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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1312490
審判番号 不服2014-21937  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-29 
確定日 2016-03-15 
事件の表示 特願2011-540802号「複合アンカ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月24日国際公開、WO2010/071742、平成24年 5月31日国内公表、特表2012-511956号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2009年12月7日(パリ条約による優先権主張2008年12月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年12月18日付けで拒絶理由が通知され、平成26年3月18日付けで特許請求の範囲についての手続補正がされたが、平成26年7月2日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年10月29日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年3月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複合アンカを備えたシステムであって、
前記複合アンカが、
ねじ式外面を備えるカニューレ付きの近位部と、
前記近位部に結合され、上部と、底部と、貫通孔と、を備える遠位部と、
を備え、前記遠位部の上部が前記近位部のカニューレ内に配置されるように構成され、
前記システムが、さらに、前記近位部の実質的な長さに対して係合する供給デバイスを備えていることを特徴とするシステム。」


3 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2008-535544号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
縫合糸固定具であって、
長手方向の貫通孔を有し、前端および後端を形作る外側スリーブと、
前記外側スリーブの前記長手方向の貫通孔内に配置可能な挿入部分であって、縫合糸を摺動可能に支持するための少なくとも一つの縫合糸トラックを形作り、そこで前記縫合糸の反対側の自由端は、組織に対して張力をかけられて固定されるように、前記少なくとも一つの縫合糸トラックから前記長手方向の貫通孔を通って、前記外側スリーブの前記後端を出て延びる、挿入部分と、
を備える、縫合糸固定具。」
(2)「【0002】・・・
技術分野は、組織修復に関し、具体的には、組織を骨に固定するための、カニューレ状および非カニューレ状の縫合糸固定具に関する。」
(3)「【0043】
図37?48を参照し、まず図37?38を参照すると、ネジ山のある外側部分142およびネジ山のある外側部分142内に配置可能な挿入部分144を通常備える、二つの部分から成る非カニューレ状の縫合糸固定具140が開示される。ネジ山のある外側部分142は、その遠位端で切断される切断縁148を有する連続的な外側のネジ山146を備える。・・・ネジ山のある外側部分142は、挿入部分144を収容するために、六角形の孔150をさらに備える。」
(4)「【0044】
挿入部分144は、一対の縫合糸を収容するために備えられ、円錐形のチップ152から近位に延びるシャフト154を有する円錐形の先端152を通常備える。・・・挿入部分144には、一対の縫合糸トラック158Aおよび159Bが、その周囲で縫合糸を収容するために備えられる。・・・
【0045】
次に図39?42を参照すると、縫合糸トラック158Aが、シャフト154に形成される対向する一対の長手方向スロット160Aおよび160Bによって形作られる。同様に、縫合糸トラック158Bは、シャフト154に形成される長手方向スロット162Aおよび162Bによって形作られる。・・・
【0046】
スロット160AおよびBは、相互に横断孔164を介して通じている。同様に、スロット162AおよびBは、相互に横断孔166を介して通じている。・・・シャフト154は、ネジ山のある外側部分142の六角形の孔150と結合するように六角形の断面を有し、縫合糸に張力がかけられる間にネジ山のある外側部分142に対して挿入部分144が回転しないようにする。
【0047】
また、六角形の孔150は、その近位端に六角形のドライバを係合するために備えられる。」
(5)「【0049】
図44を参照して、縫合糸が縫合糸固定具140を通されると、挿入部分144がネジ山のある外側部分142の六角形の孔150に引き付けられることが可能になる。縫合糸168および170の近位張力により、ネジ山のある外側部分142内に挿入部分が保持される。・・・」
(6)「【0050】
次に図45?48を参照すると、使用の際、孔B2が骨B1に予め開けられ、ドライバ176は、縫合糸固定具140の円錐形の先端152をまず骨の内部に配置するために使用される。その後、ドライバ176は、ネジ山146の切断された切断縁148が骨を切開するよう回転し、縫合糸固定具140を骨の内部に固定する。・・・」
(7)図37の記載から、外側部分142に挿入部分144が結合された状態の縫合糸固定具140が窺える。
(8)図45の記載から、外側部分142に六角形のドライバ176が結合された状態が窺える。

上記(6)の「ドライバ176は、ネジ山146の切断された切断縁148が骨を切開するよう回転し、縫合糸固定具140を骨の内部に固定する。」との記載から、刊行物1には「縫合固定具140とドライバ176とを備えたシステム」が記載されているといえる。
上記(4)の「六角形の孔150は、その近位端に六角形のドライバを係合するために備えられる。」との記載と上記(8)の図示内容とを併せてみて、システムは、外側部分142に対して係合する六角形のドライバ176を備えているといえる。

