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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02B
管理番号 1312688
審判番号 不服2014-18599  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-31 
確定日 2016-03-25 
事件の表示 特願2010- 68859「内燃機関の効率の良い排気機構」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月22日出願公開、特開2011-185252〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年3月4日の出願であって、平成26年1月15日付けで拒絶理由が通知され、平成26年5月28日付けで拒絶査定がされ、平成26年8月31日付け(平成26年9月1日受付)で拒絶査定不服審判が請求され、平成27年5月7日受付で上申書が提出され、さらに平成27年5月29日受付で上申書が提出され、その後、当審において平成27年6月3日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成27年8月10日受付で意見書及び手続補正書が提出され、平成27年11月12日受付で上記平成27年8月10日受付の手続補正書における手続補正1を補正する手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、平成27年11月12日受付の手続補正書(方式)により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
1つのシリンダーに2つの排気バルブを持つエンジンにおいて、それぞれの排気バルブのエクゾーストパイプを独立させ、一方の排気バルブ(ベンチュリバルブ)の開くタイミングをもう一方の排気バルブの開くタイミングより早めることで、ベンチュリバルブに続くエクゾーストパイプに高速の気流を発生させ、その気流をベンチュリ効果を発生させる機能を持つベンチュリパイプに流すことで負圧を発生させ、その負圧により遅く開く方の排気バルブからシリンダー内の燃焼ガスを効率よく引き出す構造を持つ排気構造。」

第3 引用文献
第3-1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由で引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開昭63-297725号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「ターボ過給機付エンジン」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。なお、下線は理解の一助のため当審で付したものである。

ア 「産業上の利用分野
本発明は、燃焼室に残留する排気ガスを効果的に掃気することにより、耐ノッキング特性の向上および高圧縮化を図ったターボ過給機付エンジンに関するものである。」(第1ページ右下欄第2ないし6行)

イ 「発明の目的
本発明は、燃焼室内に残留する排気ガスを効果的に掃気することにより、耐ノッキング特性の向上および高圧縮化を図ったターボ過給機付エンジンを提供することを目的とするものである。」(第2ページ左上欄第9ないし13行)

ウ 「発明の構成
本発明のかかる目的は、タービンをバイパスするバイパス通路を設けるとともに、該バイパス通路内に所定負荷以上の運転状態で、かつ、吸気ポートと排気ポートとがともに開いているオーバーラップ期間中にのみ開くバイパス通路開閉手段を設けることによって達成される。
このように、所定負荷以上の運転状態で、かつ吸気ポートと排気ポートとがともに開いているオーバーラップ期間中に、バイパス通路開閉通路を開いて、タービンをバイパスするように排気ガスを流しても、ターボ過給をするため排気エネルギーは、排気行程の当初において高く、急激に低下するから、吸気ポートと排気ポートの開時期がオーバーラップする排気行程の後半では、排気ガスをタービンをバイパスさせても、ターボ過給にはほとんど影響がなく、したがって、本発明によれば、ターボ過給によって、出力を向上させつつ、燃焼室内の残留排気ガスを効果的に掃気して、耐ノッキング特性の向上および高圧縮化を実現することが可能となる。」(第2ページ左上欄第14行ないし右上欄第14行)

エ 「 第1図は、本発明の実施例にかかる4気筒の過給機付エンジンの概略図である。
第1図において、エンジン1の各気筒の燃焼室2には、第1吸気ポート3および第2吸気ポート4ならびに排気ポート5および補助排気ポート6が、それぞれ、開口し、第1吸気ポート3には、第1吸気通路7が、第2吸気ポート4には、第1吸気通路7とは独立した第2吸気通路8が、それぞれ接続され、また、排気ポート5には、排気通路9が、補助排気ポート6には、排気通路9とは独立したバイパス通路10が、それぞれ接続されている。第1吸気通路7と第2吸気通路8とは、その上流において、吸気通路11に合流し、合流部の上流の吸気通路11内には、燃料噴射弁12が設けられている。第1吸気ポート3、第2吸気ポート4、排気ポート5および補助排気ポート6は、それぞれ、第1吸気バルブ13、第2吸気バルブ14、排気バルブ15および補助排気バルブ16によって、所定のタイミングで開閉される。排気通路9には、タービン17が設けられ、タービン17の回転は、シャフト18を介して、吸気通路11に設けられた吸気を過給するためのコンプレッサ19に伝えられている。また、バイパス通路10は、タービン17をバイパスして、排気通路9に合流し、バイパス通路10内には、バイパス通路10を開閉する開閉制御弁20が設けられている。燃料噴射弁12とコンプレッサ19の間の吸気通路11には、スロットルバルブ21およびインタークーラ22が、それぞれ設けられている。排気通路9には、タービン17に供給される排気ガス量を制御するために、バイパス排気通路23およびバイパス排気通路23の開度を制御するウェストゲートバルブ24が、それぞれ設けられている。」(第2ページ右上欄第18行ないし右下欄第11行)

