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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 C09D
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C09D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C09D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C09D
管理番号 1312210
審判番号 不服2014-20482  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-09 
確定日 2016-03-08 
事件の表示 特願2010-528023「インクジェットインク及びインクジェット印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月 9日国際公開、WO2009/045703、平成22年12月24日国内公表、特表2010-540751〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、特許法第184条の3第1項の規定により、2008年 9月15日(パリ条約による優先権主張 2007年10月 4日(GB)英国)の国際出願日にされたものとみなされる特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成22年 4月 5日 国内書面提出
同日 翻訳文(請求の範囲、明細書等)提出
平成23年 8月 1日 出願審査請求
平成25年 2月27日付け 拒絶理由通知
平成25年 9月 5日 意見書
平成26年 6月 5日付け 拒絶査定
平成26年10月 9日 本件審判請求
同日 手続補正書
平成26年10月21日付け 審査前置移管
平成26年12月17日付け 前置報告書
平成26年12月19日付け 審査前置解除

第2 平成26年10月 9日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成26年10月 9日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成26年10月 9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正の前後の記載は次のとおりである。

ア 補正前の特許請求の範囲(すなわち,願書に最初に添付した特許請求の範囲)
「【請求項1】
少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)を含み、さらにフリーラジカル光開始剤を含み、揮発性化合物をほとんど含まない放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項2】
少なくとも60重量%のCTFAを含む、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
少なくとも70重量%のCTFAを含む、請求項2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
25重量%以下の3官能以上のモノマーも含む、請求項1?3のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項5】
10重量%以下の5官能または6官能モノマーを含む、請求項1?4のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項6】
5重量%以下の2官能以上のモノマーを含む、請求項1?4のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項7】
0.1?25重量%の着色剤を含む、請求項1?6のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項8】
0.1?20重量%の紫外線フリーラジカル光開始剤を含む、請求項1?7のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項9】
50℃で30mPas未満の粘度を有する、請求項1?8のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項10】
少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)を含み、フリーラジカル光開始剤も含み、2官能以上のモノマーが存在する場合は、その総量がインクの5重量%以下である放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項11】
少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)を含み、フリーラジカル光開始剤も含み、可塑剤が存在する場合は、その総量がインクの5重量%以下である放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項12】
少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)と、少なくとも1つの2官能以上のモノマーと、フリーラジカル光開始剤とを含む放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項13】
1重量%未満の揮発性化合物を含む、請求項12に記載のインクジェットインク。
【請求項14】
請求項1?13のいずれかに記載のインクを含むインクジェットプリンタ
【請求項15】
基材を含み、この基材の少なくとも1つの表面上に、請求項1?13のいずれかに記載のインクの硬化物を有する印刷物。
【請求項16】
i)請求項1?13のいずれかに記載のインクを、基材上にインクジェット印刷するステップと、
ii)前記インクを紫外線放射で露光して、前記インクを硬化させるステップとを含むインクジェット印刷方法。
【請求項17】
前記基材が無孔性である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材がフレキシブル基材である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
硬化線量が400mJ/cm-2以下である、請求項16?18のいずれかに記載の方法。」

イ 補正後(すなわち、平成26年10月9日付け手続補正書に記載)の特許請求の範囲
「【請求項1】
少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)と、3重量%以下の少なくとも1つの2官能以上のモノマーと、5重量%未満の高Tgモノマーと、フリーラジカル光開始剤とを含み、揮発性有機化合物をほとんど含まない、放射線硬化性インクジェットインク。
(【請求項2】?【請求項13】は省略)」

