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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1312455
審判番号 不服2014-26454  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-25 
確定日 2016-03-17 
事件の表示 特願2013-136032「液滴吐出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日出願公開,特開2013-238869〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
本件出願は,平成21年8月26日に出願した特願2009-195181号の一部を平成25年6月28日に新たな特許出願としたものであり,特願2009-195181号は平成18年12月18日に出願した特願2006-340588号の一部を新たな特許出願としたものであり,特願2006-340588号は,平成16年10月1日に出願した特願2004-289905号の一部を新たな特許出願としたものである。そして,本件出願の手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成25年 7月25日:手続補正書
平成26年 5月28日:拒絶理由通知(同年6月3日発送)
平成26年 7月 7日:意見書
平成26年 7月 7日:手続補正書
平成26年 9月26日:拒絶査定(同年同月30日送達)
平成26年12月25日:審判請求

2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,以下のものである(以下「本願発明」という。)。
「 基体と液滴吐出ヘッドとの少なくとも一方を位置変更し,前記基体に対して液状材料を吐出する液滴吐出装置であって,
第1の方向に複数のノズルが配列され,第1色の液状材料を吐出する第1の液滴吐出ヘッドと,
前記第1の方向に複数のノズルが配列され,前記第1色の液状材料を吐出する第2の液滴吐出ヘッドと,
前記第1の方向に複数のノズルが配列され,第2色の液状材料を吐出する第3の液滴吐出ヘッドと,
前記第1の方向に複数のノズルが配列され,第2色の液状材料を吐出する第4の液滴吐出ヘッドと,
を有し,
一方向へ前記位置変更を行うとき,前記第1の方向と直交する第2の方向から見て,前記第1の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域,前記第2の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域,前記第3の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域,および,前記第4の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域が,重なる部分を有するように,前記第1の液滴吐出ヘッド,前記第2の液滴吐出ヘッド,前記第3の液滴吐出ヘッド,および,前記第4の液滴吐出ヘッドが配置され,
前記第1の液滴吐出ヘッドおよび前記第2の液滴吐出ヘッドは,前記第2の方向から見て,前記第1の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴と前記第2の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴とが等間隔で吐出されるように配置され,
前記第3の液滴吐出ヘッドおよび前記第4の液滴吐出ヘッドは,前記第2の方向から見て,前記第3の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴と前記第4の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴とが等間隔で吐出されるように配置され,
前記第1の液滴吐出ヘッドと前記第2の液滴吐出ヘッドとは,前記第2の方向から見て各前記液滴吐出ヘッドのノズル列の端部がずれて配置され,
前記第3の液滴吐出ヘッドと前記第4の液滴吐出ヘッドとは,前記第2の方向から見て各前記液滴吐出ヘッドのノズル列の端部がずれて配置され,
前記第2の方向から見て前記第1の液滴吐出ヘッドと前記第2の液滴吐出ヘッドとの重なる部分と,前記第3の液滴吐出ヘッドと前記第4の液滴吐出ヘッドとの重なる部分とは一致しないように配置されていることを特徴とする液滴吐出装置。」
なお,請求項1には,「前記第3の液滴吐出ヘッド及び前記第4の液滴吐出ヘッドは,前記第2の方向から見て,前記第1の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴と前記第2の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴とが等間隔で吐出されるように配置され」と記載されているが,第3及び第4の液滴吐出ヘッドの配置が第1及び第2の液滴吐出ヘッドのノズルから吐出された液滴の間隔に影響を与えるとは認められず,また本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0024】及び図3の記載からみて,前記「第1」は「第3」の,前記「第2」は「第4」のそれぞれ誤記と認め,本願発明を上記のように認定した。

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,本願発明は,特許法44条2項の規定により本件出願に係る特許出願がされたとみなされる原出願(特願2004-289905号)の出願前に日本国内又は外国において,頒布された特開2002-286924号公報(以下,「引用例」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない,というものである。

第2 当審判体の判断
1 引用例の記載及び引用発明
(1) 引用例の記載
引用例には,以下の事項が記載されている。なお,下線は当審が付したものである。

ア「【請求項7】
基板とインクジェット式カラーヘッドを相対移動させ,カラーヘッドからフィルタ材インクを前記基板に対して発射してカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置であって,
前記カラーヘッドを,フィルタ色ごとにインクジェットノズルが直列に配列された複数のヘッドユニットを並列配置するとともに,各ヘッドユニットは,同色のフィルタ色ピッチ:aの整数倍:Nの間隔(a・N)でインクジェットノズルが配列されており,このヘッドユニットをインクジェットノズルの配列方向にフィルタ色ピッチ:aだけ位置をずらして並列配置して構成したカラーフィルタ製造装置。

