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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1312325
審判番号 不服2014-16124  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-14 
確定日 2016-03-09 
事件の表示 特願2012-524887「送信モード検出を可能にするMU-MIMOVHTプリアンブルに対する拡張」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月17日国際公開,WO2011/019968,平成25年 1月17日国内公表,特表2013-502173〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2010年8月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年8月12日 米国,2009年8月18日 米国,2010年7月30日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年4月8日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 補正却下の決定
[結論]
平成26年8月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後の発明
平成26年8月14日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成24年6月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
ワイヤレス通信のための方法において,
フレーム構造の信号(SIG)フィールドの第1の部分を受信することと,
前記SIGフィールドの前記第1の部分に基づいて,前記フレーム構造の送信モードを決定することと,
前記送信モードに基づいて,前記フレーム構造の残りのパートを受信することとを含み,
前記SIGフィールドは,複数の装置に対して共通である前記第1の部分と,各装置に対して特有である第2の部分とを有し,
前記SIGフィールドを受信する際に使用する配列と直交する軸上で,送信モード情報が受信される方法。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,
「【請求項1】
ワイヤレス通信のための方法において,
フレーム構造の信号(SIG)フィールドの第1の部分を受信することと,
前記SIGフィールドの前記第1の部分に基づいて,前記フレーム構造の送信モードを決定することと,
前記送信モードに基づいて,前記フレーム構造の残りのパートを受信することとを含み,
前記SIGフィールドは,複数の装置に対して共通である前記第1の部分と,各装置に対して特有である第2の部分とを有し,
前記SIGフィールドの前記第1の部分を受信する際に使用する配列と直交する軸上で,送信モード情報が受信される方法。」
という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。
([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)

2 補正の適否
(1)新規事項の有無について
ア 補正の概要
上記補正は,本願発明の「前記SIGフィールドを受信する際に使用する配列」について,「前記SIGフィールドの前記第1の部分を受信する際に使用する配列」との限定を付して特許請求の範囲を減縮するものである。

イ 国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面の翻訳文,同請求の範囲の翻訳文,同図面の記載
本願発明の「前記SIGフィールドを受信する際に使用する配列と直交する軸上で,送信モード情報が受信される」なる事項に関しては,国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文の【0053】に「VHT-SIGフィールドの第1の部分を受信した後に,局は,VHT-SIGフィールドの第1の部分を利用することにより,送信モードを検出してもよい。ある態様において,局は,モード検出に対して,特殊な配置(例えば,回転された2位相シフトキーイング(BPSK))を用いてもよい。例えば,送信モード情報は,VHT-SIGフィールドの送信において使用する配列に直交する軸上で送信してもよい。」([当審注]:下線部は記載箇所を示す。また,「配列」は,変調に係るコンステレーション(constellation)を意味するものと認められる。)との記載があるのみである。そして,当該事項に関連する図面はない。

ウ 判断
上記明細書の翻訳文の【0053】の「例えば,送信モード情報は,VHT-SIGフィールドの送信において使用する配列に直交する軸上で送信してもよい。」との記載によれば,本願発明の「前記SIGフィールドを受信する際に使用する配列と直交する軸上で,送信モード情報が受信される」なる事項は記載されているものの,「VHT-SIGフィールドの送信において使用する配列」が「SIGフィールドの前記第1の部分を受信する際に使用する配列」であることは記載されていない。
そして,上記明細書の翻訳文の【0041】?【0043】及び図4A,図4B,図5によれば,VHT-SIGフィールドには,「第1の部分」とされる「VHT-SIG406」と「第2の部分」とされる「VHT-SIG412」が存在するところ,これらの部分を受信する際にそれぞれどのような配列が使用されるかについては何ら開示されていない。
してみると,「前記SIGフィールドを受信する際に使用する配列」を,「SIGフィールドの前記第2の部分を受信する際に使用する配列」を除き,特に「SIGフィールドの前記第1の部分を受信する際に使用する配列」とする,合理的な根拠は見出すことができない。
したがって,上記補正は,国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面の翻訳文,同請求の範囲の翻訳文又は同図面の記載に記載された事項の範囲内のものとはいえない。
更にいえば,請求項1の「前記SIGフィールドの前記第1の部分に基づいて,前記フレーム構造の送信モードを決定すること」の記載によれば,「送信モード情報」は第1の部分にて受信されると解されることから,「送信モード情報」が受信される際に使用される配列も「前記SIGフィールドの前記第1の部分を受信する際に使用する配列」と言い得るものである。このため,「前記SIGフィールドの前記第1の部分を受信する際に使用する配列」の定義が不明確であり,この点からも,国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面の翻訳文,同請求の範囲の翻訳文又は同図面の記載に記載された事項の範囲内のものとはいえない。

(2)独立特許要件
上記(1)のとおりであるが,更に進めて,上記補正が仮に新規事項を含まないものとした場合,上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえることから,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて,以下検討する。

ア 補正後の発明
補正後の発明は,上記「1 本願発明と補正後の発明」の項の「補正後の発明」のとおりのものと認める。

イ 先願発明
原査定の拒絶の理由に引用された特願2012-504920号(国際公開第2010/120692号)(以下,「先願」という。)の国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面(以下,「先願明細書」という。)には,「PHYSICAL LAYER FRAME FORMAT FOR WLAN」([当審仮訳]:WLAN用の物理層フレーム形式)([当審注]:当審仮訳は,先願の公表公報である特表2012-523774号公報の記載に基づく。)に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「[0050] Fig. 1 is a block diagram of an example wireless local area network (WLAN) 10, according to an embodiment. An AP 14 includes a host processor 15 coupled to a network interface 16. The network interface 16 includes a medium access control (MAC) unit 18 and a physical layer (PHY) unit 20. The PHY unit 20 includes a plurality of transceivers 21, and the transceivers are coupled to a plurality of antennas 24. Although three transceivers 21 and three antennas 24 are illustrated in Fig. 1, the AP 14 can include different numbers (e.g., 1 , 2, 4, 5, etc.) of transceivers 21 and antennas 24 in other embodiments. In one embodiment, the MAC unit 18 and the PHY unit 20 are configured to operate according to a first communication protocol (e.g., the IEEE 802.11ac Standard, now in the process of being standardized). In another embodiment, the MAC unit 18 and the PHY unit 20 are also configured to operate according to a second communication protocol (e.g., the IEEE 802.11n Standard). In yet another embodiment, the MAC unit 18 and the PHY unit 20 are additionally configured to operate according to the second communication protocol and a third communication protocol (e.g., the IEEE 802.11a Standard).
[0051] The WLAN 10 includes a plurality of client stations 25. Although four client stations 25 are illustrated in Fig. 1, the WLAN 10 can include different numbers (e.g., 1, 2, 3, 5, 6, etc.) of client stations 25 in various scenarios and embodiments. At least one of the client stations 25 (e.g., client station 25-1) is configured to operate at least according to the first communication protocol. In some embodiments, at least one of the client stations 25 is not configured to operate according to the first communication protocol but is configured to operate according to at least one of the second communication protocol or the third communication protocol (referred to herein as a "legacy client station").」(8?9ページ)
([当審仮訳]:
【0050】
図1は,一実施形態に係る無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)10の一例を示すブロック図である。AP14は,ネットワークインターフェース16に結合されているホストプロセッサ15を有する。ネットワークインターフェース16は,媒体アクセス制御(MAC)ユニット18および物理層(PHY)ユニット20を含む。PHYユニット20は,複数の送受信機21を持ち,これら複数の送受信機は,複数のアンテナ24に結合されている。図1では3つの送受信機21および3つのアンテナ24を図示しているが,AP14が有する送受信機21およびアンテナ24の数は,他の実施形態では変更することができる(例えば,1つ,2つ,4つ,5つ等としてもよい)。一実施形態によると,MACユニット18およびPHYユニット20は,第1の通信プロトコル(例えば,現在標準化プロセスが進められているIEEE802.11ac規格)に従って動作するように構成されている。また,別の実施形態によると,MACユニット18およびPHYユニット20は,第2の通信プロトコル(例えば,IEEE802.11n規格)に従って動作するように構成されている。さらに別の実施形態によると,MACユニット18およびPHYユニット20は,第2の通信プロトコルおよび第3の通信プロトコル(例えば,IEEE802.11a規格)に従って動作するように構成されている。
【0051】
WLAN10は,複数のクライアントステーション25を備える。図1では4つのクライアントステーション25を図示しているが,WLAN10が備えるクライアントステーション25の数は,状況および実施形態によっては変更することができる(例えば,1つ,2つ,3つ,5つ,6つ等としてもよい)。クライアントステーション25のうち少なくとも1つ(例えば,クライアントステーション25-1)は,少なくとも第1の通信プロトコルに従って動作するように構成されている。一部の実施形態では,クライアントステーション25のうち少なくとも1つが,第1の通信プロトコルに従って動作するように構成されているのではなく,第2の通信プロトコルまたは第3の通信プロトコルのうち少なくとも1つに従って動作するように構成されている(本明細書では,「レガシークライアントステーション」と呼ぶ)。