2 本件補正内容の検討
(1)補正内容
本件補正のうち、【請求項1】について見ると、その内容は次のとおりである。
ア 補正前の請求項1に係るインクジェットインクについて、「3重量%以下の少なくとも1つの2官能以上のモノマーを含む」旨、新たに特定すること。
イ 補正前の請求項1に係るインクジェットインクについて、「5重量%未満の高Tgモノマーを含む」旨、新たに特定すること。
ウ 補正前の請求項1に係るインクジェットインクについて、「揮発性化合物をほとんど含まない」との記載を、「揮発性有機化合物をほとんど含まない」とすること。
(2)補正の目的
上記補正内容のうち、アについては、本件補正前の請求項1の記載を引用した同請求項6に記載の「5重量%以下の2官能以上のモノマーを含む」なる事項によって限定するとともに、さらにその含有量を「3重量%以下」と限定するものであるといえる。
また、イについては、補正前の発明特定事項である「揮発性化合物」を「揮発性有機化合物」と限定するものであるといえる。
しかしながら、上記ウについては、『高Tgモノマー』なる特定事項は、補正前の特許請求の範囲には記載のなかった特定事項であり、このような事項を新たな発明特定事項とすることは、特許法第17条の2第5項第2号における「・・・請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって・・・」には該当するものとはいえない。さらに、同条同項に規定する他の各号の何れかに該当するものともいえないから、このような補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしているとすることはできない。

3 補正の却下の決定のまとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4 付記
念のため、仮に、請求項1に係る本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとした場合に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
ア 本件補正により、上記2(1)イに記載したように、新たに「5重量%未満の高Tgモノマーを含む」旨、請求項1において特定されることになったものである。
しかしながら、このような事項を含む発明については、発明の詳細な説明において、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものとすることができないので、以下、詳述する。
イ 本願発明の詳細な説明において、『高Tgモノマー』に関する記載としては、
「【0028】
一実施形態では、インクは20%以下の、より好適には5重量%未満の高Tgモノマーを含む。「高Tgモノマー」という用語は、そのモノマーのホモポリマーが、少なくとも50℃のTg(ガラス転移温度)を有するモノマーを称する。そのような高Tgモノマーの存在は、硬化インクのフレキシビリティを低下させると考えられている。随意的に、インクは10重量%未満、好適には5重量%未満の高Tg単官能モノマーを含む。」
との記載のみである。
ここの記載を見ても、『高Tgモノマー』としては具体的にどのようなモノマーが使用できるのかについて明らかにされていない。
また、発明の詳細な説明の実施例【0069】?【0073】の記載を見ても、特にTgについて明記された成分が配合されているものでもなく、そもそもTgが50℃以上であるか否かに注目して何らかの成分が配合されている、又は、配合していない、とすることもできない。
さらに、本願補正発明のようなインクジェットインキにおいて、「5重量%未満の高Tgモノマー」を配合した場合に、本願補正発明の所期の目的(課題)である、「許容できる粘着性及び硬化速度を有し、印刷段階及びエンドユーザーによって使用される際に共に低臭気のジェットインクを提供する」(本願明細書【0008】)ことができるということについて、当業者にとって自明のことであったとする事情も見当たらない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは、「5重量%未満の高Tgモノマーを含む」旨を特定事項として含む本願補正発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものとすることができない。
ウ なお、本願明細書【表2】に記載のN-ビニルカプロラクタムは、例えば、特表2007-510035号公報の【0017】の記載(「本発明において適する1個のエチレン性不飽和基および50℃以上の対応するホモポリマーのガラス転移温度を有する高Tgモノマーには、例えば、・・・N-ビニルカプロラクタム・・・が挙げられる。」との記載がなされている。)によれば、本願補正発明における『高Tgモノマー』(すなわち、Tgが50℃以上のモノマー)に対応するものと一応は窺えるものの、上記したように、本願明細書では、そもそも『高Tgモノマー』として、N-ビニルカプロラクタムが具体的に例示されているものではなく、しかも本願明細書【0027】においてTgの高低とは直接関係しない成分として「N-ビニル-2-カプロラクタム」(「N-ビニルカプロラクタム」と同義)が挙げられていることから、本願明細書【表2】の記載を見てもかかるモノマー成分が『高Tgモノマー』に対応する成分であると理解することは困難である。
さらに、本願明細書【表2】において、N-ビニルカプロラクタムが配合されているインクC、E及びFは、何れも配合量は10.0重量%と、上記した本願補正発明における特定事項に該当しないものであって、しかも、本願明細書【表3】の記載によれば、これらインクは、少なくとも「臭気」、「フレキシビリティ」又は「許容硬化速度」の何れかにおいて本願補正発明における所望の特性に適合しないと解されるものである(「臭気」に関しては、本願明細書【表3】の従来技術を示す「標準UFE5597」の数値が「4.7」であることに加えて、本願明細書【表1】における市販品の臭気の中で最も大きい値が「4.7」となっていることから、少なくとも『4.7』という値は、本件補正発明において望ましくない範囲のものと解される。)。したがって、このような記載に基づいて、「5重量%未満の高Tgモノマーを含む」旨を特定事項として有する本願補正発明について、発明の詳細な説明に当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているものとすることはできない。
エ また、本件補正により新たに追加された、「5重量%未満の高Tgモノマーを含む」旨の記載の解釈として、望ましくない成分の許容値が特定されたものであって、例えば、「全く含まれない場合も意味する」或いは「含まれていても5重量%未満であれば悪影響はないとの意味」に解釈することも、文言上全く否定できないものではあるが、そもそもそのような記載が、本願明細書に記載されているものではなく、むしろ、本願明細書【0028】には、「一実施形態では・・・含む」という積極的に配合する意味に解される表現がある上、審判請求書の「〔4〕本願発明が特許されるべき理由」の「(3)本願発明と先願発明の対比」において、
「すなわち、本願請求項に記載のインクは、・・・、以下の3つのモノマーを必要とする。
(i)・・・
(ii)・・・
(iii)5重量%未満の高Tgモノマー 」(下線は、合議体で付与。)
と主張されていることからも、(明確な配合理由はともかく)必須成分として配合されるものと解釈すべきである。なお、インクジェット用インクにおいて、50℃以上のTgを有する成分が回避されるべきであるとする技術常識があるともいえないことは、例えば、特開2005-161603号公報(【0058】の【表3】でTgが50℃以上のものが各種使用されている。)及び特開2004-359919号公報(【請求項1】で「重合性化合物の少なくとも1種のガラス転移点温度(Tg)が、50℃以上」と特定されている。)などの記載からも理解されることである。したがって、本件補正により新たに追加された、「5重量%未満の高Tgモノマーを含む」旨の特定事項は、あくまで必須成分として『高Tgモノマー』を配合する意味に解釈すべきものである。
オ 以上のことから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定された要件を満たしているとすることができない。