イ「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,カラー液晶パネルに使用されているカラーフィルタの製造方法に関するものである。

ウ「【0004】
カラーフィルタ2aには、R,G,Bのフィルタエレメントの配列によってストライプ配列とデルタ配列が存在し、染色法、顔料分散法、電着法、印刷法などの手法を用いて製造されているがこれらの方法は、共通してR,G,Bの3色を着色するために同一工程を3回繰り返す必要があり、製造工程が複雑である。
【0005】
そこで、ストライプ配列の製造については特開平8-292319号公報に見られるように、インクジェット方式を用いた優れた工法が提案されている。
図27と図28はデルタ配列のカラーフィルタを示す。

【図27】


【図28】


【0006】
これは、画素ピッチ:Aで形成されるR,G,Bのフィルタエレメントは、奇数行も偶数行もフィルタ色ごとに同色のフィルタ色ピッチ:a(=3・A)で配列されているが、奇数行と偶数行とでは列が画素ピッチ:Aの1.5倍だけずらせてデルタ配置に形成されている。なお、各フィルタエレメントの間は光を透過しないブラックマトリクス5で構成されている。
【0007】
そのため、デルタ配列のカラーフィルタでは、奇数行の端のフィルタエレメントの色と偶数行の端のフィルタエレメントの色とを異ならせることが必要であって、デルタ配列に適合するように前記ブラックマトリクス5が形成された基板のフィルタエレメントの位置に、ストライプ配列におけるインクジェット方式の技術を用いてフィルタ材インクを充填した場合には、奇数行と偶数行の端では前記ブラックマトリクスの上にフィルタ材インクが着弾して固化することになって、TFTアレイ基板1と張り合わせると前記液晶セルの厚みが行の中央と異なる状態となり、表示品質が劣化する問題がある。」

エ「【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はデルタ配列のカラーフィルタをインクジェット方式で製造するに適したカラーフィルタの製造方法を提供することを目的とする。

オ「【0038】
(実施の形態2)
図6?図8は本発明の(実施の形態2)を示す。
この実施の形態は,ブラックマトリクスが形成された基板を,2つのカラーヘッドの下方を図1(b)?図1(d)へ片道通過させて偶数/奇数行の1回描画でカラーフィルタを完成させる製造方法である。
【図1】

【0039】
なお,この(実施の形態2)以降の各実施の形態において,基板2は図1(a)に示すようにマザー基板6に多面取りされており,カラーヘッド7のホルダー11へのヘッド群の取り付け構造,ならびにその取り付け構造に伴う前記マザー基板6の送り方向の所定距離のずれは,ヘッドブロックの発射時間を前記マザー基板6の送りに同期させることによって,ノズルが一定間隔で配列されたヘッドユニットとして扱うことができることは同じである。
【0040】
図6に示すように,第1,第2のカラーヘッド19a,19bは,それぞれヘッドユニット16,17,18で構成されている。
ヘッドユニット16は,青色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが丸印で示すように基板2の画素ピッチがAのときに3・Aの間隔で直列に配置されている。ヘッドユニット17は,赤色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが丸印で示すように3・Aの間隔で直列に配置されている。ヘッドユニット18は,緑色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが丸印で示すように3・Aの間隔で直列に配置されている。
【図6】

【0041】
第1のカラーヘッド19aは,偶数行のフィルタエレメントの配置に適合するようにヘッドユニット16,17,18のインクジェットノズルが行方向に1画素ピッチだけ位置をずらして設けられている。
【0042】
第2のカラーヘッド19bは,奇数行のフィルタエレメントの配置に適合するようにヘッドユニット16,17,18のインクジェットノズルが行方向に1画素ピッチだけ位置をずらして設けられている。
【0043】
また,第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16のインクジェットノズルと第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16のインクジェットノズルとは,行方向に画素ピッチの1.5倍だけ位置をずらして配置されている。
【0044】
この第1,第2のカラーヘッド19a,19bを用いて次のようにして図5に示すカラーフィルタが製造される。
先ず,基板2がカラーヘッド19の下をF1方向に通過して,第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16の下方位置に基板2の第2行目L2が到着したタイミングに,ヘッドユニット16のインクジェットノズルから青色のインクが発射されて図7(a)に示すように,ブラックマトリクス5で仕切られたフィルタエレメントの中に着弾する。
【図7】