オ 「 第2図は、本実施例における第1吸気ポート3、第2吸気ポート4、排気ポート5および補助排気ポート6の開閉タイミング、すなわち第1吸気バルブ13、第2吸気バルブ14、排気バルブ15および補助排気バルブ16の開閉タイミングを示すタイムチャートであり、第3図は、本実施例におけるエンジン運転領域と開閉制御弁20の開閉制御との関係を示すグラフである。
第2図において、曲線Xは、排気バルブ15のリフトカーブ、曲線Yは、補助排気バルブ16のリフトカーブ、また、曲線Zは、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14のリフトカーブを、それぞれ示しており、本実施例においてば、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14は、同一のタイミングで開閉されている。また、排気バルブ15の開閉タイミングは、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14の開弁期間と排気バルブ15の開弁期間との間のオーバーラップが、すなわち、オーバーラップ期間がほとんどないように、設定されている。補助排気バルブ16の開閉タイミングは、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14の開弁期間と補助排気バルブ16の開弁期間との間のオーバーラップ期間が一定になるように、設定されている。」(第2ページ右下欄第12行ないし第3ページ左上欄第15行)

カ 「 第3図において、梨地で示す領域Aは、低負荷運転領域で、開閉制御弁20を閉じられ、排気ガスはバイパス通路10からは排気されない運転領域である。低負荷運転領域においては、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14と、補助排気バルブ16の開弁期間のオーバーラップ期間中に、開閉制御弁20を開いて、排気ガスを、タービン17をバイパスさせて、バイパス通路10より排気することにより、排気圧力を低下させて、排気ガスの掃気をおこなうと、かえって燃焼が不安定になるので、開閉制御弁20を閉じ、排気ガスをタービン17に供給している。斜線で示す領域Bは、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14と、補助排気バルブ16の開弁期間のオーバーラップ期間中に、開閉制御弁20を開き、排気ガスを、補助排気ポート6より、バイパス通路10を経て排気し、タービン17をバイパスさせる高負荷運転領域である。
このように、第1吸気バルブ13、第2吸気バルブ14、排気バルブ15および補助排気バルブ16の開閉タイミングを設定するとともに、高負荷運転領域で、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14と、補助排気バルブ16の開弁期間のオーバーラップ期間中にのみ、開閉制御弁20を開いて、排気ガスを、補助排気ポート6より、バイパス通路10を経て排気し、タービン17をバイパスさせることによって、排気圧力を吸気圧力より低下させ、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14からの吸気により、燃焼室2内に残留している排気ガスを、バイパス通路10を経て、掃気することが可能になる。ここに、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14と、補助排気バルブ16の開弁期間のオーバーラップ期間は、好ましくは、クランク角度で10度以上、さらに好ましくは、クランク角度で30度以上に設定することが、十分な掃気効果を得るために望ましい。オーバーラップ期間を、このように設定することにより、燃焼室2内に残留する排気ガス量が十分に減少し、低い過給圧で高い充填量を得ることができるとともに、残留排気ガスによる混合気温度の上昇が防止され、高負荷運転領域における耐ノッキング特性を大幅に改善することが可能となる。」(第3ページ左上欄第16行ないし左下欄第18行)

