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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C07C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07C
管理番号 1311796
異議申立番号 異議2015-700099  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-10-15 
確定日 2015-12-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第5701293号「MTBEの分解によるイソブテンの製造」の請求項1ないし13に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5701293号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第5701293号の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、2010年6月16日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2009年7月1日 (DE)ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成27年2月27日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人山田宏基(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立がされたものである。

2 本件発明
本件特許第5701293号の請求項1ないし13に係る特許は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明13」という。)。

「 【請求項1】
MTBEの分解によるイソブテンの製造法であって、その際、次の工程:
a)MTBE合成;イソブテン含有炭化水素混合物(II)を、1つ以上のメタノール含有流(VIII、IX)中に含まれたメタノール(III)と、酸性イオン交換体を用いて反応させて、MTBE及びTBAを含有する流(IV)を取得する工程、
b)MTBE分離;流(IV)から、MTBE及びTBAを含有する流(V)を蒸留分離する工程、
c)MTBE分解;流(V)を、不均一系触媒を用いて気相中で分解して、少なくともイソブテン、メタノール、MTBE及び水を含有する流(VI)を取得する工程、
d)イソブテン分離;流(VI)を蒸留分離して、流(VI)中に含まれた、それぞれ50質量%より多いメタノール量、及び水量を含有する流(VII)、並びにイソブテンを含有する流(XVII)を取得する工程、
e)水分離;流(VII)から水を、1質量%を下回る割合に蒸留分離して、流(VIII)を取得する工程、
f)返送;メタノール含有流(VIII)をMTBE合成に完全に又は部分的に返送する工程
を経る、MTBEの分解によるイソブテンの製造方法。
【請求項2】
流(VI)が、イソブテン、メタノール、MTBE、及び水以外にTBAを含有し、
流(VII)が、流(VI)に含まれた、それぞれ50質量%より多いメタノール量、TBA量及び水量を含有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
流(VII)からの前記水分離を2つの塔内で実施し、その際、第1の水分離塔を、より低い圧力で運転し、且つその塔底生成物を、より高い圧力で運転される第2の水分離塔内で更に精製することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の水分離塔を、少なくとも部分的に、前記第2の水分離塔の蒸気により加熱することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の水分離塔内で、付加的に水-メタノール混合物を蒸留することを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記流(V)に、水又は水蒸気を添加することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記イソブテン分離及び/又は前記水分離に際してアルカリ液流を添加することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ液添加用に、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の水溶液を使用することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ液を、前記水分離に際して、分離される水と一緒に除去することを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記イソブテン分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つイソブテン分離塔の供給流中への若しくは第1のイソブテン分離塔の供給流中への前記アルカリ液の添加を行うことを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記イソブテン分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つイソブテン分離塔内への若しくは第1のイソブテン分離塔内への前記アルカリ液の添加を、供給流の添加部より下方で行うことを特徴とする、請求項7から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つ水分離塔の供給流中への若しくは第1の水分離塔の供給流中への前記アルカリ液の配量を行うことを特徴とする、請求項7から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つ水分離塔内への若しくは第1の水分離塔内への前記アルカリ液の添加を、供給流の添加部より下方で行うことを特徴とする、請求項7から12までのいずれか1項に記載の方法。」

3 特許異議申立の概要
特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証を提出して、請求項1ないし2に係る発明は、甲第1号証に記載されているに等しい発明であるから、それらの特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消すべきである旨主張している。
また、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として下記の甲第2号証ないし甲第5号証を提出して、請求項1ないし2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明から容易に発明することができたものであり、請求項3ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明から容易に発明することができたものであり、請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明から容易に発明することができたものであり、請求項7ないし13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明から容易に発明することができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきである旨主張している。


甲第1号証:特開2008-56672号公報 (以下「刊行物1」という。)
甲第2号証:特開2002-179603号公報 (以下「刊行物2」という。)
甲第3号証:特表2008-524271号公報 (以下「刊行物3」という。)
甲第4号証:特開平3-220136号公報 (以下「刊行物4」という。)
甲第5号証:特開昭52-151103号公報(以下「刊行物5」という。)
参考資料1:米国特許第4570026号明細書(参考資料2:参考資料1の抄訳)
参考資料3:中国特許公開1358698号公報(参考資料4:参考資料3の抄訳)
参考資料5:中国特許公開1358699号公報(参考資料6:参考資料5の抄訳)

参考資料1,3,5は、周知技術を示すためのものとして特許異議申立人が提出したものである。

4 刊行物の記載
(1)刊行物1
(1a)「気相中でのMTBEの分解によるイソブテンの製造方法であって、
a)原料MTBE(I)と返送流VIIIとからなり、MTBEを含有する流れを蒸留により分離する工程、その際に、MTBEを含有する塔頂流(II)と、MTBEよりも高沸点の塔底流(III)とが得られ、
b)工程a)において得られた塔頂流(II)を接触分解して分解生成物(IV)を得る工程、
c)工程b)において得られた分解生成物(IV)を、90質量%よりも多いイソブテンを含有する塔頂流(V)と、ジイソブテン、MTBE並びに分解生成物(IV)中に含まれている50%よりも多いメタノールを含有する塔底流(VI)とに、蒸留により分離する工程、
d)工程c)において得られた塔底流を、メタノールが塔底生成物(VII)として及びMTBEが塔頂生成物(VIII)中で99%よりも多く得られる条件下で蒸留により分離する工程及び
e)塔頂生成物(VIII)を工程a)へ返送する工程
を有することを特徴とする、気相中でのMTBEの分解によるイソブテンの製造方法。」(特許請求の範囲 請求項1)