【0045】
次に,第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット17の下方位置に基板2の第2行目L2が到着したタイミングに,ヘッドユニット17のインクジェットノズルから赤色のインクが発射されて図7(b)に示すように,図7(a)で着弾した青色フィルタエレメントの右隣に着弾する。
【0046】
第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット18の下方位置に基板2の第2行目L2が到着したタイミングに,ヘッドユニット18のインクジェットノズルから緑色のインクが発射されて図7(c)に示すように,図7(b)で着弾した赤色フィルタエレメントの右隣に着弾する。
【0047】
同様に,第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16の下方位置に基板2の第1行目L1が到着したタイミングに,ヘッドユニット16のインクジェットノズルから青色のインクが発射されて図8(a)に示すように,ブラックマトリクス5で仕切られたフィルタエレメントの中に着弾する。
【図8】

【0048】
次に,第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット17の下方位置に基板2の第1行目L1が到着したタイミングに,ヘッドユニット17のインクジェットノズルから赤色のインクが発射されて図8(b)に示すように,図8(a)で着弾した青色フィルタエレメントの右隣に着弾する。
【0049】
第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット18の下方位置に基板2の第1行目L1が到着したタイミングに,ヘッドユニット18のインクジェットノズルから緑色のインクが発射されて図8(c)に示すように,図7(b)で着弾した青色フィルタエレメントの左隣に着弾する。
【0050】
このように偶数行に対する第1のカラーヘッド19aによるフィルタ材インクの発射と,奇数行に対する第2のカラーヘッド19bによるフィルタ材インクの発射とが同時に進行して,往路だけの1パスでカラーフィルタが完成する。」

カ「【図面の簡単な説明】

【図6】本発明の(実施の形態2)のカラーフィルタ製造方法を実現するカラーフィルタ製造装置の要部の平面図
…」

(2) 引用発明
これら記載内容からみて,引用例には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。なお,段落番号は,引用発明の認定に活用した引用例の記載箇所を示すために併記したものである。)。

「【請求項7】基板とインクジェット式カラーヘッドを相対移動させ,カラーヘッドからフィルタ材インクを基板に対して発射してカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置であって,
【0038】基板を,2つのカラーヘッドの下方を片道通過させ,
【0040】第1,第2のカラーヘッド19a,19bは,それぞれヘッドユニット16,17,18で構成され,ヘッドユニット16は,青色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが,基板の画素ピッチがAのときに3・Aの間隔で直列に配置され,ヘッドユニット17は,赤色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが3・Aの間隔で直列に配置され,ヘッドユニット18は,緑色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが3・Aの間隔で直列に配置され,
【0041】第1のカラーヘッド19aは,偶数行のフィルタエレメントの配置に適合するようにヘッドユニット16,17,18のインクジェットノズルが行方向に1画素ピッチだけ位置をずらして設けられ,
【0042】第2のカラーヘッド19bは,奇数行のフィルタエレメントの配置に適合するようにヘッドユニット16,17,18のインクジェットノズルが行方向に1画素ピッチだけ位置をずらして設けられ,
【0043】第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16のインクジェットノズルと第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16のインクジェットノズルとは,行方向に画素ピッチの1.5倍だけ位置をずらして配置され,
【0008】デルタ配列のカラーフィルタをインクジェット方式で製造するに適した,
【請求項7】カラーフィルタ製造装置。」

2 対比及び判断
(1) 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。

ア 液滴吐出装置について

引用発明の「基板」,「インクジェット式カラーヘッド」,「フィルタ材インク」及び「発射」は,それぞれ,本願発明の「基体」,「液滴吐出ヘッド」,「液体材料」及び「吐出」に相当する。
したがって,引用発明の「基板とインクジェット式カラーヘッドを相対移動させ,カラーヘッドからフィルタ材インクを基板に対して発射してカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置」は,本願発明の「基体と液体吐出ヘッドの少なくとも一方を位置変更し,前記基体に対して液状材料を吐出する液滴吐出装置」に相当する。