(2)「[0060] Fig. 5 is a diagram of an OFDM data unit 100 that the AP 14 is configured to transmit to the client station 25-1, according to an embodiment. In an embodiment, the client station 25-1 is also configured to transmit the data unit 100 to the AP 14. The data unit 100 conforms to the first communication protocol and occupies an 80 MHz band. In other embodiments, data units similar to the data unit 100 occupy different bandwidths such as 20 MHz, 40 MHz, 120 MHz, 160 MHz, or any suitable bandwidth. Additionally, the 80 MHz band need not be contiguous, but may include two or more smaller bands, such as two 40 MHz bands, separated in frequency. The data unit 100 is suitable for "mixed mode " situations, i.e., when the WLAN 10 includes a client station (i.e., the legacy client station 25-4) that conforms to the IEEE 802.11a Standard and/or the IEEE 802.11n Standard, but not the first communication protocol. The data unit 100 can be utilized in other situations as well. The data unit 100 includes a preamble having four L-STFs 104, four L-LTFs 108, four L-SIGs 112, four first very high throughput signal fields (VHT-SIGl) 116, four second very high throughput signal fields (VHT-SIG2) 120, a very high throughput short training field (VHT-STF) 124, and N very high throughput long training fields (VHT-LTFs) 128, where N is an integer. The data unit 100 also includes a data portion 140. The L-STFs 104, the L-LTFs 108, and the L-SIGs 112 form a legacy portion. The VHT-STF 124, the VHT-LTFs 128, and the data portion 140 form a very high throughput (VHT) portion.
[0061] In the embodiment of Fig. 5, each of the L-STFs 104, each of the L-LTFs 108, each of the L-SIGs 112, each of the VHT-SIGIs, and each of the VHT-SIG2s occupy a 20 MHz band. In the present disclosure, several example data units, including the data unit 100, having an 80 MHz contiguous bandwidth are described for the purposes of illustrating embodiments of frame formats, but these frame format embodiments and other embodiments are applicable to other suitable bandwidths (including noncontiguous bandwidths). 」(11?12ページ)
([当審仮訳]:
【0060】
図5は,一実施形態に係る,AP14がクライアントステーション25-1に送信するOFDMデータユニット100を示す図である。一実施形態によると,クライアントステーション25-1もまた,データユニット100をAP14に送信するように構成されている。データユニット100は,第1の通信プロトコルに準拠して,80MHz帯域を利用する。他の実施形態によると,データユニット100と同様のデータユニットは,20MHz,40MHz,120MHz,160MHz,または,任意の適切な帯域幅など,さまざまな帯域幅を利用する。また,80MHz帯域は,必ずしも連続している必要はなく,周波数方向に離れている2つの40MHz帯域幅等,2つ以上の小さい帯域を含むとしてもよい。データユニット100は,「混合モード」状況に適している。つまり,WLAN10が備える一のクライアントステーション(つまり,レガシークライアントステーション25-4)が,第1の通信プロトコルではなく,IEEE802.11a規格および/またはIEEE802.11n規格に準拠している場合に適している。データユニット100は,他の場合にも利用することが可能である。データユニット100は,4つのL-STF104,4つのL-LTF108,4つのL-SIG112,4つの第1の超高スループット信号フィールド(VHT-SIG1)116,4つの第2の超高スループット信号フィールド(VHT-SIG2)120,超高スループット・ショート・トレーニング・フィールド(VHT-STF)124,および,N個の超高スループット・ロング・トレーニング・フィールド(VHT-LTF)128を含むプリアンブルを有する。尚,Nは整数である。データユニット100はさらに,データ部分140を含む。L-STF104,L-LTF108およびL-SIG112によって,レガシー部分が形成される。VHT-STF124,VHT-LTF128およびデータ部分140によって,超高スループット(VHT)部分が形成される。
【0061】
図5の実施形態によると,各L-STF104,各L-LTF108,各L-SIG112,各VHT-SIG1,および,各VHT-SIG2は,20MHz帯域を利用する。本開示によると,データユニット100を始めとして,80MHzの連続した帯域幅を持つデータユニットの例は,フレーム形式の実施形態を説明することを目的として記載しているが,記載するフレーム形式の実施形態およびその他の実施形態は,他の適切な帯域幅にも利用可能である(帯域幅が不連続である場合も含む)。)