(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア 本願補正発明の課題は、本願明細書【0002】?【0008】の記載(特に、【0008】の記載)から、次のものであると解される。
「許容できる粘着性及び硬化速度を有し、印刷段階及びエンドユーザーによって使用される際に共に低臭気のジェットインクを提供すること」
イ そして、本件補正により、新たに追加された「5重量%未満の高Tgモノマーを含む」旨の特定事項を有する発明に関して、このような発明が、本願発明の課題である「許容できる粘着性及び硬化速度を有し、印刷段階及びエンドユーザーによって使用される際に共に低臭気のジェットインクを提供すること」を達成できることについて、当業者が理解できるように、発明の詳細な説明の記載がなされているとはいえないことは、上記(1)において記載したとおりである。
ウ したがって、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとすることができないので、本願特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているとすることができない。

(3)まとめ
以上のとおり、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号にいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとした場合でも、本願は、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たしているものとすることができないし、また、同条第6項第1号に規定する要件を満たしているものとすることもできないので、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願についての当審の判断
I.本願発明
平成26年10月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?19に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1?19にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、再掲すると次のとおりのものである。

「少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)を含み、さらにフリーラジカル光開始剤を含み、揮発性化合物をほとんど含まない放射線硬化性インクジェットインク。」

II.原審の拒絶査定の概要
原審において、平成25年 2月27日付け拒絶理由通知書で以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって下記の拒絶査定がなされた。

<拒絶理由通知>
「 理 由
1.(省略)
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
3.(省略)
4.(省略)



…(中略)…
・理由:2 ・請求項:1?19 ・引用文献等:1
・備考
出願1には、81.86%のCTFA及びラジカル重合開始剤を含有するインクジェット用インクが記載されており、前記インクには、揮発性化合物は含有されていない(請求項1、4、10、実施例1等)。
…(中略)…
引 用 文 献 等 一 覧