イ 第1?4の液滴吐出ヘッドについて

引用発明の「行方向」,「インクジェットノズル」,「青色」,「赤色」及び「フィルタ材インク」は,本願発明の「第1の方向」,「ノズル」,「第1色」,「第2色」及び「液状材料」に相当する。
また,引用発明において,第1のカラーヘッド19aに設けられた「ヘッドユニット16」及び「ヘッドユニット17」は,それぞれ本願発明の「第1の液滴吐出ヘッド」及び「第3の液滴吐出ヘッド」に相当し,第2のカラーヘッド19bに設けられた「ヘッドユニット16」及び「ヘッドユニット17」は,それぞれ本願発明の「第2の液滴吐出ヘッド」及び「第4の液滴吐出ヘッド」に相当する。
そして,引用発明では,「ヘッドユニット16は,青色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが,基板の画素ピッチがAのときに3・Aの間隔で直列に配置され,ヘッドユニット17は,赤色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが3・Aの間隔で直列に配置され」,かつ,「ヘッドユニット16,17,18のインクジェットノズルが行方向に1画素ピッチだけ位置をずらして設けられ」ているのであるから,行方向,すなわち本願発明における「第1の方向」に複数のインクジェットノズルが配列されていることは明らかである(図6からも見て取れる事項である)。
したがって,引用発明の「(第1のカラーヘッド19aに設けられた)ヘッドユニット16」,「(第1のカラーヘッド19bに設けられた)ヘッドユニット16」,「(第1のカラーヘッド19aに設けられた)ヘッドユニット17」及び「(第1のカラーヘッド19bに設けられた)ヘッドユニット17」は,本願発明の「第1の方向に複数のノズルが配列され、第1色の液状材料を吐出する第1の液滴吐出ヘッド」,「前記第1の方向に複数のノズルが配列され、前記第1色の液状材料を吐出する第2の液滴吐出ヘッド」,「前記第1の方向に複数のノズルが配列され、第2色の液状材料を吐出する第3の液滴吐出ヘッド」及び「前記第1の方向に複数のノズルが配列され、第2色の液状材料を吐出する第4の液滴吐出ヘッド」の要件を満たし,また,引用発明の「カラーフィルタ装置」は,本願発明の「液滴吐出装置」の「第1の方向に複数のノズルが配列され,第1色の液状材料を吐出する第1の液滴吐出ヘッドと,前記第1の方向に複数のノズルが配列され,前記第1色の液状材料を吐出する第2の液滴吐出ヘッドと,前記第1の方向に複数のノズルが配列され,第2色の液状材料を吐出する第3の液滴吐出ヘッドと,前記第1の方向に複数のノズルが配列され,第2色の液状材料を吐出する第4の液滴吐出ヘッドと,を有し」との要件を満たす。

ウ 等間隔で吐出される配置

本願発明では,「第2の方向」は(ノズルが形成された平面内において)「第1の方向」に直交する方向を表すのであるから,引用発明の(インクジェットノズル」が形成された平面内において)「行方向」に直交する方向は,本願発明の「第2の方向」に相当する。
引用発明において,「ヘッドユニット16は,青色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが,基板の画素ピッチがAのときに3・Aの間隔で直列に配置され」,また,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16のインクジェットノズルと第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16のインクジェットノズルとは,行方向に画素ピッチの1.5倍だけ位置をずらして配置され」ている。そうしてみると,引用発明の「第1のカラーヘッド19aに設けられたヘッドユニット16」及び「第2のカラーヘッド19bに設けられたヘッドユニット16」は,行方向と直交する方向から見て,「第1のカラーヘッド19aに設けられたヘッドユニット16」は,行方向と直交する方向から見て,「第1のカラーヘッド19aに設けられたヘッドユニット16」の「インクジェットノズル」から発射された「青色のフィルタ剤インク」と「第2のカラーヘッド19bに設けられたヘッドユニット16」の「インクジェットノズル」から発射された「青色のフィルタ剤インク」とが画素ピッチの1.5倍の間隔で発射されるように配置されていることとなる。また,「ヘッドユニット17」についても,同様のことがいえる。
したがって,引用発明の「第1のカラーヘッド19aに設けられたヘッドユニット16」及び「第2のカラーヘッド19bに設けられたヘッドユニット16」,並びに,「第1のカラーヘッド19aに設けられたヘッドユニット17」及び「第2のカラーヘッド19bに設けられたヘッドユニット17」は,それぞれ,本願発明の「前記第1の液滴吐出ヘッドおよび前記第2の液滴吐出ヘッドは、前記第2の方向から見て、前記第1の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴と前記第2の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴とが等間隔で吐出されるように配置され」との要件,及び「前記第3の液滴吐出ヘッドおよび前記第4の液滴吐出ヘッドは、前記第2の方向から見て、前記第3の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴と前記第4の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴とが等間隔で吐出されるように配置され」との要件を満たす(図6からも見て取れる事項である。)。

