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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1312684
審判番号 不服2015-4151  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-03 
確定日 2016-03-23 
事件の表示 特願2012-519090「生理学的パラメータの視覚化」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月13日国際公開、WO2011/004288、平成24年12月13日国内公表、特表2012-531996〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年(平成22年)6月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年7月6日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、
平成24年3月6日付けで手続補正がなされ、平成26年1月31日付けで拒絶理由が通知され、同年5月9日付けで意見書が提出されたが、同年10月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年3月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。


第2 本願発明

平成27年3月3日付けの手続補正により、特許請求の範囲は、明りょうでない記載の釈明及び請求項の削除を目的として補正され、その請求項1ないし11に係る発明は、平成27年3月3日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「 画像取得装置、処置装置、処理装置、及び表示装置を有する、対象物に関する情報を供する医療イメージング装置であって、
前記画像取得装置は、対象物の関心領域のうちの少なくとも1つから対象物データを検出し、かつ、前記対象物データを、前記処理装置へ供し、
前記処置装置は、前記対象物に対する前記処置装置の所定領域の位置に依存する前記対象物の生理学的パラメータを検出し、かつ、前記生理学的パラメータを、前記処理装置へ供し、
前記処理装置は、前記対象物データの少なくとも一部を画像データに変換し、かつ、前記生理学パラメータを生理学データに変換し、
前記処理装置は、前記生理学データに依存する前記画像データの画像パラメータの少なくとも1つを修正することで、前記画像データを、修正された生体画像データに変換し、
前記処理装置は、前記修正された生体画像データを前記表示装置に供し、
前記表示装置は、前記修正された生体画像を表示する、
装置。」

ここで、「処理装置」に関して、「前記対象物データの少なくとも一部を画像データに変換し、かつ、前記生理学パラメータを生理学データに変換し、」とあるが、これ以前に「生理学パラメータ」の記載はないこと、及び、「処置装置」が「生理学的パラメータを、前記処理装置へ供」することが特定されていることから、「前記生理学パラメータ」は「前記生理学的パラメータ」の誤記と認める。


第3 引用例

1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-160212号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。)。

(1)「【0001】
本発明は一般に心臓の形状的および電気的なマッピング処理のための侵襲性の方法に関連しており、特に、心臓における融除または焼灼処理により形成される種々の外傷部位のリアル-タイム・モニターおよびマッピングのための方法に関連している。」

(2)「【0021】
本発明の好ましい実施形態において、一定のリアル-タイム式の心臓融除マッピング・システムは一定のカテーテルおよび一定の表示モニターを備えている。このカテーテルは好ましくは一定の位置センサー、先端電極、および1個以上の温度センサーを備えており、これらの全ては好ましくは当該カテーテルの先端部分またはその近くに固定されている。上記位置センサーは一定の被験者の心臓の室部の中における上記カテーテルの位置および配向を決定するために用いられる種々の信号を発生または受信する。また、上記先端電極は好ましくは心臓組織を融除するための電気的信号を心臓に供給するように構成されていて、心臓のマッピング処理を容易にする等のような診断目的のために構成されていることも好ましい。一定の心臓の融除処置中に、上記カテーテルは心臓の室部の中に挿入されて、複数の心臓の周期中において、位置情報および上記温度センサーにより発生される電力情報および温度情報を含む融除処理中に上記先端電極により供給される一定の電力供給量に関する情報を得るために用いられる。さらに、これらの位置情報および電力供給量の情報を用いて、一定の3次元的な、好ましくは色コード化された融除外傷領域の再構成情報が上記モニター上においてリアル・タイムで発生および表示される。
【0022】
好都合にも、本発明の実施形態は上記システムの使用者が一定の処置中にリアル-タイムで、心臓の室部のどの表面領域が融除されているか、およびどの領域がその融除電極の適用または再適用を必要としているかを視覚的に決定することを可能にしている。この結果として、過剰の心臓組織の不要な融除を伴わずに、比較的に完全な非導電性の外傷部位が一般的に形成される。
【0023】
本発明の一部の好ましい実施形態において、心臓の室部における一定の形状的および電気的なマップが上記融除処置の開始前に得られる。この融除処置中において、その融除の外傷領域の再構成情報が(例えば、温度データに応じて)リアル-タイムで予め得られている心臓のマップ上に重ね合わされる。
【0024】
好ましくは、上記先端電極は一定の単極型電極を含む。この場合に、上記マッピング・システムは好ましくはさらに当該マッピング・システムにより形成される電気回路を完成するために一定のバック-パッド電極またはその他の大形の電極を含む。このバック-パッド電極は好ましくは上記の処置中に心臓の近くにおける被験者の背中の皮膚に接触するように位置決めされる。上記融除エネルギーの供給量は好ましくは上記先端電極とバック-パッド電極との間におけるインピーダンスの測定値にさらに応じて計算される。あるいは、上記先端電極は一定の二極式または多極式の電極を含み、この場合に、この電極の各極の間のインピーダンスの測定値が用いられることが好ましい。」