(1b)「【発明が解決しようとする課題】
【0017】
故に、本発明の課題は、特に分解生成物の蒸留による分離の際に得られた塔底生成物の後処理が改善されるかもしくは単純化される、MTBEからイソブテンを製造する選択的な方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
意外なことに、分解生成物の蒸留による分離の際に得られた塔底生成物の後処理のために、通常、既に存在しており、分解に供給される流れから高沸成分を分離するための塔を利用することができ、かつこの塔に、1つのみの塔中で分解生成物の分離の際に得られた塔底生成物を分離することにより塔頂生成物として得られた流れを供給することができることが、目下見出された。」

(1c)「【0034】
処理工程b)
イソブテンと、メタノールとへの、流れ(II)中に存在しているMTBEの分解は、酸性触媒の存在で、液相もしくは気/液-混合相中で又は気相中で、実施されることができる。本発明による方法において、MTBE分解は、好ましくは気相中で行われる。好ましくは、MTBE分解は、200?400℃、好ましくは230?350℃の範囲内の温度で行われる。
【0035】
本発明による方法において、MTBEの分解のためには、MTBEの分解に適している公知の全ての酸性触媒が使用されることができる。酸性触媒として、例えば金属酸化物、金属混合酸化物、特に酸化ケイ素又は酸化アルミニウムを含有するそのような金属混合酸化物、金属酸化物担体上の酸又は金属塩が使用されることができる。」

(1d)「【0084】
本発明による方法の処理工程b)における主反応は、イソブテン及びメタノールへのMTBEの分解である。調節されたMTBE転化率に応じて、分解生成物は、好ましくは2?43質量%、より好ましくは3?25質量%及び特に好ましくは5?15質量%の残留MTBE含量を有する。分解生成物(IV)中のメタノール含量は、好ましくは25?37質量%、より好ましくは30?37質量%である。分解生成物中のイソブテン含量は、好ましくは28?61質量%、より好ましくは50?60質量%である。副反応として、イソブテンからのジイソブテンの形成及びジメチルエーテルへのメタノールの反応が生じうる。場合により処理工程b)に供給される出発物質(II)中に含まれる2-メトキシブタンは、部分的に、線状ブテン類に、及び含まれているt-ブタノール(TBA)はイソブテン及び水に、分解されることができる。故に、反応により生じたさらなる成分として、とりわけ、ジイソブテン、ジメチルエーテル、線状ブテン類及び水が分解生成物(IV)中に含まれていてよい。
【0085】
処理工程c)
分解生成物混合物をさらに後処理するためには、分解生成物(IV)は、別の蒸留工程c)において、イソブテンを含有する塔頂流(V)と、未反応MTBEを含有する塔底流(VI)とに分離される。処理工程c)による、イソブテンを含有する塔頂流(V)と、未反応MTBEを含有する塔底流(VI)とへの分解生成物(IV)の蒸留による分離は、少なくとも1つの塔、好ましくはちょうど1つの蒸留塔中で行われる。」

(1e)「【0096】
反応性蒸留塔としての処理工程c)における塔の構成の場合にも、好ましくは、未反応MTBE及びメタノール並びに場合により副生物、例えばジイソブテン、及び2-メトキシブタンを含有する塔底生成物(VI)が得られる。塔頂生成物は、好ましくは、95質量%よりも大きい純度を有するイソブテンを含有する。
【0097】
処理工程c)において得られ、かつ好ましくは95質量%より多くがイソブテンからなる塔頂生成物(V)は、直接市販品として使用されることができるか、又はさらに精製されることができる。」

(1f)「【0102】
処理工程d)及びe)
処理工程c)において得られた塔底生成物(VI)は、処理工程b)において未反応のMTBEと、MTBEの分解の際に生じたメタノールの大部分とを含有する。場合により、この塔底生成物は、副生物、例えばジイソブテン、及び/又は2-メトキシブタンを含有していてよい。
【0103】
処理工程c)において得られた塔底流(VI)は、処理工程d)において、蒸留により、メタノールを含有する塔底流(VII)と、MTBEを含有する塔頂流(VIII)とに分離される。蒸留による分離は、好ましくは、できるだけ純粋なメタノールが塔底生成物(VII)として得られ、かつMTBEが塔頂生成物(VIII)中で99%よりも多く得られるそのような条件下に行われる。塔頂生成物VIIIは、処理工程a)中へ返送される(図1もしくは2参照)。」

(1g)「【0108】
処理工程d)において製造される塔底生成物は、好ましくは、99質量%よりも多いメタノールを含有する。塔底生成物中のTBA含量は、好ましくは500?2000質量ppmであり、かつ含水量は好ましくは0.5?0.8質量%である。それゆえ、このメタノールは、商品として適しており、かつ常用の工業的合成、例えばエステル化又はエーテル化に使用されることができるほど高い純度を有する。必要に応じて、このメタノールは、しかしまた別の蒸留工程において一層より高い純度に濃縮されることもできる。
【0109】
処理工程d)における蒸留の際に得られた塔頂生成物(VIII)は、処理工程e)において、処理工程a)へ返送される。好ましくは、塔頂生成物は、原料MTBEと混合してMTBE流(I)とし、この流れは、処理工程a)において供給流として使用される。塔頂生成物(VIII)は本質的には、フィード流(VI)中に含まれているMTBE、2-メトキシブタン及びジイソブテンを含有する。メタノール含量は20?30質量%で変動しうる。処理工程a)において、ジイソブテン及び場合により2-メトキシブタンも、前記のように、塔底生成物を介して分離され、かつ本プロセスから排出されることができる。」