(3)「[0072] Fig. 7A is a set of diagrams illustrating modulation of the L-SIG, HT-SIGl, and HT-SIG2 fields as defined by the IEEE 802.11n Standard. The L-SIG field is modulated according to binary phase shift keying (BPSK), whereas the HT-SIGl and HT-SIG2 fields are modulated according to BPSK, but on the quadrature axis (Q-BPSK). In other words, the modulation of the HT-SIGl and HT-SIG2 fields is rotated by 90 degrees as compared to the modulation of the L-SIG field.
[0073] Fig. 7B is a set of diagrams illustrating modulation of the L-SIG, VHT-SIGl, and VHT-SIG2 fields of the data unit 100 of Fig. 5, according to an embodiment. Similar to the HT-SIGl field in Fig. 7 A, the VHT-SIGl field is rotated by 90 degrees as compared to the modulation of the L-SIG field. On the other hand, unlike the HT-SIG2 field of Fig. 7A, the VHT-SIG2 field is the same as the modulation of the L-SIG field. In an embodiment, the different modulation of the VHT-SIG2 field and the HT-SIG2 field defined in the IEEE 802.11n Standard will cause a legacy device configured according to the IEEE 802.11n Standard to detect an error, such as a CRC error, upon receiving a VHT-SIG2 field. Additionally, the different modulation of the VHT-SIG2 field and the HT-SIG2 field defined in the IEEE 802.11n Standard will permit a device configured according to the first communication protocol to determine that the data unit 100 conforms to the first communication protocol.
[0074] In other embodiments, the VHT-SIG2 field is rotated by 90 degrees as compared to the modulation of the L-SIG field, similar to the HT-SIG2 field of Fig. 7A.」(16?17ページ)
([当審仮訳]:
【0072】
図7Aは,IEEE802.11n規格で定められているL-SIGフィールド,HT-SIG1フィールドおよびHT-SIG2フィールドの変調を説明するための図である。L-SIGフィールドは,二位相偏移変調(BPSK)で変調し,HT-SIG1フィールドおよびHT-SIG2フィールドは,BPSKを用いるが横軸上で変調される(Q-BPSK)。言い換えると,HT-SIG1フィールドおよびHT-SIG2フィールドの変調は,L-SIGフィールドの変調と比べて,90度回転させる。
【0073】
図7Bは,一実施形態に係る,図5のデータユニット100のL-SIGフィールド,VHT-SIG1フィールド,および,VHT-SIG2フィールドの変調を説明するための図である。VHT-SIG1フィールドは,図7Aに示すHT-SIG1フィールドと同様に,L-SIGフィールドの変調に比べて,90度回転させる。一方,VHT-SIG2フィールドは,図7AのHT-SIG2フィールドとは異なり,L-SIGフィールドの変調と同一である。一実施形態によると,IEEE802.11n規格で定められているようにVHT-SIG2フィールドおよびHT-SIG2フィールドの変調を異ならせることによって,IEEE802.11n規格に準拠したレガシーデバイスに,VHT-SIG2フィールドを受信した際に,CRCエラー等のエラーを検出させる。また,IEEE802.11n規格で定められているVHT-SIG2フィールドおよびHT-SIG2フィールドの変調を異ならせることによって,第1の通信プロトコルに準拠したデバイスは,データユニット100が第1の通信プロトコルに準拠していると判断できるようになる。
【0074】
別の実施形態によると,VHT-SIG2フィールドは,図7AのHT-SIG2フィールドと同様に,L-SIGフィールドの変調に比べて,90度回転させる。)

(4)「[0078] If the VHT-SIG fields in the data units as described in Figs. 5 and 6, utilizes the modulations as described in Figs 7B and 1C, in these embodiments, a device that conforms to the IEEE 802.11a Standard will set CCA idle duration according to the L-SIG field. A device that conforms to the IEEE 802.11n Standard (also compatible with the IEEE 802.11a Standard) will assume, at least in some circumstances, that the data unit is a data unit that conforms to the IEEE 802.11n standard (since VHT-SIGl is modulated the same way as HT-SIGl), but may fail decoding the assumed two "HT-SIG" fields since the VHT-SIG2 is modulated different from HT-SIG2. In this case, the IEEE 802.11n conforming device may set CCA idle duration according to the L-SIG field, or set CCA idle duration according to the energy of the data unit (i.e. reset CCA when the over-the-air energy of the data unit drops down to a certain level -- meaning the data unit ends). Devices that conform to the first communication protocol will determine that the data unit conforms to the first communication protocol by one or more of detecting the "reserved bit" in the L-SIG field, detecting the "reserved bit" in the VHT-SIG field, detecting modulation of the VHT-SIG fields, etc., depending on the particular embodiment.
(中略)
[0080] For example, in one embodiment, all of the VHT-SIG symbols are modulated using BPSK. As another example, the first VHT-SIG symbol is BPSK, and the remaining symbols are modulated using Q-BPSK. Fig. 7D is a set of diagrams illustrating modulation of the L-SIG, VHT-SIGl, and VHT-SIG2 fields of the data unit 100 of Fig. 5, according to an embodiment. Unlike the HT-SIGl field in Fig. 7A, the VHT-SIGl field is not rotated by 90 degrees as compared to the modulation of the L-SIG field (i.e., the VHT-SIGl field is BPSK modulated). On the other hand, like the HT-SIG2 field of Fig. 7 A, the VHT-SIG2 field is rotated by 90 degrees as compared to the modulation of the L-SIG field. In the embodiment of Fig. 7D, devices conforming to the IEEE 802.11n Standard will treat the data unit as an IEEE 802.11a data unit, because the modulation of the VHT-SIGl field is not BPSK, as specified by the IEEE 802.11n standard. In this embodiment, the device conforming to the IEEE 802.11n Standard will set the CCA idle duration according to L-SIG. (中略) As another example, VHT-SIGl or VHT-SIG2 or all the VHT-SIGs are modulated with BPSK and Q-BPSK alternatively or not alternatively but in a predetermined manner (e.g. any N tones using Q-BPSK, the other 52-N tones using BPSK) across the data and pilot tones (52 tones in each 20 MHz sub-band) i.e., a predetermined mapping of the tones for BPSK and Q-BPSK modulations.」(18?20ページ)
([当審仮訳]:
【0078】
図5および図6に示すデータユニットのVHT-SIGフィールドが図7Bおよび図7Cに示す変調を利用する場合,このような実施形態では,IEEE802.11a規格に準拠するデバイスはL-SIGフィールドに基づいてCCAアイドル期間を設定する。IEEE802.11n規格に準拠するデバイス(IEEE802.11a規格にも準拠)は,少なくとも一部の状況において,(VHT-SIG1がHT-SIG1と同様に変調されているので)データユニットはIEEE802.11n規格に準拠したデータユニットであると仮定するが,VHT-SIG2の変調方法がHT-SIG2とは異なるので「HT-SIG」と仮定した2つのフィールドの復号に失敗するとしてよい。この場合,IEEE802.11nに準拠したデバイスは,L-SIGフィールドに基づいてCCAアイドル期間を設定するか,または,データユニットのエネルギーに基づいてCCAアイドル期間を設定するとしてよい(つまり,データユニットの無線エネルギーが所与のレベルにまで降下して,データユニットの終端を意味すると,CCAをリセットする)。第1の通信プロトコルに準拠したデバイスは,実施形態に応じて変わるが,L-SIGフィールドで「予約ビット」を検出すること,VHT-SIGフィールドで「予約ビット」を検出すること,VHT-SIGフィールドの変調を検出すること等,これらの条件のうち1以上に当てはまると,データユニットが第1の通信プロトコルに準拠していると判断する。
(中略)
【0080】
例えば,一実施形態によると,VHT-SIGシンボルは全て,BPSKを用いて変調される。別の例を挙げると,最初のVHT-SIGシンボルはBPSKで,残りのシンボルはQ-BPSKを用いて変調される。図7Dは,一実施形態に係る,図5のデータユニット100のL-SIGフィールド,VHT-SIG1フィールドおよびVHT-SIG2フィールドの変調を説明するための図である。VHT-SIG1フィールドは,図7Aに示すHT-SIG1フィールドとは異なり,L-SIGフィールドの変調に比べて90度回転させない(つまり,VHT-SIG1フィールドは,BPSK変調される)。一方,VHT-SIG2フィールドは,図7AのHT-SIG2フィールドと同様に,L-SIGフィールドの変調に比べて90度回転させる。図7Dの実施形態によると,IEEE802.11n規格に準拠するデバイスは,VHT-SIG1フィールドの変調がIEEE802.11n規格で定められているBPSKではないので,当該データユニットをIEEE802.11aに準拠したデータユニットとして処理する。本実施形態によると,IEEE802.11n規格に準拠するデバイスは,L-SIGに基づいてCCAアイドル期間を設定する。 (中略) 別の例を挙げると,VHT-SIG1またはVHT-SIG2またはVHT-SIGの全ては,データおよびパイロットトーンについて(20MHzのサブ帯域毎に52個のトーン),BPSKおよびQ-BPSKを交互に利用して変調されるか,または,交互ではないが所定の順序で利用して変調される(例えば,任意のN個のトーンはQ-BPSKを利用し,残りの52-N個のトーンはBPSKを利用する)。つまり,BPSK変調およびQ-BPSK変調についてトーンに所定のマッピングを設定する。)