1.特願2009-507139号(国際公開第2007/125273号)
…(後略)」

<拒絶査定>
「この出願については、平成25年 2月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由2?4によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
1.理由2について
意見書において出願人は、「出願1に記載の発明のインクは、少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1つの単官能N-ビニルアミドモノマーとの両方を成分として必要とします。対照的に、本願請求項1?19に記載の発明はこのようなモノマーの組み合わせを必要としません。このように、出願1に記載の発明は、本願請求項1?19に記載の発明と同一ではありません。」と主張する。
しかしながら、本願請求項1に係る発明は、「少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート」以外のモノマーを何ら規定しておらず、他のモノマーの併用を排除していないから、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート以外のモノマーを必須成分として含有する出願1に記載されたインクジェット用インクも、本願発明の範囲に含まれるものである。
…(後略)」

III.判断

引用出願:特願2009-507139号(国際公開第2007/125273号)」)
(以下「先願」といい、外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面を「先願明細書等」という。)

1.先願明細書等に記載された事項
先願明細書等には、以下の事項が記載されている。(なお、『』内は、国際公開第2007/125273号の翻訳文であるとされる特表2009-534514号公報(以下、「参考文献1」という。)に基いた訳文を記載する。)。

(a-1)
「 Claims
1. An ink-jet ink comprising at least one monofunctional
(meth)acrylate monomer; at least one monofunctional N-vinyl amide
monomer; at least one radical photoinitiator; and at least one
colouring agent; wherein the ink has a viscosity of less than 100
mPas at 25℃、 and wherein the molar ratio of the at least one
monofunctional (meth)acrylate monomer to the at least one
monofunctional N-vinyl amide monomer is from 1.0 to 6.0.」
『 少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1つの単官能N-ビニルアミドモノマーと、少なくとも1つのラジカル光重合開始剤と、少なくとも1つの着色剤とを含むインクジェット用インクであって、25℃で100mPas未満の粘度を有し、少なくとも1つの前記単官能(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1つの前記単官能N-ビニルアミドモノマーに対する前記モル比率が1.0?6.0であるインクジェット用インク。』(参考文献1の【特許請求の範囲】【請求項1】参照)

(b-1)
「The ink-jet ink of the present invention dries primarily by curing
、i.e. by the polymerisation of the monomers present, as discussed
hereinabove, and hence is a curable ink. The ink does not,
therefore, require the presence of water or a volatile organic
solvent to effect drying of the ink, although the presence of such
components may be tolerated. Preferably, however, the ink-jet ink
of the present invention is substantially free of water and
volatile organic solvents.

As explained hereinabove incorporating significant amounts of
monofunctional monomers in inks has traditionally led to very poor
UV cure response and hence multifunctional monomers have had to be
added to boost cure. It has now been found that, at certain ratios,
combinations of monofunctional (meth)acrylate monomers with an
N-vinyl amide monomers provide a surprising synergistic effect,
namely higher cure speeds are observed than for either of the
component monomers when taken alone. This effect is particularly
beneficial in ink-jet inks formulated with mono functional monomers
allowing cure speeds which are similar or even better than those
observed with difunctional and eyen trifunctional (meth)acrylate
monomer- based inks.

N- Vinyl amides are well-known monomers in the art and a detailed
description is therefore not required. N- Vinyl amides have a vinyl
group attached to the nitrogen atom of an amide which may be
further substituted in an analogous manner to the (meth)acrylate
monomers.

Preferred examples are N-vinyl caprolactam (NVC) and N-vinyl
pyrrolidone (NVP):



The monofunctional (meth)acrylate monomers are also well known
in the art and are preferably the esters of acrylic acid. Preferred
examples include:.