(1h)「【0120】
工業用MTBEは、公知の方法に従い、ポリ不飽和炭化水素が大幅に除去されているC_(4)-炭化水素混合物、例えばラフィネートI又は選択的に水素化されたクラック-C_(4)と、メタノールとの反応により製造されることができる。MTBEの製造方法は、例えば、独国特許(DE)第101 02 062号明細書に記載されている。」

(1i)「【0131】
本発明による方法が実施されることができる設備の一実施態様のブロック図は、図1に示されている。MTBEを含有する原料流(I)は、返送流(VIII)と混合され、かつ処理工程a)において、塔K1中で、MTBEよりも高沸点の副成分、例えばジイソブテン及び2-メトキシブタンを含有する塔底生成物(III)と、MTBEを含有する塔頂生成物(II)とに分離される。塔頂生成物(II)中に含まれているMTBEは、処理工程b)において反応器R中で主要部分がイソブテン及びメタノールへ分解される。処理工程b)において反応器R中で得られた分解生成物(IV)は、処理工程c)において、塔K2中で、メタノール及び場合によりジメチルエーテルを含有し、イソブテンを有する混合物(V)と、未反応MTBE、メタノール及び副成分を含有する塔底生成物(VI)とに分別される。処理工程c)からの塔底生成物(VI)は、処理工程d)において、塔K4中で、特にメタノールを有する塔底生成物(VII)と、MTBEを含有する塔頂生成物(VIII)と分離され、この塔頂生成物(VIII)は処理工程e)において、処理工程a)へ返送される。塔K2は、場合により、反応性蒸留塔として構成されることができる。」

(1j)「【0132】
本発明による方法が実施されることができる設備のさらなる実施態様のブロック図は、図2に示されている。図2の実施態様は、図1とは、原料MTBE Iaが、予備塔K3中で、低沸成分、例えばC_(4)-及びC_(5)-炭化水素を含有する塔頂生成物(VII)(IXの誤記)と、低沸成分が取り除かれたMTBEを含有する流れ(I)とに分離され、この流れが返送流(VIII)と混合され、かつ塔K1へ導かれる点で相違する。」

(1k)「【0142】
原料MTBE(I)を、返送流(VIII)と混合してMTBE流とし、この流れをフィードとして塔K1中へ供給する。返送流(VIII)は、反応部(R)において未反応のMTBEの全量、副成分であるジイソブテン及び2-メトキシブタン及びメタノールを含有する塔K4の留出物流である。返送流(VIII)及び前記混合物からもたらされる塔K1へのフィード流の想定される組成は、第5表に示されている。

【0143】
第5表:例1についての返送流(VIII)及び塔K1のフィード流の組成。
【0144】
【表5】



(1l)
「【0145】
例1における塔K1の分離課題は、ジイソブテンの分離である。この塔は、52の理論段を有し、かつ1.2の還流比及び0.95MPa(abs)の圧力で運転される。物質添加を、上から数えて段30の上方で行う。塔頂温度は140.7℃であり、塔底温度は181.2℃である。塔頂生成物(II)として、ジイソブテン不含であるガス状留分が得られる、第6表参照。MTBE含量は約94.5質量%である。既に述べたように、とりわけジイソブテンが分離されるべきであるので、約1.1質量%では、まだ特記すべき2-メトキシブタンが含まれている。塔底生成物(III)中のMTBE含量は、24質量%である。還流比及び/又は分離能を増大させることにより、塔底生成物中のMTBE含量は、さらに減少されることができた。
【0146】
第6表:例1についての塔K1の留出物流(II)及び塔底流(III)の組成。

【0147】
【表6】
【0148】
塔K1の留出物流(II)を、反応温度にさらに加熱した後に、反応部(R)に供給する。反応器を285℃及び0.85MPa(abs)で運転する。これらの反応条件の場合に、約90%のMTBE転化率となり、2-メトキシブタンの転化率は約22%である。反応器排出物(IV)の組成は、第7表に示されている。
【0149】
第7表:例1についての反応器排出物(IV)並びに塔K2の留出物流(V)及び塔底流(VI)の組成。
【0150】
【表7】