キ 「 本発明は、以上の実施例に限定されることなく特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
たとえば、前記実施例においては、補助排気バルブ16の開閉タイミング、すなわち、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14と、補助排気バルブ16の開弁期間のオーバーラップ期間を一定に設定しているが、クランク角に基づくオーバーラップ期間を一定に設定していても、実際のオーバーラップ時間は、エンジン回転数が低いほど長く、エンジン回転数が高くなるにしたがって、次第に短くなるため、エンジン回転数が低い運転領域では、燃焼室2内に吸入された吸気が、補助排気ポート6よりバイパス通路10へ吹き抜けるおそれがあり、また、エンジン回転数が高い運転領域では、残留排気ガスを十分に掃気し得ないおそれがある。このような危険を防止するため、エンジン回転数が高くなるにしたがって、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14と、補助排気バルブ16の開弁期間のクランク角に基づくオーバーラップ期間が長くなるように、補助排気バルブ16の開閉タイミングを制御することもできる。また、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14と、補助排気バルブ16の開弁期間のクランク角に基づくオーバーラップ期間を、エンジン回転数が高い運転領域において、十分な掃気効果が得られるような一定の値に設定し、開閉制御弁20の開度を、エンジン回転数が低い運転領域では小さく、エンジン回転数が高くなるにしたがって大きく制御するようにしてもよい。
また、前記実施例においては、開閉制御弁20をバイパス通路10内に設け、これを、高負荷運転領域で、かつ、オーバーラップ期間に開くことによって、燃焼室2内の残留排気ガスの掃気をおこなっているが、開閉制御弁20を用いず、補助排気バルブ16の開閉タイミングを、高負荷運転領域にのみ開くように、あるいは、高負荷運転領域においてのみ、その開弁期間が、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14の開弁期間とオーバーラップするように、設定制御するようにしてもよい。
さらには、前記実施例においては、4気筒エンジンの各気筒に設けた補助排気ポート6に連なるバイパス通路10内に開閉制御弁20を設けているが、各気筒からのバイパス通路10を集合させて、排気通路9に合流させるようにし、バイパス通路10の集合部と排気通路9への合流部の間に開閉制御弁20を設けるようにすれば、機構の簡素化を図ることができる。なお、前記実施例においては、4気筒エンジンについて、説明を加えているが、本発明は、1気筒エンジンでも、4気筒以外の多気筒エンジンに対しても、適用可能であることはいうまでもない。」(第3ページ右下欄第13行ないし第4ページ左下欄第6行)

(2)引用文献1の記載から分かること

サ 上記(1)アないしキ及び第1図ないし第3図の記載から、引用文献1には、各気筒に2つの排気バルブ(排気バルブ15及び補助排気バルブ16)を持つエンジンの排気機構が記載されていることが分かる。

シ 上記(1)エ及び第1図の記載から、引用文献1に記載されたエンジンの排気機構において、排気バルブ15が設けられた排気ポート5には排気通路9が接続され、補助排気バルブ16が設けられた補助排気ポート6にはバイパス通路10が接続され、バイパス通路10は排気通路9とは独立していることが分かる。また、タービン17の下流において、排気通路9はバイパス通路10と合流することが分かる。

ス 上記(1)オ及び第2図の記載から、引用文献1に記載されたエンジンの排気機構において、排気バルブ15の開弁タイミングを、補助排気バルブ16の開弁タイミングより早めていることが分かる。

セ 上記(1)ウ、オ及びカ並びに第1及び2図の記載から、引用文献1に記載されたエンジンの排気機構において、排気バルブ15は排気行程の当初に開弁するため排気バルブ15から排出される排気の排気エネルギーは高く、補助排気バルブ16は排気行程の終わり近くで開弁するため補助排気バルブ16から排出される排気の排気エネルギーは低いことが分かる。したがって、排気バルブ15に続く排気通路9には高速の気流が発生することが分かる。

ソ 上記(1)カ及び第1図の記載から、引用文献1に記載されたエンジンの排気機構において、高負荷運転領域で、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14と、補助排気バルブ16の開弁期間のオーバーラップ期間中に開閉制御弁20を開いて、排気ガスを、補助排気ポート6より、バイパス通路10を経て排気し、タービン17をバイパスさせることによって、排気圧力を吸気圧力より低下させることが分かる。このとき、補助排気ポート6から排気される排気圧力は吸気圧力より低くなることから、バイパス通路10内の圧力は吸気圧力より低くなっていることが分かる。

