選番号18」、「操作順序3,4」、「第1の役」、「操作順序1,2,5,6」及び「第2の役」が、本件発明の「第1決定結果」、「第1手順」、「特定組合せ」、「第1手順以外の手順」、「特定組合せ以外の表示結果」にそれぞれ相当する。
よって、甲1発明の「役抽選手段410により当選番号18が当選したときに、操作順序3,4で操作された場合には第1の役を成立させ、それ以外の操作順序1,2,5,6で操作された場合には第2の役を成立させ」るとの構成は、本件発明の「前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果のうち前記特定組合せの導出を許容する第1決定結果のときに、前記第1決定結果に対応する第1手順で操作されたときには前記特定組合せを導出可能な制御を行い、前記第1手順以外の手順で操作されたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行い」との構成に相当する。

(ケ)上記(ク)に示したように、甲1発明の「操作順序3,4」が、本件発明の「第1手順」に相当する。そして、甲1発明の「操作手順6」は「操作手順3,4」とは異なる手順であり、かつ、「当選番号20」が当選したときに「第1の役」を成立させることから、甲1発明の「操作手順6」は、本件発明の「第2の手順」に相当する。
よって、甲1発明の「役抽選手段410により当選番号20が当選したときに、操作順序6で操作された場合には第1の役を成立させ、操作順序1,2,3,4,5で操作された場合には第2の役を成立させ」るとの構成は、本件発明の「前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果のうち前記特定組合せの導出を許容する第2決定結果のときに、前記第1手順と異なる手順であり前記第2決定結果に対応する第2手順で操作されたときには前記特定組合せを導出可能な制御を行い、前記第2手順以外の手順で操作されたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行い」との構成に相当する。

(コ)上記(ク)(ケ)に示したように、甲1発明の「操作順序3,4」、「操作順序6」が、それぞれ本件発明の「第1手順」、「第2の手順」に相当するから、甲1発明の「操作順序3,4」でも「操作順序6」でもない「操作手順1,2,5」が、本件発明の「共通手順」に相当する。
これより、甲1発明の「役抽選手段410により当選番号18が当選したとき、当選番号20が当選したとき、のどちらのときでも操作順序3,4でもなく操作順序6でもない操作順序1,2,5で操作されたときには、第2の役を成立させ」るとの構成は、本件発明の「前記事前決定手段の決定結果が、前記第1決定結果となったとき、前記第2決定結果となったとき、のどちらのときでも前記第1手順でもなく前記第2手順でもない予め定められた共通手順で操作がされたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行い」との構成に相当する。

(サ)上記(コ)より、甲1発明の「操作順序1,2,5」が、本件発明の「共通手順」に相当する。そして、甲1発明において「操作順序1」は「ストップスイッチ37L(左)→37C(中)→37R(右)の順に操作する」のであるから、この順にリールが停止され、図柄組合せが表示されることは明らかである。
よって、甲1発明の「操作順序1,2,5は、ストップスイッチ37L(左)→37C(中)→37R(右)の順に操作する操作順序1を含む」との構成は、本件発明の「前記共通手順は、前記複数の可変表示部のうち左の可変表示部から右の可変表示部に向かって順番に表示結果を導出させる手順を含む」との構成に相当する。