【0151】
反応器排出物(IV)を部分的に凝縮させ、かつ二相で塔K2に供給する。この塔は、42の理論段を有し、かつ0.3の還流比及び0.65MPa(abs)の圧力で運転される。物質添加を、上から数えて段28の上方で行う。塔頂温度は51.5℃であり、塔底温度は114.9℃である。塔頂生成物(V)は、95質量%よりも大きいイソブテンの純度を有するイソブテンである、第7表参照。2-メトキシブタンが塔K1中でごく僅かにのみ減損されたことにより、2-メトキシブタンの分解により生じている線状ブテン類の含量は、約4300質量ppmで相対的に高いが、しかし依然として5000質量ppmを下回る。それゆえ、前記イソブテン生成物は、線状ブテン類がこれらの濃度で妨害しない多くの工業的合成に使用されることができる。必要に応じて、水での抽出により、メタノールは除去されることができ、残留水及びジメチルエーテルはその後の蒸留により除去されることができる。
【0152】
塔K2の塔底生成物(VI)は主に、未反応MTBE(約22質量%)及びメタノール(約75質量%)からなる。それに加えて、とりわけ、未反応2-メトキシブタン、t-ブタノール、水及び反応により生じたジイソブテンが含まれている。この流れを塔K4に供給する。
【0153】
第8表:例1についての塔K4の塔底流(VII)の組成。
【0154】
【表8】

【0155】
塔K4は、35の理論段を有し、かつ2.8の還流比及び0.15MPa(abs)の圧力で運転される。物質添加を、上から数えて段10の上方で行う。塔頂温度は60.8℃であり、塔底温度は75.0℃である。塔底生成物(VII)の組成は、第8表に示されており、塔K4の留出物(VIII)の組成は、第5表に一緒に記載されている。この塔中で、MTBE、2-メトキシブタン及びジイソブテンは少量のメタノールと共に塔頂を経て蒸留される。その際、これらの成分とメタノールとのアゼオトロープ形成が利用される。さらに加えて、全ての低沸成分(ジメチルエーテル、ブテン類及びC_(5)-炭化水素)も分離されるので、99質量%を上回るメタノールを有し、唯一の副成分としてなお水及びt-ブタノールを含有する極めて純粋な塔底生成物が取得されることができる。それゆえ、このメタノールは、商品を意味し、かつ常用の工業的合成、例えばエステル化又はエーテル化に使用されることができるほど高い純度を有する。必要に応じて、このメタノールは、しかしまた別の蒸留工程において一層より高い純度に濃縮されることもできる。塔K4の留出物(VIII)を、塔K1のフィードと混合する。」

(2)刊行物2
(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、殊に純粋な1-ブテンおよびメチル-t-ブチルエーテル(MTBE)の製造に好適な、少ないイソブテン含量を有する高純度ラフィネートII(C_(4)-炭化水素混合物)を製造する方法に関する。」

(2b)「【0009】イソブテン含有C_(4)-炭化水素混合物、例えばラフィネートIまたは水素添加されたクラック-C_(4)とメタノールからMTBEを製造するため、工業界では頻繁に酸性イオン交換樹脂(スルホン酸基)が不均一系触媒として使用される。反応は1つの反応器または直列に接続された複数の反応器中で行われ、この場合、触媒は有利に固体床中に配置されている。メタノール、イソブテンおよびMTBEが平衡状態にある生成物が生じる。各反応器中では反応条件(温度、メタノール-過剰、等)に相応して平衡変換率が調節される。このことは、工業的方法において常用される反応条件の場合、使用されるイソブテンの約96%が変換されることを意味する。この混合物は引き続き、蒸留によりMTBEを含有する塔底精留と、C4-炭化水素およびメタノールを内容物とする塔頂精留とに分離されることができる。共沸結合したメタノールの分離後、このようにして製造されたラフィネートIIは、イソブテン含量が高いため、純粋な1-ブテンの製造には不適当である。」

(2c)「【0056】C_(4)-炭化水素混合物(ラフィネートIまたは選択的に水素添加されたクラック-C_(4))(1)は、酸性のイオン交換樹脂を含有する反応器(3)中でメタノール(2)と反応し、MTBE含有反応混合物(4)に変換され、混合物は触媒充填物(5a)の下部の反応蒸留塔(5)内に供給される。塔頂生成物(6)として、メタノールおよび、イソブテン300wppm未満を有するC_(4)-流が見られる。塔底生成物(7)として、MTBEが排出される。」

(2d)「【0060】第1A表:反応蒸留塔の流れの組成
【0061】
【表1】



(2e)
「【図1】



(3)刊行物3
(3a)「【0005】
本発明の対象は、メタノール及び水を含有する混合物からメタノールを回収する方法において、該方法は、多段階の蒸発と後接続された一連の蒸留段階とを含み、かつ多段階の蒸発の最後の蒸発段階において得られた底部生成物を、一連の蒸留段階の第1の蒸留段階に供給する方法である。この多段階の蒸発は、少なくとも2つの蒸発段階を含み、その際、それぞれの蒸発段階は蒸発器を有し、かつこの多段階の蒸発においては、圧力をそれぞれの蒸発段階から次の蒸発段階にかけて減らす。この場合、第2の蒸発段階及びそれぞれの後続の蒸発段階の蒸発器は、それぞれ先行の段階の蒸気状の頂部生成物で加熱する。一連の蒸留段階は、少なくとも2つの蒸留段階を含み、その際、それぞれの蒸留段階は、蒸留塔及び蒸発器を有し、かつ第2の蒸留段階及びそれぞれの後続の蒸留段階にそれぞれ先行の蒸留段階の底部生成物を供給する。この一連の蒸発段階においては、圧力をそれぞれの蒸留段階から次の蒸留段階にかけて高め、かつ最後の蒸留段階を除き、それぞれの蒸留段階において、蒸発器はそれぞれ、後続の蒸留段階の蒸留塔の蒸気状の頂部生成物で加熱される。」

