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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1312751
審判番号 不服2015-2540  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-09 
確定日 2016-04-12 
事件の表示 特願2010-547870「積層可能な通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月 3日国際公開、WO2009/108734、平成23年 5月19日国内公表、特表2011-515733、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年(平成21年)2月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年2月25日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年9月29日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年2月9日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。


第2 平成27年2月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「 【請求項1】
複数のモジュールを備える、物理的に積層可能な通信システムであって、
前記複数のモジュールの各モジュールが、前記システムの特定の機能または機能群を実行し、前記モジュールの各々が、表面接触により前記モジュールの内の別のモジュールと物理的に積層可能な個別のケースを備え、かつ前記複数のモジュールがモジュールのスタックを形成し、前記モジュールのスタックの各モジュールの位置が、前記システムのユーザにより選択されていて、
各モジュールが、
電力コントローラと、
他のモジュールに接続するための表面相互接続部であって、前記表面相互接続部の各々が、前記複数のモジュールの内の第一モジュールと前記複数のモジュールの内の第二モジュールとの間の1つ以上の表面接触により、物理的ケーブルの接続によらずに、維持されている電力接続である、表面相互接続部と、
特定の機能または機能群を実行するコンポーネントと、
を備え、
各モジュールが、前記表面相互接続部を介して、少なくとも1つの他のモジュールに接続されていて、
前記複数のモジュールの内の少なくとも1つのモジュールが、前記表面相互接続部を介して、2つ以上のモジュールに接続されていて、
各モジュールが、前記複数のモジュールの内の前記他のモジュールに、通信するように、結合されていて、
前記複数のモジュールの電源が、シーケンスの順に、投入され、
前記シーケンスの順において先行するモジュールの電力コントローラと前記シーケンスの順において次のモジュールの電力コントローラとの通信に基づいて、前記シーケンスの順において前記先行するモジュールが、前記次のモジュールの所要電力を決定し、
前記先行するモジュールから利用可能である残りの電力が、前記次のモジュールの前記所要電力より大であるとの決定に応じて、前記シーケンスの順において前記先行するモジュールの前記電力コントローラが、前記シーケンスの順において前記複数のモジュールの前記次のモジュールに、電力を供給することができる、
物理的に積層可能な通信システム。」(下線は補正箇所を示す。)
とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。

2.補正の適否
本件補正の補正事項1は、本件補正前の請求項1(平成25年8月5日付けの手続補正書における請求項1)に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数のモジュール」という構成について、「前記複数のモジュールがモジュールのスタックを形成し、前記モジュールのスタックの各モジュールの位置が、前記システムのユーザにより選択されていて」との限定を付加し、
また、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記モジュールからの残りの電力が、前記次のモジュールの前記所要電力より大である場合に、」という構成について、前記「先行する」モジュールから「利用可能である」残りの電力が、前記次のモジュールの前記所要電力より大である「との決定に応じて、」との限定を付加するものである。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか)について以下に検討する。


(1)引用文献1、対比
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第6505087号明細書(原査定の拒絶の理由の引用文献1。以下、「引用文献1」という。)の、特に要約(モジュールが、何らかの機能を果たすタスクを実行することが記載されている)、第3欄第13-38行目(エンド・ユーザにより単純なモジュールが組み合わされることや、デバイスが“スタック”され相互に通信できることが記載されている)、第6欄第65行目-第8欄第28行目及び図2-6(モジュールがスタックされ、モジュールの表面に形成されたコネクタにより相互接続されることが記載されている)、並びに、第8欄第42-50行目及び図7(垂直にモジュールがスタックされることが記載されている)を参照すると、引用文献1には、補正発明と次の一致点、相違点を有する引用発明が記載されているといえる。

<一致点>
「複数のモジュールを備える、物理的に積層可能な通信システムであって、
前記複数のモジュールの各モジュールが、前記システムの特定の機能または機能群を実行し、前記モジュールの各々が、表面接触により前記モジュールの内の別のモジュールと物理的に積層可能な個別のケースを備え、かつ前記複数のモジュールがモジュールのスタックを形成し、前記モジュールのスタックの各モジュールの位置が、前記システムのユーザにより選択されていて、
各モジュールが、
他のモジュールに接続するための表面相互接続部であって、前記表面相互接続部の各々が、前記複数のモジュールの内の第一モジュールと前記複数のモジュールの内の第二モジュールとの間の1つ以上の表面接触により、物理的ケーブルの接続によらずに、維持されている接続である、表面相互接続部と、
特定の機能または機能群を実行するコンポーネントと、
を備え、
各モジュールが、前記表面相互接続部を介して、少なくとも1つの他のモジュールに接続されていて、
前記複数のモジュールの内の少なくとも1つのモジュールが、前記表面相互接続部を介して、2つ以上のモジュールに接続されていて、
各モジュールが、前記複数のモジュールの内の前記他のモジュールに、通信するように、結合されている、
物理的に積層可能な通信システム。」