(3)「【0028】
上記融除電力発生装置は好ましくは融除を行なうために上記先端電極により使用される電力を発生する。上記融除電力発生装置は以下の(a)上記温度センサーの温度、(b)心臓室部の組織に供給される電力、および(c)インピーダンスの測定値の1個以上を付加的に測定する。この融除電力発生装置は上記エネルギー供給情報を上記位置決めシステム制御装置および/または上記ECGモニターに送信する。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、一定の融除処置中に一定の被験者の心臓内における組織を融除するための方法が提供されており、この方法は
融除のために指定されている複数の部位において上記心臓に局所的な治療を施す処理、
上記部位に一定量の融除を示す一定のパラメーターを各部位において感知する処理、
上記心臓の一定のマップを表示する処理、および
それぞれの感知したパラメーターに応じて上記各部位における融除のそれぞれの量の指示値を上記マップ上に指定する処理を含む。」

(4)「【0038】
一部の好ましい実施形態において、上記パラメーターを感知する処理は上記部位の温度を感知する処理を含む。また、一部の用途において、上記パラメーターを感知する処理は上記部位において感知される一定の最高温度を決定する処理を含む。あるいは、または、さらに、上記パラメーターを感知する処理は上記部位における一定の最高温度の時間勾配を決定する処理を含む。」

(5)「【0055】
図1は本発明の好ましい実施形態による一定の被験者25の心臓24の中の心臓融除治療におけるリアル-タイム・マッピング処理のためのマッピング・システム10の概略的な絵画図である。このシステム10は心臓の室部の中に被験者の一定の静脈または動脈を通して一定の使用者22により挿入される好ましくは一定のカテーテル30等の一定の細長いマッピング・プローブを備えている。
【0056】
図2は心臓24の中に挿入されているカテーテル30の先端側部分を示している概略的な絵画図である。カテーテル30は好ましくは少なくとも1個の位置センサー40、先端電極48、および1個以上の温度センサー49を備えており、これらの全ては好ましくは当該カテーテルの先端部分44またはその近くに固定されている。各温度センサー49は、例えば、熱電対および/またはサーミスタを含む。位置センサー40は心臓の室部の中における上記カテーテル30の位置および配向を決定するために用いられる種々の信号を発生または受信する。先端電極48は好ましくは心臓組織を融除するために心臓24に種々の電気的信号を供給するように構成されていて、好ましくはさらに心臓のマッピング処理等のような診断目的のために構成されている。あるいは、種々の診断目的および心臓組織の融除のために分離している複数の電極が備えられている。好ましくは、これらの位置センサー40、先端部分44および先端電極48の一定の固定された位置および配向の関係が存在している。随意的に、上記カテーテル30はさらに少なくとも1個の付加的な位置センサー(図示されていない)を備えている。」