したがって、本件発明と甲1発明とは、
「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を横方向に並べて複数備え、
前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
表示結果が導出される前に、入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、
前記事前決定手段の決定結果および前記導出操作手段の操作に応じて、表示結果を導出する制御を行う手段であって、前記事前決定手段の決定結果が所定結果となった場合において、当該所定結果に応じて予め定められた有利手順で前記導出操作手段が操作されたときには、前記有利手順と異なる手順で前記導出操作手段が操作されたときに導出する表示結果の組合せよりも遊技者にとって有利な表示結果の組合せである有利組合せを導出可能な制御を行う導出制御手段と、
報知期間において前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果となったときに当該所定結果に対応する有利手順を特定するための情報を報知する制御を行う報知制御手段と、
所定遊技状態において前記有利組合せのうちの特定組合せが導出されたときに前記所定遊技状態よりも遊技者にとって有利な有利遊技状態に移行させる遊技状態移行手段と、
を備え、
前記導出制御手段は、
前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果のうち前記特定組合せの導出を許容する第1決定結果のときに、前記第1決定結果に対応する第1手順で操作されたときには前記特定組合せを導出可能な制御を行い、前記第1手順以外の手順で操作されたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行い、
前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果のうち前記特定組合せの導出を許容する第2決定結果のときに、前記第1手順と異なる手順であり前記第2決定結果に対応する第2手順で操作されたときには前記特定組合せを導出可能な制御を行い、前記第2手順以外の手順で操作されたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行い、
前記事前決定手段の決定結果が、前記第1決定結果となったとき、前記第2決定結果となったとき、のどちらのときでも前記第1手順でもなく前記第2手順でもない予め定められた共通手順で操作がされたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行い、
前記スロットマシンは、
前記共通手順は、前記複数の可変表示部のうち左の可変表示部から右の可変表示部に向かって順番に表示結果を導出させる手順を含む
ことを特徴とするスロットマシン。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本件発明は、「所定契機の成立により有利条件が設定されたことに基づいて制御される状態であって、当該有利条件に対応する有利終了条件が成立して前記有利条件が設定されていない通常状態となるまで、前記報知期間となる割合が前記通常状態であるときよりも高い有利状態に制御する」のに対し、甲1発明は、その様な制御を行わない点。

[相違点2]
本件発明は、「前記有利状態において報知期間が終了した後に報知期間への移行条件が成立するまでの非報知期間を決定する非報知期間決定手段」を有するのに対し、甲1発明は、その様な構成を有していない点。

[相違点3]
本件発明は、「前記非報知期間決定手段は、一の報知期間以前の非報知期間が所定期間以下であることを示す特殊条件が成立している場合には、成立していない場合に比べて、当該一の報知期間終了後の非報知期間の平均期間が長くなるように非報知期間を決定」するのに対し、甲1発明は、その様な構成を有していない点。

[相違点4]
本件発明は、「前記事前決定手段の決定結果が、前記第1決定結果となったとき、前記第2決定結果となったとき、のどちらのときでも前記第1手順でもなく前記第2手順でもない予め定められた共通手順で操作がされたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行」うスロットマシンにおいて、「前記所定遊技状態において前記有利手順を特定するための情報を報知していないときに、前記共通手順以外の手順で操作されたときには、前記共通手順であったときに行われることのない遊技者にとって不利な不利制御を行うことが可能」であるのに対し、甲1発明は、その様な構成を有していない点。

イ 判断
相違点の検討内容に鑑み、先ず相違点3及び相違点4について検討する。
(ア)相違点3について
甲2発明は、前記第4(2)で述べたとおり、「移行抽選に当選した場合、移行フラグを成立させ、前記移行フラグ成立中に、所定条件を満足することにより、所定の当選図柄の入賞可能な停止操作順序を遊技者に向かって報知する特殊遊技への移行を決定し、前記特殊遊技終了時、前記移行フラグ数記憶手段(140)に前記移行フラグが未だ残っている場合、次の前記特殊遊技を開始する迄に、所定の遊技回数の通常遊技を実行させ、所定の遊技回数の通常遊技の期間を抽選により決定する遊技機。」であり、「特殊遊技」、「所定の遊技回数の通常遊技」は、本件発明の「報知期間」、「非報知期間」にそれぞれ相当する。
甲3発明は、前記第4(3)で述べたとおり、「特別入賞が成立した場合に、遊技者に大量の遊技媒体を付与するように行われる特別遊技状態のゲームと、特別入賞が当選しても特別入賞の成立を保留制御する特定遊技状態のゲームを有し、特定遊技状態には、特定遊技状態の解除を行うための各々固有の解除条件が設定される複数のモードが存在し、特定モードでの特定遊技状態の繰り返し回数が所定回数以上となった場合に強制的に特定モードから特定モードよりも特定遊技状態の解除率が低いモードにモードを変更するパチスロ遊技機100。」である。
よって、上記の甲1発明、甲2発明及び甲3発明は、いずれも一の報知期間以前の非報知期間が所定期間以下であることを示す特殊条件が成立している場合には、成立していない場合に比べて、当該一の報知期間終了後の非報知期間の平均期間が長くなるように非報知期間を決定する点を開示するものではない。
また、他の証拠方法を見ても、一の報知期間以前の非報知期間が所定期間以下であることを示す特殊条件が成立している場合には、成立していない場合に比べて、当該一の報知期間終了後の非報知期間の平均期間が長くなるように非報知期間を決定する相違点3に係る構成を開示するものは見当たらない。