」(3頁8行?5頁4行)
『 本発明のインクジェット用インクは、上記考察のように、主として硬化すなわち存在する該モノマーの重合により乾燥し、それ故に硬化性インクである。該インクには、それ故に、インクの乾燥をもたらす水または揮発性有機溶剤の存在を必要としないが、このような成分の存在は許容できる。しかし、本発明の該インクジェット用インクには水および揮発性有機溶剤が実質的に含まれていないことが好ましい。
上記で説明したように、インク中にかなりの量の単官能モノマーを組み込むと、非常に不十分なUV硬化応答が従来より生じており、それ故に硬化を増強するために多官能化モノマーを添加する必要があった。単官能(メタ)アクリレートモノマーとN-ビニルアミドモノマーとの組合せは、ある種の比率で、驚くべき相乗効果をもたらす、すなわち該成分のモノマーのいずれか一方を単独で用いた場合よりも高い硬化速度が認められることが今や判明した。この効果は、二官能およびさらに三官能(メタ)アクリレートモノマーをベースとするインクで認められるものとほぼ同等かまたは一層良好な硬化速度を可能にする、単官能モノマーを配合したインクジェット用インクで特に有益である。
N-ビニルアミドは、当技術分野では良く知られているモノマーであり、それ故に詳細な記述は必要ない。N-ビニルアミドは、(メタ)アクリレートモノマーと同様にさらに置換できるアミドの窒素原子に結合するビニル基を有する。
好ましい例は、N-ビニルカプロラクタム(NVC)およびN-ビニルピロリドン(NVP)である。
【化1】

該単官能(メタ)アクリレートモノマーも、当技術分野で良く知られており、好ましくはアクリル酸のエステルである。好ましい例を以下に挙げる。
【化2】

』(参考文献1の【0009】?【0015】参照)
(c-1)
「Monofunctional acrylates and monofunctional N-vinyl amide, when
combined, offer significant improvements in cure response over the
non-combined monomers. AU of the combinations tested exhibited
a minimum in the dose of UV light required for cure when cure
response was plotted against monomer blend composition (further
details are given in the examples hereinbelow). The depth of these
minima are dependent on the individual cure speeds of the
component monomers: the faster curing the acrylate monomers when
taken alone, the deeper the minimum in UV dose required.

Of those tested, many blends exhibited faster cure speeds than DPGDA
(a difunctional acrylate) and in some cases speeds equivalent to
TMPTA (a trifunctional acrylate). These optimised blends provide
significant advantages: high cure speeds can be achieved without
compromising film properties such as flexibility, which is often
sacrificed when multifunctional acrylates are employed.」(6頁4行?17行)
『単官能アクリレートおよび単官能N-ビニルアミドは、組み合わせた場合、非組合せモノマーに対して硬化応答の著しい改善をもたらす。試験をした全ての組合せは、硬化応答をモノマーブレンド組成(さらなる詳細は下記の実施例に示す)に対してプロットした場合、硬化に必要なUV光線量の最小値を示した。これらの最小値の深さは、該成分モノマー個々の硬化速度に依存する。すなわち単独で使用した場合の該アクリレートモノマーの硬化が速いほど、必要なUV線量の最小値がより深くなる。
これらの試験したもののうち、多くのブレンドは、DPGDA(二官能アクリレート)より速い硬化速度、およびいくつかの場合TMPTA(三官能アクリレート)に等しい硬化速度を示した。これらの最適化ブレンドは、重要な利点をもたらす。すなわち多官能アクリレートを使用する多くの場合に、犠牲となる柔軟性などのフィルム特性を損ねることなく高硬化速度を達成することができる。』(参考文献1の【0020】及び【0021】参照)

(d-1)
「In addition to the monomers described above, the compositions
include a photoinitiator, which, under irradiation by, for example,
ultraviolet light, initiates the polymerisation of the monomers.
Preferred are photoinitiators which produce free radicals on
irradiation (free radical photoinitiators) such as, for example,
benzophenone, 1-hydroxycyclohexyl phenyl ketone,
2-benzyl-2-dimethylamino-(4- morpholinophenyl)butan-l-one,
benzil dimethylketal,
bis(2、6-dimethylbenzoyl)-2、4、4- trimethylpentylphosphine oxide
or mixtures thereof. Such photoinitiators are known
and commercially available such as, for example, under the trade
names Irgacure, Darocur (from Ciba) and Lucerin (from BASF).

Preferably the photoinitiator is present from 1 to 20% by weight,
preferably from 4 to 10% by weight, of the ink.