(6)「【0058】
再び図1を参照して、本発明の好ましい実施形態において、マッピング・システム10は一定の表示モニター52および一定のコンソール20を備えており、このコンソール20は好ましくは一定の位置システム制御装置36、融除電力発生装置38、ジャンクション・ボックス32、心電図(ECG)記録および/またはモニター・システム34、および一定のコンピュータ50を含み、このコンピュータ50は好ましくは当該コンピュータのハウジング内に一般的に収容されている適当な信号処理回路を有している。好ましくは、このコンピュータ50は本明細書において記載されている種々の機能を実行するためのソフトウェアおよび/またはハードウェアにおいてプログラム化されている。このソフトウェアは、例えば、一定のネットワーク上において、電子形態で上記コンピュータにダウンロード可能であり、あるいは、磁気または光学的な媒体またはその他の不揮発性のメモリー等のような有形の媒体において備えることができる。一部の実施形態において、コンピュータ50は一定の汎用性のコンピュータを含む。
【0059】
ジャンクション・ボックス32は好ましくは(a)種々のワイヤおよび温度センサー信号をカテーテル30から融除電力発生装置38に伝達し、(b)カテーテル30のセンサー40から位置センサー情報を位置決めシステム制御装置36に伝達し、さらに(c)先端電極48により発生された診断電極信号をECGモニター34に伝達する経路を構成する。あるいは、または、さらに、このジャンクション・ボックス32は上記信号の1個以上をコンピュータ50に直接的に伝達する経路を構成する。ECGモニター34は好ましくは一定のECG同期化信号をコンピュータ50に供給ために1個以上の身体表面電極から信号を受信するように連結されている。
【0060】
一定の位置決めシステム11は好ましくは一組の外部放射体28、カテーテル30の位置センサー40および任意の付加的な位置センサー、および位置決めシステム制御装置36を備えている。外部放射体28は好ましくは被験者25の外部におけるそれぞれの位置において配置されて位置センサー40に向けて種々の電磁場等のような場を発生することに適合しており、この位置センサー40はこれらの場を検出してこれらの場に応じて位置決めシステム制御装置36によるその位置座標の計算を容易にすることに適合している。あるいは、位置センサー40が種々の場を発生して、これらの場がそれぞれの外部放射体28により検出される。一部の用途において、一般的に被験者の身体の外部に取り付けられている外部から供給される基準パッチの上、あるいは一定の内部に配置されているカテーテル上のいずれかにおける一定の基準位置センサーが心臓24に対して概ね固定された位置に維持される。カテーテル30の位置をこの基準カテーテルの位置に対して比較することにより、このカテーテル30の座標が被験者の動きに無関係にその心臓に対して正確に決定される。あるいは、任意の別の適当な方法を上記の動きを補正するために用いることができる。
【0061】
上記位置決めシステム制御装置36は位置センサー40からの信号(または位置センサー40が種々のエネルギーの場を発生する場合における各外部放射体28からの信号)を受信し、センサー40およびカテーテル30の位置を計算し、さらにこれらの位置情報および当該位置情報に関連しているエネルギー供給量の情報(以下において説明されているような融除電力発生装置38から受信される)をコンピュータ50に伝達する。この位置決めシステム制御装置は好ましくは(a)実質的に連続的に、(b)1秒当たりに約1回乃至10回の間において、あるいは(c)1回の心臓周期当たりに1回の割合で位置情報を発生して送信する。
【0062】
上記融除電力発生装置38は好ましくは融除を行なうために先端電極48により用いられる電力を発生する。好ましくは、この融除電力発生装置はRF融除を行なうためのRF電力を発生する。あるいは、または、さらに、この融除電力発生装置はレーザー融除、低温融除、超音波融除、放射能誘発型融除、または化学的誘発型融除等のような別の融除技法の手段による融除方式も含む。好ましくは、一定の心臓マップ上における融除領域を確認することを容易にするために適当なフィードバック技法が適用される。
【0063】
加えて、上記融除電力発生装置38は以下の、すなわち、(a)温度センサー49の温度、(b)先端電極48により心臓の室部の組織に供給される電力、および(c)以下において説明されているようなインピーダンスの測定値(これらを総括して、上記の「エネルギー供給量情報(energy dose information)」と言う)の内の1個以上を測定する。この融除電力発生装置はこのエネルギー供給量情報を好ましくは一定のシリアル通信回線を介して上記の位置システム制御装置46(当審注:「位置システム制御装置46」は「位置決めシステム制御装置36」の誤記と認める。)および/またはECGモニター34に送信する。あるいは、または、さらに、この融除電力発生装置は上記コンピュータ50に直接的にこの情報の一部または全てを送信する。さらに、この融除電力発生装置は好ましくは上記エネルギー供給量情報を(a)実質的に連続的に、(b)1秒当たりに約1回乃至10回の間において、(c)1回の心臓周期当たりに1回の割合で測定して送信する。」