(5)「[00111] Fig. 18 is a diagram of an example data unit 400 for use in embodiments in which the first communication protocol supports downlink SDMA (DL-SDMA). A first portion of the data unit 400 includes L-STF, L-LTF, L-SIG, VHT-SIGl, and VHT-SIG2 fields. The first portion is transmitted omni-directional and includes the same information for all client devices, in an embodiment. A second portion of the data unit 400 includes a VHT-STF field 401 , a VHT-LTFl field 402, a VHT-SIG3 field 404, a VHT-SIG4 field 408, VHT-LTF2 through VHT-LTFN fields 412, and a VHT data portion 416. At least some of the second portion includes different data for different client devices, wherein the different data is beamsteered to the different client devices.
[00112] In an embodiment, the VHT-SlG 1 and VHT-SIG2 may be used to jointly signal the number of VHT-LTFs or the number of VHT-LTFs before the next block of VFIT-SIG for all the SDMA users. In one embodiment, content of VHT-SIGl and VHT-SIG2 are repetitions of L-SIG, or any other suitable signal. In another embodiment, the VHT-SIGl and VHT-SIG2 are any suitable symbol that delivers any common information to all the users (e.g. common MAC information delivered from AP to all the users). In some embodiments described herein, a first block of VHT-SIG fields (e.g. VHT-SIGl and VHT-SIG2 in Fig 16) is referred to as VHT-SIGA, and a second block VHT-SIG fields (e.g. VHT-SIG3 and VHT-SIG4 in Fig 16) is referred to as VHT-SIGB.
[00113] In an embodiment, the "reserved" bit in L-SIG is set to 1. VHT-SIGl and VHT-SIG2 can be modulated such as described above. If VHT-SIGl and VHT-SIG2 are modulated using BPSK or Q-BPSK, with r=l/2 binary convolutional code (BCC), this is the same as L-SIG or HT-SIG of the IEEE 802.11n Standard. In this embodiment, the VHT-SIGl and VHT-SIG2 and/or the reserved bit in L-SIG permit spoofing and/or first communication protocol data unit detection such as described above.
[00114] In an embodiment and in some scenarios, content of VHT-SIG3 and VHT-SIG4 is different for different users, and is multiplexed by the steering matrix Q for different users.」(30?31ページ)
([当審仮訳]:
【0111】
図18は,第1の通信プロトコルがダウンリンクSDMA(DL-SDMA)をサポートする実施形態で利用されるデータユニット400の一例を示す図である。データユニット400の第1の部分は,L-STFフィールド,L-LTFフィールド,L-SIGフィールド,VHT-SIG1フィールドおよびVHT-SIG2フィールドを含む。一実施形態によると,第1の部分は,全方向性送信され,全クライアントデバイスについて同一の情報を含む。データユニット400の第2の部分は,VHT-STFフィールド401,VHT-LTF1フィールド402,VHT-SIG3フィールド404,VHT-SIG4フィールド408,VHT-LTF2からVHT-LTFNフィールド412,および,VHTデータ部分416を含む。第2の部分のうち少なくとも一部は,クライアントデバイス毎に異なるデータを含み,このように異なるデータはクライアントデバイス毎にビームステアリングを利用して送信される。
【0112】
一実施形態によると,VHT-SIG1およびVHT-SIG2は,全SDMAユーザのための次のブロックのVHT-SIGの前に,VHT-LTFの数またはVHT-LTFの数を共同して伝達するために用いられるとしてよい。一実施形態によると,VHT-SIG1およびVHT-SIG2の内容は,L-SIGの繰り返し,または,任意のその他の適切な信号である。別の実施形態によると,VHT-SIG1およびVHT-SIG2は,任意の共通の情報(例えば,APから全ユーザに配信される共通のMAC情報)を全ユーザに配信する任意の適切なシンボルである。本明細書に記載する一部の実施形態によると,第1のブロックのVHT-SIGフィールド(例えば,図16のVHT-SIG1およびVHT-SGI2)はVHT-SIGAと呼び,第2のブロックのVHT-SIGフィールド(例えば,図16のVHT-SIG3およびVHT-SIG4)はVHT-SIGBと呼ぶ。
【0113】
一実施形態によると,L-SIG内の「予約」ビットは1に設定される。VHT-SIG1およびVHT-SIG2は,上述したように変調され得る。VHT-SIG1およびVHT-SIG2がr=1/2のBCC(二進畳み込み符号:バイナリ・コンボリューショナル・コード)を用いてBPSKまたはQ-BPSKで変調される場合,IEEE802.11n規格のL-SIGまたはHT-SIGと同一である。本実施形態では,VHT-SIG1およびVHT-SIG2,ならびに/または,L-SIG内の予約ビットによって,上述したようなスプーフィングおよび/または第1の通信プロトコルのデータユニットの検出が可能となる。
【0114】
一実施形態によると,場合によっては,VHT-SIG3およびVHT-SIG4の内容は,ユーザ毎に異なり,複数の異なるユーザについてのステアリングマトリクスQによって多重化される。)
([当審注]:[00112]の末文の「In some embodiments described herein, a first block of VHT-SIG fields (e.g. VHT-SIGl and VHT-SIG2 in Fig 16) is referred to as VHT-SIGA, and a second block VHT-SIG fields (e.g. VHT-SIG3 and VHT-SIG4 in Fig 16) is referred to as VHT-SIGB.」([当審仮訳]:本明細書に記載する一部の実施形態によると,第1のブロックのVHT-SIGフィールド(例えば,図16のVHT-SIG1およびVHT-SGI2)はVHT-SIGAと呼び,第2のブロックのVHT-SIGフィールド(例えば,図16のVHT-SIG3およびVHT-SIG4)はVHT-SIGBと呼ぶ。)は,Fig 16にはVHT-SIGl?4は存在せず,[00112]はFig 18に関連して記載されていると認められるから,「Fig 16」(図16)は「Fig 18」(図18)の誤記と認められる。)