The ink-jet ink of the present invention also includes a colouring
agent, which maybe either dissolved or dispersed in the liquid
medium of the ink. Preferably the colouring agent is a dispersible
pigment, of the types known in the art and commercially available
such as, for example, under the trade-names Paliotol
(available from BASF pic), Cinquasia, Irgalite
(both available from Ciba Speciality Chemicals)
and Hostaperm (available from Clariant UK).
The pigment may be of any desired colour such as, for example,
Pigment Yellow 13、 Pigment Yellow 83、 Pigment Red 9、
Pigment Red 184、 Pigment Blue 15:3、 Pigment Green 7、
Pigment Violet 19、 Pigment Black 7.
Especially useful are black and the colours required for
trichromatic process printing. Mixtures of pigments may be used.

The total proportion of pigment present is preferably from 0.5 to
15% by weight, more preferably from 1 to 5% by weight.」(7頁28行?8頁19行)
『上記の該モノマーのほかに、該組成物は、例えば、紫外線による照射下で、該モノマーの重合を開始する光重合開始剤を含む。例えば、ベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2、6-ジメチルベンゾイル)-2、4、4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイドまたはその混合物などの照射時にフリーラジカル(フリーラジカル光重合開始剤)を生成する光重合開始剤が好ましい。このような光重合開始剤は、知られており、例えば、(Cibaから)Irgacure、Darocurおよび(BASFから)Lucerinの商標名で市販されている。
該光重合開始剤は、該インクの1?20重量%、好ましくは4?10重量%で存在することが好ましい。
本発明の該インクジェット用インクは、該インクの液状媒体中に溶解または分散できる着色剤も含む。該着色剤は、当技術分野で知られているタイプであって、例えば、Paliotol(BASF plcから入手できる)、Cinquasia、Irgalite(共にCiba Speciality Chemicalsから入手できる)、およびHostaperm(Clariant UKから入手できる)の商標名などで市販されている分散性顔料が好ましい。該顔料は、例えば、Pigment Yellow13、Pigment Yellow83、Pigment Red9、Pigment Red184、Pigment Blue15:3、Pigment Green7、Pigment Violet19、Pigment Black7などの任意の所望の色であってもよい。黒色および三色プロセス印刷に必要な色が特に有用である。顔料の混合物も使用できる。
存在する顔料の全比率は、好ましくは0.5?15重量%、より好ましくは1?5重量%である。』(参考文献1の【0028】?【0031】参照)

(e-1)
「Examples

The invention will now be described, by way of example, with
reference to the following example (parts given are by weight).

Example 1 (Reference example)

Ink-jet ink formulations were prepared by varying the monomer
composition whilst holding all the other components constant,
as set out in Table 1.


A series of monomers were evaluated in the above formula and
compared for cure speed. Inks were drawn down onto to 220 micron
gloss PVC using a 12 micron K bar applicator. The films were cured
using a Svecia UV drier fitted with two independently switchable 80
W/cm lamps. In each case the UV dose required to cure the ink film
to a tack-free state was measured

The results are set out in Tables 2a and 2b which show samples cured
with two lamps on full power and samples cured on half power,
respectively.

」(9頁24行?11頁2行)
『【実施例】
以下の実施例(部は、重量%)を参照しながら例証として、本発明を以下に説明する。
実施例1(参照実施例)
インクジェット用インク配合物を、表1に示すような全ての他成分を一定に保ちながら、モノマー組成を変えることにより調製した。
【表1】

上記配合において一連のモノマーを評価し、硬化速度の比較をした。12ミクロンKバーアプリケーターを用いて220ミクロン光沢性PVC上にインクをドローダウンした。2つの個々に切替可能な80W/cmランプを備えたSveciaUV乾燥器を用いてフィルムを硬化した。それぞれの場合に、該インクフィルムを不粘着状態に硬化するために必要な該UV線量を測定した。
それぞれ、2個のランプを用いて全出力で硬化した試料と半出力で硬化した試料の結果を、表2aおよび表2bに示す。

【表2】

【表3】

』(参考文献1の【0037】?【0044】参照)