(7)「【0065】
本発明の好ましい実施形態において、一定の心臓融除処置の前に、カテーテル30が心臓の一定の室部内に挿入されて、その心臓の室部の表面に関する形状的および電気的な情報を取得および記録するために用いられる。好ましくは、多数の心臓周期にわたり、一定の容易に確認可能な注釈の時点において位置および電気的な情報が得られる。その後、好ましくは、本明細書に参考文献として含まれていて、本明細書において記載されている種々の技法と共に使用することに適合している、上記のレイスフェルド(Reisfeld)に発行されている米国特許第6,226,542号および同第6,301,496号、ベン-ハイム(Ben-Haim)他に発行されている欧州特許出願(EP)第1125549号およびこれに対応する米国特許出願第09/506,766号、および/またはゴバリ(Govari)に発行されている同時係属の米国特許出願第09/598,862号において記載されている技法により、この情報に基づく一定の形状的および電気的なマップ(一定の「電気解剖学的活性マップ(electroanatomical activation map)」)が形成される。好ましいが、必ずしも必要ではないこととして、上記電極からの電気的信号は本特許出願の譲受人に譲渡されていて本明細書に参考文献として含まれる「アパレイタス・アンド・メソッド・フォー・メジャリング・ア・プルーラリテイ・オブ・エレクトリカル・シグナルズ・フロム・ザ・ボデイ・オブ・ア・ペイシェント(Apparatus and method for measuring a plurality of electrical signals from the body of a patient)」を発明の名称とする2001年3月13日に出願されている同時係属の米国特許出願09/805,093号において記載されている技法を用いて測定される。あるいは、または、さらに、一定の電気解剖学的な電圧の大きさのマップが得られる。
【0066】
あるいは、前の心臓処置中に形成された一定の心臓マップが用いられる。さらに、代替的に、一定の心臓マップは一定の画像処理様式(例えば、X線透視法、MRI、心エコー検査、CT、シングル-フォトン・コンピュータ連動断層撮影(SPECT)、またはポジトロン・エミッション連動断層撮影(PET))等のような別の供給源により得ることができ、上記カテーテルの位置がこのマップ上に可視化される。この場合に、上記コンピュータ50はこのマップ上における融除外傷部位の位置を標識する。あるいは、一部の用途において、一定の心臓マップが得られず、この場合に、融除外傷部位の一定のマップのみが以下において説明されているように形成される。」

(8)「【0067】
図3は本発明の好ましい実施形態による一定の心臓の室部内に形成した外傷部位をマッピングするための方法を概略的に示しているフロー・チャートである。上述したように、心臓室部の一定の形状的および電気的なマッピングを形成した後に、使用者22は融除処理を行なう心臓室部の表面領域にカテーテル30を進行させる。融除エネルギーをこの心臓の表面に対して供給する際に、融除電力発生装置38が、好ましくは継続的に、上述したようにそのエネルギー供給量を測定する。好ましくは、各心臓周期において、コンピュータ50は、取得および同期化工程70において、(a)心臓周期内の注釈点におけるカテーテル30の先端部分44の位置に対する位置情報および(b)その心臓周期中に得られるエネルギー供給量情報を受信する。融除処理を行なう各心臓周期に対して、このコンピュータは一定の3次元の融除マッピング点を計算するための位置情報を使用する。さらに、このコンピュータは上記エネルギー供給量情報に対して上記位置情報を同期化するためにECGモニター34により発生される一定のECG信号を使用する。各心臓周期において、このコンピュータは好ましくは、同期化工程72において、一連の測定値に対して上記注釈点における先端部分44の位置を付随させる。
【0068】
次に、室部再構成工程において、上記コンピュータ50は上記工程70の各反復処理において発生される融除マッピング点を接続している一定の3次元的な表面を形成する。好ましくは、一定の心臓マップを形成することに関連して上記において説明されている種々の技法が用いられる。さらに、一定の心臓表面のマップが融除処理を開始する前に得られていれば、上記の融除マッピング点がこの既存のマップに加えられることが好ましい。好ましくは、上記融除外傷部位の表面積は、区分工程76において小さな平面状の複数の部分、好ましくは三角形に、区分される。好ましくは、これらの三角形のセグメントは約3ミリメートルの平均の一辺の長さを有しており、この理由は、このような面積が少なくとも1個の融除マッピング点を含むのに一般に十分であるからである。あるいは、このマッピング空間は一定のボクセル(voxels)の格子の中に区分されており、各ボクセルは好ましくは2ミリメートル×2ミリメートル×2ミリメートルの各寸法を有している。
【0069】
次に、上記コンピュータ50は、供給量/セグメント関連付け工程78において、各セグメント内における融除マッピング点のエネルギー供給量情報に応じて各セグメントに対応する表示値を発生する。好ましくは、使用者22は各セグメントに対応する表示値を発生するために使用者に対するコンピュータの幾つかの機能の内の少なくとも1個を選択する。このような機能の例は
・エネルギー供給量値:一定のセグメントに対応するエネルギー供給量値は、各測定されたエネルギー供給量iにわたる、(そのセグメントにおける測定されたエネルギー供給量i)×(供給量iの測定値と供給量i-1の測定値との間の時間的間隔)/(そのセグメントの面積)の合計として計算される。(この面積は一般的に各セグメントがボクセルである場合に一定である。)任意の時間において、各セグメントの表示値は以下の式により表現される一定のセグメント内に配給される合計のエネルギーを示す。
【数1】
E|_(segment)=∫P|_(segment)dt
この場合に、Eはジュール単位におけるエネルギー値を示しており、Pはワット単位における電力値を示しており、tは秒単位における時間を示している。一定の2mm×2mm×2mmのボクセル・セグメントに対応するエネルギー供給量値は一般的に0乃至5,000ジュールである。
・最高温度:各測定期間における各融除マッピング点に対応する平均温度が計算される。任意の時間において、各セグメントの表示値はその融除処置中のセグメント内おいて測定した最高温度の融除マッピング点の温度に等しい。このような温度の値は一般的に37乃至100℃である。
・最高温度の時間勾配:各融除マッピング点における温度勾配はその融除マッピング点に対応する時間データにわたる温度に関して行なわれる一定の線形の回帰における傾斜に等しい。この表示値は一定のセグメント内における最高の値に等しい。好ましくは、この表示値は経験的なデータに基づいて用いられる温度および電力の各値に対応して予測される温度勾配によりこの値を割ることにより標準化される。この温度勾配の値は一般的に1秒当たりに0乃至20度である。
・平均のインピーダンス:この表示値は一定のセグメントにおける各融除マッピング点の平均のインピーダンスに等しい。このインピーダンス値は一般に末端電極48と融除中の組織との間の接触の質の良好な指示手段である。平均のインピーダンス値は一般的に50乃至500オームである。
・組み合わせの値:この表示値はエネルギー供給量情報および/または、例えば、エネルギー×インピーダンスまたはエネルギー×最高温度等のような上記の種々の機能の一定の組み合わせとして計算される。」