エ 液滴吐出ヘッドの端部の配置について

引用発明において,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16のインクジェットノズルと第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16のインクジェットノズルとは,行方向に画素ピッチの1.5倍だけ位置をずらして配置され」ている。したがって,引用発明の「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16」と「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16」の配置は,本願発明の「前記第1の液滴吐出ヘッドと前記第2の液滴吐出ヘッドとは,前記第2の方向から見て各前記液滴吐出ヘッドのノズル列の端部がずれて配置され」るとの要件を満たす(図6からも見て取れる事項である)。
同様に,引用発明の「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット17」と「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット17」の配置は,本願発明の「前記第3の液滴吐出ヘッドと前記第4の液滴吐出ヘッドとは,前記第2の方向から見て各前記液滴吐出ヘッドのノズル列の端部がずれて配置され」るとの要件を満たす。

オ 液滴吐出ヘッドの重なる部分の配置について

引用例には,それぞれのヘッドユニットが全て同じ長さを有することは明記されていない。また,それぞれのヘッドノズルにおける,ノズル列の端部からヘッドユニットの端部まで長さが,全てのヘッドユニットにおいて同じであることも明記されていない。
しかし,ノズル列の端部からヘッドユニットの端部まで長さをヘッドユニットごとに変える必然性は見当たらないことから,全てのヘッドユニットにおいて,ノズル列の端部からヘッドユニットの端部まで長さは同じであるものと認める(図6からも見て取れる事項である。)。
また,引用発明はカラーフィルタ製造装置に関するものであるところ,製造するカラーフィルタの色ごとの画素数は同じであるから,ヘッドユニットごとのノズルの数は同じである。したがって,それぞれのヘッドユニットの長さもまた,全て同じ長さであると認める(図6からも読み取れる事項である。)。

引用発明は「第1,第2のカラーヘッド19a,19bは,それぞれヘッドユニット16,17,18で構成され,ヘッドユニット16は,青色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが,基板の画素ピッチがAのときに3・Aの間隔で直列に配置され,ヘッドユニット17は,赤色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが3・Aの間隔で直列に配置され」る,すなわち,それぞれのヘッドユニットにおいては,インクジェットノズルの間隔は画素ピッチの3倍である。

(ア)そして,「第1のカラーヘッド19aは,偶数行のフィルタエレメントの配置に適合するようにヘッドユニット16,17,18のインクジェットノズルが行方向に1画素ピッチだけ位置をずらして設けられ」るのであるから,「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット17」は,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16」からみて,その端部が1画素ピッチだけずれて配置されている。
(イ)また,引用発明では,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16のインクジェットノズルと第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16のインクジェットノズルとは,行方向に画素ピッチの1.5倍だけ位置をずらして配置され」るのであるから,「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16」は,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16」からみて,その端部が画素ピッチの1.5倍だけずれて配置されている。
(ウ)さらに,引用発明では,「第2のカラーヘッド19bは,奇数行のフィルタエレメントの配置に適合するようにヘッドユニット16,17,18のインクジェットノズルが行方向に1画素ピッチだけ位置をずらして設けられ」ているのであるから, 「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット17」は,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16」からみて,画素ピッチの2.5倍(=1.5+1),または0.5倍(=1.5-1)だけずれて配置されている。

上記(ア)?(ウ)から明らかなように,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16」,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット17」,「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16」,「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット17」は,その端部が相互にずれて配置されている。したがって,引用発明の「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16」と「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16」との重なる部分と,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット17」と「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット17」との重なる部分とは一致しないように配置されることとなる。
してみれば,引用発明の「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16」,「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16」,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット17」及び「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット17」は,本願発明の「前記第2の方向から見て前記第1の液滴吐出ヘッドと前記第2の液滴吐出ヘッドとの重なる部分と,前記第3の液滴吐出ヘッドと前記第4の液滴吐出ヘッドとの重なる部分とは一致しないように配置されている」との要件を満たす(このことは,図6からも見て取れる事項である)。