タ 上記(1)キの記載から、引用文献1に記載されたエンジンの排気機構において、補助排気バルブ16の開閉タイミングを制御することもできることが分かる。

チ 上記(1)キの記載から、引用文献1に記載されたエンジンの排気機構において、開閉制御弁20を用いず、補助排気バルブ16の開閉タイミングを、高負荷運転領域にのみ開くように、あるいは、高負荷運転領域においてのみ、その開弁期間が、第1吸気バルブ13および第2吸気バルブ14の開弁期間とオーバーラップするように、設定制御するようにしてもよいことが分かる。

ツ 上記(1)キの記載から、引用文献1に記載されたエンジンの排気機構は、1気筒エンジンに対しても、多気筒エンジンに対しても適用可能であることが分かる。

(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「各気筒に排気バルブ15及び補助排気バルブ16を持つエンジンにおいて、排気バルブ15の排気通路9と補助排気バルブ16のバイパス通路10を独立させ、排気バルブ15の開くタイミングを補助排気バルブ16の開くタイミングより早めることで、排気バルブ15に続く排気通路9に高速の気流を発生させ、排気通路9はバイパス通路10と合流し、補助排気バルブ16の開弁時にはバイパス通路10内の圧力は吸気圧力より低くなる、排気機構。」

第3-2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
当審拒絶理由で引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開2000-337156号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は、当審で付した。また、公報中の丸数字は、「(丸数字の1)」、「(丸数字の2)」のように表した。