以上から、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「刊行物1発明」という。)。
「縫合糸固定具140を備えたシステムであって、
縫合糸固定具140が、
外側のネジ山146を備える六角形の穴150付きの外側部分142と、
外側部分142に結合され、シャフト154と、円錐形の先端152と、横断孔164及び横断孔166と、を備える挿入部分144と、
を備え、挿入部分144のシャフト154が外側部分142の六角形の穴150内に収容されるように構成され、
前記システムが、さらに、外側部分142に対して係合する六角形のドライバ176を備えているシステム。」

4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、その構造または機能からみて、刊行物1発明の「縫合糸固定具140」は、本願発明の「複合アンカ」に相当し、以下同様に、「システム」は「システム」に、「外側のネジ山146」は「ねじ式外面」に、「穴150」は「カニューレ」に、「外側部分142」は「近位部」に、「シャフト154」は「上部」に、「円錐形の先端152」は「底部」に、「横断孔164及び横断孔166」は「貫通孔」に、「挿入部分144」は「遠位部」に、「ドライバ176」は「供給デバイス」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1発明の「外側部分142に対して係合する六角形のドライバ176」と本願発明の「前記近位部の実質的な長さに対して係合する供給デバイス」とは、「前記近位部に対して係合する供給デバイス」である限りにおいて共通する。

したがって、両者は、
「複合アンカを備えたシステムであって、
前記複合アンカが、
ねじ式外面を備えるカニューレ付きの近位部と、
前記近位部に結合され、上部と、底部と、貫通孔と、を備える遠位部と、
を備え、前記遠位部の上部が前記近位部のカニューレ内に配置されるように構成され、
前記システムが、さらに、前記近位部に対して係合する供給デバイスを備えているシステム。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
近位部に対して係合する供給デバイスについて、本願発明は近位部の実質的な長さに対して係合する供給デバイスであるのに対し、刊行物1発明は近位部の実質的な長さに対して係合する供給デバイスであるかどうか不明な点。

5 判断
5-1 最初に、刊行物1発明の「ドライバ176」と、「シャフト154」の長さについて検討する。
(1)ドライバ176の長さについて
刊行物1発明は、縫合糸固定具140が「外側のネジ山146を備える六角形の穴150付きの外側部分142」を有するとともに、ドライバ176が「外側部分142に対して係合する六角形」を有するものであるところ、刊行物1には、縫合糸固定具140とドライバ176に関し、「ドライバ176は、ネジ山146の切断された切断縁148が骨を切開するよう回転し、縫合糸固定具140を骨の内部に固定する。」と記載されている(上記3欄の摘記事項(6)を参照。)。
したがって、刊行物1発明の縫合糸固定具140は、ネジ山146を備える外側部分142を回転することにより骨の内部に固定されるものであって、その回転は、外側部分142の六角形状の穴部分にドライバ176の六角形状の部分を係合するとともにドライバ176を回転することにより与えられるものと認められる。
ところで、一般に、外側の断面が六角形状のドライバを内側の断面が同じく六角形状の部材に係合させて回転させるにあたり、そのドライバとその部材との係合する長さをどの程度のものとするかは、伝達するトルク、六角形状の大きさ、部材の材質等の条件に基づいて適宜決定されるものと認められる。また、そのドライバとその部材との係合する長さを長くすれば、ドライバから部材により高いトルクを伝達できるものとなることは自明である。
よって、刊行物1発明の六角形のドライバ176について、外側部分142と係合する部分の長さを長いものとすることは当業者が適宜なし得る程度の事項にすぎない。

(2)シャフト154の長さについて
刊行物1には、刊行物1発明のシャフト154に関し、縫合糸トラック158Aと縫合糸トラック158Bとシャフト154の断面とについて記載されているにすぎず、シャフト154の長さについての記載はない(上記3欄の摘記事項(4)を参照。)。
また、図38?図44の記載から、外側部分142に対して有意な長さを有するシャフト154が一応認められるが、これらの記載からみても、また、これらの記載に刊行物1の他の記載を併せてみても、これらの図面に記載されたシャフト154の長さをより短いものとすることができないとする理由は見当たらない。

5-2 小括
以上のとおり、刊行物1発明において、六角形のドライバ176について、外側部分142と係合する部分の長さを長いものとすることは当業者が適宜なし得る程度の事項にすぎず、一方、シャフト154について、その長さを短いものとすることを阻害する事由は認められない。
したがって、刊行物1発明において、より高いトルクを伝達できるように、六角形のドライバ176の、外側部分142と係合する部分の長さを長いものとするとともに、シャフト154の長さを短いものとして、六角形のドライバ176を外側部分142の実質的な長さに対して係合するもの、すなわち、本願発明の相違点に係る発明特定事項を有するものとすることは当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。

そして、本願発明による効果も、刊行物1に記載されたものから当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

6 むすび
以上から、本願発明は、刊行物1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-14 
結審通知日 2015-10-19 
審決日 2015-10-30 
出願番号 特願2011-540802(P2011-540802)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 関谷 一夫
高木 彰
発明の名称 複合アンカ  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  

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