(2) 一致点
前記2(1)を踏まえると,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致する。
「 基体と液滴吐出ヘッドとの少なくとも一方を位置変更し、前記基体に対して液状材料を吐出する液滴吐出装置であって、
第1の方向に複数のノズルが配列され、第1色の液状材料を吐出する第1の液滴吐出ヘッドと、
前記第1の方向に複数のノズルが配列され、前記第1色の液状材料を吐出する第2の液滴吐出ヘッドと、
前記第1の方向に複数のノズルが配列され、第2色の液状材料を吐出する第3の液滴吐出ヘッドと、
前記第1の方向に複数のノズルが配列され、第2色の液状材料を吐出する第4の液滴吐出ヘッドと、
を有し、
前記第1の液滴吐出ヘッドおよび前記第2の液滴吐出ヘッドは、前記第2の方向から見て、前記第1の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴と前記第2の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴とが等間隔で吐出されるように配置され、
前記第3の液滴吐出ヘッドおよび前記第4の液滴吐出ヘッドは、前記第1の方向と直交する第2の方向から見て、前記第1の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴と前記第2の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴とが等間隔で吐出されるように配置され、
前記第1の液滴吐出ヘッドと前記第2の液滴吐出ヘッドとは、前記第2の方向から見て各前記液滴吐出ヘッドのノズル列の端部がずれて配置され、
前記第3の液滴吐出ヘッドと前記第4の液滴吐出ヘッドとは、前記第2の方向から見て各前記液滴吐出ヘッドのノズル列の端部がずれて配置され、
前記第2の方向から見て前記第1の液滴吐出ヘッドと前記第2の液滴吐出ヘッドとの重なる部分と、前記第3の液滴吐出ヘッドと前記第4の液滴吐出ヘッドとの重なる部分とは一致しないように配置されていることを特徴とする液滴吐出装置。」

(3) 相違点
本願発明と引用発明は,以下の点において,一応相違する。

本願発明は,「一方向へ前記位置変更を行うとき、前記第1の方向と直交する第2の方向から見て、前記第1の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域、前記第2の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域、前記第3の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域、および、前記第4の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域が、重なる部分を有するように、前記第1の液滴吐出ヘッド、前記第2の液滴吐出ヘッド、前記第3の液滴吐出ヘッド、および、前記第4の液滴吐出ヘッドが配置され」るのに対し,引用発明では,この点が明記されていない点。

