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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q |
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管理番号 | 1312546 |
審判番号 | 不服2015-10626 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-04 |
確定日 | 2016-04-11 |
事件の表示 | 特願2011- 9173「情報分析装置、情報分析方法、情報分析システムおよびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 9日出願公開、特開2012-150669、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成23年1月19日の出願であって,平成27年3月6日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成27年6月4日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。 第2 平成27年6月4日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の適否。 1.補正の内容 本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を, 「入力装置に対する操作履歴を含む,端末装置におけるユーザの操作履歴を入力する入力手段と, 前記入力手段により入力された操作履歴から前記ユーザに課せられた業務に関連しない作業時間を抽出し,抽出した作業時間を業務ロス時間として決定する業務ロス時間決定手段と, 前記入力手段により入力された操作履歴に含まれる前記入力装置に対する操作履歴から前記端末装置に操作がされなくなった時刻を取得し,当該時刻を最終操作時刻として決定し,所定時刻から前記最終操作時刻までの時間を就業時間として決定する就業時間決定手段と, 前記業務ロス時間と前記就業時間とに基づいて前記ユーザの業務量を分析する分析手段と, 前記分析手段による分析結果を出力する出力手段と を備え, 前記就業時間決定手段は,前記ユーザが前記端末装置をシャットダウンしなかった場合にも前記端末装置に操作がされなくなった時刻を最終操作時刻として決定し,前記所定時刻から当該最終操作時刻までの時間を前記就業時間として決定することを特徴とする情報分析装置。」 とする補正(以下,「補正事項1」という。)を含んでいる(下線は,審判請求人が付与したものである。)。 2.補正の適否 本件補正の補正事項1は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記入力手段により入力された操作履歴に含まれる前記入力装置に対する操作履歴から前記端末装置に操作がされなくなった時刻を取得し,当該時刻を最終操作時刻として決定し,所定時刻から前記最終操作時刻までの時間を就業時間として決定する就業時間決定手段」について,「前記就業時間決定手段は,前記ユーザが前記端末装置をシャットダウンしなかった場合にも前記端末装置に操作がされなくなった時刻を最終操作時刻として決定し,前記所定時刻から当該最終操作時刻までの時間を前記就業時間として決定する」との限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。 そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 (1)刊行物の記載事項 ア.刊行物1(特開2010-39604号公報) 原査定の拒絶の理由において,請求項1に対して引用された特開2010-39604号(以下,「刊行物1」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 (ア)「【0090】 さらに,情報処理装置を操作することにより業務を遂行する職種においては,少なくとも利用者がその情報処理装置の設置場所(デスク)に在席していなければ,利用者は業務を遂行していないことになるので,例えば,業務時間内における,利用者が自分のデスクから離席している時間の割合(離席率)が高いほど,逆に言えば利用者が自分のデスクに在席している時間の割合(在席率)が低いほど,作業効率(生産性)は低いと推定することが可能である。 【0091】 そこで,操作状況として,利用者が情報処理装置を操作可能な位置から操作不可能な位置へ離席している離席時間を監視し,その離席時間に基づいて,所定時間(単位時間/勤務時間/業務時間)当たりの離席率を算出し,その離席率に基づいて作業効率を推定することで,管理者等は,情報処理装置を操作することにより業務を遂行する職種の従業員(利用者)の作業効率の目安(推定値)を正確に把握して,各従業員の評価・管理をより正確に行なうことが可能になる。」 (イ)「【0094】 この図1に示すように,第一実施形態の管理システム1は,例えば企業内等において,ネットワーク〔社内LAN(Local Area Network)〕30を介して,利用者5が利用する利用者端末(情報処理装置)10,管理サーバ20,出退勤管理部40,および利用者位置検知部70を相互に通信可能に接続して構築されている。」 (ウ)「【0100】 この出退勤管理部40では,例えば,利用者が出勤時や退勤時に非接触ICカードや非接触ICカードとしての機能を有する携帯電話等(RFIDを含むカードやタグや携帯電話等)をICカードリーダにかざした場合に,利用者の固有情報を非接触ICカード等から読み取り,その固有情報に対応する利用者の出退勤やその時刻を管理するようになっており,この出退勤管理部40により得られた利用者の出退勤情報が本実施形態の管理システム1の管理サーバ20に通知されるように構成されている。 【0101】 ・・・(中略)・・・また,管理サーバ20自体が,上述のような出退勤管理部40の機能を有していてもよい。この場合,管理サーバ20内の監視手段21が,出退勤管理部40の機能を兼ね備えればよい。」 (エ)「【0103】 図1に示す利用者端末10は,上記業務を遂行するために必要な機能としてのCPU10A,記憶手段10B,操作手段10C,表示手段10Dのほかに,少なくとも監視手段11,推定手段12および通信手段13としての機能を有している。 【0104】 ここで,監視手段11は,各利用者による利用者端末10の操作手段10Cの操作状況を監視する操作状況監視手段と,各利用者の離席状況(在席/離席の判断,離席時の位置の監視,離席時間の計測)を監視する離席監視手段としての機能を有する。」 (オ)「【0120】 また,利用者が利用者端末10を操作可能な位置から操作不可能な位置へ離席している否かの判断は,上述のようなICカードを用いた手法以外にも以下のような手法もある。例えば,・・・(中略)・・・ほぼ常時,キーボードやマウスを操作する職種(データ入力等)の場合であればキーボードやマウスが操作されているか否かにより利用者が離席しているか否かを判定してもよい。」 (カ)「【0121】 推定手段12は,監視手段11での監視結果を受けて各利用者端末10における作業効率の推定処理を行うものである。なお,この推定手段は,利用者端末10側の推定手段12あるいは後述するサーバ20側の推定手段22の少なくとも一方を備えて構成されていればよい。」 (キ)「【0123】 管理サーバ20は,上述したようにLAN30を介して各利用者端末10と相互に通信可能に接続され,各利用者端末10を用いた作業についての作業効率を推定して利用者を評価し,該評価結果により管理するものであり,所定のプログラム(作業効率推定プログラム/管理プログラム)を実行する処理部としてのCPU20A(監視手段21,推定手段22,通信手段23,管理手段24)メモリやHDDなどの記憶手段20Bなどを備えて構成されている。また,必要に応じて,キーボード等の操作手段20C,ディスプレイなどの表示手段20Dを備えて構成されている。」 (ク)「【0125】 監視手段21は,利用者5が所持するICタグ60や携帯電話61などを,利用者位置検知部70がICタグリーダ71や携帯電話電波中継器の受信部72で読み取って得た結果を参照し,利用者5が在席しているか(図2(a)),あるいは,利用者5の位置(図2(b)(c))や行き先(図2(d))を把握するよう構成されている。この場合,監視手段21は,離席監視手段として作用する。また,監視手段21が,監視手段11と協働して,利用者端末10での操作状況を監視してもよい。 【0126】 推定手段22は,通信手段23によって受信された各利用者端末10の操作状況(各利用者端末10から通知された,監視手段11による監視結果),あるいは,監視手段21での監視結果に基づいて,各利用者による利用者端末10を用いた作業についての作業効率を推定し,その推定結果を管理手段24に通知するものである。」 (ケ)「【0154】 〔1-1-7〕操作状況として利用者の離席時間を監視している場合: 利用者端末10を操作することにより業務を遂行する職種においては,少なくとも利用者がその利用者端末10の設置場所(デスク)に在席していなければ,利用者は業務を遂行していないことになるので,例えば,業務時間内における,利用者が自分のデスクから離席している時間の割合(離席率)が高いほど,逆に言えば利用者が自分のデスクに在席している時間の割合(在席率)が低いほど,作業効率(生産性)は低いと推定することが可能である。そこで,この場合,推定手段22は,上述のごとく監視手段11によって得られた離席時間に基づいて,所定時間(単位時間/勤務時間/業務時間)当たりの離席率を算出し,その離席率が高いほど作業効率を低く推定する。つまり,離席率は,利用者が出勤してから退勤するまでの時間(出退勤管理部40によって得られる)もしくは利用者が自分の利用者端末10を起動してからオフするまでの時間で,離席時間を除算して得ることができる。」 前記(ア)?(ケ)によれば,刊行物1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。 <引用発明> 「ネットワーク30を介して,利用者端末10,管理サーバ20,出退勤管理部40および利用者位置検知部70を接続して構築され, 出退勤管理部40は,利用者が出勤時や退勤時に非接触ICカード等をICカードリーダにかざした場合に,利用者の出退勤やその時刻を管理するようになっており,この出退勤情報は管理サーバ20に通知され, 出退勤管理部40の機能は,管理サーバ20内の監視手段21が兼ね備えてもよく, 利用者端末10は, 操作手段10Cと監視手段11とを有し, 当該監視手段11は,操作手段10Cの操作状況を監視する操作状況監視手段と,各利用者の離席状況(在席/離席の判断,離席時の位置の監視,離席時間の計測)を監視する離席監視手段としての機能を有し, 管理サーバ20は, 各利用者端末10を用いた作業についての作業効率を推定して利用者を評価し,該評価結果により管理するものであり,監視手段21,推定手段22,通信手段23,管理手段24,などで構成され, 通信手段23は,各利用者端末10から送信されてくる,監視手段11による監視結果,利用者位置検知部70によって検知された利用者の位置などを受信し, 監視手段21は,利用者5が所持するICタグ60などを,利用者位置検知部70がICタグリーダ71で読み取って得た結果を参照し,利用者5が在席しているかを把握するよう構成され,この場合,監視手段21は,離席監視手段として作用し,また,監視手段21が,利用者端末10の監視手段11と協働して,利用者端末10での操作状況を監視してもよく, 推定手段22は,各利用者端末10から通知された監視手段11による監視結果,あるいは,監視手段21での監視結果に基づいて,各利用者による利用者端末10を用いた作業についての作業効率を推定し,その推定結果を管理手段24に通知し, 情報処理装置を操作することにより業務を遂行する職種においては,情報処理装置の設置場所に在席していなければ業務を遂行していないことになるので,推定手段22は,利用者端末10の監視手段11によって得られた離席時間を,出退勤管理部40によって得られた出勤してから退勤するまでの時間で除算して離席率を算出し,その離席率が高いほど作業効率を低く推定し,これにより,管理者等は,作業効率の推定値を正確に把握して,各従業員の評価・管理をより正確に行なうことが可能になり, 離席している否かの判断は,常時,キーボードやマウスを操作する職種の場合であれば,キーボードやマウスが操作されているか否かにより判定してもよい,管理システム。」 イ.刊行物2(特開平11-85859号公報) 原査定の拒絶の理由において,請求項1に対して引用された特開平11-85859号公報(以下,「刊行物2」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,オフィスシステムとして用いられる通信システムに係り,特に自宅に設置されたコンピュ一夕とオフィスに設置されたコンピュータとをネットワークで接続して,自宅のコンピュータを使用して業務を行う場合に用いて好適な通信システムの在宅勤務時間管理方法のプログラム情報を格納したコンピュータ読取り可能な記憶媒体に関する。」 (イ)「【0021】図4は第1の実施形態における個人用コンピュータ10の処理の流れを示すフローチャートである。個人用コンピュータ10の操作者は,自宅にて業務を行うに際し,図3の操作画面にて業務アイコン31を選択した後,業務プログラム2223a,…,223jの操作を開始する(ステップA11)。 【0022】この場合,業務アイコン31を選択すると,業務開始とみなされ,そのときの開始時刻が記録プログラム222により業務履歴データバッファ225に記録される(ステッブA12)。 【0023】次に,操作者は業務プログラム223a,…,223jを操作画面33a,…,33jで操作し(ステップA13),その操作が終わったとき,つまり,業務が終了したときに私用アイコン32を選択する(ステップA14)。 【0024】この場合,業務アイコン31の選択後に私用アイコン32を選択すると,業務終了とみなされ,そのときの終了時刻が記録プログラム222により業務履歴データバッファ225に記録される(ステップA15)。」 (ウ)「【0040】なお,上記第1の実施形態では,図3に示す操作画面にて業務アイコン31が操作された後,私用アイコン32が操作された時刻を業務終了時刻として判断したが,個人用コンピュータ10を停止させた時刻を業務終了時刻として判断しても良い。」 前記(ア)?(ウ)によれば,刊行物2には次の事項が記載されている。 <刊行物2の記載事項> 「自宅のコンピュータを使用して業務を行う場合の在宅勤務時間管理方法において, 個人用コンピュータ10の操作者は,自宅にて業務を行うに際し,操作画面にて業務アイコン31を選択した後,業務プログラム2223a,…,223jの操作を開始し,この場合,業務アイコン31を選択すると,業務開始とみなされ,そのときの開始時刻が記録プログラム222により業務履歴データバッファ225に記録され, 次に,操作者は,業務が終了したときに私用アイコン32を選択し,この場合,業務アイコン31の選択後に私用アイコン32を選択すると,業務終了とみなされ,そのときの終了時刻が記録プログラム222により業務履歴データバッファ225に記録され, また,個人用コンピュータ10を停止させた時刻を業務終了時刻として判断しても良い, 在宅勤務時間管理方法。」 (2) 対比 次に,補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)「情報分析装置」について 引用発明の「管理サーバ20」が利用者の作業効率を推定することは,ユーザの業務量を分析することにほかならない。したがって,当該「管理サーバ20」は,補正発明の「情報分析装置」に対応する。 (イ)「入力手段」について 引用発明の管理サーバ20に設けられた「通信手段23」は,各利用者端末10から送信されてくる,監視手段11による監視結果を受信する。この監視結果には,操作履歴である,利用者端末10の操作手段10Cに対する操作状況が含まれている。 したがって,当該「通信手段23」は,補正発明の「入力装置に対する操作履歴を含む,端末装置におけるユーザの操作履歴を入力する入力手段」に相当する。 (ウ)「業務ロス時間決定手段」について 引用発明の管理サーバ20に設けられた「監視手段21」は,離席監視手段として作用するが,この離席監視手段は,利用者5が所持するICタグ60などを,利用者位置検知部70がICタグリーダ71で読み取って得た結果を参照し,利用者5が在席しているかを把握し,業務を遂行していないことになる離席時間を計測する機能を有する。 したがって,当該「監視手段21」と,補正発明の「前記入力手段により入力された操作履歴から前記ユーザに課せられた業務に関連しない作業時間を抽出し,抽出した作業時間を業務ロス時間として決定する業務ロス時間決定手段」は,「前記ユーザに課せられた業務に関連しない作業時間を抽出し,抽出した作業時間を業務ロス時間として決定する業務ロス時間決定手段」の点で共通する。 ただし,引用発明の「監視手段21」は,利用者5が所持するICタグ60などを,ICタグリーダ71で読み取った結果から離席時間(すなわち,ユーザに課せられた業務に関連しない作業時間)を抽出するのに対し,補正発明の業務ロス時間決定手段は,「前記入力手段により入力された操作履歴から」上記作業時間を抽出する点で相違する。 (エ)「就業時間決定手段」について 引用発明の管理サーバ20に兼ね備えられた場合の「出退勤管理部40」は,利用者が出勤時や退勤時に非接触ICカード等をICカードリーダにかざした場合に,利用者の出退勤やその時刻を管理するが,出退勤の時刻を管理することは,出勤時刻から退勤時刻までの就業時間を決定することといえる。 したがって,引用発明の「出退勤管理部40」と,補正発明の「前記入力手段により入力された操作履歴に含まれる前記入力装置に対する操作履歴から前記端末装置に操作がされなくなった時刻を取得し,当該時刻を最終操作時刻として決定し,所定時刻から前記最終操作時刻までの時間を就業時間として決定する就業時間決定手段」は,「就業時間を決定する就業時間決定手段」の点で共通する。 ただし,引用発明は,非接触ICカード等をICカードリーダにかざした時刻により就業時間を決定するのに対し,補正発明では「前記入力手段により入力された操作履歴に含まれる前記入力装置に対する操作履歴から前記端末装置に操作がされなくなった時刻を取得し,当該時刻を最終操作時刻として決定し,所定時刻から前記最終操作時刻までの時間を就業時間として決定」し,「前記ユーザが前記端末装置をシャットダウンしなかった場合にも前記端末装置に操作がされなくなった時刻を最終操作時刻として決定し,前記所定時刻から当該最終操作時刻までの時間を前記就業時間として決定」する点で相違する。 (オ)「分析手段」について 引用発明の管理サーバ20に設けられた「推定手段22」は,利用者端末の監視手段11による監視結果,あるいは,管理サーバ20の監視手段21による監視結果に基づいて作業効率を推定する。この作業効率の推定は,離席時間すなわち業務ロス時間と,出退勤管理部40によって得られた出勤してから退勤するまでの時間すなわち就業時間とから離席率を算出し,その離席率が高いほど作業効率を低く推定するものである。 したがって,当該「推定手段22」は,補正発明の「業務ロス時間と前記就業時間とに基づいて前記ユーザの業務量を分析する分析手段」に相当する。 (カ)「出力手段」について 引用発明の管理サーバ20に設けられた「管理手段」は,利用者の作業効率を管理するが,管理者等はこの作業効率を把握して利用者の評価・管理を行なうことから,管理者に作業効率(分析結果)の情報を出力していることは明らかである。 したがって,当該「管理手段」は,補正発明の「前記分析手段による分析結果を出力する出力手段」に相当する。 したがって,補正発明と引用発明の管理サーバ20は,次の点で一致する。 <一致点> 「入力装置に対する操作履歴を含む,端末装置におけるユーザの操作履歴を入力する入力手段と, 前記ユーザに課せられた業務に関連しない作業時間を抽出し,抽出した作業時間を業務ロス時間として決定する業務ロス時間決定手段と, 就業時間を決定する就業時間決定手段と, 前記業務ロス時間と前記就業時間とに基づいて前記ユーザの業務量を分析する分析手段と, 前記分析手段による分析結果を出力する出力手段, を備えた, 情報分析装置。」 