(6)「[00131] In one embodiment, the first symbol of VHT-SIGA is modulated using BPSK, whereas the second symbol of VHT-SIGA is modulated using Q-BPSK, as illustrated in Fig. 21B. In one embodiment, a faster clock as compared to the IEEE 802.11n Standard is utilized for transmitting the preamble. In an embodiment, VHT-STF is longer as compared to HT-STF of the IEEE 802.11n Standard, and/or longer the GI of VHT-LTFl is longer as compared to the GI of HT-LTFl of the IEEE 802.11n Standard. This provides for better AGC performance especially at a transmit beamformee, in some implementations. In one embodiment, a different modulation of the first OFDM symbol of VHT-SIGA is utilized as compared to the IEEE 802.11n Standard, so the IEEE 802.11n Standard HT detection will still fail, but a client station configured according to the first communication protocol can determine that the data unit conforms to the first communication protocol. For VHT-SIGA and/or VHT-SIGB, 48 or 52 tones are utilized, depending on the implementation, according to some embodiments.
[00132] In an embodiment, Q-BPSK is utilized on M_(Q) data tones in the first symbol of VHT-SIG-A or both of the symbols of VHT-SIG-A, and BPSK is utilized on the remaining M_(I) =48- M_(Q) data tones. As just two examples, the (M_(Q) , M_(I)) tuple equals (24, 24) or (16, 32). In an embodiment, the different modulations are spread across the whole band to explore frequency diversity, e.g. by equal or substantially equal separations. The specific tone indices with the different modulations can be specified by the first communication protocol.
[00133] In this embodiment, a client station configured according to the first communication protocol can differentiate between first communication protocol data units, IEEE 802.11n Standard data units, and IEEE 802.11a Standard data units by comparing energy of Q-arm and I-arm across the 48 tones. This is equivalent to delivering 2 information bits by the 48 tones. A client station configured according to the IEEE 802.11n Standard, when receiving such a first communication protocol data unit, will fail detection of a HT IEEE 802.11n Standard data unit, and will thus treat the data unit as a IEEE 802.11a Standard data unit (i.e., L-SIG spoofing).
[00134] In another embodiment, the legacy portion of a preamble utilizes the 4 extra guard tones of the 20 MHz signal, which were allocated to the IEEE 802.11n Standard 20 MHz data signal, but not to the IEEE 802.11a 20 MHz signal. These 4 tones are not used to deliver data of VHT-SIG/L-SIG fields, but they are predefined to be nonzero symbols, e.g. in BPSK (+-1), or in Q-BPSK (+-j), in an embodiment. Whenever a first communication protocol receiver detects that there are signals on these 4 tones, and/or the detected symbols (after demodulation and slicing) matches the predefined symbols on these 4 tones, then the receiver determines that the data unit conforms to the first communication protocol.」(36?37ページ)
([当審仮訳]:
【0131】
一実施形態によると,図21Bに示すように,VHT-SIGAの第1のシンボルはBPSKを用いて変調され,VHT-SIGAの第2のシンボルはQ-BPSKを用いて変調される。一実施形態によると,IEEE802.11n規格より高速なクロックを利用してプリアンブルを送信する。一実施形態によると,VHT-STFはIEEE802.11n規格のHT-STFよりも長く,および/または,VHT-LTF1のGIはIEEE802.11n規格のHT-LTF1のGIよりも長い。このため,一部の実施例によると,送信の際のビームフォーミング先において特にAGC性能が改善される。一実施形態によると,VHT-SIGAの第1のOFDMシンボルの変調は,IEEE802.11n規格と異なるものにするので,IEEE802.11n規格のHTの検出は依然として失敗に終わるが,第1の通信プロトコルに従って構成されているクライアントステーションは,当該データユニットが第1の通信プロトコルに準拠していると判断することができる。VHT-SIGAおよび/またはVHT-SIGBの場合,一部の実施形態によると,実施例に応じて48個または52個のトーンを利用する。
【0132】
一実施形態によると,VHT-SIGAの第1のシンボルまたはVHT-SIGAの両シンボルのM_(Q)個のデータトーンに対してはQ-BPSKを利用し,残りのM_(I)(=48-M_(Q))個のデータトーンにはBPSKを利用する。例を2つ挙げると,(M_(Q),M_(I))の組は,(24,24)または(16,32)である。一実施形態によると,帯域全体にわたって複数の異なる変調を利用して,例えば,均一または略均一に分離することによって,周波数ダイバーシチを有効活用する。第1の通信プロトコルでは,複数の異なる変調の具体的なトーンインデックスを定めることができる。
【0133】
本実施形態によると,第1の通信プロトコルに従って構成されているクライアントステーションは,第1の通信プロトコルのデータユニット,IEEE802.11n規格のデータユニット,および,IEEE802.11a規格のデータユニットを,48個のトーンにわたってQアームおよびIアームのエネルギーを比較することによって,区別することができる。これは,48個のトーンで2つの情報ビットを配信することに等しい。IEEE802.11n規格に従って構成されているクライアントステーションは,第1の通信プロトコルのデータユニットを受信すると,HTのIEEE802.11n規格のデータユニットの検出には失敗するので,当該データユニットをIEEE802.11a規格のデータユニットとして取り扱う(つまり,L-SIGスプーフィング)。
【0134】
別の実施形態によると,プリアンブルのうちレガシー部分は,20MHzの信号の4つの追加ガードトーンを利用する。このような追加ガードトーンは,IEEE802.11a規格の20MHz信号には割り当てられていないがIEEE802.11n規格の20MHzのデータ信号には割り当てられている。これら4つのトーンは,VHT-SIG/L-SIGフィールドのデータを配信するためには利用されず,ゼロでないシンボルと予め定められ,一実施形態によると,例えば,BPSKでは±1で,Q-BPSKでは±jである。第1の通信プロトコルに準拠した受信機は,これら4つのトーン上に信号があることを検出すれば,および/または,検出されたシンボル(復調およびスライスの後)がこれら4つのトーン上の所定のシンボルに一致すれば,当該データユニットが第1の通信プロトコルに準拠していると判断する。)

上記摘記事項及び図面の記載並びにこの分野における技術常識を考慮すると,
(a)上記(1),(2),(3)の[0073],(6)の[00133]の記載によれば,引用例には,無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)(IEEE802.11a/n/ac)における通信のための方法について記載されているものと認められる。