(9)「【0073】
さらに、上記コンピュータ50は、色変換工程80において、一定の色尺度により各セグメントの適当と思われる表示値または重み付けした表示値を色に変換する。その後、コンピュータ50は、マップ表示工程82において、各セグメントの表示値または重み付けした表示値に基づいて色づけした各セグメントに対する融除外傷部位の3次元的な再構成情報を表示する。上記色尺度の例は一定のグレイスケール(最低値を示す黒から灰色の比較的に明るい色合に進行して最高値を示す白に到る範囲)または一定のアイアン・カラー・スケール(最低値を示す黒から青さらに赤から黄色に進行して最高値を示す白に到る範囲)を含む。好ましくは、上記色尺度の種々の色は予め設定されている各表示値の範囲に割当てられていない。むしろ、これらの範囲は任意の融除マップにおける各表示値の全体の範囲に応じて自動的に尺度が設定されることが好ましい。また、一定の心臓マップが融除処理を開始する前に得られる場合には、上記のようにカラー-コード化した各セグメントが好ましくはこの予め得られているマップ上に重ね合わされて、表示モニター52に一緒に表示される。都合の良いことに、使用者22が特定の部位または領域が十分に融除されていないと決定する場合に、この使用者はその部位に戻ってその融除処置を繰り返すことができる。
【0074】
その後、コンピュータ50は、完了検査工程84において、融除処置が行なわれているか否かを調べる。この融除処置が行なわれていない場合には、図3の各工程がその融除処置が終結するまで各心臓周期に対応して繰り返される。一方、融除が終結している場合には、上記コンピュータは、マップ完了工程86において、そのマッピング処理を停止する。図3において示されている各工程の結果として、一定のリアル-タイムの3次元的な融除外傷部位の表示がその融除処置が行なわれている際中に使用者22に対して提供される。」