他方,補正発明と引用発明の管理サーバ20は,次の点で相違する。 <相違点1> 業務ロス時間決定手段が,補正発明では,「前記入力手段により入力された操作履歴から」ユーザに課せられた業務に関連しない作業時間を抽出するのに対し,引用発明では,利用者5が所持するICタグ60などを,ICタグリーダ71で読み取った結果から,業務に関連しない作業時間(離席時間)を抽出する点。 <相違点2> 就業時間決定手段が,補正発明では「前記入力手段により入力された操作履歴に含まれる前記入力装置に対する操作履歴から前記端末装置に操作がされなくなった時刻を取得し,当該時刻を最終操作時刻として決定し,所定時刻から前記最終操作時刻までの時間を就業時間として決定」し,「前記ユーザが前記端末装置をシャットダウンしなかった場合にも前記端末装置に操作がされなくなった時刻を最終操作時刻として決定し,前記所定時刻から当該最終操作時刻までの時間を前記就業時間として決定する」のに対し,引用発明では,利用者が出勤時や退勤時に非接触ICカード等をICカードリーダにかざした場合に,利用者の出退勤やその時刻を管理し,この出退勤時刻により就業時間を決定する点。 (3) 判断 上記相違点について検討する。 <相違点1>について 引用発明は,離席している否かを判断するための他の例として,「常時,キーボードやマウスを操作する職種の場合であれば,キーボードやマウスが操作されているか否かにより判定」する例を示している。 したがって,引用発明において,離席している否かを判定するために,利用者5が所持するICタグ6を読み取るのに代えて,キーボードやマウスが操作されているか否か,すなわち,「前記入力手段により入力された操作履歴から」判定し,上記相違点に係る構成とすることは容易に想到し得ることである。 <相違点2>について 刊行物2に記載された在宅勤務時間管理方法は,操作者が私用アイコン32を選択したときの時刻を業務終了時刻とし,あるいは,個人用コンピュータ10を停止させた時刻を業務終了時刻とするものである。 操作者が私用アイコン32を選択したときの時刻は,操作者が業務終了を示す操作をした時刻であり,操作がされなくなった時刻ではない。 また,個人用コンピュータ10を停止させた時刻も,操作者が停止させるという業務終了を示す操作をした時刻であり,操作がされなくなった時刻ではない。 したがって,補正発明の「前記入力手段により入力された操作履歴に含まれる前記入力装置に対する操作履歴から前記端末装置に操作がされなくなった時刻を取得し,当該時刻を最終操作時刻として決定し,所定時刻から前記最終操作時刻までの時間を就業時間として決定」すること,及び,「前記ユーザが前記端末装置をシャットダウンしなかった場合にも前記端末装置に操作がされなくなった時刻を最終操作時刻として決定し,前記所定時刻から当該最終操作時刻までの時間を前記就業時間として決定する」ことは,刊行物2に記載されておらず,示唆もされていない。 したがって,相違点2に係る補正発明の構成は,引用発明に刊行物2の記載事項を適用したとしても容易に想到し得るものではなく,補正発明は,引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって,本件補正の補正事項1は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 本件補正のその余の補正事項についても,特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。 3.むすび 本件補正は,特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり,特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから,本願の請求項1-8に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして,本願については,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-03-28 |
出願番号 | 特願2011-9173(P2011-9173) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06Q)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 阿部 潤 |
特許庁審判長 |
金子 幸一 |
特許庁審判官 |
石川 正二 手島 聖治 |
発明の名称 | 情報分析装置、情報分析方法、情報分析システムおよびプログラム |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 下山 治 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 大塚 康徳 |