(b)上記(5)の記載及び図18によれば,図18のVHT-SIG1(116)及びVHT-SIG2(120)は,VHT-SIGAと呼ばれるビームステアリングされていない第1のブロックのVHT-SIGフィールドであり,VHT-SIG3(404)及びVHT-SIG4(408)は,VHT-SIGBと呼ばれるビームステアリングされている第2のブロックのVHT-SIGフィールドである。
そして,上記(5)の[00112]の記載によれば,第1のブロックのVHT-SIGフィールドであるVHT-SIG1及びVHT-SIG2は,全ユーザに共通の情報であり,同[00114]の記載によれば,第2のブロックのVHT-SIGフィールドであるVHT-SIG3及びVHT-SIG4の内容はユーザ毎に異なることが読み取れる。
そして,ユーザの受信機がデータユニットを受信するのは当然であるから,データユニットのプリアンブル中の「第1のブロックのVHT-SIGフィールド」を受信することは明らかである。
したがって,引用例には「第1のブロックのVHT-SIGフィールドを受信すること」,「前記VHT-SIGフィールドは,全てのユーザに対して共通である前記第1のブロックのVHT-SIGフィールドと,ユーザ毎に異なる第2のブロックのVHT-SIGフィールドとを有すること」が記載されていると認められる。

(c)上記(5)の[00112]の記載によれば,VHT-SIGAのVHT-SIG1及びVHT-SIG2はシンボルであるところ,上記(6)の記載及び図21Bによれば,VHT-SIGAの第1のシンボルであるVHT-SIG1はBPSKを用いて変調され,VHT-SIGAの第2のシンボルであるVHT-SIG2はQ-BPSKを用いて変調されると解される。
そして,上記(3),(4),(6)の記載及び図7A,図7B,図7D,図21Bによれば,VHT-SIGフィールドにおいて,シンボルの変調(BPSK/Q-BPSK)を他の規格と異なるようにすることにより規格(IEEE802.11a/n/ac)を検出が可能となると認められる。
ここで,図21Bの例では,第1のブロックのVHT-SIGフィールドの第1シンボルであるVHT-SIG1はBPSKを用いて変調され,第2のシンボルであるVHT-SIG2がQ-BPSKを用いて変調されていることにより,HT-SIG1及びHT-SIG2の双方がともにQ-BPSKを用いて変調されるIEEE802.11nと区別できるのであるから,前記第1のブロックのVHT-SIGフィールドに基づいて,データユニットが準拠している規格を判断しているといえる。

以上を総合すると,先願明細書には以下の発明(以下,「先願発明」という。)が記載されているものと認める。
「無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)(IEEE802.11a/n/ac)における通信のための方法において,
データユニットの第1のブロックのVHT-SIGフィールドを受信することと,
前記第1のブロックのVHT-SIGフィールドに基づいて,データユニットが準拠している規格を判断することと,
VHT-SIGフィールドは,全てのユーザに対して共通である前記第1のブロックのVHT-SIGフィールドと,ユーザ毎に異なる第2のブロックのVHT-SIGフィールドとを有し,
前記第1のブロックのVHT-SIGフィールドの第1のシンボルであるVHT-SIG1はBPSKを用いて変調され,前記第1のブロックのVHT-SIGフィールドの第2のシンボルであるVHT-SIG2はQ-BPSKを用いて変調される,方法。」


ここで,先願はパリ条約による優先権主張を伴う出願であるところ,本件出願の最先の優先日である2009年8月12日より前の2009年8月10日に提出された優先権主張の基礎となる米国仮特許出願(US61/232724 2007年6月14日提出)の優先権書類には以下の事項が記載されている。

(7)「

」(5枚目のスライド)
([当審仮訳]:
次世代WLAN(802.11ac)のために提案された80MHz OFDM - 概説
・単一ユーザP2Pスループットを得るために,80MHzの帯域幅のOFDM変調を有するVHT(very high throughput)PHYモードが,次世代WLANシステムのために提案され得る。
・802.11nの20/40MHz OFDM PHYと類似したフレームフォーマット
・後方互換の保証
-レガシー20/40MHz OFDM装置は,PHYモードの1つ(「 混合モード」)で,少なくとも80MHz OFDM信号のプリアンブ ル及び/又はシグナルフィールドを受信可能。
-グリーンフィールドVHT PHY フォーマットが,レガシーの11 a装置を考慮することなく,VHT装置のみが受信するために定義され 得る。 )

(8)「

」(8枚目のスライド)
([当審仮訳]:
混合モード 80MHz OFDM VHT(ケース1)
レガシー部分:全てのサブバンドに同一の内容
VHT部分:80MHz帯域幅で定義される
レガシー装置のスプーフィングのために,「長さ」及び「レート」サブフィールドをTに応じてセットする。パケットのVHT部分において80MHz OFDMパケットをシグナルするために,「リザーブされたビット」を1とし得る。
11n[1]のHT-SIGと同様のフォーマット。80MHz OFDMパケットをシグナルするために,(L-SIGにおいてよりはむしろ)11nの「リザーブされたビット」を0とし得る。 )

(9)「

」(11枚目のスライド)
([当審仮訳]:
混合モード:VHTシグナル・フィールド(1)
・第1のオプション(図1)では,11n[1]のHT-SIGと同様に,2つのVHT-SIGフィールドが定義される。各VHT-SIGフィールドは20MHz帯域幅で1つのOFDMシンボルにより運ばれ,前のスライドのレガシー部分のように,4つの20MHzサブバンドにわたって繰り返され/回転される。 → レガシー部分と同様の回転アプローチ
・サブフィールドのフォーマットは11n[1]のHT-SIGと同様とし得る。
-例えば,ここでのMCSは同じ変調及び符号化方式を意味するが,80 MHz帯に適用される。
・MCS32はVHTパケットには許可されないかもしれない。
-VHT装置に現在のパケットはVHTパケットであることをシグナルす るために,VHT-SIG2のリザーブされたビットは0とされ得る( 11n装置によりみられるように,[1]では当該ビットを1と定義し ている。)。
-もしどのVHTパケットにも80MHz帯域幅のみが許可されるならば ,「80MHz」の上記表示はVHT-SIGでは必要とされない(「 VHT-SIG」はHT-SIGとは異なる変調がなされる。) → 次のスライド参照。
・代わりに,VHTパケットPHY情報のシグナリングのために,サブフィ ールドフォーマットを[1]のHT-SIGとは全く異なるものとし得る 。
-例えば,HT-SIG”BW20/40”のサブフィールドは必要とさ れない,又は,20/40/80を選択するためのリザーブされたビッ トとの組み合わせ;サブフィールドの「集合化」は必要とされない 等
-VHT-SIGの変調はHT-SIG(次のスライド参照。)と異なり 得るため,11n装置はVHT-SIGをHT-SIGとして正確に復 号できず(CRC誤り),これはVHT-SIGの完全な再定義を可能 とする。
-新規のVHT-SIGサブフィールドの全ての異なる配列がこの開示に よりカバーされるべきである。 )

(10)「

」(12枚目のスライド)
([当審仮訳]:
続き
・VHT-SIGをHT-SIGと異ならせるために,VHT-SIGの変調を[1]のHT-SIGと異なるように定義され得る。
・OFDMシンボルの各トーンにおいてVHT-SIG1は90度回転されたBPSK(Q-BPSK)を用いて変調され,VHT-SIGは各サブキャリアにおいて通常のBPSKを用いて変調される。
-11n[1]のHT-SIG2もQ-BPSKを用いて変調される。
-後方互換のため,11n受信機はVHT-SIG2をHT-SIG2と して復号せず,HT-SIG1及び2のCRCチェックはいずれも誤り となる。「1」によると,11n受信機状態マシンは,CCAアイドル モードに変わる前は,パケットのエネルギーがドロップアウトするまで ウエイト(CCAホールド)となる。一方,11a装置は,「VHT- SIG1」フィールド(11nの混合モードHTパケット用として[ 1])からデータ誤りを知り,「2」によると,受信機は計算されたL -SIGパケット期間が終了するまでCCAをホールドする(スプーフ ィング)。
(図は省略。) )