2 引用例1に記載された発明の認定

上記1(1)ないし(9)を含む引用例1全体の記載を総合すると、引用例1には、

「 被験者25の心臓24の中の心臓融除治療におけるリアル-タイム・マッピング処理のためのマッピング・システム10であって、
カテーテル30、表示モニター52及びコンソール20を備えており、
カテーテル30は、その先端部分44に固定されている少なくとも1個の位置センサー40、先端電極48、及び1個以上の温度センサー49を備えており、
コンソール20は、位置システム制御装置36、融除電力発生装置38、ジャンクション・ボックス32、ECGモニター・システム34、及びコンピュータ50を含み、
コンピュータ50は信号処理回路を有していて、種々の機能を実行するためのソフトウェア及びハードウェアにおいてプログラム化されており、
融除電力発生装置38は、融除を行なうために先端電極48により用いられる電力を発生し、エネルギー供給量情報である、(a)温度センサー49の温度、(b)先端電極48により心臓の室部の組織に供給される電力、及び(c)インピーダンスの内の1個以上を測定し、このエネルギー供給量情報を位置決めシステム制御装置36及びECGモニター・システム34に送信し、
位置決めシステム制御装置36は、位置センサー40からの信号を受信し、位置センサー40及びカテーテル30の位置を計算し、さらにこれらの位置情報及び当該位置情報に関連しており融除電力発生装置38から受信されるエネルギー供給量の情報をコンピュータ50に伝達し、
心臓融除処置の前に、カテーテル30が心臓の室部内に挿入されて、その心臓の室部の表面に関する形状的および電気的な情報を取得および記録するために用いられ、
心臓室部の形状的及び電気的なマッピングを形成した後に、使用者22は融除処理を行なう心臓室部の表面領域にカテーテル30を進行させ、
融除エネルギーをこの心臓の表面に対して供給する際に、融除電力発生装置38が、継続的にエネルギー供給量を測定し、
コンピュータ50は、心臓周期内のカテーテル30の先端部分44の位置に対する位置情報及びその心臓周期中に得られるエネルギー供給量情報を受信し、3次元の融除マッピング点を計算するために位置情報を使用し、一連の測定値に対して先端部分44の位置を付随させ、融除マッピング点を接続している3次元的な表面を形成し、融除処理を開始する前に得られた心臓表面のマップに、融除マッピング点を加え、融除外傷部位の表面積を三角形のセグメントに区分し、各セグメント内における融除マッピング点のエネルギー供給量情報に応じて各セグメントに対応する表示値を発生し、
ここで、使用者22は各セグメントに対応する表示値を発生するために使用者に対するコンピュータの幾つかの機能の内の少なくとも1個を選択するものであって、その機能には最高温度が含まれ、
さらに、コンピュータ50は、一定の色尺度により各セグメントの適当と思われる表示値を色に変換し、各セグメントの表示値に基づいて色づけした各セグメントに対する融除外傷部位の3次元的な再構成情報を表示し、その際、カラー-コード化した各セグメントが予め得られているマップ上に重ね合わされて、表示モニター52に一緒に表示され、
リアル-タイムの3次元的な融除外傷部位の表示がその融除処置が行なわれている際中に使用者22に対して提供される、マッピング・システム10。」

の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。


第4 本願発明と引用発明との対比

本願発明と引用発明とを対比する。

1 装置の全体構成について

(1)引用発明において、カテーテル30は、心臓融除処置の前に、心臓の室部内に挿入されて、その心臓の室部の表面に関する形状的および電気的な情報を取得および記録するために用いられ、心臓室部の形状的及び電気的なマッピングが形成される。ここで、心臓室部の形状的なマッピングが画像であり、その形成がカテーテル30の先端部分44に固定されている位置センサー40からの信号に基づいていることは明らかである。
よって、引用発明の「位置センサー40」は、本願発明の「画像取得装置」に相当する。

(2)引用発明の「カテーテル30」は、その先端部分44に固定されている先端電極48により融除治療を施すものであるから、本願発明の「処置装置」に相当する。

(3)引用発明の「コンソール20」は、本願発明の「処理装置」に相当する。

(4)引用発明の「表示モニター52」は、本願発明の「表示装置」に相当する。

(5)引用発明の「被験者25の心臓24」は、本願発明の「対象物」に相当する。

(6)引用発明の「マッピング・システム10」は、画像である心臓室部の形状的なマッピングを形成して表示し、3次元的な融除外傷部位の表示を使用者22に対して提供するものであるから、本願発明の「対象物に関する情報を供する医療イメージング装置」に相当する。

2 画像取得装置について

(1)引用発明の「心臓の室部」は、本願発明の「関心領域」に相当する。

(2)引用発明の「位置センサー40からの信号」は、「被験者25の心臓24」の室部の位置を表すものであり、室部の位置は、「被験者25の心臓24」に関するデータにほかならない。

(3)よって、引用発明において、「コンソール20」の「位置決めシステム制御装置36は、位置センサー40からの信号を受信」することは、「コンソール20の位置決めシステム制御装置36は、位置センサー40からの、被験者25の心臓24の室部の位置を表す信号を受信」することであり、本願発明の「画像取得装置は、対象物の関心領域のうちの少なくとも1つから対象物データを検出し、かつ、前記対象物データを、前記処理装置へ供」することに相当する。