(4) 判断
前記相違点に係る構成は,「一方向へ前記位置変更を行うとき,前記第1の方向と直交する第2の方向から見て,前記第1の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域,前記第2の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域,前記第3の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域,および,前記第4の液滴吐出ヘッドにて吐出される領域が,重なる部分を有するように」という記載によって,本願発明の第1?4の液滴吐出ヘッドの配置を特定したものである。
そこで,「液滴吐出ヘッドにて吐出される領域」に関して,本件出願の発明の詳細な説明を参酌すると,段落【0003】には,「1個の液滴吐出ヘッドには,多数のノズル(ノズル孔)が並んで形成されており,ノズル列を構成しているが,ぞのノズル列の長さは基板の大きさと比べると短いので,1回の走査によって液滴を吐出する領域の幅(描画する幅)を長くするために,ヘッドユニットには複数の液滴吐出ヘッドがそれらのノズル列が走査方向から見てつながるようにして設置されている。」と記載されている。また,発明の詳細な説明には,「液滴吐出ヘッドにて吐出される領域」に関して,これ以外の記載は存在しない。なお,段落【0041】の記載は,画素18R,画素18B及び画素18Gが形成されるべき領域に関する記載であり,これら画素が形成されるべき領域が「重なる部分を有する」ことはないから,段落【0041】の記載は,「液滴吐出ヘッドにて吐出される領域」に関する記載ではない(段落【0083】の記載も同様である)。
そうしてみると,本願発明の「液滴吐出ヘッドにて吐出される領域」とは,「液滴吐出ヘッドが描画する,ノズル列の長さ方向(第1の方向)に幅を有する領域」のこと,例えば,図8の符号21Rが示す細長い図形(符号26が示す両端を除く)のことを意味すると解するのが相当である。
次に,「一方向へ前記位置変更を行うとき,前記第1の方向と直交する第2の方向からみて・・・重なる部分を有するように」に関して,本件出願の発明の詳細な説明を参酌すると,段落【0073】には,長尺ノズル列(第1の方向につながる2個の液滴吐出ヘッド)に関する記載であるものの,「このようなヘッドユニット103では,赤色の液状材料111Rを吐出するヘッド列31R,32Rにより形成される長尺ノズル列と,緑色の液状材料111Gを吐出するヘッド列31G,32Gにより形成される長尺ノズル列と,青色の液状材料111Bを吐出するヘッド列31B,32Bにより形成される長尺ノズル列とは,Y軸方向から見て重なるように配置されている。これにより,ヘッドユニット103と基体10Aとを主走査することによって,全吐出幅Wの範囲では,画素18R,18G,18Bに対して一度に赤,緑,青の各色の液状材料111R,111G,111Bを付与することができる。」と記載されている。
そうしてみると,前記相違点に係る構成は,「一方向(Y方向)へ位置変更を行うとき,第2の方向(Y方向)からみて,第1?第4の液滴吐出ヘッドが描画する,ノズル列の長さ方向(第1の方向)に幅を有する領域が重なる部分を有するように(例えば,図8のR_(1)の幅の領域を有するように),第1?第4の液滴吐出ヘッドが位置されている」ことを意味すると解するのが相当である。
ところで,引用発明の「カラーフィルタ製造装置」は,「基板を,2つのカラーヘッドの下方を片道通過させ」るものであるところ,引用発明の「第1,第2のカラーヘッド19a,19bは,それぞれヘッドユニット16,17,18で構成され,ヘッドユニット16は,青色のフィルタ材インクを発射するインクヘッドノズルが基板の画素ピッチがAのときに3・Aの間隔で直列に配置され,ヘッドユニット17は,赤色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが3・Aの間隔で直列に配置され,ヘッドユニット18は,緑色のフィルタ材インクを発射するインクジェットノズルが3・Aの間隔で直列に配置され」ている。
そうしてみると,引用発明の「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16」,「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16」,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット17」及び「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット17」は,基板とインクジェット式カラーヘッドが相対移動するとき,行方向と直交する方向から見て,第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16が描画する,行方向に幅を有する領域,第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16が描画する,行方向に幅を有する領域,第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット17が描画する,行方向に幅を有する領域及び第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット17が描画する,行方向に幅を有する領域が重なる部分を有するように,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット16」,「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット16」,「第1のカラーヘッド19aのヘッドユニット17」及び「第2のカラーヘッド19bのヘッドユニット17」が配置されているといえる。
したがって,前記相違点は,実質的にみて相違点ではない。

なお,本件出願の発明の詳細な説明の段落【0051】には,例えば,として,「第1ヘッド21Rのノズル列と第3ヘッド23Rのノズル列とが重なり合っている図8中のR_(1)で示す範囲によって液滴を吐出される画素18Rの場合には,図3に示すように,第1ヘッド21Rのノズル25から吐出された液滴91と,第3ヘッド23Rのノズル25から吐出された液滴92とが付与される。」と記載され,また,発明の詳細な説明には記載がないけれども,図3からは,「液滴91が付与された範囲と液滴92が付与された範囲とが重なる部分を有する」構成と整合する構成が,一応,見て取れる。 しかしながら,このような構成は,付与された(着弾した)後の液滴の範囲に関する構成であり,液滴吐出装置の構成の一部をなすものではない。また,図3からは,「液滴91が付与された範囲と液滴92が付与された範囲とが重なる部分を有する」構成を達成可能な液滴吐出ヘッドのノズル孔の位置関係の構成が,一応,見て取れるけれども,特許請求の範囲に記載された前記相違点に係る構成は,液滴吐出ヘッドの配置に関する構成であって,液滴吐出ヘッドのノズル孔の位置関係に関する構成ではない。特許請求の範囲にはノズル孔の位置関係に関する記載が一切存在しないから,特許請求の範囲の記載を離れてノズル孔の位置関係の構成を含めて本願理解をすることは許されない。
あるいは,一般に,液状材料を(インクジェット方式によって)吐出する場合,用いる液状材料や基板の種類,吐出条件等によって吐出された液滴の広がりが変化することは,本件出願の優先権主張の日前における技術常識である。一方で本願発明は,その請求項の末尾の記載からも明らかなように,「液滴吐出装置」の発明であって,液滴吐出ヘッドの位置関係については特定されているものの,ノズル孔の位置関係,液状材料や基板の種類,吐出条件等については一切特定されていない。
したがって,上記のように仮定しても,実質的にみて,本願発明は引用発明と同一である。