(11)「

」(31枚目のスライド)
([当審仮訳]:
拡張-2
・VHT-SIGフィールドの配置点を変更する上述のVHTシグナリングアプローチにおいて,本開示は802.11n[2]におけるHT-SIGフィールドと異なるVHT-SIGフィールド変調のあらゆる変更に拡張し得る。
・例(先に述べた場合以外のもの)
-全てのVHT-SIGシンボルはBPSKを用いて変調される。
-第1のVHT-SIGシンボルはBPSKを用いて,残りのシンボルは Q-BPSKを用いて変調される。
-全ての又は最初の又はいくつかのVHT-SIGシンボルはBPSKや Q-BPSK以外で変調される。
・拡張1:VHT-SIG1又は全てのVHT-SIGは45度回転し たBPSKで変調される。
・拡張2:VHT-SIG1又は全てのVHT-SIGは,データ及び パイロットトーンにわたって(各20MHzサブバンドに52のトー ン)BPSKとQ-BPSKとが交互に又は交互でなく予め決められ た順(例えば,いずれかのN個のトーンがQBPSKを用い,52- N個のトーンがBPSKを用いる。)で変調される。 → BPSK 及びQBPSK変調のためのトーンへの予め決められたマッピング
-VHT-SIG1内の任意の変調は,そのために(配置の平均Qエネル ギーは,11nのHT-SIGフィールドで定義されたIエネルギーよ りも極めて大きくなることはないため)11n装置ではHTパケットが 無効になり,その上VHT-SIG1でのこの新しい変調は11ac装 置がVHTパケット自動検出を有効にする。
・例えば,上記中点の2つの例 )

(12)「

」(32枚目のスライド)
([当審仮訳]:
拡張2の例:混合モード1
6Mbpsを示すために「レート」サブフィールドを「1101」とし,レガシー装置がスプーフィングするために「長さ」サブフィールドをTに応じてセットする。11acパケットをシグナルするために「リザーブされたビット」を1とし得る。
11ac特有のPHYパラメータをシグナルするために,サブフィールドの定義は11nと全く異なるものとし得る。以下のような変調(図は省略。) )

(13)「

」(33枚目のスライド)
([当審仮訳]:
続き
・L-SIGはレートを6Mbpsにセットしなければならない(11nと同様。)。
・11a受信機はLSIGフィールドに応じてCCA期間をセットする。
・(11aと互換の)11n受信機は,11acパケットを11aパケットと考え,LSIGフィールドに応じてCCA期間をセットする。
・(11a/nと互換の)11ac受信機は,VHT-SIG2でその変調をみることにより,11acを検出する(11ac自動検出)。
-VHT-SIG1はBPSKを用いているので,受信機は11nモード を捨てる。 → 現在のパケットは11a又は11ac
-VHT-SIG1位置のOFDMシンボルは,11aデータ,11ac VHT-SIG1のいずれにもなり得るが,いずれも6Mbpsの11 aモード(LSIGでセットされるように)を用いて変調される。
-VHT-SIG2で11acを検出した後,受信機はVHT-SIG1
とVHT-SIG2のデコードされたビットを組み合わせてCRCをチ ェックし,PHYパラメータを取得する。
・先のスライドにおいて,L-SIGのリザーブされたビットが11acを シグナリングする(11ac自動検出)ために使用される場合は,VHT -SIG2の変調は重要ではなく,BPSK,QBPSKのいずれでも良 く,11ac受信機はVHT-SIG2の配置をみることにより11ac を自動検出することを必要としない。 )

(14)「

」(49枚目のスライド)
([当審仮訳]:
拡張8:VHT-SIGの配置
・上述の全てのプリアンブル構造に従い,1つ以上VHT-SIGシンボルはいずれのVHT-LTF(VHT-LTF1,VHT-LTF2,...VHT-LTFN)の後に配置され得る。
-混合モードにおけるL-SIGの後,又はグリーンフィールドにおける VHT-LTF1の後に配置される他のVHT-SIGフィールドによ り,VHT-LTFの長さをシグナリングする必要がある。あるいはV HT-SIGシンボルはいつもVHT-LTF1の後であると定義され 得る。
-復号のためにVHT-LTFnからのチャネル推定を使用できるように ,VHT-LTFnの後では,VHT-LTFn(例えば,ベクトルQ P_(n)によって,)と同様に空間的にマッピングされるべきである。
・MM(混合モード)又はGF(グリーンフィールド)フォーマットのいずれか。
・この場合の有利な点は,混合モードパケットのレガシー部分をステアされていないよう(いわゆる「無指向性」。)に保つ一方,ビームステアリングにより異なるユーザのためのVHT-SIGフィールドを異なるようにするSDMAダウンリンク伝送[3][4]を許可することである。 )

(15)「

」(50枚目のスライド)
([当審仮訳]:
例(1)
・ダウンリンクSDMAの例[3][4]における,一人のユーザのための混合モードパケットのフレームフォーマットは;(図は省略)
レガシー部分,ステアされていない(無指向性)
空間的にマッピングされている/QP_(1)によりステアされている
(11nのスプーフィングのためBPSK)
(11ac自動検出のためQBPSK)
(SDMAの全てのユーザに対して同じ内容)
・レガシー部分(VHT-SIG1及び2を含む)は異なるユーザに対して同じ情報を持つことができ,ステアされる必要は無い。
-全てのSDMAユーザのために,VHT-SIG1とVHT-SIG2 は共同して,VHT-LTFの数又は次のVHT-SIGブロックの前 のVHT-LTFの数をシグナリングするために使用され得る。
-ここでのVHT-SIG1,2の内容はL-SIGの繰り返し,又はそ の他の値であり得る。
-又はVHT-SIG1及びVHT-SIG2は,全てのユーザへの共通 の情報(例えば,APから全てのユーザに届けられる共通MAC情報。 )届けるいかなるシンボルであり得る。
-VHT-SIG1及びVHT-SIGは,1/2BCC符号を伴うBP SK又はQBPSKを用いて変調され,これはL-SIG又は[1]の HT-SIGと同様であり,それらは(前記したすべての設計で述べた ように)レガシー装置がスプーフィングしたり11acパケットタイプ の自動検出を目的とする。
・2番目のVHT-SIGブロック(この例のVHT-SIG3,4)の内 容は,異なるユーザに対して異なるものといえるが,異なるユーザに対し てステアリング行列Qにより多重化され得る。 )

上記記載及び図面によれば,明らかに,上記8枚目のスライドの図1は先願明細書の図6に対応するものであり,12枚目のスライドの図は先願明細書の図7A,Bに対応するものであり,32枚目のスライドの図は先願明細書の図7Dに対応するものであり,51枚目のスライドの図は先願明細書の図18,図21Bに対応するものであるといえる。