特許異議申立人は、甲第1号証と甲第3号証とを組み合わせることの動機付けとなり得る甲第2号証を介して、甲第1号証に記載の甲1発明に、甲第3号証に記載の甲3発明を組み合わせることは、何ら技術的な阻害要因はなく、技術的に優れた作用効果を奏し得るものではなく、当業者が適宜行いうるものであって、当業者がこれらを1つの発明として構成すること自体には、なんら新規性進歩性もないと主張している。
しかしながら、甲3発明における「特別遊技状態のゲーム」は、ビッグボーナス入賞やレギュラーボーナス入賞等の遊技者に大量の遊技媒体を付与する遊技であるのに対し、甲第2号証の「特殊遊技」は、「押し順ATゲーム」等のボーナスに対して補助的に与えられる遊技であり、両者は遊技内容が異なるものである。よって、甲1発明において、「特殊遊技」及び「所定の遊技回数の通常遊技」に関する甲第2号証の記載事項を介して、甲第2号証の「特殊遊技」及び「所定の遊技回数の通常遊技」と異なる遊技を行う、甲3発明の「特別遊技状態のゲーム」及び「特定遊技状態のゲーム」を採用することは当業者にとって困難である。
よって、甲2号証には、甲1発明と甲3発明とを組み合わせることの動機付けは存在せず、甲第2号証を介して、甲1発明に、甲3発明を組み合わせることは、当業者の通常の創作能力の範囲を超えたものとなり、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、相違点3に関する特許異議申立人の主張は採用できない。

(イ)相違点4について
遊技機において、有利手順を特定するための情報を報知していないときに、所定の手順以外の手順で操作されたときには、前記所定の手順であったときに行われることのない遊技者にとって不利な不利制御を行うことは、周知の技術(例えば、甲4号証の【0117】、甲5号証の【0043】参照。以下「周知技術」という。)である。
しかしながら、上記の甲1発明及び上記周知技術は、「前記事前決定手段の決定結果が、前記第1決定結果となったとき、前記第2決定結果となったとき、のどちらのときでも前記第1手順でもなく前記第2手順でもない予め定められた共通手順で操作がされたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行」うスロットマシンにおいて、「前記所定遊技状態において前記有利手順を特定するための情報を報知していないときに、前記共通手順以外の手順で操作されたときには、前記共通手順であったときに行われることのない遊技者にとって不利な不利制御を行うことが可能」点を開示するものではない。
また、他の証拠方法を見ても、上記相違点4に係る構成を開示するものは見当たらない。

特許異議申立人は、本件特許発明1に係る構成要件Nは、甲第4および5号証のそれぞれに記載されている構成であり、これら甲第4および5号証は特許出願人が相違しており、技術的阻害要因もなく、技術的に優れた作用効果を奏し得るものでもないため、当業者における技術常識であって、単なる周知技術に過ぎないと主張している。
ここで、本件発明は、特定組合せを導出可能な決定結果が第1決定結果と第2決定結果のみであり、第1決定結果でも第2決定結果でも特定組合せ以外の表示結果の組合せが導出される共通手順を有することを前提として、共通手順以外の手順で操作されたときには、共通手順であったときに行われることのない遊技者にとって不利な不利制御を行うものである(段落【0163】-【0171】参照。)。一方で、前記第4(1)(1-j)によれば、甲1発明において、第1の役(再遊技役c)が成立する当選番号は、当選番号18,20以外にも当選番号16,17,19を有し、当選番号16-20のいずれにおいても第1の役(再遊技役c)が成立することのない操作順序は存在しない。そのため、甲1発明は、本件発明における、特定組合せを導出可能な決定結果が第1決定結果と第2決定結果のみであり、第1決定結果でも第2決定結果でも特定組合せ以外の表示結果の組合せが導出される共通手順に対応する構成を有していない。よって、甲1発明において上記周知技術を採用しても、本件発明の構成とすることはできない。
また、効果について、本件発明は、第1決定結果と第2決定結果のみを有し、前記事前決定手段の決定結果が、前記第1決定結果となったとき、前記第2決定結果となったとき、のどちらのときでも前記第1手順でもなく前記第2手順でもない予め定められた共通手順で操作がされたときには前記特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出する制御を行うことにより、共通手順で操作する限り、特定組合せ以外の表示結果の組合せを導出し、有利遊技状態に移行されることがなく、所定遊技状態において前記有利手順を特定するための情報を報知していないときに、前記共通手順以外の手順で操作されたときには、前記共通手順であったときに行われることのない遊技者にとって不利な不利制御を行うことにより、共通手順以外の操作をするよりも共通手順で操作する方が、遊技者にとっての有利度合いを高くするという効果を奏するものである(段落【0163】-【0171】参照。)が、この効果は甲1発明及び周知技術から予測し得るものとはいえない。
よって、相違点4に関する特許異議申立人の主張は採用できない。