ア 「【0008】
【発明の実施の形態】図1は排気装置の一例を示す模式図、図2はエンジンの出力特性(馬力)を示す線図、図3はエンジンの出力特性(トルク)を示す線図である。
【0009】排気装置10は、4気筒4サイクルエンジンに取付けて用いられる。尚、本実施形態において、エンジンは♯1、♯2、♯3、♯4の4気筒により構成され、点火順序は♯1-♯3-♯4-♯2となっている(表1)。
【0010】
【表1】(省略)
【0011】排気装置10は、排気集合管11を有し、排気集合管11の上流側に設けられるフランジ11Aをエンジンのシリンダヘッドに設けてある各気筒の排気口にガスケットを介してボルト固定され、排気集合管11の下流側の排気合流部12に設けたフランジ12Aにフロントパイプ13を接続し、このフロントパイプ13の下流側の排気管路に触媒コンバータと消音器を備え、エンジンの排気を浄化、消音して大気へと放出する。
【0012】排気集合管11は、4本の排気管21?24により構成され、各排気管21?24をそれぞれ♯1?♯4の各気筒に対応し、排気合流部12で、排気管21と排気管22を合流し、同時に排気管23と排気管24を合流して2本の排気通路を形成し、その後、これら2本の排気通路を互いに合流して1本の排気通路とし、フロントパイプ13へと接続している。
【0013】然るに、排気装置10にあっては、排気管21と排気管22を、排気合流部12の上流側で、2本の互いに並列をなす連通管31A、31Bで連通している。また、排気管23と排気管24も、排気合流部12の上流側で、2本の互いに並列をなす連通管32A、32Bで連通している。
【0014】排気装置10において、排気管21と排気管22を2本の連通管31A、31Bで連通(及び排気管23と排気管24を2本の連通管32A、32Bで連通)したことによる、排気の流れは以下の通りである。
【0015】(A) ♯1(♯4)の気筒が排気行程にあるとき
(丸数字の1)排気管21(排気管24)の排気の流れのベンチュリ効果による排気管22(排気管23)の負圧化
排気管21は排気行程にあって高圧排気の流れ状態にあり、このとき、排気管22は吸気行程で排気弁はバルブオーバーラップ時期を除いて閉じており、排気管21の排気の流れの連通管31A、31Bによるベンチュリ効果により、排気管22の内圧は負圧化される。この排気管22で生じた負圧は、当該排気管22の次にくる排気タイミングでの排気を促進するものとなり、排気管22の排気効率を上げる。
【0016】(丸数字の2)排気管21の排気の正圧波が連通管31A、31Bが接続されている部分や排気合流部12で反射して生ずる負圧波が、排気管21自らの排気弁閉時期直前(バルブオーバーラップ時期)に同調せしめられて当該♯1の気筒の掃気を促進して体積効率を増大させることに加え、連通管31A、31Bを介して排気管22の吸気弁開時期直後(バルブオーバーラップ時期)に同調せしめられて当該♯2の気筒の掃気を促進して体積効率を増大させる。
【0017】(B) ♯2(♯3)の気筒が排気行程にあるとき
(丸数字の1)排気管22(排気管23)の排気の流れのベンチュリ効果による排気管21(排気管24)の負圧化
排気管22は排気行程にあって高圧排気の流れ状態にあり、このとき、排気管21は爆発行程で排気弁は閉じており、排気管22の排気の流れの連通管31A、31Bによるベンチュリ効果により、排気管21の内圧は負圧化される。この排気管21で生じた負圧は、当該排気管21の次にくる排気タイミングでの排気を促進するものとなり、排気管21の排気効率を上げる。
【0018】(丸数字の2)排気管22の排気の正圧波に起因する負圧波は、排気管22自らの排気弁閉時期直前(バルブオーバーラップ時期)に同調せしめられて当該♯2の気筒の掃気を促進して体積効率を増大させるものとなるが、このときに爆発行程にある排気管21ではその負圧波を利用できない。
【0019】即ち、排気装置10にあっては、排気管21と排気管22を連通したこと(及び排気管23と排気管24を連通したこと)による、上述(A) (丸数字の1)、(丸数字の2)と(B) の、一方の気筒の排気による他方の気筒での排気効率と体積効率の向上効果を、2本の連通管31A、31B(32A、32B)の存在により上昇し、エンジンの出力特性を向上できる。図2によれば、特に4000rpm?5000rpmの低中速域で出力(馬力)を向上し、7000rpm以上の高回転域でも出力(馬力)を向上する。図3によれば、連通管なしの従来例において3000rpm?5000rpmの低中速域で表われる出力(トルク)の落ち込みを抑え、7000rpm以上の高回転域での出力(トルク)を向上する。
【0020】従って、本実施形態によれば、以下の作用がある。
(丸数字の1)2つの排気管21、22(23、24)同士を2本以上の連通管31A、31B(32A、32B)で連通することにより、両排気管を連通する有効連通面積を拡大し、一方の排気管(例えば21)の排気が他方の排気管(例えば22)に及ぼす影響度を増大し、結果として、エンジン出力を向上できる。
【0021】(丸数字の2)両排気管の有効連通面積を増大するに際し、単一の連通管による場合に比して、連通管31A、31B(32A、32B)の使用本数を増すことにより、連通管31A、31B(32A、32B)各1本の直径は細く、曲げRも小さくできるから、連通管31A、31B(32A、32B)の取付スペースをコンパクトにし、車載取付性を向上できる。
【0022】尚、本発明の変形例の1つとして、上述の排気装置10において、排気管21と排気管23を合流し、同時に排気管22と排気管24を合流した排気合流部12の上流側で、排気管21と排気管23を2本以上の互いに並列をなす連通管で連通し、排気管22と排気管24も2本以上の互いに並列をなす連通管で連通する場合にも、上記実施形態におけると同様の作用がある。
【0023】また、本発明の実施において、2本以上の連通管で連通し合う排気管同士は、一方の排気管が排気行程にあるとき、他方の排気管の内圧が低いもの(吸気、爆発、圧縮のいずれかの行程にある)であれば良い。これは、一方の排気管の排気行程の高圧排気の流れのベンチュリ効果により他方の排気管の内圧を負圧化し、この他方の排気管の次にくる排気タイミングでの排気を促進しその排気効率を上げるものであり、従って、例えば上述の排気装置10において、排気管21を他の排気管22、23、24のいずれか1以上もしくは全てと連通させても良いことを意味する。」(段落【0008】ないし【0023】)

(2)引用文献2の記載から分かること

カ 上記(1)ア及び図1ないし図3の記載から、引用文献2には、複数の排気管を備えたエンジンにおいて、一方の排気管の高圧排気の流れのベンチュリ効果により他方の排気管の内圧を負圧化し、この他方の排気管からの排気を促進しその排気効率を上げる技術が記載されていることが分かる。

(3)引用文献2記載の技術
上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「複数の排気管を備えたエンジンにおいて、一方の排気管の高圧排気の流れのベンチュリ効果により他方の排気管の内圧を負圧化し、この他方の排気管からの排気を促進しその排気効率を上げる技術。」