すなわち,優先権主張の基礎となる米国仮特許出願(US61/232724 2007年6月14日提出)の優先権書類と先願明細書とは表現ぶりが異なるものの,先願発明は,先願明細書及び優先権主張の基礎となる第一国出願の優先権書類に共通に記載されている発明であることは明らかである。したがって,先願発明は2009年8月10日に我が国へ出願があったものとして扱われる。


ウ 対比・判断
補正後の発明と先願発明とを対比すると,
(ア)本願明細書の【0037】,【0040】,【0048】?【0057】の記載によれば,補正後の発明の「ワイヤレス通信のための方法」は,送信モード(すなわち,IEEE802.11ac/a/n)を検出することを含むことは明らかである。してみると,先願発明の「無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)(IEEE802.11a/n/ac)における通信のための方法」は,「ワイヤレス通信のための方法」といえる。

(イ)先願発明の「データユニット」は,先願明細書の【0061】の記載,図5,図18に照らせば,「フレーム構造」と言い得ることは当業者に明らかである。

(ウ)本願明細書の【0053】によれば,補正後の発明の「SIGフィールド」は「VHT-SIGフィールド」であり,図4AB及びその説明(【0038】?【0048】)によれば,補正後の発明の「複数の装置に対して共通である」「SIGフィールドの前記第1の部分」は,図4Aの「VHT-STFフィールド406」であると認められる。そして,本願明細書の【0041】によれば,VHT-SIGフィールドの第1の部分(406)および第2の部分(412)は,1つ以上のOFDMシンボルにわたってもよいものである。
また,本願明細書の【0042】,【0043】によれば,VHT-SIGの第1の部分(406)は,すべてのユーザの間で共通であり,ビーム形成されず,VHT-SIGフィールドの第2の部分(412)は,各STAに対して特有であり,ビーム形成されるものである。
一方,先願発明の「第1のブロックのVHT-SIGフィールド」は,全てのユーザに対して共通であり,ビームステアリングされず,第1シンボルであるVHT-SIG1と第2のシンボルであるVHT-SIG2の2つのOFDMシンボルにわたるものといえ,「第2のブロックのVHT-SIGフィールド」は,ユーザ毎に異なりビームステアリングされ,VHT-SIG3とVHT-SIG4の2つのOFDMシンボルにわたるものといえる。
さらに,先願発明は「前記第1のブロックのVHT-SIGフィールドに基づいて,データユニットが準拠している規格を判断する」ものであり,上記(ア)のとおりであるから「データユニットが準拠している規格を判断する」ことは補正後の発明の「前記フレーム構造の送信モードを決定すること」に相当する。
そうすると,先願発明の「VHT-SIGフィールド」,「第1のブロックのVHT-SIGフィールド」,「第2のブロックのVHT-SIGフィールド」は,それぞれ補正後の発明の「フレーム構造の信号(SIG)フィールド」,「SIGフィールドの前記第1の部分」,「第2の部分」に相当することは明らかである。

(エ)本願明細書の【0041】,【0053】によれば,VHT-SIGフィールドの第1の部分において,BPSKと回転された2位相シフトキーイング(BPSK)(すなわち,Q-BPSK。)の2種類の配置を用いることで,一方と直交する軸上で送信された情報自体が送信モード情報となり得ることを含むものと解される。
なお,「モード情報」が直接的にモードを示す情報であれば,当該情報のみでモードが検出可能であるから,モード検出に対して特殊な配置(例えば,回転された2位相シフトキーイング(BPSK))を用いる必然性はない。したがって,直接的にモードを示す「送信モード情報」がSIGフィールドの第1の部分の「送信モード情報」以外を受信する際に使用する配列と直交する軸上で送信されると解することは不自然である。
一方,先願発明の第1のブロックのVHT-SIGフィールドの第1のシンボルであるVHT-SIG1はBPSKを用いて変調されているから,I軸の配列を用いて受信されることは明らかである。そして,VHT-SIG1は第1のブロックのVHT-SIGフィールドの第1のシンボルであるから,当該I軸の配列は「SIGフィールドの前記第1の部分を受信する際に使用する配列」と言い得る。そして,先願発明の第1のブロックのVHT-SIGフィールドの第2のシンボルであるVHT-SIG2はQ-BPSKを用いて変調されているから,Q軸の配列を用いていることは明らかである。そして,第1シンボルがI軸の配列であるのに対し,第2シンボルがQ軸の配列であることにより,データユニットが準拠する規格が判断されるのであるから,第2シンボルがQ軸の配列であることにより送信モード情報が受信されていると言える。
したがって,「前記SIGフィールドの前記第1の部分を受信する際に使用する配列と直交する軸上で,送信モード情報が受信される」の点で両者は共通する。

したがって,補正後の発明と先願発明とを対比すると,両者は,以下の点で一致している。
(一致点)
「ワイヤレス通信のための方法において,
フレーム構造の信号(SIG)フィールドの第1の部分を受信することと,
前記SIGフィールドの前記第1の部分に基づいて,前記フレーム構造の送信モードを決定することと,
前記SIGフィールドは,複数の装置に対して共通である前記第1の部分と,各装置に対して特有である第2の部分とを有し,
前記SIGフィールドの前記第1の部分を受信する際に使用する配列と直交する軸上で,送信モード情報が受信される方法。」

一方,補正後の発明は「前記送信モードに基づいて,前記フレーム構造の残りのパートを受信することとを含み,」なる構成を有するのに対し,先願発明は当該構成が明らかでない点で一応の相違がみられるので,この点について以下検討する。

先願明細書の図18によれば,データユニットのVHT-SIG2より後の部分はVHTに係るものであることは明らかであり,VHT-SIG1,2によりデータユニットが準拠する規格が判断された以降は当該規格に基づいてVHT-SIG2より後のVHTに係る部分を受信することは当然のことにすぎない。したがって,上記点には実質的な差異は無く,補正後の発明と先願発明は実質的に同一である。

エ むすび
以上のとおり,補正後の発明は,その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって,その出願後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない(同法第184条の13参照。)ものである。

(3) 結語
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反し,また,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年8月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1 本願発明と補正後の発明」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 先願発明
先願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ 先願発明」の項で認定したとおりである。

3 対比・判断
そこで,本願発明と先願発明とを対比するに,本願発明は補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ 対比・判断」の項で検討したとおり,補正後の発明と先願発明は実質的に同一であるから,本願発明も同様の理由により,先願発明と実質的に同一である。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,先願発明は実質的に同一であるから,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-05 
結審通知日 2015-10-06 
審決日 2015-10-23 
出願番号 特願2012-524887(P2012-524887)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04J)
P 1 8・ 561- Z (H04J)
P 1 8・ 161- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡 裕之  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 菅原 道晴
山本 章裕
発明の名称 送信モード検出を可能にするMU-MIMOVHTプリアンブルに対する拡張  
代理人 砂川 克  
代理人 井関 守三  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
代理人 河野 直樹  
代理人 佐藤 立志  
代理人 野河 信久  
代理人 堀内 美保子  
代理人 井上 正  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  

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