ウ まとめ
上記ア及びイにおいて検討したように、相違点3,4に係る本件発明の構成は、甲1発明、甲2発明、甲3発明及び甲4号証乃至甲5号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
よって、相違点1,2については検討するまでもなく、本件発明は、甲1号証ないし甲3号証に記載された発明、及び、甲4号証乃至甲5号証に記載された周知技術に基づいて、本件出願日前に当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)特許法第36条第1項又は第2項について
特許異議申立人は、本件特許の請求項1に記載された「特殊条件」が何ら特定されていないため、【0007】に示された「射幸性が高まりすぎてしまう不都合の発生を防止」するとの目的を解決することができないものが含まれ、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、かつ特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない旨を主張する。
ここで、発明の詳細な説明中には、「・・・一の報知期間以前の非報知期間(一連のATにおける潜伏期間のうち過去5回または3回までの潜伏期間)が所定期間(比較的短い潜伏期間)以下であることを示す特殊条件が成立している場合(例えば、過去5回または3回までの潜伏期間のうちいずれも比較的長い潜伏期間でないとき、短潜伏連続カウンタの値が5以上または3以上であるとき)には、成立していない場合(例えば、短潜伏連続カウンタの値が4以下または2以下であるとき)に比べて、当該一の報知期間終了後の非報知期間の期待値が大きくなる(平均化される長さが長くなる)ように非報知期間を決定し・・・」(【0008】)、「・・・潜伏期間は、獲得したナビストックを消費する間における一連のATにおいてすでに移行された潜伏期間のうち、直近の潜伏期間を含む過去5回までの潜伏期間のうちいずれかが比較的長い潜伏期間に決定されており特殊条件が成立していないとき(比較的短い期間が5回以上連続していないとき)よりも、過去5回までの潜伏期間のうちいずれも比較的短い潜伏期間に決定されており特殊条件が成立しているとき(比較的短い期間が5回以上連続しているとき)の方が高い割合で長い期間となるように決定される。・・・」(【0443】)と記載されている。
これらの記載によれば、発明の詳細な説明には、短い非報知期間が続いているという条件が成立している場合に、平均期間が長くなる非報知期間を決定することで、射幸性が高まりすぎてしまう不都合の発生を防止するという目的を解決する発明が記載されており、本件発明における「特殊条件」が、短い非報知期間が続いているかという条件に対応していることは明らかである。そして、過去5回または3回連続していることを条件とする記載は、短い非報知期間が続いているという条件の単なる例示に過ぎず、当該回数自体には技術的意味は無い。
したがって、「特殊条件」について短い報知期間が過去5回または3回連続している等の特定を要しないことは明らかである。
これより、本件発明は「射幸性が高まりすぎてしまう不都合の発生を防止」するとの目的を解決することができるものであるから、特許を受けようとする発明は発明の詳細な説明に記載したものである。
また、上述のように、発明の詳細な説明の記載によれば、「特殊条件」が、短い非報知期間が続いているかという条件を意味していることは明らかであるから、「特殊条件」との記載は明確である。
ゆえに、特許を受けようとする発明は明確である。
よって、発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、また、特許を受けようとする発明が不明確であるともいえないから、特許異議申立人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のことから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2015-12-15 
出願番号 特願2010-157185(P2010-157185)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A63F)
P 1 651・ 537- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大澤 元成  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 長崎 洋一
山崎 仁之
登録日 2015-02-13 
登録番号 特許第5693067号(P5693067)
権利者 株式会社三共
発明の名称 スロットマシン  
代理人 重信 和男  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 溝渕 良一  
代理人 石川 好文  

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