(3b)「【0013】
本発明にかかる方法は更に、一連の少なくとも2つの蒸留段階を含み、その際、この一連の蒸留段階において、圧力をそれぞれの蒸留段階から次の蒸留段階にかけて高める。この場合、これらの蒸留段階のそれぞれは、蒸留塔及び蒸発器を有する。多段階の蒸発の最後の蒸発段階において得られる液体の底部生成物は、第1の蒸留段階の蒸留塔の中部に供給する。第2の蒸留段階及びそれぞれの後続の蒸留段階は、それぞれ、先行の蒸留段階の蒸留塔中で得られた底部生成物を、蒸留塔の中部に供給する。最後の蒸留段階においては、蒸発器を熱媒で、好ましくは蒸気で加熱する。先行の蒸留段階の蒸発器は、それぞれそのすぐ後続の蒸留段階の蒸留塔の蒸気状の蒸発物で加熱する。第1の蒸留段階の蒸留塔頂部で得られる蒸発物は、別個の冷却器中で凝縮させ、その際、好ましくは、冷却水をこの蒸発物の凝縮に使用する。この蒸留段階の数は、第1の蒸留段階に供給される混合物の組成及び、最後の蒸留段階の蒸留塔中で得られる底部生成物中の所望のメタノール残留含有率に応じて選択し、好ましくは2つの蒸留段階である。
【0014】
この一連の蒸留段階における圧力勾配は、第1の蒸留段階の蒸留塔の塔底における沸点が、第2の蒸留段階の蒸留塔からの蒸発物の凝縮温度と比べて低くなるように選択することで、第2の蒸留段階からの蒸発物の凝縮熱が第1の蒸留段階の蒸発器の加熱に利用され、かつこの蒸発物は蒸発器中で凝縮される。これと同じことは、別の蒸留段階間の圧力勾配にも当てはまる。
【0015】
第1の蒸留段階においては、好ましくは0.5?2bar、特に好ましくは0.8?1.5barの圧力を使用することで、十分な圧力差及び温度差が一連の蒸留段階にわたって達せられ、かつ第1の蒸留段階の塔頂で生ずる蒸発物を経済的に冷却水で凝縮することができる。最後の蒸留段階における圧力は、好ましくは、3?10bar、特に好ましくは4?7barの範囲内で選択し、これにより十分な圧力差及び温度差が一連の蒸留段階にわたって達せられ、かつ最後の蒸留段階の蒸発器の加熱に経済的な熱媒、好ましくは蒸気を4?16barの圧力で使用することができる。」

(4)刊行物4
(4a)「(1)アルキル第3級アルキルエーテルから第3級オレフィンを製造する方法において、触媒として、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物又は弱酸塩で処理されたシリカアルミナを使用し、かつ反応系に水を添加しつつ反応を行なうことを特徴とする第3級オレフィンの製造方法。」(特許請求の範囲(1))

(4b)「本発明者らは、以上に述べた方法で第3級オレフィンを製造する場合に、反応系に水を添加しつつ反応を実施することにより、ジアルキルエーテル及び第3級オレフィンのオリゴマーの副生を減少させ得ることができ、その結果目的物である第3級オレフィンの収率を向上させ得ることを見い出した。」(3頁右上欄15行?左下欄1行)

(4c)「実施例1
市販のシリカアルミナ触媒・・・を・・・0.04N苛性ソーダ溶液100ml中へ投入した。30分間室温で放置後、触媒を取り出し500℃にて5時間焼成した。
このようにして得られた触媒20mlを、SUS製反応管に充てん(原文は漢字)し、外側より電気炉で加熱しながら原料のt-ブチルメチルエーテルを30ml/hrの供給速度で、又水を1.2ml/hrの供給速度で気化器を経由して供給した。・・・反応液を分析した結果、t-ブチルメチルエーテル転化率93%、ジメチルエーテル選択率0.2%、ジイソブチレン選択率0.4%であった。」(3頁右下欄1?16行)

(5)刊行物5
(5a)「(1)t-ブチルアルコールを含有する混合を分留塔で分留し、 分留したt-ブチルアルコールを蒸発して揮発度の低い不純物を含有する留分を蒸発t-ブチルアルコールと分離して分留塔に循環させ、蒸発t-ブチルアルコールを脱水帯で脱水してイソブチレンを作り、イソブチレンをアルカリ水溶液と接触させて、廃水流を作ることよりなり、分留したt-ブチルアルコールの最大約85重量%までを蒸発し、蒸発したt-ブチルアルコールを脱水帯に送出することを特徴とする、t-ブチルアルコールからのイソブチレンの製造法。」(特許請求の範囲(1))

(5b)「本発明の目的のひとつは、t-ブチルアルコールの蒸発器の伝導面のよごれを低下させることによって、・・・実働時間を増すことにある。
本発明の別の目的は、プロピレンオキシド製造プラントからの排出廃水中の熱交換表面の沈着物を軟化させて沈着物をさらに容易に除去できるようにすることにある。」(2頁右下欄5?12行)