<相違点1>
補正発明は、各モジュールが備える表面相互接続部が「電力」接続であるのに対し、
引用発明は、各モジュールが備える表面相互接続部が「電力」接続であるとは限らない点。

<相違点2>
補正発明は、各モジュールが「電力コントローラ」を備え、
「前記複数のモジュールの電源が、シーケンスの順に、投入され、
前記シーケンスの順において先行するモジュールの電力コントローラと前記シーケンスの順において次のモジュールの電力コントローラとの通信に基づいて、前記シーケンスの順において前記先行するモジュールが、前記次のモジュールの所要電力を決定し、
前記先行するモジュールから利用可能である残りの電力が、前記次のモジュールの前記所要電力より大であるとの決定に応じて、前記シーケンスの順において前記先行するモジュールの前記電力コントローラが、前記シーケンスの順において前記複数のモジュールの前記次のモジュールに、電力を供給することができる」構成であるのに対し、
引用発明は、そのような構成を備えていない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。

a.相違点1について
電子機器が動作するためにその電子機器に電源を供給しなければならないことは技術常識である(例えば、引用文献1の第2欄第19-22行目にも、従来の技術として、目的に特化した各コントロール・デバイスに対して電源供給(power supply)を行うことが記載されている)。よって、引用文献1の各モジュール(図2の102・104・106)においても何らかの電源が供給されていることは明らかであり、その電源供給を表面相互接続部であるコネクタ601を用いて行う構成とすることは、当業者であれば容易になし得る。
したがって、引用発明において相違点1に係る構成をなすことは、当業者であれば容易になし得る。

b.相違点2について
国際公開2005/109595号(日本国ファミリー:特開2005-323438号公報)の段落[0053]-[0056]及び図1、3には、コンセント側電力制御装置3において、電気製品9(エアコン)から消費電力量を受信し、割り当て可能電力量が、消費電力量より大であるとの判定に応じて、電力を供給することが記載されている。
また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-123925号公報(原査定の拒絶の理由の引用文献b)の第4頁左上欄第8行目-右下欄第17行目及び図1-3には、機器において、当該機器に接続された外部の電源系統1の供給可能な電力が、機器の内部においてオンしようとする負荷iの消費電力よりも大きい場合に、負荷iをオンすることが記載されている。同様の技術が、原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-123924号公報(原査定の拒絶の理由の引用文献c、特に図1、4A及びその説明参照)にも記載されている。
また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-143288号公報(原査定の拒絶の理由の引用文献4)の要約、段落【0018】-【0025】及び図1-2には、I/Oインターフェイス装置10・11・12(各モジュール)に対して、外部のAPS装置1及び電源コント装置7・8・9を用いて、順次電源を供給することが記載されている。
しかし、上記相違点2に係る構成のように、
各モジュールが「電力コントローラ」を備え、
「前記複数のモジュールの電源が、シーケンスの順に、投入され、
前記シーケンスの順において先行するモジュールの電力コントローラと前記シーケンスの順において次のモジュールの電力コントローラとの通信に基づいて、前記シーケンスの順において前記先行するモジュールが、前記次のモジュールの所要電力を決定し、
前記先行するモジュールから利用可能である残りの電力が、前記次のモジュールの前記所要電力より大であるとの決定に応じて、前記シーケンスの順において前記先行するモジュールの前記電力コントローラが、前記シーケンスの順において前記複数のモジュールの前記次のモジュールに、電力を供給することができる」ような構成は、
上記のいずれの文献においても記載や示唆がなされていない。
他に上記の構成を示す証拠は発見されていない。
よって、補正発明の相違点2に係る構成を、引用発明に適用することは当業者が容易になし得たとはいえない。

したがって、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。


また、他に補正発明を,特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすべき理由を発見しない。
よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合する。

本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。


3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。


第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-03-29 
出願番号 特願2010-547870(P2010-547870)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂東 博司  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 千葉 輝久
桜井 茂行
発明の名称 積層可能な通信システム  
代理人 沢田 雅男  

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