2.検討
ア 先願明細書等に記載された発明
上記先願明細書等には、摘示(e-1)実施例1における「表1」及び「表2a.」の「CTFA」欄からみて、
「4.53重量%のカラーコンセントレイト、81.86重量%のCTFA、0.8重量%のUV安定剤、1.88重量%のIrgacure184、8.01重量%のアシルホスフィンオキサイド、2.82重量%のベンドフェノン及び0.1重量%のシリコーン系湿潤剤からなるインクジェット用インク配合物」が記載され、前記「インクジェット用インク配合物」は上記表2aの「試験配合におけるモノマー硬化速度」及び「必要UV線量」の記載からみて、「UV硬化性インクジェット用インク」といえる。
してみると、上記先願明細書等には、摘示(e-1)の記載事項からみて、
「4.53重量%のカラーコンセントレイト、81.86重量%のCTFA、0.8重量%のUV安定剤、1.88重量%のIrgacure184、8.01重量%のアシルホスフィンオキサイド、2.82重量%のベンドフェノン、0.1重量%のシリコーン系湿潤剤からなるUV硬化性インクジェット用インク。」
に係る発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。

イ 対比・検討
(ア)対比
本願発明と先願発明とを対比すると、
a 先願発明の「CTFA」及び「UV硬化性インクジェット用インク」は、それぞれ、本願発明の「環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)」及び「放射線硬化性インクジェットインク」に相当する。(先願発明の「CTFA」については、摘示(b-1)の化学式参照。)
b 摘示(d-1)の「例えば、ベンゾフェノン、…などの照射時にフリーラジカル(フリーラジカル光重合開始剤)を生成する光重合開始剤が好ましい。」からみて、先願発明の「ベンドフェノン」は「フリーラジカル光開始剤」といえ、また、「Irgacure184」及び「アシルホスフィンオキサイド」についても、ともに「フリーラジカル光開始剤」といえることは、当業者に周知のことである(例えば、特開2005-144699号公報(特に、【0014】及び【0043】)及び特開2006-28200号公報(特に、【0043】?【0045】)など参照)。
したがって、先願発明の「Irgacure184」、「ベンドフェノン」及び「アシルホスフィンオキサイド」はいずれも本願発明の 「フリーラジカル光開始剤」に相当するといえる。

c してみれば、本願発明と先願発明とは、
「少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)を含み、さらにフリーラジカル光開始剤を含む、放射線硬化性インクジェットインク。」
の点で一致し、下記の点で一応相違する。

相違点:本願発明は、「揮発性化合物をほとんど含まない」のに対して、先願発明は、4.53重量%のカラーコンセントレイト、0.8重量%のUV安定剤及び0.1重量%のシリコーン系湿潤剤を含む点。

(イ)相違点に係る検討
先願発明における「4.53重量%のカラーコンセントレイト」は摘示(e-1)の「表1」における「全ての硬化応答試験に使用するシアン配合物」及び摘示(d-1)の「本発明の該インクジェット用インクは、該インクの液状媒体中に溶解または分散できる着色剤も含む。該着色剤は、…の商標名などで市販されている分散性顔料が好ましい。該顔料は、例えば、…Pigment Blue15:3…などの任意の所望の色であってもよい。黒色および三色プロセス印刷に必要な色が特に有用である。顔料の混合物も使用できる。存在する顔料の全比率は、好ましくは0.5?15重量%、より好ましくは1?5重量%である。」からみて、シアン系着色剤と解するのが自然であり、「揮発性化合物」でないことは明らかである。また先願発明における「UV安定剤」及び「シリコーン系湿潤剤」は、それらを構成する化合物が不明であり、「揮発性化合物」であるか否か明らかでないが、仮に「UV安定剤」及び「シリコーン系湿潤剤」が「揮発性化合物」である場合、それぞれ、UV安定剤及び湿潤剤としての機能を発揮し得ないことから、いずれも「揮発性化合物」でないことは明らかであるといえる。
そうすると、先願発明は4.53重量%のカラーコンセントレイト、0.8重量%のUV安定剤及び0.1重量%のシリコーン系湿潤剤を含むものの、カラーコンセントレイト、UV安定剤及びシリコーン系湿潤剤はいずれも「揮発性化合物」でないことは明らかであるから、先願発明の「放射線硬化性インクジェットインク(UV硬化性インクジェット用インク)」は「揮発性化合物をほとんど含まない」ものといえ、本願発明の「放射線硬化性インクジェットインク」とは、「揮発性化合物をほとんど含まない」点で一致する。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点であるとはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、先願発明と実質的に同一であると認められる。
また、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもない。
よって、本願発明は、上記先願発明と実質的に同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