3 処置装置について

(1)引用発明の「カテーテル30」は、その先端部分44に固定されている温度センサー49により、エネルギー供給量情報である温度を検出することができるものである。
ここで、エネルギー供給量情報は融除処理の程度を表すパラメータであると認められるところ、引用例1の段落【0029】の「融除のために指定されている複数の部位において上記心臓に局所的な治療を施す処理、上記部位に一定量の融除を示す一定のパラメーターを各部位において感知する処理」及び段落【0038】の「一部の好ましい実施形態において、上記パラメーターを感知する処理は上記部位の温度を感知する処理を含む。また、一部の用途において、上記パラメーターを感知する処理は上記部位において感知される一定の最高温度を決定する処理を含む。」との記載を参酌するに、引用発明において温度センサー49により検出する温度は、融除のために指定されている複数の部位の温度、すなわち、被験者25の心臓24の室部の温度である場合を包含するものである。

(2)そして、被験者25の心臓24の室部の温度が、生理学的パラメータであって、カテーテル30の位置、すなわち、検出位置に依存する情報であることは明らかである。

(3)よって、引用発明において、「コンソール20」の「融除電力発生装置38は」、「エネルギー供給量情報である」、「カテーテル30」の「温度センサー49の温度」「を測定」することは、本願発明の「処置装置は、前記対象物に対する前記処置装置の所定領域の位置に依存する前記対象物の生理学的パラメータを検出し、かつ、前記生理学的パラメータを、前記処理装置へ供」することに相当する。

4 処理装置について

(1)引用発明において、「心臓室部の形状的及び電気的なマッピング」の形成が、「コンピュータ50」によって行われることは明らかである。
よって、引用発明において、「コンソール20」の「位置決めシステム制御装置36は、位置センサー40からの信号を受信し、位置センサー40及びカテーテル30の位置を計算し、さらにこれらの位置情報」を「コンピュータ50に伝達し」、「心臓室部の形状的」「なマッピングを形成」することは、本願発明の「処理装置は、前記対象物データの少なくとも一部を画像データに変換」することに相当する。

(2)引用発明の「各セグメントに対応する表示値」である「最高温度」は、被験者25の心臓24の室部の特定の位置における温度の最高値を表すものであるから、生理学データであることは明らかである。
よって、引用発明において、「各セグメントに対応する表示値を発生するために使用者に対するコンピュータの幾つかの機能の内」から「最高温度」が選択された場合に、「コンソール20」の「コンピュータ50は」、「各セグメント内における融除マッピング点のエネルギー供給量情報に応じて各セグメントに対応する表示値を発生」することは、本願発明の「処理装置は」、「前記生理学パラメータを生理学データに変換」することに相当する。

(3)引用発明は、「コンピュータ50は、一定の色尺度により各セグメントの適当と思われる表示値を色に変換し、各セグメントの表示値に基づいて色づけした各セグメントに対する融除外傷部位の3次元的な再構成情報を表示し、その際、カラー-コード化した各セグメントが予め得られているマップ上に重ね合わされて、表示モニター52に一緒に表示され」るものであるところ、各セグメントの色づけであるカラー-コード化は、各セグメントの表示値、すなわち、本願発明の生理学データに対応する最高温度に依存しており、カラー-コード化した各セグメントが予め得られているマップ上に重ね合わされることは、予め得られているマップを表示するための画像パラメータに対して、カラー-コード化した各セグメントを表示するための画像パラメータを用いて修正を施し、修正されたマップのデータを表示モニター52に出力しているといえる。
よって、引用発明において、「コンソール20」の「コンピュータ50は、一定の色尺度により各セグメントの適当と思われる表示値を色に変換し、各セグメントの表示値に基づいて色づけした各セグメントに対する融除外傷部位の3次元的な再構成情報を表示し、その際、カラー-コード化した各セグメントが予め得られているマップ上に重ね合わされて、表示モニター52に一緒に表示され」ることは、本願発明の「処理装置は、前記生理学データに依存する前記画像データの画像パラメータの少なくとも1つを修正することで、前記画像データを、修正された生体画像データに変換し、前記処理装置は、前記修正された生体画像データを前記表示装置に供」することに相当する。

5 表示装置について

引用発明の「カラー-コード化した各セグメントが予め得られているマップ上に重ね合わされて、表示モニター52に一緒に表示され」ることは、本願発明の「表示装置は、前記修正された生体画像を表示する」ことに相当する。