第4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「各気筒」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明における「1つのシリンダー」に相当し、以下同様に、「排気バルブ15及び補助排気バルブ16」は「2つの排気バルブ」に、「排気バルブ15の排気通路9と補助排気バルブ16のバイパス通路10」は「それぞれの排気バルブのエクゾーストパイプ」に、「排気バルブ15」は「一方の排気バルブ」及び「ベンチュリバルブ」に、「補助排気バルブ16」は「もう一方の排気バルブ」に、「排気バルブ15に続く排気通路9」は「ベンチュリバルブに続くエクゾーストパイプ」に、「排気機構」は「排気構造」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「排気通路9はバイパス通路10と合流し、補助排気バルブ16の開弁時にはバイパス通路10内の圧力は吸気圧力より低くなる」は、「一方の排気通路はもう一方の排気通路と合流し、該もう一方の排気通路内の圧力は吸気圧力より低くなる」という限りにおいて、本願発明における「その気流をベンチュリ効果を発生させる機能を持つベンチュリパイプに流すことで負圧を発生させ、その負圧により遅く開く方の排気バルブからシリンダー内の燃焼ガスを効率よく引き出す構造を持つ」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
「1つのシリンダーに2つの排気バルブを持つエンジンにおいて、それぞれの排気バルブのエクゾーストパイプを独立させ、一方の排気バルブの開くタイミングをもう一方の排気バルブの開くタイミングより早めることで、ベンチュリバルブに続くエクゾーストパイプに高速の気流を発生させ、一方の排気通路はもう一方の排気通路と合流し、該もう一方の排気通路内の圧力は吸気圧力より低くなる、排気構造。」

そして、両者は以下の点で相違する。

<相違点>
「一方の排気通路はもう一方の排気通路と合流し、他方の排気通路内の圧力は吸気圧力より低くなる」に関して、本願発明においては「その気流をベンチュリ効果を発生させる機能を持つベンチュリパイプに流すことで負圧を発生させ、その負圧により遅く開く方の排気バルブからシリンダー内の燃焼ガスを効率よく引き出す構造を持つ」のに対し、引用発明においては、「排気通路9はバイパス通路10と合流し、補助排気バルブ16の開弁時にはバイパス通路10内の圧力は吸気圧力より低くなる」点(以下、「相違点」という。)。

第5 相違点に対する判断
相違点について、以下に検討する。
引用文献2には、上記第3-2(3)のとおり、
「複数の排気管を備えたエンジンにおいて、一方の排気管の高圧排気の流れのベンチュリ効果により他方の排気管の内圧を負圧化し、この他方の排気管からの排気を促進しその排気効率を上げる技術。」(上記「引用文献2記載の技術」)が記載されている。
また、ベンチュリ管のベンチュリ効果を利用して排気管からの排気を促進する技術は周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、平成26年1月15日付け拒絶理由通知書において引用された特開平10-238342号公報[例えば、段落【0006】及び図3を参照。]及び特開平11-72022号公報[例えば、段落【0030】及び図3を参照。])である。
そして、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術は、ともに、エンジンの技術分野において、エンジンからの排気を促進するという共通の課題を有するものである。
引用発明においては、排気ガスを効果的に排気することが課題となっており、そのために排気ガスを補助排気ポート6よりバイパス通路10を経て排気し、タービン17をバイパスさせることによって、排気圧力を吸気圧力より低下させている(上記第3-1(1)カ及び(2)ソを参照。)のであるから、排気管であるバイパス通路10からの排気をさらに促進するために、引用文献2記載の技術及び周知技術を適用し、排気通路9とバイパス通路10との合流点においてベンチュリ管のベンチュリ効果を利用してバイパス通路10の内圧を負圧化することにより、バイパス通路10からの排気を促進することは、当業者が容易に想到できたことである。
したがって、引用発明において、引用文献2記載の技術及び周知技術を適用することにより、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

(3)効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。

(4)まとめ
本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
上記第5のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-13 
結審通知日 2016-01-19 
審決日 2016-02-01 
出願番号 特願2010-68859(P2010-68859)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 真一  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 槙原 進
金澤 俊郎
発明の名称 内燃機関の効率の良い排気機構  
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