(5) 審判請求書における請求人の主張
審判請求人は,審判請求書において,以下のように主張している。

「(3)本願発明と引用文献との対比
本願の請求項1に係る液滴吐出装置は、「前記第1の液滴吐出ヘッドおよび前記第2の液滴吐出ヘッドは、前記第2の方向から見て、前記第1の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴と前記第2の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴とが等間隔で吐出されるように配置され、前記第3の液滴吐出ヘッドおよび前記第4の液滴吐出ヘッドは、前記第2の方向から見て、前記第1の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴と前記第2の液滴吐出ヘッドの前記ノズルから吐出された液滴とが等間隔で吐出されるように配置され、前記第2の方向から見て前記第1の液滴吐出ヘッドと前記第2の液滴吐出ヘッドとの重なる部分と、前記第3の液滴吐出ヘッドと前記第4の液滴吐出ヘッドとの重なる部分とは一致しないように配置されていること」を特徴としております。 これにより、出願当初の明細書の段落[0075]に記載されておりますように、第1色の筋ムラと第2色の筋ムラが分散されることにより、全体的に当該筋ムラを目立たなくすることができます。
引用文献1及び2には上記の特徴については記載も示唆もないと思料いたします。したがって、本願請求項1における上記の効果を奏することまでは当業者は想起できないと思料いたします。以上のことから、請求項1はいわゆる進歩性を有すると思料いたしますので、拒絶理由1及び2は解消されました。 」

しかし,上記2(1)?(4)で検討したように,本願発明と引用発明との間に,構成上の差異はない。そして,請求人も,構成上の差異については,具体的に主張していない。
請求人は,本願発明と引用発明との作用効果の相違について主張しているものとも考えられる。しかし,構成が同一であれば,同一の作用効果を奏することは明らかであるから,作用効果に関して,本願発明と引用発明との間に相違がないことは明らかである。
なお,請求人は,本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0075】を根拠として,本願発明の作用効果を主張している。しかし,段落【0075】は,段落【0074】を前提とするものである。ここで,段落【0074】及び段落【0075】を摘記する(なお,下線は当審が付したものである。)。
「【0074】液滴吐出装置1では,赤色の液状材料111Rを吐出するヘッド列31R,32Rにおけるノズル列の継ぎ目r1,r2と,緑色の液状材料111Gを吐出するヘッド列31G,32Gにおけるノズル列の継ぎ目g1,g2と,青色の液状材料111Bを吐出するヘッド列31B,32Bにおけるノズル列の継ぎ目b1,b2とは,それらの位置がY軸方向から見て互いに一致しないように配置されている。【0075】これにより,製造されたカラーフィルタ基板10において,赤色の画素18Rに発生する筋ムラと,緑色の画素18Gに発生する筋ムラと,青色の画素18Bに発生する筋ムラとを別々の位置に分散させることができるので,筋ムラが目立つのをより確実に防止することができる。」
本願発明は,(本件出願の一部を新たな特許出願とした特願2014-261914号の平成27年1月22日付け手続補正書に記載された請求項1に係る発明のように,ノズル列の「継ぎ目」を発明特定事項として含むものとは異なり)ノズル列の継ぎ目は発明特定事項に含まれていないのであるから,ノズル列の継ぎ目について説明されている段落【0075】の記載を持ち出して本願発明の作用効果を主張すること自体が失当である。また仮に,本願発明が何らかの作用効果を奏するものであるとしても,本願発明と引用発明との構成が同一である以上,引用発明においても同様の作用効果が奏されることは,既に検討したとおりである。

第3 まとめ
以上のとおり,本願発明は,原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された引用例に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-14 
結審通知日 2016-01-19 
審決日 2016-02-01 
出願番号 特願2013-136032(P2013-136032)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本田 博幸  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 西村 仁志
道祖土 新吾
発明の名称 液滴吐出装置  
代理人 西田 圭介  
代理人 仲井 智至  
代理人 渡辺 和昭  

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