6 そうすると、本願発明と引用発明とは、

「 画像取得装置、処置装置、処理装置、及び表示装置を有する、対象物に関する情報を供する医療イメージング装置であって、
前記画像取得装置は、対象物の関心領域のうちの少なくとも1つから対象物データを検出し、かつ、前記対象物データを、前記処理装置へ供し、
前記処置装置は、前記対象物に対する前記処置装置の所定領域の位置に依存する前記対象物の生理学的パラメータを検出し、かつ、前記生理学的パラメータを、前記処理装置へ供し、
前記処理装置は、前記対象物データの少なくとも一部を画像データに変換し、かつ、前記生理学パラメータを生理学データに変換し、
前記処理装置は、前記生理学データに依存する前記画像データの画像パラメータの少なくとも1つを修正することで、前記画像データを、修正された生体画像データに変換し、
前記処理装置は、前記修正された生体画像データを前記表示装置に供し、
前記表示装置は、前記修正された生体画像を表示する、
装置。」

の点で一致し、相違点はない。


第5 当審の判断

1 上記のとおり、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当する。

2 請求人は、審判請求書の請求の理由において、
「(d)-1 「生理学的パラメータ」について ・・・ 温度に関係があるのは、最高温度と最高温度の時間勾配です。ですがこれらは、アブレーションの処置態様によって決まるカテーテル先端の温度に関するものであり、アブレーション実行時の温度であって、生理学的パラメータとは異なると考えます。なぜならその温度は、37?100℃であり(引用文献1の[0069]をご参照ください。)、平熱を超えているためです。一般的に言って、恒常的にヒトの体温の平熱を超える温度は生理学的パラメータとはみなし得ないと思料いたします。
しかも審査官殿が「生理学的パラメータ」に相当するとしている事項は、対象物に対する処置装置の位置に依存するものではありません。よって請求項1に係る生理学的パラメータが「前記対象物に対する前記処置装置の所定領域の位置に依存する」ことについて記載も示唆もしておりません。
(d)-2 「画像パラメータの少なくとも1つを修正すること」について ・・・ 一方本願発明は、生体画像を供するために画像パラメータの少なくとも1つを修正するのであって、複数の色のオーバーレイ表示を行いません。なぜなら、そのようなオーバーレイ表示は、画像に含まれる解釈上重要な情報を失う恐れがあるからです(本願明細書[0009]を御参照ください。)。よって引用文献1は、複数の色のオーバーレイ表示を前提としているため、本願発明の特徴に至る根拠にはなり得ません。 」
と主張している。

そこで、上記請求人の主張について検討する。

(1)生理学的パラメータについて

仮に、引用発明の温度センサー49がカテーテル30の先端部分44の温度を計測するものであったとしても、
ア 引用例1の段落【0029】及び段落【0038】の記載は、融除を行う部位、すなわち、心臓室部の特定の位置の温度を計測することを示唆するものであること、
イ 融除を行う処置具に設けた温度センサにより組織の温度を計測することが、本願優先日前において周知であること(例えば、特開2001-340350号公報の段落【0041】参照。)、
に鑑みれば、引用発明において温度センサー49により心臓室部の特定の位置の温度を計測するようにすることは、設計的事項にすぎない。

また、引用発明の温度センサー49により融除処置前の温度を計測することが可能であることは明らかであり、融除の状況を把握するために融除処理前の温度をも計測することが有効であることは、本願優先日前において周知である(例えば、特開2001-340350号公報の段落【0061】参照。)から、引用発明において、温度センサー49により融除処置前から温度を計測し、その温度に基づいて対応するセグメントの表示値を決定し、融除処置に伴って表示されるセグメントの色が変化するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、融除処置前の心臓室部の特定の位置の温度は、紛れもない生理学的パラメータであり、少なくとも心臓室部の位置に依存して異なる値を示すことは明らかである。

(2)画像パラメータの修正について

本願明細書の発明の詳細な説明及び図面には、実施例として生理学データを図式的に表す色のついたマーカーを蛍光画像内部に表示することも記載されており(特に、段落【0090】及び図5の記載を参照。)、本願発明における画像パラメータの修正が、色のオーバーレイ表示を除外したものとは認められない。

(3)してみると、本願発明が引用発明とは異なるものであるとしても、本願発明は、引用発明、引用例1の記載事項、及び、本願優先日前において周知な事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといわざるを得ない。


第6 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。

また、仮に本願発明が特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しないとしても、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-20 
結審通知日 2015-10-27 
審決日 2015-11-10 
出願番号 特願2012-519090(P2012-519090)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 113- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昭治  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 渡戸 正義
藤田 年彦
発明の名称 生理学的パラメータの視覚化  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  

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