(5c)「脱水反応器16からの留出物は管17を通って苛性液スクラバー塔18に送入され、ここで粗イソブチレンから、管19を通りスクラバー18に送入される苛性水溶液の作用によって酸性化合物を除去する。一般に苛性水溶液は約5重量%以下、たとえば約0.1%のNaOHを含む。スクラバー塔18からの粗イソブチレンは塔頂から管20を通り、別の蒸留塔(図示せず)へ入り、ここでイソブチレンは所要の純度まで精製される。・・・塔底の苛性水溶液24は管19を通ってスクラバー塔18に循環され、その一部は管25を通ってパージされる。ストリッパー22からの塔頂留分23は燃料として使用することができる。」(3頁右下欄20行?4頁左上欄19行)

(5d)第1図 「



5 刊行物1に記載された発明
上記摘記事項(1a)には、「気相中でのMTBEの分解によるイソブテンの製造方法であって、
a)原料MTBE(I)と返送流VIIIとからなり、MTBEを含有する流れを蒸留により分離する工程、その際に、MTBEを含有する塔頂流(II)と、MTBEよりも高沸点の塔底流(III)とが得られ、
b)工程a)において得られた塔頂流(II)を接触分解して分解生成物(IV)を得る工程、
c)工程b)において得られた分解生成物(IV)を、90質量%よりも多いイソブテンを含有する塔頂流(V)と、ジイソブテン、MTBE並びに分解生成物(IV)中に含まれている50%よりも多いメタノールを含有する塔底流(VI)とに、蒸留により分離する工程、
d)工程c)において得られた塔底流を、メタノールが塔底生成物(VII)として及びMTBEが塔頂生成物(VIII)中で99%よりも多く得られる条件下で蒸留により分離する工程及び
e)塔頂生成物(VIII)を工程a)へ返送する工程
を有する製造方法」が記載され、上記摘記事項(1d)には、処理工程b)における主反応は、イソブテン及びメタノールへのMTBEの分解であることが記載され、摘記(1l)には、表7に、例1についての反応器排出物(IV)並びに塔K2の留出物流(V)及び塔底流(VI)の組成が示され、表7の反応器排出物(IV)の質量流量[kg/h]とメタノール及び水の質量割合[kg/kg]の値と、塔底生成物K2(VI)の質量流量[kg/h]とメタノール及び水の質量割合[kg/kg]の値とを比較計算することで、反応器排出物(IV)のメタノール及び水の50質量%以上が塔底生成物K2(VI)に含まれたことは明らかであるので、刊行物1には、「気相中でのMTBEの分解によるイソブテンの製造方法であって、
a)原料MTBE(I)と返送流VIIIとからなり、MTBEを含有する流れを蒸留により分離する工程、その際に、MTBEを含有する塔頂流(II)と、MTBEよりも高沸点の塔底流(III)とが得られ、
b)工程a)において得られた塔頂流(II)を接触分解して、イソブテン及びメタノールへのMTBEの分解を主反応として行い、分解生成物(IV)を得る工程、
c)工程b)において得られた分解生成物(IV)を、90質量%よりも多いイソブテンを含有する塔頂流(V)と、ジイソブテン、MTBE並びに分解生成物(IV)中に含まれているものの50%よりも多いメタノール及び水を含有する塔底流(VI)とに、蒸留により分離する工程、
d)工程c)において得られた塔底流を、メタノールが塔底生成物(VII)として及びMTBEが塔頂生成物(VIII)中で99%よりも多く得られる条件下で蒸留により分離する工程及び
e)塔頂生成物(VIII)を工程a)へ返送する工程
を有する、気相中でのMTBEの分解によるイソブテンの製造方法。」(以下「刊行物1発明」という。)が開示されているといえる。

6 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の工程a)は、MTBEを含有する流れを蒸留により分離して、その際に、MTBEを含有する塔頂流(II)を蒸留によって分離しており、摘記(1l)から表6に、例1についての塔K1の留出物流(II)及び塔底流(III)の組成が示され、留出物K1(II)には、MTBE及びt-ブタノールが含有されているので、本件発明1の工程b)に相当している。
また、 刊行物1発明の工程b)は、摘記(1c)記載されるように、MTBEの分解のために金属酸化物等の酸性触媒、つまり不均一系触媒を用いており、摘記(1l)から、表7に、反応器排出物(IV)に、イソブテン、メタノール、MTBE、t-ブタノール及び水を含有していることが示されているので、本件発明1の工程c)に相当している。
さらに、刊行物1発明の工程c)は、摘記(1l)から、表7に、例1についての反応器排出物(IV)並びに塔K2の留出物流(V)及び塔底流(VI)の組成が示され、表7の反応器排出物(IV)の質量流量[kg/h]とメタノール及び水の質量割合[kg/kg]の値と、塔底生成物K2(VI)の質量流量[kg/h]とメタノール及び水の質量割合[kg/kg]の値とを比較計算することで、反応器排出物(IV)のメタノール及び水の50質量%以上が塔底生成物K2(VI)に含まれたことは明らかであるので、刊行物1発明の(VI)には、(IV)に含まれていたメタノールと水のそれぞれ50%以上が含まれているといえるので、本件発明1の工程d)に相当している。