3.審判請求人の主張
平成25年9月5日付け意見書において、『出願1の請求項1には「少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1つの単官能N-ビニルアミドモノマーと、少なくとも1つのラジカル光重合開始剤と、少なくとも1つの着色剤とを含むインクジェット用インク」と記載されています。このように、出願1に記載の発明のインクは、少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1つの単官能N-ビニルアミドモノマーとの両方を成分として必要とします。対照的に、本願請求項1?19に記載の発明はこのようなモノマーの組み合わせを必要としません。このように、出願1に記載の発明は、本願請求項1?19に記載の発明と同一ではありません。』と主張する。
しかしながら、先願明細書等には、確かに、請求の範囲では、CTFAとNVCの両成分を含むUV硬化型のインクジェット用インクに関する発明が記載され、さらに明細書の実施例2においてはそれに対応する記載がなされているものであるが、それに留まることなく、「実施例1(参照実施例)」という位置づけながらもNVCと組み合わせることなく、CTFAを単独のモノマー成分として含むUV硬化型のインクジェット用インクについても記載されていて(摘示(e-1)の「表2a.」)、しかも、かかるインクが、本願発明における発明特定事項を全て具備し実質的に同一といえることは、上記2.において記載したとおりである。
そして、このCTFA単独のインクについて、該表2a.に記載された、硬化に要する「必要UV線量」(すなわち、数値が小さいほど硬化速度が良好であることを意味する。)によって表された硬化速度を検討すると、その数値は「220」(mJ/cm^(2))であり、これに対して同表においては、二官能アクリレートのDPGDAは「400」、三官能アクリレートのTMPTAは「105」となっているものである(CTFAと同じ単官能のIBOAやPEAはそれぞれ「480」、「>480」となっている。)。ところで、先願明細書等では、例えば、「これらの試験したもののうち、多くのブレンドは、DPGDA(二官能アクリレート)より速い硬化速度、およびいくつかの場合TMPTA(三官能アクリレート)に等しい硬化速度を示した。」(摘示(c-1);参考文献1の【0021】)などと記載されていることから、先願発明においては、硬化速度に関しては、二官能アクリレートのDPGDAよりも速いことや、三官能アクリレートのTMPTAと同等の速度であることが一つの目安にされているものと理解される。そうすると、単官能のCTFAが単独でも、同じ単官能のアクリレートと比べた場合のみならず、二官能のDPGDAよりもさらに良好な硬化速度を有し、むしろ三官能のTMPTAに近い数値となっていることは、当業者が見ても一定の評価がなされると理解されるものである。このような事情をも考慮すると、先願明細書等には、CTFAを単独のモノマー成分とする発明についても記載されていたとすることは、当業者にも理解され、認識されることであるといえる。
なお、本願明細書【表3】では、CTFAの「許容硬化速度?即ち、100mJ/cm^(2)で硬化?」欄は「はい」となっていて、このことは、明細書【0046】?【0049】の記載をも参酌すると、「100mJ/cm^(2)以下」で必要な硬化が得られたことを意味するものであって、先願明細書等でいうCTFAの「必要UV線量」が「100以下」であることに相当するものとなるが、先願明細書の「実施例1(参照実施例)」におけるCTFAを含むインクについては、本願発明の特定事項を全て具備するもので実質的に同一といえることから、このような違いは、特定事項にはなっていない他の成分に基づく差異か、又は、実験条件の詳細や評価基準の細かな違いに基づくものと解さざるを得ないものである。したがって、このことを根拠に本願発明が先願明細書等に記載されているものではないとすることはできない。
以上のことから、上記請求人の主張は採用することができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、その余につき検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-08 
結審通知日 2015-10-09 
審決日 2015-10-22 
出願番号 特願2010-528023(P2010-528023)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C09D)
P 1 8・ 161- Z (C09D)
P 1 8・ 57- Z (C09D)
P 1 8・ 536- Z (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桜田 政美  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 菅野 芳男
日比野 隆治
発明の名称 インクジェットインク及びインクジェット印刷方法  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  

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