したがって、本件発明1と刊行物1発明とは、「MTBEの分解によるイソブテンの製造法であって、b)MTBE分離;MTBEを含有する流れから、MTBE及びTBAを含有する流(V)を蒸留分離する工程、
c)MTBE分解;流(V)を、不均一系触媒を用いて気相中で分解して、少なくともイソブテン、メタノール、MTBE及び水を含有する流(VI)を取得する工程、
d)イソブテン分離;流(VI)を蒸留分離して、流(VI)中に含まれた、それぞれ50質量%より多いメタノール量、及び水量を含有する流(VII)、並びにイソブテンを含有する流(XVII)を取得する工程、
を経る、MTBEの分解によるイソブテンの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:本件発明1では、a)MTBE合成;イソブテン含有炭化水素混合物(II)を、1つ以上のメタノール含有流(VIII、IX)中に含まれたメタノール(III)と、酸性イオン交換体を用いて反応させて、MTBE及びTBAを含有する流(IV)を取得する工程を備え、e)水分離;流(VII)から水を、1質量%を下回る割合に蒸留分離して、流(VIII)を取得する工程を備え、f)返送;メタノール含有流(VIII)をMTBE合成に完全に又は部分的に返送する工程を備えているのに対して、刊行物1発明では、工程a)のMTBE合成の工程を備えておらず、工程e)f)の水の分離及びメタノール含有流の返送に相当する工程を備えておらず、メタノールとMTBEを蒸留により分離する工程(刊行物1発明の工程d))、塔頂生成物(VIII)を刊行物1発明の工程a)へ返送する工程を備えている点

イ 相違点についての判断
以下、相違点について検討する。
(ア)相違点の構成について
刊行物1には、摘記(1h)に、「工業用MTBEは、公知の方法に従い、ポリ不飽和炭化水素が大幅に除去されているC_(4)-炭化水素混合物、例えばラフィネートI又は選択的に水素化されたクラック-C_(4)と、メタノールとの反応により製造されることができる。」(決定注:下線は合議体にて追加)と記載され、摘記(1k)の表5の塔K1のフィード流の組成には、MTBAとt-ブタノールが含まれていることが示され、刊行物2には、摘記(2a)の「摘記(2b)に「イソブテン含有C_(4)-炭化水素混合物、例えばラフィネートIまたは水素添加されたクラック-C_(4)とメタノールからMTBEを製造するため、工業界では頻繁に酸性イオン交換樹脂(スルホン酸基)が不均一系触媒として使用される。反応は1つの反応器または直列に接続された複数の反応器中で行われ、この場合、触媒は有利に固体床中に配置されている。メタノール、イソブテンおよびMTBEが平衡状態にある生成物が生じる。」(決定注:下線は合議体にて追加)との記載から、刊行物1発明において、原料MTBE(I)を用意するため、刊行物1の示唆及び刊行物2の技術的事項に基づき、本件発明1の工程a)に相当する、MTBE合成のために、イソブテン含有炭化水素混合物を、メタノール含有流中に含まれたメタノールと、酸性イオン交換体を用いて反応させて、MTBE及びTBAを含有する流を取得する工程を前工程としてさらに備えるようにすることは当業者にとって容易になし得る事項であるといえる。
しかしながら、工程e)f)に関して、刊行物1発明は、本件発明1の工程a)に相当するMTBE合成工程を備えていない発明であり、イソブテンを蒸留分離後、メタノールが含まれた塔底生成物とMTBEが含まれた塔頂生成物を蒸留分離し、MTBEが含まれた塔頂生成物を本件発明1の工程b)に相当する刊行物1発明の工程a)へ返送することを構成とする発明である。
そして、刊行物1摘記(1l)の表8において、塔底生成物K4(VII)として、メタノールが取得され、結果的に水が0.5028質量%の割合になっていることが示されているとしても、この工程に対する供給流である表7の(VI)の時点で、水は、すでに0.3468質量%となっており、刊行物1のd)工程自体は、水分離の工程であるとはいえず、あくまでも、返送するためのMTBEが99%よりも多く含まれた生成物流を形成するための工程であり、本件発明1の工程e)に相当しない。
さらに、刊行物1の摘記(1l)に塔底生成物K4(VII)として得られたメタノールが純粋で商品としてエステル化やエーテル化反応に用いることができるとの記載があるとしても、刊行物1発明は、本件発明1の工程a)に相当するMTBE合成工程を備えていない発明であり、塔底生成物K4(VII)として得られたメタノールをMTBE合成工程に返送することが当業者に容易であるとはいえない。

(イ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、参考資料1、3、5を示して、MTBEの合成と分解とを経由したイソブテンの製造方法の分野において、プロセスの途中で生じた高純度のメタノールをMTBE合成に返送することは周知であるとして、本件発明1の工程f)は刊行物1に記載されているに等しいと主張している。
しかしながら、仮に、一般的にプロセスの途中で生じた高純度のメタノールをMTBE合成に返送することが知られているとしても、本件発明1の工程a)?e)を経て、水分離工程で生じたメタノール含有流(VIII)を工程a)に返送することとは、方法として異なっており、記載されているに等しいとはいえないし、参考資料の記載を考慮してもなお、刊行物1発明において、メタノールとMTBEを蒸留により分離し、MTBEを99%より多く含んだ塔頂生成物(VIII)を、刊行物1発明のMTBEの分離工程へ返送するのに替えて、水が1質量%を下回るメタノール含有流をMTBE合成工程に返送する構成に変更することは当業者が容易に想到するともいえない。

ウ 効果について
本願明細書【表4】に、反応器供給流の水分を低下させるほど、イソブテンの転化率が向上することが示され、例2と例3の比較により本件発明1の工程e)の有無によって、顕著な効果を奏していることが確認できる。

エ 小括
他の刊行物を含めて検討しても、刊行物2?5は、それぞれ、イソブテン含有C_(4)-炭化水素混合物とメタノールからMTBEを製造するため、酸性イオン交換樹脂を不均一系触媒として使用すること、メタノールと水の混合物からメタノールを回収する方法として、圧力調整した多段階蒸留塔を用いること、アルキル第3級アルキルエーテルから第3級オレフィンを製造する方法において、反応系に水を添加しつつ反応を行うこと、t-ブチルアルコールからのイソブチレンの製造法において、イソブチレンをアルカリ水溶液と接触させて、廃水流をつくることを開示するにとどまるから、本件発明1は、刊行物1?5記載の発明及び参考資料1、3、5から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2?13について
ア 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1において、さらに、工程c)で取得する、少なくともイソブテン、メタノール、MTBE及び水を含有する流(VI)に、TBAを含有していること、工程d)で取得する流れ(VII)が、メタノール及び水だけでなく、流れ(VI)に含まれたものの50質量%より多いTBAを含有することを特定したものである。
本件発明1で検討したとおり、本件発明1の工程e),f)に相当する構成を容易に想到するといえない以上、本件発明2は、刊行物1?5記載の発明及び参考資料1、3、5から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明3?5について
本件発明3?5は、本件発明1において、さらに、「流(VII)からの前記水分離を2つの塔内で実施し、その際、第1の水分離塔を、より低い圧力で運転し、且つその塔底生成物を、より高い圧力で運転される第2の水分離塔内で更に精製すること」「前記第1の水分離塔を、少なくとも部分的に、前記第2の水分離塔の蒸気により加熱すること」「前記第2の水分離塔内で、付加的に水-メタノール混合物を蒸留すること」を特定したものである。
刊行物3の摘記(3a),摘記(3b)から、メタノール及び水を含有する混合物からメタノールを回収する方法において、「一連の蒸留段階は、少なくとも2つの蒸留段階を含み、その際、それぞれの蒸留段階は、蒸留塔及び蒸発器を有し、かつ第2の蒸留段階及びそれぞれの後続の蒸留段階にそれぞれ先行の蒸留段階の底部生成物を供給する。この一連の蒸発段階においては、圧力をそれぞれの蒸留段階から次の蒸留段階にかけて高め」ること、「先行の蒸留段階の蒸発器は、それぞれそのすぐ後続の蒸留段階の蒸留塔の蒸気状の蒸発物で加熱する」ことが記載されているといえる。
しかしながら、メタノール及び水を含有する混合物からメタノールを回収する方法として記載された刊行物3の記載事項を、刊行物1発明にそのまま適用できるかどうかはさておき、本件発明1で検討したとおり、本件発明1の工程e),f)に相当する構成を容易に想到するといえない以上、本件発明3?5は、刊行物1?5記載の発明及び参考資料1、3、5から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1において、さらに、「前記流(V)に、水又は水蒸気を添加すること」を特定したものである。
刊行物4の摘記(4a)?摘記(4c)から、アルキル第3級アルキルエーテルから第3級オレフィンを製造する方法において、触媒として、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物又は弱酸塩で処理されたシリカアルミナを使用し、かつ反応系に水を添加しつつ反応を行なうことで、ジアルキルエーテル及び第3級オレフィンのオリゴマーの副生を減少させ得ることができ、その結果目的物である第3級オレフィンの収率を向上させ得ることが記載されているといえる。
しかしながら、刊行物4の記載事項を、刊行物1発明に適用することができると仮定しても、本件発明1で検討したとおり、本件発明1の工程e),f)に相当する構成を容易に想到するといえない以上、本件発明6は、刊行物1?5記載の発明及び参考資料1、3、5から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件発明7?13について
本件発明7?13は、本件発明1において、さらに、少なくとも「前記イソブテン分離及び/又は前記水分離に際してアルカリ液流を添加すること」を特定したものである。

刊行物5の摘記(5a)?摘記(5d)から、t-ブチルアルコールからのイソブチレンの製造法として、装置の熱伝導面のポリマー沈着物を除去することを目的として、イソブチレンをアルカリ水溶液と接触させて、廃水流を作ることや、粗イソブチレンから、苛性水溶液の作用によって酸性化合物を除去することが記載されているといえる。
しかしながら、刊行物5の記載事項は、本件発明7?13における、装置の腐食防止のために酸性pH状態を回避するためにアルカリ液流を添加することとは、目的が異なっており、刊行物1発明に適用する動機付けはない。
また、仮に適用したとしても、本件発明1で検討したとおり、本件発明1の工程e),f)に相当する構成を容易に想到するといえない以上、本件発明7?13は、刊行物1?5記載の発明及び参考資料1、3、5から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

7 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし13の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2015-12-15 
出願番号 特願2012-518862(P2012-518862)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C07C)
P 1 651・ 121- Y (C07C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増山 慎也  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 辰己 雅夫
瀬良 聡機
登録日 2015-02-27 
登録番号 特許第5701293号(P5701293)
権利者 エボニック デグサ ゲーエムベーハー
発明の名称 MTBEの分解によるイソブテンの製造  
代理人 篠 良一  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  
代理人 久野 琢也  
代理人 星 公弘  
代理人 高橋 佳大  
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